説明

深海資源採掘・回収統合洋上工場

【課題】海底の地盤中のマンガン団塊、マンガンクラスト、海底熱水鉱床などの鉱物資源を採掘・集鉱・揚鉱するための稼動エネルギーとしての圧搾空気を、風力を使って製造するために、深海底で作業するための燃料を積載する深海艇、被鉱物資源揚鉱する浮力体、本システムの主駆動源である圧搾空気を生産する洋上風車、圧搾空気による水力発電施設、圧搾空気利用海水淡水化装置、圧搾空気・液化ガス・ドライアイス駆動装置などを提供する。
【解決手段】海底の鉱物資源を採掘・集鉱・揚鉱するための稼動エネルギーとして比重が0.95以上の液化ガスを抱え、地球の重力を利用して海底に沈み、海底ではそれらが気化して生成する圧搾気体で掘削や集鉱を行い、その排ガスを風船に圧入して、浮力により揚鉱を行い、海上で被鉱物資源を回収し、風船の中のガスは圧搾して再利用する再生可能エネルギーサイクルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
深海底の鉱物資源採掘と回収および被回収資源の海上までの運搬の動力源として液体気体を積み込んだカプセルと被回収資源輸送の浮上のための折りたたみ式風船(浮き袋)とを共に海底に沈め、海底では圧搾気体で削岩機やシャベルを稼動させ、その排ガスを浮力体として折りたたみ風船に圧入し、該浮力体に連結した籠に積載した該被回収資源を順次浮上させる深海資源採掘・回収統合洋上工場に関する。
【背景技術】
【0002】
海底や海底の地盤中にはマンガン団塊、マンガンクラスト、海底熱水鉱床などの鉱物資源が開発を待っている。しかし、これらの採掘には大電力を必要とする。これまで、その電力は軽油を使ったディーゼル発電で賄う以外に方法は無いと考えられていた。しかも深海底までの送電ロスは大きく、採算が合わないと言う理由が開発計画を遅らせていた。一方、わが国の有人深海調査船としては「しんかい2000」が2003年引退し、その後継機として潜行深度6,000メートル、乗員2名とパイロットを含めて3名、0.7m/秒の速度で、2時間かけて6,500メートル潜行する「しんかい6000」が活躍している。又、無人探査機として「かいこう」や「うらしま」など5艇があるが、潜行深度は「かいこう」が7,000メートル、これに積み込んだ子機「ランチャー」で11,000メートルを記録している。外国でもアメリカの4,500メートル調査艇「アルピン」などがあるが、いずれも調査のみであって、深海鉱物資源の採掘艇は皆無である。海底鉱物資源の採掘に関しては本願発明者による「海洋資源エネルギー抽出・生産海洋工場」において風力発電や潮流発電などの流体エネルギーから得られた電力により、マンガンクラストあるいは海底熱水鉱床中の泥状硫化物を採鉱し港に輸送する総合工場構想について特許文献1に開示されている。採掘した海底鉱物資源の海上への輸送については、科学技術振興事業団の笹井らが「深海底鉱物資源の揚鉱方法及び揚鉱装置」において、両端開口部で液面が同じ高さに維持されるU字管の中の海水が循環流動する特性を利用し、深海底から鉱物資源を海面に浮上させる方法を特許文献2に開示されている。
バケットによる揚鉱について益田は「深海鉱物バケット採鉱装置」において、採鉱船による海底鉱物資源の連続バケット採鉱装置にロープと耐圧浮力筒を用い鉱物資源が重くなるのを補償する牽引駆動方式を特許文献3に開示されている。竹山は「海底鉱物資源の採取方法およびその粉砕装置および連結装置」において、海底で採取した鉱物資源を採取直後に海底で細粒に粉砕し、その細粒を海上の船舶に輸送ホースで揚鉱する方法について特許文献4に開示されている。吉岡は「深底資源吸引揚装置」において、ポンプで高圧化した気体と液体を共に深海の気液分離室へ圧送し、液体は気液分離室の下部から外部に放流し、気体は気泡となってエアリフトパイプに入り上昇し、同時に下端に接続した吸引パイプの吸引口に吸引力を起こし、海底等の深部の資源を吸引し、資源が上昇する速度で上部まで引揚げる機構について特許文献5に開示されている。海洋科学技術センターの青木らは「燃料電池搭載型深海潜水調査船運用システム」において、深海潜水調査船の駆動源として燃料電池を搭載し、母船から水素ガス及び酸素ガスをホースで補給する方法について特許文献6に開示されている。
【0003】
風力発電のエネルギーは送電ケーブルで搬送するのが一般的であるが、送電ケーブルが高価であること、送電ロスが大きいこと、風の強度が一定しないことなどから、風力エネルギーを電力以外のエネルギーに変換して貯蔵し、これを消費地に輸送する方法が検討されている。その中でも風力発電で得られた電力で海水や水を電気分解して水素を採取し、一時的に貯蔵する水素貯蔵発電システムについて、富士電機株式会社の高橋らは「水素貯蔵発電システム」において、水素吸蔵合金に貯蔵し燃料電池に供給することが特許文献7に開示されている。同様にシャープ株式会社の竹田らも「電力供給装置」において、風力発電や太陽光発電による電力で水を電気分解し、水素を貯蔵した後、水素発電や燃料電池に供給することが特許文献8に開示されている。水の電気分解による水素生成装置の長寿命化を行ない水素の安定供給を行う手法として、石川島播磨重工業株式会社の佐々木らは「風力発電を利用した水素製造設備」において、風車の回転数を制御して発電電圧を所定の電圧に制御する方法について特許文献9および特許文献10に、「風力発電装置及び風力発電を利用した水素製造設備」において、複数の風力発電機のうち回転数が相対的に早い風車に接続された誘導電動発電機の発電出力の一部を回転数が遅い風車に接続された誘導電動発電機の駆動電力に使用することを特許文献11に開示されている。同様に日立造船株式会社の佐々木らは「風力発電を利用した水電解水素発生装置」において、水の電解槽に供給する電力を発電出力のうちの変動電力相当分になるように整流器を制御する制御装置について特許文献12に開示されている。株式会社日立製作所の藤井らは「水素製造システム」において、風力発電による水素製造装置への電力負荷変動を電流制御する方法について特許文献13に、大原らは「風力発電水素製造装置」において、風力発電装置の回転速度に応じて、電解水素製造装置に供給する電流量を変動させ、回転数の変動を小さくし、さらに回転速度に応じて風力発電装置のピッチ角を変化させることにより、風力発電装置の回転数の変動を小さくする方法が特許文献14に開示されている。同様に三菱重工業株式会社の深川らは「自然エネルギー利用水電解システム」において、水の電解装置を駆動するために安定化のための電流・電圧制御装置について特許文献15に開示されている。風力発電で得られた電力で水を電気分解して生成した水素を別の用途に利用する報告がある。三菱重工株式会社の村田らは「発電システム」において、水素を燃料として動力を発生する単原子作動ガス水素ディーゼルエンジンによる発電について特許文献16に開示されている。住友電気工業株式会社の岡崎は「風力発電システム」において、風力発電の発電機に超電導発電機を用い、その電力で水を電気分解して水素ガスを製造し、これで液体水素を製造装し、超電導発電機を冷却する方法が特許文献17に開示されている。別の燃料を製造する方法として、株式会社東芝の村田らは「風力発電システム」において、水の電気分解で得られた水素と火力発電所で排出された二酸化炭素とを反応させてメタノール1を生成する方法が特許文献18に開示されている。一方洋上風力を用い船舶やメガフロート上で水素を製造する方法については、有限会社エヌティエイチ設計アンド解析計算の野澤は「エネルギー生産装置」において、メガフロート上の風力発電機や太陽電池パネルあるいは波力発電機により得た電力により海水を電気分解し、酸素ガスおよび水素ガスを液化して貯蔵容器に貯蔵する方法が特許文献19に開示されている。谷口は船舶上に設備した垂直軸型風車より得た電力により洋上で海水の電気分解により水素を抽出し燃料電池用燃料に供することが特許文献20に開示されている。風力発電で得られた電力でフライホイールを回転させ、機械的エネルギーとして貯蔵あるいは出力エネルギーを安定化する方法が報告されている。石川島播磨重工業株式会社の稲村らは「風力発電出力安定化装置及び方法」において、フライホイールに貯えていた機械的エネルギーをインバータによって電気に変換する方法について特許文献21に開示されている。三菱重工業株式会社の南は「フライホイールを備えた風力発電装置」において、発電機の回転軸に回転変動を緩和するフライホイールを装着し、出力及び回転変動を制御して安定した電力を産出する方法が特許文献22に開示されている。風力を必要時に利用する方法として揚水発電がある。財団法人電力中央研究所の中岡は「発電システム」において、風力発電によって作られた電力で揚水用ポンプを駆動し、水を高所に揚げ、電力の必要時に落差発電に供する方法が特許文献23に開示されている。風車の回転を真空ポンプに直結し、揚水パイプを吸引して水を貯水槽まで揚げる方法が松谷により「高真空差圧揚水式発電システム」として特許文献24に開示されているが、この方法では揚水高さは10メートルである。風力発電によって得られた電力で海水を淡水化した後の塩水を電気分解して苛性ソーダを生成し、これをさらに溶融電気分解して金属ナトリウムを製造した後、消費地で水を加えて水素を発生させ、発電用燃料に供し、副産物の苛性ソーダはソーダ工業の原料にする、あるいはさらに苛性ソーダを熔融塩電気分解して金属ナトリウムのエネルギーサイクルを構築する方法については、本願発明者によって特許文献1の「海洋資源エネルギー抽出・生産海洋工場」および特許文献25「海洋電気分解工場」、非特許文献1の「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」に開示されている。
【0004】
風力発電は風量や風強が一定しないため一定の電力を得ることはできない。この風力エネルギーを圧縮空気に変換すれば貯蔵が楽になり必要に応じて一定なエネルギーを取り出すことが可能になる。一般に気体は圧縮すれば体積は縮小され、それをさらに縮小すれば液体や固体になる。このため風力の貯蔵には大スペースを必要としない。京セラ株式会社の加藤らは「空気エネルギー装置」において、風車に連動した圧縮機により圧縮空気を作り、これを空気タンクに貯える方法を特許文献26に開示されている。同様な手法を船井は「圧縮空気生成及び貯蔵装置並びに該圧縮空気生成及び貯蔵装置を使用した発電システム」を特許文献27に開示されている。林は「圧力蓄積構造体」において風車の回転で空気室をシリンダーとするピストンを押し下げ、空気室内の空気を圧縮し、これを空気貯蔵槽に送る構想を特許文献28に開示されている。佐藤は「風力発電装置」において、複数の風車支持の水平軸風車の回転軸にそれぞれエアコンプレッサーを配管で連結して圧縮空気をエアタンクに貯留し、この圧縮空気でエアモーターを回転させ発電機することが特許文献29に開示されている。宮崎は「風力発電装置」において、風車の回転をギアで高速にして一方は発電機、他方は空気圧搾ピストンに繋ぎ、発電量が過剰時は圧縮空気を貯蔵し、不足時にはエアモーターを駆動して発電する方法が特許文献30に開示されている。
【0005】
圧搾空気を利用して水に圧力をかけて水車を回し発電する報告は、株式会社間組の吉村は「揚水発電所」において、揚水された水を上部貯水池から下部貯水池に落とす際に落差水
