説明

混合フルオロアルキル−アルキル界面活性剤

式1:
f−A−OP(O)(O-+)(O−RH) 式1
(式中、
fは、1、2又は3個のエーテル酸素原子によって任意に中断されたC2〜C6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
Aは、(CH2CF2m(CH2n−、(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−、O(CF2q(CH2r−、又はOCHFCF2OE−であり、
mは1〜4であり、n、o、pおよびrはそれぞれ独立して2〜20であり、qは2であり、
Eは、酸素、イオウ、又は窒素原子によって任意に中断されたC2〜C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、環状アルキル基、又はC6〜C10アリール基であり、
Mは、I族の金属又はアンモニウムカチオン(NHX2y+(式中、R2はC1〜C4アルキルであり、xは1〜4であり、yは0〜3であり、x+yは4である)であり、
HはC1〜C20の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル、又はC6〜C10アリールである)
の化合物、および界面活性剤としてのその使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、フルオロケミカル界面活性剤の合成と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロケミカル鎖を有する界面活性剤および表面処理剤では、パーフルオロアルキル鎖が長いほど、所与の濃度でフッ素含有率が高く、通常、性能がより優れている。しかし、より長いパーフルオロアルキル鎖から誘導されたフッ素化材料ほど、高価である。従って、フッ素含有量を低減しつつ、同等又はそれより高い性能を発揮することが望ましい。フッ素含有量を低減するとコストが削減されるが、製品の性能を維持することが必要である。
【0003】
Desimoneらは、国際公開第02/26921号パンフレットで、構造式RfO−PO(ORH)(O-+)(式中、RfはCn(2n+1)(CH2mであり、RHはCn(2n+1)又はCn(2n+1)(CH2mであり、nおよびmは1〜24であり、M+はK+、Na+又はNH4+である)のハイブリッドホスフェートを記載した。Desimoneらは、液体二酸化炭素中で使用される界面活性剤としてのこれらの化合物の使用を記載したが、水又は他の媒体中での界面活性剤としての使用は記載しなかった。
【0004】
界面活性剤の性能を改善し、特に水系における表面張力を低下させて、フッ素有効性を増加させること、即ち、界面活性剤の有効性又は性能を向上させ、同レベルの性能を達成するのに必要な高価なフッ素成分の割合がより低くて済むようにすること、又は同レベルのフッ素を使用してより優れた性能を有するようにすることが望ましい。とりわけ望ましいのは、現在の市販の製品と比較して水系で類似の又はより優れた性能を有するが、より短いパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤である。本発明は、このような界面活性剤を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式1
f−A−OP(O)(O-+)(O−RH) 式1
(式中、
fは、1、2又は3個のエーテル酸素原子によって任意に中断されたC2〜C6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
Aは、(CH2CF2m(CH2n−、(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−、O(CF2q(CH2r−、又はOCHFCF2OE−であり、
mは1〜4であり、n、o、pおよびrはそれぞれ独立して2〜20であり、qは2であり、
Eは、酸素、イオウ、又は窒素原子によって任意に中断されたC2〜C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基;環状アルキル基、又はC6〜C10アリール基であり、
Mは、I族の金属又はアンモニウムカチオン(NHX2y+(式中、R2はC1〜C4アルキルであり、xは1〜4であり、yは0〜3であり、x+yは4である)であり、
Hは、C1〜C20の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル、又はC6〜C10アリールである)
の化合物を含む。
【0006】
本発明は、更に、水性媒体を前述の式(I)の組成物と接触させる工程を含む、媒体の表面張力を低下させる方法を含む。
【0007】
本発明は、更に、基材上に堆積する前に、上記の式1の化合物をコーティングベースに添加する工程を含む、コーティングされる基材にレベリング、オープンタイム延長(open time extension)、および耐ブロッキング性を付与する方法を含む。
【0008】
本発明は、更に、上記方法で処理された基材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、商標は大文字で示される。
【0010】
本明細書では、「対のテール基を有する(twin−tailed)界面活性剤」の用語は、2つの疎水性基が単一の親水性連結基に結合している界面活性剤を記載するのに使用される。2つの疎水性基は、同じであってもよく(「対称の対のテール基を有する界面活性剤」と称される)又は異なってもよい(「ハイブリッドの対のテール基を有する界面活性剤」と称される)。
【0011】
本発明は、式1
f−A−OP(O)(O-+)(O−RH) 式1
(式中、
Aは、(CH2CF2m(CH2n−、(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−、O(CF2q(CH2r−、又はOCHFCF2OE−であり、
fは、1、2又は3個のエーテル酸素原子によって任意に中断されたC2〜C6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
HはC1〜C20の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル、又はC6〜C10アリールであり、
Mは、I族の金属又はアンモニウムカチオン(NHX2y+(式中、R2はC1〜C4アルキルであり、xは1〜4であり、yは0〜3であり、x+yは4である)であり、
mは1〜4であり、n、o、pおよびrはそれぞれ独立して2〜20であり、qは2であり、
Eは、酸素、イオウ、又は窒素原子によって任意に中断されたC2〜C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基;環状アルキル基、又はC6〜C10アリール基である)
のフルオロアルキルアルキル化合物を含む。
【0012】
式1は、ハイブリッドの対のテール基を有する界面活性剤である。式1の化合物は、Longoriaらにより米国特許第6,271,289号明細書に、およびBraceおよびMackenzieにより米国特許第3,083,224号明細書に記載された方法に従って調製される。典型的には、五酸化リン(P25)又はオキシ塩化リン(POCl3)をフルオロアルキルアルコール又はフルオロアルキルチオールと反応させて、モノ−およびビス(フルオロアルキル)リン酸の混合物を得る。水酸化アンモニウム若しくは水酸化ナトリウム又はアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン(DEA))などの一般的な塩基を使用して中和すると、対応するホスフェートが得られる。過剰のフルオロアルキルアルコール又はフルオロアルキルチオールをP25と反応させた後、中和すると、モノ(フルオロアルキル)ホスフェートとビス(フルオロアルキル)ホスフェートの混合物が得られる。米国特許第4,145,382号明細書の林および川上の方法を使用すると、ビス(フルオロアルキル)ホスフェート対モノ(フルオロアルキル)ホスフェートの比が大きくなる。同様の方法でホスファイト組成物とホスフィネート組成物が調製される。式1の化合物の調製で反応物として使用されるフルオロアルキルアルコール又はフルオロアルキルチオールを様々な実施形態に関して後述する。RfがC3〜C6パーフルオロアルキルである式1の化合物が好ましい。RfがC4〜C6パーフルオロアルキルであるものがより好ましい。
【0013】
本発明の一実施形態は、本明細書に式2として表される式1(式中、Aは(CH2CF2m(CH2n−である)の化合物であり、
f−(CH2CF2m(CH2n−O−P(O)(OR1)(O-+) 式2
式中、Rf、R1、m、nおよびMは、式1で上記に定義した通りである。式2の好ましい化合物は、RfがC4又はC6パーフルオロアルキルであり、nが2であるものを含む。
【0014】
式2の様々な実施形態の調製に有用なフッ素化アルコールは、次のスキームに従って合成することにより得ることができる。
【0015】
【化1】

【0016】
フッ化ビニリデン(VDF)と直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルアイオダイドとのテロメリゼーションは周知であり、構造式Rf(CH2CF2pI(式中、pは1〜3以上であり、RfはC1〜C6パーフルオロアルキル基である)の化合物が得られる。例えば、Balagueら、「Synthesis of fluorinated telomers,Part 1,Telomerization of vinylidene fluoride with perfluoroalkyl iodides」、J.Flour Chem.(1995),70(2),215−23を参照されたい。特定のテロマーアイオダイド(V)は分留によって単離される。米国特許第3,979,469号明細書(Ciba−Geigy,1976)に記載の手順によってテロマーアイオダイド(V)をエチレンで処理し、テロマーエチレンアイオダイド(VI)(式中、qは1〜3であるか又はそれより大きい)を得ることができる。国際公開第95/11877号パンフレット(Elf Atochem S.A.)に開示されている手順に従って、テロマーエチレンアイオダイド(VI)をオレウムで処理し、加水分解して、対応するテロマーアルコール(VII)を得ることができる。テロマーエチレンアイオダイド(VI)のより高級な同族体(q=2,3)は、高圧で過剰なエチレンを用いて得ることができる。J.Fluorine Chemistry,104,2 173−183(2000)に記載の手順に従って、テロマーエチレンアイオダイド(VI)を様々な試薬で処理し、対応するチオールを得ることができる。一例は、テロマーエチレンアイオダイド(VI)をチオ酢酸ナトリウムと反応させた後、加水分解することである。
【0017】
本発明の別の実施形態は、本明細書に式3として表される式1(式中、Aは(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−である)の化合物であり、
f−(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−OP(O)(O-+)(O−RH
式3
式中、
f、RH、o、pおよびMは、式1で上記に定義した通りである。式3の好ましい化合物は、oおよびpがそれぞれ2であり、RfがC613であり、RHがC817であるものを含む。式3の化合物を調製するのに使用されるフルオロアルキルアルコールは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能である。
【0018】
本発明の別の実施形態は、本明細書に式4として表される式1(式中、AはO(CF2q(CH2r−である)の化合物であり、
f−O(CF2q(CH2r−OP(O)(O-+)(O−RH
式4
式中、
f、RH、q、rおよびMは、式1で上記に定義した通りである。式4の好ましい化合物は、qおよびrがそれぞれ2であり、RfがC37であり、RHがC817であるものを含む。
【0019】
式4の組成物を製造するための出発物質として使用されるフルオロアルコールは、次の一連の反応によって得ることができる。
【0020】
【化2】

