説明

液状体の吐出方法

【課題】カラーフィルターを製造する方法として、液状体を複数のノズルから液滴として被吐出体に吐出することで液状体を着弾/塗布する方法が知られている。カラーフィルターを構成する1回の吐出で形成されたピクセルの特性は、2回の吐出を受けて形成されたピクセルと特性が異なる。1回目の吐出を受けた後、液滴は乾燥を始める。その状態で2回目の吐出を受けると、ピクセル内の均一性が悪くなり、むらが発生するという課題があった。
【解決手段】1軸方向に沿って並び、液状体を吐出する複数のノズルNと、前記1軸方向に沿って配置された予備ノズルNKが備えられ、前記複数のノズルNを副走査方向に移動させるときに、副走査前の前記複数のノズルNにおける吐出パターンと、副走査後の前記複数のノズルNにおける吐出パターンとが少なくとも1回の副走査において同一となるように、副走査前後で前記予備ノズルNKによる吐出を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体の吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置のカラーフィルターや、有機EL素子を製造する方法として、例えば機能性材料を含む液状体を複数のノズルから液滴として被吐出体に吐出することで液状体を着弾/塗布する方法が知られている。
このような方法では、液状体に含まれる機能性材料を用いて、面内分布が少なく均一性が高い薄膜を被吐出体に形成するという観点から、複数のノズル間における液状体の吐出量は高い均一性を備えることが好ましい。吐出量の均一性が低いと、液状体の量や溶質の量にムラが生じるからである。
【0003】
複数のノズル間における吐出量の均一性を向上させるためには、特許文献1に記載された方法を活用することができる。この場合、複数のノズルのそれぞれに対応する各駆動素子には、複数種類の駆動信号のうちのいずれかが割り当てられる。吐出量が少ないノズルに対応する駆動素子に対しては、吐出量が多くなる駆動信号を割り当て、吐出量が多いノズルに対応する駆動素子に対しては、吐出量が少なくなる駆動信号を割り当てることで、吐出量の均一性が向上させてから本来の吐出動作を行わせる。
【0004】
また、複数のノズルを備えた吐出ヘッドの副走査方向の長さよりも被吐出体の幅が広い場合には、複数の吐出ヘッドを副走査方向に、間隔を空けるよう設ける構成が良く用いられる。
【0005】
各ノズルから吐出される液状体の量は、例えば隣り合うノズルの吐出状態に応じても微妙に変化する(所謂クロストーク)。そのため、カラーフィルターや、有機EL装置のように吐出領域内に繰り返しパターンを持ち、塗布パターンがほぼ固定されている場合には、各ノズルの吐出条件を前述した塗布パターンに合わせて、クロストーク特性も考慮して調整しておくことで、より吐出量の均一性を高くすることができる。また、カラーフィルターを構成するピクセルの特性は、吐出を受ける条件によっても変化する。例えば、2回の吐出を受けて形成されたピクセルは、1回の吐出で形成されたピクセルと特性が異なる。1回目の吐出を受けた後、液滴は乾燥を始める。その状態で2回目の吐出を受けると、ピクセル内の均一性が悪くなり、他のピクセルと比べ品質が低下し、むらが発生するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−174883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように調整された吐出ヘッドを用いて描画するとき、液状体の吐出を受ける被吐出体(例えば基板)の塗布パターンと、調整されたパターンとの間に、ずれが生じる場合がある。この場合、前述のように調整したパターンの繰り返しでは処理できなくなる。そのため、吐出ヘッドは調整されたパターンと異なるパターンで液状体の吐出を行うこととなる。そのため、各ノズルからの吐出量精度が低下するという課題があった。また、このずれがある場合、吐出ヘッドの一端側の一番端にあるノズルと、他端側の一番端にあるノズルとでピクセルが形成される場合が生じる。そのため、このピクセルは2回の吐出を受けて形成されることとなり、上記したように、カラーフィルターのピクセルにむらが生じるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の形態または適用例として実現され、上述の発明をさらに改善するものである。
【0009】
