説明

混合桁の接合構造

【課題】供用状態において接合部近傍のコンクリートに過度なひび割れが発生せず、高い耐久性を有する混合桁の接合構造を提供すること。
【解決手段】コンクリート製桁7aと鋼桁7cとを接合部7bで軸方向に接合する際に、鋼桁7cのコンクリート製桁7aと対向する端面17に前面板13を固定する。また、コンクリート製桁7aの接合部7b付近の表面に、繊維補強セメント系材料を用いて形成され、鋼桁7cと対向する端部に妻板27を有する板状部材25を設置する。そして、妻板27と前面板13とを、前面板13に固定されたスタッドボルト29aを妻板27の取付孔33に通し、スタッドボルト29aにナット49を取り付けることにより接合する。さらに、コンクリート製桁7aの補強鉄筋31の端部を前面板13に固定されたスタッドボルト29およびスタッドボルト29aに結合し、コンクリート37を打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合桁の接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁を構築する際、上部工を、コンクリート桁と鋼桁などの種類の異なる桁を橋軸方向に接合する混合構造形式とする場合がある。混合構造形式の橋梁上部工を用いると、重量が異なるコンクリート桁と鋼桁とを組み合わせることで発生モーメントを調整できる、重量の軽い鋼桁を一括して架設することにより施工工期の短縮を図ることができる等の利点がある。
【0003】
図10は、コンクリート製桁101aと鋼桁101cを組み合わせた混合桁下床版部の接合部101b付近の橋軸方向の断面図を示す。コンクリート製桁101aと鋼桁101cのように、異なる材料で構成される桁を橋軸方向に接合する場合には、2種類の桁を接合する接合部101bと呼ばれる領域を設けることが一般的である。
【0004】
図10に示すように、接合部101bでは、鋼桁101cのコンクリート製桁101a側の妻部に前面板105が設けられる。前面板105にはコンクリート製桁101aに埋設されるスタッド113が設けられる。また、鋼桁101cには、前面板105から所定の距離をおいて後面板107が設けられる。前面板105と後面板107との対向する面、鋼桁101cの下フランジ103とリブ109との対向する面には、それぞれスタッド111が設けられる。前面板105、下フランジ103、後面板107、リブ109に囲まれた部分には接合部コンクリート115が充填される。スタッド111は、接合部コンクリート115に埋設される。
【0005】
接合部101bは、剛性の小さい鋼桁101cと剛性の大きいコンクリート製桁101aとの中間的な剛性を有する合成構造であり、コンクリート製桁101aと鋼桁101cとの間の力の伝達を円滑に行うことを目的として設けられる。合成構造を成立させるために,鋼材とコンクリートとを一体化する方法としては、例えばスタッド111などがずれ止めとして配置される。コンクリートに発生する引張応力度を緩和させる方法としては、橋軸方向にPC鋼材(図示せず)を配置してプレストレスを導入する方法が採用される。
【0006】
図10に示す構造の他に、接合部の軽量化や施工性向上を狙った構造として、鋼桁の端部をコンクリート製桁に埋め込んだ構造(例えば、特許文献1参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−127307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、施工上の制約から支間中央付近の曲げモーメントが大きい部位に接合部が設けられた場合、橋梁の供用状態において接合部近傍に発生するコンクリートの引張応力を解消するために必要となるPC鋼材を配置できない場合がある。接合部近傍において、コンクリートにひび割れが生じるような大きな引張応力度の発生を許容すると、鉄筋に過度な引張応力が発生して応力変動が大きくなり、疲労耐久性に劣ることとなる。また、ひび割れから空気や水が浸入し、内部の鉄筋や接合部の鋼材の発錆が懸念される。
【0009】
接合部は、構造全体が成立する上で重要な部位であり、接合部あるいはその近傍の耐久性を確保することは、非常に重要である。しかし、上述した理由から、従来の接合部構造では、供用状態において接合部近傍のコンクリートに過度なひび割れが発生し、耐久性が低下する場合がある。
