説明

混合装置

【課題】複数の物質を混合しつつ、流体の全体的、局所的な温度上昇の防止、流体の粘度上昇の防止、又は所定の温度までの加温を行なうことができ、かつ均一に撹拌されたものを供給できる混合装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る混合装置は、複数の種類の物質であって、そのうちの少なくとも1種類は液体である物質が導入される混合槽1と、上記物質を混合槽1内にある状態で冷却する冷却チューブ5、又は上記物質を混合槽1内にある状態で加温する加温手段と、混合槽1内の流体を撹拌する撹拌部2とを備えており、撹拌部2は、混合槽1内の流体を撹拌するインペラ2aと、インペラ2aを回転させるモータ2bとにより構成され、モータ2bは、インペラ2aを混合槽1の壁に対して非接触に回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造などに用いられる薬液などの物質は、安定した製品を製造し、生産性を向上させるために、予め所望の温度に調節されることが好ましい。
【0003】
薬液の温度を調節する方法として、特許文献1には、薬液を予め使用される温度に調節した後に薬液処理工程に供給する、半導体製造用薬液の供給方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−183123号公報(1987年8月11日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
種々の製造工程に用いる物質の混合液を調製する際、物質の種類によっては発熱を伴うことがある。発熱によって、混合流体の温度が上昇して装置の耐熱温度をオーバーしてしまったり、混合流体中の成分が不要な反応を助長されて目的の濃度に達しなかったりするという問題が生じる。また、発熱を伴う物質を導入する際に、局所的な温度上昇が起こることにより、混合流体中の成分の不要な反応をさらに助長するおそれもある。したがって、これらの問題を排除するために、混合流体の全体的、局所的な温度上昇を防止する必要があるが、引用文献1には、このような温度上昇を防止するための方法について全く記載されていない。
【0006】
また、物質の混合流体を調製する際には、混合により粘度が上昇してしまうので加温して粘度の上昇を防止する必要がある場合がある。さらに、所定の温度まで加温した状態の混合流体を次工程に供給しなければならない場合もある。したがって、これらの場合に対応する必要がある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の物質を混合しつつ、流体の全体的、局所的な温度上昇の防止、流体の粘度上昇の防止、又は所定の温度までの加温を行なうことができ、かつ均一に撹拌されたものを供給できる混合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る混合装置は、複数の種類の物質であって、そのうちの少なくとも1種類は液体である物質が導入される容器と、上記物質を上記容器内にある状態で冷却する冷却手段、又は上記物質を上記容器内にある状態で加温する加温手段と、上記容器内の流体を撹拌する撹拌手段とを備えており、上記撹拌手段は、上記容器内の流体を撹拌する回転部と、上記回転部を回転させる回転駆動手段とにより構成され、上記回転駆動手段は、上記回転部を上記容器の壁に対して非接触に回転させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る混合装置では、上記回転駆動手段は、磁気力により上記回転部を上記容器の壁に対して非接触に保持することが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る混合装置では、上記撹拌手段は磁気浮上ポンプであることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る混合装置では、上記容器内の流体の温度を測定する温度計をさらに備えていることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る混合装置では、上記容器内の流体における上記物質中の予め設定した成分の濃度を測定する濃度計をさらに備えていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