説明

液滴吐出ヘッド

【課題】簡単な構成でノズル近傍の液体の溶存気体量を低く保つことができる液滴吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】圧力室16には、個別供給流路22を介して共通供給流路24が連通される。共通供給流路24は、供給路30を介して循環供給流路28に連通される。循環供給流路28には、インクが循環供給される。循環供給流路28は、隔壁26を介して共通供給流路24の上部に配設される。隔壁26には、共通供給流路24の形成位置に対応してフィルタ開口部36が形成される。フィルタ開口部36には、気体透過膜38が取り付けられる。共通供給流路24を流れるインクの溶存気体濃度が上がると、そのインク中の溶存気体が、気体透過膜38を介して、循環供給流路28に循環供給されるインクに取り除かれる。これにより、ノズル近傍のインクの溶存気体濃度を低く保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドに係り、特にノズル近傍の液体の溶存気体量を低く保つ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、インクには気体が一定量溶け込んでいる。高濃度の気体が溶け込んだインクをインクジェット記録装置で使用すると、インク液滴の吐出時に溶存気体がヘッド内で気泡化したり、ノズルから溢れたインクがノズル内に戻る際に気体を巻き込んだりして、不吐出や飛翔曲がり等の吐出不良を生じさせるという問題がある。このため、インクジェット記録装置では、インクに対して脱気処理が行われる。
【0003】
特許文献1には、インクよりも溶存気体濃度の低い液体に気体透過膜を介してインクを接触させることにより、インクを脱気処理する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、インクをポンプで加圧することにより、気液分離膜を介してインク中の空気を除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−203523号公報
【特許文献2】特開2009−143023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、インクよりも溶存気体濃度の低い液体を供給するためのシステムが別に必要になるため、構成が大掛かりになるという欠点がある。
【0007】
また、特許文献2の方法は、インクを加圧する必要があるため、画像の記録中には使用できないという欠点がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡単な構成でノズル近傍の液体の溶存気体量を低く保つことができる液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0010】
[1]液滴吐出ヘッドの第1の態様は、所定の配列をなす複数のノズルと、前記ノズルごとに設けられる液室と、前記液室ごとに設けられ、前記液室内の液体を前記ノズルから液滴として吐出させる圧力発生素子と、前記各液室が連通される第1流路と、隔壁を介して前記第1流路に重ねて配置される第2流路と、前記第1流路と前記第2流路とを連通する供給路と、前記隔壁の一部を構成する気体透過膜と、前記液体が前記第2流路内を一方向に流れるように、前記第2流路に対して前記液体を循環させて供給する液体供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第1流路内の液体と第2流路内の液体とが気体透過膜を介して接触する。第2流路には、液体が循環して供給されているため、常に溶存気体濃度がほぼ一定の液体が流れる。このため、たとえば、ノズルを介して気体が液体に溶け込み、第1流路内の溶存気体濃度が高まった場合などには、その第1流路内の溶存気体を気体透過膜を介して第2流路に取り除くことができる。これにより、ノズル近傍の液体の溶存気体濃度を低く保つことができ、安定した吐出を確保することができる。
【0012】
[2]液滴吐出ヘッドの第2の態様は、上記第1の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記第2流路が前記隔壁を介して前記第1流路の重力方向上部に配設されることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第2流路が隔壁を介して第1流路の重力方向上部に配設される。これにより、キャビテーションにより発生した気泡やノズルから巻き込まれた気体が重力方向上方に移動するため、より効率よく第1流路内の液体の溶存気体を除去することができる。
【0014】
[3]液滴吐出ヘッドの第3の態様は、上記第1又は2の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記液体供給手段が、前記液体中の溶存気体を前記液体から除去する脱気手段を有することを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、第2流路に対して液体を循環供給する液体供給手段に液体中の溶存気体を液体から除去する脱気手段が備えられる。これにより、第2流路内の液体の溶存気体濃度をより低く保つことができ、延いては第1流路内の液体の溶存気体濃度も低く保つことができる。
【0016】
[4]液滴吐出ヘッドの第4の態様は、上記第3の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記脱気手段が、前記第2流路を流れる前記液体の流れの方向に対して、前記第2流路の上流側に配置されることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、脱気手段が、第2流路を流れる液体の流れの方向に対して、第2流路の上流側に配置される。これにより、第2流路を流れる液体の溶存気体濃度をより効率よく下げることができる。
【0018】
[5]液滴吐出ヘッドの第5の態様は、上記第1から4のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記供給路が、前記第2流路を流れる前記液体の流れの方向に対して、前記気体透過膜の上流側に設けられることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、第1流路と第2流路とを連通する供給路(第2流路から第1流路に液体を供給する流路)が、第2流路を流れる液体の流れの方向に対して、気体透過膜の上流側に設けられる。これにより、第1流路に対して、気体吸収前の液体を第2流路から供給することができ、より効率よく第1流路内の液体の溶存気体濃度を低下させることができる。
