説明

液滴噴射装置

【課題】互いに連通する複数の共通液室にそれぞれ対応する複数のノズル列の間で、噴射タイミングが異なる場合に、後のタイミングで噴射するノズル列の噴射特性低下を抑制すること。
【解決手段】インクジェットヘッド4は複数のマニホールド41を有し、各マニホールド41は2列のノズル列45にインクを供給する。また、複数のマニホールド41は、インク供給口40との連通部分とは別の部分において互いに連通している。さらに、噴射タイミングが後となるノズル列45に連通するマニホールド41の幅が、噴射タイミングが先となるノズル列45に連通するマニホールド41の幅よりも小さくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を噴射する液滴噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴噴射装置として、特許文献1には、ノズルからインクの液滴を噴射するインクジェットヘッドが開示されている。この特許文献1のインクジェットヘッドは、2列に配列された複数のノズルと、これら複数のノズルと同様に2列に配列され、複数のノズルにそれぞれ連通する複数の圧力室と、2列の圧力室列にそれぞれインクを供給する2つの共通液室(マニホールド流路)と、複数の圧力室内のインクにそれぞれ圧力を付与する圧電アクチュエータを有する。2つの共通液室は、外部からインクが供給されるインク流入口にそれぞれ連通する一方で、インク流入口とは反対側の端部において互いに連通している。このインクジェットヘッドにおいて、各圧力室列に属する圧力室には、その圧力室列に対応する共通液室からインクが供給され、圧電アクチュエータによって各圧力室に圧力が付与されることで、その圧力室に連通するノズルからインクの液滴が噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−118311号公報(図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1列のノズル列を構成する多数のノズルから同時に液滴が噴射されたときには、このノズル列における液体(インク)の消費量が多くなり、対応する共通液室への液体供給が追いつかなくなる。その結果、一部(特に、インク流入口から遠い末端側)のノズルにおいて液体供給不足が生じる虞がある。しかし、上記特許文献1のインクジェットヘッドのように、2つの共通液室が末端側で互いに連通している構成であれば、一方の共通液室において液体供給不足が生じても、他方の共通液室から液体を補充できるようになり、上述した液体供給不足を解消しやすくなる。
【0005】
しかしながら、複数の共通液室が互いに連通した構成では、特に、複数の共通液室にそれぞれ対応する複数のノズル列が異なった噴射タイミングで液滴を噴射する場合に、以下のような問題が生じる。複数のノズル列間で噴射タイミングが異なる場合に、先に液滴を噴射したノズル列に対応する共通液室において液体供給不足が生じ、その圧力が一時的に低下したときには、これに連通する他の共通液室から液体が供給されるが、そのときに液体供給先となる他の共通液室内の圧力も低下する。そして、前記他の共通液室内の圧力が低下した状態で、この共通液室に連通するノズル列の液滴噴射が行われることになると、このノズル列においては、共通液室内の圧力低下の影響で、ノズルのメニスカスが内側に引っ張られた状態で噴射を開始することになる。そのため、後に液滴を噴射するノズル列では、先のタイミングで噴射を行うノズル列と比較して、噴射特性(液滴速度や液滴量)が低下し、場合によっては噴射不能となる虞もある。
【0006】
本発明の目的は、互いに連通する複数の共通液室にそれぞれ対応する複数のノズル列の間で、噴射タイミングが異なる場合に、後のタイミングで噴射するノズル列の噴射特性低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の液滴噴射装置は、液滴を噴射するノズルが所定の第1方向に沿って配列されてなるノズル列であって、前記第1方向と交差する第2方向に並べて配置された、複数のノズル列と、液体供給部に連通し、前記液体供給部から供給された液体を前記複数のノズル列に供給する複数の共通液室と、前記複数のノズル列を構成するノズルのそれぞれについて、液体に噴射エネルギーを付与するアクチュエータを備え、
前記複数の共通液室には、それぞれ同数の前記ノズル列が連通し、前記複数の共通液室の各々は、他の共通液室と、前記液体供給部との連通部分とは別の部分において互いに連通しており、
前記複数のノズル列は、互いに異なる噴射タイミングで液滴を噴射するように構成され、噴射タイミングが後のノズル列に連通する前記共通液室の流路抵抗が、噴射タイミングが先のノズル列に連通する前記共通液室の流路抵抗よりも小さいことを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、複数の共通液室にはそれぞれ同数のノズル列が連通している。つまり、ノズル列へ供給する液体量は複数の共通液室で差はなく、本来、複数の共通液室の流路抵抗を異ならせる必要性はない。しかしながら、先のノズル列の噴射が開始されたときに、後に噴射されるノズル列に連通する共通液室から、先に噴射したノズル列の共通液室へ液体が供給されることによって、後のノズル列の共通液室内の圧力が低下し、後のノズル列の噴射特性に悪影響を及ぼす。
【0009】
しかし、本発明では、噴射タイミングが後のノズル列に連通する共通液室の流路抵抗が小さくなっていることから、この共通液室に対して液体供給部から速やかに液体が供給される。従って、上述した共通液室内の圧力が大きく低下することが防止され、噴射タイミングが後のノズル列の噴射特性の低下が抑制される。
【0010】
第2の発明の液滴噴射装置は、前記第1の発明において、噴射タイミングが後のノズル列に連通する前記共通液室の、液体流動方向と直交する断面における流路断面積が、噴射タイミングが先のノズル列に連通する前記共通液室の前記流路断面積よりも大きいことを特徴とするものである。
