説明

液状化防止構造

【課題】ドレーン材の目詰まりを防止して、地盤の液状化現象を防止可能な液状化防止構造を提供すること。
【解決手段】液状化防止構造1は、表層G2に設けられとともに、細粒砂11が充填され雨水等を集水するトレンチ部10と、トレンチ部10に略水平方向に埋設され、透水性を有する第1ドレーン材20と、第1ドレーン材20に接続されるとともに、液状化層G1まで深さ方向に埋設された第2ドレーン材30とを備える。第2ドレーン材30は、液状化層G1に埋設された液状化層埋設部31が透水性を有している。液状化層G1の透水係数が10−4(cm/sec)オーダーであり、液状化層埋設部31の透水係数が10−3(cm/sec)以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化層から地下水を排出して、この液状化層の液状化を防止するための液状化防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地震動による地盤の液状化現象を防止するために、地盤に液状化防止構造が設けられることがある。例えば、特許文献1に示される液状化防止構造では、地盤を構成する砂質土層等の液状化層まで、不織布等のフィルターが周囲に取り付けられた透水性を有するドレーン材を鉛直方向に埋設しておき、地振動が発生した際に、液状化層の地下水をドレーン材を介して地盤外へと排出することにより、液状化現象を防止している。
【特許文献1】特開2004−44224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述した液状化防止構造では、液状化層の地下水をドレーン材内へと導くために、ドレーン材の透水係数を液状化層の透水係数よりも大きくする必要がある。このように大きな透水係数を確保するために、ドレーン材に取り付けられたフィルターの目を粗くすると、地下水と一緒に液状化層の土砂がドレーン材内に流入してドレーン材内が詰まり、地下水の流通が悪くなって液状化対策が不十分になる。特に、地震が発生するまでの待ち受け期間が数年の期間に及ぶ場合等には、地中に放置されたドレーン材の透水機能の低下が致命的となる心配がある。
【0004】
本発明の目的は、ドレーン材の目詰まりを防止して、地盤の液状化現象を防止可能な液状化防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液状化現象を生じうる液状化層と、この液状化層よりも地表面側の表層とを有し、前記表層で建物を支持する地盤において、地震時に前記液状化層から地下水を排出して、前記液状化層の液状化を防止するための液状化防止構造であって、前記表層に設けられとともに、粗粒土が充填され、雨水等を集水するトレンチ部と、このトレンチ部に略水平方向に埋設され、透水性を有する第1ドレーン材と、この第1ドレーン材に接続されるとともに、前記液状化層まで深さ方向に埋設された第2ドレーン材とを備え、前記第2ドレーン材は、少なくとも前記液状化層に埋設された液状化層埋設部が透水性を有していることを特徴とする。この際、前記液状化層埋設部の透水係数は、10−3(cm/sec)(すなわち10−5(m/sec))以上、平均透水係数が10−2(cm/sec)とすることができる。なお、前記粗粒土としては、細粒砂が好ましい。なお、前記第1ドレーン材は、例えば、水勾配等を設ける場合のように若干傾斜させてもよい。また、前記第2ドレーン材は、鉛直となる方向に限らず、建物の周囲から建物の下側へと斜めに設けられてもよい。
【0006】
本発明によれば、降雨時には、粗粒土によって濾過された綺麗な雨水等がトレンチ部に集水されるため、この集水された綺麗な雨水等は、第1ドレーン材内へ流入した後、第2ドレーン材を通って液状化層埋設部から液状化層側へ逆流する。このため、第2ドレーン材の液状化層埋設部に付着した土粒子を液状化層側へと押し出すことができ、これにより、液状化層埋設部が洗浄され目詰まりを防止できる。このように液状化層埋設部の目詰まりが防止されるため、地震動が発生した場合に、透水係数を有する第2ドレーン材の液状化層埋設部を通って、液状化層の地下水を第2ドレーン材内から第1ドレーン材へと排出でき、地盤の液状化現象を防止できる。
【0007】
以上の液状化防止構造において、前記第1ドレーン材、および、前記第2ドレーン材の液状化層埋設部は、ポリプロピレン等の合成樹脂製の繊維材を含んで構成されてもよい。このような構成によれば、第2ドレーン材や第1ドレーン材の腐食や錆びが発生しない。