を圧縮空気で追加圧することにより有効落差が短くても所定の発電出力を得ることができる方法について特許文献31に開示されている。風車の回転により圧縮空気を作り貯蔵し、それを水を満たした水槽タンクに送り、その水圧でタービンを回転させ発電させる方法について、篠崎は「水を高いところから落とさず、低いところの水を利用し風力、空気の圧力、水の圧力を組み合わせ利用した発電装置」を特許文献32に開示している。
【0006】
海上は陸上より風が強く、沖合ではさらに風速が速く、しかも障害物が無いため安定した風が吹いている。さらに陸上では大型風車の設置は運搬がネックであるが、洋上では港が利用できるため楽であり、しかも陸上に比べて騒音、電波障害など周辺環境への影響も少ない。しかし設置を考えると我が国と海外は考え方にかなりの隔たりが生じてくる。例えば、海外の洋上風車は浅瀬が多いためその殆どが海底固定式やプラットホーム式であるが、我が国は水深であるため浮体式を考える必要がある。と言っても、今後各国が排他的経済水域内外を開発することになれば浮体式風車の必要性は増大する。これら風力タービンの支持構造物については本願発明者による非特許文献1の「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」に固定式支持構造と浮体式支持構造の違いについて述べている。独立行政法人海上技術安全研究所の矢後らは「洋上風力発電設備」において、発電用の風車を支持するタワーを昇降可能にし、強風時には同タワーの下端部の浮力タンクに注水することにより、水中へ没入させて、待避を容易に行えるようにする方法について特許文献33に開示されている。日立造船株式会社の村上は「洋上風力発電の浮体式基礎構造物」において、風車を立設支持する円筒状の主浮体の中心軸を鉛直に配置し、この主浮体を囲むようにトラスによって一体的に設けられた複数の従浮体を備え、主浮体の下方部分が海中に水没し、従浮体の上方部分は海上に位置し、主浮体の喫水線以下に、主浮体の横断面より大径の平板を水平となるように設置することによって、水深の影響を受けず、海洋地形にも関係せず、波浪外力や風外力等の影響を回避する方法が特許文献34、35、36に、「洋上風力発電装置」においては、平面正三角形状の枠組み構造物の各頂点位置に風力発電機を立設し、夫々3個の風力発電装置を結ぶ枠組み構造物の中心部の水面上に浮体を取り付ける方法について特許文献37に開示されている。プロペラ型風車を自発的に風上に向ける機構について、市吉は「洋上風力発電システム」において、強風の中で船体の風向きに対する姿勢を確保するために、発電船を双胴船型として波浪とローリングの影響を小さくし、かつスポイラーとして水中翼を垂直にして発電船が強風に流されることを防止し、発電船の前後に4枚設置した垂直翼の角度を制御して、船体の姿勢を制御する方法が特許文献38に開示されている。
【0007】
海水の淡水化における逆浸透膜法は水を通すが塩分は通さない半透膜を使って真水を分離する膜で、一般に50気圧の水圧で3%の塩水を加圧すると真水と6%の濃縮塩水が40気圧で排出される。このうち真水のみを回収して濃縮塩水は海洋廃棄するのが現状であるが、本発明者は風力発電で得られた電力で海水を逆浸透膜で真水を作り、かつ濃縮塩水をさらに分離及び電気分解して硫酸、塩酸、金属ナトリウム、金属マグネシウムを生産する方法を非特許文献1の「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」に開示している。この逆浸透膜に風力発電で得られた電力で海水を圧縮して淡水化する方法は、株式会社日立エンジニアリングサービスの鈴木らにより「風力発電機による海水淡水化装置の運転装置および海水淡水化方法」として特許文献39に、三菱重工業株式会社の長井らにより「逆浸透膜装置及びその運転方法」として特許文献40および41に開示されている。深海の水圧を利用して逆浸透膜に海水を圧入し淡水を取り出す方法が、東海大学の林らにより「淡水化方法及び淡水化装置」として特許文献42に開示されている。逆浸透膜の利用には全量ろ過方式で、膜を介して透過水のみ真水として取り出すものと、クロスフロー方式で膜面に平行流として一定流速で海水を供給し、透過水を真水と濃縮塩水に分離する方法がある。
【0008】
本願発明では深海底に潜水艇を沈めるに当たり、その中に燃料兼錘として比重の重い液化気体や氷結体あるいは金属ナトリウムを積み込み、海底ではそれらを動力源として使い、それらの排気ガスを浮力体として使うことを提案しているが、深海底での利用報告が無いため、陸上での液化ガスや氷結体の応用例を示す。三菱重工業株式会社の渥美らは「液化ガスを利用した動力発生装置」において、タンクに貯蔵した液体空気などの液化ガスをポンプで昇圧した後、外気等を利用した熱交換器で加熱してほぼ常温の高圧空気とし、この高圧空気を高圧空気駆動エンジンに導いてその膨張により動力を得ること及びこれを自動車の動力として用いることが特許文献43に開示されている。また金属ナトリウムを水と反応させて水素を生成し、これを燃料電池の燃料に供し、かつ廃棄物の水は再度金属ナトリウムから水素を発生させる反応に使用する方法は、三菱重工業株式会社の玉木による「燃料電池の燃料供給システム」と題する方法を特許文献44に、生田は金属ナトリウムを石油に入れた状態で水と反応させて水素を生成する方法について「水素の製造方法及び水素−酸素の製造方法並びにこれらの製造装置」と題する方法を特許文献45に開示している。
【0009】
本願発明では深海底に存する鉱物資源を揚鉱するために風船に掘削機械からの排気ガスを圧入して浮力体として使うことを提案しているが、水中で風船にガスを圧入して浮上させる方法として、田中らは「水難救助具」として、水中で水と反応して炭酸ガスを発生する薬品を風船に付属したカプセル中に入れておき、その薬品が水に触れると二酸化炭素が発生して風船が膨張し、浮き袋として水難救助できる方法が特許文献46に開示されている。
水中の浮力を利用して発電する方法について、国土総合建設株式会社の森崎は「浮力を利用したエネルギー発生方法と装置」において、海上と海底に固定された車の間を無端ベルトが回転する構造にしておき、そのベルトに多数の風船を付け、その風船が最も海底に来た時に空気を送入することによって生じる浮力で風船が順次浮上し、海上に来た時に風船の中の空気を抜くことにより、ベルトが浮力のみで回転するエネルギーを発電機に伝え電力変換する方法が特許文献47に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−331681号公報
【特許文献2】特開2003−269070号公報
【特許文献3】特開平07−208061号公報
【特許文献4】特開平05−141175号公報
【特許文献5】特開2000−227100号公報
【特許文献6】特開平10−181685号公報
【特許文献7】特開平08−064220号公報
【特許文献8】特開2004−120903号公報
【特許文献9】特開2008−148551号公報
【特許文献10】特開2004−269945号公報
【特許文献11】特開2005−069125号公報
【特許文献12】特開2006−161123号公報
【特許文献13】特開2007−249341号公報
【特許文献14】特開2007−252028号公報
【特許文献15】特開2005−330515号公報
【特許文献16】特開2003−286901号公報
【特許文献17】特開2006−141128号公報
【特許文献18】特開2001−304091号公報
【特許文献19】特開2001−059472号公報
【特許文献20】特開2006−070775号公報
【特許文献21】特開2001−339995号公報
【特許文献22】特開2002−155850号公報
【特許文献23】特開2008−274769号公報
【特許文献24】特開平06−101621号公報
【特許文献25】特開2008−038673号公報
【特許文献26】特開平06−185450号公報
【特許文献27】特開2005−344701号公報
【特許文献28】特開2005−226652号公報
【特許文献29】特開2005−180237号公報
【特許文献30】特開2005−036769号公報
【特許文献31】特開平10−068377号公報
【特許文献32】特開平11−351118号公報
【特許文献33】特開2007−263077号公報
【特許文献34】特開2003−252288号公報
【特許文献35】特開2002−285952号公報
【特許文献36】特開2002−285951号公報
【特許文献37】特開2002−130113号公報
【特許文献38】特開2001−349272号公報
【特許文献39】特開2000−202441号公報
【特許文献40】特開2004−041888号公報
【特許文献41】特開2004−041887号公報
【特許文献42】特開平10−156356号公報
【特許文献43】特開平09−079008号公報
【特許文献44】特開平08−203550号公報
【特許文献45】特開2004−155599号公報
【特許文献46】特開2005−343440号公報
【特許文献47】特開2000−130311号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】村原正隆・関和市 「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」パワー社出版(2007年12月発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
深度5,000メートルならば地上の1気圧の500倍もの水圧下での鉱物資源の採掘と回収、そしてこれを海上に輸送する。このためのエネルギー源としてこれまで電力が考えられていた。そしてその電力源は母船のディーゼル発電機であった。最近このディーゼル発電を洋上風力発電に換えれば海底開発に光明が見えて来たかのようにも見える。しかしそれでも、母船から海底までの送電ケーブルが必要であり、送電ロスも馬鹿にならない。さらに、それらの資源を揚鉱するためにはクレーンが必要である。本願発明者は非特許文献1で熱電子発電素子による海底温泉と深層水との温度差発電を提唱したが、これは採掘には利用できるが、熱電素子の設置場所が限定され、実用的ではないし揚鉱には使えない。最も簡便な方法は海底作業カプセルに電池を積み込むことであるが、行きは重くても良いが使用後はそれを海上回収するために軽くしなければならない。これは不可能に近い。最も効率的な方法は、海底に運んだエネルギー源が掘削集鉱後地上への揚鉱エネルギーとして使えることである。そこで本願発明では「行きは地球の重力を利用し、帰りは水の浮力を利用する再生可能エネルギーサイクル」を提唱する。即ち、海底行きのカプセルには水より重い液体気体をエネルギー源として積み込み、海底ではそれらが気化して生成する圧搾気体で掘削や集鉱を行い、その排ガスを風船に圧入して、浮力により揚鉱を行い、海上で被鉱物資源を回収し、風船の中のガスは圧搾して再利用する方法である。この重力と浮力利用再生可能エネルギーサイクル構想を実現するための装置類の開発や改良が本発明を解決しようとする課題である。
【0013】