【0020】
[6]液滴吐出ヘッドの第6の態様は、上記第1から5のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記第2流路を流れる前記液体の流量が、前記第1流路を流れる前記液体の流量よりも大きいことを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、第2流路を流れる液体の流量が、第1流路を流れる液体の流量よりも大きくされる。これにより、より効率よく第1流路内の液体の溶存気体を除去することができる。
【0022】
[7]液滴吐出ヘッドの第7の態様は、上記第1から6のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記第2流路を流れる前記液体の温度が、前記第1流路を流れる液体の温度よりも低くなるように前記液体の温度を調整する温調手段を更に備えたことを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、第2流路を流れる液体の温度が、第1流路を流れる液体の温度よりも低くなるように液体の温度が調整される。これにより、液体の温度が低い方が飽和溶存気体量は高く、より効率よく第1流路内の液体の溶存気体を除去することができる。
【0024】
[8]液滴吐出ヘッドの第8の態様は、上記第1から7のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記各液室が連通される第3流路と、前記第3流路と前記第2流路とを連通する回収路と、を更に備えたことを特徴とする。
【0025】
本態様によれば、液室に対して液体が循環供給される。これにより、ノズル近傍の液体の溶存気体濃度を更に低く保つことができる。
【0026】
[9]液滴吐出ヘッドの第9の態様は、上記第8の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記第2流路は隔壁を介して前記第3流路に重ねて配置され、該隔壁の一部が気体透過膜で構成されることを特徴とする。
【0027】
本態様によれば、第3流路内の液体と第2流路内の液体とが気体透過膜を介して接触する。これにより、第3流路内の液体の溶存気体濃度も低く保つことができ、ノズル近傍の液体の溶存気体濃度を更に低く保つことができる。
【0028】
[10]液滴吐出ヘッドの第10の態様は、上記第9の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記第2流路が、前記隔壁を介して前記第3流路の重力方向上部に重ねて配置されることを特徴とする。
【0029】
本態様によれば、第2流路が隔壁を介して第3流路の重力方向上部に配設される。これにより、より効率よく第3流路内の液体の溶存気体を除去することができる。
【0030】
[11]液滴吐出ヘッドの第11の態様は、上記第8から10のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記回収路が、前記第2流路を流れる前記液体の流れの方向に対して、前記気体透過膜の下流側に設けられることを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、第3流路と第2流路とを連通する回収路(第3流路から第2流路に液体を回収する流路)が、第2流路を流れる液体の流れの方向に対して、気体透過膜の下流側に設けられる。これにより、第3流路から回収した液体が気体透過膜を通過するのを防止でき、より効率よく第3流路内の液体の溶存気体濃度を低下させることができる。
【0032】
[12]液滴吐出ヘッドの第12の態様は、上記第1から第11のいずれか1の態様の液滴吐出ヘッドにおいて、前記圧力発生素子が、前記液室の側面部に配置されることを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、圧力発生素子が、液室の側面部に配置される。これにより、液室の上方空間を確保でき、気体透過膜のレイアウトの自由度や設置の容易性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ノズル近傍の液体の溶存気体量を低く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】インクジェットヘッドの第1の実施の形態の底面透視図
【図2】図1の2−2断面図
【図3】図2の3−3断面図
【図4】インクジェットヘッドに供給するインクの循環供給システムの概略構成図
【図5】圧力発生素子の配置の変形例を示す断面図
【図6】圧力発生素子の配置の変形例を示す断面図
【図7】第2の実施の形態のインクジェットヘッドにおけるインクの循環供給システムの概略構成図
【図8】インクジェットヘッドの第3の実施の形態の底面透視図
【図9】図8の9−9断面図
【図10】図9の10−10断面図
【図11】図9の11−11断面図
【図12】インクジェットヘッドの第4の実施の形態の底面透視図
【図13】図12の13−13断面図
【図14】図13の14−14断面図
【図15】図13の15−15断面図
【図16】インクジェットヘッドの第5の実施の形態の底面透視図
【図17】図16の17−17断面図
【図18】図16の18−18断面図
【図19】インクジェットヘッドの第6の実施の形態の底面透視図
【図20】図19の20−20断面図
【図21】図19の21−21断面図
【図22】図19の22−22断面図
【図23】第6の実施の形態のインクジェットヘッドの変形例を示す断面図
【図24】インクの循環供給システムのその他の実施の形態の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0037】
《第1の実施の形態》
[インクジェットヘッドの構成]
図1は、本発明が適用されたインクジェットヘッドの第1の実施の形態の底面透視図である。また、図2は、図1の2−2断面図、図3は、図2の3−3断面図である。
【0038】
同図に示すように、本実施の形態のインクジェットヘッド10は、直方体状に形成され、その底面にノズル面12が形成される。
【0039】
ノズル面12には、ヘッドの長手方向に沿って多数のノズル14が一定ピッチで配置される。各ノズル14は、それぞれ圧力室(液室)16に連通される。
【0040】
圧力室16は、ノズル14の配列に沿って一定ピッチで配置される。各圧力室16は、直方体状に形成され、その天井面は振動板18で構成される。振動板18には、圧力室16ごとに圧力発生素子としての圧電アクチュエータ20が設けられる。圧電アクチュエータ20で振動板18を振動させることにより、圧力室16が膨張・収縮する。これにより、ノズル14からインク滴が吐出される。
