説明

液面センサー

陰圧創傷治療に使用される容器への流体の液面レベルを測定するための液面センサーを提供する。前記センサーは、前記容器及びその中の流体を貫通する電界線を発生させるための導電板のアレイを含み、前記導電板がコンデンサーの板として機能する。前記板(1〜4)は前記容器の壁に近く位置し、プリント基板、電子デバイス及びソフトウェアに接続され、前記板同士間の静電容量の相対的変化に基づいて、前記容器における流体の液面レベルを測定するものである。前記静電容量は前記変化を表す電圧信号に変換される。1つ以上の点における液面レベルを指示し、さらに前記液面レベルを追跡するために、所定の期間における流体の液面レベルを調べるための算法が設計される。前記液面センサーは、必要に応じて、前記容器の垂直、水平その他の姿勢において使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液面センサーに関し、特に、陰圧創傷治療(negative pressure wound therapy)に使用される容器への流体の液面レベルまたは流体の流量を測定する液面センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
この技術は、創口から滲出液を取り除いて、創傷部位において減圧を維持するために、ポンプにより創傷に陰圧を加えるものである。これらのポンプ装置を使用する際には、容器が完全に充満されないように、容器に収まった滲出液の液面レベルを監視しなければならない。これは、ポンプユニットへの汚染の回避及び正しい治療の確保にとって重要である。滲出液が感染性を有し、且つ容器が使い捨ての場合もあるため、非接触式の液面レベル検出方法の採用が重要な利点となる。
【0003】
液面レベルの測定に用いられる技術としては、浮揚物(float)、接触物(contact)、超音波や光などによるものが多いが、静電容量または電界の検知が創傷滲出液の液面レベルの測定に最も好ましいと言えるかもしれない。回路に接続された容器の外部に導電素子を設置することにより、形成されたコンデンサーの静電容量のすべての変化が検知されることが知られている。静電容量の変化は、容器と流体との組合せの誘電率がその中の流体の液面レベルの変化によって変化することに起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなセンサーは、「オン」または「オフ」のどちらかにされ、流体がいつコンデンサー素子のレベルに達するかを検出するが、容器内の数ヶ所における流体の液面レベルの検出や流体の流れの追跡を行うことができない。
【0005】
前記センサーは、容器内の液面レベルと容器の壁に飛び散った液滴とを識別することもできない。
【0006】
本発明はその改善を図っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、人体からの流体を収容することに使用される容器における流体の液面レベルを測定する静電容量式液面センサーであって、前記容器は、人体から流体を取り除く機構と、流体を容器に流れ込ませるポートと、筐体内において容器の外部に位置して容器外壁に近接する一連の導電板からなるコンデンサーと、容器における流体の液面レベルが上昇したとき、前記一連の導電板間の静電容量の相対的変化を検知するとともに、信号を発生させて容器における流体の液面レベルの位置を指示する機構とに接続される、静電容量式液面センサーを提供する。
【0008】
設定された液面レベルに対応する静電容量値を示す信号のみが供給される従来の装置に比べると、本発明は、容器における様々な設定点を示す信号を供給することができるとともに、達した液面レベルと容器の壁に飛び散った液滴とを識別することができる点で異なっている。流体が液面レベルに達したときの導電板間の相対的変化よりも、流体が飛び散ったときの導電板間の相対的変化の方が激しい。本発明によれば、様々なサイズの容器を使用する場合でも、液面レベル点を動的に変更することができるが、これは従来のシステムにはなかったものである。
【0009】
好ましくは、液面センサーの導電板と電子デバイスが前記容器を収容する筐体機構の内面に取り付けられ、筐体機構の内部にある導電板の表面が、静電容量変化が検出されないように遮蔽されることにより、容器内の液面レベルによる静電容量の変化のみが検出される。容器の上方にある筐体の内面に参照導電板が備えられ、液面レベルの検知と看護師や介護人が前記装置を操作する時の静電容量の変化とを区別することが利点である。
【0010】
好ましくは、前記液面センサーが、容器が垂直、水平またはその他の配向になった場合に、流体の液面レベルを検出することができる。
【0011】
好ましくは、板同士間のすべての静電容量の相対的変化が検出され、液面レベルに対する連続的な計測が行われる。これは、容器が間もなく充満となる時間を示すことができる液面レベルの追跡手段を提供していることが利点である。
【0012】
