混在した細胞性組成物からの新生物細胞のウイルスクリアランス
【課題】新生物細胞を含む可能性のある自己移植片を清浄化するための、かなりの収率を有する非常に選択的な方法の提供。
【解決手段】新生物細胞の選択的な殺傷を示すウイルスを使用することによって、混在した細胞組成物、例えば自己移植片から新生物細胞を選択的に除去する方法。各種のウイルスが、新生物細胞を選択的に除去するが、正常細胞を除去しないことが可能である。例えば、レオウイルスは、ras-活性化新生物細胞を選択的に殺傷し、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、機能障害性p53を有する新生物細胞に対して選択的であり、いずれかのインターフェロン感受性ウイルスは、破壊されたインターフェロン経路を有する新生物細胞に選択的である。
【解決手段】新生物細胞の選択的な殺傷を示すウイルスを使用することによって、混在した細胞組成物、例えば自己移植片から新生物細胞を選択的に除去する方法。各種のウイルスが、新生物細胞を選択的に除去するが、正常細胞を除去しないことが可能である。例えば、レオウイルスは、ras-活性化新生物細胞を選択的に殺傷し、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、機能障害性p53を有する新生物細胞に対して選択的であり、いずれかのインターフェロン感受性ウイルスは、破壊されたインターフェロン経路を有する新生物細胞に選択的である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連発明
本出願は、35 U.S.C. 119(e)の下で、2000年5月3日に出願された米国予備出願60/201,990、2000年5月19日に出願された60/205,389、2001年2月13日に出願された60/268,054、2001年3月16日に出願された60/276,782の利益を享受する。前述の予備出願のそれぞれの全体の開示は、参考としてここに取り込まれる。
【0002】
本発明は、新生物細胞に選択的に感染しそれを殺傷するウイルスを使用することによる、生きた生物の外側にある混合する細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去する方法に関する。さらに、この方法に従って調製された組成物、及び本発明において有用なウイルスの組み合わせを含むキットが提供される。
【0003】
[参考文献]
【背景技術】
【0004】
細胞増殖は、増殖促進シグナルと増殖抑制シグナルの両者によって調節される。各細胞に対してこれらの2種類のシグナルは、特定の細胞に対する身体の必要性を反映する態様で、通常バランスを与えているであろう。もし細胞が増殖抑制シグナルに応答しない場合、または増殖促進シグナルに過剰応答する場合、その細胞は以上に迅速に増殖し(新生物細胞と称する)、悪性新生物であるガンに段階的に発展するであろう。
【0005】
ガンを治療するために現在行われている方法である化学療法は、ガン細胞の迅速な増殖特性に一般的に基づいている。ガン細胞は迅速に増殖するため、それらは細胞増殖を阻害する薬剤により感受性である。理論的には、化学療法薬の投与量を注意深く選択することによって、正常細胞を重大に損傷することなくガン細胞の増殖を阻害できる。しかしながら、造血幹細胞のようないくつかの正常細胞もまた迅速に増殖する。それ故、ガン細胞に有害なある投与量は、しばしば造血幹細胞にも有害である。他方で、もし投与量がガン細胞を殺傷するのに十分な程高くないと、化学療法が終結した後、ガンが短期間で再発する危険が存在する。
【0006】
選択的にガン細胞を殺傷する投与量を見出すことは困難であるため、高投与量の化学療法、引き続き異種造血始原幹細胞移植は、多くのガンにおける治療アプローチとして過度の適用が実施されている(例えば、Winter, 1999; Nieto及びShpall, 1999参照)。このアプローチでは、造血幹細胞の部分がガン患者から除去されて、次いで患者は、ガン細胞と造血幹細胞のような迅速に増殖する細胞に対して致死的な高投与量化学療法で治療される。その後患者は、同じ患者から以前に除去された自己造血幹細胞の移植を受け、造血系が再生する。
【0007】
この治療の重大な欠点は、造血始原幹細胞が患者から除去される場合、それらにしばしばガン細胞が混在している点である。これは特に、患者が造血系起源のガンを有する場合に問題であるが、特にもし固形腫瘍が転移したならば、固形腫瘍を有する患者でも、造血幹細胞の混在に苦しむ可能性がある。結果として、除去された細胞が戻されて移植され、造血系を再生する場合に、あるガン細胞がガン患者に戻されて配置され、その場合にそのガンが再び増殖して、ガンの再発に寄与する可能性がある。それ故、移植前の自己移植片を清浄化することが望ましい。
【0008】
自己移植片を清浄化するためにいくつかの方法が利用されている(Spyridonidis等, 1998;Bensinger, 1998)。自己移植片を化学療法で処理し、in vitroで混在した新生物細胞を殺傷できる。しかしながら、前述のように、新生物細胞またはガン細胞を選択的に殺傷するが、清浄な造血幹細胞を完全なままにする化学療法薬の投与量を見出すことは困難である。自己移植片はまた、新生物細胞に特異的である抗原を認識する抗体に接合された毒素で治療することもできるが、そのような腫瘍特異的抗原がいつも存在するとは限らない。フローサイトメトリー、アフィニティーカラム、または磁性ビーズを使用することによって、幹細胞特異的表面マーカー(CD34)に基づいて、幹細胞を他の細胞から分離することも可能である。しかしながら、特定の造血細胞、例えばCD34+細胞のみを選択することによって、T細胞、B細胞、単球、及びナチュラルキラー細胞のような他の造血細胞もまた除去され、免疫回復が遅延する可能性がある(Bensinger, 1998)。この方法はまた、CD34+細胞の約半分の損失と、混在したガン細胞のある部分の維持を引き起こす(Spyridonidis, 1998)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、新生物細胞を含む可能性のある自己移植片を清浄化するための、かなりの収率を有する非常に選択的な方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、新生物細胞の選択的な殺傷を示すウイルスを使用することによって、混在した細胞組成物、例えば自己移植片から新生物細胞を選択的に除去する方法に関する。各種のウイルスが、新生物細胞を選択的に除去するが、正常細胞を除去しないことが可能である。例えば、レオウイルスは、ras-活性化新生物細胞を選択的に殺傷し、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、機能障害性p53を有する新生物細胞に対して選択的であり、いずれかのインターフェロン感受性ウイルスは、破壊されたインターフェロン経路を有する新生物細胞に選択的である。
【0011】
従って、本発明の一つの特徴点は、生きた生物の外側に配置された、新生物細胞を含む疑いのある混在した細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去する方法に関し、この方法は、(a)新生物細胞の実質的な殺傷を引き起こす条件下で、ウイルスと混在した細胞性組成物を接触させる工程;(b)処理された細胞性組成物を回収する工程を含む。
【0012】
本発明の別の実施態様では、この方法は、DMSOを含む溶液において、ウイルス処理された細胞性組成物を凍結して貯蔵する工程をさらに含む。DMSOは、動物細胞を凍結して貯蔵するために一般的に使用されているが、ウイルスを変性できる。それ故DMSO処理は、細胞性組成物から感染性ウイルスを除去する一方で、長期的な凍結状態で組成物の活性を保存する。
【0013】
本発明の別の実施態様では、特定のウイルスに特異的である抗ウイルス抗体の混合物、または抗ウイルス抗体とウイルスを溶解するための補体の組み合わせで処理することによって、ウイルス処理された細胞性組成物からウイルスが除去される。別法としてまたは加えて、ウイルス粒子の表面の分子を認識する抗ウイルス抗体が、抗体を固定化することによってウイルス粒子を除去するために使用されても良く、その場合細胞性組成物を固定化抗体に適用し、抗体に結合しない組成物の部分を回収しても良い。
【0014】
同様に、特定のウイルスに対して特異的な抗体を、in vivoでウイルスを除去するために移植受容者に投与することができ、または受容者に免疫系刺激物を与えてこの目的を達成できる。
【0015】
本発明の別の実施態様は、細胞からウイルスを分離できる勾配を使用することによって、ウイルスで処理された細胞性組成物からウイルスを除去する。
【0016】
本発明の好ましい実施態様では、混在した細胞性組成物は造血幹細胞を含む。かくして造血幹細胞は、移植またはいずれかの他の所望の使用の前に、新生物細胞を除去するように清浄化できる。造血幹細胞は、骨髄または血液から収集できる。
【0017】
本発明の応用は、造血幹細胞の清浄化に制限されない。本発明の別の実施態様では、本発明の方法は、新生物細胞を除去するために、いずれかの組織、器官、異なる組織/器官の組み合わせ、または組織若しくは器官のいずれかの部分に適用できる。前記組織または器官は好ましくはその後の移植に有用である。しかしながら本発明の方法は、組織または器官に存在する新生物細胞を除去することが所望されるいずれかの他の目的のために、組織または器官を清浄化する点でも有用である。
【0018】
本発明の別の実施態様では、自発的にトランスフォームする細胞を除去するために、培養細胞系を処理するためにウイルスが使用される。この方法は、人工授精または他の再生産関連方法の前に、精液またはドナーの卵を処理するためにも使用できる。
【0019】
本発明の別の特徴点では、ウイルスは複製可能ウイルスである。複製不全ウイルスとは対照的に、複製可能ウイルスは、このウイルスに感受性である細胞において複製でき、しばしばこの細胞を溶解させる。本発明において有用な複製可能ウイルスは、「ガン崩壊」と称される現象で、新生物細胞を選択的に溶解できるが、正常細胞は溶解しない。
【0020】
本発明の別の実施態様では、ウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、及びパラポックスウイルスorfからなる群から選択されるミューテートされたまたは改変されたウイルスである。天然形態のこれらのウイルスのそれぞれは、二本鎖RNAプロテインキナーゼ(PKR)を阻害するメカニズムを発達させており、さもなければPKRによって阻害されるウイルスタンパク質合成を促進している。それ故これらのウイルスは、PRKに関わらずいずれかの細胞でも複製できる。しかしながら、これらのウイルスPKRインヒビターがミューテートまたは改変された場合、ウイルスはPKR阻害に感受性であり、機能的なPKR経路を有する正常細胞で複製しない。ras活性化新生物細胞はPKR機能を欠損しており、かくしてこれらのウイルスの複製を阻害できないので、これらのミューテートまたは改変されたウイルスは、ras活性化新生物細胞を選択的に除去するために使用できる。
【0021】
本発明の別の特徴点では、腫瘍抑制遺伝子を有することによって、ウイルスは新生物細胞を選択的に殺傷する。例えば、p53は正常細胞の非制御的な増殖を阻害する細胞性腫瘍サプレッサーである。全ての腫瘍細胞の約半分は機能的に損傷したp53を有し、非制御的な態様で増殖する。それ故、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、p53遺伝子産物の不活性化により新生物性となった新生物細胞を選択的に殺傷できる。
【0022】
同様な実施態様は、細胞性腫瘍サプレッサー遺伝子のウイルス阻害を含む。ある種のウイルスは、腫瘍サプレッサーを阻害するタンパク質をコードし、それによって細胞におけるウイルスの複製を可能にする。これらのウイルスインヒビターをミューテートすることによって、腫瘍サプレッサーの存在のため正常細胞においては複製しないウイルスが生産される。しかしながら、それは腫瘍サプレッサーを損失している新生物細胞では複製し、本発明において新生物細胞を選択的に殺傷するために使用できる。
【0023】