【0041】
各圧力室16は、それぞれ個別供給流路22を介して共通供給流路(第1流路)24に連通される。共通供給流路24は、圧力室16の配列(=ノズル14の配列)に沿って配置されるとともに、ノズル面12と平行に配置される。
【0042】
共通供給流路24の重力方向上部には、隔壁26を介して循環供給流路(第2流路)28が配置される。
【0043】
循環供給流路28は、供給部28Aと流路部28Bと回収部28Cとで構成される。供給部28Aと回収部28Cは、流路部28Bの両端に配置され、垂直に形成される。
【0044】
循環供給流路28の流路部28Bは、共通供給流路24と平行に配置される。また、循環供給流路28の流路部28Bは、共通供給流路24よりも広い幅で形成され、共通供給流路24を覆うようにして、共通供給流路24の重力方向上部に重ねて配置される。
【0045】
共通供給流路24は、供給路30を介して循環供給流路28の供給部28Aに連通される。供給路30は、共通供給流路24の一方側(図1の右側)の端部に配置される。
【0046】
循環供給流路28の供給部28Aには、インク供給口32が連通される。また、循環流路の回収部28Cには、インク回収口34が連通される。
【0047】
インク供給口32からインクを供給する一方、インク回収口34からインクを回収することにより、循環供給流路28にインクが循環して供給される。そして、この循環供給流路28に循環して供給されるインクが、供給路30を介して共通供給流路24に供給され、共通供給流路24から個別供給流路22を介して各圧力室16に供給される。
【0048】
共通供給流路24と循環供給流路28の流路部28Bとを隔てる隔壁26は、ノズル面12と平行に設けられる。この隔壁26には、共通供給流路24に重なるようにしてフィルタ開口部36が形成される。このフィルタ開口部36には、気体透過膜38が配置される。共通供給流路24を流れるインクと、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクは、この気体透過膜38を介して互いに接触する。したがって、たとえば、ノズル14を介してインクに気体が溶け込み、共通供給流路24を流れるインクの溶存気体濃度が上がった場合などには、この気体透過膜38を介して共通供給流路24を流れるインクの溶存気体を循環供給流路28を流れるインクに取り込ませることができる。これにより、ノズル近傍におけるインクの溶存気体濃度を低く保つことができる。
【0049】
なお、気体透過膜38には、たとえば、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリスルフォン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミドなどが適用される。
【0050】
[インクの循環供給システムの構成]
図4は、インクジェットヘッドに供給するインクの循環供給システムの概略構成図である。
【0051】
インクが貯留されるインクタンク200は、管路202を介してバッファータンク204と連結される。この管路202には、メインポンプ206とメインバルブ208が設けられる。メインポンプ206は、制御部260からの指令に応じて作動し、インクタンク200に貯留されたインクをバッファータンク204に送液する。メインバルブ208は、制御部260からの指令に応じて作動し、管路202を開閉する。
【0052】
バッファータンク204は、天面に形成された大気開放穴204Aを介して内部が大気開放される。バッファータンク204には、インクタンク200から供給されるインクによって、その内部に所定量のインクが貯留される。
【0053】
バッファータンク204は、第1供給流路210を介して供給タンク212に連通される。供給タンク212は、第2供給流路214を介してインクジェットヘッド10のインク供給口32に連通される。
【0054】
また、バッファータンク204は、第1回収流路218を介して回収タンク220に連通される。回収タンク220は、第2回収流路222を介して、インクジェットヘッド10のインク回収口34に連通される。
【0055】
第1供給流路210には、供給ポンプ226とフィルタ228とが設けられる。供給ポンプ226は、制御部260からの指令に応じて作動し、バッファータンク204から供給タンク212にインクを送液する。フィルタ228は、供給ポンプ226とバッファータンク204との間に設けられ、供給タンク212に供給するインクから不純物を除去する。
【0056】
第2供給流路214には、供給バルブ230が設けられる。供給バルブ230は、制御部260からの指令に応じて作動し、第2供給流路214を開閉する。
【0057】
第1回収流路218には、回収ポンプ232が設けられる。回収ポンプ232は、制御部260からの指令に応じて作動し、回収タンク220からバッファータンク204にインクを送液する。
【0058】
第2回収流路222には、回収バルブ234が設けられる。回収バルブ234は、制御部260からの指令に応じて作動し、第2供給流路214を開閉する。
【0059】
供給タンク212は、その内部が弾性膜236によって供給液体室212Aと供給気体室212Bとに区画されている。
【0060】
供給液体室212Aには、第1供給流路210と第2供給流路214が連通される。第1供給流路210を介してバッファータンク204から供給されるインクは、一旦、この供給液体室212Aに貯留される。そして、この供給液体室212Aから第2供給流路214を介してインクジェットヘッド10に供給される。この供給液体室212Aは、内部圧力が供給圧力検出器238によって検出される。検出された内部圧力波、制御部260に出力される。
【0061】
一方、供給気体室212Bには、気体が充填される。この供給気体室212Bには、供給気体室212Bを大気に開放するための大気開放管240が連通される。大気開放管240には、大気開放バルブ242が設けられる。大気開放バルブ242は、制御部260の制御の下、大気開放管240を開閉する。
【0062】
回収タンク220も同様に、その内部が弾性膜244によって回収液体室220Aと回収気体室220Bとに区画されている。
【0063】
回収液体室220Aには、第1回収流路218と第2回収流路222とが連通される。インクジェットヘッド10から第2回収流路222を介して回収されるインクは、一旦、この回収液体室220Aに貯留される。そして、回収液体室220Aから第1回収流路218を介してバッファータンク204に回収される。回収液体室220Aは、内部圧力が回収圧力検出器246によって検出される。検出された内部圧力波、制御部260に出力される。
