説明

液状樹脂への粒子状添加物の分散方法

【課題】 本発明の目的は、粒子状添加物の粒径が小さくとも、凝集のない充填材を液状の樹脂へ投入でき、それ故、スクリーニングメッシュでの目詰まりの起こり難い液状樹脂への粒子状添加物の分散方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、例えば液状のエポキシ樹脂1に粒子状添加物である充填材3を添加し、これを撹拌装置の攪拌子8により撹拌して液状のエポキシ樹脂1内に充填材3を分散させる液状樹脂への粒子状添加物の分散方法において、充填材3を篩分機10で篩分けしながら前記撹拌装置に供給することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電力ケーブルの接続部において、電気絶縁機能を持った樹脂成形体の製造に係わる液状樹脂への粒子状添加物の分散方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば電力ケーブルの接続部において樹脂成形体で電気的絶縁体を構成する方法として、通称プレハブジョイント方式と呼ばれている方法がある。
この方法は、予め接続部保護用に使用する樹脂成形体を工場内で製造しておいて、これを電力ケーブルの接続作業現場に持ち込み、現場で接続が完了した電力ケーブルの導体の接続部に被せるものである。
【0003】
ところでこのプレハブジョイント方式の場合、近年電界的に厳しい性能を求められるケースが多く、品質管理レベルも年々高くなってきている。特に地中送電用のもの、具体的には超高圧用の電力ケーブルに使用する樹脂成形体にあっては、そもそも要求されている耐電圧特性に対して、材料自体が有する基本性能に余裕がないため、非常に高いレベルでの品質管理が求められている。
【0004】
また超高圧電力ケーブルを設置する地中送電用の洞道及びマンホールサイズには制約があるため、必然的に接続部の大きさにも制約があり、前記接続部保護用の樹脂成形体を含む部品に要求される耐電圧特性レベルも、従来の材料をそのまま使用していては到底満足できないレベルになってきている。
【0005】
そこで耐電圧特性を向上させ得る材料として、例えば既存のエポキシ樹脂に充填材として球状の溶融シリカを充填した材料が提案されており、かつこの充填材の粒径を小径化するほど耐電圧特性が向上する、という報告も見られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでベースとなる液状のエポキシ樹脂に充填材を混合する場合、従来は図2が示すような方法で行っていた。
すなわち、加熱して溶融状態にある液状のエポキシ樹脂1を予め撹拌容器2内に投入しておき、これに撹拌子8を駆動する駆動モーターが設けられている撹拌装置の蓋部9に穿たれている投入孔から、前述した溶融シリカからなる充填材3を必要量投入して添加していた。ここで符号11は充填材供給用のホッパーである。
【0007】
ところが、この方法において充填材3の粒径をより小さくすると、充填材3同士が凝集し易くなる、という問題が発生する。同時に、大量の充填材3が一挙にエポキシ樹脂1に投入されるため、充填材3が団子状に凝集し、エポキシ樹脂1内に充填材3を均一に分散、混合できない、という問題がある。
【0008】
また目視状態では一見して充填材3がエポキシ樹脂1内に均一に分散しているように見えても、実際には、充填材3を混合して分散させた後、これを樹脂成形体製造用の金型5の直前に設けた異物除去装置6に通すと、この異物除去装置6に内蔵されているスクリーニングメッシュ(異物除去装置6内で点線で示されているもの)が短時間で目詰まりしてしまう、という問題もある。
【0009】
この問題をより具体的に説明する。いま目開きの大きさが約77μmの、いわゆる200番のスクリーニングメッシュが異物除去装置6内に設置されている。一方、溶融シリカからなる充填材3の通常の粒径は最大でも18μmといわれている。
それ故、200番のスクリーニングメッシュを使用している限り、本来は目詰まり現象は起こり得ないはずであるが、現実には200番のスクリーニングメッシュを用いていると目詰まりが発生して、金型5へのエポキシ樹脂1の供給が時間の経過と共に減少してしまう、すなわち安定した供給ができない、という問題がある。
【0010】
そこで本発明の目的は、前述した充填材を含む粒子状添加物の粒径が小さくとも、凝集のない粒子状添加物を液状の樹脂へ投入でき、それ故、スクリーニングメッシュでの目詰まりの起こり難い、液状樹脂への粒子状添加物の分散方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく請求項1記載の液状樹脂への粒子状添加物の分散方法は、液状樹脂に粒子状添加物を添加し、これを撹拌装置により撹拌して前記液状樹脂内に前記粒子状添加物を分散させる液状樹脂への粒子状添加物の分散方法において、前記粒子状添加物を篩で篩分けしながら前記撹拌装置に供給することを特徴とするものである。
【0012】
このようにしてなる請求項1記載の液状樹脂への粒子状添加物の分散方法によれば、液状の樹脂への粒子状添加物の投入を篩で篩分けしながら行うため、凝集のない粒子状添加物を樹脂に投入することができる。
