説明

混合トナー用ベーストナーの製造方法

【課題】混合するベーストナーの組み合わせが変わった場合でも、新たなベーストナーの組み合わせに対して各ベーストナーの表面電荷等の物性の再調整の必要なく、画像の色相を再現させることができ、また、連続印刷において、画像の色相を一定に維持することのできる混合トナー用ベーストナーの製造方法を提供すること。
【解決手段】2種以上のトナーを混合してなる混合トナー用ベーストナーの製造方法であって、少なくともポリエステルと荷電制御剤とをスクリューを備えた混練機により混練する工程を有し、該ポリエステルの100℃での貯蔵弾性率が5.0×102〜1.0×105Paであり、該荷電制御剤が、前記ポリエステル100重量部に対して、サリチル酸化合物を2〜5重量部と4級アンモニウム塩を0.3〜1.0重量部とを含有し、前記混練を、式(A):


で表される混練エネルギーが1.00×10-3〜1.50×10-3となる条件で行う、混合トナー用ベーストナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる混合トナー用ベーストナーの製造方法、ならびに該方法によって得られたベーストナーを用いる混合トナー及び混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーの多様な要求に応え得るカスタムカラーのトナーの製造や、装置の簡略化が可能な2色印刷等を目的として、色の異なる2種以上のカラートナーを混合する技術が種々検討されている。例えば、特許文献1では、連続印刷を繰り返しても安定した印刷を可能とすることを目的に、トナーの表面処理剤に着目し、トナー表面を均質化する試みがなされている。
【0003】
一方、トナー中の添加剤の分散性を向上させるための手段としては、添加剤の種類や量の検討に加えて、トナー原料を混練する際の混練エネルギーを調整する方法がある(特許文献2、3等参照)
【特許文献1】特開2005−316124号公報
【特許文献2】特開平4−110861号公報
【特許文献3】特開2005−24771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法によってトナー表面を均質化しても、連続印刷に伴い安定した画像が得られるが、混合するトナー(ベーストナー)の色の組み合わせによっては現像された色が変わることがある。
【0005】
本発明の課題は、混合するベーストナーの組み合わせが変わった場合でも、新たなベーストナーの組み合わせに対して各ベーストナーの表面電荷等の物性の再調整の必要なく、画像の色相を再現させることができ、また、連続印刷において、画像の色相を一定に維持することのできる混合トナー用ベーストナーの製造方法、該方法により得られたベーストナーを用いた混合トナー、及び混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化抑制方法を提供することにある。なお、本発明では混合トナーを構成する各トナーをベーストナーという。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
〔1〕 2種以上のトナーを混合してなる混合トナー用ベーストナーの製造方法であって、少なくともポリエステルと荷電制御剤とをスクリューを備えた混練機により混練する工程を有し、該ポリエステルの100℃での貯蔵弾性率が5.0×102〜1.0×105Paであり、該荷電制御剤が、前記ポリエステル100重量部に対して、サリチル酸化合物を2〜5重量部と4級アンモニウム塩を0.3〜1.0重量部とを含有し、前記混練を、式(A):
【0007】
【数1】

【0008】
で表される混練エネルギーが1.00×10-3〜1.50×10-3となる条件で行う、混合トナー用ベーストナーの製造方法、
〔2〕 前記〔1〕記載の方法により得られたベーストナーを2種以上混合してなる混合トナー、並びに
〔3〕 2種以上のベーストナーを混合してなる混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化抑制方法であって、各ベーストナーとして、少なくともポリエステルと荷電制御剤とをスクリューを備えた混練機により混練する工程を有し、該ポリエステルの100℃での貯蔵弾性率が5.0×102〜1.0×105Paであり、該荷電制御剤が、前記ポリエステル100重量部に対して、サリチル酸化合物を2〜5重量部と4級アンモニウム塩を0.3〜1.0重量部とを含有し、前記混練を、式(A):
【0009】
【数2】