【0011】
噴射タイミングが後のノズル列に連通する共通液室の流路断面積を大きくすることにより、この共通液室の流路抵抗を小さくすることができる。尚、本発明において、共通液室の「液体流動方向」とは、共通液室の、液体供給部との連通部分から、液体供給部から離れた末端部分へ向かう、液体の流線に沿った方向のことをいう。
【0012】
第3の発明の液滴噴射装置は、前記第2の発明において、前記ノズル列及び前記共通液室を含む液体流路が形成された流路構造体を有し、前記流路構造体は、それぞれ前記液体流路の一部を形成する流路穴を有するプレートが複数枚積層された構造を有し、
前記共通液室は、共通液室用の流路穴が形成されたプレートに、別のプレートが積層されて前記共通液室用の流路穴がプレートの積層方向に塞がれることによって形成されるとともに、この共通液室内を、前記プレートの面方向に沿って液体が流れるように前記液体流路が構成され、
噴射タイミングが後のノズル列に連通する前記共通液室の、前記液体流動方向と直交する断面における前記プレートの面方向に沿った幅が、噴射タイミングが先のノズル列に連通する前記共通液室の幅よりも大きいことを特徴とするものである。
【0013】
また、第4の発明の液滴噴射装置は、前記第2の発明において、前記ノズル列及び前記共通液室を含む液体流路が形成された流路構造体を有し、前記流路構造体は、それぞれ前記液体流路の一部を形成する流路穴を有するプレートが複数枚積層された構造を有し、
前記共通液室は、共通液室用の流路穴が形成されたプレートに、別のプレートが積層されて前記共通液室用の流路穴がプレートの積層方向に塞がれることによって形成されるとともに、この共通液室内を、前記プレートの面方向に沿って液体が流れるように前記液体流路が構成され、
噴射タイミングが後のノズル列に連通する前記共通液室の、前記液体流動方向と直交する断面における前記プレートの厚み方向に沿った深さが、噴射タイミングが先のノズル列に連通する前記共通液室の深さよりも大きいことを特徴とするものである。
【0014】
上記第3の発明及び第4の発明では、ノズル列や共通液室等が形成された流路構造体が、それぞれ流路穴が形成された複数枚のプレートが積層された構造を有する。そして、共通液室は、共通液室用の流路穴が形成されたプレートが、これに積層された別のプレートによって塞がれることによって形成されている。また、共通液室においては、プレートの面方向に沿って液体が流れるから、共通液室の流路断面積は、プレートの面方向と直交する断面の面積となる。
【0015】
その上で、第3の発明では、共通液室の、プレートの面方向に沿った幅を大きくすることによって、共通液室の流路断面積を大きくしている。この場合は、共通液室用の流路穴が形成されたプレートの厚みを大きくしたり、プレートの枚数を増やしたりする必要がない。
【0016】
一方、第4の発明では、共通液室の、プレートの厚み方向の深さを大きくすることによって、共通液室の流路断面積を大きくしている。この場合は、共通液室の幅が大きくならないことから、装置の平面的なサイズが大型化することがない。
【0017】
第5の発明の液滴噴射装置は、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記複数のノズル列は、前記第2方向における一方側に位置するものから順に液滴を噴射するように構成され、前記一方側に位置する前記ノズル列に連通する前記共通液室の流路抵抗よりも、前記第2方向における他方側に位置する前記ノズル列に連通する前記共通液室の流路抵抗が小さいことを特徴とするものである。
【0018】
第2方向に並ぶ複数のノズル列の、一方側から順に液滴を噴射していく場合は、噴射タイミングが後となる、他方側のノズル列に連通する共通液室の流路抵抗を小さくすればよい。
【0019】
第6の発明の液滴噴射装置は、前記第5の発明において、3以上の前記共通液室を有し、前記3以上の共通液室のうち、前記他方側の端のノズル列に連通する共通液室を除く、残りの共通液室の流路抵抗は互いに等しく、前記他方側の端のノズル列に連通する共通液室の流路抵抗のみ小さくなっていることを特徴とするものである。
【0020】
共通液室が3以上ある場合に上述した圧力低下が最も大きくなるのは、最後に噴射を開始するノズル列に対応した共通液室であるから、本発明では、この一番厳しい条件にある共通液室のみ、流路幅や流路深さを大きくするなどして流路抵抗を小さくする。一方、先に噴射を行うノズル列に連通した他の共通液室については、それほど大きな圧力低下は生じないことから、流路抵抗を小さくしなくとも問題は生じない。そこで、本当に必要な一部の共通液室のみ流路抵抗を小さくすることで、流路抵抗を下げることによる装置の大型化を極力抑えることができる。
【0021】
第7の発明の液滴噴射装置は、前記第5又は第6の発明において、前記液滴噴射装置が、前記第2方向に沿って往復移動可能であって、前記第2方向への移動中に、その移動方向の先頭側に位置する前記ノズル列から順に液滴を噴射するものであり、単位時間当たりに前記複数のノズルから噴射する液体の総量が所定量以上である場合には、前記第2方向の前記一方側に移動する場合にのみ、前記ノズル列からの液滴噴射を行い、単位時間当たりに前記複数のノズルから噴射する液体の総量が所定量未満である場合には、前記第2方向の前記一方側に移動する場合と、前記他方側に移動する場合の、両方において、前記ノズル列からの液滴噴射を行うことを特徴とするものである。
【0022】
液滴噴射装置が、第2方向に移動しながら液滴を噴射する構成の場合に、単位時間当たりの液体の噴射総量(以下、デューティともいう)が所定量以上の場合には、全てのノズル列において液体の消費量が多くなることから、上述した、後のタイミングで噴射する共通液室内の圧力低下も大きくなる。そこで、このような場合には、第2方向一方側に移動するときにのみ液滴噴射を行うことで、第2方向他方側に位置する、流路抵抗が小さい共通液室に連通したノズル列の噴射順が後になるようにする。一方、デューティが所定量未満の場合には、後のタイミングで噴射する共通液室内における圧力低下が小さくなるため、流路抵抗が大きい共通液室に連通したノズル列の、噴射タイミングが後になっても問題はないことから、第2方向他方側に移動するときにも液滴噴射を行う。これにより液滴噴射に要する時間を短縮できる。