【0021】
上記の式(V)の出発パーフルオロアルキルエーテルアイオダイドは、パーフルオロ−n−プロピルビニルエーテルから式(V)の化合物を調製することを開示している米国特許第5,481,028号明細書の実施例8に記載の手順によって製造することができる。
【0022】
上記の第2の反応では、パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド(V)を過剰のエチレンと高温高圧で反応させる。エチレンの付加は熱的に実施できるが、好適な触媒を使用することが好ましい。好ましくは、触媒は、ベンゾイルパーオキサイド、イソブチロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、又はアセチルパーオキサイドなどの過酸化物触媒である。より好ましくは、過酸化物触媒はベンゾイルパーオキサイドである。反応温度は限定されないが、110℃〜130℃の範囲の温度が好ましい。反応時間は、触媒と反応条件で変わり得るが、通常は24時間(h)で十分である。生成物は、未反応の出発物質を最終生成物から分離する任意の手段で精製されるが、蒸留が好ましい。パーフルオロアルキルエーテルアイオダイド1モル当たり約2.7molのエチレン、110℃の温度および自己圧(autogenous pressure)、24時間の反応時間を使用し、蒸留により生成物を精製して、理論の80%までの十分な収率が得られた。
【0023】
国際公開第95/11877号パンフレット(Elf Atochem S.A.)に開示されている手順に従って、パーフルオロアルキルエーテルエチレンアイオダイド(VI)をオレウムで処理し、加水分解して、対応するアルコール(VII)を得る。あるいは、パーフルオロアルキルエーテルエチルアイオダイドをN−メチルホルムアミドで処理した後、エチルアルコール/酸で加水分解することができる。約130〜160℃の温度が好ましい。テロマーエチレンアイオダイド(VI)のより高級な同族体(q=2,3)は、高圧で過剰のエチレンを用いて得ることができる。
【0024】
J.Fluorine Chemistry,104,2 173−183(2000)に記載の手順に従って、テロマーエチレンアイオダイド(VI)を様々な試薬で処理し、対応するチオールを得る。一例は、テロマーエチレンアイオダイド(VI)をチオ酢酸ナトリウムと反応させた後、加水分解することである。また、従来の方法で、テロマーエチレンアイオダイド(VI)を処理し、対応するチオエタノール又はチオエチルアミンを得ることもできる。
【0025】
本発明の別の実施形態は、本明細書に式5として表される式1(式中、AはOCHFCF2OE−である)の化合物であり、
f−OCHFCF2OE−OP(O)(O-+)(O−RH
式5
式中、
f、RH、EおよびMは、式1で上記に定義した通りである。式5の好ましい化合物は、RfがC37であり、RHがC817であるものを含む。
【0026】
式5の組成物を製造するための出発物質として使用されるフルオロアルコールは、アルカリ金属化合物の存在下でジオキサンをジオールと反応させることによって調製される。例えば、式RfOCF=CF2のジオキサンをHO(CH2)OHなどのジオールとKOHなどのアルカリ金属の存在下で、典型的には、密封されたステンレス鋼反応容器内で約70℃で約8時間反応させる。更なる詳細は、米国特許出願公開第2005/0107645号明細書に記載されている。
【0027】
本発明の組成物は、極めて低い表面張力(約18ダイン/cm=18mN/m)が必要とされる水性配合物に使用される界面活性剤である。本発明の界面活性剤は、「フッ素効率」を付与する。「フッ素効率(fluorine efficiency)」の用語は、界面活性剤又は処理剤の効率を増加させ又は性能を改善し、同レベルの性能を達成するのに必要な高価なフッ素成分の割合がより低くて済むようにするか、又は同じレベルのフッ素を使用してより良好な性能を有するようにすることを意味する。従来のフッ素化界面活性剤と比較して、本発明の界面活性剤のフッ素含有量は、従来のフッ素化界面活性剤のフッ素含有量より約25%〜約36%低い。
【0028】
理論に拘泥することを望まないが、フルオロアルキル界面活性剤と別のアルキル界面活性剤の混合物は、フルオロアルキル界面活性剤単独よりも、表面張力を低下させる効率が低いことが多い。疎水性が比較的強いフルオロアルキル基は、界面で疎水性があまり強くないアルキル基を優先的に置換すると考えられている。しかし、同じ分子内にフルオロアルキル疎水基とアルキル疎水基が一緒に同時に存在すると、アルキル親水基を置換することができず、それによって界面活性剤特性が改善される。更に、本発明の界面活性剤では、フルオロアルキル基とアルキル基は両方とも高い回転自由度を有し、界面で制限されずに配向することが可能である。従来技術では、フルオロアルキル基、アルキル基および親水基が全て単一の炭素原子に結合したフルオロアルキル/アルキル界面活性剤では、炭素原子の四面体構造により、フルオロアルキル基とアルキル基の向きが強制的に分離される(対称四面体メタン分子のH−C−H角度では、結合角は109.5°である)。典型的には、フルオロアルキル基、アルキル基および親水基が全て単一の炭素原子に結合したこのようなフルオロアルキル/アルキル界面活性剤は、18mN/mの低さの表面張力結果を示さない。フルオロアルキル基とアルキル基の向きが制限されず、フルオロアルキル基とアルキル基が互いに本質的に並行に配向し得る上記の式2の構造と比較して、このような従来技術の例では、約110°の強制的な分離により、フルオロアルキル/アルキルの組み合わせの効果が減少し得ると考えられている。
【0029】
本発明は、更に、水性媒体を前述の式1の組成物と接触させることを含む、媒体の表面張力を低下させる方法を含む。様々な媒体のいずれも本発明の方法に使用するのに好適である。通常、媒体は液体である。水系、炭化水素系、およびハロカーボン系が好ましい。好適な媒体の例としては、コーティング組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤(release agent)、撥水撥油剤、流れ調整剤、皮膜蒸発抑制剤(film evaporation inhibitor)、湿潤剤、浸透剤、クリーナー、研削剤(grinding agent)、電気めっき剤、腐食防止剤、エッチング液、半田剤(soldering agent)、分散助剤、微生物剤、パルプ剤、すすぎ助剤(rinsing aid)、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床磨き剤、又は結合剤が挙げられる。本発明の組成物を媒体に添加すると、本発明の組成物の界面活性特性のため、媒体の表面張力が低下する。本発明の組成物は、通常、単に媒体とブレンドされるか又は媒体に添加される。表面張力を約24mN/m未満、好ましくは約22nM/m未満に低下させるのに、界面活性剤約0.1重量%の低濃度で十分である。本発明の多くの界面活性剤では、約22mN/m未満の表面張力を達成するのに、界面活性剤0.01重量%の濃度で有効である。
【0030】
本発明は、更に、基材上に堆積する前に式1の化合物をコーティングベースに添加する工程を含む、コーティングされる基材にレベリング、オープンタイム延長、および耐ブロッキング性を付与する方法を含む。本明細書で使用する場合、「レベリング」は、基材に塗布されたときのコーティングの被覆の均一性を指す。縞、表面欠陥、縁部又はそれ以外での基材表面からのコーティングの剥がれ(withdrawal)を有することは望ましくない。均一なコーティングによって、基材表面に優れた乾燥コーティングが得られる。「オープンタイム延長」の用語は、本明細書では、液体コーティング組成物の層を隣接する液体コーティング組成物層に、塗り継ぎむら(lap mark)、刷毛目、又は他の塗布跡を示すことなく溶け込ませることができる時間を意味するのに使用される。それはウエットエッジタイム(wet−edge time)とも称される。低沸点の揮発性有機化学物質(VOC)を含有するラテックス塗料は、高沸点のVOC溶媒を含まないため、所望されるよりも短いオープンタイムを有する。オープンタイム延長がないと、重なった刷毛目又は他の跡などの表面欠損が生じる。コーティングされた表面の外観が重要であるときは、オープンタイム延長が長い方が有利であるが、その理由は、1つのコーティング層とそれに隣接するコーティング層が重なった領域に、重なり跡、刷毛目、又は他の塗布跡を残すことなくコーティングを塗布することができるからである。「ブロッキング」は、コーティングされた2つの表面が、コーティングの乾燥後に、押し合わせられたときの又は長時間互いに接触して配置されたときの望ましくない付着である。ブロッキングが起こったとき表面を分離すると、一方又は両方の表面上のコーティングが破損する可能性がある。従って、耐ブロッキング性は、コーティングされた2つの表面が接触していなければならない多くの状況で(例えば、窓枠で)有利である。
【0031】
本明細書で「コーティングベース」の用語で称される好適なコーティング組成物としては、アルキドコーティング、タイプIウレタンコーティング、不飽和ポリエステルコーティング、又は水分散コーティングの組成物、典型的には液体配合物が挙げられ、これらは基材表面に耐久性皮膜を作り出すために基材に塗付される。これらは、従来の塗料、ステインおよび類似のコーティング組成物である。
【0032】
「アルキドコーティング」の用語は、本明細書で使用される時、アルキド樹脂をベースにする従来の液体コーティング、典型的には塗料、透明塗料、又はステインを意味する。アルキド樹脂は、不飽和脂肪酸残基を含有する複雑な分岐および架橋ポリエステルである。従来のアルキドコーティングは、バインダ又は皮膜形成成分として硬化性又は乾性アルキド樹脂を使用する。アルキド樹脂コーティングは、乾性油から誘導された不飽和脂肪酸残基を含有する。これらの樹脂は、酸素又は空気の存在下で自発的に重合し、固い保護膜を形成する。重合は、「乾燥」又は「硬化」と称され、大気中の酸素による油の脂肪酸成分中の不飽和炭素−炭素結合の自動酸化の結果として起こる。配合アルキドコーティングの薄い液層として表面に塗付されるとき、形成する硬化皮膜は比較的硬質で、非溶融性であり、非酸化アルキド樹脂又は乾性油の溶媒又は希釈剤の役割をする多くの有機溶媒に実質的に不溶性である。このような乾性油は、油をベースにするコーティングの原料として使用され、文献に記載されている。
【0033】
「ウレタンコーティング」の用語は、以下で使用される時、タイプIウレタン樹脂をベースにする従来の液体コーティング、典型的には塗料、透明塗料、又はステインを意味する。ウレタンコーティングは、典型的にはポリイソシアネート(通常はトルエンジイソシアネート)と乾性油の酸の多価アルコールエステルとの反応生成物を含有する。ウレタンコーティングは、ASTM D−1により5つのカテゴリーに分類される。タイプIウレタンコーティングは、前述のSurface Coatings Vol.Iに記載の予備反応した自動酸化性バインダを含有する。これらはウラルキド、ウレタン変性アルキド、油変性ウレタン、ウレタン油、又はウレタンアルキドとしても知られ、ポリウレタンコーティングの最大のカテゴリーであり、これらには塗料、透明塗料、又はステインが含まれる。バインダ中の不飽和乾性油残基の空気酸化および重合によって、硬化したコーティングが形成される。
【0034】
「不飽和ポリエステルコーティング」の用語は、以下で使用される時、モノマー中に溶解し、必要に応じて開始剤と触媒を含有する不飽和ポリエステル樹脂をベースにする従来の液体コーティング、典型的には塗料、透明塗料又はゲルコート配合物を意味する。不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和プレポリマーとして、1,2−プロピレングリコール又は1,3−ブチレングリコールなどのグリコールと、酸無水物の形態のマレイン酸(又は、マレイン酸と、飽和酸、例えば、フタル酸)などの不飽和酸との重縮合から得られる生成物を含有する。不飽和プレポリマーは、鎖中に不飽和を含有する直鎖ポリマーである。これは、例えば、スチレンなどの好適なモノマー中に溶解し、最終樹脂を生成する。フリーラジカル機構による直鎖ポリマーとモノマーとの共重合により皮膜が形成される。熱により、又は、より一般的には、別々に包装され使用前に添加されるベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物の添加によりフリーラジカルを発生させることができる。このようなコーティング組成物は、「ゲルコート」仕上げ剤と称されることが多い。室温でコーティングを硬化させるために、過酸化物のフリーラジカルへの分解はある一定の金属イオン、通常はコバルトによって触媒される。塗布する前に、過酸化物とコバルト化合物の溶液を混合物に別々に添加し、十分攪拌する。フリーラジカル機構によって硬化する不飽和ポリエステル樹脂も、例えば、紫外線を使用する照射硬化に適している。熱が発生しないこの硬化形態は、木材又は板の皮膜に特に適している。例えば、電子線硬化などの他の放射線源も使用される。
【0035】
「水分散コーティング」の用語は、本明細書で使用される時、水相中に分散した皮膜形成材料の乳濁液、ラテックス、又は懸濁液などの、水を必須分散成分として構成される基材の装飾又は保護を目的としたコーティングを意味する。「水分散コーティング」は、多数の配合物を表す一般的な分類であり、前述の分類の要素並びに他の分類の要素を含む。水分散コーティングは、一般に、他の一般的なコーティング成分を含有する。水分散コーティングの例としては、ラテックス塗料などの顔料コーティング、ウッドシーラー、ステイン、および仕上げ剤などの非顔料コーティング、メーソンリーおよびセメント用のコーティング、並びに水をベースにするアスファルト乳剤が挙げられるが、これらに限定されない。水分散コーティングは、任意に、界面活性剤、保護コロイドおよび増粘剤、顔料および体質顔料、防腐剤、殺真菌剤、凍解安定剤、消泡剤、pH調整剤、融合助剤(coalescing aids)、および他の成分を含有する。ラテックス塗料では、皮膜形成材は、アクリレート、アクリル、ビニル−アクリル、ビニル、又はこれらの混合物のラテックスポリマーである。このような水分散コーティング組成物は、C.R.Martensによって「Emulsion and Water−Soluble Paints and Coatings」(Reinhold Publishing Corporation, New York, NY, 1965)に記載されている。
【0036】
「乾燥コーティング」の用語は、本明細書で使用される時、コーティング組成物が乾燥、固化又は硬化した後に得られる最終的な装飾および/又は保護皮膜を意味する。このような最終皮膜は、例えば、硬化、融合(coalescing)、重合、相互侵入、放射線硬化、紫外線硬化、又は蒸発によって得ることができるが、これらに限定されない。最終皮膜は、また、ドライコーティングにおけるように乾燥した最終的な状態で塗布することもできる。
【0037】
上記の式1の本発明の組成物は、コーティングベースへの添加剤として使用されるとき、室温又は周囲温度で入れて完全に攪拌することにより、コーティングベース又は他の組成物に有効に導入される。振盪機を使用すること又は熱若しくは他の方法の提供することなどの、より入念な混合を使用することができる。このような方法は必要ではなく、最終組成物を実質的に改善しない。本発明の組成物は、ラテックス塗料の添加剤として使用されるとき、一般に湿潤塗料中に本発明の組成物の乾燥重量で約0.001重量%〜約5重量%添加される。好ましくは約0.01重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%が使用される。
【0038】
床用ワックス、磨き剤、又は仕上げ剤(以下、「床仕上げ剤」)は、一般に、水ベース又は溶媒ベースのポリマーエマルションである。本発明の式Iの界面活性剤は、このような床仕上げ剤に使用するのに好適である。市販の床仕上げ剤組成物は、典型的には、1つ以上の有機溶媒、可塑剤、コーティング助剤、消泡剤、界面活性剤、ポリマーエマルション、金属錯化剤、およびワックスを含む水性エマルションベースのポリマー組成物である。通常、ポリマーの粒度範囲および固形分を調整して、製品粘度、皮膜硬度、および耐劣化性を調整する。極性基を含有するポリマーは、溶解度を高める機能をし、また、高光沢および反射像の明瞭さなどの良好な光学的特性を付与する湿潤剤又はレベリング剤の役割を果たし得る。
【0039】
床仕上げ剤に使用するのに好ましいポリマーとしては、アクリルポリマー、環状エーテルから誘導されるポリマー、およびビニル置換芳香族化合物から誘導されるポリマーが挙げられる。アクリルポリマーとしては、様々なポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ヒドロキシル置換ポリ(アルキルアクリレート)、およびポリ(アルキルメタクリレート)が挙げられる。床仕上げ剤に使用される市販のアクリル共重合体としては、例えば、メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸(MMA/BA/MAA)共重合体;メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸(MMA/BA/AA)共重合体等が挙げられる。市販のスチレン−アクリル共重合体としては、スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸(S/MMA/BA/MMA)共重合体;スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸(S/MMA/BA/AA)共重合体等が挙げられる。環状エーテルから誘導されるポリマーは、通常、環の炭素数が2〜5であり、環上に任意のアルキル置換基を有する。例としては、様々なオキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、トリオキサンおよびカプロラクトンが挙げられる。ビニル置換芳香族化合物から誘導されたポリマーとしては、例えば、スチレン、ピリジン、共役ジエンから製造されたもの、およびこれらの共重合体が挙げられる。ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリシロキサンもまた床仕上げ剤に使用される。
【0040】
床仕上げ剤に使用されるワックス又はワックスの混合物としては、植物、動物、合成および/又は鉱物起源のワックスが挙げられる。代表的なワックスとしては、例えば、カルナバ、カンデリラ、ラノリン、ステアリン、蜜蝋、酸化ポリエチレンワックス、ポリエチレンエマルション、ポリプロピレン、エチレンとアクリルエステルの共重合体、硬化ヤシ油又は大豆油、および、パラフィン又はセレシンなどのミネラルワックスが挙げられる。ワックスは、典型的には、仕上げ剤組成物の重量を基準にして0〜約15重量%、好ましくは約2〜約10重量%の範囲である。
【0041】
上記の式1の本発明の組成物は、床仕上げ剤の添加剤として使用されるとき、室温又は周囲温度で入れて完全に攪拌することにより、組成物に有効に導入される。振盪機を使用すること又は熱を提供すること若しくは他の方法などの、より入念な混合を使用することができる。本発明の組成物は、床仕上げ剤の添加剤として使用されるとき、一般に、湿潤組成物中に本発明の組成物の乾燥重量で約0.001重量%〜約5重量%添加される。好ましくは約0.01重量%〜約1重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%が使用される。
【0042】
床用ワックス又は磨き剤は、水ベース、溶媒ベースおよびポリマーである。本発明の界面活性剤は、これらのどれと使用するのにも好適である。水ベースのワックスおよびポリマーワックスは、バフ仕上げなしで高光沢に乾燥し;溶媒ベースのワックスは激しいバフ仕上げを必要とする。水ベースのワックスはアスファルト床、ビニル床、ビニルアスベスト床、およびゴムタイル床に推奨され、溶媒ベースのワックスは、硬質で光沢のある仕上がりになり、木質床、コルク床、およびテラゾ床に最適である。ポリマー又は樹脂などの自己研磨型ワックスは、黄変又は変色し、通行量の多い領域では磨滅し;3又は4回コーティングした後、それらを剥離して、再塗布しなければならない。
【0043】
式Iの化合物は、他の多くの用途に有用である。幾つかの用途の例としては、例えば、湿潤剤、乳化剤、および/又は分散体として消火組成物に使用することが挙げられる。それらは、また、水成膜形成性消火剤の成分として、およびエアゾールタイプの消火器の粉末消火剤の添加剤として、およびスプリンクラーの水用の湿潤剤としても有用である。
【0044】
本発明の式Iの化合物は、農業用組成物に使用するのに好適である。例としては、除草剤(herbicides)、殺真菌剤、殺草剤(weed killers)、殺寄生虫剤、殺虫剤、殺病原菌剤(germicides)、殺菌剤(bactericides)、殺線虫剤、殺微生物剤(microbiocides)、枯葉剤、肥料およびホルモン成長調整剤用の湿潤剤、乳化剤および/又は分散剤としての使用が挙げられる。式Iの化合物は、また、葉用の、家畜浸液用の、および家畜の皮膚を濡らすための湿潤剤として;消毒、変色、および洗浄組成物の成分として;および、昆虫忌避組成物にも好適である。式1の化合物は、また、紙および合板ベニア製造用の湿潤剤、乳化剤、および/又は分散剤としても有用である。式Iの化合物は、また、紙、木材、皮革、皮膚、金属、テキスタイル、石、およびタイル用の撥脂剤/撥油剤として、および防腐剤含浸用の浸透剤として使用するのにも好適である。
【0045】
本発明の式Iで表される化合物は、また、重合反応、特にフルオロモノマーの重合用の湿潤剤、乳化剤、および/又は分散剤として使用するのにも好適である。これらの化合物は、また、プラスチックおよびゴム産業で、ラテックス安定剤として;延展、はじき、および縁部の盛り上がり(edge buildup)を制御するために泡塗布用の添加剤として;発泡剤として、離型剤又は脱型剤として;ポリオレフィン用の内部用帯電防止剤およびブロッキング防止剤として;ホットメルト押出、延展、均一性、窪み防止のための流動調整剤として;および、可塑剤の移行又は揮散の遅延剤としても好適である。
【0046】
本発明の式Iの化合物は、更に、石油産業で、油井処理、掘穿泥水用の湿潤剤として;ガソリン、ジェット燃料、溶剤、および炭化水素用の皮膜蒸発抑制剤として;潤滑剤又は浸透時間を改善するための切削油向上剤として;流出油回収剤(oil spill collecting agent)として;および、油井の三次回収を改善するための添加剤として使用するのに好適である。
【0047】
本発明の式Iの化合物は、更に、テキスタイルおよび皮革産業で、湿潤剤、消泡剤、浸透剤又は乳化剤として;又は、テキスタイル、不織布および皮革処理用の潤滑剤として;延展および均一性のための繊維仕上げ剤用に;染色用の湿潤剤として;不織布のバインダとして;および、漂白剤用の浸透剤として好適である。
【0048】
本発明の式Iの化合物は、更に、鉱業および金属工業に、薬品工業、自動車、ビルメインテナンスおよびクリーニングに、家庭用品、化粧品および個人用品に、並びに改善された表面効果を付与するために写真技術およびグラフィックアートに使用するのに好適である。
【0049】
本発明のハイブリッドフルオロアルキル/アルキル界面活性剤は、水中0.5重量%未満などの低濃度で表面効果を有する化合物を提供する。本発明の化合物は、フッ素含有量が比較的少ない(改善されたフッ素効率)、表面張力が比較的小さい、又は、概ね従来のフルオロアルキル界面活性剤に匹敵する。したがって、本発明の組成物は、同レベルの性能を達成するのに、より少ないフッ素を使用して表面特性を変えるという利点を提供する、又は従来技術の組成物と同レベルのフッ素を使用して、より優れた性能を付与する。従って、界面活性剤特性の改善により、全体的な製造コストが低減すると共に界面活性剤製品の性能が改善される。
【0050】
材料および試験方法
本明細書の実施例では次の材料を使用した。
【0051】
1)C49CH2CF2CH2CH2OH
49CH2CF2I(217g)およびd−(+)−リモネン(1g)を仕込んだオートクレーブにエチレン(25g)を導入し、反応器を240℃で12時間加熱した。減圧蒸留で生成物を単離し、C49CH2CF2CH2CH2Iを得た。
【0052】
49CH2CF2CH2CH2I50gに発煙硫酸(70mL)をゆっくりと添加し、混合物を60℃で1.5時間攪拌した。1.5重量%の氷冷Na2SO3水溶液で反応を急冷し、95℃で0.5時間加熱した。下層を分離し、10重量%の酢酸ナトリウム水溶液で洗浄し、蒸留して、C49CH2CF2CH2CH2OHを得た:2mmHg(267パスカル)で沸点54〜57℃。
【0053】
2)C49(CH2CF22CH2CH2OH
49(CH2CF22I(181g)およびd−(+)−リモネン(1g)を仕込んだオートクレーブにエチレン(18g)を導入し、反応器を240℃で12時間加熱した。生成物を蒸留し、C49(CH2CF22CH2CH2Iを得た。
【0054】
次いで、C49(CH2CF22CH2CH2I(10g)とN−メチルホルムアミド(8.9mL)を150℃に26時間加熱した。反応を100℃に冷却した後、水を添加して、粗エステルを分離した。粗エステルにエチルアルコール(3mL)とp−トルエンスルホン酸(0.09g)を添加し、反応を70℃で15分攪拌した。次いで、ギ酸エチルおよびエチルアルコールを留去して粗生成物を得た。粗アルコールをエーテルに溶解し、亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および食塩水で連続して洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。生成物を蒸留し、C49(CH2CF22CH2CH2OHを得た:2mmHg(257パスカル)で沸点90〜94℃。
【0055】
3)C613CH2CF2CH2CH2OH
613CH2CF2I(170g)およびd−(+)−リモネン(1g)を仕込んだオートクレーブにエチレン(15g)を導入した後、反応器を240℃で12時間加熱した。生成物を減圧蒸留により単離し、C613CH2CF2CH2CH2Iを得た。C613CH2CF2CH2CH2I(112g)に発煙硫酸(129mL)をゆっくりと添加した。混合物を60℃で1.5時間攪拌した。次いで、1.5重量%の氷冷Na2SO3水溶液で反応を急冷し、95℃で0.5時間加熱した。下層を分離し、10%の酢酸ナトリウム水溶液で洗浄し、蒸留して、C613CH2CF2CH2CH2OHを得た:融点38℃。
【0056】
4)C613(CH2CF22CH2CH2OH
613(CH2CF22I(714g)およびd−(+)−リモネン(3.2g)を仕込んだオートクレーブにエチレン(56g)を導入し、反応器を240℃で12時間加熱した。生成物を減圧蒸留により単離し、C613(CH2CF22CH2CH2Iを得た。次いで、C613(CH2CF22CH2CH2I(111g)とN−メチルホルムアミド(81mL)を150℃に26時間加熱した。反応を100℃に冷却した後、水を添加して粗エステルを分離した。粗エステルにエチルアルコール(21mL)とp−トルエンスルホン酸(0.7g)を添加し、反応を70℃で15分間攪拌した。次いで、ギ酸エチルおよびエチルアルコールを留去して粗アルコールを得た。粗アルコールをエーテルに溶解し、亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および食塩水で順番に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。生成物を減圧下で蒸留し、化合物12を得た:融点42℃。
【0057】
5)C37OCF2CF2CH2CH2OH
37OCF2CF2I(100g、0.24mol)およびベンゾイルパーオキサイド(3g)を窒素下で容器に仕込んだ。次いで、−50℃で真空/窒素置換を3回連続して行い、エチレン(18g、0.64mol)を導入した。容器を110℃で24時間加熱した。オートクレーブを0℃に冷却し、脱ガス後に開放した。次いで、生成物を瓶に捕集した。生成物を蒸留し、C37OCF2CF2CH2CH2I80g(収率80%)を得た。沸点は、25mmHgの圧力(3325Pa)で56〜60℃であった。
【0058】
37OCF2CF2CH2CH2I(300g、0.68mol)とN−メチルホルムアミド(300mL)の混合物を150℃に26時間加熱した。次いで、反応を100℃に冷却した後、水を添加して粗エステルを分離した。エチルアルコール(77mL)とp−トルエンスルホン酸(2.59g)を粗エステルに添加し、反応を70℃で15分間攪拌した。次いで、蟻酸エチルとエチルアルコールを留去し、粗生成物を得た。粗生成物をエーテルに溶解させ、亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および食塩水で順番に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。次いで、生成物を蒸留し、C37OCF2CF2CH2CH2OH199g(収率85%)を得た。沸点は、40mmHg(5320Pa)で71〜73℃であった。
【0059】
6)C37OCFHCF2CH2CH2OH
第一段階で、CF3CF2CF2OCHFCF2OCH2CH2OCH2Phを次のように調製した。ドライボックス内で、500mLのPyrex瓶に2−(ベンジルオキシ)エタノール(98%、Aldrich Chemical Company)(40.0g、0.263モル)および無水ジメチルホルムアミド(Aldrich SURE/SEAL)130mLを仕込んだ。水素発生が完了するまで電磁攪拌しつつNaH(0.632g、0.026モル)をゆっくりと添加した。ドライボックスから蓋をした瓶を取り出し、窒素充填したグローブバッグ(glovebag)内で400mLの金属製振盪機チューブに移した。振盪機チューブを内部温度−18℃に冷却し、振盪を開始し、金属製シリンダからパーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE、77g、0.289モル)を添加した。混合物を室温に加温し、20時間振盪した。全反応混合物を塩化ナトリウムで飽和した水600mLに添加し、この混合物を分液漏斗で塩化メチレン800mLで抽出した。塩化メチレン層をMgSO4で乾燥させ、ロータリーエバポレータで減圧濃縮して液体(52.0g)を得、これをKugelrohr装置で減圧蒸留した:第1の留分0.175mmで75℃(11.0g)、第2の留分0.175mmで110℃(35.7g)。第1の留分の1H NMRは、多量のジメチルホルムアミドを示し、そのためこれを再び蒸留ポット内に残留する物質と合わせて再蒸留し、留分2に匹敵する純度を有する物質14.0gを得た。この再蒸留した留分を留分2と合わせたが、1H NMR(CDCl3、TMSのppm低磁場)は、所望の生成物とともに極微量のDMFおよび2−(ベンジルオキシ)エタノール出発物質を示す:3.689,4.125(t,t,OCH2CH2O,4.0H),4.563(s,OCH2Ph,2.0H),5.879(d,2H-F=55Hz,OCF2CFOC37,1.0H),7.333(m,Ph)。
【0060】
400mLの金属製振盪機チューブに10%パラジウム炭素2.0g、前述のように調製したCF3CF2CF2OCHFCF2OCH2CH2OCH2Ph49.6g、およびエタノール150mLを仕込んだ。チューブを窒素でパージし、閉鎖し、内部温度15℃に冷却し、真空排気し、水素で100psig(689.5×103Pa)に加圧した。チューブを加熱、振盪し、それが60℃に到達したとき、水素圧を400psig(2758×103Pa)に増加させた。温度と水素圧を24時間維持した。チューブを室温に冷却し、ガス抜きし、反応混合物をセライトのパッドでろ過し、パラジウム炭素触媒を除去した。ろ過した溶液を水300mLに注ぎ込み、混合物をジエチルエーテル100mLで3回抽出した。合わせたエーテル抽出層をMgSO4で乾燥させた後、ロータリーエバポレータで減圧濃縮し、無色液体33.2gを得た。1H NMRから、この物質が所望の生成物C37OCFHCF2CH2CH2OHとエタノールの混合物であることが分かった。それを水100mLで2回洗浄してエタノールを除去した。洗浄した生成物の収量は26.4gであった。1H NMR(CDCl3、TMSからppm低磁場):2.296(bs,−OH,1.0H),3.840,4.095(t,t,OCH2CH2O,4.0H),5.945(d,2H-F=51Hz,OCF2CFOC37,1.0H)。
【0061】
7)2−プロペン酸の2−[メチル[(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)−スルホニル]アミノ]エチルエステルは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能である。
【0062】
8)炭化水素アルコールであるヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールおよびデシラノールは、Aldrich(St.Louis,MO)から入手可能である。
【0063】
9)RHOPLEX 3829、配合物N−29−1はRohm&Haas(Philadelphia,PA)から入手可能である。
【0064】
10)VISTA 6400は、85度で84%の光沢を有するアクリル半光沢樹脂を有する塗料であり、Vista Paints(Fullerton,CA)から入手可能である。
【0065】
11)C613CH2CH2SO2N(CH3)CH2CH2OHは、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)から入手可能である。
【0066】
試験方法1−濡れおよびレベリング試験
濡れ性およびレベリング性におけるサンプルの性能を試験するため、サンプルを床磨き剤(RHOPLEX 3829、配合物N−29−1、Rohm&Haas(Philadelphia,PA)から入手可能)に添加し、完全に清浄にした12インチ×12インチ(30.36cm×30.36cm)のビニルタイル(Interfuse Vinyl Tiles by Estrie(Sherbrooke,QC Canada)から入手可能)の半分に塗布した。タイルを濡らし、粉末酸素漂白剤クレンザーを加え、緑色のSCOTCH−BRITE研磨パッド(3M Company(St.Paul MN)から入手可能)を使用して擦り洗いすることによってタイルを完全に清浄にした。この擦り洗い手順を使用して、タイル上に予め存在するコーティングを除去した。タイルは最初は均一な光沢仕上げを有し;均一な無光沢仕上げは、コーティングが除去されたことを示す。次いで、タイルを終夜空気乾燥させる。脱イオン水で希釈することによって、試験される界面活性剤の1重量%溶液を調製した。樹脂製造業者のプロトコルに従って、RHOPLEX 3829配合物100g分を調製した後、1重量%の界面活性剤溶液0.75gを添加して試験床磨き剤を得た。
【0067】
タイルの中心に試験磨き剤3mL分を付け、チーズクロスアプリケータを使用して上から下まで広げ、最後に、アプリケータを使用してタイル全体に大きい「X」を描くことによって、試験床磨き剤をタイルに塗布した。この「X」は、後で、評価工程におけるレベリングの視覚的証拠となる。アプリケータは、2層の18×36インチ(46×91cm)のチーズクロス(VWR(West Chester PA)製)1枚を2回折り畳んで8層のパッドにしたものから準備された。次いで、このパッドの1角をアプリケータとして使用した。タイルを30分間乾燥させ、合計5回コーティング(コーティング#1〜5)を塗布し、乾燥させ、各コーティングが乾燥した後、X試験を実施した。各コーティングの後、タイル表面での磨き剤の濡れおよびレベリングを促進する界面活性剤の能力について、1〜5の尺度(1が最低であり、5が最良である)でタイルを評価した。追加の界面活性剤を含有しない床磨き剤で処理したタイルとの比較に基き、下記のタイル評価尺度を使用して評価を決定する。
【0068】
【表1】