【0010】
で表される混練エネルギーが1.00×10-3〜1.50×10-3となる条件で行う方法により得られたトナーを用いる、混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化抑制方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により得られるベーストナーを用いて得られた混合トナーは、トナーの色等の混合するベーストナーの組み合わせによらず、ベーストナーの表面電荷等の物性の調整の必要なく、画像の色相を再現させることができ、また、連続印刷において、画像の色相を一定に維持することができるという効果を奏するものである。また、本発明の方法により、混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の方法は、2種以上のトナーを混合する混合トナーに用いられるベーストナーを製造する方法であり、少なくとも、特定の貯蔵弾性率を有するポリエステルと特定の荷電制御剤とを混練する工程を経てベーストナーを製造する際に、混練条件を調整する点に大きな特徴を有する。混合トナーを用いて連続印刷した際の画像の色相変化は、ベーストナー間で現像性に偏りが生じていることに起因しているものと推測される。そこで、本件発明者らが、ベーストナーの帯電性に大きな影響を及ぼす荷電制御剤の分散性向上について検討した結果、分散性の良好な荷電制御剤を使用しても、ベーストナー製造工程での混練条件によっては本発明の課題を達成することができない場合があり、さらに、混練条件として混練エネルギーを調整することにより課題が達成されることを見出した。さらに、混合トナーの各ベーストナーとして、本発明の方法により得られたベーストナーを組み合わせることにより、混合トナーを構成するベーストナーの組み合わせが変わった場合でも、新たなベーストナーの組み合わせに対して各ベーストナーの表面電荷等の物性の再調整の必要なく、混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化を抑制することができる。
【0013】
本発明のベーストナーの製造方法は、前記の如く、混合トナーを構成する各ベーストナー全てについて、少なくとも、特定の貯蔵弾性率を有するポリエステルと特定の荷電制御剤とを混練する工程を有する。
【0014】
結着樹脂として用いられるポリエステルの100℃での貯蔵弾性率は、トナーの低温定着性の観点から、5.0×102〜1.0×105Paであり、好ましくは5.0×102〜5.0×104Pa、より好ましくは5.0×102〜1.0×104Paである。ポリエステルの貯蔵弾性率は、ポリエステルの原料モノマーの組成やポリエステル製造時の反応条件等により調整することができる。例えば、原料モノマーとして3価以上の成分を用いる、反応時間を長くすると、ポリエステルの100℃での貯蔵弾性率は大きくなる傾向がある。
【0015】
ポリエステルは、公知のアルコール成分と、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸エステル等の公知のカルボン酸成分とを原料モノマーとして用い、これらを縮重合させて得られる。
【0016】
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の、式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1O及びOR1はオキシアルキレン基であり、R1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられる。
【0019】
また、カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。上記のような酸、並びにこれらの酸の無水物及びアルキルエステルを、本明細書では総称してカルボン酸化合物と呼ぶ。
【0020】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、分子量調整や耐オフセット性向上の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0021】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒の存在下、180〜250℃の温度で縮重合させることにより得られる。
【0022】
耐久性及び定着性の観点から、ポリエステルの軟化点は80〜165℃が好ましく、ガラス転移点は50〜85℃が好ましく、酸価は0.5〜60mgKOH/gが好ましい。
【0023】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0024】
結着樹脂として、前記特定の貯蔵弾性率を有するポリエステル以外の樹脂が用いられていてもよい。ポリエステル以外の結着樹脂としては、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、2種以上の樹脂成分を有するハイブリッド樹脂等が挙げられるが、前記特定の貯蔵弾性率を有するポリエステルの含有量は、結着樹脂中、60〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0025】
荷電制御剤としては、サリチル酸化合物と4級アンモニウム塩を用いる。サリチル酸化合物を用いることにより、帯電立ち上がりが良好で高い帯電が得られやすく、また、4級アンモニウム塩を用いることによりサリチル酸化合物によって生成される帯電性が高すぎるトナー粒子を抑制する役割を担っていると考えられる。
【0026】
サリチル酸化合物としては、式(II):
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基、Mはクロム、亜鉛、カルシウム、ジルコニウム又はアルミニウム、mは2以上の整数、nは1以上の整数を示す)
で表されるサリチル酸化合物の金属化合物が好ましい。なお、サリチル酸化合物の金属化合物は、金属塩及び金属錯体のいずれであってもよいが、本発明においては、トナーの帯電立ち上がりの観点から、Mがクロムである、サリチル酸化合物のクロム錯体が好ましい。サリチル酸化合物の金属化合物は、無色であるため、カラートナーにおいても好適に使用することができる。
【0029】
式(II)において、R3は水素原子が好ましく、R2及びR4は分岐鎖状のアルキル基が好ましくは、tert-ブチル基がより好ましい。
【0030】
3が水素原子、R2及びR4がtert-ブチル基であるサリチル酸化合物の金属化合物の市販品としては、「ボントロンE-81」(M:クロム、オリエント化学工業(株)製)、「ボントロンE-84」(M:亜鉛、オリエント化学工業(株)製)、「TN-105」(M:ジルコニウム、保土谷化学工業(株)製)、「ボントロンE-88」(M:アルミニウム、オリエント化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0031】
サリチル酸化合物の配合量は、前記ポリエステル100重量部に対して、2〜5重量部であり、好ましくは2.5〜4.5重量部である。
【0032】
4級アンモニウム塩としては、式(III):
【0033】
【化3】