本発明の別の実施態様では、新生物細胞を選択的に殺傷するためにインターフェロン感受性ウイルスが使用される。インターフェロン感受性ウイルスはインターフェロンによって阻害され、完全なインターフェロン経路を有する正常細胞では複製しない。新生物細胞のあるものはインターフェロン経路が破壊されているため、それらはインターフェロン感受性ウイルスによって選択的に殺傷できる。インターフェロン感受性ウイルスは好ましくは水疱性口内炎ウイルス(VSV)である。新生物細胞を除去するために、インターフェロンはインターフェロン感受性ウイルスと供に任意に加えることができる。
【0024】
新生物細胞を除去するためにウイルスで処理されており、生存可能な非新生物細胞を残している細胞性組成物もまた提供される。そのような組成物は、in vitroの研究のために、または移植、受精、若しくは他のin vivo方法において使用できるであろう。移植物は、自己移植片、同種移植片、または異種移植片であっても良い。好ましくは移植物は自己移植片である。より好ましくは前記組成物は造血幹細胞を含む。
【0025】
本発明の別の特徴点は、レオウイルス、機能的なp53タンパク質を発現するウイルス、Delta24、ONYX-015、ニューカッスル病ウイルス、または水疱性口内炎ウイルスのような、異なる選択性を有する少なくとも二つのウイルスを含むキットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、新生物細胞の選択的な殺傷を示すウイルスを使用することによる、混在した細胞性組成物、例えば自己移植片から新生物細胞を選択的に除去するための方法に関する。各種のウイルスが本発明において有用である。例えば、混在した細胞性組成物は、ras活性化新生物細胞を選択的に殺傷するレオウイルスで処理できる。ras活性化新生物細胞はさらに、二本鎖プロテインキナーゼ(PKR)のウイルスインヒビターがミューテートまたは改変されているウイルスで選択的に除去されても良い。もし前記組成物がp53欠失腫瘍細胞を含む疑いがあれば、それはp53遺伝子産物における機能的な損傷を有する腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導するp53腫瘍サプレッサー遺伝子を発現するウイルスで処理できる(Wiman, 1998; Nielsen等, 1998)。水疱性口内炎ウイルス(VSV)または他のインターフェロン感受性ウイルスが、破壊されたインターフェロン経路を有する新生物細胞を殺傷するために、インターフェロンの存在下で使用できる。
【0027】
本発明において有用なウイルスの他の例は、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、麻疹ウイルス、ヘルペスウイルス、及びニューカッスル病ウイルスを含み、それらは腫瘍抑制または腫瘍死と関連することが報告されている(Nemunaitis, 1999)。しかしながら本発明は、新生物細胞を選択的に殺傷できるいずれのウイルスをも包含する。
【0028】
本発明をさらに詳細に記載する前に、この明細書において使用される用語は、他に記載がなければ以下のように定義される。
【0029】
定義
「ウイルス」は、天然形態であれ、減弱または改変形態であれ、いずれのウイルスをも指す。改変されたウイルスは、化学的に改変されたウイルスまたは組換え的に改変されたウイルスを含む。組換え的に改変されたウイルスは、ミューテートされたウイルス、組換えウイルス、または再構築されたウイルスを含んで良い。ミューテートされたウイルスは、ウイルスゲノムがミューテートされているウイルスであり、特にヌクレオチド挿入、欠失及び/または置換を有するものである。組換えウイルスは、異なるサブタイプ由来のコートタンパク質を有するウイルスであり、通常ウイルスの一つ以上のサブタイプを有する細胞を共培養し、異なるサブタイプによってコードされるコートによりエンベロープ化されたウイルスを生ずることによって調製される。再構築ウイルスは、異なるサブタイプ由来の断片が混合して細胞内でマッチするように、通常このウイルスの一つ以上のサブタイプを有する細胞を共培養することによって、断片が再構築されているマルチ断片ウイルスである。
【0030】
「新生物細胞」、または「増殖性疾患を有する細胞」は、正常な増殖阻害特性を有さずに増殖する細胞を指す。新生物細胞を含む新たな増殖物は、新生物または腫瘍である。新生物は、一般的に別個の塊を形成する異常な組織増殖であり、正常な組織増殖より迅速な細胞増殖によって増殖する。新生物は、正常な組織との構造的組織化及び機能的強調の部分的または完全な欠如を示すであろう。ここで使用される新生物は、造血性新生物、並びに固形新生物を包含するように企図される。
【0031】
新生物は、良性(良性腫瘍)または悪性(悪性腫瘍またはガン)であって良い。悪性腫瘍は、3種の主なタイプに広く分類できる。上皮構造から生ずる悪性新生物はカルシノーマと称され、筋肉、軟骨、脂肪、または骨のような結合組織から由来する悪性新生物はサルコーマと称され、免疫系の構成成分を含む造血構造(血液細胞の形成と関係する構造)に影響する悪性腫瘍は白血病及びリンパ腫と称される。他の新生物は、神経芽腫を制限することなく含む。
【0032】
「ras活性化新生物細胞」または「ras介在性新生物細胞」は、少なくとも部分的にras経路の活性化のために異常に速い速度で増殖する細胞を指す。ras経路は、ras遺伝子の構造的ミューテーション、ras遺伝子発現の増大したレベル、ras遺伝子メッセージの増大した安定性、あるいはras、またはras経路におけるrasから下流または上流の因子の活性化を導くいずれかのミューテーションまたは他のメカニズムによって活性化され、それによってras経路活性を増大するであろう。例えば、EGFレセプター、PDGFレセプター、またはSosの活性化は、ras経路の活性化を導く。ras介在性新生物細胞は、ras介在性ガン細胞を制限することなく含み、それはras経路の活性のによる悪性の態様で増殖する細胞である。
【0033】
「細胞性組成物」は、細胞を含む組成物を意味する。前記組成物は、非細胞物を含んでも良い。例えば全血は、赤血球及び白血球のような細胞に加えて血漿、血小板、ホルモン、及び他の非細胞物を含む細胞性組成物である。細胞性組成物は、各種のタイプの細胞、器官、または構築物を含んでも良い。例えば、所定の構造で整列した各種の細胞タイプを含む組織または器官は、細胞性組成物と考慮される。
【0034】
「混在した細胞性組成物」は、少なくとも2種類の細胞を含む細胞性組成物である。典型的に混在した細胞性組成物は、正常細胞と新生物細胞の両者を含む。細胞性組成物において細胞のほとんどが分裂細胞であることは好ましく、ウイルスは新生物細胞を選択的に殺傷するが、他の分裂細胞は必須に完全なままで残す。
【0035】
「新生物細胞を含む疑いのある」細胞性組成物は、新生物細胞を含んでいるかもしれない細胞性組成物である。例えば、新生物を有する患者から得られたいずれかの自己移植片は、新生物細胞を含んでいるかもしれない。かなりの長さの時間培養中である細胞培養物は、新生物細胞を自然発生的に含んでいるかもしれない。
【0036】
「実質的な殺傷」は、標的新生物細胞の生存能力の少なくとも約20%の減少を意味する。生存能力は処理された細胞の生存可能な細胞のカウントによって測定でき、減少の度合いは、非処理細胞における生存可能な細胞の数と処理細胞における生存可能な細胞の数を比較することによって、またはウイルス処理の前後の生存可能な細胞のカウントを比較することによって測定できる。生存能力の減少は好ましくは、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%である。
【0037】
新生物細胞は各種の態様で殺傷されて良い。例えばそれらは、新生物細胞の溶解感染(腫瘍崩壊)が可能なウイルスによって溶解されて良い。新生物細胞は、ウイルスによって直接または間接に誘導されるアポトーシスを受けて良い。前記細胞はまた、あまり好ましくはないが、ウイルスによって活性化されている免疫系によって殺傷されても良い。例えば前記ウイルスは、ナチュラルキラー細胞を活性化するサイトカインの生産を誘導し、それが次いで新生物細胞を選択的に殺傷しても良い(Zorn等, 1994)。
【0038】
「複製可能な」ウイルスは、少なくとも一つの細胞タイプで複製可能であるウイルスである。複製可能なウイルスとは反対に、「複製不能なウイルス」は、その複製に必須であるゲノムの領域においてミューテーションを含み、それ故いずれの細胞での複製が不可能なウイルスである。
【0039】
「アデノウイルス」は、約3.6キロベースの二本鎖DNAウイルスである。ヒトにおいてアデノウイルスは複製でき、眼、並びに呼吸器、胃腸、及び尿管において疾患を引き起こす。47の周知のヒト血清型のうち約3分の1が、ヒトアデノウイルス疾患のほとんどの原因に関与する(Brooks等, 1998)。
【0040】
ここで使用される用語、「ミューテートされたアデノウイルス」または「改変されたアデノウイルス」は、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠き、PBRの活性化がブロックされないように阻害またはミューテートされていていることを意味する。アデノウイルスは、抗ウイルス宿主防御機構に対抗するいくつかの遺伝子産物をコードしている。アデノウイルスのウイルス関連RNA(VAI RNAまたはVA RNA1)は小さく、アデノウイルス感染の後の遅延した時期に細胞質に高濃度で蓄積する構造化RNAである。これらのVAI RNAは、PKRの二本鎖RNA(dsRNA)結合モチーフに結合し、自己リン酸化によりRNAのdsRNA依存性活性化をブロックする。かくしてPKRは機能することができず、ウイルスは細胞内で複製できる。ビリオンの過剰生産は、最終的に細胞死を導く。ミューテートされたまたは改変されたアデノウイルスでは、VAI RNAは好ましくは転写されない。そのようなミューテートされたまたは改変されたアデノウイルスは、活性化ras経路を有さない正常細胞では複製できないであろう;しかしながら、活性化ras経路を有する細胞では感染して複製できるであろう。
【0041】
「単純ヘルペスウイルス」(HSV)は、単純ヘルペスウイルス−1(HSV-1)または単純ヘルペスウイルス−2(HSV-2)を指す。HSV遺伝子γ134.5は、PKRによって発揮される抗ウイルス効果を妨げることができる感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)の遺伝子産物をコードする。ICP34.5は、プロテインホスファターゼ1と相互作用し、その活性を再指向化して、eIF-2αを脱リン酸化することによってPKR活性を妨げる独特の機構を有する(He等, 1997)。野生型ウイルス、またはγ134.5遺伝子を欠失している遺伝的に操作されたウイルスのいずれかで感染された細胞では、eIF-2αが脱リン酸化され、γ134.5マイナスウイルスで感染された細胞では、タンパク質合成がスイッチオフされている。ICP34.5の活性が余剰である活性化ras経路を有する細胞では、γ134.5マイナスウイルスは複製可能であろう。
【0042】
ここで使用される用語、「ミューテートされたHSV」または「改変されたHSV」は、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠き、PKR活性がブロックされないように阻害またはミューテートされていることを意味する。好ましくはHSV遺伝子γ134.5は転写されない。そのようなミューテートされたまたは改変されたHSVは、活性化ras経路を有さない正常細胞では複製できないであろう;しかしながら、活性化ras経路を有する細胞では感染して複製できるであろう。
【0043】
「パラポックスウイルス」は、ポックスウイルスである。それは、ヒトを含む各種の哺乳動物腫において急性皮膚病変を誘導するウイルスである。パラポックスウイルスorfは、壊れたまたは損傷した皮膚を通じてヒツジ、ヤギ、及びヒトに天然で感染し、再生した表皮細胞で複製し、かさぶたとなる膿胞性の病変を誘導する(Haig等, 1998)。パラポックスウイルスorfは、PKR活性のブロックに関与する遺伝子OV20.0Lをコードする(Haig等, 1998)。
【0044】