わが国の海岸線は33,900 kmと長く、地球一周、約4万kmの84.7%の長さを有する世界屈指の海洋国家である。さらに1994年発効した海洋法に関する国際連合条約によると、沿岸国は200海里(370 km)までの海底および海底下を大陸棚とすることが出来るほか、海底の地形・地質が一定条件を満たせば、200海里の外側に大陸棚を設定することができる。これら水深2,000メートル内外に存在する熱水鉱床は金、銀、銅、亜鉛、鉛などを含む泥状の硫化物で、海底において熱水作用に伴い形成された多金属硫化物鉱床であり、我が国の周辺では太平洋の伊豆、小笠原海域、沖縄海域などに存在する可能性が高く、次世代の鉱物資源として有望視されている。その他にも排他的経済水域内の比較的浅い海域に分布するマンガンクラストや5,000メートル内外に分布するマンガン団塊など海水に溶存している量とは比較できないほどの金属が埋蔵している。これら広大で深度が深い海洋に風力エネルギー回収装置建設の工期を短縮するには浮体構造以外が最適と考える。さらに建設工事の簡便さや台風や強風などを回避する風車の開発や改良が必要である。そこで本願発明では「風見型水注入起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車」を提唱する。すなわち球状台座の上に風車を取り付ける流線型のタワーを有し、下方には円筒型中空パイプが伸び、下方の円筒パイプに水注入時には洋上に垂直に立ち、上方のタワー形状により自然に風車が風上を向くようにして、タワー内部の空洞部はプロペラ型風車の回転から得られた圧搾空気の貯蔵ボンベであり、台風時にはボンベに水を注入して海面下に潜水する機能を持ち、建設時あるいは保守点検や修理時には海面下の水タンクの水を抜き風車施設全体を海面に寝かした状態で作業や港からの曳航ができるためのシステムや装置類の開発あるいは改良が本発明を解決しようとする課題である。
【0014】
水力発電に使った真水を、夜間の余剰電力を使って再度水を高所の貯水池に戻し、電力消費が多い昼中に落差発電をする揚水発電が一般的である。揚水発電は真水が一般的であるが、沖縄県には海抜約150メートルの貯水池に海水を汲み上げ調整池にためておき、落差を利用して発電する世界初の施設「やんばる海水揚水発電所」3万kW/日が稼動している。このように海水を高所の貯水池に揚水する方式はあるが、その逆すなわち海底に空の貯水槽を置き、その貯水槽に流入する海水の落差で発電機を回し発電し、その排水を海上に送圧水として送る方法は無い。本願発明は圧縮空気で貯水池に排水された発電後の海水を圧搾空気で揚水し、その高圧塩水を逆浸透膜で淡水化するもので、この逆揚水発電と海水の淡水化システムを作ることが本発明を解決しようとする課題である。
【0015】
海水淡水化の方法には、海水から塩分を残して水のみを取り出す蒸発法、冷凍法、逆浸透法と、逆に塩分を除去して淡水を残す、イオン交換透析膜法などがある。本願発明では洋上風力を使って、圧縮空気を作り、さらに圧縮して液化ガスを製造し、海底鉱物資源回収用動力源として用いる目的であるが、その圧縮空気の大部分は発電用と海水の淡水化及び金属ナトリウム製造のための食塩の回収に用いられる。細孔が空いたパイプに内部に圧搾空気を押し出すと高速流となって流れ、パイプの外側の気圧は降下する。この気圧降下を利用して海水から真水を蒸発させる。この水蒸気を凝縮して真水化する。他方、逆浸透膜法・クロスフロー方式は約50気圧内外で逆浸透膜に平行に入れた濃度3%の塩水のうち約半分が透過淡水として得られ、残りの半分の量の塩水は6%の濃縮塩水として排出される。この排出塩水の出力圧力はおよそ80%の圧力が維持されているため、この圧力でタービンを回し発電することができる。このように再生可能エネルギーを余すところ無く利用することが本発明を解決しようとする課題である。
【0016】
ドライアイスは-78.5℃で昇華して二酸化炭素ガスになる。たとえば酸素の気化温度が-182.96℃、アルゴンが-185.7℃、窒素が-195.8℃に比べて変態温度が高い。しかも、機械的圧力を加えると固化し体積も小さくなり比重は1.56と重い。これは海底に沈める時の錘には都合が良い。しかも酸素や窒素に高圧をかけても温度が低くならないと液化しないが、二酸化炭素は130気圧加圧すると液化する。このため深度1,300メートルより浅い海では動力や浮力剤ガスとして使える。したがって、それより深い海底では、空気や酸素や窒素を使用すればよい。このようにドライアイスは沸点が高く、液化や氷結温度が高いため圧縮ガスによる動力源やその排気ガスの液化後の回収によるエネルギーサイクルには打って付けである。一般に二酸化炭素は地球温暖化ガスとして公害の根源のように言われ、京都議定書を満足させる手段として、火力発電所などでは石炭や重油の燃焼に空気を用いず純粋な酸素で燃焼させ、窒素を含まない排ガスの二酸化炭素を海底下に隠蔽する方法が実行に移されつつある。この方法では空気から窒素を分離した酸素を用いるが、この分離には空気の圧縮による液化の後、酸素を取り出し、これを燃焼に用いる。この酸素の分留にかかるエネルギーを考えると、それら石炭や重油を空気で燃焼した後の二酸化炭素と窒素などの排気ガスを圧縮して、最初に液化した液化二酸化炭素のみを回収した方が、液体空気を製造してから酸素を取り出すより経済的であり、回収した液化二酸化炭素を圧縮したドライアイスは自動車用動力源として供給すればよい。二酸化炭素の断熱圧縮により発生した熱で昇華した該ドライアイスを膨張させ、その高圧二酸化炭素でピストンやレシプロ又はロータリーなどのエンジンを作動させ、その往復運動エネルギーや回転エネルギーを自動車の動力とし、その一部により該エンジンから排気された気体を一方のシリンダーで圧縮して圧縮膨張を行い液化炭酸ガスあるいはシャーベット状ドライアイスを製造し動力源として再利用システムを作ることが本発明を解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の深海資源採掘・回収統合洋上工場は集鉱・揚鉱に係る稼動エネルギーを「出陣は地球の重力を利用し、凱旋は水の浮力を利用する」すなわち「燃料を抱えて海底に潜航する時は地球の重力を利用し、被鉱物資源を持って海上へ帰還する時は燃料の排気ガスを浮力体として利用する再生可能エネルギーサイクルの構築」である。この課題を解決するために、深海底で作業するための燃料を積載する深海艇、被鉱物資源揚鉱する浮力体、本システムの主駆動源である圧搾空気を生産する洋上風車、圧搾空気による水力発電施設、圧搾空気利用海水淡水化装置、圧搾空気・液化ガス・ドライアイス駆動装置などの開発や改良が課題を解決するための手段である。
【0018】
深海艇すなわちカプセルは、深度5,000メートルならば500気圧の水圧に耐えねばならない。また掘削用ウォータージェットや浮力体へのガス圧入も水圧以上にしなければならない。しかもカプセルの形状は水中での抵抗が少ない球状又は円筒形状の涙滴型、葉巻型、鯨型などがよく、船体構造は復殻式で、外殻と内殻の間には液化ガスやドライアイスあるいは金属ナトリウムなどを夫々別個に保管する燃料室とコンプレッサー室を備し、内殻内部には燃料電池室やコントロール室を設備する。艇が海上に浮上している時は艇の排水量が浮力より小さくし、海底に潜る時は、潜水艦は艦内の海水槽に海水を注入し、艦の排水量を浮力より大きくして沈降する。本願発明では比重1.02の海水の代わりに海水よりも比重が1.18と重い液体酸素あるいは比重1.56のドライアイスを用いるため沈降には都合よく、しかもそれが気化してガスとなり艇外に排出され、採掘、集鉱の動力源に供され、かつその排気ガスは艇外の浮き袋に充填され浮力体となるため、潜水艦のように、浮上時に水を排出するエネルギーを必要とせず、さらに、海底から海上に浮き袋が上昇するに連れて、浮力が増加するため、それに応じて被鉱物資源の格納籠をある間隔をおいて数珠繋ぎに揚鉱することができ、かつ海上ではそれらのガスを回収して再度液化するので名実共に再生可能エネルギーサイクルである。さらに艇内には艇の推進や機械類の制御あるいは一部の掘削機の駆動電力に、原子力潜水艦のような原子炉は使わず、燃料電池を使用する。燃料電池の燃料のうち酸素は液体酸素を用い、特許文献42,44,45に開示されているように、水素は金属ナトリウムと深層海水を逆浸透膜で淡水化した真水とで生成し、燃料電池から廃棄される水も金属ナトリウムとの反応に再利用する。あるいは液体水素を気化して使用する。一方、1,300メートルより深い深海底では動力源として液体酸素を用い、それより浅い海底ではドライアイスを用いる方が経済的である。またドライアイスを気化させて生成した二酸化炭素を浮き袋に充填し、これを1,300メートル付近で揚鉱用ロープに連結して、浮力体の補助としても使える。この根拠は1,300メートルでの水圧が130気圧であり、二酸化炭素の液化圧力が130気圧であるため、水深が1, 300メートルより浅く成ると気化が始まるからである。海底の温度は2,000メートル以下では1.5℃一定であり、液体酸素の融点は-182.96℃、ドライアイスの融点が-78.5℃であり、二酸化炭素は130気圧で液化するが、酸素ガスは気圧を上げただけでは液化しないので、深海底で気化させるのは楽である。このように気化や昇華によって生成した気体は断熱圧縮を利用して高温気体とした後、その気体の圧力で削岩機やウォータージェットあるいは集鉱シャベルなどを駆動し、それらの排ガスをさらに圧縮して浮き袋に圧入する。この浮き袋は深海でガスを圧入して膨らませるが、海上から海底に運ぶ時点では、内部を真空に吸引して折りたたまれた浮き袋があたかも無垢の固体同様になるため、数百気圧の水圧にも耐性がある。この深海で圧入するガス圧は水圧近傍かそれ以上にする必要がある。ここで圧入するガスの圧力(Pb)と容量(Vb)及び温度(Tb)との間には (Pb×Vb) / Tb = 一定、 なる関係が満たされ、海上での圧力(Ps)と容量(Vs)及び温度(Ts) との間にも (Ps×Vs) / Ts = 一定、 であるから両者の関係は(Pb×Vb) / Tb=(Ps×Vs) / Tsが成立する。一般に2,000メートル以下では水温は1.5℃一定、1,000メートルでは10℃海上の水温は便宜上年間平均温度は27℃とし、海上の気圧は1気圧であるから、海底でのガスの圧入容量はVb =約 0.95 Vs /Pbを満たす必要がある。
【0019】