より好ましくは、液面レベルの追跡が液面レベルの変化率を連続的に測定し、さらに好ましくは、液面レベルの増加が所定の閾値を超えると警報をトリガーする機構を備える。「正常」な創傷は1時間に0〜4mlの滲出物を生じることが多いが、それらのレベルの経時的変化は、創傷癒合の進行に有用な指示となる。
【0013】
前記導電板は、様々なレベルの正確度及び感度が付与されるよう種々の配置にしてもよい。好ましくは、導電板が薄い金属帯板に形成されることにより、それぞれの帯板間の静電容量の変化が検出され、液面レベル、飛び散り及び流量を示す、より高感度で、かつ、より正確な信号を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の図面を参照しながら、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0015】
【図1】本発明の好ましい実施形態にかかる液面センサーを模式的に示す図である。
【図2】液面センサーの別の配置を示す図である。
【図3】液面センサーの別の配置を示す図である。
【図4】液面センサーの別の配置を示す図である。
【図5】液面センサーの別の配置を示す図である。
【図6】容器が垂直配向になる場合の液面センサーの出力及び複数のトリガー点を示す図である。
【図7】容器が水平配向になる場合の液面センサーの出力及び複数のトリガー点を示す図である。
【図8】本発明にかかる連続的な液面レベルの追跡を示す図である。
【図9a】液面センサーの導電板の種々の配置を示す図である。
【図9b】液面センサーの導電板の種々の配置を示す図である。
【図9c】液面センサーの導電板の種々の配置を示す図である。
【図9d】液面センサーの導電板の種々の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、好ましい実施形態における液面センサーは、同図に示すような基本的な配置の導電板のアレイを備えている。前記アレイの前側には、薄い帯板に配置された導電板1〜4が設けられている。これらの帯板の高さは、容器が垂直と水平配向の両方における容器の高さをカバーするように設計されている。前記導電帯板1〜4は、薄くて可撓性のある金属材で製作され、絶縁材により互いに離間されることが好ましい。前記帯板は通常の可撓性のあるプリント基板(詳述せず)に取り付けられている。
【0017】
図2〜5における液面センサーの種々の配置に示すように、使用される導電板の数は限定されない。また、容器のサイズ及び形状に応じて、導電板は薄い帯板、線材又は点の形でもよい。図9a〜9dには、導電板の可能な変形実施を示す。プリント基板の裏面には、導電板1〜4を覆い、導電板がアレイの後側ではなく、アレイの前側における静電容量の変化のみをピックアップするように確保する遮蔽板が設置されている。さらに、液面レベルによるのではなく、容器の操作による静電容量の変化を検出する参照板4が備えられている。
【0018】
前記導電板1〜4は、容器及びその中の流体を貫通する電界線を発生することが可能なサイズを有することにより、コンデンサーの板として機能する。前記板1〜4は、液面レベルを測定すべき容器の壁の近くに位置している。液面センサーは、容器の壁に接触する、または、さらに離れるように容器を通して流体を引き出すポンプの筐体の壁に定位される。このようにして、センサーは容器から見えなくなるようにすることができる。
【0019】
前記導電板1〜4は、プリント基板及び通常の電子デバイスとソフトウェアに接続され、板同士の間の静電容量の相対的変化によって液面レベルを測定する。前記静電容量は、電気信号、即ち、一般的に変化を表す電圧信号に変換される。静電容量の変化は、量に対する静電容量レベル(capacitance level against volume)の連続的な計測を提供する。特に、所定の期間における液面レベルを調べるために算法が設計される。これにより、この装置は1つ以上の点の液面レベルを指示し、必要な時に警報を与えることができるだけでなく、液面レベルを追跡することも可能である。前記液面センサーは、必要に応じて容器が垂直、水平またはその他の姿勢のときに使用することができる。容器の液面レベルの上昇に従い、導電板からの電圧出力は、図6及び図7におけるトレースに示すように変化する。図6及び図7において、複数の液面レベルが選択され、これにより、液面レベルの指示がトリガーされ、または、約400ml、450ml及び500mlで警報が与えられる。
【0020】
患者によって、容器を充たす滲出液の誘電性やその他の性質が異なる可能性がある。そのため、導電板は、平均値または参照レベルに対する値ではなく、板同士の間の静電容量の相対的変化の比較によって、その出力を自己較正するように配置される。このようにして、異なる流体による異なる影響が取り除かれる。このようなレシオメトリック技術によれば、平均値の検出よりも高い感度と正確度が実現できる。
【0021】
従来のシステムは1つの点でしかトリガーされないが、本発明のセンサーシステムは、1つ以上の点のレベルを指示するのみならず、警報を与えることができ、しかも、流体が容器を充たし過ぎないように、いつポンプをオフにするかを指示することもできる。
【0022】
より多くのトリガーレベルが必要な場合は、より多くの導電板を追加し、または、制御算法を変更すればよい。
