説明

混合器内蔵型受信機及び受信システム

【課題】既設の設備を活用することができ、世帯当たりのコストを低減して、地上アナログ信号と地上デジタル信号とを伝送することができる混合器内蔵型受信機及び受信システムを提供する。
【解決手段】第1混合器内蔵型光受信機1は、同軸ケーブルで伝送される地上アナログ信号と、光ファイバケーブルで伝送される地上デジタル信号とを混合して屋内引込み線側に伝送するものであって、同軸ケーブル接続手段21と、光ファイバケーブル接続手段23と、変換手段25と、利得調整手段27と、混合手段29とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上アナログ信号と地上デジタル信号とを受信して混合する混合器内蔵型受信機及び受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難視聴対策として設けられている小規模な共同受信施設(以下、単に施設ともいう)において、地上アナログ信号や地上デジタル信号をそれぞれの信号に対応したアンテナで受信し、有線ネットワークによってこれらの信号を伝送するシステム(例えば、特許文献1参照)が構築されていた。この有線ネットワークでは、これらの信号、すなわち、高周波信号を伝送可能な光ファイバケーブル又は同軸ケーブルが用いられていた。なお、ここで取り上げている共同受信施設は、地上アナログ信号を受信する地上アナログ受信用アンテナが備えられているものの、地上デジタル受信用アンテナが敷設されていない共同受信施設を指している。
【0003】
そして、光ファイバケーブルによる光ネットワークの場合、FTTH(Fiber To The Home)やHFC(Hybrid Fiber Coaxial)システムがある。
FTTHは、視聴者の個宅まで直接光ファイバケーブルを引き込む伝送方法であり、HFCシステムは、幹線を光ファイバケーブルとし、幹線の分配ノードから視聴者の個宅までを同軸ケーブルを利用した伝送方法である。
【0004】
また、同軸ケーブルによる同軸ネットワークの場合、高周波信号を受信したアンテナから、同軸ケーブル、増幅器、パッシブ機器(タップオフ[分岐器、分配器]、保安器等)を介して、視聴者の個宅まで伝送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−125231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光ネットワーク(FTTHやHFCシステム)の場合、長距離・大容量の伝送が可能な反面、視聴者の世帯当たりのコストがかかり、小規模な施設ながら、既設の設備をアップグレードしようとすると、当該既設の設備をほとんど活用することができないという問題がある。
【0007】
また、同軸ネットワークの場合、伝送できる高周波信号の周波数は、増幅器、パッシブ機器の高周波特性によって制限され、例えば、周波数帯域VHF220MHz以下の地上アナログ信号の再送信システムでは、地上デジタル信号(UHF470MHz〜770MHz帯域)を伝送することができないという問題がある。
【0008】
従来、このような同軸ネットワークでは、増幅器、パッシブ機器をすべてUHF対応のものに交換するか、FTTHに全面改修するか、当該同軸ネットワークの伝送可能な周波数帯域に周波数変換して再送信するかのいずれか方法が取られていたが、やはり、改修するコストがかかるという問題がある。ちなみにこのコストは、施設の規模にもよるが、世帯当たり数十万円かかり、施設の規模が小さくなるに従って世帯当たりの負担が大きくなる傾向がある。
【0009】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、既設の設備を活用することができ、世帯当たりのコストを低減して、地上アナログ信号と地上デジタル信号とを伝送することができる混合器内蔵型受信機及び受信システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の混合器内蔵型受信機は、同軸ケーブルで伝送される地上アナログ信号と、光ファイバケーブルで伝送される地上デジタル信号とを混合して屋内引き込み線側に伝送する混合器内蔵型受信機であって、同軸ケーブル接続手段と、光ファイバケーブル接続手段と、変換手段と、利得調整手段と、混合手段とを備える構成とした。
【0011】