【0069】
試験方法2−表面張力測定
American Society for Testing and Materials ASTM #D1331−56に従い、KRUSS K11張力計(KRUSS USA(Matthews,NC))でWilhelmyプレート法を使用して表面張力を測定した。結果は、mN/m(ダイン/cm)で記載する。張力計は、製造業者の推奨に従って使用した。
【0070】
試験方法3−オープンタイム延長
オープンタイムは、塗布される液体コーティング組成物の層を隣接する液体コーティング組成物層に、塗り継ぎむら、刷毛目又は他の塗布跡を示すことなく溶け込ませることができる時間である。それはウエットエッジタイム(wet−edge time)とも称される。低VOCラテックス塗料は、高沸点のVOC溶媒を含まないため、所望されるより短いオープンタイムを有する。十分なオープンタイムがないと、その結果、重なった刷毛目又は他の跡が生じる。オープンタイム試験は、本明細書に記載のサムプレス法(thumb press method)と称される十分に受け入れられている業界の慣例によって実施される。対照試料と試験される試料の活性成分0.1%を有する試料のダブルストリップドローダウンパネルを使用した。試験されるコーティング組成物と対照は同じコーティング組成物であったが、対照は試験される添加剤を含有しておらず、試験される試料は添加剤として本発明の組成物を含有していた。パネルは、7cmのドクターブレードを用いて20〜25℃、相対湿度40〜60%で作製された。次いで、各試料に並行して1〜2分の間隔で同じ圧力でダブルサムプレスを行った。終点は、親指に塗料残留物が観察されない時点とした。ドローダウンを行った時点から終点までの時間をオープンタイムとして記録した。対照と添加剤を含有する試料とのパーセント差をオープンタイム延長パーセントとして記録した。本発明の組成物は半光沢ラテックス塗料中で試験した。
【0071】
試験方法4−建築用ラテックス塗料の耐ブロッキング性
本明細書に記載の試験方法は、参照により本明細書に明示的に援用されるASTM D4946−89、建築用塗料の耐ブロッキング性の標準試験方法(Standard Test Method for Blocking Resistance of Architectural Paints)の変更である。試験される塗料の向かい合わせでの耐ブロッキング性をこの試験で評価した。ブロッキングは、この試験の目的では、塗装された2つの表面が押し合わせられたときの又は長時間互いに接触して配置されたときの望ましくない付着と定義される。
【0072】
試験される塗料を、アプリケータブレードを使用してポリエステル試験パネル上に流延した。塗装されたパネルは全て、油脂、油、指紋、塵埃などの表面汚染から保護された。通常、塗料を流延してから24時間後に結果を調べた。所望の時間、試験方法に規定されているように温度と湿度を制御した空調された室内でパネルを調整した後、塗装された試験パネルから6つの正方形(3.8cm×3.8cm)を切り取った。試験される各塗料について、切り取った部分(3対)を塗料面が向かい合うようにして配置した。向かい合わせにした試験片を50℃のオーブン内の大理石のトレイに載せた。直径の小さい方が試験片と接触するようにして8番の栓を上に載せた後、1000gの重りを栓の上に載せた。この結果、試験片に1.8psi(12,400パスカル)の圧力がかかった。試験される各試験片について、1つの重りと栓を使用した。ちょうど30分後に栓と重りを試験片から取り除き、オーブンから取り出し、ブロッキングへの耐性を決定する前に30分間空調された室内で冷却した。
【0073】
冷却後、ゆっくりとした一定の力で剥離することにより、試験片を分離した。耐ブロッキング性を、この方法の実施者によって決定される主観的タック評価(塗装された試験片の分離時に出る音)又は封着(塗装された2つの表面の完全な接着)に対応する0〜10で評価した。タックの程度が実際に聞こえるように試験片を耳の近くに置いた。評価システムを下記の耐ブロッキング性の数値評価と題された表に記載する。試験片の外観と接着する塗料表面の分率から封着の程度を評価した。塗料が試験パネル支持体から剥離するのは封着を示す。数値が大きいほど耐ブロッキング性が良好であることを示した。
【0074】
【表2】

