説明

液状調味料の製造方法

【課題】ゴマの粉砕物、破砕物、磨砕物又はペーストと、キサンタンガムを含有する液状調味料において、これらのゴマ磨砕物等の含有量を増大させても、該液状調味料の粘度増加とゲル化を抑制し、性状が均一で流動性の良好な液状調味料を得る。
【解決手段】ゴマ含有液状調味料の製造方法において、ゴマの粉砕物、破砕物、磨砕物又はペーストと、キサンタンガムと、火入れしていない生醤油又は麹抽出液とを混和する際、前記生醤油又は麹抽出液を火入れすることなくそのまま用い、該混和後加熱殺菌して液状調味料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴマの粉砕物、破砕物、磨砕物又はペースト(以下これらを、ゴマ磨砕物等と言うことがある)と、キサンタンガムとを含有する液状調味料において、これらのゴマ磨砕物等の含有量を増大させても、該液状調味料の粘度増加とゲル化を抑制し、そして該ゴマ磨砕物等の含有量が多いにも拘らず、性状が均一で流動性の良好な液状調味料を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豆科植物の種子に含まれるガラクトマンナンは、増粘剤と共に液状調味料に添加使用され、加熱冷却が行われると、該液状調味料は粘度が著しく増加し、ゲル化することが知られている(非特許文献1参照)。
一方、ゴマ及び増粘剤を含有する液状調味料は、ゴマの含有量を増大させると、該液状調味料の粘度が著しく増加し、ゲル化することが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−89206
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Foods Food Ingredients J. Jpn. , Vol. 208, No.10 , 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はゴマの粉砕物、破砕物、磨砕物又はペーストと、増粘剤キサンタンガムとを含有する液状調味料において、これらのゴマ磨砕物等の含有量を増大させても、該液状調味料の粘度増加とゲル化を抑制し、そして、ゴマ磨砕物の含有量が多いにも拘らず、性状が均一で流動性の良好な液状調味料を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ゴマ含有液状調味料の製造方法において上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ゴマの粉砕物、破砕物、磨砕物又はペーストと、キサンタンガムとを混和する際、生醤油又は麹抽出液を火入れすることなくそのまま混和するときは、これらのゴマ磨砕物の含有量を増大させても、液状調味料の粘度増加とゲル化を抑制し、性状が均一で流動性の良好な液状調味料が得られることを見出した。そして、この知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち本発明は、ゴマの粉砕物、破砕物、磨砕物又はペーストと、キサンタンガムと、火入れしていない生醤油又は麹抽出液とを混和する際、前記生醤油又は麹抽出液を火入れすることなくそのまま用い、該混和後加熱殺菌する液状調味料の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ゴマ含有液状調味料において、ゴマ磨砕物の含有量を増大させても、粘度の増加とゲル化を抑制し、性状が均一で流動性の良好なゴマ含有液状調味料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を詳細に説明する。
まず本発明でいう麹とは、穀類(例えば米、麦、トウモロコシ、大豆等)及びその処理物(例えば脱脂大豆、分離タンパク、グルテン、フスマ等)の一種または二種以上を原料として用い、これらを加熱変性し、水分を調整した後、アスペルギルス属に属する微生物を接種、培養して得られるものを意味し、例えば通常の醤油麹、米麹、フスマ麹、麦麹等の固体麹、または通常の液体麹の製造法により得られる液体麹が挙げられる。
麹抽出液としては、麹の水抽出液、麹の消化液または液体麹濾過液などが挙げられる。
【0009】
また、生醤油としては、例えば通常の濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、再仕込醤油、または白醤油の製造法に従って調製された熟成諸味を圧搾濾過して得られた生揚げ醤油、この生揚げ醤油からマイクロフィルター、精密濾過膜などを使用して微生物をとり除いた醤油(加熱殺菌をしていないので醤油中の酵素などは残っている)などの生醤油が挙げられる。
【0010】
上記生醤油又は麹抽出液は、品温を80℃以上に加熱(火入れ)することなくそのまま用いることが重要であって、すなわち、火入れした、醤油又は麹抽出液を用いるときは、ゴマ磨砕物及びキサンタンガムを含有する液状調味料において、ゴマ磨砕物の含有量を増大させると、粘度が著しく増加し、ゲル化する危険性がり、本発明の目的を達成することができない。
【0011】
次に、ゴマ磨砕物は液状調味料に対して4%(W/W)以上含有されると、ゲル化しやすくなるが、この際生醤油又は麹抽出液を共存させると、該ゲル化を抑制できる。特にゴマ磨砕物が液状調味料に対して8〜25%(W/W)含有する液状調味料の場合、生醤油又は麹抽出液を共存させなければ該液状調味料は確実にゲル化する。したがって、ゴマ磨砕物は、液状調味料に対して4%(W/W)以上、特に8〜25%(W/W)含有するように添加使用することが好ましい。
【0012】
ゴマは、昔から栄養価が高く、ゴマ独特の風味が好まれ和風液状調味料として代表的な素材となっているので好ましい。またゴマとしては、白ゴマ、茶ゴマ、黒ゴマなどが挙げられる。
【0013】
本発明で用いるキサンタンガムは、ゴマ磨砕物の高濃度含有液状調味料において添加使用された場合に、増粘剤として良く知られているカラギーナン、トラガントガム、タマリンドシードガム、グアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム等に比べて、該調味料をゲル化する欠点がより強いので、本発明の該ゲル化抑制効果をより強く期待することができる。
【0014】
また液状調味料としは、醤油、食酢、甘味料(砂糖、液糖、三温糖、ブドウ糖など)、酒類(みりん、ワイン、清酒など)および化学調味料(グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムなど)などの一種または二種以上を適宜含有する液状調味料、例えばタレ、つゆ又はドレッシングなどが挙げられる。
【0015】
ゴマ磨砕物等及びキサンタンガムを含有する液状調味料に、生醤油又は麹抽出液を、火入れすることなくそのまま混和することは重要であって、すなわち火入れ後に混和する場合は、これらのゴマ磨砕物等の含有量を増大させようとすると、粘度が著しく増加し、ゲル化する危険性が増すため、本発明の目的は達成できない。
【0016】
また、液状調味料を最終工程にて加熱殺菌することも重要である。
この加熱殺菌により、生醤油又は麹抽出液由来の微生物を殺菌し、また残存酵素を失活し、液状調味料の風味劣化を防止し、保存安定性を向上できる効果を奏する。
加熱殺菌は、温度80℃〜130℃、30分〜2秒が好ましい。
【0017】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
[実施例1]
生醤油及びゴマ含有液状調味料の製造例(本発明1)
(1)原料と配合割合
濃口生醤油 150ml
みりん 130ml
砂糖 100g
食酢(酸度4.2)50ml
キサンタンガム 1.5g
ゴマ磨砕物 80g(注1参照)
ゴマ油 40g
水 適宜
(合計1000ml)
(注1) ゴマ磨砕物の調製
柴田科学器械工業社製の小型粉砕器「粉砕くん、SCM−40A型」の容器内に炒り白ゴマ100gを入れ、1分間粉砕機を稼動させた後、内容物を薬さじでほぐし、再び1分間粉砕機を稼動させた後、内容物を薬さじでほぐし、以下これを3回繰り返し、ゴマ磨砕物を得た。
(2) ゴマ含有液状調味料の調製法
上記原料を容器に入れ均一に攪拌し混和した。これに水を適宜加えて1000mlのゴマ含有液状調味料を調製した。これにクエン酸を添加して、pH4.3に調整した後、80℃で30分間加熱殺菌を行い、本発明1のゴマ含有液状調味料を得た。
【0019】
[実施例2]
醤油麹抽出液及びゴマ含有液状調味料の製造例(本発明2)
実施例1において、濃口生醤油に代えて、醤油麹抽出液(注2参照)を用いる以外は全く同様にして本発明2のゴマ含有液状調味料を得た。
(注2)醤油麹抽出液の調製
醤油麹10gに蒸留水100mlを加え、密栓して、室温(20℃)でときどき攪拌しながら4時間浸出し、濾紙で濾過し、醤油麹抽出液(濾液)を得た。
【0020】
[実施例3]
米麹抽出液及びゴマ含有液状調味料の製造例(本発明3)
実施例1において、濃口生醤油に代えて、米麹抽出液(注3参照)を用いる以外は全く同様にして本発明3のゴマ含有液状調味料を得た。
(注3)米麹抽出液の調製
米麹10gに蒸留水100mlを加え、密栓して、室温(20℃)でときどき攪拌しながら4時間浸出し、濾紙で濾過し、米麹抽出液(濾液)を得た。
(対照例)
【0021】
火入醤油及びゴマ含有液状調味料の製造例(対照例)
比較のため、実施例1において、濃口生醤油に代えて、該濃口生醤油を110℃で5秒火入れ処理し得られた濃口火入醤油を用いる以外は全く同様にして対照例のゴマ含有液状調味料を得た。
【0022】
上記対照例、実施例1〜実施例3で得られた4種類のゴマ含有液状調味料について表面の性状を肉眼で観察し、また流動性試験及び粘度測定を行った。
その結果を表1に示した。
【0023】
【表1】