かかる構成によれば、混合器内蔵型受信機は、同軸ケーブル接続手段によって、同軸ケーブルに接続し、光ファイバケーブル接続手段によって、光ファイバケーブルに接続する。そして、混合器内蔵型受信機は、フォトダイオード等の光検出素子を有する変換手段によって、光ファイバケーブル経由し光ファイバケーブル接続手段を介して伝送された光信号の地上デジタル信号を電気信号に変換し、さらに、利得調整手段により電気信号に変換した地上デジタル信号を例えばアナログ信号の映像に影響を与えないように予め設定されている−10dBを下げるように調整している。さらに混合器内臓型受信機は、元のレベルから−10dBを低くした電気信号である地上デジタル信号と、同軸ケーブル接続手段からの地上アナログ信号とを、混合手段によって混合して例えば屋内引き込み線となる受信者端末側に出力する。なお、この混合手段によって出力する伝送路は、同軸ケーブルによって構成されている。
【0012】
なお、混合器内蔵型受信機は、その混合手段として、ハイパスフィルタと、ローパスフィルタと、混合部とを備える構成とすることや(請求項2)、また、混合手段として、ハイパスフィルタと、混合部とを備える構成としてもよい(請求項3)。
【0013】
かかる構成によれば、混合器内蔵型受信機は、利得調整手段からの電気信号(地上デジタル信号)をハイパスフィルタにより通過させて混合部に送り、また、同軸ケーブルから送られてくる地上アナログ信号を、ローパスフィルタを通過させて混合部に送る。そして、混合器内蔵型受信機は、混合部に送られてきた信号を混合して屋内引込み線側に出力している。なお、混合器内蔵型受信機は、ハイパスフィルタが設置されていることで、地上アナログ信号がハイパスフィルタを通過して利得調整手段側に流れることがなく、さらに、ローパスフィルタが設置されていることで地上デジタル信号が同軸ケーブル接続手段側に流れることはない。
また、混合器内蔵型受信機は、ハイパスフィルタと混合部とを備える場合には、ハイパスフィルタにより利得調整手段からの電気信号(地上デジタル信号)を混合部に送り、また、同軸ケーブルから送られてくる地上アナログ信号または他の混合器内蔵型受信機により混合された混合信号が混合部に送られる。そして、混合部に送られてきた信号を混合して屋内引き込み線側に出力している。なお、ローパスフィルタがない場合では、利得調整手段から送られてくる地上デジタル信号が同軸ケーブル側に送られ、同軸ケーブル側の屋内引き込み線に地上デジタル信号が出力される。
【0014】
請求項4に記載の受信システムは、地上アナログ信号を受信する既設設備であるアナログ配線側に、地上デジタル信号を受信して屋内引き込み線を介して前記既設設備内に送るデジタル受信設備を付加した受信システムであって、前記地上アナログ信号を受信するアナログ配線側に、受信アンテナからの前記地上アナログ信号を受信して増幅する受信増幅器と、前記アナログ配線で使用される線路により減衰する地上アナログ信号を増幅する線路増幅器と、を備え、前記地上デジタル信号を受信するデジタル配線設備に、受信アンテナからの地上デジタル信号を受け取り送る光送信機と、この光送信機から送られて来た地上デジタル信号を分岐する分岐カプラと、前記受信増幅器および前記線路増幅器で増幅された地上アナログ信号を入力すると共に、前記分岐カプラから分岐された地上デジタル信号を入力して混合し、かつ、前記屋内引き込み線側に混合信号として出力する請求項2に記載の混合器内蔵型受信機を第1混合器内蔵型受信機として備えている。そして、前記受信システムは、前記屋内引き込み線において設置されるタップオフの一つまたは複数ごとに、前記第1混合器内蔵型受信機が設置されて、前記タップオフの次に設置される前記第1混合器内蔵型受信機が、前記タップオフから送られてくる前記混合信号を受け取ると共に、前記分岐カプラから送られる地上デジタル信号を受け取り混合し、前記屋内引き込み線側に出力する構成とした。
【0015】
かかる構成によれば、受信システムは、地上アナログ信号が受信増幅器および線路増幅器により増幅されて同軸ケーブルで第1混合器内蔵型受信機に送られると共に、地上デジタル信号が光送信機から分岐カプラを介して光ファイバケーブルで第1混合器内蔵型受信機に送られて混合されて混合信号として屋内引き込み線側に送られる。そして、屋内引き込み線側では、タップオフと交互またはタップオフの複数ごとに設置されている第1混合器内蔵型受信機に分岐カプラから地上デジタル信号が送られて、第1混合器内蔵型受信機で混合信号と地上デジタル信号が混合されて出力される。
【0016】