【0075】
試験方法5−ウィックボルドトーチ法(Wickbold Torch)(フッ素分析のための)
フッ素化化合物の定量的無機化のための有効なプロセスは、Wickboldトーチ燃焼法である。この方法(Angew Chem.66(1954)173に詳述されている)は、フッ素含有化合物について化合物に左右されないことが実証された。このプロセスでは、分析サンプルをセラミック製の容器に入れ、サンプルを典型的には激しい酸素流中で外部加熱することによって完全燃焼させた。気体の反応生成物を、酸素過剰な補助水素/酸素炎を通過させて、完全に燃焼させた。次いで、気体の流出物を凝縮し、フッ化物を水流に溶解させ、分析するためにこれを捕集した。次いで、典型的にはフッ化物イオン選択電極を使用して、フッ化物水溶液を容易に測定した。
【実施例】
【0076】
実施例1〜5
熱電対およびマグネチックスターラーを備えた100mLの丸底フラスコ内で、無水テトラヒドロフラン(25mL)中にPOCl3(0.58g、3.8mmol)を溶解させた。氷浴を使用して溶液を0℃に冷却した。次いで、材料の項目で開示したように調製されたフッ素化アルコールC37OCFHCF2CH2CH2OH(1.25g、3.8mmol)およびトリエチルアミン(0.96g、9.5mmol)を無水テトラヒドロフラン(15mL)中に含有する別の溶液を反応器にゆっくりと添加した。反応を0℃で1〜2時間進行させた。表3に記載の量の炭化水素アルコールを無水テトラヒドロフラン(15mL)に溶解させた溶液を、ゆっくりと反応物(reaction mass)に添加した。反応物を周囲温度で終夜攪拌した。次いで、固体をろ過し、ROTOVAP(Heidolph LABOROTA 4000 Efficient(Schwabach,Germany))を使用して溶媒を蒸発させた。得られた油状物をテトラヒドロフラン(10mL)で希釈し、水(1mL)に溶解させたNaOH(0.34g、8.6mmol)の溶液を反応物に添加した。混合物を室温で終夜攪拌した。次いで、ROTOVAPを使用して溶媒を蒸発させ、得られた固体をクロロホルム(50mL)で洗浄し、ろ過した。最終生成物を120℃および150mmHg(20kPa)の真空オーブン内で終夜乾燥させた。得られた生成物は、式1(式中、RfはC37であり、AはOCFHCF2OEであり、EはCH2CH2OHであり、MはNaであり、RHは、実施例1ではC613であり、実施例2ではC715であり、実施例3ではC817であり、実施例4ではC919であり、実施例5ではC1021である)の化合物であった。試験方法2を使用して、各生成物の表面張力を試験した。結果を表5に記載する。
【0077】
比較例A
2モル当量のフッ素化アルコールを使用し、炭化水素アルコールを使用せず、実施例1〜5のプロセスを使用した。比較例Aは、式1に類似しているが、RHの代わりに第2のRfを有する化合物(式中、RfはC37であり、AはOCFHCF2OEであり、EはCH2CH2OHであり、MはNaであり、第2のRfはC37である)である。試験方法2を使用して、この比較例の表面張力を試験した。結果を表5に記載する。
【0078】
実施例で使用され、表4で参照されるフルオロアルコール組成物を下記の表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【0083】
表5は、実施例1〜5の表面張力を示す。それらの性能を、より高レベルのフッ素を含有する非ハイブリッド比較例Aに対して試験した。実施例1〜5は、水中0.5重量%未満の低濃度で約25mN/m未満、しばしば20mN/m未満の表面張力を示し、従って界面活性剤として優れた性能を実証した。実施例4、5および比較例Aは、それぞれ、水中0.05重量%の濃度で表面張力を20mN/m未満に低下させた。この水中0.05重量%の界面活性剤濃度の時、フッ素含有量は、比較例Aでは0.024%に、実施例4および5ではそれぞれ0.014%および0.013%に希釈されていた。従って、この非常に低濃度でも、実施例4および5の方がフッ素効率が高かった。
【0084】
実施例6〜10
フッ素化アルコールとしてC49CH2CF2CH2CH2OHを表3に記載の量で使用し、且つ炭化水素アルコールを表3に記載の量で使用し、実施例1〜5の手順を使用した。得られた生成物は、式1(式中、RfはC49であり、AはCH2CF2CH2CH2であり、MはNaであり、RHは、実施例6ではC613であり、実施例7ではC715であり、実施例8ではC817であり、実施例9ではC919であり、実施例10ではC1021である)の化合物であった。試験方法2を使用して、各生成物の表面張力を試験した。結果を表6に記載する。
【0085】
比較例B
2モル当量のフッ素化アルコールを使用し、炭化水素アルコールを使用せず、実施例6〜10のプロセスを使用した。比較例Bは、式1に類似しているが、RHの代わりに第2のRfを有する化合物(式中、RfはC49であり、AはCH2CF2CH2CH2であり、MはNaであり、第2のRfはC49である)である。試験方法2を使用して、この生成物の表面張力を試験した。結果を表6に記載する。
【0086】
【表7】

