説明

液状調味料の製造方法

【課題】 卵風味を強化しながらも、口溶けの良い液状調味料の製造方法を提供する。
【解決手段】 製品に対し好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.3%以上の茹卵を原料とする粉末卵と、製品に対し好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.3%以上の生(なま)醤油を混合した後、加熱処理することを特徴とする液状調味料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵風味を強化しながらも、口溶けの良い液状調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状調味料とは、マヨネーズ、ドレッシングなどの野菜サラダにかける酸性液状調味料、カルボナーラソースなどの調理ソースや、タレなどが挙げられる。特にドレッシング、パスタソースは、近年その需要が拡大しており、味の多様化が求められている。
【0003】
乳化状の調味料や調理ソースには、通常、乳化力付与を目的として卵黄が配合されているが、卵は、それ以外にも、卵風味、コク味、黄色い色調の付与を目的として液状調味料に配合される場合がある。特に、マヨネーズやカルボナーラソースなどは、卵の配合量の多い液状調味料であり、一般的に卵風味や黄色い色調が強い程、美味しく、高級感があるとされている。
【0004】
しかしながら、卵は強い乳化力を有しているため、多量に配合すると液状調味料の物性が変化してしまう。また、卵は熱凝固力を有しており、加熱工程を必要とする液状調味料に配合すると、その物性が変化してしまう。そのため、液状調味料への卵の配合量が制限され、卵風味の強化された液状調味料の製造は困難であった。
【0005】
これらの課題解決を目的として、加熱凝固した卵粒子を液状調味料に配合することが知られている(特許文献1)。ここで特許文献1の加熱凝固した卵粒子とは、特許文献1の明細書に記載の鶏卵含有食品原料のことであり、液卵をpH8.0以下に調整し、加熱処理した後、微細化処理することを特徴としている。
【0006】
これにより得られた鶏卵含有食品原料は、蛋白質の一部又は全部が加熱により変性しており、加熱凝固力が低下しているため、これを含有した液状調味料の物性が、その製造工程における加熱処理によって大きく変化することはない。しかしながら、上記文献1の鶏卵含有食品原料は、粒子自体が水不溶性であり、ざらついた食感を感じさせるため、これを含有する液状調味料の口溶けが悪くなるとの問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−111663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、卵風味を強化しながらも、口溶けの良い液状調味料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく液状調味料に使用されている様々な配合原料、及び製造工程について鋭意研究を重ねた。その結果、茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油を混合した後、加熱処理することで、意外にも、液状調味料の卵風味が強化されながらも、口溶けが良くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油を混合した後、加熱処理する液状調味料の製造方法、
(2)製品に対し茹卵を原料とする粉末卵の含有量が固形分換算で0.1%以上である(1)の液状調味料の製造方法、
(3)製品に対し生(なま)醤油の含有量が0.1%以上である(1)又は(2)の液状調味料の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、卵風味を強化しながらも、口溶けの良い液状調味料を提供することができ、さらなる液状調味料の需要拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の調味料を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0013】
本発明の液状調味料は、茹卵を原料とする粉末卵を含有しており、卵を含有する液状調味料としては、一般的にマヨネーズ、ドレッシングなどの酸性液状調味料、カルボナーラソースなどのパスタソースなどが挙げられる。しかしながら、本発明の液状調味料は、これらに限定するものではなく、シチュー、カレーなどの加熱調理済み調理ソース、その他のソース類、タレ類などが含有される。
【0014】