ここで使用される用語、「ミューテートされたパラポックスウイルスorf」または「改変されたパラポックスウイルスorf」は、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠き、PKR活性がブロックされないように阻害またはミューテートされていることを意味する。好ましくは遺伝子OV20.0Lは転写されない。そのようなミューテートされたまたは改変されたパラポックスウイルスorfは、活性化ras経路を有さない正常細胞では複製できないであろう;しかしながら、活性化ras経路を有する細胞では感染して複製できるであろう。
【0045】
「ワクシニアウイルス」は、ヒトに感染し、局在的な病変を生ずるオルトポックスウイルス属のウイルスを指す(Brooks等, 1998)。ワクシニアウイルスは、二つの全く異なる機構でPKR活性の下流調節において役割を果たす二つの遺伝子をコードする。E3L遺伝子は、感染の早期で発現される20及び25kDaの二つのタンパク質をコードし、PKR活性を阻害できるdsRNS結合活性を有する。E3L遺伝子の欠失または破壊は、活性化ras系を有する細胞におけるウイルス複製の可能性を作り出す。ワクシニアウイルスのK3L遺伝子は、PKRの偽基質であるpK3をコードする。
【0046】
ここで使用される用語、「ミューテートされたワクシニアウイルス」または「改変されたワクシニアウイルス」は、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠き、PKR活性がブロックされないように阻害またはミューテートされていることを意味する。好ましくはE3L遺伝子及び/またはK3L遺伝子は転写されない。そのようなミューテートされたまたは改変されたワクシニアウイルスは、活性化ras経路を有さない正常細胞では複製できないであろう;しかしながら、活性化ras経路を有する細胞では感染して複製できるであろう。
【0047】
「インターフェロン感受性ウイルス」は、インターフェロンの存在下で正常細胞で複製せず、正常細胞を殺傷しないウイルスである。正常細胞は、前述のように新生物性ではない細胞である。ウイルスがインターフェロン感受性であるかを試験するために、正常細胞の培養物を、各種の濃度のインターフェロンの存在下でウイルスとインキュベートし、細胞の生存割合を当該技術分野で周知の方法に従って測定しても良い。もし20%未満、好ましくは10%未満の正常細胞が高濃度のインターフェロン(例えば100ユニット/ml)で殺傷されたならば、ウイルスはインターフェロン感受性である。
【0048】
ウイルス感染に対する細胞の「耐性」は、ウイルスでの細胞の感染が顕著なウイルス生産または収率を引き起こさないことを意味する。
【0049】
「ウイルス性腫瘍崩壊物」は、in vitroで腫瘍崩壊性ウイルスで腫瘍細胞を処理することによって調製される組成物であり、その組成物は後に、腫瘍患者においてこの腫瘍に対する免疫系を誘導するために、同じ種類の腫瘍を有する腫瘍患者に投与される。前述のように、ウイルス性腫瘍崩壊物は、必須にウイルス改変化ガン細胞膜である。
【0050】
ここで使用される用語、「移植受容者」は、細胞性組成物の移植を受ける哺乳動物である。好ましくは前記受容者はヒトであり、より好ましくは前記受容者は、ガンの治療において移植を受けるヒトである。
【0051】
方法
本発明は、新生物細胞を含む疑いのある混在した細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去するウイルスの使用に関する。各種のウイルスがこの方法において使用されて良く、そのウイルスのそれぞれが、新生物または一群の新生物に対して選択的である。レオウイルスが以下の実施例として使用されるが、当業者はここでの説明に従うことができ、レオウイルス以外のウイルスを使用することによりいずれの混在した細胞性組成物を清浄化する方法に適用できる。
【0052】
1.レオウイルス
レオウイルスが、in vitro、in vivo及びex vivoで活性化新生物細胞を選択的に溶解することを、我々は最近発見した(Coffey等, 1998; WO 99/08692)。普通では、細胞はレオウイルス感染に感受性ではない。しかしながら、ras経路が活性化されたならば、レオウイルスは細胞において成功して複製でき、最終的に宿主細胞の溶解を引き起こす。例えば、レオウイルス耐性NIH 3T3細胞が、rasを活性化するタンパク質である活性化rasまたはSosでトランスフォームされた場合、レオウイルス感染は増大された(Strong等, 1998)。同様に、レオウイルス感染に耐性であるマウス線維芽細胞は、EGFレセプター遺伝子またはv-erbB原ガン遺伝子でのトランスフェクションの後感受性となった(Strong等, 1993; Strong等, 1996)。
【0053】
一つの理論に制限されるものではないが、レオウイルス複製は翻訳レベルで調節されているようである(Strong等, 1998; Norman等, 2000)。非トランスフォーム化NIH 3T3細胞では、早期のウイルス転写物が二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ(PKR)を活性化し、それが翻訳を阻害し、それによってウイルス複製を阻害する。活性化ras(またはras経路の活性化エレメント)は、おそらくPKR活性化を阻害または不活性化するであろう。それ故、ウイルスタンパク質合成が進行し、ウイルス粒子が作製され、細胞は最終的に溶解する。
【0054】
ras原ガン遺伝子は、多数の腫瘍の原因である。ras遺伝子自体の活性化ミューテーションは、全てのヒト腫瘍の約30%で生じ(Bos, J.L., 1989)、主に膵臓(90%)、散発生大腸(50%)及び肺(40%)カルシノーマ、並びにミエロイド白血病(30%)で生じている。ras経路におけるrasの上流または下流因子の活性化も、腫瘍と関連している。例えば、HER2/Neu/ErbB2または上皮増殖因子(EGF)レセプターの過剰発現は、乳ガンにおいて一般的であり(25−30%)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターまたはEGFレセプターの過剰発現は、グリオーマ及びグリオブラストーマ(40−50%)で一般的である。EGFレセプターとPDGFレセプターは、それらのそれぞれのリガンドに対する結合に際してrasを活性化することが知られており、v-erbBは細胞外ドメインを欠く構成的に活性化されたレセプターをコードする。
【0055】
我々は最初に、ガン細胞を殺傷するレオウイルスの能力を測定した。レオウイルスは、感染細胞においてアポトーシスを誘導することによる、3種のガンモデルシステム、MCF7、SKRB3及びHTB 132の腫瘍崩壊を有効に導いた(実施例1)。かくしてレオウイルス処理は、MCF7、SKRB3及びHTB 132細胞の生存能力の顕著な減少を引き起こす一方、ウイルスなしまたは死んだウイルスで処理されたコントロールは普通に増殖した(図1A−1D)。生存能力の減少は、DNA断片化、アネキシンVまたはAPO2.7染色陽性(図2A−2G)、並びに顕微鏡で観察される細胞膜の気泡、核の凝集、及びクロマチン凝集のような細胞変性効果といった、アポトーシスと関連する特徴を伴った。
【0056】
レオウイルス感染は、正常細胞において翻訳レベルで通常ブロックされるが、ras介在性新生物細胞においてはブロックされないため、レオウイルス処理MCF7細胞及びCD34+幹細胞におけるタンパク質合成の度合いを調べた(図2)。実際、ウイルスタンパク質は、レオウイルス感染ガン細胞系で合成されるが、レオウイルスで処理されたCD34+幹細胞では合成されなかった(データ示さず)。この結果は、レオウイルスタンパク質がレオウイルス処理幹細胞では合成されず、細胞タンパク質合成が普通に進行しているため、レオウイルスでの造血幹細胞の処理が安全であることを示唆している。この点を確認するために、レオウイルス処理CD34+細胞の生存能力を、レオウイルス処理の各種の時点で測定した(実施例3)。生きたレオウイルスまたはウイルスなしで処理された集団における細胞数は各時点で同じであり、CD34+細胞がレオウイルス感染に感受性ではないことを示した。
【0057】
レオウイルスが、高投与量化学療法治療における造血幹細胞の清浄化に有用であるために、レオウイルス処理が、全部の造血系を再構成するそれぞれ及び毎回の造血系列へ分化する幹細胞の能力を変えないことが必須である。それ故、レオウイルス処理の長期的な効果が評価された(実施例3)。ウイルスなしまたは生きたウイルスのいずれかで処理されたCD34+細胞は、レオウイルス処理の72時間後でさえ、白血球、赤血球または白血球赤血球マクロファージ巨核球へ分化する能力に必須に差異を示さなかった(図3B)。これらの3種の系列の間の比は、この長期的な処理の後同じままであった。従って、レオウイルス処理は、CD34+細胞を殺傷せず、造血系を再構成するするそれらの可能性を変化しなかった。
【0058】
さらにレオウイルスは、ガン細胞の混合物中のMCF7、SKRB3またはHTB 132細胞の選択的な殺傷によって示されるように、混在した細胞性組成物、及びCD34+幹細胞を含むアフェレーシス産物を清浄化できる(実施例4)。CD34、並びにMCF7、SKRB3またはHTB 132のような上皮細胞に対する特異的なマーカーであるサイトケラチンを測定することによって、レオウイルスが混在した細胞性組成物からガン細胞を必須に除去する一方(図4A−4C)、幹細胞は完全なまま維持することが示された。それ故、レオウイルス処理は、造血幹細胞組成物から新生物細胞を清浄化する有効な方法である。
【0059】
従って、本発明の一つの実施態様では、幹細胞含有自己移植片が、混在したまたは自然発生的なras活性化新生物細胞を除去するために、移植の前にレオウイルスで処理される。これは、高投与量化学療法/同種幹細胞移植治療の効力を増大する。高投与量化学療法及び同種幹細胞移植が、腫瘍を有する患者において有効に実施されているため、ホジキン病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、生殖細胞(精巣)ガン、脳腫瘍、並びに乳ガンの治療は特に興味深いであろう。しかしながら、ras経路の活性化はいずれの細胞または組織タイプでも生じ得るため、本発明の方法は、他のガンにおいても有用であり、いずれのras活性化新生物細胞を除去するためにも有用であろう。
【0060】
造血始原幹細胞は、治療に先立って患者の骨髄から得ることができる。別法として、従来の非高投与量化学療法を受けているガン患者では、コロニー刺激因子の下地の存在下または不存在下で、多くの幹細胞が典型的に末梢血で出現する。それ故、造血始原幹細胞は、アフェレーシス産物として血液から得ることができ、それは移植される前に長期に亘り貯蔵できる。本発明は、骨髄及び血液を含むいずれかの組織ソースから回収された幹細胞含有自己移植片に適用できる。
【0061】
造血幹細胞に加えて、本発明は、多くの他の細胞性組成物からras活性化新生物細胞を除去するために広く適用できる。例えばレオウイルスは、いずれかの組織または器官移植物を「クリーンアップ」(それらからのras活性化新生物細胞の除去)のために通常の実施として使用できる。前述のように、レオウイルスに対するレセプターは豊富であり、レオウイルス複製を阻害する正常細胞の機構、PKRもまた豊富であるため、本発明に応用は細胞または組織タイプによって制限されない。それ故、いずれの細胞もras活性化新生物細胞となり、レオウイルス感染に感受性となる。後の輸血のための全血またはそのいずれかの一部をクリーンアップするための本発明の方法は特に興味深い。同様に、組織または器官移植はますます一般的となり、移植の前にras活性化新生物細胞を除去するように移植物が処理できれば有益であろう。肝臓、腎臓、心臓、角膜、皮膚移植片、膵島細胞、骨髄、またはそれらのいずれかの一部は、本発明を適用できる組織または器官の例である。
【0062】
組織または器官は、自己物、同種物、または異種物であることができる。組織または器官はまた、トランスジェニック動物から由来しても良く、幹細胞からin vitroで形成された物、またはex vivoで増大したものである組織/器官でも良い。レオウイルスで処理される組織または器官は、胚性または成人由来であることができる。例えば、胚性神経細胞は、アルツハイマー患者に移植される前に処理できる。同様に本発明は、ex vivoで精子またはドナーの卵を処理するために使用できる。