その結果、樹脂に粒子状添加物を均一に分散、混合できるため、この樹脂を金型に供給する前にスクリーニングメッシュを通しても、このスクリーニングメッシュに目詰まりを起こさせることがない。よって常に一定量の樹脂を金型側に供給することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、粒子状添加物の粒径が小さくとも、凝集のない粒子状添加物を液状の樹脂へ投入でき、それ故、スクリーニングメッシュでの目詰まりの起こらない液状樹脂への粒子状添加物の分散方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の液状樹脂への粒子状添加物の分散方法の一実施例を図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の液状樹脂への粒子状添加物の分散方法に用いる装置の概略正面図である。尚、図1においては、図2と同じ部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略することにする。
【0015】
図1が示す装置を用いた本発明の液状樹脂への粒子状添加物の分散方法の特徴は、約90〜100℃に加熱して溶融状態にした液状のエポキシ樹脂1を内部に有する撹拌容器2の上方に、しかもこの撹拌容器2にできるだけ接近させた位置に、篩分機10を設置し、充填材供給用のホッパー11からほぼ一定量ずつ供給される溶融シリカ等からなる充填材3を、この篩分機10によって篩にかけ、充填材3の凝集をなくした状態で撹拌容器2に供給する点にある。
【0016】
尚、図1において、符号12が示す点線はスクリーニングメッシュを示している。ところでこの篩分機10では、図示しない振動装置により篩分機10全体に振動を加えながらスクリーニングメッシュ12により充填材3を篩にかけた。
因みに、この充填材3は最大粒径が18μm程度の溶融シリカである。またスクリーニングメッシュ12としては250番(目開き約62μm)のメッシュを使用した。
さらに異物除去装置6内に設けたスクリーニングメッシュは200番のものを使用した。
【0017】
篩分機10を経由して撹拌容器2に供給された充填材3は、液状のエポキシ樹脂1内に少量ずつ、かつほぼ一定量ずつ投入され、この実施例では回転する撹拌子8でエポキシ樹脂1と一緒に撹拌され、均一に分散、混合される。
そして撹拌容器2で撹拌されたエポキシ樹脂1と充填材3とは十分、かつ均一に混合された状態で異物除去装置6内のスクリーニングメッシュを経由して金型5へと供給された。
因みに、この実施例では異物除去装置6内のスクリーニングメッシュは充填材3の凝集が原因で目詰まりすることはほとんどなかった。
【0018】
より具体的には、加熱して溶融状態、すなわち液状になっているエポキシ樹脂1を、予め攪拌容器2内に必要量全量(100重量部)投入しておき、これに充填材供給用のホッパー11から溶融シリカ製の充填材3を毎分100〜200gの割合で篩分機10に供給し、篩分機10に振動を加えつつ、内蔵する250番のスクリーニングメッシュ12を介してこれを篩にかけ、スクリーニングメッシュ12を通過した充填材3を撹拌容器2へと投入した。この際、充填材3が撹拌容器2の内壁面に沿って滑り落ちるように投入した。尚、投入した充填材3は1ロット分全体で200重量部であった。
【0019】
このようにして撹拌した充填材3入りのエポキシ樹脂1を一定時間、減圧、撹拌した後、硬化剤(30重量部)を投入し、さらに一定時間、減圧、撹拌した後、異物除去装置6を経由して金型5に供給したが、異物除去装置6内のスクリーニングメッシュ(200番)が目詰まりすることはなかった。結果的には、金型5へ120Kg以上の樹脂を安定して連続供給することができた。
尚、本発明では篩分機10を介して、充填材3を一定量ずつ撹拌容器2に供給しているので、従来のように一挙にほぼ全量の充填材3をエポキシ樹脂1に投入した場合と異なり、充填材3投入直後にエポキシ樹脂1の粘度が急激に増加する恐れもない。そのため、この観点からもエポキシ樹脂1への充填材3の分散は従来の方法より遥かに均一になり易い。
【0020】
ところで前記実施例では、樹脂としてエポキシ樹脂を使用しているが、室温で、あるいは加熱して液状になっている樹脂に充填材を充填する場合には、エポキシ樹脂に限らず他の樹脂にも本発明は適用できる。
【0021】
以上述べたように本発明によれば、粒子状添加物の粒径が小さくとも、凝集のない添加物を液状の樹脂へ投入でき、それ故、スクリーニングメッシュでの目詰まりの起こり難い液状樹脂への粒子状添加物の分散方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の液状樹脂への粒子状添加物の分散方法に係わる装置の概略正面図である。
【図2】従来の装置の概略正面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 エポキシ樹脂
2 撹拌容器
3 充填材
5 金型
6 異物除去装置
8 撹拌子
10 篩分機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状樹脂に粒子状添加物を添加し、これを撹拌装置により撹拌して前記液状樹脂内に前記粒子状添加物を分散させる液状樹脂への粒子状添加物の分散方法において、前記粒子状添加物を篩で篩分けしながら前記撹拌装置に供給することを特徴とする液状樹脂への粒子状添加物の分散方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−22125(P2006−22125A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198728(P2004−198728)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】