我が国の海岸線は、地球一周の84.7%と長い。しかも海底も深い。さらに排他的経済水域内の海底資源開発のための電力には洋上風力発電は不可欠で、その風力発電施設の構造は浮体式以外考えられない。さらに風車が常に風上を向き、強風に抗せず、稼動時の風車施設の重心が海面に位置し、設置・補修点検が容易で、台風時の緊急避難が容易で、しかも施設作業が短期間で済む構造が必要である。常に風上に風車を向けるためには、船舶が洋上で停泊する場合、船尾には投錨せず、船首のみに投錨すると自然に船首を風上に向ける位置に安定する方式を採用する。このため海面上に出る風車マストの断面を船形すなわち流線形とし、風上位置に1本のアンカーロープで投錨し、もし海底が深く投錨が困難の場合はシーアンカーで代用する。さらに強風に抗しないように縦長台形構造とする。一般に従来の風力発電施設ではナセルの中で風車ブレード軸が歯車を介してあるいは直接発電機が直結していた。この発電機の重力バランスが崩れマストが折れる事故が報告されている。そこで海底や地盤に基礎を持たない浮体構造では重心を海面上にして安定を図るために ナセル上の発電機を廃止し、その代りに風車の回転をクランクシャフトを介して風車マストの上端に設備した空気コンプレッサーを稼動させ、マストの内部を圧縮空気貯蔵ボンベとする。海面下には海水を満たして鉛直に立てるための空洞円柱パイプとその末端にはヨットのセンターボードにあたる錘と揺れ止めと風による流れを抑制するためにアンカーロープと平行及びそれと垂直方向に2枚の平板を備える。この揺れ止めと強風による流れ抑制については特許文献38にスポイラーとして水中翼を垂直にして設備することが開示されているが、これは海底下というよりも海上で台風に対向して発電すると言う主旨であって本願の海水下数十メーターの錘の脇にバランスを取るために設備するものとは大きく異なる。本願発明の主旨はナセルの中の発電機を廃止し、圧搾空気を製造することであるが、風車に連動した圧縮機により圧縮空気を作り、これを空気タンクに貯える方法は特許文献26,27,28に開示されている。また複数の風車支持の水平軸風車の回転軸にそれぞれエアコンプレッサーを配管で連結して圧縮空気をエアタンクに貯留し、この圧縮空気でエアモーターを回転させ発電機することが特許文献29に開示されている。これら圧縮空気の利用と本願の異なる点は圧搾空気を、直接発電機を回す以外に水圧に変換して発電すること、気圧差を発生させて海水を淡水化すること、燃料用液体空気を製造することなどである。設置・補修点検が容易で、台風時の緊急避難が容易なること、しかも施設作業が短期間で済む構造が必要である。発電用の風車を支持するタワーを昇降可能にし、台風などの強風時にはタワーの下端部の浮力タンクに注水することにより、水中へ没入させて、待避を容易に行えるようにする方法について特許文献33に開示されているが、本願発明における海水下に沈めるためにタワーに注水する方法は同じであるが、海面下に数十メートルにもおよぶ水タンクとその下端に錘と揺れ止め平面板を備えて風車設備が安定して立てる方式とは異なる。さらに建設時あるいは保守点検や修理時には海面下の水タンクの水を抜き風車施設全体を海面に寝かした状態あるいは傾斜をつけて作業や港からの曳航ができる構造を有する風見型水注入起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車設備である。
【0020】
水は圧縮不能な流体であるので有効エネルギーの大部分は最初の段階で取り出せる。ところが気体などの圧縮可能な流体のタービンは複数の羽根車群で数段階でエネルギーを回収する必要がある。このため水による発電は基本的には一個の羽根車のみですみ、圧搾空気で直接タービンを回すよりも発電効率は高い。このため圧縮空気を水力を媒体として発電する。一般に海水を高所の貯水池に揚水し、落差で発電する揚水発電所はあるが、海や湖を無限大の貯水池と見なし、海底や湖底に外界とは隔てられた貯水槽を設備し、そこに流れ込む水で落差発電を行い、貯水槽に溜まった水を海上に揚水する方式はない。そこで本願発明では海底中の海水が満たされた貯水槽を圧搾空気貯蔵ボンベと考え、外界の圧力以上の圧搾空気で貯水槽中の海水を海上に押し上げ、空になった貯水槽に再度外界から海水を流入して水車を回し発電する。実際には外界から遮断された2つまたはそれ以上の貯水槽を備え、交互に入水・排水操作を繰り返す。ただし、複数の貯水槽と発電機が収納された海底の設備の排水量を浮力より大きく成るように貯水槽の水量を調整する。実用には貯水槽は2個が好ましく、重力バランスを考えると同心円筒形とし、内槽と外槽を同容積にしていずれか1個に水を満たすと沈み、両方を空にすると浮上し、施設の点検や修理ができるようにする。又、圧搾空気で揚水された高圧海水は直接逆浸透膜に入圧され淡水と濃縮塩水を生産するために使われる。又、空気の溶解度は水の温度が20℃の場合1気圧で1,000ccの水に窒素は16cc、酸素は31ccである。空気は窒素と酸素の体積比が4:1だから1気圧の空気に接している水1,000ccには19ccの空気が溶けている。したがって50気圧の圧搾空気で水を加圧すると約10%の空気が混じることになる。然るに、水に直接圧縮空気を圧入する時は溶解度に注意して、空気の混入を避ける場合には水面に水よりも比重の軽い蓋を浮かせる必要がある。
水を高い場所に揚水しなくても圧搾空気で水を加圧すれば水圧発電ができる。特許文献32は平地の海水、水を利用し風力、空気の圧力、水の圧力を組合せ利用し、タービンを回転させ発電させ、使用した圧縮空気は外部に出さず貯蔵するか水槽タンク内に残して再利用する。本願発明の基本構想はこの特許文献32と同じである。ただし異なる点は、この特許文献32では水平に置かれた水槽タンクを3つ以上必要とするが、本願発明は2つの貯水槽のみで発電する方法で、貯水槽の水面上に空気の混入を避けるために水よりも比重の軽いポリプロピレン、ポリエチレン、ゴム、シリコーンゴム、などの板またはシートを蓋として浮かせ、一方の貯水槽の入水弁を閉じると同時に圧搾空気弁を開放して揚水し、その水圧で発電機の水車を回し、圧搾空気弁が閉じられ、かつ排水弁が開放された他方の貯水槽に水を満たし、これが満水になったら満水側を圧縮空気で圧入する。この操作を交互に行い、かつ圧縮空気の圧入弁と発電機からの排水弁を同期させて連続的に水圧発電を行うことが相違点である。
【0021】
本願発明は洋上風力を使った圧縮空気製造に端を発している。この圧搾空気を用いた海水の淡水化については逆浸透膜に圧搾空気で海水を圧縮して淡水化する方法が特許文献39,40,41に開示されているが、これらは風力発電で得た電力でコンプレッサーを回転させて圧搾空気を作っており、本願発明のように直接風力で作った圧搾空気で逆浸透膜に海水を圧入するのとは異なる。しかも逆浸透膜法のうちクロスフロー方式は逆浸透膜に平行に入れた濃度3%の塩水のうち約半分が透過淡水として得られ、残りの半分の量の塩水は6%の濃縮塩水として排出される。この排出塩水の圧力はおよそ80%の圧力が維持されているため、再度別系統の水圧発電に供することも本願発明の特徴である。またこの逆浸透膜・クロスフロー方式を効果的に使って、真水を得ることができる。すなわち山の上に設置した塩水貯水池に海水を揚水し、その落差で水車を回して発電する前にクロスフロー方式逆浸透膜をおき、膜透過水は真水として供給し、排出濃縮塩水は先ず水圧発電に用い、その排出塩水はさらに濃縮して硫酸、塩酸、マグネシウム、食塩を生産する。一方、逆浸透膜を使わないで海水を淡水化する方法として、長尺で細孔が空いた内管に圧搾空気を押し出すと高速流となって流れ、パイプの外側の気圧は降下する。この内管の外周にさらに孔が沢山空いた中管を置き、その外に海水を流す外管を備え、中管を淡水採取管としてこの中管の内壁を親水性化しておくことにより中管内の水蒸気が親水性化面で凝縮し、さらに淡水取り出し口付近の中管に空けた細孔から高圧空気を噴射すると断熱膨張により周囲が冷却され水蒸気は液化され、海水の淡水化と結晶食塩あるいは非常に濃い塩水が外管から取り出すことができる。
【0022】
ドライアイスは-78.5℃で昇華して二酸化炭素ガスになる。たとえば酸素の気化温度が-182.96℃、アルゴンが-185.7℃、窒素が-195.8℃に比べて変態温度が高い。しかも酸素や窒素に高圧をかけても温度が低くならないと液化しないが、二酸化炭素は130気圧加圧すると液化する。このようにドライアイスは沸点が高く、液化や氷結温度が高いため圧縮ガスによる動力源やその排気ガスの液化後の回収によるエネルギーサイクルには打って付けである。さらに近年、火力発電所で排出された二酸化炭素を地下や海洋固定することが取りざたされている。しかしこれらのガスを液化・固化したドライアイスを自動車用動力源として供給すればさらに経済的である。特許文献43には「液化ガスを利用した動力発生装置」において、タンクに貯蔵した液体空気などの液化ガスをポンプで昇圧した後、外気等を利用した熱交換器で加熱してほぼ常温の高圧空気とし、この高圧空気を高圧空気駆動エンジンに導いてその膨張により自動車の動力とすることが開示されている。この特許文献43によれば自動車の燃料は液化ガスであるため、それがドライアイスであれば、ドライアイスは昇華して液体を経ずに気体に成るので当該特許文献の液化ガスには抵触しない。さらにこの特許文献43では駆動エンジンで消費されたガスは排気管から外気に放出されるが、本願発明のドライアイス自動車は二酸化炭素の断熱圧縮により発生した熱で昇華したドライアイスを膨張させ、その高圧二酸化炭素でピストンやレシプロ又はロータリーなどのエンジンを作動させ、その往復運動エネルギーや回転エネルギーを自動車の動力とし、その一部の動力により該エンジンから排気された二酸化炭素を一方のシリンダーで圧縮した後、さらに圧縮膨張を行い液化炭酸ガスあるいはシャーベット状ドライアイスを製造し、これを動力源として再利用すると同時に、不足分のドライアイスを別途補給する。このようにエンジンから排気された二酸化炭素もその場で燃料として再利用し、排気ガスを全く出さない「低公害車」成らぬ「無公害車」が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
上記のように、本発明によれば、深海資源の集鉱及び揚鉱に必要な稼動エネルギー源として液化ガスと共に地球の重力を利用して海底に潜行し、海底では気化した当該ガスの圧搾気体で採鉱や集鉱機械を駆動し、それらの機械からの排ガスを浮力体として浮き袋に充填し、被鉱物資源を持って海上へ帰還し、海上ではそれらのガスを回収して再利用する再生可能エネルギーサイクルであるため、無駄がなく経済的なシステムを構築することができる。さらにこのシステムを動かすための、圧搾空気生産用洋上風車、圧搾空気による水力発電施設、圧搾空気利用海水淡水化装置、圧搾空気・液化ガス・ドライアイス駆動装置などの付随発明がわが国の産業を活性化するに止まらず世界のエネルギー経済を活性化する優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の効果的な実施の形態を図1〜17に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態を示す概略構成図である。この図に示すように、本願発明の深海資源採掘・回収統合洋上工場1は圧搾空気製造所2、液体空気製造工場3、ドライアイス製造工場4、発電プラント5、海水淡水化工場6からなり、圧搾空気製造所2ではプロペラ型風車7や垂直軸型風水車8を備えた洋上の単独風力施設で、その場で採取した空気を、コンプレッサーで圧縮し、タワー内部内のボンベに貯蔵し、それを圧送パイプで深海資源採掘・回収統合洋上工場1に集約する。ここで圧搾空気は3系統に分け、第1系統の圧搾空気は、さらに130気圧以上に圧縮して、水分と二酸化炭素を分離9した後、液化二酸化炭素はドライアイス製造工場4に送られ、乾燥高圧空気は液体空気製造工場3に送られて液体酸素10と液体窒素11に分離する。第2系統の圧縮空気は水分が混入することを気にしないプロセスで、発電プラント5に於いて圧縮空気で直接タービンを回す圧搾空気発電所12及び50〜100気圧の圧搾空気で海水を均一に荷重し、その水圧で水車のタービンを回す水圧発電所13を海底(海底発電所)と海上(海上・陸上発電所)に設備する。海水淡水化工場6では細孔を有する細管に圧搾空気を圧入して高速空気流を作り、そこで発生する気圧差を利用して海水中の水を水蒸気として回収して真水を作る方法で食塩14と真水・2次副産物(硫酸・塩酸・マグネシウム)15を生産し消費地16に輸送する。他方、海水淡水化の別方法として、海水淡水化工場6では海底発電所で揚水された高圧塩水を逆浸透膜に圧入して濃縮塩水と真水とに分離し、食塩14と真水・硫酸・塩酸などの2次副産物15を製造し消費地16に輸送する。3系統の圧縮空気は高圧ボンベ・パイプライン17で消費地16に送られる。液体酸素10の一部は消費地16に輸送する。液体窒素11は液体空気から分離されたアルゴンガス18と共に消費地16に輸送する。ナトリウム製造工場19では圧搾空気発電所12や水圧発電所13で得られた電力で食塩14を電気分解して金属ナトリウム20を製造し、消費地16に輸送する。