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、供用状態において接合部近傍のコンクリートに過度なひび割れが発生せず、高い耐久性を有する混合桁の接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために本発明は、コンクリート製桁と鋼桁とが橋軸方向に接合される混合桁の接合構造であって、前記コンクリート製桁の端部付近の下面に、繊維補強セメント系材料からなる板状部材が配置され、前記板状部材の前記鋼桁と対向する端部に設けられた妻板と、前記鋼桁の前記コンクリート製桁と対向する端部に設けられた前面板とが、接合具を用いて接合されることを特徴とする混合桁の接合構造である。
【0012】
板状部材の上面には、必要に応じて、コンクリートからの剥落を防止するためのアンカ、または/および、コンクリートとの付着や一体性を高めるための凹凸が設けられる。また、板状部材の上面および妻板の板状部材上面に連続する面に、リブが設けられる場合もある。
【0013】
妻板と前面板とを接合する接合具は、例えば、スタッドボルトおよびナットとする。この場合、前面板に固定されたスタッドボルトを、妻板に設けられた孔に通し、スタッドボルトにナットを取り付ける。接合具は、ボルトおよびナットとしてもよい。この場合、前面板および妻板に設けられた孔にボルトを通し、ボルトにナットを取り付ける。
【0014】
コンクリート製桁に埋設される鉄筋の端部は、必要に応じて、前面板に固定された結合部材に結合される。コンクリート製桁に埋設される鉄筋の端部は、板状部材に妻板と平行に設けられた板材に定着される場合もある。コンクリート製桁に埋設される鉄筋の端部は、他の部材に連結されず、コンクリートとの付着によって定着される場合もある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、供用状態において接合部近傍のコンクリートに過度なひび割れが発生せず、高い耐久性を有する混合桁の接合構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】橋梁1の側面図
【図2】接合部7b付近の橋軸方向の断面図
【図3】板状部材25の斜視図
【図4】他の板状部材25bの斜視図
【図5】他の板状部材25cの斜視図
【図6】他の板状部材25dの斜視図
【図7】第2の実施の形態における接合部7b付近の橋軸方向の断面図
【図8】第3の実施の形態における接合部7b付近の橋軸方向の断面図
【図9】妻板27と前面板13との境界部35付近の拡大断面図
【図10】コンクリート製桁101aと鋼桁101cを組み合わせた混合桁の下床版部の接合部101b付近の橋軸方向の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、橋梁1の側面図を示す。図1に示すように、橋梁1では、橋梁下部工の橋脚3の上に、橋梁上部工5が設置される。橋梁上部工5は、桁7の上に床版9が設置される。橋梁1の桁7では、コンクリート製桁7aと鋼桁7cとが接合部7bにより橋軸方向に接合される。
【0018】
図2は、接合部7b付近の橋軸方向の断面図である。図2は、図1の範囲Aに示す部分の断面図を拡大したものである。図2に示すように、接合部7bは、鋼桁7cの端部付近に設けられる。接合部7bには、前面板13、後面板15が設けられる。前面板13は、鋼桁7cの、コンクリート製桁7aと対向する端面17に固定される。後面板15は、前面板13から所定の距離をおいて前面板13と平行に配置され、鋼桁7cに固定される。
【0019】
前面板13は、後面板15と対向する面13bにスタッド19が固定される。後面板15は、前面板13と対向する面15aにスタッド19が固定される。鋼桁7cの下フランジ11は、リブ23と対向する面11aにスタッド19が固定される。リブ23は、下フランジ11と対向する面23aにスタッド19が固定される。
【0020】
接合部7bでは、前面板13と後面板15と下フランジ11とリブ23とに囲まれた部分に接合部コンクリート21が充填される。スタッド19は接合部コンクリート21に埋設され、桁7の軸方向力に対する接合部7bのずれ止めとして機能する。
【0021】
図2に示すように、コンクリート製桁7aの接合部7b側の端部付近の表面には、板状部材25が設置される。図3は、板状部材25の斜視図である。図2、図3に示すように、板状部材25は、底面板22の鋼桁7cと対向する端部に、妻板27を有する。妻板27には、取付孔33が設けられる。板状部材25は、鋼繊維等で補強された繊維補強セメント系材料を用いて形成される。繊維補強セメント系材料とは、高強度繊維補強モルタル、通常の繊維補強モルタル等である。
【0022】
鋼桁7bに固定される前面板13は、コンクリート製桁7a側の面13aに、スタッドボルト29およびスタッドボルト29aが固定される。スタッドボルト29は面13aの桁内側部分に配置され、スタッドボルト29aは桁外側部分に配置される。スタッドボルト29aは、接合具兼結合部材として用いられる。
【0023】
図2に示すように、コンクリート製桁7aに設置された板状部材25の妻板27と、鋼桁7cに固定された前面板13とは、前面板13に固定されたスタッドボルト29a(接合具)を妻板27の取付孔33(図3)に通し、スタッドボルト29aにナット49(接合具)を取り付けることにより接合される。
【0024】
コンクリート製桁7aでは、コンクリート37に補強鉄筋31が埋設される。補強鉄筋31の端部は、前面板13に固定されたスタッドボルト29およびスタッドボルト29a(結合部材)に結合される。
【0025】
以下に、コンクリート製桁7aと鋼桁7cとを接合する方法について説明する。コンクリート製桁7aと鋼桁7cとを接合するには、まず、工場にて鋼桁7cの端面17に前面板13を固定し、前面板13から所定の距離をおいて後面板15を固定する。前面板13の面13aには、スタッドボルト29およびスタッドボルト29aが固定される。前面板13の面13b、後面板15の面15a、下フランジ11の面11a、リブ23の面23aには、スタッド19が固定される。スタッドボルト29およびスタッドボルト29a、スタッド19は、工場または現場にて適切な時期に施工される。
【0026】
次に、鋼桁7cを橋脚3に架設する。そして、板状部材25の底面板22をコンクリート製桁7aの表面に配置し、妻板27を前面板13に固定する。妻板27を前面板13に固定するには、前面板13に固定されたスタッドボルト29aを妻板27に設けられた取付孔33に通し、ナット49をスタッドボルト29aにねじこんで妻板27に締め付ける。
【0027】
その後、コンクリート製桁7aの補強鉄筋31をスタッドボルト29およびスタッドボルト29aに結合し、コンクリート37を打設する。板状部材25は、コンクリート37を打設する際に型枠の代わりとなる。また、コンクリート製桁7aのコンクリート37の打設と前後して、接合部7bの前面板13、後面板15、下フランジ11、リブ23に囲まれた部分に接合部コンクリート21を打設する。
【0028】
第1の実施の形態では、供用状態における作用断面力に対しコンクリートに引張応力度が生じる箇所、すなわちコンクリート製桁7aの表面に、繊維補強セメント系材料で形成された板状部材25を設置する。板状部材25は、コンクリート製桁7aの母材であるコンクリートよりも高いひび割れ発生強度を有するので、接合部7b近傍に大きな引張応力が発生しても、コンクリート製桁7aの表面にはひび割れが発生しない。また、板状部材25は、コンクリート製桁7aのコンクリート37を打設する際に型枠の代わりとなるため、施工性が向上する。
【0029】
第1の実施の形態では、接合具としてスタッドボルト29aおよびナット49を用い、板状部材25の妻板27を前面板13に直接接合する。そのため、コンクリート製桁7aと鋼桁7cとの応力伝達をより確実にすることができる。鋼桁7cの下フランジ11とコンクリート製桁7aの下面との境界部35では、目開きが生じる可能性がある。妻板27と前面板13とをスタッドボルト29aおよびナット49で接合することにより、境界部35の目開きを小さくすることが可能となる。
【0030】
また、コンクリート製桁7aの補強鉄筋31を前面板13に固定したスタッドボルト29およびスタッドボルト29aに直接結合することにより、コンクリート37への応力伝達がスムーズになる。
【0031】
なお、第1の実施の形態では、板状部材25を底面板22と妻板27とで構成したが、図3に示すように、コンクリート製桁7aの側面に配置される側面板39を含んで構成してもよい。また、図3に点線で示すように、取付孔33のかわりに、妻板27を鉛直方向に切欠いた溝状の取付孔33aを設けてもよい。溝状の取付孔33aを用いることにより、板状部材25の妻板27と鋼桁7cの前面板13とを接合する際に、板状部材25を下から上へスライドさせて所定の位置に設置することができる。
【0032】
板状部材25は、上面24にあらかじめ凹凸を設けてもよい。板状部材25の上面24に凹凸を設けることで、板状部材25とコンクリート37との付着や一体性を高めることができる。
【0033】
図4は、他の板状部材25bの斜視図である。図4に示す板状部材25bは、底面板22の上面24にアンカ41が設けられる。底面板22の上面24から棒状の材料を突出させることで、板状部材25bのコンクリート37からの剥離を防止できる。なお、図3に示す板状部材25と同様に、取付孔33のかわりに、妻板27を鉛直方向に切欠いた溝状の取付孔を設けてもよい。以下の例においても同様である。
【0034】
図5は、他の板状部材25cの斜視図である。図5に示す板状部材25cは、底面板22の上面24と、妻板27の上面24に連続する面とに、リブ43が設けられる。リブ43は、板状部材25cと同じ材質で、一体に形成される。リブ43を設けることで、底面板22と妻板27との応力伝達が確実となる。また、板状部材25cの曲げ剛性が向上するので、板状部材25cのみを例えば吊り上げて架設する際に、ひび割れの発生を防ぐことが可能となる。また、リブ43を設けた板状部材25cを型枠として使用すると、支保工を減らすことが可能となる。
【0035】
図6は、他の板状部材25dの斜視図である。図6に示す板状部材25dは、底面板22に図5に示すリブ43よりも長いリブ45が設けられる。リブ45の表面には、凹凸処理が施される。これにより、図5に示す板状部材25cと比較して、板状部材25dとコンクリート37との付着性能をより向上させることができる。
【0036】
次に、第2の実施の形態について説明する。図7は、第2の実施の形態における接合部7b付近の橋軸方向の断面図である。第2の実施の形態の接合部7b付近の構造は、図2に示す第1の実施の形態の接合部7b付近の構造とほぼ同様であるが、前面板13のコンクリート製桁7a側の面13aに、スタッドボルト29のかわりに、スタッド47が設けられる。また、板状部材25のかわりに板状部材25aが用いられる。さらに、コンクリート製桁7aに、補強鉄筋31のかわりに補強鉄筋51が埋設される。
【0037】
図7に示すように、第2の実施の形態における接合部7bでは、前面板13のコンクリート製桁7a側の面13aに、スタッド47とスタッドボルト29aとが固定される。スタッド47は面13aの桁内側部分に配置され、スタッドボルト29aは桁外側部分に配置される。
【0038】
板状部材25aは、コンクリート製桁7aの接合部7b側の端部付近の表面に設置される。板状部材25aの底面板22は、妻板27を有する側と反対側の端部に、妻板27と平行な板材である妻板53を有する。板状部材25aは、例えば、鋼繊維等で補強された繊維補強セメント系材料を用いて形成される。板状部材25aの妻板27と、鋼桁7cに固定された前面板13とは、スタッドボルト29a(接合具)を妻板27の取付孔(図示せず)に通し、スタッドボルト29aにナット49(接合具)を取り付けることにより接合される。
【0039】
コンクリート製桁7aでは、コンクリート37に補強鉄筋51が埋設される。補強鉄筋51の端部は、板状部材25aの妻板53に定着される。
【0040】
以下に、コンクリート製桁7aと鋼桁7cとを接合する方法について説明する。コンクリート製桁7aと鋼桁7cとを接合するには、第1の実施の形態と同様に、まず、工場にて鋼桁7cの端面17に前面板13を固定し、前面板13から所定の距離をおいて後面板15を固定する。前面板13の面13aには、工場または現場にて適切な時期にスタッド47およびスタッドボルト29aが固定される。
【0041】
次に、鋼桁7cを橋脚3に架設する。そして、板状部材25aの底面板22をコンクリート製桁7aの表面に配置し、妻板27を前面板13に固定する。妻板27を前面板13に固定するには、前面板13に固定されたスタッドボルト29aを妻板27に設けられた取付孔(図示せず)に通し、ナット49をスタッドボルト29aにねじこんで妻板27に締め付ける。
【0042】
その後、コンクリート製桁7aの補強鉄筋51を妻板53に定着し、コンクリート37を打設する。板状部材25aは、コンクリート37を打設する際に型枠の代わりとなる。また、コンクリート製桁7aのコンクリート37の打設と前後して、接合部7bの前面板13、後面板15、下フランジ11、リブ23に囲まれた部分に接合部コンクリート21を打設する。
【0043】
第2の実施の形態では、供用状態における作用断面力に対しコンクリートに引張応力度が生じる箇所、すなわちコンクリート製桁7aの表面に、繊維補強セメント系材料で形成された板状部材25aを設置する。板状部材25aは、コンクリート製桁7aの母材であるコンクリートよりも高いひび割れ発生強度を有するので、供用状態において、接合部7b近傍に大きな引張応力が発生しても、コンクリート製桁7aの表面にはひび割れが発生しない。また、板状部材25aは、コンクリート製桁7aのコンクリート37を打設する際に型枠の代わりとなるため、施工性が向上する。
【0044】
第2の実施の形態では、接合具としてスタッドボルト29aおよびナット49を用い、板状部材25aの妻板27を前面板13に直接接合する。そのため、コンクリート製桁7aと鋼桁7cとの応力伝達をより確実にすることができる。鋼桁7cの下フランジ11とコンクリート製桁7aの下面との境界部35では、目開きが生じる可能性がある。妻板27と前面板13とをスタッドボルト29aおよびナット49で接合することにより、境界部35の目開きを小さくすることが可能となる。
【0045】
なお、第2の実施の形態では、板状部材25aを底面板22と妻板27と妻板53とで構成したが、コンクリート製桁7aの側面に配置される側面板(図示せず)を含んで構成してもよい。板状部材25aは、底面板22の上面24にアンカや凹凸等を設けてもよいし、妻板27と妻板53との対向する面および底面板22の上面24にリブを設けてもよい。
【0046】
次に、第3の実施の形態について説明する。図8は、第3の実施の形態における接合部7b付近の橋軸方向の断面図である。図9は、妻板27と前面板13との境界部35付近の拡大断面図である。第3の実施の形態の接合部7b付近の構造は、図2に示す第1の実施の形態の接合部7b付近の構造とほぼ同様であるが、図8、図9に示すように、前面板13のコンクリート製桁7a側の面13aに、スタッドボルト29およびスタッドボルト29aのかわりに、スタッド47と取付孔57とが設けられる。また、接合具としてボルト59、ナット49aおよびナット49bが用いられる。さらに、コンクリート製桁7aに、補強鉄筋31のかわりに補強鉄筋55が埋設される。
【0047】
図8、図9に示すように、第3の実施の形態における接合部7bでは、前面板13のコンクリート製桁7a側の面13aにスタッド47と取付孔57とが設けられる。スタッド47は桁内側部分に固定され、取付孔57は桁外側部分に配置される。
【0048】
板状部材25の妻板27と、鋼桁7cに固定された前面板13とは、ボルト59(接合具)を前面板13の取付孔57と妻板27の取付孔33とに通し、ボルト59にナット49aおよびナット49b(接合具)を取り付けることにより接合される。
【0049】
コンクリート製桁7aでは、コンクリート37に補強鉄筋55が埋設される。補強鉄筋55は、板状部材25の底面板22と十分に長くラップするように配置される。補強鉄筋55の端部は、他の部材に結合されない。
【0050】
以下に、コンクリート製桁7aと鋼桁7cとを接合する方法について説明する。コンクリート製桁7aと鋼桁7cとを接合するには、第1の実施の形態と同様に、まず、工場にて鋼桁7cの端面17に前面板13を固定し、前面板13から所定の距離をおいて後面板15を固定する。前面板13の面13aには、工場または現場にて適切な時期にスタッド47が固定され、取付孔57が形成されて、ナット49bが固定されたボルト59が取付孔57に挿入される。
【0051】
次に、鋼桁7cを橋脚3に架設する。そして、板状部材25の底面板22をコンクリート製桁7aの表面に配置し、妻板27を前面板13に固定する。妻板27を前面板13に固定するには、前面板13の取付孔57に挿入されたボルト59を妻板27に設けられた取付孔33に通し、ナット49aをボルト59にねじこんで妻板27に締め付ける。
【0052】
その後、コンクリート製桁7aの補強鉄筋55を板状部材25の底面板22と十分に長くラップするように配置し、コンクリート37を打設する。板状部材25は、コンクリート37を打設する際に型枠の代わりとなる。また、コンクリート製桁7aのコンクリート37の打設と前後して、接合部7bの前面板13、後面板15、下フランジ11、リブ23に囲まれた部分に接合部コンクリート21を打設する。
【0053】
第3の実施の形態では、供用状態における作用断面力に対しコンクリートに引張応力度が生じる箇所、すなわちコンクリート製桁7aの表面に、繊維補強セメント系材料で形成された板状部材25を設置する。板状部材25は、コンクリート製桁7aの母材であるコンクリートよりも高いひび割れ発生強度を有するので、接合部7b近傍に大きな引張応力が発生しても、コンクリート製桁7aの表面にはひび割れが発生しない。また、板状部材25は、コンクリート製桁7aのコンクリート37を打設する際に型枠の代わりとなるため、施工性が向上する。
【0054】
第3の実施の形態では、接合具としてボルト59、ナット49aおよびナット49bを用い、板状部材25を前面板13に直接接合する。そのため、コンクリート製桁7aと鋼桁7cとの応力伝達をより確実にすることができる。鋼桁7cの下フランジ11とコンクリート製桁7aの下面との境界部35では、目開きが生じる可能性がある。板状部材25をボルト59およびナット49a、ナット49bで接合することにより、境界部35の目開きを小さくすることが可能となる。
【0055】
第3の実施の形態では、コンクリート製桁7aの補強鉄筋55と板状部材25の底面板22とを十分長くラップさせることにより、補強鉄筋55を他の部材につながずに定着させることができる。
【0056】
なお、第3の実施の形態では、板状部材25を底面板22と妻板27とで構成したが、コンクリート製桁7aの側面に配置される側面板(図示せず)を含んで構成してもよい。板状部材25は、底面板22の上面す24にあらかじめ凹凸を設けてもよいし、底面板22の上面24および妻板27の上面24と連続する面にリブを設けてもよい。
【0057】
第1から第3の実施の形態では、ナット49(図2、図7)やナット49a(図)を妻板27に締め付けたが、ナット49、49aを締め付けずにコンクリート製桁7aのコンクリート37を打設してもよい。この場合、コンクリート37が硬化することにより、ナット49、49aと妻板27との隙間がなくなり、板状部材25、25aが固定される。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明にかかる鉄筋コンクリート構造体の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
1………橋梁
7………桁
7a………コンクリート製桁
7b………接合部
7c………鋼桁
11………下フランジ
13………前面板
15………後面板
17………端面
25、25a………板状部材
27、53………妻板
29、29a………スタッドボルト
31、51、55………補強鉄筋
33、57………取付孔
37………コンクリート
41………アンカ
43、45………リブ
47………スタッド
49、49a、49b………ナット
59………ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製桁と鋼桁とが橋軸方向に接合される混合桁の接合構造であって、
前記コンクリート製桁の端部付近の下面に、繊維補強セメント系材料からなる板状部材が配置され、
前記板状部材の前記鋼桁と対向する端部に設けられた妻板と、前記鋼桁の前記コンクリート製桁と対向する端部に設けられた前面板とが、接合具を用いて接合されることを特徴とする混合桁の接合構造。
【請求項2】
前記板状部材の上面に、アンカまたは/および凹凸が設けられることを特徴とする請求項1記載の混合桁の接合構造。
【請求項3】
前記板状部材の上面および前記妻板の前記上面に連続する面に、リブが設けられることを特徴とする請求項1記載の混合桁の接合構造。
【請求項4】
前記接合具がスタッドボルトおよびナットであり、
前記前面板に固定された前記スタッドボルトを、前記妻板に設けられた孔に通し、前記スタッドボルトに前記ナットを取り付けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の混合桁の接合構造。
【請求項5】
前記接合具がボルトおよびナットであり、
前記前面板および前記妻板に設けられた孔に前記ボルトを通し、前記ボルトに前記ナットを取り付けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の混合桁の接合構造。
【請求項6】
前記コンクリート製桁に埋設される鉄筋の端部が、前記前面板に固定された結合部材に結合されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の混合桁の接合構造。
【請求項7】
前記コンクリート製桁に埋設される鉄筋の端部が、前記板状部材に前記妻板と平行に設けられた板材に定着されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の混合桁の接合構造。
【請求項8】
前記コンクリート製桁に埋設される鉄筋の端部が、他の部材に連結されず、コンクリートとの付着によって定着されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の混合桁の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−63987(P2011−63987A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215210(P2009−215210)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】