[適用例1]本適用例にかかる液状体の吐出方法は、1軸方向に沿って並び、液状体を吐出する複数のノズルと、前記液状体の吐出を受ける、前記複数のノズルと対向配置された被吐出体と、を備え、前記複数のノズルから前記液状体を前記被吐出体に吐出した後、前記複数のノズルと前記被吐出体とを相対的に副走査して移動させ、再び前記複数のノズルから前記液状体を前記被吐出体に吐出し、前記液状体の吐出パターンを前記被吐出体に形成する液状体の吐出方法であって、前記1軸方向に沿って並んだ前記複数のノズルの少なくとも片側に、前記1軸方向に沿って配置された予備ノズルが備えられ、前記複数のノズルを副走査方向に移動させるときに、副走査前の前記複数のノズルにおける吐出パターンと、副走査後の前記複数のノズルにおける吐出パターンとが少なくとも1回の副走査において同一となるように、副走査前後で前記予備ノズルによる吐出を制御することを特徴とする。
【0010】
これによれば、吐出パターンを保ちながら副走査を行うことができる。そのため、予め吐出パターンに合わせて吐出量分布を均一化しておくことができるので、吐出される液滴量を均一性高く保つことができる。
【0011】
[適用例2]上記適用例にかかる液状体の吐出方法であって、前記被吐出体でのパターン描画は、各前記パターンに対して、一回の吐出工程で描画されるよう、副走査前後で前記予備ノズルからの吐出動作を制御することを特徴とする。
【0012】
上記した適用例によれば、パターン描画は1回の吐出工程で形成される。連続したパターン描画が、例えば改行で2回の吐出で形成された場合、1回目に吐出された液状体が乾燥し始めた状態で2回目の液状体を受けることとなる。これに対して、1回の吐出で連続した吐出パターンに液状体を着弾させることで、連続した吐出パターンで形成されるため、2回の吐出工程を用いた場合と比べ高い均質性を備えさせることができる。
【0013】
[適用例3]上記適用例にかかる液状体の吐出方法であって、前記複数のノズルにおける吐出パターンは、複数の吐出パターンに対して対応すべく前記複数のノズル毎の吐出条件が求められており、前記複数のノズルにおける吐出回数に応じて、吐出パターンを切り替えることを特徴とする。
【0014】
上記した適用例によれば、複数のノズルの状態を均質な状態に保つことができる。副走査前後の複数のノズルにおける吐出パターンが同じものとなると、この状態で副走査を繰り返した場合、一定のノズルのみが吐出を行い続けることとなり、吐出を行わないノズルは、非吐出の状態を保つこととなる。そのため、ノズルの乾燥状態に差が生じるが、複数の吐出パターンを用いることで、ノズルの乾燥状態の均一性を向上させることが可能となる。
【0015】
[適用例4]上記適用例にかかる液状体の吐出方法であって、副走査前に吐出を行う前記予備ノズル数と、副走査後に吐出を行う前記予備ノズルの数の差を低減すべく演算を行い、副走査前に吐出を行う前記予備ノズル数と、副走査後に吐出を行う前記予備ノズル数との差を低減させることを特徴とする。
【0016】
上記した適用例によれば、液状体の吐出量を揃えて吐出を行うことができる。そのため、液状体の総流量が各吐出条件で近い値をとるため、液状体の液滴量を揃えることができる。なお、どちらを用いても総流量に差が出ない場合には、どちらを用いても良い。また、一塊のパターンの描画に際しては可能な限り改行無しで、一回の吐出工程で形成することを優先する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】液状体を吐出する液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図、(b)は、ノズルの配置を示す平面図。
【図3】予備ノズルを備えた有効ノズル列および予備ノズルの吐出パターン例を示す平面図。
【図4】(a)は予備ノズルを備えた有効ノズル列および予備ノズルの吐出パターン例を示す平面図、(b)は、ピクセルのレイアウトに沿って、同じパターンの繰り返しでいけるよう、吐出パターンを配置した平面図。
【図5】有効パターン内で2通りの吐出パターンを備える吐出パターンの平面図。
【図6】副走査方向に対して移動してきた吐出ヘッドのノズル列と、隣の吐出ヘッドの始点でのノズル列と一部が重なる場合についての対応を説明する平面図。
【図7】吐出パターンの設計手順をまとめたフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
【0019】
(装置構成)
図1は液状体を吐出する液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
液滴吐出装置100は、液状体10を液滴として吐出する吐出部が設けられた吐出ヘッド50、被吐出体としての基板Kに吐出して、所定の文字、図柄、画像、パターン、配線等を描画する装置である。本実施形態では、一定の周期を持つパターンで構成されるカラーフィルターや有機EL素子を主として描画対象としている。