【0034】
(式中、R5〜R8は、同一又は異なっていてもよく、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜8の低級アルキル基、炭素数8〜22のアルキル基もしくはアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基、Xはカルボン酸イオンを示す)
で表されるカルボン酸の4級アンモニウム塩が好ましい。
【0035】
本発明では、帯電特性がより安定し定着性も向上させることができる点から、R5〜R8としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜4の低級アルキル基、炭素数12〜18のアルキル基、フェニル基及びベンジル基が好ましく、X-としては、芳香族カルボン酸イオン及び脂肪族カルボン酸イオンが好ましく、芳香族カルボン酸イオンがより好ましい。芳香族カルボン酸イオンとしては、安息香酸、ジチオジ安息香酸等の、安息香酸の構造を有するカルボン酸のイオンが挙げられる。
【0036】
さらに、より好適なジチオジ安息香酸の4級アンモニウム塩として、本発明では、式(IIIa):
【0037】
【化4】

【0038】
で表される化合物が挙げられる。
【0039】
式(IIIa)で表される化合物を含有した市販品としては「COPY CHARGE PSY」(クラリアント社製)等が挙げられる。
【0040】
4級アンモニウム塩の配合量は、前記ポリエステル100重量部に対して、0.3〜1.0重量部であり、好ましくは0.4〜0.9重量部である。
【0041】
サリチル酸化合物と4級アンモニウム塩の配合量の重量比(サリチル酸化合物/4級アンモニウム塩)は、好ましくは2/1〜10/1であり、より好ましくは4/1〜8/1である。
【0042】
サリチル酸化合物及び4級アンモニウム塩以外の荷電制御剤を本発明の効果を損なわない範囲で適宜用いてもよい。
【0043】
本発明においては、結着樹脂及び荷電制御剤以外に、着色剤、離型剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、磁性体等の添加剤をトナー原料として配合してもよい。
【0044】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを所望の色目に応じて使用することができる。例えば、イエロートナー用としては、C.I.ピグメントイエロー(P.Y.) 3, 12, 13, 14, 16, 17, 55, 65, 73, 74, 83, 94, 95, 97, 120, 151, 154, 167, 169, 172, 180, 181, 185及びこれらの混合顔料等が挙げられる。マゼンタトナー用としては、C.I.ピグメントレッド(P.R.) 5, 31, 57:1, 122, 146, 147, 150, 176, 184, 202, 269、C.I.ピグメントバイオレット(P.V.) 19及びこれらの混合顔料等が挙げられる。シアントナー用としては、C.I.ピグメントブルー(P.B.) 15:3、C.I.ピグメントブルー 15:3とC.I.ピグメントグリーン(P.G.) 7又はC.I.ピグメントグリーン 36との混合顔料等が挙げられる。なお、ここでいう混合顔料とは、トナーの原料配合時にそれぞれの顔料が併用されていてもよく、両者を同一粒径に揃えてあらかじめ混合した状態で他のトナー原料に配合して用いられていてもよい。着色剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1〜15重量部程度が好ましい。
【0045】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュ等の合成ワックス、モンタンワックス等の石炭系ワックス、パラフィンワックス等の石油ワックス、アルコール系ワックス等のワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然エステル系ワックスが挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜10重量部が好ましく、1〜8重量部がより好ましい。
【0046】
結着樹脂と荷電制御剤との混練においては、結着樹脂及び荷電制御剤、さらに着色剤、離型剤等のトナー原料を均一に混合した後、混練機に供することが好ましい。トナー原料の混合は、結着樹脂等の全ての原料を一度に混合する方法であっても、分割して混合する方法であってもよい。
【0047】
トナー原料の混合に用いられる混合機としては、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等が挙げられるが、荷電制御剤等の内添剤の分散性の観点から、ヘンシェルミキサーが好ましい。
【0048】
トナー原料の混練に用いるスクリューを備えた混練機としては、密閉式ニーダー、一軸又は二軸の押出機、オープンロール型混練機等が用いられるが、これらの中では、混練の安定性の観点から、二軸押出機が好ましい。
【0049】
混練は、式(A):
【0050】
【数3】