【0064】
一方、回収気体室220Bには、気体が充填される。この回収気体室220Bには、回収気体室220Bを大気に開放するための大気開放管248が連通される。大気開放管248には、大気開放バルブ250が設けられる。大気開放バルブ250は、制御部260の制御の下、大気開放管248を開閉する。
【0065】
[インクの循環供給動作]
循環供給時、供給タンク212の大気開放バルブ242と、回収タンク220の大気開放バルブ250は、それぞれ閉じられる。一方、第2供給流路214の供給バルブ230と、第2回収流路222の回収バルブ234は、それぞれ開かれる。
【0066】
本例の循環供給システムでは、供給側の圧力を回収側の圧力よりも所定量だけ高く設定することにより、供給タンク212側からインクジェットヘッド10を経て回収タンク220側にインクが送液される。
【0067】
具体的には、供給液体室212Aの内部圧力をPin、回収液体室220Aの内部圧力をPout、ノズルの背圧(負圧)をPnzl、インク吐出面と供給圧力検出器238との間の高低差により生じる圧力差(水頭圧)をHin、インク吐出面と回収圧力検出器246との間の高低差により生じる圧力差(水頭圧)をHoutとすると、Pin+Hin>Pnzl>Pout+Hout(mmH2O)として、ノズルに所定の背圧を付与する。
【0068】
制御部260は、供給圧力検出器238により検出される供給液体室212Aの内部圧力と、回収圧力検出器246により検出される回収液体室220Aの内部圧力とに基づいて、供給ポンプ226及び回収ポンプ232の駆動を制御し、供給液体室212Aの内部圧力と回収液体室220Aの内部圧力を、それぞれ所定の圧力Pin、Poutに制御する。これにより、インクジェットヘッド10に対してインクが循環供給される。すなわち、循環供給流路28にインクが、一方向(図1において右から左の方向)に流れる。
【0069】
この際、供給ポンプ226と回収ポンプ232の動作による圧力変動が生じた場合であっても、供給タンク212に設けられた弾性膜236と、回収タンク220に設けられた弾性膜244とにより吸収することができ、ノズル14における圧力変動を抑えることができる。これにより、常にノズル14の背圧を一定に維持することができる。なお、このインクの循環供給動作は、インクジェットヘッド10の動作中、常に行われる。
【0070】
[インクジェットヘッドの作用]
以上のように構成される本実施の形態のインクジェットヘッドの作用は、次のとおりである。
【0071】
インクの循環供給システムを作動させると、インクジェットヘッド10にインクが循環供給される。この結果、循環供給流路(第2流路)28にインクが供給され、循環供給流路28を一方向(図1の右から左の方向)にインクが流れる。
【0072】
循環供給流路28にインクが供給されると、そのインクが供給路30を介して共通供給流路(第1流路)24にインクが供給される。そして、共通供給流路24から個別供給流路22を介して各圧力室16にインクが供給される。
【0073】
各圧力室16に備えられた圧電アクチュエータ20を駆動すると、各圧力室16の天井面(振動板18)が振動し、各圧力室16の容積が膨張・収縮する。この結果、各圧力室16に連通されたノズル14からインクが液滴として吐出される。
【0074】
ここで、共通供給流路24と循環供給流路28とは、隔壁26で隔てて形成されるが、隔壁26にはフィルタ開口部36が形成され、フィルタ開口部36には気体透過膜38が配置される。このため、共通供給流路24を流れるインクと、循環供給流路28を流れるインクは、この気体透過膜38を介して互いに接触する。
【0075】
したがって、たとえば、ノズル14を介してインクに気体が溶け込み、共通供給流路24を流れるインクの溶存気体濃度が上がった場合などには、この気体透過膜38を介して共通供給流路24を流れるインクの溶存気体を循環供給流路28を流れるインクに取り込ませることができる。これにより、ノズル近傍におけるインクの溶存気体濃度を低く保つことができる。そして、このようにノズル近傍のインクの溶存気体濃度を低く保つことにより、吐出不良等の発生を防止でき、長期間安定した吐出を行うことができる。
【0076】
このように、本実施の形態のインクジェットヘッドによれば、共通供給流路24を流れるインクが、気体透過膜38を介して循環供給流路28を流れるインクに接触するため、共通供給流路24を流れるインクの溶存気体濃度を低く保つことができる。そして、この共通供給流路24を流れるインクの溶存気体濃度を低く保つことにより、ノズル近傍のインクの溶存気体濃度も低く保つことができ、長期間安定した吐出を確保することができる。
【0077】
また、特別な機構を必要としないので、小型なヘッドを実現することができる。
【0078】
さらに、画像の記録中も溶存気体の除去処理を行うことができるので、画像の記録中も安定してインクを吐出させることができる。
【0079】
なお、本実施の形態では、供給路30を共通供給流路24の一方側(図1の右側)の端部に配置している。この供給路30は、本実施の形態のように、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの流れ(図1において右から左)に対して、フィルタ開口部36の上流側(=気体透過膜38の上流側)に配置することが好ましい。これにより、気体透過膜38を通過する前のインクが共通供給流路24に供給され、より効率よく溶存気体を除去することができる。
【0080】
また、共通供給流路24を流れるインクからより効率よく溶存気体を除去するためには、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの流量を共通供給流路24を流れるインクの流量よりも多くすることが好ましい。この流量の調整は、たとえば、各流路を流れるインクの流速や、各流路のサイズを調整することにより行うことができる。
【0081】
同様に、共通供給流路24を流れるインクからより効率よく溶存気体を除去するためには、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの温度を共通供給流路24を流れるインクの温度よりも低くすることが好ましい。この温度の調整は、たとえば、循環供給流路28の流路部28Bにペルチェ素子を配置し、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクを冷却できるように構成することで実現できる。あるいは、共通供給流路24にヒータを配置し、共通供給流路24を流れるインクを加熱できるように構成することで実現できる。また、ヘッド外部に配設されたヒータの熱によりノズル面を加温することで共通供給流路24を流れるインクを加熱できるように構成することで実現できる。