本発明の液状調味料は、茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油を混合した後、加熱処理することを特徴としており、これにより液状調味料は、卵風味を強化しながらも、口溶けの良いものとなる。
【0015】
本発明で用いる茹卵を原料とする粉末卵とは、茹卵にペースト化処理、および乾燥処理などを施すことで得られる粉末卵のことである。また、本発明で用いる茹卵を原料とする粉末卵の製造方法は、茹卵を原料とする粉末卵が得られる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば以下のようにして製造できる。
【0016】
まず、茹卵の原料として用いる殻付卵は、食用に供されるものであれば特に制限はなく、鶏卵、鶉卵、アヒル卵などを用いればよい。次に、卵を加熱変性させて加熱凝固させる。用意した殻付卵をそのまま85℃〜100℃の熱水中で5〜20分間加熱処理して中身を加熱凝固させた後、冷水等を用いて冷却し、次いで、殻を除去して茹卵を調製する。この際、茹卵は、加熱凝固の程度が、卵白部の流動性が無い程度まで加熱凝固していればよい。したがって、本発明においては、卵黄部及び卵白部の流動性が無い程度まで加熱凝固した固茹での茹卵はもちろんのこと、卵白部は流動性が無い程度まで加熱凝固しているが、卵黄部の一部に流動性が残る程度までしか加熱凝固していない半熟状の茹卵を用いてもよい。また、前記加熱処理方法は、他の方法、例えば、マイクロ波加熱などを用いてもよい。
【0017】
続いて、得られた茹卵を、例えば、コミトロール、サイレントカッター、マスコロイダー、チョッパー、ミキサー、ニーダー等により截断してペースト化処理を施す。ペースト化処理の程度は、ペースト化処理物の大きさが、好ましくは1mm以下、より好ましくは0.5mm以下となるように処理すると、茹卵を原料とする粉末卵を含有した液状調味料の口溶けの点から好ましい。また、得られたペースト化処理物は、必要に応じて均質化処理を施してもよい。
【0018】
均質化処理は、均質化処理装置として、例えば、高圧ホモゲナイザー、高速ホモゲナイザー、コロイドミルなどを用いて行うことができる。特に、高圧ホモゲナイザーを用いると、茹卵を原料とする粉末卵を含有した液状調味料の口溶けの点から好ましい。均質化処理の具体的な処理条件を、高圧ホモゲナイザーを例に述べると、圧力(ゲージ圧)が好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上である。ゲージ圧が高い方が液状調味料の口溶けがより良くなる傾向にあるため好ましい。また、本発明は、圧力の上限を特に規定するものではないが、高圧ホモゲナイザーの装置の規模や処理能力を考慮し、150MPa以下が好ましく、100MPa以下がより好ましい。
【0019】
なお、本発明は、加熱凝固卵をペースト化処理する際、ペースト化処理物を均質化処理する際、あるいは均質化処理後に、必要に応じ清水を加水してもよい。加水量としては、上述した処理のし易さ、後述の乾燥処理の生産効率を考慮し、茹卵1部に対し清水を好ましくは0.1〜15部、より好ましくは0.2〜10部である。
【0020】
最後に、得られたペースト化処理物、又は均質化処理物を水分10%以下となるように乾燥処理を施し、本発明で用いる粉末卵を製する。水分10%以下となるように乾燥処理を施すことにより、茹卵を原料とする粉末卵を含有した液状調味料の卵風味がより強化されるため好ましい。乾燥処理は任意の方法を用いることができ、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、マイクロ波乾燥、熱風乾燥、パンドライなどが挙げられるが、本発明の効果を奏し易い噴霧乾燥が好ましい。また、得られた粉末卵は、必要に応じ粉砕処理を施してもよい。
【0021】
また、本発明で用いる生(なま)醤油とは、通常の濃口醤油、薄口醤油、溜り醤油などの製造工程において、製造原料の発酵、熟成を行った熟成諸味を圧搾濾過して得られた、火入れ工程前の生揚げ醤油のことである。また、この生揚げ醤油から、マイクロフィルターなどを用いて微生物を取り除いた醤油なども含まれる。
【0022】
本発明で用いる生(なま)醤油の製造方法は、生(なま)醤油が得られる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば以下のようにして製造できる。
【0023】
まず、常法により醤油の原料である大豆、小麦を蒸煮加熱などの加熱処理によりタンパク質変性をさせる。次いで麹菌が育成しやすい環境下で製麹を行い、食塩水を混ぜて諸味を製造する。次いで、熟成した諸味を圧搾して得た生揚げ醤油からマイクロフィルター、精密ろ過膜などを使用し微生物を取り除く方法などが挙げられる。