請求項5に記載の受信システムは、地上アナログ信号を受信する既設設備であるアナログ配線側に、地上デジタル信号を受信して屋内引き込み線を介して前記既設設備部内に送るデジタル配線設備を付加した受信システムであって、前記地上アナログ信号を受信するアナログ配線側に、受信アンテナからの前記地上アナログ信号を受信して増幅する受信増幅器と、前記アナログ配線で使用される線路により減衰する地上アナログ信号を増幅する線路増幅器と、を備え、前記地上デジタル信号を受信するデジタル配線設備に、受信アンテナからの地上デジタル信号を受け取り送る光送信機と、この光送信機から送られて来た地上デジタル信号を分岐する分岐カプラとを備え、前記受信増幅器および前記線路増幅器で増幅された地上アナログ信号を入力すると共に、前記分岐カプラから分岐された地上デジタル信号を入力して混合し、かつ、前記屋内引き込み線側に混合信号として出力する請求項2の混合器内蔵型受信機を第1混合器内蔵型受信機と、前記第1混合器内蔵型受信機に接続された前記屋内引き込み線において設置されるタップオフと、このタップオフから送られてくる混合した前記混合信号を受け取ると共に、前記分岐カプラから送られる地上デジタル信号を受け取り混合し、かつ、前記引き込み線側に出力する請求項3に記載の第2混合器内蔵型受信機とを備えている。そして、前記受信システムは、前記複数のタップオフのごとに前記第2混合器内蔵型受信機が設置され、前記第2混合器内蔵型受信機は、前記第2混合器内蔵型受信機の前段のタップオフ側に前記分岐カプラからの地上デジタル信号を出力すると共に、後段のタップオフ側に混合した信号を出力する構成とした。
【0017】
かかる構成によれば、受信システムは、地上アナログ信号を受信アンテナにより受信して受信増幅器および線路増幅器により信号を増幅して同軸ケーブルで混合器内蔵型受信機に送る。一方、受信システムは、地上デジタル信号を受信アンテナにより受信して光送信機から分岐カプラを介して分岐して、分岐したそれぞれの地上デジタル信号を光ファイバケーブルで第1混合器内蔵型受信機および第2混合器内蔵型受信機に送る。そして、受信システムでは、第1混合器内蔵型受信機により地上デジタル信号(光信号)を変換手段により電気信号に変換され、かつ、利得調整手段により信号レベルを下げるように調整して、混合手段により電気信号(地上デジタル信号)と地上アナログ信号を多重してタップオフ側に出力する。また、分岐カプラにより分岐された地上デジタル信号は、第1混合器内蔵型受信機および第2混合器内蔵型受信機に送られ、第2混合器内蔵型受信機の両側に設置されているタップオフ側に出力される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る混合器内蔵型受信機によれば、既設の同軸ケーブルに接続して、地上アナログ信号を伝送することができると共に、光ファイバケーブルに接続して、地上デジタル信号である光信号を、電気信号に変換し、地上アナログ信号に混合して伝送することができるので、既存の設備を最大限に使用して、全面的な取替や撤去が不要になることを考慮するとコストの低減を図ることができる。
【0019】
本発明に係る受信システムによれば、第1混合器内蔵型受信機または第2混合器内蔵型受信機を多段に縦続接続して設置することと、地上デジタル信号が同一周波数及び同一内容の信号であるため、相互に干渉することが無く、一つの同軸ケーブルによる伝送路上で、複数の箇所に地上デジタル信号を供給することができる。また、第2混合器内蔵型受信機からの地上デジタル信号の出力を地上アナログ信号の入力方向および出力方向(第2混合器内蔵型受信機の両側)にすること(地上デジタル信号が地上アナログ信号の入力元側に出力するようにすること)で、出力箇所(視聴者の個宅)に対して、混合器内蔵型受信機の設置台数を少なくすることができる。そのため、既存の設備を最大限に使用することと併せて、全面的な取替や撤去が不要になることを考慮するとコストの低減をさらに図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る受信システムの全体を模式的に示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る受信システムに使用される第1混合器内蔵型光受信機の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した第1混合器内蔵型光受信機の動作を示したフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態に係る受信システムの全体を模式的に示す概略図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る受信システムに使用される第2混合器内蔵型光受信機の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。
(受信システムの全体構成)