【0063】
本発明の応用は、移植物に制限されない。むしろいずれの細胞性組成物も、いずれかの目的でレオウイルスで「クリーンアップ」できる。かくして、前述の全ての例は、組織または器官が移植のためのものを意味しなくても応用可能である。
【0064】
細胞系はまた、自然発生的または混在したras活性化新生物細胞に対して保護するために通常処理されても良い。再現すると、もちろんras経路の活性化によってトランスフォームされた細胞系を除き、いずれの細胞系もこの方法のための適格な候補であろう。
【0065】
最近多くの研究室が、免疫抑制マウス中に接種されたヒト前立腺ガン組織の連続的に移植可能な異種移植片を確立することを試みている。しかしながら、マウスガン細胞の混在が、移植片の連続する継代培養の間でしばしば生じており、これらの細胞を最終的にヒト前立腺ガン細胞に成長させ得る(Gao等, 1999)。混在したガンがras介在性であり、移植片がそうでなければ、本発明のこの問題に対する簡単な解決策となるであろう。
【0066】
本発明は、ウイルス性腫瘍崩壊物の調製方法とは区別される。腫瘍細胞は、しばしば免疫応答の微弱なインデューサーであり、それ故免疫系の攻撃を逃れることができる。ウイルス性腫瘍崩壊物、特にウイルス改変化腫瘍細胞膜は、腫瘍細胞の免疫原性を増大するためのアプローチにおいて使用されている。ウイルス性腫瘍崩壊物を調製するために、腫瘍細胞は腫瘍を有する患者から除去されて、腫瘍細胞を溶解するウイルスで感染される。次いで生成した物質は、腫瘍を有する患者に投与され、非感染腫瘍細胞に対する免疫がしばしば誘導される。腫瘍細胞のウイルス感染が非感染腫瘍細胞に免疫を誘導する機構は知られていないが、腫瘍細胞のウイルス異種化が関与しているかもしれない(Steele, 2000)。
【0067】
インフルエンザウイルス感染メラノーマ、外陰部カルシノーマ、及び卵巣カルシノーマの腫瘍崩壊物、並びにニューカッスル病ウイルス感染大腸カルシノーマの腫瘍崩壊物、及びワクシニアウイルス腫瘍崩壊物は、全て各種の腫瘍に対して使用されている。例えば、メラノーマ患者は、腫瘍の外科的摘出の後腫瘍崩壊物を受け取った。ウイルス性腫瘍崩壊物は、毎週で4週まで、2週間ごとに52週まで、3週間ごとに120週まで、および6週間ごとに160週まで投与された。別の臨床上のケースでは、大腸ガンに対する自己NDV腫瘍崩壊物の投与スケジュールは、手術の後2週間で開始され、2週間の間隔で5回繰り返され、引き続き3ヶ月後に一度追加された(Nemunaitis, 1999)。この研究により、ある患者では臨床上の応答、または腫瘍抗原に対する活性な免疫の生産が示された(Steele, 2000)。
【0068】
本発明は、ウイルス改変化腫瘍細胞に関連しないウイルス性腫瘍崩壊物とは別個である。ウイルス性腫瘍崩壊物とは対照的に、溶解した新生物細胞は、本発明の効力に影響することなくウイルス処理化細胞性組成物から除去でき、好ましくは除去される。さらに、ウイルス性腫瘍崩壊物は、ほとんどの腫瘍細胞を使用して調製される一方、本発明における混在した細胞性組成物は、好ましくは60%未満、より好ましくは40%未満、さらにより好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満の新生物細胞を含む。
【0069】
2.ras活性化新生物細胞を選択的に殺傷する他のウイルス
通常ウイルスが細胞に侵入すると、二本鎖RNAキナーゼ(PKR)が活性化され、タンパク質合成をブロックし、ウイルスはこの細胞では複製できない、あるウイルスはPKRを阻害し、ウイルスタンパク質合成、並びにウイルス複製を容易にするシステムを発達している。例えば、アデノウイルスは大量の小さなRNA、VA1 RNAを作製する。VA1 RNAは、伸長した二次構造を有し、通常PKRを活性化する二本鎖RNA(dsRNA)と競合してPKRに結合する。PKRを活性化するために最小の長さのdsRNAが必要であるため、VA1 RNAはPKRを活性化しない。代わりに、それはその大きな量によってPKRを隔離する。その結果タンパク質合成はブロックされず、アデノウイルスは細胞内で複製できる。
【0070】
ワクシニアウイルスは、異なる機構でPKRを下流調節する二つの遺伝子産物、K3LとE3Lをコードする。K3L遺伝子産物は、PKRの天然の基質であるeIF-2αのN末端領域と制限されたホモロジーを有し、PKRの偽基質として機能するであろう。E3L遺伝子産物は、dsRNA結合タンパク質であり、隔離アクチベーターdsRNAによって機能するようである。
【0071】
同様に、単純ヘルペスウイルス(HSV)遺伝子γ134.5は、PKRによって発揮される抗ウイルス効果を妨げることができる感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)の遺伝子産物をコードする。パラポックスウイルスorfウイルスは、PKR活性のブロックに関与する遺伝子OV20.0Lをコードする。かくしてこれらのウイルスは、PKRによって阻害されることなく細胞を成功して感染できる。
【0072】
前述のように、ras活性化新生物細胞は、rasがPKRを不活性化するため、PKRによるタンパク質合成阻害を受けない。それ故これらの細胞は、ウイルスがPKR阻害システムを有さなくとも、ウイルス感染に感受性である。従って、もしアデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはパラポックスorfウイルスにおいてPKR阻害が、PKR機能をさらにブロックするようにミューテートされたならば、生成したウイルスは、PKRによるタンパク質合成阻害のために正常細胞に感染しないが、PKR活性を欠くras活性化新生物細胞では複製する。
【0073】
従って本発明は、PKR機能を阻害しないように改変またはミューテートされた、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはパラポックスウイルスorfウイルスによる、混在した細胞性組成物からras活性化新生物細胞を除去する方法を提供する。改変されたまたはミューテートされたウイルスは、ras活性化新生物細胞において選択的に複製する一方、正常細胞は耐性である。好ましくはこの実施態様では、アデノウイルスはVA1領域でミューテートされ、ワクシニアウイルスはK3L及び/またはE3L領域でミューテートされ、単純ヘルペスウイルスはγ134.5遺伝子でミューテートされ、パラポックスウイルスorfウイルスはOV20.0L遺伝子ミューテートされる。
【0074】
ウイルスは、ウイルスPKRインヒビターの周知の構造−機能相互関係に従ってミューテートまたは改変できる。例えば、E3タンパク質のアミノ末端領域は、PKRのカルボキシ末端領域ドメインと相互作用するため、このドメインの欠失またはポイントミューテーションは、抗PKR機能を妨げる(Chang等, 1992, 1993, 1995; Sharp等, 1998; Romano等, 1998)。ワクシニアウイルスのK3L遺伝子は、PKRの偽基質であるpK3をコードする。K3L内には機能損失ミューテーションが存在する。K3Lタンパク質のC末端部分内の切り詰めまたはポイントミューテーションの配置にのいずれかによって、eIF-2αにおける79から83残基に相同的な部分が、PKR阻害活性を破壊する(Kawagishi-Kobayashi等, 1997)。
【0075】
3.腫瘍サプレッサー遺伝子または腫瘍サプレッサー関連遺伝子を有するウイルス
本発明の別の特徴点では、ウイルスは腫瘍サプレッサー遺伝子を有することによって新生物細胞を選択的に殺傷する。例えばp53は、正常細胞の非制御的な増殖を阻害する細胞性腫瘍サプレッサーである。しかしながら全ての腫瘍の約半分は、機能的に損傷したp53を有し、非制御的な態様で増殖する。それ故、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、p53遺伝子産物の不活性化のため新生物性となった新生物細胞を選択的に殺傷できる。そのようなウイルスは構築されており、ミュータントp53を発現するガン細胞においてアポトーシスを誘導することが示されている(Blagosklonny等, 1996)。
【0076】
同様なアプローチは、腫瘍サプレッサーのウイルス性の阻害を含む。例えば、特定のアデノウイルス、SV40及び広パピローマウイルスは、p53を不活性化するタンパク質を含み、それによってそれ自体の複製を可能にする(Nemunaitis 1999)。アデノウイルス血清型5については、このタンパク質はE1B領域によってコードされる55Kdタンパク質である。もしONYX-015ウイルスにおけるように、この55kdタンパク質をコードするE1B領域が欠失されたならば、(Bischoff等, 1996; Heise等, 2000; WO 94/18992)、55kdp53インヒビターはもはや存在しない。その結果、ONYX-015が正常細胞に侵入すると、p53は細胞増殖、並びに細胞増殖マシネリーに依存するウイルス複製を抑制するように機能する。それ故、ONYX-015は正常細胞において複製しない。他方で、破壊されたp53機能を有する新生物細胞では、ONYX-015は複製でき、結果として細胞を死に導く。従ってこのウイルスは、混在した細胞性組成物からp53欠失新生物細胞に選択に感染し、それを除去するために使用できる。当業者は、確立された方法に従って、アデノウイルス5または他のウイルスにおいてp53インヒビター遺伝子をミューテートして破壊でき、生成したウイルスは、混在した細胞性組成物から新生物細胞を除去するために本発明の方法で有用である。
【0077】
別の例は、E1A領域において24塩基対の欠失を有するミューテートされたアデノウイルスであるDelta24ウイルスである(Fueyo等, 2000)。この領域は、細胞性腫瘍サプレッサーRbに結合し、Rb機能を阻害し、それによって細胞増殖マシネリーを可能にし、ウイルス複製を非制御的な態様で進行させることに関与する。Delta24は、Rb結合領域において欠失を有し、Rbに結合しない。それ故、ミュータントウイルスの複製は、正常細胞ではRbによって阻害される。しかしながら、もしRbが不活性化され、細胞が新生物となると、Delta24はもはや阻害されない。代わりに、ミューテートされたウイルスは効率的に複製し、Rb欠失細胞を溶解する。再現すると、このウイルスは新生物細胞に特異的であり、混在した細胞性組成物を清浄化し、Rb欠失細胞を除去するために使用できる。
【0078】
4.他のウイルス
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、インターフェロンの存在下で新生物細胞を選択的に殺傷する。インターフェロンは、細胞表面レセプターに結合する循環因子であり、抗ウイルス応答と増殖阻害の誘導及び/または標的細胞におけるアポトーシスシグナルの誘導の両者を最終的に導く。インターフェロンは、腫瘍細胞の増殖を阻害するために理論的には使用できるが、インターフェロン経路のメンバーの腫瘍特異的なミューテーションのため、この試みはあまり成功していない。
【0079】
しかしながら、インターフェロンによって発揮される増殖阻害を避けるために、インターフェロン経路を破壊することによって、腫瘍細胞は抗ウイルス応答を自然発生的に抑制しているかもしれない。実際、エンベロープ化ネガティブセンスRNAウイルスであるVSVは、インターフェロンの存在下で各種のヒト腫瘍細胞系で迅速に複製してそれを殺傷し、一方で正常ヒト一次細胞培養物は、インターフェロンによって明白に保護された。VSVの腫瘍内感染はまた、皮下ヒトメラノーマ異種移植片を有するヌードマウスの腫瘍の重さを減少した(Stojdl等, 2000)。
【0080】
従って、本発明の別の実施態様では、インターフェロンの存在下で混在した細胞性組成物から新生物細胞を除去するためにVSVが使用される。さらに、本発明のこの特徴点は、いずれかの他のインターフェロン感受性ウイルス(WO 99/18799)特にインターフェロンの存在下で正常細胞で複製しないウイルスに適用されることが企図される。そのようなウイルスは、正常細胞の培養物を増殖し、その培養物を各種の濃度のインターフェロンの存在下で興味あるウイルスと接触させ、次いでインキュベーション期間の後の細胞殺傷のパーセンテージを測定することによって同定されても良い。好ましくは、20%未満の正常細胞が殺傷され、より好ましくは10%未満が殺傷される。