【0023】
第8の発明の液滴噴射装置は、前記第1〜第7の何れかの発明において、前記共通液室は、これに連通する前記ノズル列に沿って前記第1方向に延在し、前記複数の共通液室は、それらの前記第1方向における一端部において前記液体供給部とそれぞれ連通するとともに、前記第1方向における他端部において互いに連通していることを特徴とするものである。
【0024】
共通液室がノズル列に沿って延在する構成において、共通液室の長さ方向途中部において他の共通液室と連通させようとすると、共通液室間の連通部分とノズル列とが干渉しないように流路構造を工夫する必要があり、流路構造が複雑になりかねないことから、複数の共通液室をそれらの末端部分で連通させることが好ましい。また、液体供給部から離れた共通液室の末端ほど液体供給不足が生じやすいことから、末端部分において他の共通液室と連通させることは、液体供給不足解消の観点からも効果的である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、噴射タイミングが後のノズル列に連通する共通液室の流路抵抗が小さくなっていることから、この共通液室に対して液体供給部から速やかに液体が供給される。従って、噴射タイミングが先のノズル列から液滴が噴射されたときに、後のノズル列に連通する共通液室内の圧力が大きく低下することが防止され、後のノズル列の噴射特性の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態のインクジェットプリンタの上面図である。
【図2】インクジェットヘッドの平面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】3本のマニホールドにそれぞれ連通するノズル列の噴射タイミングにおける、マニホールド間のインクの流れを説明する図である。
【図6】プリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】変更形態のインクジェットヘッドの図4相当の断面図である。
【図8】別の変更形態のインクジェットヘッドの図4相当の断面図である。
【図9】さらに別の変更形態のインクジェットヘッドの平面図である。
【図10】さらに別の変更形態のインクジェットヘッドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の上面図である。まず、図1を参照してインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、記録用紙100が載置されるプラテン2と、このプラテン2と平行な方向(走査方向)に往復移動可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4(本発明の液滴噴射装置)と、記録用紙100を走査方向と直交する搬送方向に搬送する搬送機構5と、インクジェットプリンタ1の全体制御を司る制御装置6等を備えている。
【0028】
プラテン2の水平な上面には、被記録媒体である記録用紙100が載置される。また、プラテン2の上方(図1の紙面手前側)には、左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール10,11が設けられ、キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10,11に沿って走査方向に往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ3には、2つのプーリ12,13間に巻き掛けられた無端ベルト14が連結されており、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が走行駆動されたときに、キャリッジ3は、無端ベルト14の走行に伴って走査方向に移動する。
【0029】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3の下部に取り付けられており、プラテン2の上面と平行な、インクジェットヘッド4の下面(図1の紙面向こう側の面)が、複数のノズル43が開口する液滴噴射面となっている。図示は省略するが、このインクジェットヘッド4は、インクを貯留するインクカートリッジとチューブで接続されている。そして、インクジェットヘッド4は、インクカートリッジから供給されたインクを、複数のノズル43からプラテン2に載置された記録用紙100に対して噴射する。
【0030】
搬送機構5は、搬送方向に沿ってプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有する。搬送ローラ18,19は搬送モータ16(図6参照)により駆動されることにより、プラテン2上に載置された記録用紙100を搬送方向に搬送する。
【0031】
以上の構成を有するインクジェットプリンタ1は、2つの搬送ローラ18,19によって記録用紙100を搬送方向に搬送しつつ、この記録用紙100に対して、キャリッジ3とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド4からインクを噴射することにより、記録用紙100に画像や文字を記録する。
【0032】
次に、インクジェットヘッド4について説明する。図2は、インクジェットヘッド4の平面図、図3は、図2の一部拡大図、図4は、図3のIV-IV線断面図である。図2〜図4に示すように、インクジェットヘッド4は、ノズル43や圧力室42等のインク流路が形成された流路ユニット20(流路構造体)と、圧力室42内のインクに圧力(噴射エネルギー)を付与する圧電アクチュエータ21とを備えている。