図1に混合器内蔵型受信機を包含した受信システムの概略図を示す。図1に示すように、受信システムSは、地上アナログ信号と地上デジタル信号とを受信して、視聴者の個宅に伝送する施設に該当し、地上アナログ受信用アンテナ3と、受信増幅器5と、線路増幅器7と、地上デジタル受信用アンテナ9と、光送信機11と、分岐カプラ13と、第1混合器内蔵型光受信機(第1混合器内蔵型受信機)1と、タップオフ15と、受信者端子17とを備えている。
【0022】
そして、この受信システムSは、地上アナログ受信用アンテナ3から、受信増幅器5及び線路増幅器7を介して、第1混合器内蔵型光受信機1までを同軸ケーブルDで接続しており、地上デジタル受信用アンテナ9から、光送信機11及び分岐カプラ13を介して、第1混合器内蔵型光受信機1までを光ケーブル(光ファイバケーブル)Hで接続している。また、受信システムSは、第1混合器内蔵型光受信機1から、タップオフ15を介して、次の第1混合器内蔵型光受信機1までを同軸ケーブルDで接続している。
【0023】
そして、同軸ケーブルによる同軸ネットワーク(地上アナログ受信用アンテナ3から第1混合器内蔵型光受信機1まで、および、第1混合器内蔵型光受信機1から後段の第1混合器内蔵型光受信機1まで)は、従来の狭帯域同軸ネットワーク(アナログ配線に相当し、周波数帯域VHF220MHz以下の電気信号を伝送可能)と同様の構成である。また、光ファイバケーブルHは、一般的な光ファイバケーブルによって構成されている。なお、狭帯域同軸ネットワークは、線路増幅器7と分岐分配器を内蔵する線路増幅器8、同軸ケーブルDから構成されており、線路増幅器7(VHF帯のみ通過できる仕様)が設置されることで、UHF帯の信号が通らないようになっている。
【0024】
同軸ケーブルDは、高い周波数になればなるほど、長さあたりの減衰は大きくなるため(周波数特性をもつ)、その減衰した損失を補うように、ここでは線路増幅器7を複数設定して伝送するようにしている。また、ここでは、第1混合器内蔵型光受信機1を設置する場所は、加入者の引込み線側におけるタップオフ15の直前に設置して、引き込み線(同軸ケーブル)の損失を補完するように第1混合器内蔵型光受信機1内で増幅させ、かつその設置位置を考慮して伝送している。ここで使用される引き込み線は、長くても40〜50m程度で十分間に合うので、その分の損失を補完して使用することが可能なものである。
【0025】
また、ここではVHF帯のアナログ信号とUHF帯のデジタル信号を周波数は変えずにそのまま混合し、地上デジタル信号だけを、伝送するレベルを地上アナログ信号に対して、予め設定したレベルとなるように信号レベルを下げて調整している。例えば、予め設定したレベルとして、−10dB低くして信号レベルを下げるように調整して伝送している(出力レベル)。
【0026】
第1混合器内蔵型光受信機1および第2混合器内蔵型光受信機1Aの説明に先立ち、受信システムSの各構成について説明する。
地上アナログ受信用アンテナ3は、地上アナログ放送の信号(地上アナログ信号、VHF帯信号またはUHF帯信号)を受信するものである。そして、この地上アナログ受信用アンテナ3は、受信増幅器5に地上アナログ信号を出力する。
【0027】
受信増幅器5は、地上アナログ受信用アンテナ3から入力された地上アナログ信号を、所定の信号レベルまで増幅し、従来と同様の同軸ケーブルDを介して、第1混合器内蔵型光受信機1まで伝送するものである。なお、入力信号がUHF帯信号である場合はVHF帯に変換する機能を含んでいる。
【0028】
線路増幅器7は、受信増幅器5から第1混合器内蔵型光受信機1までを結ぶ同軸ケーブルD上に介在して、当該同軸ケーブルDの経路長に応じて、伝送される地上アナログ信号が減衰する信号レベル分について増幅するものである。
【0029】
線路増幅器8は、受信増幅器5から第1混合器内蔵型光受信機1までを結ぶ同軸ケーブルD上に介在して、当該同軸ケーブルDの経路長に応じて、線路増幅器7で増幅された地上アナログ信号を、増幅すると共に、第1混合器内蔵型光受信機1と、次の線路増幅器8に分岐させて分配するものである。
【0030】
地上デジタル受信用アンテナ9は、地上デジタル放送の信号(地上デジタル信号、UHF帯)を受信するものである。そして、この地上デジタル受信用アンテナ9は、光送信機11に地上デジタル信号を出力する。
【0031】
光送信機11は、地上デジタル受信用アンテナ9から入力された地上デジタル信号を、光信号とし、この光信号を、光ファイバケーブルH及び分岐カプラ13を介して、第1混合器内蔵型光受信機1まで伝送するものである。
【0032】
分岐カプラ13は、光送信機11から伝送された光信号を、複数に分岐するものである。なお、この分岐カプラ13は、接続される第1混合器内蔵型光受信機1および第2混合器内蔵型光受信機1Aの数に応じて、N個(Nは任意の整数)に分岐するように構成することも可能である。なお、分岐カプラ13は、ここではクロージャ内に配置して設置されている。