液滴吐出装置100は、直線状に設けられた一対のガイドレール101と、ガイドレール101に設けられたエアースライダーとリニアモーター(図示せず)により一つの直線軸方向(本実施形態ではY軸方向とする)に移動する移動台103を備えている。移動台103上には、基板Kを載置するための載置テーブル105が設けられている。基板Kは、載置テーブル105に吸着固定されるように構成されている。
【0020】
載置テーブル105に対して移動台103と反対側の方向には、所定の距離をおいて一対のガイドレール102が設けられている。ガイドレール102はガイドレール101と直交する直線軸方向(本実施形態ではX軸方向とする)に延在するように設けられている。
そして、液滴吐出装置100には、この一対のガイドレール102に沿って移動するキャリッジ120が備えられている。このキャリッジ120は、その両側にキャリッジ120と一体若しくは別体でキャリッジ移動台112が設けられ、ガイドレール102に設けられたエアースライダーとリニアモーター(いずれも図示せず)により、X軸方向に沿って移動可能に構成されている。
【0021】
キャリッジ120には、その下方向(重力により引かれる方向)側に所定の配列方向を呈するように設けられた複数の吐出部と、吐出部毎に液状体10を吐出する吐出ヘッド50が備えられている。そして、図示しない液状体供給手段からキャリッジ120に供給された液状体10は、キャリッジ120内に形成された流路(図示せず)を経由して吐出ヘッド50に供給され、吐出部から液滴121(図2参照)として吐出する。
【0022】
また、液滴吐出装置100には、ガイドレール102の端部付近に吐出ヘッド50のメンテナンスユニットとして、吐出ヘッド50をメンテナンスするキャッピング装置130およびワイピング装置150を備えている。
キャッピング装置130は、凹部が形成されたホルダー132に弾性部材からなるキャッピング部材131がはめ込まれている。キャッピング装置130は、この凹部内を吸引する吸引機構を備えている。また、ホルダー132が昇降可能に構成され、吐出ヘッド50まで移動可能に構成されている。
ワイピング装置150には、二つの回転ローラー151と、その間に配置された受け台154を備えている。回転ローラー151の間には布状のワイプ材155が配置され、ワイプ材155を間欠送りできる機構を備えている。そして、ワイピング装置150は、昇降可能に構成され、吐出ヘッド50の近傍まで移動して、吐出ヘッド50とワイプ材155とが接触可能に構成されている。
【0023】
移動台103のY軸方向の移動、キャリッジ120に設けられたキャリッジ移動台112のX軸方向の移動、および吐出ヘッド50に形成された吐出機構の駆動制御は、制御部140によって行われる。同様に、キャッピング装置130の吸引および昇降制御、ワイピング装置150のワイプ材送りおよび昇降制御は制御部140によって行われる。制御部140は、コンピューターにより所定のプログラムに基づいてこれらの処理を実行する。
【0024】
次に、吐出ヘッド50について説明する。図2は、液滴吐出ヘッドの構成を示す説明図である。例えばカラーフィルターでは赤(R)、緑(G)、青(B)の3色が主に用いられる(4色以上の場合もある)が、どの色についても同様な処理を行うこととなる。そのため、以下、赤(R)を代表して説明を続ける。
【0025】
図2(a)は、液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図、図2(b)は、ノズルの配置を示す平面図である。図2(a)に示すように、吐出ヘッド50は、ノズルプレート115を備え、ノズルプレート115には、1軸方向(副走査方向)に複数沿って並ぶ、液状体を吐出するノズルNが形成されている。そして各ノズルNには、ノズルNに連通するキャビティ111が形成されている。そして、キャビティ111には、図示せぬ材料供給部から液状体10が供給される。また、複数のノズルNは、ガイドレール101、ガイドレール102により被吐出体としての基板Kと対向配置される。
【0026】