【0024】
本発明の液状調味料の製造方法は、上述の茹卵を原料とする粉末卵、及び生(なま)醤油を混合した後、当該混合液を加熱処理することを特徴とする。液状調味料の製造工程において、加熱処理を行うタイミングは、茹卵を原料とする粉末卵、及び生(なま)醤油を混合した後であれば良く、特に限定するものではない。
【0025】
例えば、乳化液状調味料の製造方法の場合は、茹卵を原料とする粉末卵、生(なま)醤油、及びその他の水相原料を混合した後、ミキサーで均一に攪拌し、液状調味料の水相部を調製する。次いで当該水相部を攪拌させながら油相部の植物油を徐々に注加して乳化状の混合液を調製し、得られた混合液に加熱処理を施した後、容器に充填する方法などが挙げられる。また、分離液状調味料の製造方法の場合は、上記乳化液状調味料の製造方法と同様の方法で調製した水相部に加熱処理を施した後、容器に充填し、その後油相部の植物油を積層する方法などが挙げられる。また、ノンオイル調味料の製造方法の場合は、全原材料を混合した後、ミキサーで均一に攪拌し、得られた混合液に加熱処理を施した後、容器に充填する方法などが挙げられる。また、カルボナーラ用レトルトソースの製造方法の場合は、茹卵を原料とする粉末卵、及び生(なま)醤油を含む配合のカルボナーラ用ソースを常法により調製し、レトルトパックに充填した後、レトルト処理を施す方法などが挙げられる。
【0026】
本発明の液状調味料の製造方法は、上述の通り、茹卵を原料とする粉末卵、及び生(なま)醤油を混合した後、加熱処理することではじめて、液状調味料の卵風味が強化され、口溶けが良いものとなる。後述の試験例2で示す通り、茹卵を原料とする粉末卵、及び生(なま)醤油を混合した後、加熱処理をしない製造方法により得られた液状調味料(比較例4)は、加熱処理を施した液状調味料(実施例1)と比較して、卵風味が十分に強化され難い傾向にあるため好ましくない。
【0027】
また、後述の試験例3で示す通り、生(なま)醤油を加熱処理した後に茹卵を原料とする粉末卵を混合する製造方法により得られた液状調味料(比較例5)は、口溶けの良いものとならず好ましくない。
【0028】
本発明において、茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油を混合した後、加熱処理までの時間は、5分〜24時間が好ましく、10分〜12時間がより好ましい。上記時間が前記値よりも短いと、たとえ後述の茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油を混合し、加熱処理をしたとしても、得られた液状調味料は、口溶けの良いものとならず好ましくない。また、上記時間が前記値よりも長いと、上記時間内で加熱処理した液状調味料と比較して、卵風味が十分に強化され難い傾向にあるため好ましくない。
【0029】
また、本発明の液状調味料の製造方法における加熱処理条件は、通常、液状食品において殺菌を行う程度の条件であれば良く、具体的には、加熱温度は、60〜140℃が好ましく、65℃〜130℃がより好ましい。また、加熱時間は、2秒〜90分間が好ましく、5秒〜60分間がより好ましい。加熱温度が前記値よりも低いと、又は加熱時間が前記値よりも短いと、得られた液状調味料の卵風味が十分に強化され難い傾向にあるため好ましくない。また、加熱温度が前記値よりも高いと、または加熱時間が前記値よりも長いと、液状調味料の風味が劣化してしまうため好ましくない。なお、本発明の液状調味料の製造方法における加熱処理の方法は、上記加熱処理ができる方法であれば、特に限定するものではないが、例えば、湯せん、二重釜を用いて蒸気、熱水などの熱媒体を入れて加熱する方法、プレート式熱交換器を用いて加熱する方法、チューブ式熱交換器を用いて加熱する方法などが挙げられる。
【0030】
液状調味料に対する茹卵を原料とする粉末卵の含有量は固形分換算で0.1%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましい。茹卵を原料とする粉末卵の含有量が前記値より少ないと、たとえ後述の生(なま)醤油を混合し、加熱処理をしたとしても、液状調味料の卵風味が十分に強化され難く好ましくない。また、液状調味料に対する生(なま)醤油の含有量は0.1%以上が好ましく、0.3%以上がより好ましい。生(なま)醤油の含有量が前記値より少ないと、たとえ上述の茹卵を原料とする粉末卵を混合し、加熱処理をしたとしても、口溶けの良い液状調味料が得られ難く好ましくない。
【0031】