【0033】
タップオフ15は、同軸ケーブルDに接続されるパッシブ機器の一種であり、視聴者の個宅の最も近くに設置されるものである。このタップオフ15は、屋外のケーブル(同軸ケーブル)から各家庭の引き込み線に信号を送っている。
【0034】
受信者端子17は、視聴者の個宅に接続する端子であり、保安器(個宅への引き込み線と同軸ケーブルに異常電圧や異常電流が生じた際の保護装置とからなる)を介して、視聴者のTV受信機に接続されるものである。
【0035】
続いて、図2を参照して第1混合器内蔵型光受信機1の構成を説明する(適宜、図1参照)。図2は第1混合器内蔵型光受信機の機能構成を示すブロック図である。なお、図1において、第1混合器内蔵型光受信機1では、屋内引込み線で先頭に配置されたものと、それ以降に配置されたものでは、構成は同じであるが、入力する信号が異なっている。つまり、第1混合器内蔵型光受信機1の先頭に配置されたものは、地上アナログ信号と地上デジタル信号とを入力して多重した混合信号が出力される。そして、第1混合器内蔵型光受信機1の先頭以降に配置されたものは、先頭の第1混合器内蔵型光受信機1から出力された混合信号と分岐カプラ13から送られてくる地上デジタル信号とを混合した信号を入力している。
図2に示すように、第1混合器内蔵型光受信機1は、同軸ケーブル接続手段21と、光ファイバケーブル接続手段23と、変換手段25と、利得調整手段27と、混合手段29とを備えている。
【0036】
同軸ケーブル接続手段21は、同軸ケーブルDに接続する入力ポートであり、入力された地上アナログ信号を混合手段29に出力するものである。
【0037】
光ファイバケーブル接続手段23は、光ファイバケーブルHに接続する入力ポートであり、入力された光信号を変換手段25に出力するものである。この光ファイバケーブル接続手段23に接続される光ファイバケーブルとして、ドロップケーブルを使用することができる。なお、ドロップケーブルとは、分岐カプラ(クロージャー)から視聴者の個宅までの引き込み線として使用されるものである。
【0038】
変換手段25は、光ファイバケーブル接続手段23から入力された光信号を、例えば、フォトダイオード(受動素子)などの光検出素子を介して、高周波の電気信号に変換するものである。つまり、この変換手段25は、光信号の地上デジタル信号をUHF帯の電気信号に変換している。
【0039】
利得調整手段27は、変換手段25で変換された高周波の電気信号の利得を調整して、混合手段29に出力するものである。この実施形態では、高周波の電気信号のレベルが−10dB低くなるように調整している。つまり、地上デジタル信号を地上アナログ信号の信号レベルに対して対応するように、−10dB低くなる運用をするために利得を調整している。この利得調整手段27において、−10dB低くしているのは、次の理由による。線路増幅器7,8では、入力する信号の波数とそのレベルで歪み(CSO,CTBといった歪みの規定値)が生じる。また、有線系システムでは、線路増幅器7,8を多段接続して、ネットワークを構成しており、線路増幅器7,8に対して地上アナログ信号に地上デジタル信号が追加されて入力される。そのため、ここでは利得調整手段27により、電気信号(地上デジタル信号)を−10dB低く調整することで、歪みを抑え、既に伝送されているアナログ信号の映像に影響を与えないようにしている。
【0040】
混合手段29は、同軸ケーブル接続手段21から出力された地上アナログ信号(電気信号)(または他の第1混合器内蔵型光受信機1からの混合信号)と、利得調整手段27から出力された地上デジタル信号の電気信号とを、周波数多重して外部に出力するものである。この混合手段29は、同軸ケーブル接続手段21から送られてくる信号を通過させるローパスフィルタ29aと、利得調整手段27から送られてくる信号を通過させるハイパスフィルタ29bと、ローパスフィルタ29aおよびハイパスフィルタ29bを通過した信号を混合する混合部29cとを備えている。なお、ローパスフィルタ29aおよびハイパスフィルタ29bは、それぞれが一方からの信号を通過させて他方からの信号を遮断して通過できないようにしている。つまり、ローパスフィルタ29aでは、ハイパスフィルタ29bを通過する信号を同軸ケーブル接続手段21側に通過させないようにし、また、ハイパスフィルタ29bでは、ローパスフィルタ29aを通過してくる信号を利得調整手段27側に通過させないようにしている。この混合手段29で混合された信号は、屋内引き込み線側に出力される。
【0041】
