説明

液状製剤用口栓及びそれを備えた液状製剤用容器

【課題】 容器口に打栓した後、キャップで巻き締めするまでの間における浮き上がりを確実に防止できるとともに、成形が容易な液状製剤用口栓を提供することにある。
【解決手段】 液状製剤を充填する容器の容器口内径よりも大きい外径を有する天板部11と、前記天板部11の下面中央に突設した脚部20とからなり、前記容器の容器口に打栓された後、キャップで巻き締めされる液状製剤用口栓である。そして、前記脚部20の下面中央に中央空間部21を設け、かつ、側面に少なくとも1つの切り欠き窓部22を設けるとともに、前記脚部20の最大外径が前記切り欠き窓部22の上辺縁部23の上に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状製剤用口栓及びそれを備えた液状製剤用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状製剤用口栓としては、ゴム栓が代表的なものとして使用され、その脚部を瓶口に打栓した後、アルミキャップで巻き締め固定されるものがあるが、アルミキャップの巻き締め作業が完了する前に前記ゴム栓が浮き上がり、傾いたり、あるいは、瓶口から脱落することがある。さらに、傾いた前記ゴム栓にアルミキャップを巻き締めすると、アルミキャップが斜めかぶり状態となり、巻き締め不良となる。このため、前記瓶に充填した液状製剤の無菌性を保証できず、歩留まりが悪い。
【0003】
特に、前記液状製剤用ゴム栓が装着される瓶のうち、混注して使用することがない瓶では、運送作業を省力化し、在庫容積を小さくするため、ヘッドスペースを小さくして小型化することが考えられている。この場合、材料管理を容易にするとともに、生産効率を高めるため、瓶口の大きさ,形状を統一し、ゴム栓の共用化を図ることも考えられている。
【0004】
瓶口に打栓された後の浮き上がりを防止すべく、アルミキャップで巻き締めされるゴム栓としては、例えば、フランジ部を有する上部の天板部と、前記天板部下面に形成された容器口内に挿入される胴部とからなるゴム栓であって、前記胴部が前記天板部下面直下の外周部に網目状に設けられた複数の突起を有してなり、かつ、前記突起部分の外径が前記容器口内径よりやや大きいものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】登録実用新案第2583368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ゴム栓では、胴部の外周面に複数の突起を網目状に形成する必要があり、成形作業が容易でなく、寸法精度にバラツキが生じやすい。このため、瓶口に打栓した後の浮き上がりを確実に防止することが困難であり、所望の歩留まりを得られないという問題点がある。
【0006】
本発明は、前記問題点に鑑み、容器口に打栓した後、キャップで巻き締めするまでの間における浮き上がりを確実に防止できるとともに、成形が容易な液状製剤用口栓及びそれを備えた液状製剤用容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
本発明にかかる液状製剤用口栓は、前記課題を解決すべく、液状製剤を充填する容器の容器口内径よりも大きい外径を有する天板部と、前記天板部の下面中央に突設した脚部とからなり、前記容器の容器口に打栓された後、キャップで巻き締めされる液状製剤用口栓において、前記脚部の下面中央に中央空間部を設け、かつ、側面に少なくとも1つの切り欠き窓部を設けるとともに、前記脚部の最大外径が前記切り欠き窓部の上辺縁部の上に位置する構成としてある。
【0008】
本発明によれば、脚部に中央空間部および切り欠き窓部を設けて脚部の容積を制限しているので、口栓を打栓した容器のヘッドスペース内における内圧の著しい上昇を抑制でき、打栓した口栓の浮き上がりを確実に防止できる。また、従来例のように脚部の外周面に多数の突起を網目状に形成する必要がないので、成形が容易になるとともに、寸法精度にバラツキが生じにくいので、打栓した口栓の浮き上がりをより一層確実に防止できる。
【0009】
本発明にかかる実施形態としては、脚部の側面に、一対の切り欠き窓部を対向するように形成してもよい。
本実施形態によれば、脚部の対向する位置に切り欠き窓部を設けてあるので、バランスが良く、口栓が傾きにくくなる。
【0010】
本発明にかかる他の実施形態としては、脚部の外周形状を太鼓胴形状としてもよい。