なお、本発明においては、茹卵を原料とする粉末卵が多いほど、液状調味料の卵風味がより強化される傾向にあるため、茹卵を原料とする粉末卵の含有量は上限が規定されていないが、卵風味と醤油風味のバランスを考慮して、液状調味料に対する茹卵を原料とする粉末卵の含有量は固形分換算で15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、本発明においては、生(なま)醤油の含有量が多いほど、液状調味料の口溶けが良くなる傾向にあるため、生(なま)醤油の含有量は上限が規定されていないが、卵風味と醤油風味のバランスを考慮して、液状調味料に対する生(なま)醤油の含有量は30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
【0032】
本発明の液状調味料には、上記茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油以外に、本発明の効果を損なわない範囲で当該食品に一般的に使用されている各種原料を適宜選択し配合させることができる。例えば、食酢、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、醤油(生(なま)醤油を除く)、味噌などの各種調味料、各種エキス、菜種類、コーン油、綿実油、サフラワー油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油などの動植物油又はこれらの精製油(サラダ油)、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油などのような化学的あるいは酵素的処理などを施して得られる油脂などの食用油脂、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、アラビアガム、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、うるち米澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、ワキシコーンスターチ、もち米澱粉、湿熱処理澱粉、又はアセチル化アビジン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉などの加工澱粉などの増粘材、全卵、卵黄、ホスフォリパーゼA、ホスフォリパーゼA、ホスフォリパーゼC若しくはホスフォリパーゼDで酵素処理した卵黄、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、ラクトアルブミン、カゼインナトリウムなどの乳化材、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンEなどの酸化防止剤、色素、香味食材や各種野菜のおろし、ペースト状物、截断物などの具材の粉砕物、生姜、わさび、にんにくなどの薬味などが挙げられる。
【0033】
以下、本発明について、実施例、比較例並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
<茹卵を原料とする粉末卵の製造方法>
殻付生卵(鶏卵、MSサイズ)を95℃の熱水に投入し、15分間加熱して凝固させた後、4℃の冷水で冷却して殻を剥き茹卵を得た。次に、得られた茹卵に等質量の清水を加え、コミトロール(アーシェル社製、モデルナンバー1700、212ブレード)でペースト化処理を施した。次に、得られたペースト化処理物を高圧ホモゲナイザーで圧力(ゲージ圧)20MPaで均質化処理を施した。次に、得られた均質化処理物を遠心アトマイザー方式の噴霧乾燥装置(ニロ(NIRO)社製、型番プロダクションマイナ型)を用いアトマイザー回転速度18000rpm、送風温度160℃、排風温度65℃の条件で乾燥処理を施し、本発明で用いる茹卵を原料とする粉末卵を得た。
【0035】
<酸性乳化液状ドレッシングの製造方法>
下記の配合割合に準じ、得られた茹卵を原料とする粉末卵、生(なま)醤油、及びその他の水相原料を混合し、ミキサーで均一に攪拌し、水相部を調製した。次いで、得られた水相部を攪拌させながら油層の植物油を徐々に注加して粗乳化物を製し、更に高速で攪拌して仕上げ乳化を行った。得られた乳化物をゆっくり攪拌させながら70℃に加熱し、70℃で5分間加熱処理を施した後、250mL容量のポリエチレンテレフタレート製の容器(以下、PET容器)に充填し、酸性乳化液状ドレッシングを製した。なお、得られた酸性乳化液状ドレッシングは茹卵を原料とする粉末卵を固形分換算で2%、生(なま)醤油を2%含むものであった。
【0036】
<酸性乳化液状ドレッシングの配合割合>
(油相)
植物油 50%
(水相)
食酢(酸度5%) 10%
グラニュー糖 5%
殺菌卵黄 3%
食塩 2.5%
茹卵を原料とする粉末卵(実施例1) 2%
生(なま)醤油 2%