【0008】
また、以上の液状化防止構造において、前記第1ドレーン材と前記第2ドレーン材とを接続する接続部材を備え、前記接続部材の表層側には、着脱自在な蓋材が取り付けられていてもよい。このような構成によれば、接続部材の表層側に取り付けられた蓋材を着脱することにより、必要に応じて、第2ドレーン材内を点検し洗浄等をすることも可能となる。
【0009】
以上の液状化防止構造において、前記トレンチ部は、前記建物の周囲、および、前記建物の下側の少なくともいずれかに形成されていてもよい。また、以上の液状化防止構造において、前記建物が住宅であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液状化防止構造によれば、ドレーン材の目詰まりを防止して、地盤の液状化現象を防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る液状化防止構造を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る液状化防止構造1が地盤Gに構築された様子を示す縦断面図である。図2は、図1のII-II断面図である。図3は、図1のA部を拡大して示す縦断面図である。図1に示すように、地盤Gは、液状化現象を生じうる液状化層G1と、液状化層G1よりも地表面側の表層G2とを含んで構成されている。液状化層G1は、例えば砂質土層により構成され、その透水係数が10−4(cm/sec)オーダー以上である。表層G2は、液状化現象を生じ難い、例えば粘性土層により構成され、その透水係数は10−5(cm/sec)よりも小さなオーダーである。表層G2には、住宅100が建設されている。
【0012】
液状化防止構造1は、表層G2において、住宅100の周囲を取り囲むように設けられるトレンチ部10と、トレンチ部10に略水平方向に埋設された、例えば複数列の第1ドレーン材20と、液状化層G1まで鉛直となる方向に埋設された例えば複数本の第2ドレーン材30と、第1ドレーン材20と第2ドレーン材30とを接続する接続部材としての分岐管40とを備えている。なお、第1ドレーン材20は、例えば、水勾配等を設ける場合のように若干傾斜させてもよく、また、第2ドレーン材20は、住宅100の周囲から住宅100の下側へと斜めに設けられてもよい。
【0013】
図2に示すように、トレンチ部10は、例えば深さ30cm、幅30cm程度の断面台形状に形成され、下水道(図示略)に接続されている。トレンチ部10には、第1ドレーン材20の周囲に粗粒土としての細粒砂11が充填され、細粒砂11の表層側には、庭土12および芝生13が設けられている。このため、降雨時には、トレンチ部10は、庭土12、芝生13、および細粒砂11を介して濾過された雨水等を集水し、この集水した雨水等を下水道へと導いている。このように、汚れた雨水等が第2ドレーン材30内に流れ込まないので、第2ドレーン材30の内側の目詰まりを防止できる。
【0014】
第1ドレーン材20は、ポリプロピレン繊維材が立体的な網状に構成されたフィルターとして機能する透水管であり、その透水係数は、10−3(cm/sec)以上、平均透水係数が10−2(cm/sec)程度である。第1ドレーン材20には、例えば、登録商標「CPドレーン」,チッソ株式会社製を採用できる。
【0015】
第2ドレーン材30は、液状化層G1に埋設された液状化層埋設部31と、表層G2に埋設された表層埋設部32とにより構成されている。液状化層埋設部31は、第1ドレーン材20と同様の部材を採用できる。すなわち、液状化層埋設部31は、ポリプロピレン繊維材が立体的な網状に構成されたフィルターとして機能する透水管であり、その透水係数は、10−3(cm/sec)以上、平均透水係数は10−2(cm/sec)程度である。また、表層埋設部32は、例えば、ポリ塩化ビニル等の樹脂製の配水管を採用でき、透水性を有している必要はない。ただし、必要に応じて、表層埋設部32と液状化層埋設部31を同じ材料で一体に構成して全体が透水性を有する構成としてもよい。第2ドレーン材30は、その表層埋設部32の上端がトレンチ部10内に突出するように設置されており、その設置本数は液状化層G1内の想定地下水量等に基づいて特定すればよい。なお、第2ドレーン材30は、ボーリング併用挿入や、圧入により地盤G内に設置され、第2ドレーン材30と地盤Gとの隙間には中粒砂等が充填され、これにより地表面や住宅100の沈下を防止できる。
【0016】