る混合装置では、上記複数の種類の物質は、第1の物質及び第2の物質であり、上記濃度計は、上記容器内の流体における上記第1の物質中の予め設定した成分の濃度を測定するものであり、上記容器に導入される上記第1の物質の量を調節する第1の調節手段と、上記容器に導入される上記第2の物質の量を調節する第2の調節手段と、上記濃度計における測定値を受信し、上記測定値および予め入力された所望の濃度に基づいて、上記測定値を上記所望の濃度に近づけるように上記第1の調節手段及び上記第2の調節手段を制御する制御手段と、をさらに備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る混合装置は、以上のように、複数の種類の物質であって、そのうちの少なくとも1種類は液体である物質が導入される容器と、上記物質を上記容器内にある状態で冷却する冷却手段、又は上記物質を上記容器内にある状態で加温する加温手段と、上記容器内の流体を撹拌する撹拌手段とを備えており、上記撹拌手段は、上記容器内の流体を撹拌する回転部と、上記回転部を回転させる回転駆動手段とにより構成され、上記回転駆動手段は、上記回転部を上記容器の壁に対して非接触に回転させるので、複数の物質を混合しつつ、流体の全体的、局所的な温度上昇の防止、流体の粘度上昇の防止、又は所定の温度までの加温を行なうことができ、かつ均一に撹拌されたものを供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態における混合装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図1を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態における混合装置100の構成を模式的に示す図である。
【0017】
混合装置100は、物質を混合して混合流体を調製するための装置である。なお、本明細書において「物質」とは、混合して混合流体を調製するための物質であり、液体であっても固体であってもよい。液体としては、例えば硫酸などの薬液、複数の薬液を含む混酸、薬液を希釈するため、あるいは固体を懸濁するための水などを含む。また、固体としては、粒状、粉状などの固形物が挙げられる。また、「混合流体」とは、複数の液体を混合した混合液、液体と固体とを混合した混合物等の流体などを含む。混合液としては、複数の薬液を混合したもの、薬液と水とを混合した希釈液などを含む。
【0018】
なお、本発明に係る混合装置において混合される「複数の種類の物質」とは、そのうちの少なくとも1種類が液体であればよい。複数の種類の物質の組み合わせは、混合されて流体となる組み合わせであればよい。例えば、2種類以上の液体の組み合わせであってもよいし、1種類以上の液体と1種類以上の固体との組み合わせであってもよい。
【0019】
本発明は、物質を混合して混合流体を調製するいかなる場合にも適用できるが、例えば濃硫酸と水とを混合する場合など、互いを単に混合すると発熱する虞のある複数の種類の物質を混合する場合に好適に適用できる。また、本発明は、例えば半導体、液晶等の製造工程に用いられる物質など、特に不純物の混入が好ましくない物質の混合流体を調製する場合にも、好適に適用できる。また、本発明は、混合すると粘度が上昇する物質の混合流体を調製する場合、所定の温度まで加温した状態の混合流体を次工程に供給する場合にも好適に適用できる。なお、本実施形態では、物質として薬液を用いた場合について説明する。
【0020】
本実施形態の混合装置100は、混合槽1(容器)を備えている。混合槽1は、導入された薬液(物質)を撹拌して混合するための容器であり、例えば互いを単に混合すると発熱する虞のある複数の種類の薬液が導入される。混合槽1では、複数の種類の薬液が撹拌されることにより混合液(混合流体)が調製される。混合槽1には、撹拌部2(撹拌手段)、濃度計3、ロードセル4、冷却チューブ5(冷却手段)、および温度計6が設けられている。
【0021】
撹拌部2は、混合槽1内の液体(流体)を撹拌するものであり、混合槽1と一体化されている。撹拌部2は、混合槽1の下部に設けられたケース内にあるインペラ2a(回転部)と、ケースの下部に設けられたモータ2b(回転駆動手段)とにより構成されている。なお、撹拌部2が設けられる場所は、特に混合槽1の下部に限定されず、混合槽1内の液体に浸る位置であれば、混合槽1の側部等であってもよい。