【0033】
まず、流路ユニット20について説明する。図4に示すように、流路ユニット20は、それぞれインク流路の一部を形成する流路穴が形成された、キャビティプレート30、ベースプレート31、マニホールドプレート32、及びノズルプレート33の4枚のプレートが、上下に積層された構造を有する。これら4枚のプレート30〜33は接着剤によって互いに接合されている。また、最下層のノズルプレート33を除く3枚のプレート30〜32は、それぞれ、ステンレス板やニッケル合金鋼板などの金属プレートである。一方、最下層のノズルプレート33は、ポリイミド等の合成樹脂材料で形成されている。
【0034】
図2〜図4に示すように、4枚のプレート30〜33の積層体である流路ユニット20は、インクカートリッジ(図示省略)とチューブで接続されるインク供給口40と、インク供給口40に共通に連通し、互いに平行に延びる3本のマニホールド41(共通液室)と、マニホールド41から圧力室42を介してノズル43に至る多数の個別インク流路44を有する。
【0035】
流路ユニット20のインク流路構造について詳細に説明する。まず、流路ユニット20の最下層のノズルプレート33には複数のノズル43が搬送方向に沿って所定ピッチPで配列され、走査方向に並ぶ6列のノズル列45(45a〜45f)をなしている。即ち、本実施形態では、搬送方向がノズル43の配列方向であって、本願の第1方向に相当し、また、走査方向がノズル列45a〜45fが並ぶ方向であって、本願の第2方向に相当する。また、6列のノズル列45a〜45fは、それぞれに属するノズル43の数は全て等しくなっている。さらに、これら6列のノズル列45a〜45fは、走査方向の一方側に位置しているものから順に、搬送方向の位置が前記所定ピッチPの6分の1(P/6)ずつずれている。
【0036】
一方、最上層に位置するキャビティプレート30には、ノズル43と同様に搬送方向に所定ピッチPで配列された複数の圧力室42が形成され、図2に示すように、複数の圧力室42は、6列のノズル列45に対応して、走査方向に並ぶ6列の圧力室列をなしている。また、図4に示すように、キャビティプレート30とノズルプレート33の間の2枚のプレート31,32には、圧力室42とノズル43とを連通させる連通流路46が形成されている。さらに、図2に示すように、キャビティプレート30の搬送方向における一端部(図2における上側の端部)には、図示しないインクカートリッジとチューブを介して接続される、1つのインク供給口40(液体供給部)が形成されている。
【0037】
図4に示すように、マニホールドプレート32には、このマニホールドプレート32を厚み方向に貫通し、且つ、搬送方向に延びる3つの長穴25が形成されている。そして、これら3つの長穴25が上側のベースプレート31と下側のノズルプレート33によって、上下方向(プレートの積層方向)から塞がれることにより、3本のマニホールド41(41a〜41c)が構成されている。
【0038】
図2に示すように、平面視で、2列のノズル列45(圧力室列)の間に、1本のマニホールド41がノズル列45に沿って搬送方向に延在しており、このマニホールド41は、その両側に位置する2列の圧力室列にそれぞれ属する圧力室42と連通している。つまり、1本のマニホールド41が、2列の圧力室列(2列のノズル列45)に対してインクを供給する構成となっている。尚、図2に示すように、3本のマニホールド41a〜41cの長さ方向一端部(図2における上側の端部)は、接続流路48を介して最上層のキャビティプレート30に形成された1つのインク供給口40と共通に連通している。また、3本のマニホールド41a〜41cは、インク供給口40との連通部分と反対側の、末端部分(図2の下側の端部)において、接続流路49によって互いに連通した構成となっている。
【0039】
さらに、3本のマニホールド41a〜41c(長穴25)の幅W(インクが流れる方向である、マニホールド41の長さ方向と直交する断面において、マニホールドプレート32の面方向に沿った長さ)は同一ではない。具体的には、図2に示すように、図中右側のマニホールド41cの幅Wcが最も小さく、中央のマニホールド41b、左側のマニホールド41aの順に幅Wが広くなっている。また、先にも説明したように、3つのマニホールド41a〜41cを形成する3つの長穴25はそれぞれマニホールドプレート32を貫通する穴であり、それ故、3つのマニホールド41a〜41cの深さはそれぞれマニホールドプレート32の厚みに等しい。従って、3つのマニホールド41a〜41cの流路断面積は幅Wに比例し、流路抵抗は幅Wに反比例する。つまり、図中左側に位置するものほど、マニホールド41の流路抵抗が小さくなっている。マニホールド41を上記の構成としている理由については、後ほど詳細に説明する。
【0040】
図4に示すように、キャビティプレート30とマニホールドプレート32との間に位置するベースプレート31には、マニホールド41と、これに対応する2列の圧力室列に属する圧力室42とをそれぞれ連通させる複数の連通流路47が形成されている。
【0041】
以上説明した4枚のプレート30〜33が積層した状態で接合されることにより、図4に示すように、流路ユニット20内に、マニホールド41から連通流路47、圧力室42、及び、連通流路46を経由してノズル43に至る、多数の個別インク流路44が形成される。
【0042】
次に、圧電アクチュエータ21について説明する。図2〜図4に示すように、圧電アクチュエータ21は、流路ユニット20(キャビティプレート30)の上面に接合された振動板50と、この振動板50の上面に複数の圧力室42と対向するように形成された圧電層51と、この圧電層51の上面に配置された複数の個別電極52とを備えている。
【0043】