キャビティ111には、キャビティ111内の容積を拡大縮小する振動板114と、振動板114を振動させる加圧手段としての圧電素子113が配設されている。そして、吐出ヘッド50が圧電素子113を制御駆動するための駆動信号を受けると、圧電素子113が伸張して、振動板114がキャビティ111内の容積を縮小する。その結果、ノズルNから縮小した容積分の液状体10が液滴121として吐出される。なお、本実施形態では、加圧手段として、圧電素子113を用いたが、特に、これに限定されず、例えば、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用しても良い。さらには、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって液状体を液滴として吐出させる構成を有する吐出ヘッドであっても良い。
【0027】
ノズルプレート115には、液滴121を吐出する複数のノズルNが直線状に整列され、図2(b)に示すように有効ノズル列58が設けられている。また、有効ノズル列58の両端には、複数のノズルNの副走査方向に沿って予備ノズルNKが設けられている。なお、図2(b)では予備ノズルNKのノズル径を大きくしているが、これはノズルNと区分するための記載であり、通例、ノズルNKのノズル径はノズルNと同じ値を備えている。
吐出ヘッド50が液滴吐出装置100に取り付けられた状態では、有効ノズル列58とノズルNKとは副走査方向に延在する。なお、有効ノズル列は1列に限らず2列以上設けられていても良いし、配列方向も副走査方向に対して傾いているなど、必ずしも副走査方向と一致しなくても差し支えない。
【0028】
ここで、一定の周期を持つパターンで構成されるカラーフィルター等を、吐出ヘッド50を用いて製造する際には、有効ノズル列58を構成するノズルNが、一定の吐出パターンの繰り返しで吐出/非吐出を行う場合がある。この場合、この吐出パターンに合わせて、ノズルNの吐出量を校正すると、クロストーク等の要因を含めて吐出量むらを低減することができる。各々のノズルNからの吐出量は、液滴121を減圧雰囲気下で乾燥させた後、白色干渉計等を用いて測定すれば良い。
【0029】
(予備ノズルを用いた吐出パターンの策定方法)
以下、予備ノズルNKを用いた吐出パターンの策定方法について図面を用いて説明する。図3は、予備ノズルを備えた有効ノズル列および予備ノズルの吐出パターン例を示す平面図である。ここでは、カラーフィルター250を形成する場合について例示している。ここで、ノズルNの数は説明を容易にするため、通常用いているノズル数よりもかなり少ない値で記載している。実際の吐出ヘッド50が備えるノズルNの数は、例えば180個あり、有効ノズル数は両端の10個分のノズルを使用しない条件、つまりノズルNの数は160個程度となる。なお、「改行」とは、ノズルNの端よりも外側に液滴121を吐出すべく、吐出ヘッド50を繰り返し周期の1周期分(例えば、有効ノズル列58と予備ノズルNKとを合わせた分)副走査方向に移動させた後、再び液滴121を有効ノズル列58を構成するノズルNや予備ノズルNKから吐出させる工程を指すものとする。
【0030】
カラーフィルター250は、塗布される領域と、塗布されない領域が規則的に並んでいる。そのため、個々のノズルNの吐出量をクロストークも含めて調整した駆動条件で塗布できる。
ここで、カラーフィルター250の配置に合わせて調整した複数のノズルNの吐出パターンとの間にずれが生じた場合、調整された有効パターン182を崩すこととなる。有効パターン182を崩すと各ノズルNからの吐出量のむらが増えるが、予備ノズルNKを用いて吐出パターン184を調整することで有効パターン182内での吐出パターンを変更することなくカラーフィルター250を形成することが可能となる。
【0031】
ここで、カラーフィルター250に含まれるピクセル251の形成条件について説明する。ピクセル251が一旦吐出を受けた後改行し、再び同じピクセル251に吐出を受けると、ピクセル251は、2回の吐出工程を用いて形成されることとなる。この場合、ピクセル251では、最初の液滴121(図2(a)参照)の吐出を受けた後溶媒が乾いてくる。また、ピクセル251内で液滴121が偏った状態で分布する場合がある。この状態で次の液滴121の吐出を受けると、ピクセル251は隣り合うピクセル251と異なる特性を持つこととなる。即ち、むらが発生してしまう。そのため、各々のピクセル251は、改行による吐出工程の分断を抑えるよう形成することが望まれる。
【0032】
実際の吐出ヘッド50が備えるノズルNの数は、例えば180個ある。ここで、両端に位置する10個分のノズルNの一部を予備ノズルNKとして用い、カラーフィルター250の配置ピッチとノズルNとの位置関係における整合をとるべく予備ノズルNKの吐出条件を制御することで、ピクセル251を、一回の吐出工程で描画、換言すれば改行無しで形成することができる。