グルタミン酸ソーダ 0.2%
キサンタンガム 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0037】
得られた酸性乳化液状ドレッシングを喫食したところ、酸性乳化液状ドレッシングは卵風味が強化され、口溶けの良いものであった。
【0038】
[比較例1]
実施例1の茹卵を原料とした粉末卵を製造する過程で製造されたペースト化処理物(以下、茹卵のペースト化処理物とする)を単離した。次に、実施例1の酸性乳化液状ドレッシングにおいて、実施例1で用いた茹卵を原料とする粉末卵(配合量2%)を、前記茹卵のペースト化処理物(配合量8%)に置換した以外は、実施例1と同様の方法で酸性乳化液状ドレッシングを製した。なお、得られた酸性乳化液状ドレッシングは前記茹卵のペースト状物を固形分換算で2%、生(なま)醤油を2%含むものであった。
【0039】
[比較例2]
実施例1の酸性乳化液状ドレッシングにおいて、実施例1で用いた茹卵を原料とした粉末卵を、市販の乾燥全卵粉(キユーピータマゴ株式会社/乾燥全卵No.1)に置換した以外は、実施例1と同様の方法で酸性乳化液状ドレッシングを製した。また、得られた酸性乳化液状ドレッシングは前記乾燥全卵粉を固形分換算で2%、生(なま)醤油を2%含むものであった。
【0040】
[比較例3]
実施例1の酸性乳化液状ドレッシングにおいて、実施例1で用いた生(なま)醤油を、濃口醤油に置換した以外は、実施例1と同様の方法で酸性乳化液状ドレッシングを製した。
【0041】
[試験例1]
実施例1(茹卵を原料とする粉末卵を含有)、比較例1(茹卵のペースト化処理物を含有)、比較例2(乾燥全卵粉を含有)、及び比較例3(濃口醤油を含有)で得られた酸性乳化液状ドレッシングを用いて、含有される卵加工品、醤油の違いによる、液状調味料の卵風味と口溶けへの影響を調べた。具体的には、得られたそれぞれの酸性乳化液状ドレッシングを喫食して、酸性乳化液状ドレッシングの卵風味、及び口溶けを評価した。
【0042】
「酸性乳化液状ドレッシングの卵風味」の評価
ランク:基準
A: 卵風味が十分に強化されている
B: 卵風味が強化されている
C: 卵風味がやや強化されているが十分でない
D: 卵風味が強化されていない
【0043】
「酸性乳化液状ドレッシングの口溶け」の評価
ランク:基準
A: 十分に口溶けが良い
B: 口溶けが良い
C: 口溶けが悪い
【0044】
【表1】

【0045】
表1より、茹卵を原料とする粉末卵、及び生(なま)醤油を用いないと、卵風味が強化されながらも、口溶けの良い液状調味料が得られないことが理解される。
【0046】
[比較例4]
実施例1の酸性乳化液状ドレッシングの製造方法において、加熱処理工程を除いた以外は実施例1と同様の方法で酸性乳化液状ドレッシングを製した。
【0047】
[試験例2]
実施例1、及び比較例4で得られた酸性乳化液状ドレッシングを用いて、液状調味料の製造工程における加熱処理工程の有無による、液状調味料の卵風味への影響を調べた。具体的には、得られたそれぞれの酸性乳化液状ドレッシングを喫食して、酸性乳化液状ドレッシングの卵風味を評価した。なお、酸性乳化液状ドレッシングの卵風味の評価基準は試験例1と同様とする。
【0048】
【表2】

【0049】
表2より、茹卵を原料とする粉末卵、及び生(なま)醤油を混合した後、加熱処理をしない製造方法により得られた酸性乳化液状ドレッシング(比較例4)は、加熱処理を施した酸性乳化液状ドレッシング(実施例1)と比較して、卵風味が十分に強化され難いことが理解される。
【0050】
[比較例5]
実施例1の酸性乳化液状ドレッシングの製造方法において、生(なま)醤油を70℃に加熱し、70℃で5分間加熱処理を施し、次いで茹卵を原料とする粉末卵を含む残りの水相原料を混合し、ミキサーで均一に攪拌し、水層部を調製した。それ以外は実施例1と同様の方法で酸性乳化液状ドレッシングを製した。
【0051】
[試験例3]
実施例1、及び比較例5で得られた酸性乳化液状ドレッシングを用いて、液状調味料の製造工程における加熱処理のタイミングの違いによる、液状調味料の口溶けへの影響を調べた。具体的には、得られたそれぞれの酸性乳化液状ドレッシングを喫食して、酸性乳化液状ドレッシングの口溶けを評価した。なお、酸性乳化液状ドレッシングの口溶けの評価基準は試験例1と同様とする。
【0052】
【表3】

【0053】
表3より、生(なま)醤油を加熱処理した後に茹卵を原料とする粉末卵を混合する酸性乳化液状ドレッシングの製造方法では、口溶けの良い酸性乳化液状ドレッシングが得られないことが理解される。これにより、茹卵を原料とする粉末卵、及び生(なま)醤油を混合した後に加熱処理を施すことではじめて、得られた液状調味料の口溶けが良くなることが明らかとなった。