振動板50は、平面視で略矩形状の金属板であり、例えば、ステンレス鋼等の鉄系合金、銅系合金、ニッケル系合金、あるいは、チタン系合金などからなる。この振動板50は、流路ユニット20の上面に複数の圧力室42を覆うように接合されている。また、導電性を有する振動板50の上面は、複数の個別電極52との間で圧電層51を挟み、この圧電層51に厚み方向の電界を生じさせる共通電極を兼ねており、常時グランド電位に保持されている。
【0044】
振動板50の上面(圧力室42と反対側の面)には、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする、圧電材料からなる圧電層51が形成されている。この圧電層51は、複数の圧力室42に跨って平面的に形成されている。
【0045】
圧電層51の上面には、圧力室42よりも一回り小さい略楕円形の平面形状を有する複数の個別電極52が形成されている。これら複数の個別電極52は、対応する圧力室42の中央部と対向する位置にそれぞれ配置されている。また、個別電極52は金、銅、銀、パラジウム、白金、あるいは、チタンなどの導電性材料からなる。
【0046】
圧電層51の上面には、複数の個別電極52の端部(平面視でノズル43と反対側の端部)から、圧力室42と対向しない領域までそれぞれ引き出された複数の接点部55が設けられている。これら複数の接点部55には、図示しないフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit(FPC))が接続される。そして、このFPCに実装されたドライバIC56から、接点部55を介して複数の個別電極52にそれぞれ駆動電圧が印加される。
【0047】
次に、ノズル43からインクを噴射させる際の圧電アクチュエータ21の作用について説明する。ある個別電極52に対してドライバIC56から駆動電圧が印加されると、圧電層51上側の個別電極52とグランド電位に保持されている圧電層51下側の共通電極としての振動板50の間に電位差が生じ、個別電極52と振動板50の間に挟まれた部分に厚み方向の電界が生じる。そして、圧電層51の分極方向と電界の方向とが同じ場合には、圧電層51はその分極方向である厚み方向に伸びて面方向に収縮し、この圧電層51の収縮変形に伴って、振動板50の圧力室42と対向する部分が圧力室42側に凸となるように撓む(ユニモルフ変形)。このとき、圧力室42の容積が減少することからその内部のインクに圧力(噴射エネルギー)が付与され、圧力室42に連通するノズル43からインクの液滴が噴射される。
【0048】
(マニホールド41についての詳細説明)
ところで、いわゆるベタ印字のような、デューティの高い(インクジェットヘッド4から単位時間当たりに噴射するインク総量が多い)記録動作を行う場合、各ノズル列45のほとんど全てのノズル43からインクの液滴を噴射することになる。このような場合に、1列のノズル列45の多数のノズル43から同時にインクを噴射すると、このノズル列45におけるインクの消費量が多くなって、インク供給口40からのマニホールド41へのインクの供給が追いつかなくなる。特に、ノズル列45の末端側(インク供給口40から離れる側)のノズル43においてインク供給不足が生じやすく、このノズル43に噴射不良が生じる虞がある。
【0049】
また、本実施形態では、1本のマニホールド41からその両側の2列のノズル列45にインクを供給する構成が採用されているが、上記2列のノズル列45の噴射タイミングが異なる場合には、また別の問題も生じうる。複数のノズル列45の噴射タイミングが異なる例としては、複数のノズル列45から噴射された液滴の着弾位置(ドット形成位置)を、記録用紙100上の同じ位置に重ね合わせて、記録用紙100上に1本の太い(濃い)線を形成する場合が挙げられる。例えば、走査方向の位置が異なる2列のノズル列45のドット形成位置を合わせるには、キャリッジ3の移動方向下流側に位置する一方のノズル列45が液滴を噴射した後、他方のノズル列45が先のノズル列45が液滴を噴射した位置に到達したときに、この他方のノズル列45が液滴を噴射する。
【0050】
そして、1本のマニホールド41に連通する2列のノズル列45の噴射タイミングが異なる場合に、一方のノズル列45からインクの噴射がなされた直後には、多量のインクが消費されることによってマニホールド41内の圧力が急激に低下する。そのため、同一のマニホールド41に連通する他方のノズル列45においてノズル43のメニスカスが内側に引っ張られた状態で噴射が行われることになり、この他方のノズル列45の噴射特性(液適量や液滴速度)が低下する。
【0051】
上記の観点から、ノズル列45の噴射によって多量のインクが消費されたときに、マニホールド41にインクを速やかに補充して、マニホールド41内の圧力が大きく低下することを防止することが好ましい。この点、本実施形態においては、3本のマニホールド41a〜41cの各々は、インク供給口40との連通部分とは反対側の末端部分において他のマニホールド41と連通している。これにより、あるマニホールド41に連通するノズル列45からインクが噴射されたときに、インク供給口40からの供給とは別に、他のマニホールド41からもインクが供給されるため、マニホールド41内の圧力が大きく低下することが防止される。また、1つのマニホールド41に2列のノズル列45が連通している場合においては、噴射タイミングが先となる一方のノズル列45の噴射によるマニホールド41内の圧力低下が小さく抑えられることから、遅れて噴射する他方のノズル列45への影響が低減される。
【0052】
尚、3本のマニホールド41a〜41cは、必ずしも末端部分で連通している必要はない。但し、あるマニホールド41をその長さ方向途中部において他のマニホールド41と連通させようとすると、マニホールド41間の連通部分とノズル列45とが干渉しないようにインクの流路構造を工夫する必要があるため、流路構造を簡単なものとする点では末端部分で連通させることが有利である。また、インク供給口40から離れた末端部分ほどインク供給不足が生じやすいことから、この末端部分において他のマニホールド41と連通させることは、インク供給不足を解消する観点からも効果的である。
【0053】