【0023】
図8には、液面レベルに対する連続的な追跡を示す。すべての導電板からの出力を加算して電圧出力と量との相対的線形関係を得る。
【0024】
創傷治療装置における連続的な追跡の利点は、滲出物の液面レベルの上昇が速すぎるかどうかが見えることにある。上昇が速すぎる場合、病態が悪化していることを表す。「正常」な創傷は1時間に0〜4mlの滲出物を生じることが多い。それらのレベルの経時的変化は、創傷癒合の進行に有用な指示となる。液面レベルの変化率が高すぎることによって血液が創傷に入り始めたかどうかが検出でき、それは救命にかかる潜在的な特徴となる。
【0025】
センサーソフトウェアは、滲出物が高圧の場合、または治療開始の場合の初期サージ(initial surge)で、センサーに近接する缶壁に転移されることによる飛び散りや汚れの検出に適用される。センサーソフトウェアは、所定の時間スケールで所定の条件を満たした場合、飛び散りと真の充満とを識別することができる。
【符号の説明】
【0026】
1,2,3,4 導電板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体からの流体を収容することに使用される容器における流体の液面レベルを測定する静電容量式液面センサーであって、
前記容器は、
人体から流体を取り除く機構と、
流体を前記容器に流れ込ませるポートと、
前記容器の外部に位置して前記容器の外壁に近接する一連の導電板からなるコンデンサーと、
前記容器における前記流体の液面レベルが上昇したとき、前記一連の導電板間の静電容量の相対的変化を検知するとともに、信号を発生させて前記容器における流体の液面レベルの位置を指示する機構とに接続される、ことを特徴とする静電容量式液面センサー。
【請求項2】
前記液面センサーの導電板及び電子デバイスが前記容器を収容する筐体機構の内面に取り付けられ、前記筐体機構の内部にある前記導電板の表面が、静電容量変化が検出されないように遮蔽されることにより、前記容器内の液面レベルによる静電容量の変化のみが検出される、ことを特徴とする請求項1に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項3】
前記容器の上方にある筐体の内面に参照導電板が備えられ、液面レベルの検知と、看護師や介護人が前記装置を操作する時の静電容量の変化とを区別する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項4】
前記液面センサーが、前記容器が垂直または水平配向になった場合に、流体の液面レベルを検出することができる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項5】
前記容器が前記垂直配向になった場合に、前記液面センサーの導電板が高いレベルを示す液面を検出するように前記容器の上部へ伸び、また、低いレベルを示す液面を検出するように前記容器の下部へ伸びる、ことを特徴とする請求項4に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項6】
前記容器が前記水平配向になった場合に、前記液面センサーの導電板が高いレベルを示す液面を検出するように前記容器の上部へ伸び、また、低いレベルを示す液面を検出するように前記容器の下部へ伸びる、ことを特徴とする請求項4に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項7】
前記板同士の間の静電容量のすべての相対的変化が検出され、液面レベルに対する連続的な計測が行われる、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項8】
前記導電板が複数の導電金属帯板に形成さることにより、それぞれの帯板間の前記静電容量の変化が検出され、液面レベル、飛び散り及び流量を示す、より高感度で、かつ、より正確な信号を供給することができる、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の静電容量式液面センサー。
【請求項9】
前記導電板が略垂直及び水平に並列するように定位される複数の導電金属帯板に形成される、ことを特徴とする請求項8に記載の静電容量式液面センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【公表番号】特表2010−523962(P2010−523962A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501579(P2010−501579)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001148
【国際公開番号】WO2008/119993
【国際公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【出願人】(503003337)ハントリー テクノロジー リミテッド (18)
【Fターム(参考)】