【0051】
で表される混練エネルギーが1.00×10-3〜1.50×10-3、好ましくは1.20×10-3〜1.40×10-3となる条件で行う。ここで、混練機の電力は、混練負荷をかけた時のものであり、混練機の電流I(A)と電圧V(V)を用いて、式(B):
混練機の電力=√3×I×V×cosφ×0.001 (B)
(cosφは力率であり、条件によって0.5〜1の間で変動するが、その値を0.8で計算する)
から算出する。
【0052】
結着樹脂として前述した特定の貯蔵弾性率を有するポリエステルと、前述した特定の2種の荷電制御剤をトナー原料として用いる場合は、前記の混練エネルギーの範囲で混練することが、製造のロットが変わってもトナー原料の分散状態を一定にすることができる点で有効である。ある特定の混練エネルギーの範囲内で混練することで、結着樹脂中に結着樹脂以外の、荷電制御剤等の内添剤の分散状態が一定のものが得られる。
【0053】
混練温度は、トナー原料を混練できる範囲であればよいが、好ましくはポリステルの軟化点より30℃低い温度以上であり、ポリステルの軟化点よりも50℃高い温度以下である。より好ましくはポリステルの軟化点より30℃低い温度以上であり、ポリステルの軟化点よりも30℃高い温度以下である。混練温度は、混練エネルギーを変更するための手段の一つとなるが、混練温度を変更しても混練エネルギーが同じであればトナー原料の分散状態が一定のものが得られる。
【0054】
混練工程後は、得られた混練物を粉砕が可能な程度に冷却した後、粉砕工程、分級工程等の通常の方法を経て、ベーストナーを得ることができる。
【0055】
粉砕工程では、耐久性の向上の観点から、好ましくは体積中位粒径が20μm以下、より好ましくは10μm以下に粉砕することが望ましい。
【0056】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに微粉砕してもよい。また、粉砕、分級工程時の生産性を向上させるために、混練物を疎水性シリカ等の無機微粒子と混合した後、粉砕してもよい。
【0057】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられるが、ハンマーミル等を用いてもよい。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ジェットミル、衝突板式ミル、回転型機械ミル等が挙げられる。
【0058】
分級工程に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程と繰り返してもよい。
【0059】
混練工程の後、粉砕工程及び分級工程を経て得られたトナー粒子をそのままベーストナーとして用いても、外添剤をトナー粒子表面に外添してベーストナーとして用いてもよい。トナー(粒子)の体積中位粒径(D50)は、3〜12μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0060】
外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子等が挙げられ、これらの中では、埋め込み防止の観点から、比重の小さいシリカが好ましい。
【0061】
外添剤としては、スペーサー効果を発揮させる観点から、比重の小さいシリカが好ましい。シリカは、環境安定性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。疎水化の方法は特に限定されず、疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。疎水化処理剤の処理量は、無機微粒子の表面積当たり1〜7mg/m2が好ましい。
【0062】
外添剤の配合量は、トナー粒子100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0063】
外添工程は、外添剤とトナー粒子とをヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機、V型ブレンダー等を用いる乾式混合法が好ましい。外添剤は、あらかじめ混合して高速攪拌機やV型ブレンダーに添加してもよく、また別々に添加してもよい。
【0064】
本発明の方法により得られたベーストナーを2種以上混合することにより、混合トナーを得ることができ、かかる混合トナーは、連続印刷に供しても、画像の色相変化を抑制することができる。混合に供されるトナーの種類や配合比は、混合トナーの目的色に応じて適宜設定される。2種以上のベーストナーの混合に用いる混合機としては、V型ブレンダー、ターブラーシェーカーミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー等が挙げられる。
【0065】
本発明の混合トナーは、予め目的色の画像が得られるように2種以上のベーストナーが混合され、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等の潜像の現像に用いられる。本発明の混合トナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【0066】