【0081】
ある新生物細胞は高レベルの酵素を発現し、この酵素に依存するウイルスを構築するという事実を利用することも可能である。例えば、リボヌクレオチドレダクターゼは肝臓転移物に豊富であるが、正常な肝臓では欠乏している。それ故、リボヌクレオチドレダクターゼ発現において欠失している単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)μテントのhrR3は、大腸カルシノーマ細胞において複製するが、正常な肝臓細胞では複製しないことが示された(Yoon等, 2000)。
【0082】
前述のウイルスに加えて、各種の他のウイルスが腫瘍の殺傷と関連しているが、存在する機構は常に明らかであるわけではない。ニューカッスル病ウイルス(NDP)は、悪性細胞で選択的に複製し、その最も一般的に使用される株は73-Tである(Reichard等, 1992; Zorn等, 1994; Bar-Eli等, 1996)。NDPが腫瘍内接種の後腫瘍の重さを減少するという臨床上の抗腫瘍活性も、子宮系、大腸、膵臓、胃、メラノーマ、及び腎臓ガンを含む各種の腫瘍で観察された(WO 94/25627; Nemunaitis, 1999)。それ故、NDVは混在した細胞性組成物から新生物細胞を除去するために使用できる。
【0083】
さらに、ワクシニアウイルスは、いくつかの悪性腫瘍細胞系で増殖できた。脳炎ウイルスは、マウス肉腫において腫瘍崩壊効果を有することが示されたが、正常細胞におけるその感染を減少するための減弱化は必要でないであろう。腫瘍抑制は、帯状疱疹、肝炎ウイルス、インフルエンザ、水痘、及び麻疹ウイルスで感染された腫瘍患者において記載されている(レビューとして、Nemunaitis, 1999参照)。ここに開示された方法及び当該技術分野で周知の方法に従って、当業者は新生物細胞を選択的に殺傷するこれらまたは他のウイルスの能力を試験でき、興味ある混在した細胞性組成物から新生物細胞を除去するためにウイルスが使用できるかどうかを決定できる。
【0084】
4.ウイルス処理の後のウイルスの除去
本発明において使用されるウイルスは正常細胞では複製しないが、ウイルス処理された細胞性組成物を使用する前にウイルスを除去することが望ましいであろう。例えばレオウイルスは、いずれかの周知の疾患と関連するものではないが、化学療法のため免疫系が弱化されたガン患者にはより感染性であるかもしれない。それ故、もしレオウイルスが、造血幹細胞を含む組成物を処理するために使用され、それがその後にガン患者に移植されるのであれば、レオウイルスは細胞性組成物の移植の前に除去できる。
【0085】
従って、本発明の別の実施態様では、ウイルスで処理された細胞性組成物は、DMSOを含む溶液で凍結され、移植の前に解凍される。DMSOは動物細胞を凍結して貯蔵するために一般的に使用される一方、それはウイルスを変性し、それによって幹細胞調製物から感染性ウイルスを除去する。これはウイルスが幹細胞移植を介して移植受容者内に導入された場合の非所望の感染を引き起こす危険を減少する。
【0086】
別の実施態様では、ウイルス処理された細胞組成物は、ウイルスを不活性化または溶解するために、特定のウイルスに対する抗体、または特定の抗体と補体の組み合わせで処理される。別法としてまたは加えて、特定のウイルスの表面の分子を認識する特異的な抗体が、ウイルス処理された細胞性組成物からウイルス粒子を除去するために使用されても良い。かくして、前記抗体は、当該技術分野で周知のカラム、ビーズ、またはいずれかの他の物質に固定化され、細胞性組成物を固定化抗体に適用し、抗体に結合しない組成物の一部を、固定化の特定の方法に適した方法に従って回収する。
【0087】
ウイルス処理された混合物からウイルスを除去するために使用されても良い別の方法は、ウイルスから細胞を分離し、細胞のみを含む層を回収する勾配に混合物をかけることである。
【0088】
別の実施態様では、移植受容者は、ウイルス感染の危険を減少するために免疫系を刺激する治療を受ける。この治療は、移植の前、同時、または後に実施されても良いが、移植の前に実施されるのが好ましい。別法の治療として、または免疫系刺激剤と組み合わせて、ウイルス感染の危険を減少するために、受容者は特定のウイルスに対する特異的な抗体が与えられることができる。
【0089】
組成物
本発明は、細胞性組成物において含まれる新生物細胞の実質的な殺傷をウイルスが引き起こすウイルス処理に、混在した細胞性組成物をかけることによって調製される組成物を提供する。この組成物は、ウイルス性腫瘍崩壊物ではない。ウイルス性腫瘍崩壊物は、ウイルスによる腫瘍細胞の腫瘍崩壊から生ずる組成物であり、活性成分としてウイルス改変化腫瘍細胞膜を含む。本発明では対照的に、ウイルス処理された細胞性組成物における活性成分は生存している非新生物細胞である。
【0090】
キット
前述のウイルスの全ては、新生物細胞を含んでも良い混在した細胞性組成物を清浄化するために使用できる。所望であれば、ウイルスが特定の細胞性組成物を清浄化するために使用できるかが最初に決定されても良い。例えば、混在した細胞性組成物が、ガン患者から得られた造血幹細胞を含む場合、ガンの生検が事前に回収され、ウイルスがそのガン細胞を有効に殺傷できるかを測定するために各種のウイルスで処理することができる。次いでそのウイルスが、造血幹細胞を清浄化するために使用できる。
【0091】
別法として、混在した細胞性組成物は、各ウイルスの効力を最初に測定することなく、ウイルスのカクテルで処理されても良い。従って本発明は、異なるまたはオーバーラップした特異性を有するウイルスの群を含むキットを提供する。例えば前記キットは、ras活性化新生物細胞に対するレオウイルス、p53欠失新生物細胞に対するp53発現ウイルス、Rb欠失新生物細胞に対するDelta24、p53欠失新生物細胞に対するOnyx-015、インターフェロン耐性新生物細胞に対する水疱性口内炎ウイルス、またはそれらのサブセットを含んでも良い。
【0092】
以下の実施例は、本発明を説明するために与えられ、いずれの態様でも本発明の範囲を制限するものとしては考慮されるべきではない。
【実施例】
【0093】
以下の実施例では、以下の略語は以下の意味を有する。定義されていない略語は、一般的に受け入れられている意味を有する
℃ = 摂氏の温度
hr = 時間
min = 分
μM = マイクロモーラー
mM = ミリモーラー
M = モーラー
ml = ミリリットル
μl = マイクロリットル
mg = ミリグラム
μg = マイクログラム
PAGE = ポリアクリルアミドゲル電気泳動
rpm = 回転/分
FBS = 胎児ウシ血清
DTT = ジチオスレイトール
SDS = ドデシル硫酸ナトリウム
PBS = リン酸緩衝生理食塩水
DMEM = ダルベッコ修飾イーグル培地
α−MEM = α−修飾イーゲル培地
β−ME = β−メルカプトエタノール
MOI = 感染の多様性
PFU = プラーク形成ユニット
PKR = 二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ
EGF = 上皮増殖因子
PDGF = 血小板由来増殖因子
DMSO = ジメチルスルホキシド
CPE = 細胞変性効果
GCSF = 顆粒球コロニー刺激因子
【0094】
実施例1:レオウイルスは乳ガン細胞におけるレオウイルス誘導腫瘍崩壊とアポトーシスを誘導した
新生物細胞の生存能力に対するレオウイルスの効果を測定するために、最初に3種の乳ガンモデル系、MCF7(ATCCナンバーHTB-22)、SKBR3(ATCCナンバーHTB-30)、及びMDA MB 468(ATCCナンバーHTB 132)を使用した。各細胞系の細胞を50−60%の密度に増殖し、40の感染の多様性でレオウイルス血清型3、Dearing株で感染した。レオウイルスは、米国特許第6,136,307号に記載されたように得て維持した。レオウイルス感染及び非感染細胞を、感染の0、24、48及び72時間後に回収し、生存能力を測定した。
【0095】
その結果は図1A−1Dに示されている。レオウイルス感染MCF7(図1A)、SKBR3(図1B)、またはMDA MB 468細胞(図1C)における生存細胞カウントは感染の後に有意に減少する一方、死んだウイルスまたはウイルスなしで感染された細胞は、予測されるように増殖した。レオウイルス処理は、MCF7(図1D)及びSKBR3の生存の能力を感染の後72時間までに93%から16%の減少を引き起こした。MDA MB 468細胞では、ウイルス処理された完全な細胞数は、感染の24、48及び72時間までに、それぞれ元の細胞数の12.7%、8.8%及び3.6%に減少した。かくしてレオウイルスは、全ての3種のガン細胞において有効に腫瘍崩壊を引き起こした。
【0096】
細胞はアポトーシスによって死んだ。CPE、アネキシンV及びDNA断片化のような典型的なアポトーシスマーカーが、生存能力の減少と平行にタイムコースで観察できた。図2A−2Gは、レオウイルス感染の後の各種の時点でのDNA断片化(図2A−2C)、アネキシンV染色(2D)、またはAPO2.7+細胞(2E−2G)のパーセンテージを示す。レオウイルスで処理された細胞は、ウイルスなしまたは死んだ細胞でのコントロールと比較して、劇的なレベルでアポトーシスの全ての兆候を示し、これら3種の細胞系の全てでレオウイルスがアポトーシスを誘導したことを示した。コントロールにおけるアポトーシスは、時間と共にゆっくりと増大するようであり、おそらく細胞があまりに高密度で増殖した場合に死に始めるためであろう。
【0097】
実施例2:レオウイルスはガン細胞においてタンパク質合成を阻害するが、CD34+幹細胞では阻害しなかった
幹細胞の選択的なウイルス感染のさらなる証拠のために、ウイルスタンパク質の35Sラベリング/SDS/PAGEを実施した。ウイルスタンパク質合成は、レオウイルスで感染されたMCF7細胞において1−2日後に明らかであった一方、細胞のタンパク質合成は同じ時点で減少し、レオウイルスが細胞マシネリーを乗っ取っていることが示された。感染の4日後では、タンパク質合成はさらには検出できず、全ての細胞が死んでいることを示唆した。細胞を死んだレオウイルスまたはウイルスなしで感染したコントロール実験では、ウイルスタンパク質合成は存在しない一方、細胞のタンパク質合成は正常レベルであった。対照的に、レオウイルスの存在下または不存在下でのCD34+幹細胞の35Sラベリングは、ウイルスの添加の後72時間までウイルスタンパク質合成を示さなかった。それ故、レオウイルスはMCF7細胞に選択的に感染するが、CD34+幹細胞には感染しない。
【0098】
実施例3:レオウイルス処理はCD34+細胞の細胞増殖を阻害せず、分化能力も改変しなかった
タンパク質合成の結果と一致して、生存細胞カウントは、レオウイルス処理が、ウイルスなしのコントロールと比較してCD34+細胞における生存細胞の数を減少しないことを示した(図3A)。
【0099】
CD34+細胞の数はレオウイルス感染によって影響されない一方で、適切な割合で全ての造血系列に分化するCD34+細胞の能力を、レオウイルスは変化しないかどうか疑問が残った。もしこの場合であれば、レオウイルスで処理された幹細胞は、全部の造血系の再構成のための適切な候補足り得ないであろう。この可能性を調べるために、CD34+細胞をレオウイルス細胞でそれぞれ2、24、48または72時間インキュベートした。次いでレオウイルスを除去し、細胞を希釈して、14日間新鮮な培地で培養し、コロニーを形成させた。各コロニーを、白血球、赤血球、または白血球赤血球マクロファージ巨核球に属するかどうか測定するために調べた。図3Bに召されるように、生存ウイルスで処理された幹細胞(LV)は、ウイルスなし(NV)のコントロールと同様な白血球(G)、赤血球(E)または白血球赤血球マクロファージ巨核球(GEMM)の数を生産した。それ故、レオウイルス処理は、CD34+細胞の分化能力を変えなかった。
【0100】
実施例4:レオウイルスは混在した細胞性組成物からガン細胞を選択的に除去した