ところで、上記のように、3本のマニホールド41a〜41c同士が互いに連通した構成であると、3本のマニホールド41a〜41c間でノズル列45の噴射タイミングが異なる場合に、先にノズル列45の噴射が行われたマニホールド41における圧力低下が他のマニホールド41にも伝わり、後のノズル列45の噴射に悪影響を及ぼす虞がある。
【0054】
3本のマニホールド41a〜41cはそれぞれ同数(2列)のノズル列45が連通するものであって、供給するインク量自体は3本のマニホールド41a〜41cで差はなく、本来は、3本のマニホールド41a〜41c間で流路抵抗を異ならせる必要性はない。しかしながら、上記の問題を解決するために、本実施形態では、図2に示すように、3本のマニホールド41a〜41cの幅が異なった構成となっている。図5は、3本のマニホールド41a〜41cにそれぞれ連通するノズル列45の噴射タイミングにおける、マニホールド41間のインクの流れを説明する図である。尚、この図5では、説明をわかりやすくするために、インクジェットヘッド4のマニホールドプレート32よりも上に存在する、圧電アクチュエータ21、キャビティプレート30、及び、ベースプレート31を省略し、マニホールドプレート32の上面図で示している。
【0055】
図5においては、インクジェットヘッド4はキャリッジ3とともに図中右方(図2のA方向)へ移動するものとし、右側(移動方向先頭側)に位置するノズル列45fから順に、記録用紙100の幅方向所定位置に到達したタイミングでインクが噴射される。つまり、右側のマニホールド41c、中央のマニホールド41b、左側のマニホールド41aの順に、対応するノズル列45のインクの噴射が行われる。これに対して、ノズル列45の噴射タイミングが最後となる、左側のマニホールド41aの幅Wcが最も広く、中央のマニホールド41b、右側のマニホールド41cの順に幅が狭くなっている。
【0056】
インクジェットヘッド4がインクを噴射していない待機状態から、キャリッジ3が図5の右方への移動を開始すると、まず、図5(a)に示すように、右側のマニホールド41cに連通する2列のノズル列45f,45eにおいてこの順にインクの噴射が行われる。このときのインクの消費によってマニホールド41c内の圧力が一時的に低下するが、このマニホールド41cに対して、上流側のインク供給口40からだけでなく、末端部分で連通した他の2本のマニホールド41a,41bからもインクが供給される。
【0057】
一方、中央のマニホールド41bと左側のマニホールド41aにおいては、右側のマニホールド41cにインク供給することによって、それぞれ圧力が低下する。この状態で、次に、中央のマニホールド41bに連通する2列のノズル列45d,45cにおいてこの順にインクの噴射が行われる。ここで、中央のマニホールド41bの幅Wbは右側のマニホールド41cの幅Wcよりも大きく、流路抵抗が小さくなっている。そのため、右側のマニホールド41cへのインク供給によってマニホールド41b内の圧力が低下したときに、インク供給口40からインクが速やかに補充される。従って、ノズル列45d,45cの噴射前に、圧力が大きく低下することが防止され、ノズル列45b,45aの噴射特性の低下を抑制できる。
【0058】
尚、中央のマニホールド41bに連通するノズル列45d,45cの噴射が行われるときには、左側のマニホールド41aからもインクが供給される。一方、右側のマニホールド41cとの間では、マニホールド41bからマニホールド41cへ向かう、先のインク供給の流れがまだ残存しており、右側のマニホールド41cから中央のマニホールド41bへのインクの供給はほとんどない。
【0059】
さらに、左側のマニホールド41aに連通する2列のノズル列45b,45aにおいてこの順にインクの噴射が行われる。この左側のマニホールド41aは、3本のマニホールド41の中でノズル列45の噴射が最も遅く、他のマニホールド41b,41cのノズル列45の噴射時にそれぞれインクが流出することから圧力の低下が大きくなりやすい。しかし、このマニホールド41aの幅Waは、他の2本のマニホールド41b,41cの幅よりも大きく、流路抵抗が最も小さくなっていることから、圧力が低下したときにマニホールド41aにはインク供給口40から速やかにインクが供給される。従って、ノズル列45b,45aの噴射前に、マニホールド41aの圧力が大きく低下することが防止され、ノズル列45b,45aの噴射特性の低下を抑制できる。
【0060】
次に、プリンタ1の電気的構成について、図6のブロック図を参照して説明する。図6に示すように、制御装置6は、プリンタ1の記録用紙100への記録動作を制御する記録制御部60を備えている。記録制御部60は、PC70から入力された記録する画像や文字等に関するデータに基づいて、インクジェットヘッド4のドライバIC56、キャリッジ3を駆動するキャリッジ駆動モータ15、搬送機構5の搬送ローラ18,19を駆動する搬送モータ16等を制御することで、プリンタ1に、記録用紙100に所望の画像や文字等を記録させる。
【0061】
ところで、ベタ印字などのデューティが高い記録動作を行う場合には、幅の広いマニホールド41aに連通したノズル列45a,45bの噴射が後になるようにする必要がある。即ち、インクジェットヘッド4を搭載したキャリッジ3が右側(図2のA方向)に移動したときにのみインクの噴射を行い、キャリッジ3が左側(図2のB方向)に移動するときにはインクの噴射を行わせない(右方向への片方向印字)。
【0062】
しかし、テキスト印字などのデューティが低い記録動作を行う場合には、1列のノズル列45において同時にインクを噴射するノズル43の数は少なく、マニホールド41のインク消費量は少なくなる。そのため、噴射タイミングが後のノズル列45に連通するマニホールド41において圧力が低下してもその程度は小さく、後のノズル列45の噴射特性にほとんど影響が出ない。つまり、流路抵抗が大きいマニホールド41に連通したノズル列45の、噴射タイミングが後になっても問題はない。それ故、デューティが低い場合には、キャリッジ3が右側に移動するときだけでなく、左側に移動するときにおいてもインクの噴射を行わせることができる(双方向印字)。