本発明では、前記の如く、混合トナーの各ベーストナーとして、本発明の方法により得られたベーストナーを組み合わせることにより、混合トナーを構成するベーストナーの組み合わせが変わった場合でも、新たなベーストナーの組み合わせに対して各ベーストナーの表面電荷等の物性の再調整の必要なく、混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化を抑制することができる。従って、本発明ではさらに、2種以上のベーストナーを混合してなる混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化抑制方法であって、各ベーストナーとして、本発明の方法により得られたトナーを用いる、混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化抑制方法を提供する。
【実施例】
【0067】
〔樹脂の貯蔵弾性率〕
加熱保持前後の貯蔵弾性率(G’)をレオメーター(ARES、TAインスツルメント社製)により測定する(Strain:0.05%、周波数:6.28rad/sec)。測定装置の条件については下記の通り設定する。
【0068】
パラレルプレートを150℃に加熱/放置し、試料を150℃で溶融させながらギャップが1.5mm〜2.5mmになるようパラレルプレートにのせ上下のプレートで挟んだ後、40℃まで20℃/minで冷却した後、180℃まで5℃/minで昇温する。
【0069】
具体的には、測定装置を下記の通り設定した。
Geometry Type = Parallel Plates (ParaPlate)
Diameter = 25.0 [mm]
Gap = 1.5〜2.5 [mm]
Read Test Fixture Gap = On
Tool Serial Num = 0000
Tool Inertia ......... = 58.0 [g・cm2]
Change Gap to Match Tool Thermal Expansion = Off
Tool Thermal Expansion Coefficient = 2.3 [μm/℃]
Fluid Density........ = 1.0 [g/cm3]
Fixture Compliance = 0.524 [μrad/g-cm]
【0070】
Test Type = Dynamic Temperature Ramp (DTempRamp)
Frequency = 6.28 [rad/s]
Initial Temp. = 150.0 [℃]
Final Temp. = 40.0, 150.0, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0 [℃]
Ramp Rate = 20.0, 5.0, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0 [℃/min.]
Computed Ramp Time = 2:30, 10:00, 0, 0, 0, 0, 0, 0 [h:m:s]
Soak Time After Ramp = 300, 0, 0, 0, 0, 0, 0, 0 [s or h:m:s]
Time Per Measure = 24, 12, 0, 0, 0, 0, 0, 0 [s or h:m:s]
Strain = 0.05, 0.05, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0, 0.0 [%]
Computed Test Duration = 17:30 [h:m:s]
Zone Time = 450, 10:00, 0, 0, 0, 0, 0, 0 [s or h:m:s]
Options = ElectroRheology
Steady PreShear = Off
PreShear Mode = Preshear Off
Delay Before Test = Off
Automatically start test when on Temperature = Off
AutoTension Adjustment = On
Mode = Apply Constant Static Force
AutoTension Direction = Compression
Initial Static Force = 10.0 [g]
AutoTension Sensitivity = 10.0 [g]
When Sample Modulus < = 100.0 [Pa]
AutoTension Limits = Default
Max Autotension Displacement = 3.0 [mm]
Max Autotension Rate = 0.01 [mm/s]
AutoStrain = On
Max Applied Strain = 20.0 [%]
Max Allowed Torque = 300.0 [g-cm]
Min Allowed Torque = 1.0 [g-cm]
Strain Adjustment = 20.0 [% of Current Strain]
Strain Amplitude Control = Default Behavior
Limit Minimum Dynamic Force Used = No
Minimum Applied Dynamic Force = 1.0 [gmf]
Measurement Options = Default Delay Settings
Cycles = 0.5 []
Time = 3 [s or h:m:s]
Correlation: One Cycle Correlate = Off
ElectroRheology Mode = Off
Turn OFF Motor = No