本実施形態によれば、脚部の最大外径が切り欠き窓部の上辺縁の上に位置するので、ある程度の巾領域で面接触し、かつ、容器口の内周面に圧接する部分が連続することにより、口栓の浮き上がりをより一層確実に防止できる。
【0011】
本発明にかかる別の実施形態としては、脚部の外周面のうち、切り欠き窓部の上辺縁部よりも上に環状リブを設けておいてもよい。
本実施形態によれば、環状リブが連続して容器口の内周面に圧接し、接触部分が連続しているとともに、接触圧が大きくなるので、口栓がより一層浮き上がりにくくなる。
【0012】
本発明にかかる異なる実施形態としては、脚部の容積を、容器のヘッドスペース容積の25%以下としておいてもよい。
本実施形態によれば、容器のヘッドスペースにおける著しい内圧の上昇が抑制され、口栓の浮き上がりを防止できる。
【0013】
本発明にかかる新たな実施形態としては、脚部の容積を、容器の容器口に打栓した後のヘッドスペースの内圧が13Kpaを超えない容積としておいてもよい。
本実施形態によれば、ヘッドスペースにおける著しい内圧の上昇が抑制され、口栓の浮き上がりをより一層確実に防止できるという効果がある。
【0014】
本発明にかかる別の実施形態として、口栓はゴム栓であってもよく、また、キャップはアルミキャップであってもよい。
【0015】
本発明にかかる液状製剤用容器は、前述の液状製剤用口栓を備え、あるいは、前述の液状製剤用口栓およびキャップを備えたものであればよい。また、液状製剤は、ヒト血清アルブミン、ヒト免疫グロブリンおよびヒトハプトグロブリンからなる群から選ばれる製剤であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明にかかる液状製剤用口栓の実施形態を図1ないし図5の添付図面に従って説明する。
なお、本発明においては「瓶」と「容器」とは同義のものとして用いられ、本発明の口栓を備えたものであれば、全て本発明に含まれる。本発明の容器の好適なものとしては、瓶としては、例えば、ガラス製のもの(例えば、硬質ガラス、軟質ガラス、脱アルカリ処理した軟質ガラス、あるいは、これらの内壁をシリコン等でコーティングしたもの)等が例示される。また、口栓の代表例としてはゴム栓が挙げられ、打栓後に巻き締めされるキャップとしては、アルミキャップが好適なものとしてあげられる。以下には、これらを例に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0017】
第1実施形態は、図1および図2に示すように、液状製剤32(図5B参照)を充填する瓶30の瓶口31の内径よりも大きい外径を有する天板部11と、前記瓶口31内に圧入される脚部20と、からなるゴム栓10である。
【0018】
なお、図5Bに示すように、本願においてヘッドスペース33とは、瓶30に液状製剤32を充填した後に残存する内部空間をいう。また、前記瓶30の瓶口31の内周面には、シール性を高めるため、前記ゴム栓10との接触面積を増大させる環状の浅溝34が形成されている。
【0019】
前記天板部11は、図1に示すように、その上面中央に設けた凹所12の底面に一対の針刺し凹部13,13が設けられている。さらに、前記凹所12の周囲には一定のピッチで突起14が突設されている。
【0020】
脚部20は太鼓胴形状を有し、かつ、前記天板部11の下面中央に突設されているとともに、前記脚部20の下面中央には略円錐台形状の中央空間部21が形成されている。さらに、前記脚部20の側面には一対の切り欠き窓部22,22が対向するように形成されている。ただし、前記切り欠き窓部22の上辺縁部23は脚部20の最大外径の下方側に位置しているため、脚部20によって瓶口31は連続的にシールされる。
【0021】
前記円錐台形の中央空間部21および切り欠き窓部23は、前記脚部20の容積を減少させることにより、前記ヘッドスペース33における内圧の著しい上昇を抑制し、ゴム栓10の浮き上がりを防止する。特に、脚部20の容積は、ヘッドスペースの25%以下、特に、20%以下であれば、ゴム栓10の浮き上がりを防止するうえで好適である。
また、脚部20の容積は、瓶口31にゴム栓10を打栓した後のヘッドスペース33の内圧が13Kpaを超えず、特に、12Kpa以下となる容積であれば、ゴム栓10の浮き上がりを防止するうえで好適である。
【0022】