【0022】
インペラ2aは、ケースの壁、すなわち混合槽1の壁に対して非接触な状態、つまり混合槽1の壁から浮いた状態で回転することにより混合槽1内の液体を撹拌する回転翼である。インペラ2aは、モータ2bにより、非接触において混合槽1の壁から離れた位置に保持され、つまり浮いた状態で保持されるとともに、回転駆動される。インペラ2aが回転することにより、ケース内に混合槽1内の液体が吸引された後排出される。
【0023】
モータ2bは、インペラ2aを混合槽1におけるケーシングの壁に対して非接触にするとともに、非接触において回転させるモータである。モータ2bは混合槽1の壁を介してインペラ2aとは反対側、つまり混合槽1の外側に配置されている。モータ2bは、磁気力(引力)を発生させ、この磁気力によってインペラ2aを持ち上げることによって、混合槽1の壁から浮かせた状態で保持する。また、モータ2bは、回転磁界を発生させ、この回転磁界によってインペラ2aを非接触において回転させる。
【0024】
撹拌部2として、例えば磁気浮上ポンプを用いてもよい。磁気浮上ポンプは、ケース中においてモータ2bが生じる磁気力により浮上したインペラ2aを、モータ2bの回転磁界により内壁に対して非接触に回転させることにより、液体を吸引したり排出したりするポンプである。したがってこのポンプ作用により混合槽1内の液体を撹拌できる。磁気浮上ポンプとしては、例えばLEVITRONIX社製のPTMシリーズの磁気浮上ポンプ等を用いることができる。
【0025】
また、磁気浮上ポンプを用いる場合には、混合槽1におけるケースには、磁気浮上ポンプのポンプ作用によって混合槽1内の液体を外部に排出するための配管が接続されていてもよい。この場合には、当該配管に開閉弁が設けられていることが好ましい。これにより、例えば混合槽1内の液体は、当該開閉弁が閉じているときには、磁気浮上ポンプによりケース内に吸引された後に混合槽1内に排出されて撹拌され、当該開閉弁が開いているときには、磁気浮上ポンプによりケース内に吸引された後に当該配管内に排出されてもよい。
【0026】
なお、本発明における撹拌手段においては、回転部が容器内にあってもよい。この場合には、撹拌手段は、容器内のインペラ等の回転部と、容器の下部に設けられたモータ等の回転駆動手段とにより構成されてもよい。なお、本発明における撹拌手段が設けられる場所は、特に容器の下部に限定されず、容器内の流体に浸る位置であれば、容器の側部等であってもよい。
【0027】
回転部は、容器内に含まれており、容器の内壁に対して非接触な状態、つまり内壁から浮いた状態で回転することにより容器内の流体を撹拌する回転翼であってもよい。回転部は、回転駆動手段により、非接触において容器の内壁から離れた位置に保持され、つまり浮いた状態で保持されるとともに、回転駆動されてもよい。
【0028】
回転駆動手段は、回転部を容器の内壁に対して非接触にするとともに、非接触において回転させるモータであってもよい。回転駆動手段は容器を介して回転部とは反対側、つまり容器の外側に配置されていてもよい。回転駆動手段は、容器の内壁と回転部との間に斥力を発生させ、この斥力によって回転部を容器の内壁から浮かせた状態で保持してもよい。なお、回転部を容器の内壁に対して非接触にするための斥力としては、例えば磁気力、壁面からの流体の噴流等が挙げられる。また、回転駆動手段は、例えば回転磁界を発生させ、この回転磁界によって回転部を非接触において回転させてもよい。
【0029】
本実施形態においては、撹拌部2が混合槽1と一体化されているので、混合槽1内のみで液体を混合させることができる。したがって、例えば混合槽1の外側に、混合槽1内の液体を一旦排出して循環させるための循環配管、ポンプ等を設ける必要がないため、設備をコンパクトにできるとともに、混合槽1内の液体を短時間で混合させることができる。
【0030】
また、インペラ2aは、モータ2bにも混合槽1の壁にも接触せずに回転する。すなわち、インペラ2aを回転させるための軸を混合槽1の壁に貫通させる必要がない。したがって、例えば軸を混合槽の壁に貫通させた場合には、貫通箇所から不純物(金属不純物、パーティクル等)が混入するおそれがあるが、本実施形態においては、このようなおそれを防ぐことができる。また、軸の回転による摩擦によって磨耗した軸、軸周辺の部材等の屑が不純物として混入するおそれをも防ぐことができる。したがって、混合装置100は、例えば半導体製造に用いるための薬液等、不純物の混入が好ましくない薬液の混合液を調製する場合に好適に用いることができる。