Turn Hold ON = Yes
Turn OFF Temp Controller = No
Set End of Test Temp = Yes
Set End of Test Temp to: = 200.0 [℃]
Oven Air/N2 Switch = Force Air
Dielectric Testing = Off
Steady Stress on Dynamic = 0.0 [Pa]
Analog Data Collection = Off
External Correlation = Off
Measurement Time = 1.0 [s]
Correlation Cycles = 1 []
Enable External Trigger = Off
Delay before initial trigger = 5.0 [s]
Trigger On Time = 2.0 [s]
Trigger Off Time = 2.0 [s]
Number of On/Off Cycles = 1 []
【0071】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出する温度を軟化点とする。
【0072】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した試料を昇温速度10℃/minで測定を開始する。ガラス転移点以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの間の最大傾斜を示す接線との交点の温度を、ガラス転移点とする。
【0073】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0074】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
本明細書において、トナー粒子の体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になるトナーの粒径を意味する。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5重量%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個のトナー粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0075】
樹脂製造例
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1040g、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン10g、テレフタル酸199g、及びジブチルスズオキサイド(エステル化触媒)4gを窒素雰囲気下、常圧下230℃で5時間反応させ、さらに減圧下で1時間反応させた。温度を210℃に冷却し、フマル酸209g及びハイドロキノン1gを添加し、5時間反応させた後にさらに減圧下で反応させて、樹脂Aを得た。樹脂Aの軟化点は107.5℃、酸価は21.3KOHmg/g、ガラス転移点は64.4℃、100℃での貯蔵弾性率は1.4×103Paであった。
【0076】
実施例A−1〜A−7及び比較例A−1〜A−7
結着樹脂として樹脂A 100重量部、表1に示す着色剤4重量部、離型剤としてポリプロピレンワックス「ハイワックスNP-055」(三井化学社製)1重量部、荷電制御剤としてサリチル酸化合物のクロム錯体「ボントロンE-81」(オリエント化学工業社製)3重量部及び4級アンモニウム塩「COPY CHARGE PSY」(クラリアント社製)0.5重量部をヘンシェルミキサーで混合後、二軸混練機「PCM-43」(池貝社製)を用いて、表1に示す条件下で、混練した。得られた混練物をドラムフレーカーにより冷却した後、カッターミルで粗粉砕した。その後、ジェットミルで微粉砕し、気流分級機で分級を行い、体積中位粒径(D50)が8.5μmのトナー粒子を得た。
【0077】
得られたトナー粒子100重量部に対して疎水性シリカ「R-972」(日本アエロジル社製、疎水化処理剤:DMDS)0.6重量部を投入し、90秒間攪拌後、目開き100μmの金網で篩って、ベーストナーを得た。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例B−1〜B−11、比較例B−1〜B−14
表2に示す実施例又は比較例のベーストナーそれぞれ1kgを1:1の重量比で、10Lのヘンシェルミキサーにより1分間混合し、混合トナーを得た。
【0080】
試験例1
オセプリンティングシステム社製のハイブリッド現像方式の画像形成装置「Vario Stream 9000」(線速1000mm/sec)に、フェライトキャリア(平均粒径:60μm、飽和磁化:68Am2/kg)を5kg投入し、さらに現像剤中のトナー濃度が6重量%になるように混合トナーを補給し、10分間攪拌して二成分現像剤に調製した後、印字率0.5%の画像を20万枚印刷した。その際、紙上に印字された画像の色相を印字初期(100枚)と比較し、以下の方法により、色相の変化(ΔE)を測定した。結果を表2に示す。
【0081】
〔ΔEの測定〕
色彩計「SPM50」(グレタグ社製)を用いてL*値、a*値及びb*値を測定する。下記式に従って色差(ΔE)を算出し、色相の変化を評価する。結果を表2に示す。ΔEは、4.0以下であることが好ましい。
【0082】
【数4】