図3では、吐出パターン184として有効パターン182の両端に予備ノズルNKを3つ配置したものを図示している。この場合には、予備ノズルNKの一つを吐出させることで、ピクセル251を、改行を介することなく、一回の吐出で形成することができる。吐出パターン184を繰り返して副走査を行うとピクセル251を、改行を介さず、かつ容易に調整しうる繰り返しパターンを用いて吐出を行えることから、ピクセル251の形成時に生じる吐出量のばらつきや、改行によるむらの発生を抑えることができる。換言すれば、複数のノズルNから基板Kに液状体10(共に図1参照)を吐出した後、副走査して移動させ、同じ有効パターン182が使えるように予備ノズルNKによって制御されているこことなる。
このことから、ばらつきの少ないカラーフィルター250を提供することができる。また、ピクセル251のピッチと、吐出パターン184とのピッチとのずれが生じた場合でも、予備パターンNKの吐出パターンを変更することで対応できる。即ち、調整した有効パターン182の吐出パターンの変更を抑えることが可能となるので、吐出量のばらつきによる品質低下を抑制することができる。
【0033】
(比較例:予備ノズルを用いない場合の吐出パターンの策定方法)
以下、比較例として、予備ノズルNKを用いない場合の吐出パターンの策定方法について図面を用いて説明する。図4(a)は、ピクセルが形成される領域に液滴を吐出するよう吐出パターンを策定した平面図である。この場合、図4(a)に示すように、ピクセル251の描画中に改行が行われる(190A)。また、吐出パターン190を用いて描画し、副走査方向に改行した後、最初の吐出パターン190と異なる吐出パターン190Gで描画することが必要となる。さらに、次の改行後にも異なる吐出パターン190Hを必要とする。
このような場合、各々の吐出パターンに対して吐出量の調整をすることは極めて困難である。また、ピクセル251の形成には改行を伴うものがあるため、前述したようにピクセル251同士のむらも大きくなってしまう。また、多数のパターンに対しての吐出量の調整は困難であり、各ピクセル251間の吐出量の精度は低くなる。そして改行を伴うピクセル251の製造工程を用いていることから、筋むら等を抑えたカラーフィルター250を得るのは極めて困難となる。
【0034】
図4(b)は、ピクセルのレイアウトに沿って、同じパターンの繰り返しでいけるよう、吐出パターンを配置した平面図である。この場合、吐出パターン192の繰り返しでピクセル251を作っていけるため、吐出パターン192に特化した吐出量の調整を行うことができる。そのため、吐出量が安定し、吐出量に起因するむらを抑えることができる。
しかし、この場合においてもピクセル251の描画中に改行が必要となるため、前述したようにピクセル251にむらが生じる。また、ピクセル251のピッチと、吐出パターン192は必ずしも同期しているわけではないので、ピクセル251の描画に際して吐出パターン192を変えないと対応できない場合が発生するが、この場合には吐出パターン192を変更することが必要となる。しかも、ピッチのずれ具合により、複数の吐出パターンが必要となる。そのため、各吐出パターンに合わせた吐出量の調整が必要となり、調整に要する負荷が大きくなる。
【0035】
本実施形態における液状体の吐出方法は、以下の効果を奏する。
【0036】
図2(b)に示すように、有効ノズル列58の両端には、予備ノズルNKが設けられている。予備ノズルNKは、ノズルNと同時に形成できる。そのため、予備ノズルNKを工程数を増やすことなく製造することができる。
【0037】
一定の周期を持つパターンで構成されるカラーフィルター等を、図2(b)に示す吐出ヘッド50を用いて製造する際には、有効ノズル列58を構成するノズルNは、一定の吐出パターンの繰り返しで吐出/非吐出を行うこととなる。この場合、この吐出パターンに合わせてノズルNの吐出量を校正することで、クロストーク等の要因を含めて吐出量むらを低減することができる。
【0038】
図3に示すカラーフィルター250の配置パターンと整合を取って有効ノズル列58の外側に位置する予備ノズルNKの吐出状態を制御することで、ピクセル251を、1回の吐出で形成、換言すれば改行無しで形成することができる。ピクセル251の描画を2回の吐出で行うと、最初の液滴121(図2(a)参照)の吐出を受けた後溶媒が乾いてくる。また、ピクセル251内で液滴121が偏った状態で分布する場合がある。この状態で次の液滴121の吐出を受けると、ピクセル251は隣り合うピクセル251と異なる特性を持つこととなるため、ピクセル251の特性、ピクセル間の均一性が低下する。改行無しでピクセル251を形成することで、ピクセル251の特性、ピクセル間の均一性を保つことができる。
【0039】