【0082】
また、本実施の形態では、圧力室16の天井面(重力方向上側の面)を振動板で構成し、その振動板の上に圧電アクチュエータ20を配置する構成としているが、図5に示すように、側壁面の一つを振動板18で構成し、その振動板18に圧電アクチュエータ20を配置する構成としてもよい(同図では、圧力室16の右側の側壁面を振動板18で構成し、その振動板18に圧電アクチュエータ20を配置している。)。このように、側壁面の一つを振動板18で構成し、その側壁面に圧電アクチュエータ20を配置する構成とすることにより、圧力室16の上部の構造を簡素化でき、圧力室16の上部に配置される回路構成等の設計の自由度を向上させることができる。
【0083】
また、本実施の形態では、圧力室16の側壁面からインクを供給する構成(圧力室16の側壁面に個別供給流路22が連通される構成)としているが、図6に示すように、圧力室16の側壁面に振動板18を配置する場合には、圧力室の天井面からインクを供給する構成とすることもできる。この場合、同図に示すように、圧力室16の重力方向上部に共通供給流路24を配置する構成とすることもできる。
【0084】
《第2の実施の形態》
上記のように、共通供給流路24を流れるインクは、気体透過膜38を介して循環供給流路28を流れるインクに接触することにより、インク中に溶存する気体が除去される。
【0085】
共通供給流路24を流れるインクから溶存気体を効率よく除去するためには、共通供給流路24を流れるインクの溶存気体濃度よりも循環供給流路28を流れるインクの溶存気体濃度を低くする必要がある。循環供給流路28を流れるインクは、循環供給されており、常に新鮮なインクが供給されるので、一般的には共通供給流路24を流れるインクの溶存気体濃度よりも低く保つことができる。
【0086】
しかし、より効率よく溶存気体を除去するためには、積極的に循環供給流路28を流れるインクの溶存気体濃度を低くすることが好ましい。
【0087】
そこで、本実施の形態では、インクの循環供給システムに脱気装置を組み込み、インクを脱気処理して、インクジェットヘッドに循環供給する。
【0088】
図7は、本実施の形態のインクジェットヘッドにおけるインクの循環供給システムの概略構成図である。
【0089】
同図に示すように、第2供給流路214に脱気装置300が備えられる。脱気装置300は、供給タンク212から第2供給流路214を介してインクジェットヘッド10に供給されるインクの脱気処理を行う。
【0090】
このように、インクを脱気処理して、インクジェットヘッド10に供給することにより、共通供給流路24を流れるインクからより効率よく溶存気体を除去することができる。これにより、ノズル近傍のインクの溶存気体濃度をより低く保つことができる。
【0091】
なお、脱気装置300は、第2回収流路222に設置することもできるが、本例のように、インクの流れに対して、インクジェットヘッド10の上流側に設置することが好ましい。これにより、より溶存気体濃度の低いインクをインクジェットヘッドに供給することができ、共通供給流路24を流れるインクからより効率よく溶存気体を除去することができる。
【0092】
《第3の実施の形態》
図8は、本発明が適用されたインクジェットヘッドの第3の実施の形態の底面透視図である。また、図9は、図8の9−9断面図、図10は、図9の10−10断面図、図11は、図9の11−11断面図である。
【0093】
同図に示すように、本実施の形態のインクジェットヘッド10Aは、圧力室16に対してインクが循環供給される点で上述した第1の実施の形態のインクジェットヘッド10と相違する。したがって、ここでは、この圧力室16に対してインクを循環供給させるための構成について、特に説明する。
【0094】
上述したように、ノズル14は、インクジェットヘッド10Aの長手方向に沿って一定ピッチで直線上に配置される。各ノズル14は、ノズル14に沿って配置された圧力室16に連通される。
【0095】
各圧力室16は、それぞれ個別供給流路22を介して共通供給流路(第1流路)24に連通される。共通供給流路24は、圧力室16の配列(=ノズル14の配列)に沿って配置されるとともに、ノズル面12と平行に配置される。
【0096】
また、各圧力室16は、それぞれ個別回収流路42を介して共通回収流路(第3流路)44に連通される。共通回収流路44は、圧力室16の配列(=ノズル14の配列)に沿って配置されるとともに、ノズル面12と平行に配置される。また、共通回収流路44は、共通供給流路24と平行に配設され、この共通回収流路44と共通供給流路24との間に圧力室16が配置される。
【0097】
共通供給流路24と共通回収流路44の重力方向上部には、隔壁26を介して循環供給流路(第2流路)28が配置される。循環供給流路28は、共通供給流路24及び共通回収流路44と平行に配置される。また、循環供給流路28は、共通供給流路24及び共通回収流路44よりも広い幅で形成され、共通供給流路24と共通回収流路44を覆うようにして、共通供給流路24と共通回収流路44の重力方向上部に重ねて配置される。
【0098】
共通供給流路24は、供給路30を介して循環供給流路28の供給部28Aに連通される。供給路30は、共通供給流路24の一方側(図8の右側)の端部に配置される。
【0099】
共通回収流路44は、回収路46を介して循環供給流路28の回収部28Cに連通される。回収路46は、共通回収流路44の一方側(図8の左側)の端部に配置される。
【0100】
循環供給流路28の供給部28Aには、インク供給口32が連通される。また、循環流路の回収部28Cには、インク回収口34が連通される。
【0101】
インク供給口32からインクを供給する一方、インク回収口34からインクを回収することにより、循環供給流路28にインクが循環して供給される。そして、この循環供給流路28に循環して供給されるインクが、供給路30を介して共通供給流路24に供給され、共通供給流路24から個別供給流路22を介して各圧力室16に供給される。また、圧力室16に供給されたインクが、個別回収流路42を介して共通回収流路44に回収される。そして、共通回収流路44から回収路46を介して循環供給流路28に回収される。これにより、圧力室16に対してインクが循環供給される。
【0102】
このように、圧力室16に対してインクを循環供給することにより、圧力室16及びノズル14内のインクの滞留を防止できる。すなわち、常に新鮮なインクを圧力室16及びノズル14に供給することができる。これにより、ノズル近傍のインクの溶存気体濃度をより低く保つことができる。
【0103】