図3に示すように、分岐管40は、隣接する2本の第1ドレーン材20と、1本の第2ドレーン材30とを接合する断面T字状の分岐管本体41と、分岐管本体41の表層側にねじ等の螺合により着脱自在に取り付けられた蓋材42とを備えている。必要に応じて、ねじ等の螺合を解除して蓋材42を分岐管本体41から取り外すことにより、分岐管40の下側に位置する第2ドレーン材30の内部を保守点検等することができる。なお、図1に示すように、分岐管40は、図中の左右側の端部では、1本の第1ドレーン材20と1本の第2ドレーン材30とを接合するために、断面L字状に形成されている。
【0017】
本実施形態の液状化防止構造1は、以下のように作用する。
地盤Gに地震動が発生した場合には、間隙水圧が上昇して、液状化層G1の地下水が、液状化層G1の透水係数よりも大きな透水係数を有する液状化層埋設部31を介して第2ドレーン材30内へと自然に入りこむ。この際、液状化層埋設部31がフィルターとして機能するため、液状化層G1の土粒子が液状化層埋設部31の外側に留まる。また、第2ドレーン材30内に入りこんだ地下水は、表層埋設部32を通って第1ドレーン材20へ排出され、最終的には下水道へと流れる。このように、液状化層G1の地下水を積極的に地盤Gの外部へと排出するため、地盤Gの液状化現象を防止できる。
【0018】
また、降雨時には、地盤Gに降り注いだ雨水等が庭土12、芝生13、および細粒砂11を通ってトレンチ部10へと集水され、この集水された雨水等が第1ドレーン材20内へと流れこむ。また、第1ドレーン材20内に流れこんだ雨水等は、庭土12、芝生13、および細粒砂11によって濾過された後、さらに、第1ドレーン材20のフィルター機能によって濾過されるため、土粒子等を殆ど含まない綺麗な雨水等となる。この綺麗な雨水等は、第2ドレーン材30の表層埋設部32を通って液状化層埋設部31まで達し、透水性を有する液状化層埋設部31から液状化層G1へと排出される。この際、この綺麗な雨水等が、例えば、微少な振動等による水圧変動等によって液状化層埋設部31の外側に付着した土粒子等を、液状化層G1側へと押し出すことにより、液状化層埋設部31を洗浄する。
【0019】
本実施形態においては、次のような効果がある。
(1)濾過された綺麗な雨水等が第1ドレーン材20および第2ドレーン材30を通って液状化層埋設部31から液状化層G1側へ排出されるため、例えば、微少な振動等による水圧変動等によって液状化層埋設部31の外周に付着した土粒子を、液状化層G1側へと押し出すことができ、液状化層埋設部31の目詰まりを防止できる。この際、綺麗な雨水等が液状化層G1内へと入りこむため、液状化層G1内の地下水を循環させることができ、地下水を清浄な状態に保つことができる。本実施形態によれば、この状態が自然循環のもとに長年に亘って維持される。
【0020】
(2)このように液状化層埋設部31が常に良好な透水係数を維持するため、地盤G内に設置された第2ドレーン材30および第1ドレーン材20により、液状化層G1の地下水を地盤Gの外部へと確実に排出することができ、地震が起きた際の地盤Gの液状化現象を防止できる。
【0021】
(3)第1ドレーン材20および液状化層埋設部31をポリプロピレン製の繊維材により構成するとともに、表層埋設部32をポリ塩化ビニル等の樹脂により構成したので、これらのドレーン材20,30の腐食や錆びが発生しない。
【0022】
(4)分岐管40を着脱可能な蓋材42を備えて構成したので、分岐管本体41から蓋材42を着脱することにより、必要に応じて、第2ドレーン材30内を洗浄や点検等することができる。なお、例えば、住宅100の邪魔にならないような位置の第2ドレーン材30を1本または数本選択して、この選択した第2ドレーン材30を点検等することにより、第2ドレーン材30のメンテナンスを簡単に行うことが可能となる。
【0023】
(5)トレンチ部10を住宅100の外周に形成するので、既設の住宅に対しても後から本液状化防止構造1を構築することができる。
【0024】
(6)雨水等によって液状化層埋設部31の目詰まりを自然に防止できるので、従来住宅にはあまり構築されなかった液状化防止構造1を一般の住宅にも手軽に適用することができる。
【0025】
(7)第2ドレーン材30において、液状化層G1に埋設した液状化層埋設部31のみに透水性を確保したので、液状化現象の対象とはならない表層G2等から必要以上に地下水を排出することがないから、住宅100の沈下等を防止できる。