【0063】
そこで、記録制御部60は、PC70から記録する画像や文字等に関するデータが入力されたときに、入力されたデータから、その画像等を記録する際にインクジェットヘッド4が単位時間当たりに噴射するインクの総量(デューティ)を求める。そして、このデューティが所定値以上である場合には、インクジェットヘッド4に右方向の片方向印字を行わせる一方、デューティが所定値未満である場合には、インクジェットヘッド4に双方向印字を行わせる。これにより、一般的に高速での記録が求められる、低いデューティの記録動作に要する時間を短縮することができる。
【0064】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0065】
1]マニホールド41の幅を大きくするとインクジェットヘッド4の大型化につながるため、流路抵抗を小さくすることが本当に必要なマニホールド41のみ幅を大きくすることが好ましい。この観点からは、図2においてA方向への移動時にインクを噴射するとしたときに、移動方向先頭側の2本のマニホールド41b,41cについては幅W(流路抵抗)が同じで、ノズル列45の噴射タイミングが最も遅くなる左側のマニホールド41aのみ、他の2本のマニホールド41b,41cよりも幅Wが大きくなっていてもよい。
【0066】
2]前記実施形態では、マニホールド41の幅を大きくすることによって、マニホールド41の流路断面積を大きくし、ひいては、流路抵抗を小さくしているが、マニホールドプレートの厚み方向に沿ったマニホールド41の深さを大きくすることによって流路抵抗を小さくしてもよい。
【0067】
マニホールド41の深さを大きくするには、図7に示すように、マニホールド41を形成するマニホールドプレート32が複数枚(32a,32b)積層された構成とし、(b)のように、貫通状の長穴25が形成されるマニホールドプレート32の枚数を(a)よりも増やすことにより、(a)と比べてマニホールド41の流路抵抗を小さくしてもよい。あるいは、図8に示すようにマニホールドプレート32を厚みの大きいものとした上で、(b)のように、1枚のマニホールド41に形成される長穴25の深さを(a)よりも深くすることにより、(a)と比べてマニホールド41の流路抵抗を小さくしてもよい。
【0068】
このように、マニホールド41の深さを大きくことによって流路抵抗を小さくする場合、幅を大きくする場合に対して、インクジェットヘッド4の平面的なサイズが大きくならないというメリットがある。しかしながら、幅を大きくする場合に対するデメリットも存在する。
【0069】
マニホールド41の深さを大きくすると、その分、インクジェットヘッド4全体の厚みが大きくなり、厚み方向にサイズが大きくなる。また、図7や図8の流路構造では、圧力室42とノズル43を連通させる連通流路46の長さが長くなり、ノズル43から液滴を噴射させるために圧力室42内により多くのエネルギーを与えないといけなくなるため、圧電アクチュエータ21の駆動効率が低下する。また、図7のように、マニホールドプレート32の枚数を増やすと部品数が増えるためにコストが増加する。一方、図8のように、1枚のマニホールドプレート32の厚みが大きいと、連通流路46等の、マニホールド41以外の流路を形成する穴径の小さな流路穴を、エッチングで形成することが難しくなるという問題もある。
【0070】
3]マニホールド41の流路抵抗を小さくするためにマニホールド41の流路断面積を大きくする必要は必ずしもなく、流路形状を変えることによっても可能である。例えば、流路抵抗を小さくするマニホールド41のインク供給口40からの距離を、他のマニホールド41と比べて短くしてもよい。また、流路抵抗を小さくするマニホールド41の流路形状を、他のマニホールド41と比べて曲がりが少なく直線的な流路形状にすればよい。あるいは、マニホールド41の内面の表面粗さを小さくして流路抵抗を下げることも可能である。
【0071】
4]前記実施形態では、各マニホールド41に2列のノズル列45が連通していたが、図9に示すように、各マニホールド41に1本のノズル列45が連通した構成であってもよい。
【0072】
5]前記実施形態では、3本のマニホールド41が1つのインク供給口40に共通に連通していたが、図10に示すように、流路ユニット20にマニホールド41と同数のインク供給口40が設けられ、1本のマニホールド41が対応したインク供給口40に連通した構成であってもよい。
【0073】
6]マニホールド41の数は、ノズル列45の数など、他の条件に応じて適宜変更可能である。例えば、互いに連通するマニホールド41が2本のみであってもよいし、4本以上のマニホールド41が互いに連通した構成であってもよい。また、全てのマニホールド41について連通するノズル列45の数が同数である必要はなく、一部のマニホールド41に連通するノズル列45の数が、残りのマニホールド41と異なっていてもよい。但し、このような構成に対して本発明を適用した場合には、全てのマニホールド41のうちの、連通するノズル列45の数が等しい2以上のマニホールド41の間で、流路抵抗を異ならせることになる。
【0074】
7]前記実施形態は、走査方向に移動しながら記録用紙にインクを噴射する、いわゆるシリアルタイプのインクジェットヘッドに本願発明を適用した例であるが、インクジェットヘッドとしては、他に、記録用紙の幅と同等の長さを有するノズル列を有し、位置が固定された状態で搬送されてくる記録用紙に対してインクを噴射する、いわゆるラインヘッドも知られている。そして、このラインヘッドであってもシリアルヘッドと同様の問題が生じることは容易に理解しうることから、ラインヘッドに対しても本願発明を適用することは可能である。
【0075】