【0087】
表6は、実施例6〜10の表面張力の結果を示す。それらの性能を、より高レベルのフッ素を含有する非ハイブリッド比較例Bに対して試験した。一般に、実施例6〜10は、低い水中濃度で優れた界面活性剤特性を実証し、0.05重量%の濃度で約30mN/m未満、および0.5重量%の濃度で20mN/m未満の表面張力を達成した。炭化水素アルコールとして1−ヘプタノールを使用して調製された実施例7では、最良の性能が得られた。実施例7と比較例Bは両方とも、0.05重量%の界面活性剤濃度で水の表面張力を20mN/m以下に低下させた。しかし、この濃度で、実施例7は、0.018重量%のフッ素しか含有しなかったが、比較例Bは、同様の表面効果を得るのに0.026重量%のフッ素を含有し、従って、実施例7の方がフッ素効率が大きいことが実証された。
【0088】
実施例11〜15
フッ素化アルコールとしてC37OCF2CF2CH2CH2OHを表3に記載の量で使用し、且つ炭化水素アルコールを表3に記載の量で使用して、実施例1〜5の手順を使用した。得られた生成物は、式1(式中、RfはC37であり、AはOCF2CF2CH2CH2であり、MはNaであり、RHは、実施例11ではC613であり、実施例12ではC715であり、実施例13ではC817であり、実施例14ではC919であり、実施例15ではC1021である)の化合物であった。試験方法2を使用して、各生成物の表面張力を試験した。結果を表7に記載する。
【0089】
比較例C
2モル当量のフッ素化アルコールを使用し、炭化水素アルコールを使用せず、実施例11〜15のプロセスを使用した。比較例Cは、式1に類似しているが、RHの代わりに第2のRfを有する化合物(式中、RfはC37であり、AはOCF2CF2CH2CH2であり、MはNaであり、第2のRfはC37である)である。試験方法2を使用して、この生成物の表面張力を試験した。結果を表7に記載する。
【0090】
【表8】