【0026】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されない。前記実施形態において、住宅100の外周にのみトレンチ部10を形成したが、例えば、地下水量が多い場合等には、住宅100の下側に形成してもよい。また、前記実施形態では、液状化層埋設部31の透水係数を10−3(cm/sec)以上、平均透水係数が10−2(cm/sec)程度としたが、透水係数が対象となる液状化層G1よりも大きければ、このような数値には限定されない。また、前記実施形態では、第1ドレーン材20および第2ドレーン材30の液状化層埋設部31をポリプロピレン製の繊維材により構成したが、ポリプロピレン以外の樹脂により構成してもよい。また、前記実施形態では、建物を住宅100としたが、住宅でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る液状化防止構造1が地盤Gに構築された様子を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II平面図である。
【図3】図1のA部を拡大して示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 液状化防止構造
10 トレンチ部
11 細粒砂
12 庭土
13 芝生
20 第1ドレーン材
30 第2ドレーン材
31 液状化層埋設部
32 表層埋設部
40 分岐管
41 分岐管本体
42 蓋材
100 住宅
G 地盤
G1 液状化層
G2 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状化現象を生じうる液状化層と、この液状化層よりも地表面側の表層とを有し、前記表層で建物を支持する地盤において、地震時に前記液状化層から地下水を排出して、前記液状化層の液状化を防止するための液状化防止構造であって、
前記表層に設けられとともに、粗粒土が充填され、雨水等を集水するトレンチ部と、
このトレンチ部に略水平方向に埋設され、透水性を有する第1ドレーン材と、
この第1ドレーン材に接続されるとともに、前記液状化層まで深さ方向に埋設された第2ドレーン材とを備え、
前記第2ドレーン材は、少なくとも前記液状化層に埋設された液状化層埋設部が透水性を有していることを特徴とする液状化防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載の液状化防止構造において、
前記液状化層埋設部の透水係数は、10−3(cm/sec)以上であることを特徴とする液状化防止構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液状化防止構造において、
前記第1ドレーン材、および、前記第2ドレーン材の液状化層埋設部は、合成樹脂製の繊維材を含んで構成されていることを特徴とする液状化防止構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の液状化防止構造において、
前記第1ドレーン材と前記第2ドレーン材とを接続する接続部材を備え、
前記接続部材の表層側には、着脱自在な蓋材が取り付けられていることを特徴とする液状化防止構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の液状化防止構造において、前記トレンチ部は、前記建物の周囲、および、前記建物の下側の少なくともいずれかに形成されていることを特徴とする液状化防止構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の液状化防止構造において、前記建物が住宅であることを特徴とする液状化防止構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−2529(P2006−2529A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182570(P2004−182570)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【特許番号】特許第3628322号(P3628322)
【特許公報発行日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(504238633)三和興業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】