【0031】
また、本実施形態であれば、インペラ2aが液体に浸かっている状態であれば撹拌が可能であるため、混合槽1内の液体が少ない場合にも効率よく撹拌することができる。したがって、混合装置100のシステムの設計に余裕を持たせることができる。
【0032】
濃度計3は、混合槽1内の混合液における薬液中の予め設定された成分の濃度を測定する計器である。例えば、当該薬液が希硫酸、濃硫酸等の硫酸の水溶液であるとき、当該予め設定された成分は硫酸である。濃度計3としては、例えば導電率式、超音波式、屈折率式のもの等を用いることができる。濃度計3により、混合槽1内の上記成分の濃度を確認できるので、これに基づいて濃度の補正を行なうことが可能となる。なお、本実施形態においては、後述するプログラマブルコントローラ7(制御手段)により濃度の補正を行っているが、濃度の補正は手動で行ってもよい。このように濃度の補正を行なうことにより、混合液の調製を正確に行なうことができる。
【0033】
なお、濃度計3は、混合槽1に、例えば直付け等により直接設けられていることが好ましい。これにより、混合槽1のみで濃度の確認ができるとともに、設備がよりコンパクトになる。
【0034】
ロードセル4は、混合槽1に取り付けられ、混合槽1内の総重量を測定する計器である。ロードセル4が設けられることによって、混合槽1に導入される薬液の量を把握することができ、また、混合槽1内の総重量の管理が可能となる。なお、ロードセルに限らず、液面計、流量計等を用いてもよい。
【0035】
本実施形態においては、混合槽1内の液体を外部に一旦排出させないため、混合槽1内の液体の総重量が変化しない。したがって、混合槽1に取り付けられたロードセル4によって、混合槽1内の総重量を正確に計量しながら薬液の導入を行なうことができる。これにより、薬液の導入量と、混合槽1内の総重量とを好適に管理することができる。また、計量のための別のタンク等を設置する必要がないため、装置をよりコンパクトにできるとともに、設備費を削減することができる。また、混合装置100の設置面積を少なくすることができる。
【0036】
冷却チューブ5は、混合槽1内に設置され、混合槽1内の液体を直接冷却するためのチューブである。冷却チューブ5内には、タンク11から冷却水等の冷媒が導入され、タンク12に排出される。また、タンク11と冷却チューブ5との間の配管には、調節弁23が設けられており、その開閉によって、冷却チューブ5への冷媒の通液開始または停止、冷却チューブ5内の冷媒の通液量等が調節される。これにより、冷却チューブ5の外側の液体を冷却することができる。
【0037】
なお、本発明の冷却手段は、容器内の物質を容器内にある状態で冷却するものであればよく、容器内に設けられていてもよいし、容器の外側に設けられていてもよい。すなわち、冷却手段は、容器内において物質を直接的に冷却するものであってもよいし、容器の外側から容器内の物質を冷却するものであってもよい。例えば、冷却手段は、上述した冷却チューブ5に限らずジャケット式、コイル式、電子クーラーなどの熱交換器等であってもよい。
【0038】
本実施形態では、冷却チューブ5が混合槽1内の液体を混合槽1内にある状態で直接的に冷却するので、例えば混合槽1の外部に、混合槽1内の液体を一旦排出して冷却するための循環配管、ポンプ、冷却器等を設ける必要がないため、装置をよりコンパクトにすることができる。
【0039】
したがって、本実施形態では、混合槽1と一体化されている撹拌部2と、混合槽1内の液体を混合槽1内にある状態で冷却する冷却チューブ5とを備えているため、上述したように混合槽1内の液体を一旦排出してから混合槽1内に戻すための循環配管等を設ける必要がない。そのため、例えば、混合流体が沈降性のある成分を含む場合があるが、この場合にも、沈降性のある成分が循環配管内において沈降してしまうという問題を回避できるので、この成分の沈降及び再浮上による品質トラブルを避けることができる。
【0040】