なお、本実施の形態においても、インクの循環供給システムは、上記第2の実施の形態で説明したように、脱気装置を組み込むことが好ましい。また、脱気装置は、インクジェットヘッド10Bの上流側に設置することが好ましい。
【0104】
《第4の実施の形態》
図12は、本発明が適用されたインクジェットヘッドの第4の実施の形態の底面透視図である。また、図13は、図12の13−13断面図、図14は、図13の14−14断面図、図15は、図13の15−15断面図である。
【0105】
本実施の形態のインクジェットヘッド10Bは、共通回収流路44でも溶存気体の除去が行われる点で上記第3の実施の形態のインクジェットヘッド10Aと相違する。したがって、ここでは、この相違点についてのみ説明する。
【0106】
共通回収流路44は、共通供給流路24と同様に、隔壁26を介して循環供給流路28と分離されている。
【0107】
隔壁26には、共通回収流路44に重なるようにしてフィルタ開口部48が形成される。このフィルタ開口部48には、気体透過膜50が配置される。共通回収流路44を流れるインクと、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクは、この気体透過膜50を介して互いに接触する。したがって、共通回収流路44を流れるインクの溶存気体濃度が上がった場合などには、この気体透過膜50を介して共通回収流路44を流れるインクの溶存気体を循環供給流路28を流れるインクに取り込ませることができる。これにより、ノズル近傍におけるインクの溶存気体濃度をより低く保つことができる。
【0108】
なお、共通回収流路44と循環供給流路28とを連通する回収路46は、本実施の形態のように、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの流れ(図12において右から左)に対して、フィルタ開口部48の下流側(=気体透過膜50の下流側)に配置することが好ましい。これにより、気体を取り込んだインクを効率よく回収することができる。
【0109】
また、共通回収流路44を流れるインクからより効率よく溶存気体を除去するためには、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの流量を共通回収流路44を流れるインクの流量よりも多くすることが好ましい。この流量の調整は、たとえば、各流路を流れるインクの流速や、各流路のサイズを調整することにより行うことができる。
【0110】
同様に、共通回収流路44を流れるインクからより効率よく溶存気体を除去するためには、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの温度を共通回収流路44を流れるインクの温度よりも低くすることが好ましい。この温度の調整は、たとえば、循環供給流路28の流路部28Bにペルチェ素子を配置し、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクを冷却できるように構成することで実現できる。あるいは、共通回収流路44にヒータを配置し、共通回収流路44を流れるインクを加熱できるように構成することで実現できる。
【0111】
なお、本実施の形態においても、インクの循環供給システムは、上記第2の実施の形態で説明したように、脱気装置を組み込むことが好ましい。また、脱気装置は、インクジェットヘッド10Bの上流側に設置することが好ましい。
【0112】
《第5の実施の形態》
図16は、本発明が適用されたインクジェットヘッドの第5の実施の形態の底面透視図である。また、図17は、図16の17−17断面図、図18は、図16の18−18断面図である。
【0113】
同図に示すように、本実施の形態のインクジェットヘッド10Cは、いわゆるマトリックスヘッドで構成される。
【0114】
マトリックスヘッドでは、図16に示すように、ノズル14がノズル面12に二次元配置される。すなわち、ヘッドの長手方向と平行な直線L1に沿ってノズル14が一定ピッチで配置されるとともに、ヘッドの長手方向に対して所定角度傾斜した直線L2に沿ってノズル14が一定ピッチで配置される。このようにノズル14を二次元配置することにより、ヘッドの長手方向に投影されるノズル14の間隔を狭めることができ、ドットの高密度化を図ることができる。
【0115】
ノズル14は、直線L2に沿って配置されるノズル14の列を一つの単位とし、列ごとに共通供給流路(第1流路)24が配置される。各列の共通供給流路24は、直線L2と平行に配置される。
【0116】
圧力室16は、ノズル14に対応して、二次元配列される。各列の圧力室16は、対応する各列の共通供給流路24に個別供給流路22を介して連通される。
【0117】
各共通供給流路24の重力方向上部には、隔壁26を介して循環供給流路(第2流路)28が配置される。
【0118】
循環供給流路28は、供給部28Aと流路部28Bと回収部28Cとで構成される。供給部28Aと回収部28Cは、流路部28Bの両端(ヘッドの長手方向と直交する方向の両端)に配置され、垂直に形成される。
【0119】
循環供給流路28の流路部28Bは、各共通供給流路24を覆うようにして、共通供給流路24の重力方向上部に重ねて配置される。
【0120】
各共通供給流路24は、供給路30を介して循環供給流路28の供給部28Aに連通される。供給路30は、共通供給流路24の一方側(図16の上側)の端部に配置される。
【0121】
循環供給流路28の供給部28Aには、インク供給口32が連通される。また、循環流路の回収部28Cには、インク回収口34が連通される。
【0122】
インク供給口32からインクを供給する一方、インク回収口34からインクを回収することにより、循環供給流路28にインクが循環して供給される。そして、この循環供給流路28に循環して供給されるインクが、供給路30を介して各共通供給流路24に供給され、各共通供給流路24から個別供給流路22を介して各圧力室16に供給される。
【0123】
各共通供給流路24と循環供給流路28の流路部28Bとを隔てる隔壁26は、ノズル面12と平行に設けられる。この隔壁26には、共通供給流路24ごとにフィルタ開口部36が形成される。フィルタ開口部36は、共通供給流路24に重なるように形成され、気体透過膜38が配置される。各共通供給流路24を流れるインクと、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクは、この気体透過膜38を介して互いに接触する。したがって、各共通供給流路24を流れるインクの溶存気体濃度が上がった場合などには、この気体透過膜38を介して各共通供給流路24を流れるインクの溶存気体を循環供給流路28を流れるインクに取り込ませることができる。これにより、ノズル近傍におけるインクの溶存気体濃度を低く保つことができる。