深海艇・カプセル(洋上・エネルギー充填)21は燃料として液体酸素10やドライアイス4あるいは金属ナトリウム20および浮き袋22,23,24と一緒に深海底に潜行する。深海底では鉱物資源回収のためのエネルギーを深海艇・カプセル(海底・エネルギー放出)25の中に備えたコンプレッサーから圧搾された酸素や水素あるいは二酸化炭素(主として酸素)などの超高圧ガス26で圧搾ガス・水ジェット・採掘及び鉱物集鉱27を行う。ここで、深海艇・カプセル(海底・エネルギー放出)25の中の金属ナトリウムは深海の水圧を減圧して逆浸透膜を通過した真水(逆浸透膜による深海水の淡水化)28と反応して生成した水素をさらに圧縮して超高圧ガス26として生成し圧搾ガス・水ジェット・採掘及び鉱物集鉱27に供する。さらに、これら駆動後の排気ガス29はさらに圧搾して被回収鉱物資源の揚鉱のための浮き輪としての風船22、23、24に圧入される。この深海艇・カプセルの中には推進や制御装置あるいは資源回収のための電力として燃料電池30が設備され、この燃料電池の燃料は金属ナトリウムと水から得られた水素ガスと液体酸素から得られた酸素を用いる。あるいは液体水素を気化して使用する。なお、金属ナトリウムと水との反応によって生成した苛性ソーダ31は比重が2.13と重く、帰還するとき海底に放棄したいところだが、これを溶融電気分解すれば再度金属ナトリウムを製造することができるから、海上でカプセル25と一緒に苛性ソーダの回収32を行い、再利用する。風船22、23、24と共に揚鉱された回収海底資源33および水素ガス回収34で回収された風船23の水素ガスは消費地16に輸送され、風船22の酸素ガス回収35は液体酸素10として再利用され、風船24のCO2ガスの二酸化炭素回収36も消費地から運んできた火力発電所などの二酸化炭素ガスと共にドライアイス製造工場4で再生され燃料として再利用される。
【0026】
図2は深海艇・カプセル概略図である。(A)はカプセル外観図、(B)は2殻構造断面図を示す。深海艇・カプセル21,25の船体構造は復殻式で、外殻37と内殻38の間には液体酸素10や液体空気3などの液化ガスやドライアイス39などを別々に格納する貯蔵ボンベ40があり、内殻38の内部には金属ナトリウム貯蔵庫41、気化した液化ガスを圧縮して採掘・集鉱及び浮き袋用風船22,23,24にガスを充填するためのコンプレッサー室42および燃料電池室43があり、金属ナトリウム貯蔵庫41から外殻37の外に伸びた軽油に浸漬された金属ナトリウム20から軽油を抜くためのバルブ付きパイプ44と逆浸透膜45付き海水注入バルブ付きパイプ46を備えている。燃料電池の燃料は液体酸素または液体空気が気化したものを使い、生成した水は金属ナトリウム貯蔵庫41の金属ナトリウム20の反応に用いる。コンプレッサー室42から外殻37の外に伸びた風船ガス充填用バルブ付きパイプ47により浮力用風船22,23,24に圧縮された排気ガスを圧入して風船を膨らませ鉱石運搬浮力体とする。海上で風船22,23,24は真空にして折りたたんだ状態で深海に運び、圧縮掘削機やシャベルなどの排ガスをこの風船に充填し、海上に帰還したときに回収する。海底での水圧は100メートルで10気圧、1,000メートルで100気圧、5,000メートルで500気圧である。
【0027】
図3は深海艇・カプセル断面図である。(A)は3殻構造、(B)は4殻構造を示す。(A)の外殻37と内殻38の間には2つの部屋を設備し、外殻37の内部にはドライアイス室48を備え、その内側に液体酸素室49を置き、ドライアイスで液体酸素の温度上昇を抑制している。たとえ海中でドライアイスが昇華して二酸化炭素ガスになっても二酸化炭素の断熱効果で液体酸素の温度上昇を抑制している。(B)の外殻37と内殻38の間には3つの部屋を設備し、外殻37の内部にはドライアイス室48を備え、その内側に液体酸素室49を置き、さらにその内側に液体水素室50を置き、ドライアイスおよび液体酸素で液体水素の温度上昇を抑制している。ここで金属ナトリウム20は海中で逆浸透膜付き海水注入バルブ付きパイプ46からろ過して圧入される真水と反応して生成した水素は燃料電池の燃料や採掘・集鉱・揚鉱用ガスとしても使用され、副産物の苛性ソーダは最後にカプセル21,25ごと浮上させ、海上で回収し、熔融塩電気分解して金属ナトリウムを再生する。
【0028】
図4は高圧ガス製造装置システム図である。図2及び3ではコンプレッサー室42の中に設備されているが、深海艇・カプセル21,25の外部に小カプセルとしてコンプレッサー艇51を連結することもできる。液体酸素、液体空気、液体水素、ドライアイスなどの液体や固体が深海の最低温度1.5℃の温度を利用して気化又は昇華して生成した液化ガス(昇華ガス)52は削岩機・シャベル・ウォータージェット駆動用圧縮ピストン53を駆動させ圧搾気体工具や回転駆動機械54を駆動する。この駆動用圧縮ピストン53の排ガスは回転駆動機械54によって伝えられた動力で断熱圧縮ピストン55で圧縮され、その断熱圧縮によってで約400℃ぐらい加熱される。このピストンの外壁を通過する液化ガス52は加熱膨張されたガス56と成って削岩機・シャベル・ウォータージェット駆動用圧縮ピストン53を駆動する。一方、断熱圧縮ピストン55で圧縮された排ガスは貯蔵ボンベ57に一時的に貯蔵される。この貯蔵ボンベ57の圧縮ガスは断熱圧縮用ピストン58で深海の水圧以上の圧力にしたのち揚鉱用浮力体としての折りたたみ風船22,23,24に圧入する。
【0029】
図5は風船(折りたたみ式風船)の概念図である。(A)は海底に到着するまでの状態、(B)は1つの風船にガスを充填した状態、(C)は浮上中の状態、(D)は海上での状態を示す。(D)に浮力体として全ての風船群が海上に浮上した状態を示す。ガス出し入れ用パイプ59には最初の風船61内部のガス圧を外気の圧力や水圧から遮断するためのバルブ60を備え、このガス出し入れ用パイプ59を最初の風船61に連結し、かつ隣の風船62との間にもガス出し入れ用パイプ63とガス圧を隣の風船62以降の隣の風船にガスを流すための開閉バルブ64を備え、それ以降の風船間をガスを流すためのガス通路孔(パイプ)65で連結する。先ず、最初に海上または陸上で折りたたみ式風船の出し入れ用パイプ63に真空ポンプをつなぎ、風船群内部を真空にした後にバルブ60と64を閉じる。この状態すなわち海底に到着するまでの状態(A)で深海底・カプセル21,25と共に海底に沈める。海上から海底に運ぶ時点では、内部を真空に吸引して折りたたまれた浮き袋があたかも無垢の固体同様になるため、数百気圧の水圧にも耐性がある。
海底で採取された鉱物資源を籠に入れて揚鉱する時点で、(B)に8示すように、風船61のみにガスを入れ、隣の風船にガスが入らないようにバルブ64は閉じたままにし、水圧を遮断するためのバルブ60のみを開き、ガス出し入れ用パイプ59から水圧に等しいかそれとも僅かに高い圧力の排気ガスを、最初の風船61にのみ圧入してバルブ60を閉じる。この場合ガスの温度と圧力はボイル・シャルルの法則に準ずる。そしてガス出し入れ用パイプ59と排気ガス圧入コンプレッサーを取り外す。この浮き袋は深海でガスを圧入して膨らませるが、この深海で圧入するガス圧は水圧近傍かそれ以上にする必要がある。ボイル・シャルルの法則によると、ここで圧入するガスの圧力(Pb)と容量(Vb)及び温度(Tb)との間には (Pb×Vb) / Tb = 一定、 なる関係が満たされ、海上での圧力(Ps)と容量(Vs)及び温度(Ts) との間にも (Ps×Vs) / Ts = 一定、 であるから両者の関係は(Pb×Vb) / Tb=(Ps×Vs) / Tsが成立する。一般に2000メートル以下では水温は1.5℃一定、1000メートルでは10℃海上の水温は便宜上年間平均温度は27℃とし、海上の気圧は1気圧であるから、海底でのガスの圧入容量はVb =約0.95 Vs /Pbを満たす必要がある。
つぎに、(C)に示すように風船61と風船62の間のバルブ64を開くと、全ての風船群にガスが入り、風船群は浮上を開始する。そして上昇するに連れて水圧が低くなった分だけ、自然に風船が膨らみ、海上に到着する頃には全ての風船が膨張するこのため水深が浅く成れば成るほど浮力が増すため、海底の鉱物資源を積んだ籠をロープで連結していく。つないだ複数個の籠に夫々浮き袋風船群をつけておけば揚鉱の効率はさらに良くなる。これら風船群が海上に浮上したら、風船内部のガスは回収し、再度液体気体として利用する。ただし各風船群をつなぐ通路孔(パイプ)65はパイプではなくプラスチック製浮き袋・風船の場合はその孔部分は熱圧着をしなければ通気孔とすることができる。ここで水深が1,300メートルより深い場合のガスには液体酸素を用い、それより浅い海底ではドライアイスを用いる方が経済的である。またドライアイスを気化させて生成した二酸化炭素を浮き袋に充填し、これを1,300メートル付近で揚鉱用ロープに連結して、浮力体の補助としても使える。この根拠は1,300メートルでの水圧が130気圧であり、二酸化炭素の液化圧力が130気圧であるため、水深が1, 300メートルより浅く成ると気化が始まるからである。海底の温度は2,000メートル以下では1.5℃一定であり、液体酸素の融点は-182.96℃、ドライアイスの融点が-78.5℃であり、二酸化炭素は130気圧で液化するが、酸素ガスは気圧を上げただけでは液化しないので、深海底で気化させるのは楽である。このように気化や昇華によって生成した気体は断熱圧縮を利用して高温気体とした後、その気体の圧力で削岩機やウォータージェットあるいは集鉱シャベルなどを駆動し、それらの排ガスをさらに圧縮して浮き袋に圧入することは再生可能エネルギーの有効利用であり経済的である。
これら風船群を図6に示すように浮き輪連結型浮き袋とすることもできる。図6は、浮き輪連結型浮き袋概略図である。(A)は海底に到着するまでの状態、(B)は海上での状態、(C)は上面図である。
風船群を図7に示すように、1個の浮き袋とすることもできる。 図7は折りたたみ風船の概略図である。(A)は海底に到着するまでの状態、(B)は海底で風船にガスを充填した状態、(C)は浮上中の状態を示す。海上では巨大な浮体・風船67と成るためと内部を真空にして海底に沈めるとき、風船の折りたたみ部が揃わなくなることが予想されるので、折り返し部に鳩目68を付け、その穴の中にロープ69を通し、内部を真空に吸引しながら、これらのロープを手繰ることにより体積を小さくし、手繰ロープを固定して(A)の状態で海底に沈める。海底で採取された鉱物資源を籠に入れて揚鉱する時点で、(B)に示すように、巨大な浮体・風船67にガス出し入れ用パイプ59から、ガス圧入時の水圧と浮力に見合うだけのガスを入れる。すなわちこの巨大な浮体・風船67が海上に浮上した時の風船内部の気圧が1気圧あるいはそれを僅かに上回るガスを入れる。この場合もガスの温度と圧力はボイル・シャルルの法則に準ずる。そして手繰ロープ69を開放すると、浮上しながら、水深が浅くなるに連れて水圧が下がるため、それに連れて巨大な浮体・風船67は(C)のように大きく成る。すなわち、外気圧に等しくなるように容積が広がっていくため、5,000メートルでは500気圧に釣り合っており、上昇すれば、気圧は下がり、その分だけ風船の容積は自動的に大きくなる。よって、海上(1気圧)で容積が500倍になるような風船を用意すればよい