以上説明した実施形態及びその変更形態は、液滴噴射装置の一種である、インクを噴射するインクジェットヘッドに本発明を適用した例であるが、本発明の適用対象はこれには限られない。即ち、噴射される液体の種類、用途、技術分野に関係なく、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェットプリンタ
4 インクジェットヘッド
20 流路ユニット
21 圧電アクチュエータ
25 長穴
30 キャビティプレート
31 ベースプレート
32 マニホールドプレート
33 ノズルプレート
40 インク供給口
41 マニホールド
43 ノズル
45 ノズル列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を噴射するノズルが所定の第1方向に沿って配列されてなるノズル列であって、前記第1方向と交差する第2方向に並べて配置された、複数のノズル列と、
液体供給部に連通し、前記液体供給部から供給された液体を前記複数のノズル列に供給する複数の共通液室と、
前記複数のノズル列を構成するノズルのそれぞれについて、液体に噴射エネルギーを付与するアクチュエータを備え、
前記複数の共通液室には、それぞれ同数の前記ノズル列が連通し、
前記複数の共通液室の各々は、他の共通液室と、前記液体供給部との連通部分とは別の部分において互いに連通しており、
前記複数のノズル列は、互いに異なる噴射タイミングで液滴を噴射するように構成され、
噴射タイミングが後のノズル列に連通する前記共通液室の流路抵抗が、噴射タイミングが先のノズル列に連通する前記共通液室の流路抵抗よりも小さいことを特徴とする液滴噴射装置。
【請求項2】
噴射タイミングが後のノズル列に連通する前記共通液室の、液体流動方向と直交する断面における流路断面積が、噴射タイミングが先のノズル列に連通する前記共通液室の前記流路断面積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の液滴噴射装置。
【請求項3】
前記ノズル列及び前記共通液室を含む液体流路が形成された流路構造体を有し、
前記流路構造体は、それぞれ前記液体流路の一部を形成する流路穴を有するプレートが複数枚積層された構造を有し、
前記共通液室は、共通液室用の流路穴が形成されたプレートに、別のプレートが積層されて前記共通液室用の流路穴がプレートの積層方向に塞がれることによって形成されるとともに、この共通液室内を、前記プレートの面方向に沿って液体が流れるように前記液体流路が構成され、
噴射タイミングが後のノズル列に連通する前記共通液室の、前記液体流動方向と直交する断面における前記プレートの面方向に沿った幅が、噴射タイミングが先のノズル列に連通する前記共通液室の幅よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の液滴噴射装置。
【請求項4】
前記ノズル列及び前記共通液室を含む液体流路が形成された流路構造体を有し、
前記流路構造体は、それぞれ前記液体流路の一部を形成する流路穴を有するプレートが複数枚積層された構造を有し、
前記共通液室は、共通液室用の流路穴が形成されたプレートに、別のプレートが積層されて前記共通液室用の流路穴がプレートの積層方向に塞がれることによって形成されるとともに、この共通液室内を、前記プレートの面方向に沿って液体が流れるように前記液体流路が構成され、
噴射タイミングが後のノズル列に連通する前記共通液室の、前記液体流動方向と直交する断面における前記プレートの厚み方向に沿った深さが、噴射タイミングが先のノズル列に連通する前記共通液室の深さよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の液滴噴射装置。
【請求項5】
前記複数のノズル列は、前記第2方向における一方側に位置するものから順に液滴を噴射するように構成され、
前記一方側に位置する前記ノズル列に連通する前記共通液室の流路抵抗よりも、前記第2方向における他方側に位置する前記ノズル列に連通する前記共通液室の流路抵抗が小さいことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液滴噴射装置。
【請求項6】
3以上の前記共通液室を有し、
前記3以上の共通液室のうち、前記他方側の端のノズル列に連通する共通液室を除く、残りの共通液室の流路抵抗は互いに等しく、前記他方側の端のノズル列に連通する共通液室の流路抵抗のみ小さくなっていることを特徴とする請求項5に記載の液滴噴射装置。
【請求項7】
前記液滴噴射装置が、前記第2方向に沿って往復移動可能であって、前記第2方向への移動中に、その移動方向の先頭側に位置する前記ノズル列から順に液滴を噴射するものであり、
単位時間当たりに前記複数のノズルから噴射する液体の総量が所定量以上である場合には、前記第2方向の前記一方側に移動する場合にのみ、前記ノズル列からの液滴噴射を行い、
単位時間当たりに前記複数のノズルから噴射する液体の総量が所定量未満である場合には、前記第2方向の前記一方側に移動する場合と、前記他方側に移動する場合の、両方において、前記ノズル列からの液滴噴射を行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の液滴噴射装置。
【請求項8】
前記共通液室は、これに連通する前記ノズル列に沿って前記第1方向に延在し、
前記複数の共通液室は、それらの前記第1方向における一端部において前記液体供給部とそれぞれ連通するとともに、前記第1方向における他端部において互いに連通していることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の液滴噴射装置。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−75404(P2013−75404A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216079(P2011−216079)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】