【0124】
なお、本実施の形態のようなマトリックスヘッドにおいても、供給路30は、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの流れ(図16において上から下)に対して、フィルタ開口部36の上流側(=気体透過膜38の上流側)に配置することが好ましい。また、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの流量は、共通供給流路24を流れるインクの流量よりも多くすることが好ましい。さらに、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの温度は、共通供給流路24を流れるインクの温度よりも低くすることが好ましい。
【0125】
また、本例では、圧力室16の天井面(重力方向上側の面)を振動板で構成し、その振動板の上に圧電アクチュエータ20を配置する構成としているが、側壁面の一つを振動板18で構成し、その振動板18に圧電アクチュエータ20を配置する構成としてもよい(図5参照)。また、圧力室16の側壁面に振動板18を配置する場合には、圧力室の天井面からインクを供給する構成としてもよい(図6参照)。
【0126】
なお、本実施の形態においても、インクの循環供給システムは、上記第2の実施の形態で説明したように、脱気装置を組み込むことが好ましい。また、脱気装置は、インクジェットヘッド10Bの上流側に設置することが好ましい。
【0127】
《第6の実施の形態》
図19は、本発明が適用されたインクジェットヘッドの第6の実施の形態の底面透視図である。また、図20は、図19の20−20断面図、図21は、図19の21−21断面図、図22は、図19の22−22断面図である。
【0128】
同図に示すように、本実施の形態のインクジェットヘッド10Dは、圧力室16に対してインクが循環供給される点で上述した第5の実施の形態のインクジェットヘッド10と相違する。したがって、ここでは、この圧力室16に対してインクを循環供給させるための構成について、特に説明する。
【0129】
ノズル14は、ヘッドの長手方向に対して所定角度傾斜する直線(直線L2(図16参照))に沿って配置されるノズル14の列を一つの単位とし、列ごとに共通供給流路(第1流路)24と共通回収流路(第3流路)44が配置される。
【0130】
各共通供給流路24は、直線L2(図16参照)と平行に配置される。各列のノズル14に連通される圧力室16は、対応する列の共通供給流路24に個別供給流路22を介して連通される。
【0131】
各共通回収流路44も同様に直線L2(図16参照)と平行に配置される。各列のノズル14に連通される圧力室16は、対応する列の回収流路44に個別回収流路42を介して連通される。
【0132】
各列の圧力室16は、この共通供給流路24と共通回収流路44との間に配置される。
【0133】
各共通供給流路24と各共通回収流路44の重力方向上部には、隔壁26を介して循環供給流路(第2流路)28が配置される。循環供給流路28は、共通供給流路24と共通回収流路44を覆うようにして、共通供給流路24と共通回収流路44の重力方向上部に重ねて配置される。
【0134】
各共通供給流路24は、供給路30を介して循環供給流路28の供給部28Aに連通される。供給路30は、共通供給流路24の一方側(図19の上側)の端部に配置される。
【0135】
各共通回収流路44は、回収路46を介して循環供給流路28の回収部28Cに連通される。回収路46は、共通回収流路44の一方側(図19の下側)の端部に配置される。
【0136】
循環供給流路28の供給部28Aには、インク供給口32が連通される。また、循環流路の回収部28Cには、インク回収口34が連通される。
【0137】
インク供給口32からインクを供給する一方、インク回収口34からインクを回収することにより、循環供給流路28にインクが循環して供給される。そして、この循環供給流路28に循環して供給されるインクが、供給路30を介して各共通供給流路24に供給され、各共通供給流路24から個別供給流路22を介して各圧力室16に供給される。また、圧力室16に供給されたインクが、個別回収流路42を介して共通回収流路44に回収される。そして、各共通回収流路44から回収路46を介して循環供給流路28に回収される。これにより、圧力室16に対してインクが循環供給される。
【0138】
このように、圧力室16に対してインクを循環供給することにより、圧力室16及びノズル14内のインクの滞留を防止できる。すなわち、常に新鮮なインクを圧力室16及びノズル14に供給することができる。これにより、ノズル近傍のインクの溶存気体濃度をより低く保つことができる。
【0139】
なお、本例では、共通供給流路24についてのみ気体透過膜38を設置しているが、上述した第4の実施の形態と同様に、共通回収流路44にも気体透過膜50を設置することができる。この場合、図23(図23は、図19の22−22断面に相当)に示すように、共通回収流路44に対応して、隔壁26にフィルタ開口部48が形成され、そのフィルタ開口部48に気体透過膜50が配置される。これにより、共通回収流路44を流れるインクと、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクとが、気体透過膜50を介して互いに接触し、共通回収流路44を流れるインクの溶存気体を循環供給流路28を流れるインクに取り込ませることができる。
【0140】
なお、共通回収流路44と循環供給流路28とを連通する回収路46は、循環供給流路28の流路部28Bを流れるインクの流れに対して、フィルタ開口部48の下流側(=気体透過膜50の下流側)に配置することが好ましい。これにより、気体を取り込んだインクを効率よく回収することができる。
【0141】
《その他の実施の形態》
本発明の適用は、いわゆるラインヘッドとシャトルヘッドの別は問われず、双方のヘッドのいずれにも適用することができる。
【0142】
また、本実施の形態では、循環供給流路28の流路部28Bと共通供給流路24とが互いに平行に設けられる構造としているが、循環供給流路28の流路部28Bと共通供給流路24とは、必ずしも平行に設ける必要はない。循環供給流路28の流路部28Bと共通回収流路44についても同様に必ずしも平行に設ける必要はない。気泡の排出性の向上を配慮して、適宜レイアウトを変えて配置することができる。
【0143】