前記ゴム栓10が装着される瓶30は、その内容積が10mLないし500mL、主に20mLないし250mLのものが使用される。瓶30としては、例えば、ガラス製のもの(例えば、硬質ガラス、軟質ガラス、脱アルカリ処理した軟質ガラス、あるいは、これらの内壁をシリコン等でコーティングしたもの)等が例示される。
また、口栓の代表例としてはゴム栓10が挙げられ、打栓後に巻き締めされるキャップとしては、アルミキャップが好適なものとしてあげられ、以下は、これらを例に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
さらに、前記瓶30に充填される液状製剤32としては、例えば、生理食塩水、注射用蒸留水、ブドウ糖液、電解質輸液、アミノ酸輸液、静注用脂肪乳剤等の輸液製剤の他、造影剤、ヒト血清アルブミン、ヒト免疫グロブリン及びヒトハプトグロブリン等の製剤や、その他の血漿分画製剤等が挙げられる。
【0023】
特に、本実施形態では、瓶を小型化するため、ヘッドスペース33が従来よりも小さくなるように瓶口31が形成されている。
【0024】
第2実施形態は、図3および図4に示すように、前述の第1実施形態とほぼ同様であり、異なる点は脚部20の外周面に環状リブ24を形成した点である。このため、同一部分については同一番号を附して説明を省略する。
本実施形態によれば、前記環状リブ24が瓶口31の内周面により強く圧接し、浮き上がりをより一層確実に防止できるという利点がある。
【実施例】
【0025】
(浮き上がり試験)
(実施例1ないし4)
ゴム栓は、図6に示すように、最大高さ12.3mmであり、天板部の外径28.4mm、天板部の最大厚さ4.8mmとした。脚部は最大外径19.6mm、高さ7.5mmで、外周面のアール半径9.0mmとした。さらに、前記脚部の下面中央に設けた略円錐台形状の中央空間部は深さ6.0mm、下方側直径13.5mm、上方側直径11.5mmであった。そして、脚部に深さ3.5mmの切り欠き窓部を巾寸法を変えて設けることにより、4種類のサンプルを準備した。なお、実施例1ないし4の天板部の上面中央には、図1Aで示したような凹所12は設けていない。
【0026】
(実施例5ないし8)
ゴム栓は、図1および図6に示す外形を有し、最大高さ11.8mmであり、天板部の外径28.4mm、天板部の最大厚さ4.3mmとした。脚部は最大外径19.6mm、高さ7.5mmで、外周面のアール半径12.75mmとした。さらに、前記脚部の下面中央に設けた略円錐台形状の中央空間部は深さ5.5mm、下方側直径14mm、上方側直径11.5mmであった。そして、脚部に深さ3.5mmの切り欠き窓部を巾寸法を変えて設けることにより、4種類のサンプルを準備した。
【0027】
(比較例1)
切り欠き窓部を設けない点を除き、他は実施例1ないし4において使用したゴム栓と同一形状のものをサンプルとした。
【0028】
(比較例2)
実施例5ないし8の脚部のうち、下端部から高さ3.5mmで一様に切断したものをサンプルとした。
【0029】
使用したガラス瓶は、図5に示す外形形状を有し、高さ105mm、最大外径52mm、細首部の外径24.5mm、瓶口外径28.9mm、瓶口最小内径18.7mm、内容積142.5mLであった。
【0030】
そして、所定量のヘッドスペースを確保できるように前記ガラス瓶に水を充填する。そして、前記ゴム栓のサンプルを打栓した後、アルミキャップで巻き締めせずに室温で放置し、3分以内にゴム栓が浮き上がる否かを目視で観察した。観察結果を図7中の各欄の上段に示す。なお、前記各欄の中段はゴム栓脚部の容積とヘッドスペースの容積とを示し、その下段はヘッドスペースに対するゴム栓脚部の容積比率を示す。
【0031】
図7から明らかなように、ヘッドスペースに対するゴム栓脚部の容積比率が15%を超えると、ゴム栓が浮き上がりやすくなることが判明した。
【0032】
(内圧測定)
(実施例1ないし8および比較例1,2)
前述の実施例1ないし8および比較例1,2にかかるゴム栓と、前述のガラス瓶とをサンプルとして内圧測定を行った。
【0033】
測定の方法は、前記瓶に所定量の水を充填し、前記ゴム栓を打栓した後、アルミキャップで巻き締めしないままの状態で、デジタル圧力センサー(キーエンス社製)に取り付けた注射針を前記ゴム栓に突き刺し、内圧を測定した。前述の測定を計5回繰り返し、測定結果として内圧の上,下限値および平均値を図8に示す。なお、説明の便宜上、図7の試験結果も併せて表示しておく。
【0034】