【0083】
(式中、L1*、a1*及びb1*は印字初期の値を、L2*、a2*及びb2*は20万枚印刷後の値をそれぞれ示す。)
【0084】
【表2】

【0085】
以上の結果から、実施例のベーストナー同士を組み合わせた混合トナーを用いることにより、ベーストナーの色の組み合わせが変わった場合でも連続印刷において、画像の色相変化が抑制されることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明により得られるベーストナーを用いた混合トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のトナーを混合してなる混合トナー用ベーストナーの製造方法であって、少なくともポリエステルと荷電制御剤とをスクリューを備えた混練機により混練する工程を有し、該ポリエステルの100℃での貯蔵弾性率が5.0×102〜1.0×105Paであり、該荷電制御剤が、前記ポリエステル100重量部に対して、サリチル酸化合物を2〜5重量部と4級アンモニウム塩を0.3〜1.0重量部とを含有し、前記混練を、式(A):
【数1】

で表される混練エネルギーが1.00×10-3〜1.50×10-3となる条件で行う、混合トナー用ベーストナーの製造方法。
【請求項2】
混練に用いる混練機が、二軸押出機である請求項1記載の混合トナー用ベーストナーの製造方法。
【請求項3】
サリチル酸化合物が、式(II):
【化1】

(式中、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素原子、直鎖又は分枝鎖状の炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数2〜10のアルケニル基、Mはクロム、亜鉛、カルシウム、ジルコニウム又はアルミニウム、mは2以上の整数、nは1以上の整数を示す)
で表されるサリチル酸化合物の金属化合物において、Mがクロムである、サリチル酸化合物のクロム錯体である請求項1又は2記載の混合トナー用ベーストナーの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の方法により得られたベーストナーを2種以上混合してなる混合トナー。
【請求項5】
2種以上のベーストナーを混合してなる混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化抑制方法であって、各ベーストナーとして、少なくともポリエステルと荷電制御剤とをスクリューを備えた混練機により混練する工程を有し、該ポリエステルの100℃での貯蔵弾性率が5.0×102〜1.0×105Paであり、該荷電制御剤が、前記ポリエステル100重量部に対して、サリチル酸化合物を2〜5重量部と4級アンモニウム塩を0.3〜1.0重量部とを含有し、前記混練を、式(A):
【数2】

で表される混練エネルギーが1.00×10-3〜1.50×10-3となる条件で行う方法により得られたトナーを用いる、混合トナーの連続印刷時の画像の色相変化抑制方法。