新生物細胞をアフェレーシス産物と混合し、レオウイルス感染にかけ、レオウイルスが混在した細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去できるかを調べた。アフェレーシス産物は、以前に記載された方法に従って調製した(Stewart等, 1999; Duggan等, 2000)。アフェレーシス産物(90%)とMCF7(10%)の混合物をレオウイルスで処理し、細胞カウントを生存能力について毎日試験すると、サイトケラチンポジティブMCF7細胞の数の100倍の枯渇が存在する一方、CD34+細胞は完全で生存したままであった。図4A−4Cは、MCF7、SKBR3またはMDA MB 468細胞を有するアフェレーシス産物の混合物に対するレオウイルスの清浄化効果を示す。これらの結果は、レオウイルスが細胞混合物中の新生物細胞を選択的に殺傷し、幹細胞は完全なまま維持すること示す。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1A】図1Aは、示されているように生存レオウイルス、死んだウイルス、ウイルスなしで感染されたMCF7における生存細胞の数を示す図である。
【図1B】図1Bは、示されているように生存レオウイルス、死んだウイルス、ウイルスなしで感染されたSKRB3における生存細胞の数を示す図である。
【図1C】図1Cは、示されているように生存レオウイルス、死んだウイルス、ウイルスなしで感染されたHTB132における生存細胞の数を示す図である。
【図1D】図1Dは、レオウイルス感染の後の各種の時点での生存中のMCF7細胞のパーセンテージを示す図である。
【図2A】図2Aは、MCF7細胞におけるレオウイルス感染によってアポトーシスが誘導されたことを示す図である。レオウイルス感染の後に断片化したDNAのパーセンテージが示されている。
【図2B】図2Bは、SKRB3細胞におけるレオウイルス感染によってアポトーシスが誘導されたことを示す図である。レオウイルス感染の後に断片化したDNAのパーセンテージが示されている。
【図2C】図2Cは、HTB1327細胞におけるレオウイルス感染によってアポトーシスが誘導されたことを示す図である。レオウイルス感染の後に断片化したDNAのパーセンテージが示されている。
【図2D】図2Dは、レオウイルス感染の後のアポトーシスマーカーアネキシンV染色のパーセンテージを示す図である。
【図2E】図2Eは、MCF7細胞におけるAPO2.7+細胞のパーセンテージを示す図である。
【図2F】図2Fは、HTB132細胞におけるAPO2.7+細胞のパーセンテージを示す図である。
【図2G】図2Gは、SKRB3細胞におけるAPO2.7+細胞のパーセンテージを示す図である。
【図3A】図3Aは、CD34+幹細胞がレオウイルスで感染された後の各種の時点での生存細胞の数を示す図である。
【図3B】図3Bは、長期的な幹細胞培養に対するレオウイルスの効果を示す図である。幹細胞をレオウイルスで感染し、それぞれ2,24,48または72時間インキュベートし、次いで細胞を希釈して細胞を14日間培養し、個々のコロニーを形成させた。顆粒球(G)、赤血球(E)、または顆粒球赤血球マクロファージ巨核球(GEMM)の各種のコロニーの数を、それぞれウイルスなし(NV)及び生存ウイルス(LV)で感染した細胞について測定した。例えば、NV-Gはウイルスなしで処理された細胞から由来する顆粒球コロニーを示し、LV-Gは生存ウイルスで処理された細胞から由来する顆粒球を示す。
【図4A】図4Aは、MCF7細胞を有するアフェレーシス産物の混合物に対するレオウイルスの清浄化効果を示す図である。
【図4B】図4Bは、MDA MB 468細胞を有するアフェレーシス産物の混合物に対するレオウイルスの清浄化効果を示す図である。
【図4C】図4Cは、SKRB3細胞を有するアフェレーシス産物の混合物に対するレオウイルスの清浄化効果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
関連発明
本出願は、35 U.S.C. 119(e)の下で、2000年5月3日に出願された米国予備出願60/201,990、2000年5月19日に出願された60/205,389、2001年2月13日に出願された60/268,054、2001年3月16日に出願された60/276,782の利益を享受する。前述の予備出願のそれぞれの全体の開示は、参考としてここに取り込まれる。
【0002】
本発明は、新生物細胞に選択的に感染しそれを殺傷するウイルスを使用することによる、生きた生物の外側にある混合する細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去する方法に関する。さらに、この方法に従って調製された組成物、及び本発明において有用なウイルスの組み合わせを含むキットが提供される。
【0003】
[参考文献]
【背景技術】
【0004】
細胞増殖は、増殖促進シグナルと増殖抑制シグナルの両者によって調節される。各細胞に対してこれらの2種類のシグナルは、特定の細胞に対する身体の必要性を反映する態様で、通常バランスを与えているであろう。もし細胞が増殖抑制シグナルに応答しない場合、または増殖促進シグナルに過剰応答する場合、その細胞は以上に迅速に増殖し(新生物細胞と称する)、悪性新生物であるガンに段階的に発展するであろう。
【0005】
ガンを治療するために現在行われている方法である化学療法は、ガン細胞の迅速な増殖特性に一般的に基づいている。ガン細胞は迅速に増殖するため、それらは細胞増殖を阻害する薬剤により感受性である。理論的には、化学療法薬の投与量を注意深く選択することによって、正常細胞を重大に損傷することなくガン細胞の増殖を阻害できる。しかしながら、造血幹細胞のようないくつかの正常細胞もまた迅速に増殖する。それ故、ガン細胞に有害なある投与量は、しばしば造血幹細胞にも有害である。他方で、もし投与量がガン細胞を殺傷するのに十分な程高くないと、化学療法が終結した後、ガンが短期間で再発する危険が存在する。
【0006】
選択的にガン細胞を殺傷する投与量を見出すことは困難であるため、高投与量の化学療法、引き続き異種造血始原幹細胞移植は、多くのガンにおける治療アプローチとして過度の適用が実施されている(例えば、Winter, 1999; Nieto及びShpall, 1999参照)。このアプローチでは、造血幹細胞の部分がガン患者から除去されて、次いで患者は、ガン細胞と造血幹細胞のような迅速に増殖する細胞に対して致死的な高投与量化学療法で治療される。その後患者は、同じ患者から以前に除去された自己造血幹細胞の移植を受け、造血系が再生する。
【0007】
この治療の重大な欠点は、造血始原幹細胞が患者から除去される場合、それらにしばしばガン細胞が混在している点である。これは特に、患者が造血系起源のガンを有する場合に問題であるが、特にもし固形腫瘍が転移したならば、固形腫瘍を有する患者でも、造血幹細胞の混在に苦しむ可能性がある。結果として、除去された細胞が戻されて移植され、造血系を再生する場合に、あるガン細胞がガン患者に戻されて配置され、その場合にそのガンが再び増殖して、ガンの再発に寄与する可能性がある。それ故、移植前の自己移植片を清浄化することが望ましい。
【0008】
自己移植片を清浄化するためにいくつかの方法が利用されている(Spyridonidis等, 1998;Bensinger, 1998)。自己移植片を化学療法で処理し、in vitroで混在した新生物細胞を殺傷できる。しかしながら、前述のように、新生物細胞またはガン細胞を選択的に殺傷するが、清浄な造血幹細胞を完全なままにする化学療法薬の投与量を見出すことは困難である。自己移植片はまた、新生物細胞に特異的である抗原を認識する抗体に接合された毒素で治療することもできるが、そのような腫瘍特異的抗原がいつも存在するとは限らない。フローサイトメトリー、アフィニティーカラム、または磁性ビーズを使用することによって、幹細胞特異的表面マーカー(CD34)に基づいて、幹細胞を他の細胞から分離することも可能である。しかしながら、特定の造血細胞、例えばCD34+細胞のみを選択することによって、T細胞、B細胞、単球、及びナチュラルキラー細胞のような他の造血細胞もまた除去され、免疫回復が遅延する可能性がある(Bensinger, 1998)。この方法はまた、CD34+細胞の約半分の損失と、混在したガン細胞のある部分の維持を引き起こす(Spyridonidis, 1998)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、新生物細胞を含む可能性のある自己移植片を清浄化するための、かなりの収率を有する非常に選択的な方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、新生物細胞の選択的な殺傷を示すウイルスを使用することによって、混在した細胞組成物、例えば自己移植片から新生物細胞を選択的に除去する方法に関する。各種のウイルスが、新生物細胞を選択的に除去するが、正常細胞を除去しないことが可能である。例えば、レオウイルスは、ras-活性化新生物細胞を選択的に殺傷し、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、機能障害性p53を有する新生物細胞に対して選択的であり、いずれかのインターフェロン感受性ウイルスは、破壊されたインターフェロン経路を有する新生物細胞に選択的である。
【0011】
従って、本発明の一つの特徴点は、生きた生物の外側に配置された、新生物細胞を含む疑いのある混在した細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去する方法に関し、この方法は、(a)新生物細胞の実質的な殺傷を引き起こす条件下で、ウイルスと混在した細胞性組成物を接触させる工程;(b)処理された細胞性組成物を回収する工程を含む。
【0012】
本発明の別の実施態様では、この方法は、DMSOを含む溶液において、ウイルス処理された細胞性組成物を凍結して貯蔵する工程をさらに含む。DMSOは、動物細胞を凍結して貯蔵するために一般的に使用されているが、ウイルスを変性できる。それ故DMSO処理は、細胞性組成物から感染性ウイルスを除去する一方で、長期的な凍結状態で組成物の活性を保存する。
【0013】
本発明の別の実施態様では、特定のウイルスに特異的である抗ウイルス抗体の混合物、または抗ウイルス抗体とウイルスを溶解するための補体の組み合わせで処理することによって、ウイルス処理された細胞性組成物からウイルスが除去される。別法としてまたは加えて、ウイルス粒子の表面の分子を認識する抗ウイルス抗体が、抗体を固定化することによってウイルス粒子を除去するために使用されても良く、その場合細胞性組成物を固定化抗体に適用し、抗体に結合しない組成物の部分を回収しても良い。
【0014】
同様に、特定のウイルスに対して特異的な抗体を、in vivoでウイルスを除去するために移植受容者に投与することができ、または受容者に免疫系刺激物を与えてこの目的を達成できる。
【0015】
本発明の別の実施態様は、細胞からウイルスを分離できる勾配を使用することによって、ウイルスで処理された細胞性組成物からウイルスを除去する。
【0016】
本発明の好ましい実施態様では、混在した細胞性組成物は造血幹細胞を含む。かくして造血幹細胞は、移植またはいずれかの他の所望の使用の前に、新生物細胞を除去するように清浄化できる。造血幹細胞は、骨髄または血液から収集できる。
【0017】
本発明の応用は、造血幹細胞の清浄化に制限されない。本発明の別の実施態様では、本発明の方法は、新生物細胞を除去するために、いずれかの組織、器官、異なる組織/器官の組み合わせ、または組織若しくは器官のいずれかの部分に適用できる。前記組織または器官は好ましくはその後の移植に有用である。しかしながら本発明の方法は、組織または器官に存在する新生物細胞を除去することが所望されるいずれかの他の目的のために、組織または器官を清浄化する点でも有用である。
【0018】
本発明の別の実施態様では、自発的にトランスフォームする細胞を除去するために、培養細胞系を処理するためにウイルスが使用される。この方法は、人工授精または他の再生産関連方法の前に、精液またはドナーの卵を処理するためにも使用できる。
【0019】
本発明の別の特徴点では、ウイルスは複製可能ウイルスである。複製不全ウイルスとは対照的に、複製可能ウイルスは、このウイルスに感受性である細胞において複製でき、しばしばこの細胞を溶解させる。本発明において有用な複製可能ウイルスは、「ガン崩壊」と称される現象で、新生物細胞を選択的に溶解できるが、正常細胞は溶解しない。
【0020】
本発明の別の実施態様では、ウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、及びパラポックスウイルスorfからなる群から選択されるミューテートされたまたは改変されたウイルスである。天然形態のこれらのウイルスのそれぞれは、二本鎖RNAプロテインキナーゼ(PKR)を阻害するメカニズムを発達させており、さもなければPKRによって阻害されるウイルスタンパク質合成を促進している。それ故これらのウイルスは、PRKに関わらずいずれかの細胞でも複製できる。しかしながら、これらのウイルスPKRインヒビターがミューテートまたは改変された場合、ウイルスはPKR阻害に感受性であり、機能的なPKR経路を有する正常細胞で複製しない。ras活性化新生物細胞はPKR機能を欠損しており、かくしてこれらのウイルスの複製を阻害できないので、これらのミューテートまたは改変されたウイルスは、ras活性化新生物細胞を選択的に除去するために使用できる。
【0021】
本発明の別の特徴点では、腫瘍抑制遺伝子を有することによって、ウイルスは新生物細胞を選択的に殺傷する。例えば、p53は正常細胞の非制御的な増殖を阻害する細胞性腫瘍サプレッサーである。全ての腫瘍細胞の約半分は機能的に損傷したp53を有し、非制御的な態様で増殖する。それ故、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、p53遺伝子産物の不活性化により新生物性となった新生物細胞を選択的に殺傷できる。
【0022】
同様な実施態様は、細胞性腫瘍サプレッサー遺伝子のウイルス阻害を含む。ある種のウイルスは、腫瘍サプレッサーを阻害するタンパク質をコードし、それによって細胞におけるウイルスの複製を可能にする。これらのウイルスインヒビターをミューテートすることによって、腫瘍サプレッサーの存在のため正常細胞においては複製しないウイルスが生産される。しかしながら、それは腫瘍サプレッサーを損失している新生物細胞では複製し、本発明において新生物細胞を選択的に殺傷するために使用できる。
【0023】
本発明の別の実施態様では、新生物細胞を選択的に殺傷するためにインターフェロン感受性ウイルスが使用される。インターフェロン感受性ウイルスはインターフェロンによって阻害され、完全なインターフェロン経路を有する正常細胞では複製しない。新生物細胞のあるものはインターフェロン経路が破壊されているため、それらはインターフェロン感受性ウイルスによって選択的に殺傷できる。インターフェロン感受性ウイルスは好ましくは水疱性口内炎ウイルス(VSV)である。新生物細胞を除去するために、インターフェロンはインターフェロン感受性ウイルスと供に任意に加えることができる。
【0024】
新生物細胞を除去するためにウイルスで処理されており、生存可能な非新生物細胞を残している細胞性組成物もまた提供される。そのような組成物は、in vitroの研究のために、または移植、受精、若しくは他のin vivo方法において使用できるであろう。移植物は、自己移植片、同種移植片、または異種移植片であっても良い。好ましくは移植物は自己移植片である。より好ましくは前記組成物は造血幹細胞を含む。
【0025】
本発明の別の特徴点は、レオウイルス、機能的なp53タンパク質を発現するウイルス、Delta24、ONYX-015、ニューカッスル病ウイルス、または水疱性口内炎ウイルスのような、異なる選択性を有する少なくとも二つのウイルスを含むキットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、新生物細胞の選択的な殺傷を示すウイルスを使用することによる、混在した細胞性組成物、例えば自己移植片から新生物細胞を選択的に除去するための方法に関する。各種のウイルスが本発明において有用である。例えば、混在した細胞性組成物は、ras活性化新生物細胞を選択的に殺傷するレオウイルスで処理できる。ras活性化新生物細胞はさらに、二本鎖プロテインキナーゼ(PKR)のウイルスインヒビターがミューテートまたは改変されているウイルスで選択的に除去されても良い。もし前記組成物がp53欠失腫瘍細胞を含む疑いがあれば、それはp53遺伝子産物における機能的な損傷を有する腫瘍細胞においてアポトーシスを誘導するp53腫瘍サプレッサー遺伝子を発現するウイルスで処理できる(Wiman, 1998; Nielsen等, 1998)。水疱性口内炎ウイルス(VSV)または他のインターフェロン感受性ウイルスが、破壊されたインターフェロン経路を有する新生物細胞を殺傷するために、インターフェロンの存在下で使用できる。
【0027】
本発明において有用なウイルスの他の例は、ワクシニアウイルス、インフルエンザウイルス、水痘ウイルス、麻疹ウイルス、ヘルペスウイルス、及びニューカッスル病ウイルスを含み、それらは腫瘍抑制または腫瘍死と関連することが報告されている(Nemunaitis, 1999)。しかしながら本発明は、新生物細胞を選択的に殺傷できるいずれのウイルスをも包含する。
【0028】
本発明をさらに詳細に記載する前に、この明細書において使用される用語は、他に記載がなければ以下のように定義される。
【0029】
定義
「ウイルス」は、天然形態であれ、減弱または改変形態であれ、いずれのウイルスをも指す。改変されたウイルスは、化学的に改変されたウイルスまたは組換え的に改変されたウイルスを含む。組換え的に改変されたウイルスは、ミューテートされたウイルス、組換えウイルス、または再構築されたウイルスを含んで良い。ミューテートされたウイルスは、ウイルスゲノムがミューテートされているウイルスであり、特にヌクレオチド挿入、欠失及び/または置換を有するものである。組換えウイルスは、異なるサブタイプ由来のコートタンパク質を有するウイルスであり、通常ウイルスの一つ以上のサブタイプを有する細胞を共培養し、異なるサブタイプによってコードされるコートによりエンベロープ化されたウイルスを生ずることによって調製される。再構築ウイルスは、異なるサブタイプ由来の断片が混合して細胞内でマッチするように、通常このウイルスの一つ以上のサブタイプを有する細胞を共培養することによって、断片が再構築されているマルチ断片ウイルスである。
【0030】
「新生物細胞」、または「増殖性疾患を有する細胞」は、正常な増殖阻害特性を有さずに増殖する細胞を指す。新生物細胞を含む新たな増殖物は、新生物または腫瘍である。新生物は、一般的に別個の塊を形成する異常な組織増殖であり、正常な組織増殖より迅速な細胞増殖によって増殖する。新生物は、正常な組織との構造的組織化及び機能的強調の部分的または完全な欠如を示すであろう。ここで使用される新生物は、造血性新生物、並びに固形新生物を包含するように企図される。
【0031】
新生物は、良性(良性腫瘍)または悪性(悪性腫瘍またはガン)であって良い。悪性腫瘍は、3種の主なタイプに広く分類できる。上皮構造から生ずる悪性新生物はカルシノーマと称され、筋肉、軟骨、脂肪、または骨のような結合組織から由来する悪性新生物はサルコーマと称され、免疫系の構成成分を含む造血構造(血液細胞の形成と関係する構造)に影響する悪性腫瘍は白血病及びリンパ腫と称される。他の新生物は、神経芽腫を制限することなく含む。
【0032】
「ras活性化新生物細胞」または「ras介在性新生物細胞」は、少なくとも部分的にras経路の活性化のために異常に速い速度で増殖する細胞を指す。ras経路は、ras遺伝子の構造的ミューテーション、ras遺伝子発現の増大したレベル、ras遺伝子メッセージの増大した安定性、あるいはras、またはras経路におけるrasから下流または上流の因子の活性化を導くいずれかのミューテーションまたは他のメカニズムによって活性化され、それによってras経路活性を増大するであろう。例えば、EGFレセプター、PDGFレセプター、またはSosの活性化は、ras経路の活性化を導く。ras介在性新生物細胞は、ras介在性ガン細胞を制限することなく含み、それはras経路の活性のによる悪性の態様で増殖する細胞である。
【0033】
「細胞性組成物」は、細胞を含む組成物を意味する。前記組成物は、非細胞物を含んでも良い。例えば全血は、赤血球及び白血球のような細胞に加えて血漿、血小板、ホルモン、及び他の非細胞物を含む細胞性組成物である。細胞性組成物は、各種のタイプの細胞、器官、または構築物を含んでも良い。例えば、所定の構造で整列した各種の細胞タイプを含む組織または器官は、細胞性組成物と考慮される。
【0034】
「混在した細胞性組成物」は、少なくとも2種類の細胞を含む細胞性組成物である。典型的に混在した細胞性組成物は、正常細胞と新生物細胞の両者を含む。細胞性組成物において細胞のほとんどが分裂細胞であることは好ましく、ウイルスは新生物細胞を選択的に殺傷するが、他の分裂細胞は必須に完全なままで残す。
【0035】
「新生物細胞を含む疑いのある」細胞性組成物は、新生物細胞を含んでいるかもしれない細胞性組成物である。例えば、新生物を有する患者から得られたいずれかの自己移植片は、新生物細胞を含んでいるかもしれない。かなりの長さの時間培養中である細胞培養物は、新生物細胞を自然発生的に含んでいるかもしれない。
【0036】
「実質的な殺傷」は、標的新生物細胞の生存能力の少なくとも約20%の減少を意味する。生存能力は処理された細胞の生存可能な細胞のカウントによって測定でき、減少の度合いは、非処理細胞における生存可能な細胞の数と処理細胞における生存可能な細胞の数を比較することによって、またはウイルス処理の前後の生存可能な細胞のカウントを比較することによって測定できる。生存能力の減少は好ましくは、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%である。
【0037】
新生物細胞は各種の態様で殺傷されて良い。例えばそれらは、新生物細胞の溶解感染(腫瘍崩壊)が可能なウイルスによって溶解されて良い。新生物細胞は、ウイルスによって直接または間接に誘導されるアポトーシスを受けて良い。前記細胞はまた、あまり好ましくはないが、ウイルスによって活性化されている免疫系によって殺傷されても良い。例えば前記ウイルスは、ナチュラルキラー細胞を活性化するサイトカインの生産を誘導し、それが次いで新生物細胞を選択的に殺傷しても良い(Zorn等, 1994)。
【0038】
「複製可能な」ウイルスは、少なくとも一つの細胞タイプで複製可能であるウイルスである。複製可能なウイルスとは反対に、「複製不能なウイルス」は、その複製に必須であるゲノムの領域においてミューテーションを含み、それ故いずれの細胞での複製が不可能なウイルスである。
【0039】
「アデノウイルス」は、約3.6キロベースの二本鎖DNAウイルスである。ヒトにおいてアデノウイルスは複製でき、眼、並びに呼吸器、胃腸、及び尿管において疾患を引き起こす。47の周知のヒト血清型のうち約3分の1が、ヒトアデノウイルス疾患のほとんどの原因に関与する(Brooks等, 1998)。
【0040】
ここで使用される用語、「ミューテートされたアデノウイルス」または「改変されたアデノウイルス」は、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠き、PBRの活性化がブロックされないように阻害またはミューテートされていていることを意味する。アデノウイルスは、抗ウイルス宿主防御機構に対抗するいくつかの遺伝子産物をコードしている。アデノウイルスのウイルス関連RNA(VAI RNAまたはVA RNA1)は小さく、アデノウイルス感染の後の遅延した時期に細胞質に高濃度で蓄積する構造化RNAである。これらのVAI RNAは、PKRの二本鎖RNA(dsRNA)結合モチーフに結合し、自己リン酸化によりRNAのdsRNA依存性活性化をブロックする。かくしてPKRは機能することができず、ウイルスは細胞内で複製できる。ビリオンの過剰生産は、最終的に細胞死を導く。ミューテートされたまたは改変されたアデノウイルスでは、VAI RNAは好ましくは転写されない。そのようなミューテートされたまたは改変されたアデノウイルスは、活性化ras経路を有さない正常細胞では複製できないであろう;しかしながら、活性化ras経路を有する細胞では感染して複製できるであろう。
【0041】