【0091】
表7は、実施例11〜15の表面張力の結果を示す。それらの性能を、より高レベルのフッ素を含有する非ハイブリッド比較例Cと比較した。実施例11〜15のハイブリッド界面活性剤は全て、活性成分0.05重量%で水の表面張力を約20mN/m以下に低下させることによって、界面活性剤として優れた性能を実証した。実施例11〜15の方がフッ素レベルが低かったにもかかわらず、性能は比較例Cに匹敵した。表7に示されるように実施例11〜15のハイブリッド界面活性剤は全て、比較例Cより良好なフッ素効率を実証した。水中0.05重量%の濃度で、実施例11〜15と比較例Cは、それぞれ、約20mN/m以下の表面張力を達成したが、この希釈された濃度で、比較例Cは0.025%のフッ素を含有し、実施例11〜15は0.017〜0.019%のフッ素を含有した。
【0092】
実施例16〜20
フッ素化アルコールとしてC49(CH2CF22CH2CH2OHを表3に記載の量で使用し、且つ炭化水素アルコールを表3に記載の量で使用し、実施例1〜5の手順を使用した。得られた生成物は、式1(式中、RfはC49であり、Aは(CH2CF22CH2CH2であり、MはNaであり、RHは、実施例16ではC613であり、実施例17ではC715であり、実施例18ではC817であり、実施例19ではC919であり、実施例20ではC1021である)の化合物であった。試験方法2を使用して、各生成物の表面張力を試験した。結果を表8に記載する。
【0093】
比較例D
2モル当量のフッ素化アルコールを使用し、炭化水素アルコールを使用せず、実施例16〜20のプロセスを使用した。比較例Dは、式1に類似しているが、RHの代わりに第2のRfを有する化合物(式中、RfはC49であり、Aは(CH2CF22CH2CH2あり、MはNaであり、第2のRfはC49である)である。試験方法2を使用して、この生成物の表面張力を試験した。結果を表8に記載する。
【0094】
【表9】