この第1混合器内蔵型光受信機1によれば、既設の同軸ケーブル(狭帯域同軸ネットワーク)に接続して、地上アナログ信号を伝送することができると共に、光ファイバケーブルに接続して、地上デジタル信号である光信号を、地上アナログ信号に混合して伝送することができるので、既設の設備を活用することができ、世帯当たりのコストを低減して、地上アナログ信号と地上デジタル信号とを伝送することができる。
【0042】
そして、図1に示すように、受信システムSでは、第1混合器内蔵型光受信機1を縦続接続(この図1では2台)にして、SFN(単一周波数ネットワーク、単一周波数中継)を利用することができる。
この場合、第1混合器内蔵型光受信機1(2段目:図1の右側の第1混合器内蔵型光受信機1)には、1段目(図1の左側の第1混合器内蔵型光受信機1)から出力された地上デジタル信号(SFN利用(その1))と、分岐カプラ13から伝送された地上デジタル信号とが混合されて入力される。これらの2つの信号は、同一の光送信機11から伝送される同一周波数、同一内容の信号であるため、相互に干渉することがなく、一つの同軸ケーブルの伝送路上で、複数の箇所に地上デジタル信号を供給することができる(SFNを使用する場合の利点)。
【0043】
(第1混合器内蔵型光受信機の動作)
次に、図3に示すフローチャートを参照して、第1混合器内蔵型光受信機1の動作について説明する。
まず、第1混合器内蔵型光受信機1は、同軸ケーブル接続手段21によって、接続された同軸ケーブルから地上アナログ信号(電気信号)を受信(入力)する(ステップS1)。続いて、第1混合器内蔵型光受信機1は、光ファイバケーブル接続手段23によって、接続された光ファイバケーブルから地上デジタル信号(光信号)を受信(入力)する(ステップS2)。
【0044】
そして、第1混合器内蔵型光受信機1は、変換手段25によって、光信号(地上デジタル信号)を電気信号に変換し(ステップS3)、利得調整手段27によって、利得を調整(−10dB)する(ステップS4)。
そして、第1混合器内蔵型光受信機1は、混合手段29によって、地上アナログ信号である電気信号と、地上デジタル信号である電気信号とを混合(周波数多重)して出力する(ステップS5)。
なお、当然ながら、ステップS1と、ステップS2〜S4は、並列(同時あるいは時間差を持ってそれぞれ)に動作を行っている。
【0045】
さらに、第1混合器内蔵型光受信機1は、屋内引込み線において、先頭以降のものについては、同軸ケーブル接続手段21に入力される信号は、前段において他の第1混合器内蔵型光受信機1で混合して出力された混合信号が入力され、その混合信号と、利得調整手段27からの地上デジタル信号のハイパスフィルタ29bを通過した信号とが混合されて屋内引込み線側に出力される。なお、ハイパスフィルタ29bが設置されていることで、ローパスフィルタ29aおよび混合部29cを通過した信号は利得調整手段27側に送られることなく遮断される。また、ローパスフィルタ29aが設置されていることで、ハイパスフィルタ29bおよび混合部29cを通過した信号は同軸ケーブル接続手段12側に送られることなく遮断される。また、ここでは、第1混合器内蔵型光受信機1をタップオフ15と交互に設置した例を説明したが、第1混合器内蔵型光受信機1は、複数のタップオフ15ごとに、配置する構成としても構わない。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、受信システムSとして、複数の第1混合器内蔵型光受信機1をタップオフ15と交互に使用しているが、図4および図5に示す構成としても可能である。図4は、他の受信システムの全体を模式的に示す概略図、図5は他の受信システムに使用される混合器内蔵型光受信機の機能構成を示すブロック図である。なお、図1および図2と同じ構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0047】
図4では、図1と異なる部分として、タップオフ15を屋内引込み線側に2つ(複数)設置したごとに、第2混合器内蔵型光受信機(第2混合器内蔵型受信機)1Aを配置していることである。
図4に示すように、受信システムS1では、屋内引込み線において先頭に配置されるものが第1混合器内蔵型光受信機1で、それ以降の屋内引き込み線に配置されるものが第2混合器内蔵型光受信機1Aである。
また、図5に示すように、第2混合器内蔵型光受信機1Aは、同軸ケーブル接続手段21と、光ファイバケーブル接続手段23と、変換手段25と、利得調整手段27と、混合手段29Aと、を備えている。
【0048】