【0030】
図8は海底5,000メートルの鉱物資源を揚鉱するときの概念図である。(A)は5,000メートル、(B)は4,000メートル、(C)は3,000メートル、(D)は2,000メートル、(E)は1,000メートル、(F)は0メートル(海上)に風船群があるときの状態を示す。この図は水深に応じて浮き袋・風船22,23,24の体積が大きくなる様子を視覚で示すために風船の数で表現したものである。浮力体の浮き袋・風船が海上に浮上した状態を示したもので、全体の様子は(F)で示すように、風船群22,23,24の真下に採掘した海底鉱物資源が入った籠70が順次牽引ロープ71で吊られ、最後に帰還する深海底・カプセル25が浮上を始めたところである。水深1,000メートルの所で浮力補助用の二酸化炭素ガスが入った風船24が示してある。このように、常に、二酸化炭素入り風船24を水深1,000メートルで連結すれば、揚鉱効果は大きく経済的である。5,000メートルの海底(A)は海底鉱物資源が入った籠70を連結し、浮上直前の説明図であるが、風船22,23,24は1個にガスが充填されているだけで、他の風船は折りたたんだままの風船72である。これが浮上するにつれて浮力が増した分だけ海底鉱物資源が入った籠70を連結していく様子を、(B)〜(E)に示し、この水深1,000メートルの所で(F)に示す二酸化炭素ガス入り風船24を連結し浮力の補助とする。
【0031】
図9は風見型水注入起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車の概観図である。常時風車が風上を向き、強風にも揺れが少なく、しかも建設、修理点検が楽で台風などの強風時の避難が容易な風車であるために、風車の構造は台座部73が球状又は流線形状浮体船であり、台座73の底から下方に伸びた円柱パイプ74の末端には内部が水タンク、外壁が鉄の球状錘75を備え、円柱パイプ74の下端部には揺れ防止と傾き防止のために風上側に対して鉛直と平行をなすように固定した+字形フィン76を取り付ける。そして、風車が常に風上を向くようにするために、台座の上部に流線形型柱状タワー77を載せ、このタワーの最上部にはナセル78を備え、このナセル内には風車の回転軸に取り付けたクランクを介して風車タワー頭部に設備した多段コンプレッサーで空気を圧搾し、あるいは風車回転軸に取り付けたロータリー式コンプレッサーで空気を圧搾して風車タワー兼圧力ボンベに充填し、この圧搾空気を高圧ホース79を介して母船の液体空気製造工場に送り、かつ該風車装置を曳航や建造あるいは修理・保守点検の場合には水を抜き海上に寝かせ、あるいは台風などの強風を避ける場合には該タワー兼高圧ボンベにも水を注入して海面下まで垂直に水没させることができる。この水没を利用してナセル部やコンプレッサーの修理点検を行うこともできる。また常時風車を風上に向けるために台座73の船首にはアンカーロープ固定用連結器具80を取り付け、サルカンを介してアンカーロープ81あるいはシーアンカーを連結する。また台座73の風下側に風の流れと同方向になるように平面状の舵82を固定する。
図10は風見型水注入起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車の正立した状態を示す概念図である。(A)は外観図、(B)は内部構造図である。この風車施設を正立させるために、台座内部83、円柱パイプ内部84、球状錘内部85にバラストとして海水や水を注入し、球上台座73のネック部まで水没させる。そしてプロペラ型風車7の回転をナセル78の内部にあるクランクシャフトで垂直運動に変え、圧搾空気製造所2で圧搾空気を製造し、これを流線形型柱状タワー内部(圧搾空気ボンベ室)86に貯蔵する。
図11は風見型水注入起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車を保守点検や緊急避難するための概略図である。(A)は海面に寝かせた状態図、(B)は海面下に沈めた状態図である。(A)のように風車装置を海面に寝かせるためには、台座内部83、円柱パイプ内部84、球状錘内部85の水を抜くと、その排水量が増すにつれて徐々に横に傾き始め、最終的には横に寝た状態になる。とくに風車本体を港から牽引する場合や建造時あるいは保守点検や修理時には水を抜いて海面に倒し、水を入れれば立ち上がる。大型クレーンの必要も無く、後期の短縮、保守点検や修理を経済的に行うことができる。さらに台風接近時など強風でどうにもならなかったらば、流線形型柱状タワー内部86の圧搾空気を排出し、そこに水を注入すれば徐々に海面下に沈む。プロペラは建造が容易な2枚翼とする。
【0032】
図12は多段式圧搾空気製造ピストンの概略図である。風車の転倒を防ぐためには、風車装置の頭部すなわちナセル78を軽く、しかもナセル部の風受け面積を小さくする必要がある。このために発電機を載せる代わりにコンプレッサーを載せることにした。これまでの風車はプロペラを風上に向けるためにナセルに歯車を積んでいた。しかし本発明ではタワー自身を風上に向ける構造であるためナセル部をタワーと固定することができる。そこで、ここではナセル78内の風車回転軸87に取り付けた風車プーリー88の外周部に、回転運動を上下運動に変換するための横スライド式クランクシャフト89を介して風車タワー上部の多段圧搾機(コンプレッサー)90で空気吸入口91から吸い込んだ空気を圧搾する。シリンダー92内の複数個のピストン93にはクランクシャフト89で変換された上下運動を、上下伝達棒94を介して伝え、同時に上下伝達棒94に連動して開閉を行う各シリンダーの入気逆止弁95および各シリンダーの排気逆止弁96が働き、圧搾空気出口97から圧搾空気が排出される。歯車を用い風車の回転を助長することもできるが、ここでは、シリンダー92内のピストン93において夫々空気吸引室と圧搾室を逆向きに配置して力の均衡を図っている。ここでできた圧搾空気は風車の流線形型柱状タワー内部の圧搾空気ボンベ室に一時的に貯蔵され、高圧ホースを介して母船の液体空気製造工場に送られる。この多段圧搾機90を使い、水を電気分解して生成した水素を圧搾し、液体水素を製造することもできる。
【0033】
図13は海底落差水力発電所概略図である。本発明は貯水池を設備する揚水発電所とは逆で、海や湖を無限大の貯水池と見なし、海底や湖底に外界とは隔てられた貯水槽を設備し、そこに流れ込む水で落差発電を行い、貯水槽に溜まった水を海上に揚水する方式を採用している。海底に設置した海底落差水力発電所98は周囲の水圧と隔離された2個一組で同体積の同心円柱貯水槽99,100を備え、海水吸入口101から流入する海で発電用水車102を回転して発電機103で発電する。水が該貯水槽に流れ込む時の水圧で発電機を回転し、その排水を排水弁が開放されている海水排水出口1 104から同心円柱貯水槽1 99に排水する。この貯水槽が満杯に成ったら、海水排水出口1 104の
排水弁を閉じ、次に海水排水出口2 105の排水弁を開き、排水を同心円柱貯水槽2 100に切り替える。これと同時に海水が満杯の同心円柱貯水槽1 99側の圧搾空気開閉弁1 106を開き、圧搾空気入り口107から圧入されている圧搾空気で同心円柱貯水槽1 99の海面を加圧する。ここで高圧海水は高圧海水圧送管1 108を通って海面上の高圧海水出口1 109から出た高圧水は海水淡水化工場に送られる。ここで、同心円柱貯水槽1 99の海水が空に成ったら、海水排水出口2 105の排水弁を閉じると同時に、海水排水出口1 104の排水弁を開き、海水が満杯の同心円柱貯水槽2 100側の圧搾空気開閉弁2 110を開き、圧搾空気入り口107から圧入されている圧搾空気で同心円柱貯水槽2 100の海面を加圧し、高圧海水は高圧海水圧送管2 111を通って海面上の高圧海水出口2 112から出た高圧水も淡水化工場に送られる。このこの2個一組の同心円柱貯水槽99,100のいずれかが海水で満杯に成った時点での切り替え操作を繰り返すことにより連続的に発電が行われ、淡水化工場では透膜法により真水と濃縮塩水が得られる。ここで2個一組の同心円柱貯水槽のうち何れか一方が空に成っても海底落差水力発電所が浮上しないようにするため、複数の貯水槽と発電機が収納された海底の設備の排水量を浮力より大きく成るように貯水槽の水量を調整する。実用には貯水槽は2個が好ましく、重力バランスを考えると同心円筒形とし、内槽と外槽を同容積にしていずれか1個に水を満たすと沈み、両方を空にすると浮上し、施設の点検や修理ができるようにすることが好ましい。本発明のように、圧搾空気で海水に高圧をかける方法は、海水への空気の溶解度に注意する必要がある。海底が100mならば10気圧以上の加圧が必要であり、海上に上がってくる高圧塩水を逆浸透膜で直接淡水化するには50気圧が必要であるため、60気圧以上の空気圧をかける必要が生じる。一般に空気の溶解度は水の温度が20℃の場合1気圧で1000ccの海水1リットルに約19ccの空気が溶けている。したがって50気圧の圧搾空気で水を加圧すると約10%の空気が混じることになる。水に直接圧縮空気を圧入する時は溶解度に注意して、空気の混入を避ける場合には水面に水よりも比重の軽いポリプロピレン、ポリエチレン、ゴム、シリコーンゴム、などの板またはシートを蓋として浮かせる必要がある。
【0034】
図14は海上・陸上水圧発電所の概略図である。
水を高い場所に揚水しなくても圧搾空気で水を加圧すれば水圧発電ができる。海上・陸上水圧発電所113では貯水槽1 114の排水出口1 115の排水弁を閉じると同時に圧搾空気開閉弁1 106を開放して圧搾空気入口107から圧入されたガスはポリプロピレン板蓋118を介して貯水槽1 114の水を圧縮し、高圧海水圧送管1 108から揚水し、その水圧で発電用水車102を回転して発電機103で発電する。この発電用水車102から排水された水は、排水弁が開放された排水出口2 116から貯水槽2 117に排水され、この貯水槽2 117が満水になったら圧搾空気開閉弁1 106を閉じ、排水出口1 115の排水弁を開き、貯水槽1 114に排水を切り替える。これと同時に圧搾空気開閉弁2 110を開き、そのガス圧でポリプロピレン板蓋118を介して貯水槽2 117の水を圧縮し、高圧海水圧送管2 111から揚水し、その水圧で発電用水車102を回転して発電機103で発電する。この操作を交互に行い、かつ圧搾空気の圧入弁と発電機からの排水弁を同期させて連続的に水圧発電を行う。ここで水槽の水への空気の混入を避け、空気圧を効果的に使うため、水よりも比重の軽いポリプロピレン板蓋118を蓋として浮かせているが、このポリプロピレン板118の一部に排水された水が板の下方に入り込むように穴が開けられている。
【0035】
図15は高速空気流による海水の淡水化装置概略図である。細孔によって隔てられた一方に高速流が流れると他方の気圧が降下する。そこで(A)は断面図、(B)は側面図である。逆浸透膜を使わないで海水を淡水化する方法として、長尺で細孔が空いたフッ素樹脂製の内管119に高速空気(圧搾空気)120を押し出すと高速流となって流れ、パイプの外側の気圧は降下する。この内管の外周に水蒸気を凝縮させるために、内壁を親水性表面改質121処理した大口径の孔が沢山空いた中管122を置き、その外側に海水を流すためのエンビ製の外管123を備えることにより、海水吸入口101から入った海水⇒低気圧蒸発⇒まみず+超濃縮海水になるため、海水吸入口101から連続的に海水を注入すれば淡水化が40%以上進み、最終的には約60%の超濃縮海水が超濃縮塩水取り出し口124から得られ、真水取り出し口125から真水が得られる。この方法は希硫酸から濃硫酸を回収するときも、牛乳の濃縮、果汁濃縮など幅広い用途に利用できる。