本実施形態においては、上述した構成により、混合槽1内の液体を撹拌部2により撹拌させながら冷却チューブ5により冷却するので、混合槽1内の液体を全体的に効率よく冷却させることができる。また、混合の際に発熱を伴う薬液を混合槽1内に導入する際、又は薬液の撹拌もしくは次工程の装置への混合液の供給などに用いるポンプの駆動エネルギーの一部が熱として混合液に加わった際などに、撹拌部2及び冷却チューブ5により撹拌及び冷却を同時に行なうことによって、局所的な温度上昇を抑制できるとともに、混合槽1内全体の温度上昇をも抑えることができる。さらに、局所的な温度上昇による、混合液中の成分の不要な反応を抑えることができる。
【0041】
したがって、本実施形態では、複数の薬液を混合しつつ、混合槽1内の液体の全体的、局所的な温度上昇を効率よく防止できる。
【0042】
なお、本発明においては、冷却手段の代わりに、容器内の物質を加温する加温手段を備えていてもよい。加温手段としては、熱媒を流すチューブ、ヒーター等が挙げられる。加温手段は、容器内の物質を容器内にある状態で冷却又は加温するものであればよく、容器内に設置され、容器内の物質を直接加温するものであってもよいし、容器の外側に設けられ、容器内の液体を外側から加温するものであってもよい。また、本発明に係る混合装置は、冷却手段および加温手段の両方を備えていてもよい。
【0043】
加温手段を備えることにより、容器内の物質を加温することができるので、例えば混合により粘度が上昇してしまう場合には、加温することによってこの粘度上昇を防止することができる。また、加温手段により、例えば所定の温度まで加温した状態の混合流体を用意し、次工程等に供給することができる。
【0044】
温度計6は、混合槽1内の液体の温度を測定する計器である。温度計6により、混合槽1内の温度を確認できるので、これに基づいて温度の制御を行なうことが可能となる。なお、本実施形態においては、後述するプログラマブルコントローラ7により温度の制御を行っているが、温度の制御は手動で行ってもよい。このように温度の制御を行なうことにより、混合液の温度を所定の温度に調節したり、上限温度を越えないようにしたりすることができる。
【0045】
なお、温度計6は、混合槽1に、例えば直付け等により直接設けられていることが好ましい。これにより、混合槽1のみで温度の確認ができるとともに、設備がよりコンパクトになる。
【0046】
混合槽1には、薬液槽13、14が配管を介して接続されている。薬液槽13、14は、それぞれ、混合槽1に導入されて混合されるための薬液が貯められる槽である。薬液槽13、14と、混合槽1とを接続する配管には、それぞれ調節弁21(第1の調節手段)及び調節弁22(第2の調節手段)が設けられている。調節弁21、22は、その開閉によって、混合槽1に導入される各薬液の量を調節する。なお、ここでは薬液槽を2つ設けた例について説明するが、薬液槽の数は特に限定されず、3つ以上であってもよい。薬液槽の数は、混合槽1に導入される薬液の数に応じて設定され得る。
【0047】
プログラマブルコントローラ7は、混合槽1内の温度、及び薬液中の予め設定された成分の濃度を制御する制御装置であり、信号線を介して濃度計3、ロードセル4、温度計6、調節弁21、22、23に接続されている。信号線は、図1において点線で示されている。
【0048】
プログラマブルコントローラ7は、予め入力された温度と、温度計6における測定値とに基づいて、調節弁21、22、23の開閉、およびモータ2b等を制御する。
【0049】
プログラマブルコントローラ7は、例えば、混合装置100を用いて混合して得られる混合液を、予め設定された所望の温度に調節してもよい。「所望の温度」とは、混合装置100を用いて混合して得られる混合液の所望の温度である。この場合には、例えばプログラマブルコントローラ7は、予め入力された当該所望の温度と、温度計6における測定値とに基づいて、該測定値を該所望の温度に近づけるように調節弁21、22、23の開閉、およびモータ2b等を制御する。
【0050】
また、プログラマブルコントローラ7は、例えば混合装置100を用いて混合して得られる混合液が、予め設定された上限温度を超えないように制御してもよい。この場合には、例えば、プログラマブルコントローラ7は、予め入力された当該上限温度と、温度計6における測定値とに基づいて、該測定値が該上限温度を超えないように調節弁21、22、23の開閉、およびモータ2b等を制御する。
【0051】
例えば、プログラマブルコントローラ7は、調節弁21、22の開閉を制御することにより、混合液の温度を調節する。調節弁21、22の開閉により、薬液の投入速度を調節することができる。例えば、発熱を伴う薬液の投入速度を遅くしたり、薬液の投入を中断したりすることにより、混合による発熱を抑えることができる。
【0052】
また、例えば、プログラマブルコントローラ7は、調節弁23の開閉を制御することによって、混合液の温度を調節する。調節弁23の開閉により、冷媒の通液を開始または停止させたり、冷媒の通液量を調節したりすることができる。また、冷媒の通液量を調節することにより、冷却チューブ5内の冷媒の温度を調節することができる。これにより、冷却チューブ5による混合液の冷却の効果を調整することができる。
【0053】
なお、加温手段を備える場合には、プログラマブルコントローラ7は、加温手段を制御することにより、混合液の温度を調節してもよい。加温手段が熱媒を流すチューブであれば、その熱媒の通液を開始または停止させたり、熱媒の通液量を調節したりしてもよい。また、加温手段がヒーターであれば、その出力量を調節してもよい。これにより、加温手段による混合液の加温の効率を上げることができる。
【0054】
また、プログラマブルコントローラ7は、例えば温度計6における測定値が混合液の所望の温度に達したときには、すなわち冷却または加温の完了を確認したときには、冷却手段、加温手段等を停止させるように制御してもよい。具体的には、冷却チューブ5内の冷媒、または加温手段における熱媒等の流れを停止させたり、加温手段としてのヒーターの出力を停止させたりしてもよい。
【0055】
また、例えば、プログラマブルコントローラ7は、モータ2bを制御することにより、混合液の温度を調節する。例えばモータ2bの回転速度を調節することによって混合槽1内の撹拌強度を調節することができ、これにより冷却チューブ5、加温手段等による混合液の冷却、加温等の効果を調整することができる。
【0056】
なお、薬液の投入速度、冷却手段または加温手段における冷媒または熱媒の通液量、冷媒または熱媒の温度、モータの回転速度等は、混合装置100により混合して得られる混合液が、予め設定された所望の温度になるように、または予め設定された上限温度を超えないように、予め設定されてもよい。
【0057】
また、プログラマブルコントローラ7は、予め入力された所望の濃度と、濃度計3及びロードセル4における測定値とに基づいて、調節弁21、22の開閉を制御する。なお、「所望の濃度」とは、混合装置100を用いて混合して得られる混合液における、薬液中の予め設定された成分の所望の濃度である。
【0058】
以下に、プログラマブルコントローラ7により調節弁21、22の開閉を制御する方法の例について説明する。ここでは、薬液槽13に硫酸(第1の物質)が貯められ、薬液槽14に水(第2の物質)が貯められており、混合槽1において硫酸と水とを混合する場合について説明する。プログラマブルコントローラ7には、予め、硫酸の所望の濃度が入力されている。また、濃度計3は、混合槽1内の液体における硫酸の濃度を測定している。
【0059】
プログラマブルコントローラ7は、濃度計3から測定値を受信する。そして、当該測定値と予め入力された硫酸の所望の濃度とに基づいて、該測定値を該所望の濃度に近づけるように調節弁21、22の開閉を制御する。すなわちプログラマブルコントローラ7は、該測定値と、該所望の濃度とを比較し、これらが異なる場合には、該測定値が該所望の濃度に近づくように、混合槽1に導入されるべき硫酸及び水の量を算出する。そして、この算出された量に基づいて、調節弁21、22の開閉を制御するための信号を送信する。
【0060】
また、プログラマブルコントローラ7は、ロードセル4から、混合槽1内の総重量の測定値を受信することにより、硫酸、水などの薬液が実際に導入された量を正確に把握することができる。そして、薬液の導入量が、混合槽1に導入されるべき薬液の量と一致するように、調節弁21、22の開閉を制御するための信号を送信する。
【0061】
調節弁21、22は、プログラマブルコントローラ7からの指示に基づいて開閉することにより、混合槽1に導入される硫酸または水の量を調節する。
【0062】
このように、本実施形態における混合装置100では、プログラマブルコントローラ7が調節弁21、22の開閉を制御することにより、混合槽1内の液体における薬液中の予め設定された成分の濃度が所望の濃度に近づくように補正することができる。また、上述したプログラマブルコントローラ7による制御を繰り返すことにより、混合槽1内の液体における上記成分の濃度が所望の濃度と等しくなるよう補正することも可能である。したがって、正確な成分濃度の混合液を調製することが可能となる。
【0063】
なお、2種類以上の物質を混合する場合に、プログラマブルコントローラ7は、2種類以上の物質中の成分の濃度を同時に補正してもよい。例えば、プログラマブルコントローラ7は、予め入力された2種類以上の成分についての所望の濃度と、濃度計によるそれぞれの濃度の測定値とに基づいて、上述した方法で、2種類以上の上記成分の濃度について同時に補正を行ってもよい。これにより、2種類以上の成分の濃度が正確に調製された混合流体を得ることができる。
【0064】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、複数の物質を混合しつつ、流体の全体的、局所的な温度上昇の防止、流体の粘度上昇の防止、又は所定の温度までの加温を行なうことができ、かつ均一に撹拌されたものを供給できるため、混合の際に発熱を伴う物質の混合、温度上昇により不要な反応を起こす物質の混合、混合により粘度上昇を起こす物質の混合、所定の温度まで加温した状態で供給する必要がある物質の混合、沈降性のある成分を含む混合物の混合などに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 混合槽(容器)
2 撹拌部(撹拌手段)
2a インペラ(回転部)
2b モータ(回転駆動手段)
3 濃度計
4 ロードセル
5 冷却チューブ(冷却手段)
6 温度計
7 プログラマブルコントローラ(制御手段)
13、14 薬液槽
21 調節弁(第1の調節手段)
22 調節弁(第2の調節手段)
23 調節弁
100 混合装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類の物質であって、そのうちの少なくとも1種類は液体である物質が導入される容器と、
上記物質を上記容器内にある状態で冷却する冷却手段、又は上記物質を上記容器内にある状態で加温する加温手段と、
上記容器内の流体を撹拌する撹拌手段とを備えており、
上記撹拌手段は、
上記容器内の流体を撹拌する回転部と、
上記回転部を回転させる回転駆動手段とにより構成され、
上記回転駆動手段は、上記回転部を上記容器の壁に対して非接触に回転させることを特徴とする混合装置。
【請求項2】
上記回転駆動手段は、磁気力により上記回転部を上記容器の壁に対して非接触に保持することを特徴とする請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
上記撹拌手段は磁気浮上ポンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の混合装置。
【請求項4】
上記容器内の流体の温度を測定する温度計をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の混合装置。
【請求項5】
上記容器内の流体における上記物質中の予め設定した成分の濃度を測定する濃度計をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の混合装置。
【請求項6】
上記複数の種類の物質は、第1の物質及び第2の物質であり、
上記濃度計は、上記容器内の流体における上記第1の物質中の予め設定した成分の濃度を測定するものであり、
上記容器に導入される上記第1の物質の量を調節する第1の調節手段と、
上記容器に導入される上記第2の物質の量を調節する第2の調節手段と、
上記濃度計における測定値を受信し、上記測定値および予め入力された所望の濃度に基づいて、上記測定値を上記所望の濃度に近づけるように上記第1の調節手段及び上記第2の調節手段を制御する制御手段と、
をさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載の混合装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−50942(P2011−50942A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118529(P2010−118529)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(390027029)住友ケミカルエンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】