混合手段29Aは、利得調整手段27から送られてくる信号を通過させるハイパスフィルタ29bと、このハイパスフィルタ29bを通過した信号および同軸ケーブル接続手段21から送られてくる混合信号とを混合する混合部29cとを備えている。この混合手段29Aでは、図2の構成と異なり、ローパスフィルタ29a(図2参照)が設けられていないため、ハイパスフィルタ29bを通過してさらに混合部29cを通過した信号(地上デジタル信号)は、同軸ケーブル接続手段21を通り屋内引込み線の上流側となるタップオフ15側に出力される。
【0049】
つまり、図4に示すように、第2混合器内蔵型光受信機1Aは、その前後段に位置するタップオフ15,15に信号を出力している。そして、第2混合器内蔵型光受信機1Aの前段側には、利得調整手段27、ハイパスフィルタ29b、混合部29cを通過した信号(地上デジタル信号)が同軸ケーブル接続手段21から伝送されることになる。また、第2混合器内蔵型光受信機1Aの後段側には、混合手段29Aにより混合された信号が出力される。
【0050】
このような構成の第2混合器内蔵型光受信機1Aを屋内引込み線において設置することで(SFNの利用(その2))、本来、タップオフ15の1段目と2段目の間に設置すべき混合器内蔵型光受信機を省略することができ、第2混合器内蔵型光受信機1Aの設置台数を少なくすることができる。なお、ここでは、タップオフ15を二つ設置ごとに、第2混合器内蔵型光受信機1Aを設置する構成として説明したが、タップオフ15は三つ以上の設置ごとに第2混合器内蔵型光受信機1Aを設置する構成としても構わない。
【0051】
図4に示すように、2段目の第2混合器内蔵型光受信機1Aの地上デジタル信号の出力を分岐カプラ13により分岐してタップオフ15の他方向(逆方向)から入力するように構成することで、1段目の第1混合器内蔵型光受信機1と2段目の第2混合器内蔵型光受信機1Aとの間にある2つの受信者端子(保安器)17,17には、1段目の地上デジタル信号と2段目の地上デジタル信号が両方入力されることになる。そのため、一方の保安器の信号レベルとしては両方の第1混合器内蔵型光受信機1および第2混合器内蔵型光受信機1Aからの入力される分若干増となる。同様に、SFN利用の関係にある一方の保安器も信号レベルが若干増となる。
【0052】
このように、第1混合器内蔵型光受信機1および第2混合器内蔵型光受信機1Aを使用する際には、既設設備の改修を前提としている場合や、図1、図4に示すように、タップオフ15が複数段ある場合など、既存システムの構成にあわせて第1混合器内蔵型光受信機1あるいは第2混合器内蔵型光受信機1Aをいかに少ない台数で、効率的に設置するかが重要となる。したがって、分岐カプラ(クロージャ)13により分岐した地上デジタル信号を屋内引込み線において一方向側または両方向(前後方向)に伝送するように第1混合器内蔵型光受信機1または第2混合器内蔵型光受信機1Aを設置することで、台数を少なくするようにできる。
【0053】
また、第1混合器内蔵型光受信機1の出力、あるいは、第2混合器内蔵型光受信機1Aの後段側への出力を分岐してその一方をギャップフィラーとして使用できるように、PA端子を備えている構成としても構わない。つまり、図2の第1混合器内蔵型光受信機1あるいは図5の第2混合器内蔵型光受信機1Aの出力端子(29,29Aの出力)を分岐し、別端子を擁して、ギャップフィラー用として電波を放射することも可能である。
なお、ギャップフィラーとは、地上デジタル信号の電波の届きにくい地域(山間部等)や場所の受信特性を改善する装置である。また、PA端子とは、送信電力増幅器出力端子である。
【符号の説明】
【0054】
1 第1混合器内蔵型光受信機(第1混合器内蔵型受信機)
1A 第2混合器内蔵型光受信機(第2混合器内蔵型受信機)
3 地上アナログ用受信アンテナ
5 受信増幅器
7 線路増幅器
8 線路増幅器
9 地上デジタル用受信アンテナ
11 光送信機
13 分岐カプラ
15 タップオフ
17 受信者端子
21 同軸ケーブル接続手段
23 光ファイバケーブル接続手段
25 変換手段
27 利得調整手段
29 混合手段
29a ローパスフィルタ
29b ハイパスフィルタ
29c 混合部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルで伝送される地上アナログ信号と、光ファイバケーブルで光信号として伝送される地上デジタル信号とを混合して屋内引き込み線側に伝送する混合器内蔵型受信機であって、
前記同軸ケーブルに接続する同軸ケーブル接続手段と、
前記光ファイバケーブルに接続する光ファイバケーブル接続手段と、
前記光ファイバケーブル接続手段から前記光ファイバを介して伝送された地上デジタル信号を電気信号に光検出素子を介して変換する変換手段と、