【0036】
図16は逆浸透膜法による濃縮塩水を高速空気流により淡水化するシステム図である。海水の逆浸透膜淡水化において、クロスフロー方式は逆浸透膜に平行に入れた濃度3%の塩水のうち約半分が透過淡水として得られ、残りの半分の量の塩水は6%の濃縮塩水であり、かつ海水の圧力はおよそ80%の圧力が維持されている。この濃縮圧力塩水を逆浸透法の2次圧という。したがって圧縮海水による逆浸透膜法の2次圧利用は機械的に海水を加圧する方法や海水の揚水発電などの高所からの落水で水車を回し水力発電を行う前に、逆浸透膜法により淡水化を行い、その濃縮塩水の2次圧として逆浸透膜法126にも適用できる。この逆浸透膜法126による2次圧塩水の水圧で発電用水車102を回し、発電機103で水圧発電を行う。ここで排出され濃縮塩排水127をイオン透析128することにより、硫酸を回収し、最後に残る濾液が高純度食塩水129である。これを高速空気120による海水の淡水化装置を用い、真水取り出し口125から真水と超濃縮塩水取り出し口124から食塩を回収する。
海水の淡水化は内管細孔の空いたフッ素樹脂パイプあるいはポーラスフッ素樹脂で作った内管119を用い、この内管を高速空気120が通過することにより、中管122が低圧室130と成り、外管123の塩水の中の水分を蒸発させ、大きな孔が空いた中管に水蒸気が入り、親水性の表面改質した内管外壁や中管内壁に水蒸気が吸着され凝縮する。これと同時に内管119の出口近くにステンレスパイプ131を繋ぎ、そのステンレスパイプに細孔を空け、そこに高速空気120を断熱膨張用圧搾空気パイプ132から供給すると、その周囲の高圧低温室133と成り、水蒸気は効果的に凝縮し真水取り出し口125から真水が得られる。また内管119から排出される空気は発電用高圧空気タービン134へ送られる。
【0037】
図17はドライアイス自動車の概念図である。ドライアイスは-78.5℃で昇華して二酸化炭素ガスになる。しかも、機械的圧力を加えると液化する。さらに物理的な圧縮を加えると固化してドライアイスに成る。このようにドライアイスは沸点が高く、液化や氷結温度が高いため圧縮ガスによる動力源やその排気ガスの液化後の回収によるエネルギーサイクルには打って付けである。この二酸化炭素の断熱圧縮により発生した熱で昇華したドライアイスによる二酸化炭素を膨張させ、その高圧二酸化炭素でピストンやレシプロ又はロータリーなどのエンジンを作動させ、その往復運動エネルギーや回転エネルギーを自動車の動力とし、その一部の動力でエンジンから排気された気体を、一方のシリンダーで圧縮して圧縮膨張を行い液化炭酸ガスあるいはシャーベット状ドライアイスを製造し動力源として再利用するシステムを作り、不足分のドライアイスは外部より補給する。ドライアイス自動車135はドライアイス39を燃料とし、昇華して生成した二酸化炭素を駆動用圧縮ピストン136で駆動させ、回転駆動機械54に伝え、この駆動用圧縮ピストン136の排ガスは回転駆動機械54によって伝えられた動力で断熱圧縮ピストン55により圧縮され、その断熱圧縮によって約400℃ぐらい加熱される。このピストンの外壁を通過する二酸化炭素は加熱膨張ガス56と成って駆動用圧縮ピストン136を駆動する。一方断熱圧縮ピストン55で圧縮された排ガスは貯蔵ボンベ57に一時的に貯蔵される。この貯蔵ボンベ57の圧縮ガスは断熱圧縮用ピストン58で圧縮され、断熱膨張液化二酸化炭素137と成ってドライアイス(液化二酸化炭素)貯蔵庫138に回収される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、海底地盤中のマンガン団塊、マンガンクラスト、海底熱水鉱床などの鉱物資源を採掘・集鉱・揚鉱するための稼動エネルギーとして比重が0.95以上の液化ガスやガスを生成する固体を抱え、重力を利用して海底に潜航し、海底で液化ガスを気化させて、そのガス圧で採掘や集鉱を行い、被鉱物資源を持って海上へ帰還する時は採掘や集鉱に用いた排気ガスを浮力体として利用する。この圧搾空気や液化ガスを作るための風車施設、水力発電施設、海水淡水化施設、圧搾空気・液化ガス・ドライアイス駆動装置などの開発は海洋開発に留まらず、二酸化炭素を燃料にしたドライアイス自動車を生むことなど、産業の活性化に繋がるのみならず、海底資源の採掘は、世界的枯渇と資源高あるいはこれに伴う資源供給国の台頭や国際社会に影響力を拡大させている現況を沈静化するに留まらず、無尽蔵にあるクリーンで再生可能な海洋資源を化石燃料を使わず経済的に確保する事は、4面を海に囲まれた我が国の産業にとって重要な手段である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】深海艇・カプセル概略図である。(A)はカプセル外観図、(B)は2殻構造断面図。
【図3】深海艇・カプセル断面図である。(A)は3殻構造図、(B)は4殻構造図。
【図4】高圧ガス製造装置システム図である(コンプレッサー艇)。
【図5】風船(折りたたみ式風船)の概念図である。(A)は海底に到着するまでの状態、(B)は1つの風船にガスを充填した状態、(C)は浮上中の状態、(D)は4海上での状態。
【図6】浮き輪連結型浮き袋概略図である。(A)は海底に到着するまでの状態、(B)は海上での状態、(C)は上面図である。
【図7】折りたたみ風船の概略図である。(A)は海底に到着するまでの状態、(B)は海底で風船にガスを充填した状態、(C)は浮上中の状態を示す。
【図8】海底5000メートルの鉱物資源を揚鉱するときの概念図である。(A)は5000m、(B)は4000m、(C)は3000m、(D)は2000m、(E)は1000m、(F)は0m(海上)に風船群があるときの様子を示す。
【図9】風見型水注入形起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車の概観図である。
【図10】風見型水注入形起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車の正立した状態を示す概念図である。(A)は外観図、(B)は内部構造図である。
【図11】風見型水注入形起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車を保守点検や緊急避難するための概略図である。(A)は海面に寝かせた状態図、(B)は海面下に沈めた状態図である。
【図12】多段式圧搾空気製造ピストンの概略図である。
【図13】海底落差水力発電所概略図である。
【図14】海上・陸上水圧発電所の概略図である。
【図15】高速空気流による海水の淡水化装置概略図である。
【図16】逆浸透膜法による濃縮塩水を高速空気流により淡水化するシステム図である。
【図17】ドライアイス自動車の概念図である。
【0040】
1 深海資源採掘・回収統合洋上工場
2 圧搾空気製造所
3 液体空気製造工場
4 ドライアイス製造工場
5 発電プラント
6 海水淡水化工場
7 プロペラ型風車
8 垂直軸型風水車
9 水分と二酸化炭素を分離
10 液体酸素
11 液体窒素
12 圧搾空気発電所
13 水圧発電所
14 食塩
15 真水・2次副産物(硫酸・塩酸・マグネシウム)
16 消費地(陸上)
17 高圧ボンベ・パイプライン
18 液体窒素と液体空気から分離されたアルゴンガス
19 ナトリウム製造工場
20 金属ナトリウム
21 深海艇・カプセル(洋上・エネルギー充填)
22 風船(酸素)浮き袋
23 風船(水素)浮き袋
24 風船(CO2)浮き袋
25 深海艇・カプセル(海底・エネルギー放出)
26 超高圧ガス(酸素、水素、CO2
27 圧搾ガス・水ジェット・採掘及び鉱物集鉱
28 真水(逆浸透膜による深海水の淡水化)
29 排気ガス(浮力用ガス及び燃料電池に利用)
30 燃料電池
31 苛性ソーダ(廃棄物)
32 苛性ソーダの回収
33 回収海底資源
34 水素ガス回収
35 酸素ガス回収
36 二酸化炭素回収
37 外殻
38 内殻
39 ドライアイス
40 貯蔵ボンベ(液体酸素、液体空気、ドライアイス)
41 金属ナトリウム貯蔵庫
42 コンプレッサー室
43 燃料電池室
44 軽油を抜くためのバルブ付きパイプ
45 逆浸透膜
46 逆浸透膜付き海水注入バルブ付きパイプ
47 風船ガス充填用バルブ付きパイプ
48 ドライアイス室
49 液体酸素室
50 液体水素室
51 コンプレッサー艇
52 液化ガス(昇華ガス)
53 削岩機・シャベル・ウオータージェット駆動用圧縮ピストン
54 回転駆動機械
55 断熱圧縮ピストン
56 加熱膨張されたガス
57 貯蔵ボンベ
58 断熱圧縮用ピストン
59 ガス出し入れ用パイプ
60 水圧から遮断するためのバルブ
61 最初の風船
62 隣の風船
63 風船間ガス出し入れ用パイプ
64 隣の風船にガスを流すための開閉バルブ
65 ガス通路孔(パイプ)
66 浮き輪連結型浮き袋
67 巨大な浮体・風船
68 鳩目
69 手繰ロープ
70 海底鉱物資源が入った籠
71 牽引ロープ
72 折りたたんだままの風船
73 台座(浮体船)(球状又は流線形状)
74 円柱パイプ
75 球状錘
76 +字形フィン(揺れ・傾き防止、風上側に対して鉛直と平行をなすように固定)
77 流線形型柱状タワー
78 ナセル
79 高圧ホース
80 アンカーロープ固定用連結器具
81 アンカーロープ
82 舵
83 台座内部(水:バラスト)
84 円柱パイプ内部(水:バラスト)
85 球状錘内部(水:バラスト)
86 流線形型柱状タワー内部(圧搾空気ボンベ室)
87 風車回転軸
88 風車プーリー
89 横スライド式クランクシャフト(回転運動⇒上下運動に変換)
90 多段圧搾機(コンプレッサー)
91 空気吸入口
92 シリンダー
93 ピストン
94 上下伝達棒
95 各シリンダーの入気逆止弁
96 各シリンダーの排気逆止弁
97 圧搾空気出口
98 海底落差水力発電所
99 同心円柱貯水槽1
100 同心円柱貯水槽2
101 海水吸入口
102 発電用水車
103 発電機
104 海水排水出口1(排水弁付き)
105 海水排水出口2(排水弁付き)
106 圧搾空気開閉弁1
107 圧搾空気入り口
108 高圧海水圧送管1
109 高圧海水出口1
110 圧搾空気開閉弁2
111 高圧海水圧送管2
112 高圧海水出口2
113 海上・陸上水圧発電所
114 貯水槽1
115 排水出口1(排水弁付き)
116 排水出口2(排水弁付き)
117 貯水槽2
118 ポリプロピレン板蓋
119 内管(細孔空きフッ素樹脂パイプ)
120 高速空気(圧搾空気)
121 親水性表面改質(水蒸気凝縮)
122 中管(太い孔空きパイプ、内壁親水性処理)
123 外管(エンビパイプ)
124 超濃縮塩水取り出し口
125 真水取り出し口
126 逆浸透膜法(2次圧塩水)
127 濃縮塩排水
128 イオン透析(硫酸回収)
129 高純度食塩水
130 低圧室
131 ステンレスパイプ⇒冷却用(断熱膨張)
132 断熱膨張用圧搾空気パイプ
133 高圧低温室
134 発電用高圧空気タービン