カラーフィルター250の配置に合わせて調整した複数のノズルNの吐出パターンとの間にずれが生じた場合、調整された有効パターン182を崩すこととなる。有効パターン182を崩すと各ノズルNからの吐出量のむらが増えるが、図3に示すように予備ノズルNKを設け、予備ノズルNKの吐出パターン184を調整することで、有効パターン182内での吐出パターンを変更することなくカラーフィルター250を形成することができる。
【0040】
(第2実施形態:ノズルの乾燥防止方法)
以下、第2実施形態として、ノズルの乾燥防止方法について図面を用いて説明する。図5は、有効パターン内で2通りの吐出パターンを備える吐出パターンの平面図である。吐出ヘッド265が備えるノズルNは、複数の吐出パターンとしての2通りの吐出パターンに対して吐出量ばらつきを低減させるべく調整されている(求められている)。
例えばカラーフィルター250を連続して形成する場合、図3に示すように、調整された吐出パターン184で吐出し、着弾させ続けることとなる。
【0041】
この場合、吐出に寄与しないノズルNは徐々に乾燥し、このノズルNの吐出量が不安定になるおそれがある。そこで、ノズルNから均等に液滴121(図2(a)参照)を吐出させることがノズルNの状態管理としては好ましい。そこで、複数(本実施形態では2つ)の吐出パターンを切り替えて用い、ノズルNの乾燥を防ぐことが好適な方法となる。
図5(a)は、調整された有効パターンの一例を示す平面図であり、図5(b)は、図5(a)の有効パターンと異なる一例を示す平面図である。図5(b)は、図5(a)の有効パターン201を反転させた吐出パターンを備えている。そして、図5(c)は、各々のノズルの吐出量を各々の描画パターンに対して調整した後、描画したパターンの一例を示す平面図である。
【0042】
具体的には、図5(a)は、有効パターン201の吐出パターンに合わせて各々のノズルNの吐出量を調整した有効パターン201の両端に予備ノズル列201Aを備えた吐出パターン260を示している。ここでは、予備ノズル列201Aは非吐出としている。
【0043】
そして、図5(b)は、有効パターン202の吐出パターンに合わせて各々の複数のノズルNの吐出量を調整した有効パターン202の両端に予備ノズル列202Aと予備ノズル列202Bとを備えた吐出パターン261を示している。ここで、予備ノズル列202Aは非吐出、予備ノズル列202Bは吐出としている。
【0044】
図5(a)と図5(b)との有効パターン201と有効パターン202とを比較すると、有効パターン201と有効パターン202は互いに吐出/休止が反転したパターンを備えている。
複数の基板に対してこのような有効パターンを形成する場合には、基板毎に吐出パターンを変えることで、各ノズルNの乾燥状態等を揃えた状態で液滴121を吐出でき、各ノズルNの吐出状況を安定した状態に保つことができる。また、各ノズルN副走査前後で有効パターン201と有効パターン202を変えても良い。また、ノズルNの吐出回数を基準として切り替えを行っても良い。
【0045】
本実施形態における液状体の吐出方法は、上述した実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0046】
図5(a),(b)に示されるように有効パターン201と、有効パターン202とを設け、切り替えて使用することで、有効パターン201と、有効パターン202とを合わせた場合に、吐出を行うノズルNが平均的に吐出を行うことを防止できる。そのため、ノズルNの乾燥に起因する不良発生を抑えることができる。
【0047】
図5(a),(b)に示されるように、この場合には、予備ノズル列201A、予備ノズル列202Aと予備ノズル列202Bについても吐出パターンが反転する。そのため、予備ノズル列201A、予備ノズル列202Aと予備ノズル列202Bに属するノズルNについても乾燥が防がれることとなり、予備ノズルNKの乾燥に起因する不良発生を抑えることができる。
【0048】
(第3実施形態:複数の吐出ヘッドを用いた場合の隣り合う吐出ヘッドとの継ぎ目)
以下、第3の実施形態について説明する。図6は、副走査方向に対して移動してきた吐出ヘッドのノズル列と、隣の吐出ヘッドの始点でのノズル列と一部が重なる場合についての対応を説明する平面図である。
本実施形態では、吐出ヘッド270で複数回副走査を行う場合、吐出ヘッド270の有効ノズル列300や予備ノズル列300Aと、隣にある吐出ヘッド271の始点における有効ノズル列301や予備ノズル列301Aとの吐出パターンが重なる場合がある。この場合には、予備ノズル列300A、または予備ノズル列301Aのいずれかの吐出を止めることが必要となる。この場合、有効ノズル列300と予備ノズル列300A、または有効ノズル列301と予備ノズル列301Aのうち、吐出に関与するノズル数が等しく、かつ改行の問題が発生しない場合には、どちらの吐出を止めても良い。また、図6に示すように、有効ノズル列301と予備ノズル列301Aの方が吐出に関与するノズル数の和が多い場合、吐出量変動を緩和すべく、予備ノズル列300Aを用いてピクセル251に合わせたパターンに対応させるように吐出を行わせることが好適である。この場合、吐出ヘッド270と吐出ヘッド271との吐出量バランスが良好となるのでむらの発生を抑えることができる。また、予備ノズル列300Aや予備ノズル列301Aの片方を用いた場合、ピクセル251の途中で改行が発生する場合には、改行を発生させない方を選ぶことで、上述したピクセル251の不良発生を抑制することができる。
【0049】
本実施形態における液状体の吐出方法は、上述した実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0050】
図6に示すように、吐出ヘッド270の有効ノズル列300や予備ノズル列300Aと、副走査方向に対して移動してきた吐出ヘッドのノズル列と、隣にある吐出ヘッド271の始点における有効ノズル列301や予備ノズル列301Aとの吐出パターンが重なる場合に、予備ノズル列300Aや301Aの吐出パターンを変える。より具体的にはどちらかの吐出を停止することで、矛盾なく吐出パターンの重なる領域を処理することができる。
【0051】
図6に示すように、有効ノズル列301と予備ノズル列301Aの方が吐出に関与するノズル数の和が多い場合、吐出量変動を緩和すべく、予備ノズル列300Aを用いてピクセル251に合わせたパターンに対応させるように吐出を行わせることで、吐出ヘッド270と吐出ヘッド271との吐出量バランスが良好となるのでむらの発生を抑えることができる。
【0052】
予備ノズル列300Aや予備ノズル列301Aの片方を用いた場合、ピクセル251の途中で改行が発生する場合には、改行を発生させない方を選ぶことで、上述したピクセル251の不良発生を抑制することができる。
【0053】
(第4実施形態:吐出パターンの設計手順)
以下、第4実施形態として、吐出パターンの設計手順について説明する。図7は、上記した手順をまとめたフローチャートである。
【0054】
まず、ステップS1として、ピクセル251(図6参照)のレイアウトを定める描画データを作成する。
【0055】
次に、ステップS2として、ピクセル251のレイアウトに合わせて有効ノズル列300の幅で改行を行わせるデータを作成する。このステップでは、ピクセル251が改行により分断され、複数回の液滴121(図2(a)参照)の吐出で形成される描画データが発生する場合がある。
【0056】
次に、ステップS3としてピクセル251形成における吐出工程が改行により分断されるか否かを判断する。分断される場合には、ステップS4に進む。
【0057】
ステップS4では、ピクセル251形成における改行による吐出工程の分断を抑えるよう、予備ノズルNKを追加する。
そして、ステップS5で、ステップS3でNoであった場合の分岐と合流する。このステップでは、ピクセル251の幅とピクセル251間の間隔との整数倍を改行幅として設定する。このように設定することで、ピクセル251内での改行は防止される。そのため、1回の液滴121の吐出工程でピクセルを形成することが可能となり、ピクセル251を均一な特性で形成することができる。
【0058】
次に、ステップS6では、隣の吐出ヘッド271の始点における有効ノズル列301と予備ノズル列301Aを含む吐出パターンと、自ヘッドとしての吐出ヘッド270の終点での有効ノズル列300と予備ノズル列300Aを含む吐出パターンが重なるか否かを判断する。重なる(Yes)の場合には、ステップS7に進み、重ならない(No)の場合には、ここで終了(エンド)となる。
【0059】
ステップS7では、データが重なった部分のいずれか片方の吐出を止めるよう、データを調整する。この場合、原則的には、どちらの吐出を避けるようにしても良いが、吐出する予備ノズルの数に差がある場合には、吐出する予備ノズルが少ない方に吐出させることで吐出量バランスが良好となるのでむらの発生をより抑えることができる。
【0060】
描画データはこれらのステップを持って形成されるが、この有効ノズル幅における描画データに合わせて、各ノズルの吐出量を校正する工程を備えることがより好適である。
ノズル毎の吐出量は、隣り合うノズルの吐出の有無等でも影響を受ける。そこで、上記した描画データを用いて校正することで、吐出に関わる種々のばらつき要素を加味して吐出量を校正することができる。吐出量の測定等は、例えば白色干渉計等を用いて行えば良い。このようにすることで、上記した描画データに特化した校正を行うことができる。
【0061】
本実施形態における液状体の吐出方法は、上述した実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0062】
ピクセル251のレイアウトを参照して、ピクセル251形成における改行を行う場合における吐出工程の分断を抑えるよう、予備ノズルNKを追加することで、改行を介さずにピクセル251の描画を行うことができる。
【0063】
予備ノズルNKを追加した後、ピクセル251の幅とピクセル251間の間隔との整数倍を改行幅として設定することで、ピクセル251内での改行は防止される。そのため、1回の液滴121の吐出工程でピクセルを形成することが可能となり、ピクセル251を均一な特性で形成することができる。
【符号の説明】
【0064】
10…液状体、50…吐出ヘッド、58…有効ノズル列、100…液滴吐出装置、101…ガイドレール、102…ガイドレール、103…移動台、105…載置テーブル、111…キャビティ、112…キャリッジ移動台、113…圧電素子、114…振動板、115…ノズルプレート、120…キャリッジ、121…液滴、130…キャッピング装置、131…キャッピング部材、132…ホルダー、140…制御部、150…ワイピング装置、151…回転ローラー、154…受け台、155…ワイプ材、182…有効パターン、184…吐出パターン、190…吐出パターン、190G…吐出パターン、190H…吐出パターン、192…吐出パターン、201…有効パターン、201A…予備ノズル列、202…有効パターン、202A…予備ノズル列、202B…予備ノズル列、250…カラーフィルター、251…ピクセル、260…吐出パターン、261…吐出パターン、265…吐出ヘッド、270…吐出ヘッド、271…吐出ヘッド、300…有効ノズル列、300A…予備ノズル列、301…有効ノズル列、301A…予備ノズル列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1軸方向に沿って並び、液状体を吐出する複数のノズルと、
前記液状体の吐出を受ける、前記複数のノズルと対向配置された被吐出体と、
を備え、
前記複数のノズルから前記液状体を前記被吐出体に吐出した後、
前記複数のノズルと前記被吐出体とを相対的に副走査して移動させ、再び前記複数のノズルから前記液状体を前記被吐出体に吐出し、前記液状体の吐出パターンを前記被吐出体に形成する液状体の吐出方法であって、
前記1軸方向に沿って並んだ前記複数のノズルの少なくとも片側に、前記1軸方向に沿って配置された予備ノズルが備えられ、
前記複数のノズルを副走査方向に移動させるときに、
副走査前の前記複数のノズルにおける吐出パターンと、副走査後の前記複数のノズルにおける吐出パターンとが少なくとも1回の副走査において同一となるように、副走査前後で前記予備ノズルによる吐出を制御することを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液状体の吐出方法であって、前記被吐出体でのパターン描画は、各前記パターンに対して、一回の吐出工程で描画されるよう、副走査前後で前記予備ノズルからの吐出動作を制御することを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液状体の吐出方法であって、前記複数のノズルにおける吐出パターンは、複数の吐出パターンに対して対応すべく前記複数のノズル毎の吐出条件が求められており、前記複数のノズルにおける吐出回数に応じて、吐出パターンを切り替えることを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法であって、副走査前に吐出を行う前記予備ノズル数と、副走査後に吐出を行う前記予備ノズルの数の差を低減すべく演算を行い、副走査前に吐出を行う前記予備ノズル数と、副走査後に吐出を行う前記予備ノズル数との差を低減させることを特徴とする液状体の吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−187498(P2012−187498A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52606(P2011−52606)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】