図8から明らかなように、ゴム栓は、内圧11Kpa前後から浮き上がりやすくなることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明にかかる液状製剤用口栓及びそれを備えた液状製剤用容器は、種々の医薬品に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる液状製剤用口栓の第1実施形態を示し、図1Aは斜視図、図2Bは縦断面図、図2Cは異なる位置での縦断面図である。
【図2】図2A,2Bは、図1で示した液状製剤用口栓の平面図および底面図である。
【図3】本発明にかかる液状製剤用口栓の第2実施形態を示し、図3Aは斜視図、図3Bは縦断面図、図3Cは異なる位置での縦断面図である。
【図4】図4A,4Bは、図3で示した液状製剤用口栓の平面図および底面図である。
【図5】図5A,5Bは、本発明にかかる液状製剤用口栓が装着される瓶の正面図,部分拡大断面図である。
【図6】実施例で使用される口栓のサンプルを示す正面図および底面図である。
【図7】浮き上がり試験結果を示す図表である。
【図8】ヘッドスペースの内圧測定結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0037】
10:ゴム栓
11:天板部
12:凹所
13:針刺し用凹部
14:突起
20:脚部
21:中央空間部
22:切り欠き窓部
23:上辺縁部
24:環状リブ
30:瓶
31:瓶口
32:液状製剤
33:ヘッドスペース
34:浅溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状製剤を充填する容器の容器口内径よりも大きい外径を有する天板部と、前記天板部の下面中央に突設した脚部とからなり、前記容器の容器口に打栓された後、キャップで巻き締めされる液状製剤用口栓において、
前記脚部の下面中央に中央空間部を設け、かつ、側面に少なくとも1つの切り欠き窓部を設けるとともに、前記脚部の最大外径が前記切り欠き窓部の上辺縁部の上に位置することを特徴とする液状製剤用口栓。
【請求項2】
脚部の側面に、一対の切り欠き窓部を対向するように形成したことを特徴とする請求項1に記載の液状製剤用口栓。
【請求項3】
脚部の外周形状を太鼓胴形状としたことを特徴とする請求項1または2に記載の液状製剤用口栓。
【請求項4】
脚部の外周面のうち、切り欠き窓部の上辺縁部よりも上に環状リブを設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液状製剤用口栓。
【請求項5】
脚部の容積が、容器のヘッドスペース容積の25%以下であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の液状製剤用口栓。
【請求項6】
脚部の容積を、容器の容器口に打栓した後のヘッドスペースの内圧が13Kpaを超えない容積としたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の液状製剤用口栓。
【請求項7】
口栓が、ゴム栓であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の液状製剤用口栓。
【請求項8】
キャップが、アルミキャップであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の液状製剤用口栓。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の液状製剤用口栓を備えた液状製剤用容器。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の液状製剤用口栓およびキャップを備えた液状製剤用容器。
【請求項11】
液状製剤が、ヒト血清アルブミン、ヒト免疫グロブリンおよびヒトハプトグロブリンからなる群から選ばれる製剤であることを特徴とする請求項9または10のいずれかに記載の液状製剤用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−280795(P2006−280795A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107655(P2005−107655)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(504194719)株式会社ベネシス (8)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】