135 ドライアイス自動車
136 駆動用圧縮ピストン
137 断熱膨張液化二酸化炭素
138 ドライアイス(液化二酸化炭素)貯蔵庫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
深海底の鉱物資源採掘と回収および被回収資源の海上までの運搬にかかわる動力源を海底に輸送するに先立ち、洋上風車や水車の回転から得た圧搾空気をエネルギー源として製造した液体空気、液体酸素、液体窒素、液化炭酸ガス、液体水素などの液化ガス、あるいはドライアイスや金属ナトリウムなどの固体を該動力源として積み込んだカプセルと被回収資源輸送の浮上のための折りたたみ式風船とを共に海底に沈め、海底ではカプセル内で気化あるいは昇華した気体又は金属ナトリウムと海水を逆浸透膜で淡水化した真水との反応で生成した水素の気体で圧搾気体を作り鉱物資源採掘と回収のための削岩機やシャベルを稼動又は海水圧縮によるウォータージェット削岩を行い、あるいは金属ナトリウムと水との反応により生成した水素や液体水素が気化した水素と液体酸素が気化して生成した酸素とを燃料とする燃料電池から得た電力で削岩機やシャベルを稼動させ、かつ圧搾気体による削岩機やシャベルからの排ガスをさらに圧縮した高圧気体を浮力体として折りたたみ風船に雰囲気水圧近傍のガス圧で圧入し、浮力体に連結した籠に積載した被回収資源を順次浮上させることを特徴とする深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項2】
該海底資源回収のための該カプセルの外周は球型又は円錐型状をなし、海上で該カプセル内部に充填する該動力源は液化ガスやその氷結体あるいは水と反応して気体を発生する固体であり、それらの比重が0.9以上のものであり、かつ該カプセルは該動力源の重力で海底に沈み、海底では内部の該動力源が液化ガスや氷結体の場合には気化あるいは昇華したガスの圧力を掘削の動力及び該被回収資源の該浮力体として用い、該動力源が金属ナトリウムの場合には逆浸透膜を通過した真水と反応して生成した水素を圧縮して掘削の動力として用い、該カプセル中に残留の苛性ソーダは該カプセルごと掘削の動力として用いられた該浮力体に連結されたロープにより牽引され海上で回収し再利用して金属ナトリウムを再生し、該カプセル内に残留物が無い場合には該カプセルが浮力体として自力浮上することを特徴とする請求項1に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項3】
該浮力体すなわち該折りたたみ式風船は1個又は夫々の風船同士が夫々ガス流通孔またはパイプで連結した複数個の折りたたみ式風船群からなり、何れも海底で雰囲気の水圧以上のガスを最初に揚鉱する該被回収資源量の浮力に相当する分量以上圧入し、該浮力体の浮力で、該回収鉱物資源を海上に輸送し、上昇するに連れて周囲の水圧に反比例して該風船の体積が大きくなり浮力が増すため、該風船から海底に垂らした該被鉱物資源回収籠の牽引ロープに随時該被回収鉱物資源の入った籠を繋ぎ、必要に応じて牽引ロープの中間に液化炭酸ガスやドライアイスを挿入した該折りたたみ式風船を補助浮力体として繋ぐと水深が約1,300メートル以内になると気化や昇華が始まり牽引力を増強し、あるいは水深が1,300メートル以内の海底の場合は直接浮力体として稼動し、かつ海上では該折りたたみ風船中のガスを回収して再利用することを特徴とする請求項1に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項4】
常時風車が風上を向くための風見型水注入起き上がり小法師式洋上プロペラ型風車装置を製作するに先立ち、この風車の構造は台座部が球状又は流線形状浮体船であり、該台座すなわち該浮体船底から下方に伸びた円柱パイプの末端には球状タンクと傾き防止用振れ止板を備し、それら該円柱パイプと該球状タンクの両方にバラストとして海水や水を注入して正立させ、かつ風車が常に風上を向くように該台座の上部に伸びた風車タワーは流線形型柱状タワーとし、該風車タワーの最上部にはナセルを備し、該ナセル内の風車の回転軸に取り付けられたクランクを介して該風車タワー中に備した多段コンプレッサーで空気を圧搾し、あるいは回転軸に取り付けたロータリー式コンプレッサーで空気を圧縮し、該圧搾空気を該風車タワー兼圧力ボンベに満たし、該圧力ボンベ内の圧搾空気は高圧ホースを介して母船の液体空気製造工場に送り、かつ該風車装置を曳航や建造あるいは修理・保守点検の場合には水を抜き海上に寝かせ、あるいは該ナセル部や該コンプレッサーの修理点検又は台風などの強風を避ける場合には該タワー兼高圧ボンベにも水を注入して必要な深さまで垂直に水没させ、かつ該浮体船の船首にはアンカー又シーアンカーのロープを固定する構造を有することを特徴とする請求項1に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項5】
液体気体製造のための垂直軸型風水車装置を製造するに先立ち、風水車の構造は台座部が球状又は流線形状浮体船であり、船底には水車を備し、該浮体船の上に伸びた円柱タワーの末端部に垂直軸型風車を備し、該浮船体の内部の風水車の回転軸に直結したロータリー式コンプレッサーで空気を圧搾し、該圧搾空気を該風車タワー兼圧力ボンベに満たし、該浮体船の船首にはアンカー又シーアンカーを固定し、かつ該圧搾空気は高圧ホースを介して母船の液体空気製造工場に送ることを特徴とする請求項1に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項6】
風車や水車の回転から得た動力エネルギーで該圧搾空気を製造して該高圧ホースで該液体空気製造工場に集めて液体空気を製造するに先立ち、該風車装置から該高圧パイプで送られる該圧縮空気は搬送中に海水で冷やされ、該液体空気製造工場に到着した後、一部は圧搾空気で発電タービンを回す直接発電、又は海底や湖底に設置した水の落差発電所あるいは海上に設置した水圧発電所での水車の回転による電力発生に供し、それら発電所から排出される高圧水は海水淡水化のための逆浸透膜への海水加圧用に供し、この逆浸透膜から排出される高圧濃縮塩水は再度別系統の水車を回し発電し、さらに該圧搾空気の一部は脱水したのち海水加圧用又は気圧差淡水化装置の高速ガス流源に供し、あるいはさらに圧縮して空気中の約0.03%の二酸化炭素を液化二酸化炭素として回収したのち再度圧縮して該液体空気を製造し、これを液体酸素と液体窒素とに分離し、そのうち液体酸素は該海底資源回収のための該動力源に供し、液体窒素は船舶あるいはパイプラインで陸上消費地に送り、圧搾窒素による自動車の動力源や発電用タービンの動力源などに供することを特徴とする請求項1に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項7】
請求項6記載の海底や湖底に設置した水の落差発電所あるいは海上に設置した水圧発電所などに於いて圧搾空気で水を圧縮して水車を回転する水力発電を行うに先立ち、該水力発電を海底や湖底で行う場合には周囲の水圧と隔離された2個一組の同体積の貯水槽を備し、周囲の海水や湖水が該貯水槽に流れ込む時の水圧で発電機を回転し、その排水を排水溝から一方の該貯水槽に放水し、それが満杯に成ったら、放水を他方の該貯水槽に切り替える操作を行い、満水の方の貯水池の水を圧搾空気で海上又は湖上に押し上げることにより2個一組の貯水槽に存在する総水量がたえず全体の半分を保つようにして発電施設が浮力で浮上しないように重力バランスが保たれた構造を有する該水の落差発電所として、あるいは水槽が海上又は陸地にある場合には2個の水槽を備し、かつ水槽の水面上に空気の混入を避けるために水よりも比重の軽いポリプロピレン、ポリエチレン、ゴム、シリコーンゴム、などの板またはシートを蓋として浮かせ、一方の水槽に満たした水を圧縮空気の圧力で押し上げ、その水圧で発電機を回転し、その排水を他方の水槽に貯え、これが満杯に成たら、該圧縮空気の圧入を満杯側に移し、その水圧で発電機を回転する操作を交互に繰り返す該水圧発電所であることを特徴とする請求項1および6に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項8】
請求項6記載の該気圧差淡水化装置で海水の淡水化および濃縮塩水を取り出すに先立ち、一方の端から圧縮空気と海水が入り他端から淡水と超濃縮海水が採取される長尺3重管構造の該気圧差淡水化装置のうち高速空気を通す心管は微細な孔が開いた撥水性パイプあるいはポーラスフッ素樹脂パイプより成り、中管は低圧室を構成して低圧水蒸気を集めるための大きな穴があけられた管であり内面は水蒸気を凝縮させるために親水性化処理され、淡水取り出し口近くには高圧空気を細孔から噴射して断熱膨張により冷却することにより完全に水蒸気を液化するための中管より成り、最外管には海水を直接あるいは逆浸透膜から廃液として出る濃縮塩水をイオン交換樹脂法により硫酸を分離した後の濃縮塩水を中管に注入し、最外管の出口から脱水された超濃縮塩水が、中管の出口からは淡水が、心管の出口からは高速空気が出てくる構造であることを特徴とする請求項1および6に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項9】
ドライアイスあるいは液化ガス又は高圧気体を動力源とした該海底資源回収装置あるいはドライアイス自動車を駆動するに先立ち、深海駆動の場合には液化ガスの気化気体やドライアイスの昇華ガスあるいは各種ガスなどの断熱圧縮により発生した熱で水素や酸素あるいは二酸化炭素の高圧ガスをさらに膨張させ、深海の水圧以上の高圧ガス圧で削岩機のピストンやエンジンあるいはウォータージェットを駆動して採掘や集鉱の動力に供し、それらの排ガスあるいは未使用ガスは他方のシリンダーで圧縮したのち該折りたたみ式浮き袋に圧入して浮力体として利用し、そのガスは海上において回収して液化ののち再度駆動源として使用し、陸上におけるドライアイス自動車を駆動する場合は、ドライアイスの昇華ガスの断熱圧縮により発生した熱で二酸化炭素の高圧ガスをさらに膨張させ、レシプロ又はロータリーエンジンを駆動し、その排気ガスを他方のシリンダーで圧縮して圧縮膨張を行って液化炭酸ガスを製造して動力源として再利用し、不足分は外部からドライアイスを供給することを特徴とするドライアイス自動車駆動装置および請求項1に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。
【請求項10】
海水の落差発電所の水圧を利用して海水の淡水化及び落差水力発電を行うに先立ち、揚水され高所の貯水池に貯えられた海水を低所の設備された逆浸透膜淡水化装置に圧入し、淡水を回収し、同時に排出される高圧の濃縮塩水で水流タービンを回し発電することを特徴とする塩水淡水化と落差発電方法および請求項1および6に記載の深海資源採掘・回収統合洋上工場。


【図1】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−180528(P2010−180528A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22119(P2009−22119)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(308026724)株式会社エム光・エネルギー開発研究所 (10)
【Fターム(参考)】