また、本実施の形態では、共通供給流路24がノズル面12と平行に配置される構成としているが、共通供給流路24は、必ずしもノズル面12と平行に設ける必要はない。循環供給流路28の流路部28B、共通回収流路44について同様である。したがって、共通供給流路24と循環供給流路28の流路部28Bとを隔てる隔壁26についても、必ずしもノズル面12と平行に設ける必要はない。気泡の排出性の向上を配慮して、適宜レイアウトを変えて配置することができる。
【0144】
また、本実施の形態では、圧力室の形状を直方体形状としているが、圧力室の形状は特に限定されるものではなく、その他の形状を採用することもできる。同様にノズルの形状もストレート形状やテーパ形状等の種々の形状を採用することができ、また、その開口部の形状も円形状に限らず、楕円形状等の種々の形状を採用することができる。
【0145】
また、本実施の形態では、第2供給流路214に脱気装置300を設置する構成としているが、脱気装置300の設置位置は、これに限定されるものではない。ただし、ヘッドへ送る溶存気体濃度を下げるためには、ヘッドに最も近い上流に配置することが好ましい。
【0146】
なお、本例では、供給タンク212と回収タンク220の圧力の差によりインクの送液を制御しているが、この場合、図24に示すように、供給タンク212の上流側に脱気装置300を配置することにより、この制御をより容易に行うことができる。したがって、制御の容易性を考慮する場合には、図24に示すように、供給タンク212の上流側に脱気装置300を配置することが好ましい。
【0147】
また、上記実施の形態では、いわゆるピエゾ方式のヘッドに本発明を適用した場合を例に説明したが、インクの吐出方式は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、いわゆるバブルジェット(登録商標)方式のヘッドにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0148】
10、10A、10B、10C、10D…インクジェットヘッド10は、12…ノズル面、14…ノズル、16…圧力室(液室)、18…振動板、20…圧電アクチュエータ、22…個別供給流路、24…共通供給流路(第1流路)、26…隔壁、28…循環供給流路(第2流路)、28A…供給部、28B…流路部、28C…回収部、30…供給路、32…インク供給口、34…インク回収口、36…フィルタ開口部、38…気体透過膜、42…個別回収流路、44…共通回収流路(第3流路)、48…フィルタ開口部、50…気体透過膜、200…インクタンク、202…管路、204…バッファータンク、204A…大気開放穴、206…メインポンプ、208…メインバルブ、210…第1供給流路、212…供給タンク、212A…供給液体室、2121B…供給気体室、214…第2供給流路、218…第1回収流路、220…回収タンク、220A…回収液体室、220B…回収気体室、222…第2回収流路、226…供給ポンプ、228…フィルタ、230…供給バルブ、232…回収ポンプ、234…回収バルブ、236…弾性膜、238…供給圧力検出器、240…大気開放管、242…大気開放バルブ、244…弾性膜、246…回収圧力検出器、248…大気開放管、250…大気開放バルブ、260…制御部、300…脱気装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列をなす複数のノズルと、
前記ノズルごとに設けられる液室と、
前記液室ごとに設けられ、前記液室内の液体を前記ノズルから液滴として吐出させる圧力発生素子と、
前記各液室が連通される第1流路と、
隔壁を介して前記第1流路に重ねて配置される第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路とを連通する供給路と、
前記隔壁の一部を構成する気体透過膜と、
前記液体が前記第2流路内を一方向に流れるように、前記第2流路に対して前記液体を循環させて供給する液体供給手段と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第2流路が前記隔壁を介して前記第1流路の重力方向上部に配設されることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記液体供給手段が、前記液体中の溶存気体を前記液体から除去する脱気手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記脱気手段が、前記第2流路を流れる前記液体の流れの方向に対して、前記第2流路の上流側に配置されることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記供給路が、前記第2流路を流れる前記液体の流れの方向に対して、前記気体透過膜の上流側に設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2流路を流れる前記液体の流量が、前記第1流路を流れる前記液体の流量よりも大きいことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第2流路を流れる前記液体の温度が、前記第1流路を流れる液体の温度よりも低くなるように前記液体の温度を調整する温調手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記各液室が連通される第3流路と、
前記第3流路と前記第2流路とを連通する回収路と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第2流路は隔壁を介して前記第3流路に重ねて配置され、該隔壁の一部が気体透過膜で構成されることを特徴とする請求項8に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第2流路が、前記隔壁を介して前記第3流路の重力方向上部に重ねて配置されることを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項11】
前記回収路が、前記第2流路を流れる前記液体の流れの方向に対して、前記気体透過膜の下流側に設けられることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項12】
前記圧力発生素子が、前記液室の側面部に配置されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−250503(P2012−250503A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126462(P2011−126462)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】