【0095】
表8は、実施例16〜20について得られた表面張力のデータを、より高レベルのフッ素を含有した非ハイブリッド比較例Dと比較する。実施例16〜20は、比較例Dと類似の表面張力プロファイルを有したが、化合物中に存在するフッ素がより少ないにも関わらずこれらの結果を達成した。実施例16〜20は全て、低濃度で、水中での優れた表面張力低下を実証し、水中0.05重量%の濃度で約20mN/m未満の表面張力を達成した。
【0096】
実施例21
フッ素化アルコールとしてC613CH2CF2CH2CH2OHを表3に記載の量で使用し、且つ炭化水素アルコールとしてオクタノールを表3に記載の量で使用し、実施例1〜5の手順を使用した。得られた生成物は、式1(式中、RfはC613であり、AはCH2CF2CH2CH2であり、MはNaであり、RHはC817である)の化合物であった。試験方法2を使用して、生成物の表面張力を試験した。結果を表9に記載する。
【0097】
比較例E
2モル当量のフッ素化アルコールを使用し、炭化水素アルコールを使用せず、実施例21のプロセスを使用した。比較例Eは、式1に類似しているが、RHの代わりに第2のRfを有する化合物(式中、RfはC613であり、AはCH2CF2CH2CH2あり、MはNaであり、第2のRfはC613である)である。試験方法2を使用して、この生成物の表面張力を試験した。結果を表9に記載する。
【0098】
【表10】

【0099】
表9は、実施例21のハイブリッド界面活性剤の表面張力の結果を比較例Eと比較する。実施例21は比較例Eより少量のフッ素を含有したが、界面活性剤0.05重量%で水の表面張力を20mN/m未満に低下させた。ホスフェート界面活性剤に炭化水素セグメントとフルオロカーボンセグメントを組み込むと、その表面効果が改善し、フッ素効率が向上した。
【0100】
実施例22
フッ素化アルコールとしてC613(CH2CF22CH2CH2OHを表3に記載の量で使用し、且つ炭化水素アルコールとしてオクタノールを表3に記載の量で使用して、実施例1〜5の手順を使用した。得られた生成物は、式1(式中、RfはC613であり、Aは(CH2CF22CH2CH2であり、MはNaであり、RHはC817である)の化合物であった。試験方法2を使用して、生成物の表面張力を試験した。結果を表10に記載する。
【0101】
比較例F
2モル当量のフッ素化アルコールを使用し、炭化水素アルコールを使用せず、実施例22のプロセスを使用した。比較例Fは、式1に類似しているが、RHの代わりに第2のRfを有する化合物(式中、RfはC613であり、Aは(CH2CF22CH2CH2あり、MはNaであり、第2のRfはC613である)である。試験方法2を使用して、この生成物の表面張力を試験した。結果を表10に記載する。
【0102】
【表11】