この変換手段で電機信号に変換された地上デジタル信号の利得を前記地上アナログ信号の映像に影響がでないように信号レベルを予め設定したレベルに下げるように調整する利得調整手段と、
この利得調整手段でレベルが調整された地上デジタル信号と、前記同軸ケーブル接続手段から前記同軸ケーブルを介して伝送された地上アナログ信号とを多重することで混合して混合信号として前記屋内引き込み線側に出力する混合手段と、を備えることを混合器内蔵型受信機。
【請求項2】
前記混合手段は、前記利得調整手段からの地上デジタル信号を通過させるハイパスフィルタと、前記同軸ケーブルから送られてくる地上アナログ信号を通過させるローパスフィルタと、前記ハイパスフィルタおよび前記ローパスフィルタを通過した信号を混合する混合部とを備え、
前記ハイパスフィルタは前記地上アナログ信号の通過を阻止し、
前記ローパスフィルタは前記地上デジタル信号の通過を阻止し、
前記混合手段が混合した混合信号を前記屋内引き込み線側に出力することを特徴とする請求項1に記載の混合器内蔵型受信機。
【請求項3】
前記混合手段は、前記利得調整手段からの地上デジタル信号を通過させるハイパスフィルタと、このハイパスフィルタを通過した信号、および、前記同軸ケーブルから送られてくる地上アナログ信号または他の混合器内蔵型受信機により混合された混合信号を混合する混合部とを備え、
前記混合手段が前記屋内引き込み線側に前記混合信号を出力すると共に、前記ハイパスフィルタを通過した信号を前記同軸ケーブル接続手段側となる前記屋内引き込み線に出力することを特徴とする請求項1に記載の混合器内蔵型受信機。
【請求項4】
地上アナログ信号を受信する既設設備であるアナログ配線側に、地上デジタル信号を受信して屋内引き込み線を介して前記既設設備内に送るデジタル配線設備を付加した受信システムであって、
前記地上アナログ信号を受信するアナログ配線側に、受信アンテナからの前記地上アナログ信号を受信して増幅する受信増幅器と、前記アナログ配線で使用される線路により減衰する地上アナログ信号を増幅する線路増幅器と、を備え、
前記地上デジタル信号を受信するデジタル配線設備に、受信アンテナからの地上デジタル信号を受け取り送る光送信機と、この光送信機から送られて来た地上デジタル信号を分岐する分岐カプラと、
前記受信増幅器および前記線路増幅器で増幅された地上アナログ信号を入力すると共に、前記分岐カプラから分岐された地上デジタル信号を入力して混合し、かつ、前記屋内引き込み線側に混合信号として出力する請求項2に記載の混合器内蔵型受信機を第1混合器内蔵型受信機として備え、
前記屋内引き込み線において設置されるタップオフの一つまたは複数ごとに、前記第1混合器内蔵型受信機が設置されて、前記タップオフの次に設置される前記第1混合器内蔵型受信機が、前記タップオフから送られてくる前記混合信号を受け取ると共に、前記分岐カプラから送られる地上デジタル信号を受け取り混合し、前記屋内引き込み線側に出力することを特徴とする受信システム。
【請求項5】
地上アナログ信号を受信する既設設備であるアナログ配線側に、地上デジタル信号を受信して屋内引き込み線を介して前記既設設備部内に送るデジタル配線設備を付加した受信システムであって、
前記地上アナログ信号を受信するアナログ配線側に、受信アンテナからの前記地上アナログ信号を受信して増幅する受信増幅器と、前記アナログ配線で使用される線路により減衰する地上アナログ信号を増幅する線路増幅器と、を備え、
前記地上デジタル信号を受信するデジタル配線設備に、受信アンテナからの地上デジタル信号を受け取り送る光送信機と、この光送信機から送られて来た地上デジタル信号を分岐する分岐カプラと、
前記受信増幅器および前記線路増幅器で増幅された地上アナログ信号を入力すると共に、前記分岐カプラから分岐された地上デジタル信号を入力して混合し、かつ、前記屋内引き込み線側に混合信号として出力する請求項2の混合器内蔵型受信機を第1混合器内蔵型受信機と、
前記第1混合器内蔵型受信機に接続された前記屋内引き込み線において設置されるタップオフと、このタップオフから送られてくる混合した前記混合信号を受け取ると共に、前記分岐カプラから送られる地上デジタル信号を受け取り混合し、かつ、前記引き込み線側に出力する請求項3に記載の混合器内蔵型受信機を第2混合器内蔵型受信機として備え、
前記複数のタップオフごとに前記第2混合器内蔵型受信機が設置されて、
前記第2混合器内蔵型受信機は、前記第2混合器内蔵型受信機の前段のタップオフ側に前記分岐カプラからの地上デジタル信号を出力すると共に、後段のタップオフ側に混合した信号を出力することを特徴とする受信システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate