説明

混合気−液原料を用いる改良膜分離プロセス

本発明は、芳香族を、芳香族および非芳香族を含む原料ストリームから、膜を通して芳香族を選択透過することによって分離するための方法に関し、本方法は、混合相気−液原料を膜へ供給する工程を含み、その際液相は、優先的に、膜表面を湿潤する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲の沸点を有する混合物からの、より高沸点成分の膜分離に関する。より詳しくは、本発明は、ガソリンから、または石油ナフサなどの類似の広沸点混合物から、芳香族を分離するための膜およびそのプロセスである。
【背景技術】
【0002】
パーベーパレーションは周知の膜プロセスである。パーベーパレーションは、芳香族を製油所ストリームから回収するものとみなされており、かつそのようにみなされ続けている。多成分流体原料は、選択的溶液−拡散メカニズムに基づいて分離されてもよく、透過液は蒸気として除去される。減圧は、典型的には、膜の透過液側で保持されて、透過が促進される。パーベーパレーションは、吸熱プロセスである。熱入力が、パーベーパレーションプロセスを保持するのに必要とされる。典型的には、パーベーパレーションプロセスへの原料は、原料の選択部分を膜中に効果的に透過させるための選択された温度へ、および原料を液相で保持するのに十分な圧力で予熱される。所望の運転温度および流量は、膜を加熱することによるか、および/または原料を再加熱することによって、保持される。従来の膜分離系における断熱運転は、かなりの温度低下および透過液流量の損失をもたらすことがある。残留液/原料の段間再加熱は、従来、温度を保持するのに用いられる。断熱運転は、非常に望ましく、かなりの温度低下がなければ最も望ましい。
【0003】
ガソリンは、脂肪族および芳香族炭化水素の複合混合物であり、広沸点範囲を有する。芳香族は、ガソリンから、パーベーパレーションによって分離されて、より高オクタン価の燃料が得られてもよい。しかし、市販ガソリンの広沸点範囲、変動する組成および揮発性は、単純なパーベーパレーション膜系による分離を、困難かつ非効率的にする。ガソリンのより低沸点でより低オクタン価の脂肪族成分は、より高沸点でより高オクタン価の芳香族と競争的に透過し、それにより、芳香族分の透過が限定される。脂肪族成分の競争透過はまた、膜の選択性を限定し、それにより、芳香族の選択性が低減される。芳香族透過液の高い収率は、かなりのエネルギーを必要とする。これは、膜系の全体効率を低減する。先行技術の膜系はまた、予備蒸留工程を用いて、より低沸点脂肪族がガソリンから除去され、それにより、芳香族がより高沸点液体に濃縮される。予備分留、多段膜処理、および/または後分留を伴うリサイクルを用いて、これらの課題に対処する複合系は、一般に、効率的な膜系には望ましくない。
【0004】
本発明は、広沸点範囲の原料(例えばガソリンなど)を分離する場合に、パーベーパレーションプロセスのかなりの単純化を可能にする。これらの単純化は、費用、重量容積、および系の複雑性の低減をもたらすことができ、商業的なこの適用を可能にする効率の増大に必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,670,052号明細書
【特許文献2】米国特許出願第 号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
芳香族を、ガソリンカットから、パーベーパレーション膜系を用いることによって分離するための方法は、典型的には、液体原料運転を含む。液体原料方式が、広範囲沸点ストリーム(例えば、市場ガソリン)へ適用される場合には、比較的高度の減圧が、芳香族を透過液に濃縮するのに必要とされる。これは、ガソリンのC沸点成分(典型的には、比較的芳香族が低い)は、膜への背圧が透過速度に対するこれらの化合物の高い蒸気圧の効果を緩和するのに十分に低くない限り、膜を優先的に透過するからである。
【0007】
本発明においては、低沸点脂肪族の競争透過を、殆ど、なくすことができ、芳香族選択性が高められた効果的な性能が、単に中程度の膜背圧で可能にされる。本発明には、混合気/液相状態のガソリンまたはナフサを、制御された蒸発程度で供給する工程、次いで膜モジュールを、実質的に断熱方式で運転する工程が含まれる。これにより、いかなる予備蒸留の必要性もなくなる。蒸気のより重質の芳香族リッチ部分は、優先的に、膜上に凝縮し、芳香族の透過を増大し、蒸気のこの部分の凝縮熱は、透過液を、膜の背面で蒸発するのに必要とされる熱を提供する。芳香族が、膜を透過する(膜に接触する液体の芳香族濃度が減少される)際には、それらは、原料の蒸気部分に含まれるより高沸点芳香族が、継続して、優先的に凝縮することによって補充される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の簡単な実施形態を示す。
【図2】混合気−液原料を用いる改良膜分離に用いられる装置の概略図を示す。
【図3】混合気−液原料を用いる改良膜分離のための他の装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
芳香族を、ガソリン、または類似の広沸点混合物(石油ナフサなど)から分離することは、混合相気−液原料を用いるパーベーパレーション膜プロセスによって向上される。原料の蒸発程度は、下記に詳述されるように制御される。その結果、透過液の芳香族選択性が増大される。芳香族のより高い透過液収率はまた、断熱運転において可能にされる。単純化された系形態が、本発明を用いて可能にされる。
【0010】
ガソリン原料の部分蒸発により、原料のより高沸点留分が濃縮される(芳香族成分が、液体留分中にリッチである)。この液相による膜表面の優先的な湿潤は、膜に接触するより高い芳香族濃度をもたらし、それにより、全沸点範囲ガソリンを液体として処理することに比較した場合に、流速および選択性が向上される。ガソリンのより低沸点脂肪族成分は、優先的に気相中に残存し、それにより、膜を通る競争的透過が低減される。
【0011】
更に、パーベーパレーション膜分離プロセスの断熱運転は、混合相気−液原料を用いることによって向上される。気相の連続的な凝縮は、熱を膜へ与え、それにより、吸熱パーベーパレーションプロセスに起因する膜の温度変化が最小にされる。実質的な透過液収率の増加が、混合相原料を用いる近断熱運転により可能にされる。続いて、必要とされる膜面積が、低減されることができる。混合相気/液原料のパーベーパレーションは、プロセス方式のかなりの単純化を可能にする。即ち、原料中のより低沸点成分の予備蒸留が、付随するポンプおよび制御装置と共に、回避されることができる。パーベーパレーション温度を保持するための段間および/または内部熱交換器は、減らされるか、または省略されることができる。
【0012】
図1を参照すると、本発明の膜分離系の非常に単純化された概略図が示される。原料タンクは、膜分離のためのものである広沸点範囲物質(1)を含む。例えば、従来のガソリンまたはナフサなどである。ガソリンまたはナフサに関する用語「広沸点範囲」は、ASTM方法D86−05によって決定される初留点〜終点が、約50℃超、好ましくは150℃超の沸点範囲を意味する。ガソリン沸点範囲30℃〜200℃は、典型的には、ASTM方法D86−05を基準にしている。芳香族成分は、約80℃超で沸騰する留分に見出される。ポンプ手段(2)は、原料物質を、膜装置(5)へ供給し、および加圧するのに用いられる。所望の原料速度は、流量制御バルブ(3)によって制御される。所望の原料圧力は、残留液(7)に作用する背圧調整手段(8)によって制御される。これは、原料の組成および膜の所望運転温度に基づいて選択される。加熱器手段(4)は、膜装置(5)への原料の温度を制御するのに用いられる。好ましい実施形態においては、原料圧力Pおよび膜温度Tは、最適の気液混合物を膜へ提供するように制御される。最適とは、原料中の芳香族成分が、膜の少なくとも一部に接触する液体部分中に凝縮される気液混合物を意味する。逆に、より低沸点脂肪族は、蒸気中に濃縮される。好ましい実施形態においては、膜へ供給される気液混合物の液体部分中の芳香族は、約10%超、より好ましくは約25%超、最も好ましくは約50%超だけ濃縮される。その最終結果は、好ましい透過液を構成する原料の成分にリッチである液体層を、膜上に凝縮し、一方残りの原料が蒸気状態で保持されることである。用語「好ましい透過液」は、本発明の使用者が、透過液として原料から分離することを望む原料成分を意味する。用語「好ましい残留液」は、本発明の使用者が、残留液として分離することを望む原料成分(分離膜において液体形態である場合には、好ましい透過液と競争するであろう)を意味する。この実施形態においては、好ましい残留液は、原料の脂肪族成分(好ましい透過液より低い沸点範囲を有する)を含む。
【0013】
原料物質は、液体(1a)および蒸気(1b)の、2つの原料状態を保持するように、一部が蒸発される。用語「一部が蒸発される」は、段落[0012]に記載されるように、最適の気液混合物を膜へ提供するのに十分な蒸発が存在することを意味する。図面に示されるように、液体(1a)は、パーベーパレーション膜(5a)に接触し、それを湿潤する。先に記載されるように、液体(1a)は、(原料に比較して)増大された含有量の好ましい透過液を有し、一方蒸気(1b)相は、増大された含有量の好ましい残留液を有する。
【0014】
パーベーパレーション膜(5a)は、選択膜であり、好ましい透過液を優先的に透過するように選択される。原料(1)が、例えばガソリンまたはナフサを含み、好ましい透過液が、芳香族リッチの炭化水素である好ましい実施形態においては、パーベーパレーション膜(5a)は、特許文献1に記載されるものなどの芳香族選択膜である。選択パーベーパレーション膜(5a)には、Gortex(登録商標)などの物理的多孔質の支持手段(図示せず)が含まれてもよい。これは、選択パーベーパレーション膜(5a)の物理的支持体を、本明細書で記載される温度、圧力、および物質の条件下で提供することができる。別の支持体には、焼結金属またはセラミック多孔質媒体が含まれる。好ましい支持手段には、同時係属中の出願(特許文献2)に記載されるものなどの非対称多孔質媒体(微孔性表面物質を有する多孔質セラミックチューブまたはモノリスなど)が含まれる。
【0015】
好ましい実施形態においては、選択パーベーパレーション膜(5a)は、架橋ポリイミド−ポリアジペート膜ポリマーが、多孔質セラミック支持手段上に支持されてなる。
【0016】
本発明の特徴は、パーベーパレーション膜(5a)の実質的な断熱運転である。パーベーパレーションプロセスは、吸熱性である。先に記載されるように、原料物質は、一部が蒸発されて保持される。気相原料のより高沸点成分を、パーベーパレーション膜上に連続的に凝縮させることにより、熱が膜へ供給され、吸熱パーベーパレーションプロセスへ失われた熱が補われる。
【0017】
本発明の更に他の特徴は、分離膜(5a)に接触する液体層(1a)である。膜温度Tおよび膜原料側の圧力Pは、好ましい透過液リッチの凝縮液の比較的薄い層を、膜表面に凝縮するように保持される。いかなる特定の理論にも束縛されるものでないものの、好ましい実施形態においては、液体層(1a)は、比較的薄い層として保持されて、蒸気、液体、および膜の間の熱的および組成的な平衡の両者を達成し、保持することが促進される。原料が従来のガソリンまたはナフサを含み、好ましい透過液が原料の芳香族成分である実施形態においては、液体層は、TおよびPを制御することによって保持されて、芳香族リッチ成分の凝縮速度は、これらの成分の透過速度にほぼ等しくなる。
【0018】
好ましい透過液を増大された濃度で有する透過液(6)は、ポンプ手段(9)によって示される従来の手段によって、凝縮および収集される。
【0019】
残留液(7)は、従来の手段によって収集される。
【0020】
次に示される実施例は、本発明の主題を示し、かつ例示する。
【実施例】
【0021】
実施例1
パーベーパレーション膜
特許文献1に記載されるタイプの芳香族選択膜を、芳香族をガソリンから、透過液に濃縮するのに用いた。用いられたポリイミド−ポリアジペート膜を、ジエポキシドシクロオクタン(DECO)と架橋した。ポリイミド硬質部分は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)および4,4’−メチレンビス(2−クロロアニリン)(MOCA)を含む。軟質部分ポリアジペートは、分子量約2000を有した。
【0022】
PEI−DECOポリマーを、多孔度0.1ミクロンのGortex基体上に、厚さ約40ミクロンに被覆した。ポリマーフィルムを、多孔度0.05ミクロンのGortex上重ね層の更なる層によって保護し、それにより、全膜厚約150ミクロンを有するサンドイッチ構造がもたらされた。それぞれ活性表面積0.9mのスパイラル形膜要素を、被覆シートから製作し、実施例3および4に記載される分離に用いた。
【0023】
内部加熱を有する平板枠(ウェーハカセット)モジュールの設計をまた、実施例に記載されるように用いた。ポリマーの被覆厚は、7ミクロンであった。二枚のシートを、前後に、互いに層状に重ねた。名目全PEI−DECOポリマー厚は、14ミクロンであった。続いて、多孔度0.05ミクロンのGortex上重ね層を加えた。数枚のシートを、平坦に用い、バイトンのO−リングを用いて密封して、表面積0.2mが得られた。
【0024】
実施例2
この実施例で用いられた装置の概略プロセス図式を図2に示す。従来のガソリン原料(20)を、ポンプ(21)によって加圧して、所望の原料圧力が得られた。原料流量を、質量流量制御バルブ(22)によって制御した。原料を、熱交換器(23)により、循環する高温エチレングリコール−水混合物(この実施例においては、120℃で保持される)に対して接触させることによって、所望温度へ加熱した。別には、シリコーン油浴を用いて、ガソリン原料の温度約160℃以下が得られた。予熱された原料は、膜モジュール(24)に送られた際には、実質的に蒸気である。膜に対する背圧を、残留液ストリーム(28)に対して作動する圧力制御装置(25)により制御し、それにより、所望の運転圧力Pが提供された。透過液(26)を、減圧ポンプ(32)によって与えられる減圧下に回収した。透過液蒸気を、熱交換器(27)により、約30℃へ冷却した。「重質」の透過液凝縮液(26a)を、気−液減圧セパレーター(30)により、残りの透過液蒸気(26b)から分離し、液体ポンプ(29)により回収し、次いでガソリンタンク(31)に貯蔵した。これは、この実施例においては、高オクタン価燃料タンクである。残りの透過液蒸気(26b)を、減圧ポンプ(32)によって圧縮し、熱交換器(33)によって約30℃へ冷却して、更なる「軽質」の液体透過液(26c)が、減圧排気から得られた。別に、全透過液(26)を、熱交換器(27)によって冷却し、減圧ポンプ(32)によって圧縮して、高オクタン価燃料が得られた。高温の残留液(28)を、強制エアーフィン熱交換器(37)により、周囲温度約20℃へ冷却し、タンク(39)に貯蔵した。これは、この実施例においては、低オクタン価ガソリンタンクとして供する。いくつかの実施例においては、高温の残留液(28)の一部を、ポンプ(36)によりリサイクルして、熱交換器(23)による加熱の前に、膜原料(20)と混合した。
【0025】
実施例3
この実施形態については、ポリマー被覆セラミックモノリスを、次のように構成した。即ち、
ポリ(エチレンジアジペート)「PEA」、ピロメリット酸二無水物「PMOA」、4,4’−メチレンビス(2クロロアニリン)、および1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン「DECO」の溶液を、DMFおよびアセトンの等量と混合して、約2.0wt%のポリマー溶液がもたらされた。成分の最終モル比は、名目、1−PEA2000/2−PMDA/1−MOCA/2−DECOであった。溶液を、DECOを加えた後、室温以下に保持した。溶液を用いて、多孔質セラミックモノリスが、液体ポリマーをモノリスの多孔質表面に引入れることによって被覆された。被覆されたモノリスは、特許文献1に記載される組成物のポリマーフィルムを、多孔質モノリスの表面(内部表面を含む)上に形成し、ボイドおよび孔を実質的に含まないポリマー被覆を形成し、表面積約0.1mを有するようにもたらされた。
【0026】
膜を、図2に表される概略のプロセスおよび装置で用いた。日本のレギュラー無鉛冬型ガソリンを含む従来のガソリンを、原料(21)として用いた。原料ガソリンを試験して、そのオクタン価および組成が決定された。これは、RON約90.3、芳香族約33.9wt%、およびC軽質脂肪族炭化水素約23.1wt%を有した。図2に示されるプロセスを、2組の条件下で運転し、第1に膜系への液相原料が製造され、第2に本発明の混合液/気原料が製造された。液相原料の状態を、膜原料圧力P約960kPa(絶対圧)、および膜出口圧力約950kPa(絶対圧)で運転することによって得た。膜原料温度を、約140℃で保持した。これらの圧力は、実質的に、140℃において、ガソリン原料の気泡点圧力超である。それにより、膜原料は、液体状態で保持される。
【0027】
同じ装置を、第2の組のプロセス条件下で用いて、混合液/気相原料が製造された。従って、膜入口圧力を、制御バルブ(22)の後で測定されて、約465kPa(絶対圧)に保持し、膜出口圧力を、背圧制御装置(25)で測定されて、約445kPa(絶対圧)で保持した。膜原料温度を、熱交換機(23)の後の膜要素への入口分配装置で測定されて、約140℃に保持した。これらの条件下では、膜への原料は、液体約45wt%および蒸気55wt%であると推定された。出口温度を、膜要素を出る残留液ストリームで測定した。液相の場合および混合液/気の場合の両者においては、減圧を、排出ポンプ(32)により、冷却された透過液に対して保持した。次の表1には、透過液速度、透過液オクタン価、透過液密度、透過液芳香族、および透過液脂肪族が、液体および混合液/気原料の両者に対して比較される。液相条件を用いる運転により、透過液速度0.11g/sがもたらされた。パーベーパレーションプロセスの結果として生じる断熱温度低下は、21℃であった。透過液の凝縮およびその圧送によって得られた透過液圧力は、40.7kPaであった。液相原料で得られた透過液は、増大された芳香族含有量を有したが、C軽質炭化水素の含有量の実質的な増大も有した。軽質炭化水素は、より高い蒸気圧の透過液を、従ってより高い透過液圧力をもたらした。排出ポンプ(32)を用いる効果は、透過液圧力が、透過液ストリームを制御することによって影響を及ばされ、使用者によって独立に設定されないことであることに留意されたい。オクタン価は、増大された芳香族含有量に対応して増大した。
【0028】
本発明による膜への混合相液/気原料は、向上された膜分離性能をもたらした。透過液速度は、0.17g/sへ増大した。断熱温度低下は、11℃未満であった。膜原料通路における蒸気凝縮の結果は、断熱パーベーパレーションプロセスに伴う熱損失にバランスした。減圧は、23kPaの透過液圧力、および対応する透過液における揮発性C炭化水素の減少と共に向上された。透過液の芳香族含有量は、実質的に52.5%へ増大した。透過液のオクタン価は、増大された芳香族含有量および低減されたC含有量に対応して、97.8RONへ増大した。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例4
図2に示される本発明の実施形態は、図3に示されるように、2段膜系へ拡大されてもよい。
【0031】
実施例2に類似して、従来のガソリン40を、ポンプ(41)によって加圧して、所望の原料圧力を得た。原料流量を、質量制御バルブ(図示せず)によって制御した。原料を、熱交換器(43a)によって所望温度へ加熱した。予熱された原料は、第1の膜モジュール(44a)へ送られる際には、実質的に蒸気である。原料の圧力Pおよび温度Tを、推定最適気−液混合物を膜へ提供するように保持した。それにより、液体の比較的薄い層が、膜と接触して保持され、膜が、芳香族リッチの液体と接触される。温度Tおよび圧力Pは、芳香族リッチの原料成分の凝縮速度が、これらの成分の透過速度に略等しいように、制御される。
【0032】
第1の膜モジュール(44a)からの残留液(45)は、熱交換器(43b)によって再加熱され、第2の膜モジュール(44b)へ供給される。これは、第1の膜モジュール(44a)に対して記載されると実質的に同じように運転される。第1および第2の膜モジュールからの芳香族リッチ透過液(46a)および(46b)は、集められ、熱交換器(47)によって冷却され、セパレーター手段(50)によって分離され、高RONタンク(51)に貯蔵される。第2の膜モジュール(46b)からの残留液(49)は、熱交換器(57)によって冷却されて低RONタンク(59)に貯蔵されるか、または新鮮な原料(40)を補充するのにリサイクルされるかのいずれかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族および非芳香族を含み、かつ沸点範囲少なくとも50℃を有する原料ストリームから、前記芳香族を、膜を通して前記芳香族を選択透過することによって分離する方法であって、混合相気−液原料を膜へ供給する工程を含み、前記液相は、優先的に前記膜の表面を湿潤することを特徴とする芳香族の分離方法。
【請求項2】
原料圧力Pおよび原料温度Tは、液体層を前記膜上に凝縮し、前記液体層が前記原料ストリームより少なくとも10%高い芳香族濃度を有するように、選択的に制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記芳香族濃度は、前記原料ストリームより少なくとも25%高いことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記芳香族濃度は、前記原料ストリームより少なくとも50%高いことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
断熱的に行われることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
気相を凝縮することによって熱を提供することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記原料ストリームは、ガソリンまたは石油ナフサであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記膜は、ポリエステルイミドコポリマー膜、ポリウレタンイミド膜、ポリイミド/脂肪族ポリエステルコポリマー膜、ジエポキシオクタン架橋/エステル化ポリイミド/ポリアジペートコポリマー膜またはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーまたはコポリマー膜は、多孔質基体によって支持されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基体は、Gortex(登録商標)を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基体は、多孔質セラミックであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記基体は、多孔質セラミックを含み、前記膜は、前記セラミックの少なくとも一部を被覆する架橋ポリイミド−ポリアジペートポリマーであることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−514543(P2010−514543A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519561(P2009−519561)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/016061
【国際公開番号】WO2008/008533
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】