【0103】
表10は、ハイブリッド界面活性剤である実施例22と比較例Fの表面張力のデータを示す。比較例Fは、実施例22より高レベルのフッ素を含有する非ハイブリッドであった。実施例22は、優れた性能を示した。このハイブリッド物質は、界面活性剤0.005重量%の濃度で水の表面張力を25mN/m未満に、および界面活性剤0.01重量%で20mN/m未満に低下させることができた。フッ素化ホスフェートに1−オクタノール基炭化水素基を組み込むと、その表面効果とフッ素効率が劇的に向上した。
【0104】
実施例23
フッ素化アルコールとしてC613CH2CH2SO2−N(CH3)CH2CH2OHを表3に記載の量で使用し、且つ炭化水素アルコールとしてオクタノールを表3に記載の量で使用し、実施例1〜5の手順を使用した。得られた生成物は、式1(式中、RfはC613であり、AはCH2CH2N(CH3)SO2CH2CH2であり、MはNaであり、RHはC817である)の化合物であった。試験方法2を使用して、生成物の表面張力を試験した。結果を表11に記載する。
【0105】
比較例G
2モル当量のフッ素化アルコールを使用し、炭化水素アルコールを使用せず、実施例23のプロセスを使用した。比較例Fは、式1に類似しているが、RHの代わりに第2のRfを有する化合物(式中、RfはC613であり、AはCH2CH2N(CH3)SO2CH2CH2であり、MはNaであり、RHはC613である)である。試験方法2を使用して、この生成物の表面張力を試験した。結果を表11に記載する。
【0106】
【表12】

【0107】
表11は、ハイブリッド界面活性剤である実施例23と、より高レベルのフッ素を含有した比較例Gの表面張力のデータを示す。比較例Gより少量のフッ素を含有する実施例23は、優れた性能を示した。実施例23のこのハイブリッド物質は、界面活性剤0.05重量%で水の表面張力を20ダイン/cm(mN/m)未満に低下させることができた。実施例23は、改善されたフッ素効率と、比較例Gよりずっと良好な表面効果を実証した。
【0108】
塗料中での試験
それぞれ前述のように調製された実施例8および18並びに比較例BおよびDを、塗料100g中にフッ素70ppm(1グラム当たりのマイクログラム)を提供する量で各Vista 6400塗料に添加した。添加剤を含有しない塗料を対照(ブランク)として使用した。塗料をポリエステル試験パネルに塗布し、試験方法4に従ってブロッキングを、試験方法3を使用してオープンタイム延長を試験した。得られるデータを表12および13に示す。
【0109】
【表13】

【0110】
表12に実施例8および18のブロッキング試験の結果を示す。それらの性能をブランク並びに比較例BおよびDと比較した。実施例8は、ブランクと比較例Bの両方より性能が優れていることによって、優れたブロッキング性能を実証した。実施例18は、ブランクより良好なブロッキング性能を示したが、比較例Dより優れていなかった。全体的に、実施例8が最良のブロッキング効果を示し、そのブロッキングスコアは6.7である。
【0111】
【表14】

【0112】
表13は、実施例8および18を使用するオープンタイム延長試験の結果を示す。これらの実施例の性能を比較例BおよびDに対して評価した。実施例8は同じフッ素用量で比較例Bのものと同等のオープンタイム延長を示した。他方、実施例18は、比較例Dのものより優れたオープンタイム延長を示した。これらの結果から、実施例8および18のハイブリッド界面活性剤は非ハイブリッドの比較例BおよびDと等しい又はそれより良好な性能を付与できることが実証される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
f−A−OP(O)(O-+)(O−RH) 式1
(式中、
fは、1、2又は3個のエーテル酸素原子によって任意に中断されたC2〜C6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
Aは、(CH2CF2m(CH2n−、(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−、O(CF2q(CH2r−、又はOCHFCF2OE−であり、
mは1〜4であり、n、o、pおよびrはそれぞれ独立して2〜20であり、qは2であり、
Eは、酸素、イオウ、又は窒素原子によって任意に中断されたC2〜C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、環状アルキル基、又はC6〜C10アリール基であり、
Mは、I族の金属又はアンモニウムカチオン(NHX2y+(式中、R2はC1〜C4アルキルであり、xは1〜4であり、yは0〜3であり、x+yは4である)であり、
Hは、C1〜C20の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル、又はC6〜C10アリールである)
の化合物。
【請求項2】
fがC3〜C6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
HがC8〜C20アルキルであり、Aが(CH2CF2m(CH2n−であり、nが2であり、RfがC49又はC613である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Aが(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−であり、oおよびpがそれぞれ2であり、RfがC613であり、RHがC817であるか、又はAがO(CF2q(CH2r−であり、qおよびrがそれぞれ2であり、RfがC37であり、RHがC817であるか、又はAがOCHFCF2OE−であり、RfがC37であり、RHがC817である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
水中0.1重量%の濃度で約25mN/m以下の表面張力を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
水性媒体を式1:
f−A−OP(O)(O-+)(O−RH) 式1
(式中、
fは、1、2又は3個のエーテル酸素原子によって任意に中断されたC2〜C6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
Aは、(CH2CF2m(CH2n−、(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−、O(CF2q(CH2r−、又はOCHFCF2OE−であり、
mは1〜4であり、n、o、pおよびrはそれぞれ独立して2〜20であり、qは2であり、
Eは、酸素、イオウ、又は窒素原子によって任意に中断されたC2〜C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、環状アルキル基、又はC6〜C10アリール基であり、
Mは、I族の金属又はアンモニウムカチオン(NHX2y+(式中、R2はC1〜C4アルキルであり、xは1〜4であり、yは0〜3であり、x+yは4である)であり、
HはC1〜C20の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル、又はC6〜C10アリールである)
の組成物と接触させることを含む、水性媒体の表面張力を低下させる方法。
【請求項7】
前記媒体が、コーティング組成物、ラテックス、ポリマー、床仕上げ剤、インク、乳化剤、発泡剤、離型剤、撥水撥油剤、流れ調整剤、皮膜蒸発抑制剤、湿潤剤、浸透剤、クリーナー、研削剤、電気めっき剤、腐食防止剤、エッチング液、半田剤、分散助剤、微生物剤、パルプ化助剤、すすぎ助剤、艶出剤、パーソナルケア組成物、乾燥剤、帯電防止剤、床磨き剤、又は結合剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基材に堆積する前に、コーティングベースに式1:
f−A−OP(O)(O-+)(O−RH) 式1
(式中、
fは、1、2又は3個のエーテル酸素原子によって任意に中断されたC2〜C6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキルであり、
Aは、(CH2CF2m(CH2n−、(CH2oSO2N(CH3)(CH2p−、O(CF2q(CH2r−、又はOCHFCF2OE−であり、
mは1〜4であり、n、o、pおよびrはそれぞれ独立して2〜20であり、qは2であり、
Eは、酸素、イオウ、又は窒素原子によって任意に中断されたC2〜C20の直鎖又は分岐鎖アルキル基、環状アルキル基、又はC6〜C10アリール基であり、
Mは、I族の金属又はアンモニウムカチオン(NHX2y+(式中、R2はC1〜C4アルキルであり、xは1〜4であり、yは0〜3であり、x+yは4である)であり、
HはC1〜C20の直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキル、又はC6〜C10アリールである)
の化合物を添加する工程を含む、コーティングされる基材にレベリング、オープンタイム延長、および耐ブロッキング性を付与する方法。
【請求項9】
前記コーティングベースが、水分散コーティング、アルキドコーティング、タイプIウレタンコーティング、不飽和ポリエステルコーティング、又は床磨き剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項6に記載の方法に従って処理された基材。

【公表番号】特表2010−535795(P2010−535795A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520245(P2010−520245)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/072090
【国際公開番号】WO2009/020912
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】