【0024】
注1:表面の性状
ゴマ含有液状調味料の表面のデコボコ状態を肉眼で観察した結果を示す。
注2:流動性
25℃のゴマ含有液状調味料をスポイドで採取してその0.5mlを水平なガラス面に滴下し、その後ガラス面を30度傾斜させ該液状調味料が斜面を15cm進むのに要した時間(秒)で示した。時間が短いほど流動性が良いことを意味する。
注3:粘度
B型粘度計(No.2ローター、20rpm)を使用して、25℃のゴマ含有液状調味料の粘度(cPa.s)を測定した。同一サンプルにつき、合計5回測定し、その平均値で示した。
【0025】
表1の結果から、対照区分(火入醤油使用)の液状調味料は、表面にデコボコ(凹凸)が観察され、性状が均質でないことが判る。また、粘度が高く、流動性も悪いことが判る。これに対し本発明1区分(生醤油使用)、本発明2区分(醤油麹抽出液使用)及び本発明3区分(米麹抽出液使用)の液状調味料は、いずれも表面にデコボコが観察されずに平滑で均質であることが判る。また粘度が低く、流動性も非常に良好であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ゴマ磨砕物等及び増粘剤を含有する液状調味料、例えばたれ、つゆ、ドレッシングなどに広範に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴマの粉砕物、破砕物、磨砕物又はペーストと、キサンタンガムと、火入れしていない生醤油又は麹抽出液とを混和する際、前記生醤油又は麹抽出液を火入れすることなくそのまま用い、該混和後加熱殺菌する液状調味料の製造方法

【公開番号】特開2009−232867(P2009−232867A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168641(P2009−168641)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【分割の表示】特願2004−131212(P2004−131212)の分割
【原出願日】平成16年4月27日(2004.4.27)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】