【0054】
[試験例4]
茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油の含有量の違いによる、液状調味料の卵風味と口溶けへの影響を調べた。具体的には、実施例1において、茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油の含有量を表4に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法で酸性乳化液状ドレッシングを製し、得られたそれぞれの酸性乳化液状ドレッシングを喫食して、酸性乳化液状ドレッシングの卵風味と口溶けを評価した。なお、酸性乳化液状ドレッシングの卵風味、及び口溶けの評価基準は試験例1と同様とする。また、得られた酸性乳化液状ドレッシングは茹卵を原料とする粉末卵(固形分換算)、及び生(なま)醤油を表4で示す量含有するものである。
【0055】
【表4】

【0056】
表4より、茹卵を原料とする粉末卵の含有量が固形分換算で0.1%以上である液状調味料は卵風味が強化されており、0.3%以上である液状調味料はより卵風味が強化されていることが理解される。また、生(なま)醤油の含有量が0.1%以上である液状調味料は口溶けが良く、0.3%以上である液状調味料はより口溶けが良いことが理解される。
【0057】
[実施例2]
<分離液状ドレッシングの製造方法>
下記の配合に準じ、まず乳化相部において植物油以外の原料をミキサーで均一に混合した後、当該混合液を攪拌させながら植物油を徐々に注加して粗乳化物を製し、更に高速で攪拌して仕上げ乳化を行い乳化相部を調製した。得られた乳化物をゆっくり攪拌させながら80℃に加熱し、80℃で1分間加熱処理を施した後、分離液状ドレッシングの容量が250mLとなるように250mL容量のPET容器に上記乳化相部を充填し、残りの油相部である植物油を充填して乳化相部に油相部を積層させ、乳化相を有する分離液状ドレッシングを製した。なお、得られた分離液状ドレッシングは茹卵を原料とする粉末卵を固形分換算で1%、生(なま)醤油を20%含むものであった。
【0058】
<分離液状ドレッシングの配合割合>
(油相部)
植物油 10%
(乳化相部)
植物油 20%
ブドウ糖果糖液糖 10%
食酢(酸度5%) 5%
殺菌卵黄 2%
茹卵を原料とする粉末卵(実施例1) 1%
生(なま)醤油 20%
グルタミン酸ソーダ 0.2%
キサンタンガム 0.2%
香辛料 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0059】
得られた分離液状ドレッシングを上下に振って一時的に乳化させた後、喫食したところ、分離液状ドレッシングは、卵風味が強化され、口溶けの良いものであった。
【0060】
[実施例3]
<カルボナーラ用レトルトソースの製造方法>
二重釜に清水を入れ、加熱攪拌させながら牛乳、オリゴ糖アルコール、生クリーム、チーズ、生卵黄、茹卵を原料とする粉末卵(実施例1)、生(なま)醤油、食塩、マーガリン、グルタミン酸ソーダ、及びタマリンドガムを加えて、90℃達温後加熱を停止し、ベーコンとブラックペパーを加え仕上げ攪拌しカルボナーラ用ソースを得た。得られたソースを140gずつ耐熱性のレトルトパウチに充填・密封した後、120℃×20分間レトルト処理し、冷却してカルボナーラ用レトルトソースを得た。なお、得られたカルボナーラ用レトルトソースは茹卵を原料とする粉末卵を固形分換算で3%、生(なま)醤油を1%含むものであった。
【0061】
<カルボナーラ用レトルトソースの配合割合>
牛乳 60%
オリゴ糖アルコール 8%
生クリーム 5%
チーズ 3%
生卵黄 3%
茹卵を原料とする粉末卵(実施例1) 3%
生(なま)醤油 1%
食塩 1.2%
マーガリン 1%
グルタミン酸ソーダ 0.8%
タマリンドガム 0.2%
ベーコン 8%
ブラックペパー 0.1%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0062】
得られたカルボナーラ用レトルトソースを喫食したところ、カルボナーラ用レトルトソースは卵風味が強化され、口溶けの良いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茹卵を原料とする粉末卵と生(なま)醤油を混合した後、加熱処理することを特徴とする液状調味料の製造方法。
【請求項2】
製品に対し茹卵を原料とする粉末卵の含有量が固形分換算で0.1%以上である請求項1に記載の液状調味料の製造方法。
【請求項3】
製品に対し生(なま)醤油の含有量が0.1%以上である請求項1又は2に記載の液状調味料の製造方法。