「単純ヘルペスウイルス」(HSV)は、単純ヘルペスウイルス−1(HSV-1)または単純ヘルペスウイルス−2(HSV-2)を指す。HSV遺伝子γ134.5は、PKRによって発揮される抗ウイルス効果を妨げることができる感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)の遺伝子産物をコードする。ICP34.5は、プロテインホスファターゼ1と相互作用し、その活性を再指向化して、eIF-2αを脱リン酸化することによってPKR活性を妨げる独特の機構を有する(He等, 1997)。野生型ウイルス、またはγ134.5遺伝子を欠失している遺伝的に操作されたウイルスのいずれかで感染された細胞では、eIF-2αが脱リン酸化され、γ134.5マイナスウイルスで感染された細胞では、タンパク質合成がスイッチオフされている。ICP34.5の活性が余剰である活性化ras経路を有する細胞では、γ134.5マイナスウイルスは複製可能であろう。
【0042】
ここで使用される用語、「ミューテートされたHSV」または「改変されたHSV」は、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠き、PKR活性がブロックされないように阻害またはミューテートされていることを意味する。好ましくはHSV遺伝子γ134.5は転写されない。そのようなミューテートされたまたは改変されたHSVは、活性化ras経路を有さない正常細胞では複製できないであろう;しかしながら、活性化ras経路を有する細胞では感染して複製できるであろう。
【0043】
「パラポックスウイルス」は、ポックスウイルスである。それは、ヒトを含む各種の哺乳動物腫において急性皮膚病変を誘導するウイルスである。パラポックスウイルスorfは、壊れたまたは損傷した皮膚を通じてヒツジ、ヤギ、及びヒトに天然で感染し、再生した表皮細胞で複製し、かさぶたとなる膿胞性の病変を誘導する(Haig等, 1998)。パラポックスウイルスorfは、PKR活性のブロックに関与する遺伝子OV20.0Lをコードする(Haig等, 1998)。
【0044】
ここで使用される用語、「ミューテートされたパラポックスウイルスorf」または「改変されたパラポックスウイルスorf」は、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠き、PKR活性がブロックされないように阻害またはミューテートされていることを意味する。好ましくは遺伝子OV20.0Lは転写されない。そのようなミューテートされたまたは改変されたパラポックスウイルスorfは、活性化ras経路を有さない正常細胞では複製できないであろう;しかしながら、活性化ras経路を有する細胞では感染して複製できるであろう。
【0045】
「ワクシニアウイルス」は、ヒトに感染し、局在的な病変を生ずるオルトポックスウイルス属のウイルスを指す(Brooks等, 1998)。ワクシニアウイルスは、二つの全く異なる機構でPKR活性の下流調節において役割を果たす二つの遺伝子をコードする。E3L遺伝子は、感染の早期で発現される20及び25kDaの二つのタンパク質をコードし、PKR活性を阻害できるdsRNS結合活性を有する。E3L遺伝子の欠失または破壊は、活性化ras系を有する細胞におけるウイルス複製の可能性を作り出す。ワクシニアウイルスのK3L遺伝子は、PKRの偽基質であるpK3をコードする。
【0046】
ここで使用される用語、「ミューテートされたワクシニアウイルス」または「改変されたワクシニアウイルス」は、PKRの活性化を妨げる遺伝子産物を欠き、PKR活性がブロックされないように阻害またはミューテートされていることを意味する。好ましくはE3L遺伝子及び/またはK3L遺伝子は転写されない。そのようなミューテートされたまたは改変されたワクシニアウイルスは、活性化ras経路を有さない正常細胞では複製できないであろう;しかしながら、活性化ras経路を有する細胞では感染して複製できるであろう。
【0047】
「インターフェロン感受性ウイルス」は、インターフェロンの存在下で正常細胞で複製せず、正常細胞を殺傷しないウイルスである。正常細胞は、前述のように新生物性ではない細胞である。ウイルスがインターフェロン感受性であるかを試験するために、正常細胞の培養物を、各種の濃度のインターフェロンの存在下でウイルスとインキュベートし、細胞の生存割合を当該技術分野で周知の方法に従って測定しても良い。もし20%未満、好ましくは10%未満の正常細胞が高濃度のインターフェロン(例えば100ユニット/ml)で殺傷されたならば、ウイルスはインターフェロン感受性である。
【0048】
ウイルス感染に対する細胞の「耐性」は、ウイルスでの細胞の感染が顕著なウイルス生産または収率を引き起こさないことを意味する。
【0049】
「ウイルス性腫瘍崩壊物」は、in vitroで腫瘍崩壊性ウイルスで腫瘍細胞を処理することによって調製される組成物であり、その組成物は後に、腫瘍患者においてこの腫瘍に対する免疫系を誘導するために、同じ種類の腫瘍を有する腫瘍患者に投与される。前述のように、ウイルス性腫瘍崩壊物は、必須にウイルス改変化ガン細胞膜である。
【0050】
ここで使用される用語、「移植受容者」は、細胞性組成物の移植を受ける哺乳動物である。好ましくは前記受容者はヒトであり、より好ましくは前記受容者は、ガンの治療において移植を受けるヒトである。
【0051】
方法
本発明は、新生物細胞を含む疑いのある混在した細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去するウイルスの使用に関する。各種のウイルスがこの方法において使用されて良く、そのウイルスのそれぞれが、新生物または一群の新生物に対して選択的である。レオウイルスが以下の実施例として使用されるが、当業者はここでの説明に従うことができ、レオウイルス以外のウイルスを使用することによりいずれの混在した細胞性組成物を清浄化する方法に適用できる。
【0052】
1.レオウイルス
レオウイルスが、in vitro、in vivo及びex vivoで活性化新生物細胞を選択的に溶解することを、我々は最近発見した(Coffey等, 1998; WO 99/08692)。普通では、細胞はレオウイルス感染に感受性ではない。しかしながら、ras経路が活性化されたならば、レオウイルスは細胞において成功して複製でき、最終的に宿主細胞の溶解を引き起こす。例えば、レオウイルス耐性NIH 3T3細胞が、rasを活性化するタンパク質である活性化rasまたはSosでトランスフォームされた場合、レオウイルス感染は増大された(Strong等, 1998)。同様に、レオウイルス感染に耐性であるマウス線維芽細胞は、EGFレセプター遺伝子またはv-erbB原ガン遺伝子でのトランスフェクションの後感受性となった(Strong等, 1993; Strong等, 1996)。
【0053】
一つの理論に制限されるものではないが、レオウイルス複製は翻訳レベルで調節されているようである(Strong等, 1998; Norman等, 2000)。非トランスフォーム化NIH 3T3細胞では、早期のウイルス転写物が二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ(PKR)を活性化し、それが翻訳を阻害し、それによってウイルス複製を阻害する。活性化ras(またはras経路の活性化エレメント)は、おそらくPKR活性化を阻害または不活性化するであろう。それ故、ウイルスタンパク質合成が進行し、ウイルス粒子が作製され、細胞は最終的に溶解する。
【0054】
ras原ガン遺伝子は、多数の腫瘍の原因である。ras遺伝子自体の活性化ミューテーションは、全てのヒト腫瘍の約30%で生じ(Bos, J.L., 1989)、主に膵臓(90%)、散発生大腸(50%)及び肺(40%)カルシノーマ、並びにミエロイド白血病(30%)で生じている。ras経路におけるrasの上流または下流因子の活性化も、腫瘍と関連している。例えば、HER2/Neu/ErbB2または上皮増殖因子(EGF)レセプターの過剰発現は、乳ガンにおいて一般的であり(25−30%)、血小板由来増殖因子(PDGF)レセプターまたはEGFレセプターの過剰発現は、グリオーマ及びグリオブラストーマ(40−50%)で一般的である。EGFレセプターとPDGFレセプターは、それらのそれぞれのリガンドに対する結合に際してrasを活性化することが知られており、v-erbBは細胞外ドメインを欠く構成的に活性化されたレセプターをコードする。
【0055】
我々は最初に、ガン細胞を殺傷するレオウイルスの能力を測定した。レオウイルスは、感染細胞においてアポトーシスを誘導することによる、3種のガンモデルシステム、MCF7、SKRB3及びHTB 132の腫瘍崩壊を有効に導いた(実施例1)。かくしてレオウイルス処理は、MCF7、SKRB3及びHTB 132細胞の生存能力の顕著な減少を引き起こす一方、ウイルスなしまたは死んだウイルスで処理されたコントロールは普通に増殖した(図1A−1D)。生存能力の減少は、DNA断片化、アネキシンVまたはAPO2.7染色陽性(図2A−2G)、並びに顕微鏡で観察される細胞膜の気泡、核の凝集、及びクロマチン凝集のような細胞変性効果といった、アポトーシスと関連する特徴を伴った。
【0056】
レオウイルス感染は、正常細胞において翻訳レベルで通常ブロックされるが、ras介在性新生物細胞においてはブロックされないため、レオウイルス処理MCF7細胞及びCD34+幹細胞におけるタンパク質合成の度合いを調べた(図2)。実際、ウイルスタンパク質は、レオウイルス感染ガン細胞系で合成されるが、レオウイルスで処理されたCD34+幹細胞では合成されなかった(データ示さず)。この結果は、レオウイルスタンパク質がレオウイルス処理幹細胞では合成されず、細胞タンパク質合成が普通に進行しているため、レオウイルスでの造血幹細胞の処理が安全であることを示唆している。この点を確認するために、レオウイルス処理CD34+細胞の生存能力を、レオウイルス処理の各種の時点で測定した(実施例3)。生きたレオウイルスまたはウイルスなしで処理された集団における細胞数は各時点で同じであり、CD34+細胞がレオウイルス感染に感受性ではないことを示した。
【0057】
レオウイルスが、高投与量化学療法治療における造血幹細胞の清浄化に有用であるために、レオウイルス処理が、全部の造血系を再構成するそれぞれ及び毎回の造血系列へ分化する幹細胞の能力を変えないことが必須である。それ故、レオウイルス処理の長期的な効果が評価された(実施例3)。ウイルスなしまたは生きたウイルスのいずれかで処理されたCD34+細胞は、レオウイルス処理の72時間後でさえ、白血球、赤血球または白血球赤血球マクロファージ巨核球へ分化する能力に必須に差異を示さなかった(図3B)。これらの3種の系列の間の比は、この長期的な処理の後同じままであった。従って、レオウイルス処理は、CD34+細胞を殺傷せず、造血系を再構成するするそれらの可能性を変化しなかった。
【0058】
さらにレオウイルスは、ガン細胞の混合物中のMCF7、SKRB3またはHTB 132細胞の選択的な殺傷によって示されるように、混在した細胞性組成物、及びCD34+幹細胞を含むアフェレーシス産物を清浄化できる(実施例4)。CD34、並びにMCF7、SKRB3またはHTB 132のような上皮細胞に対する特異的なマーカーであるサイトケラチンを測定することによって、レオウイルスが混在した細胞性組成物からガン細胞を必須に除去する一方(図4A−4C)、幹細胞は完全なまま維持することが示された。それ故、レオウイルス処理は、造血幹細胞組成物から新生物細胞を清浄化する有効な方法である。
【0059】
従って、本発明の一つの実施態様では、幹細胞含有自己移植片が、混在したまたは自然発生的なras活性化新生物細胞を除去するために、移植の前にレオウイルスで処理される。これは、高投与量化学療法/同種幹細胞移植治療の効力を増大する。高投与量化学療法及び同種幹細胞移植が、腫瘍を有する患者において有効に実施されているため、ホジキン病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、生殖細胞(精巣)ガン、脳腫瘍、並びに乳ガンの治療は特に興味深いであろう。しかしながら、ras経路の活性化はいずれの細胞または組織タイプでも生じ得るため、本発明の方法は、他のガンにおいても有用であり、いずれのras活性化新生物細胞を除去するためにも有用であろう。
【0060】
造血始原幹細胞は、治療に先立って患者の骨髄から得ることができる。別法として、従来の非高投与量化学療法を受けているガン患者では、コロニー刺激因子の下地の存在下または不存在下で、多くの幹細胞が典型的に末梢血で出現する。それ故、造血始原幹細胞は、アフェレーシス産物として血液から得ることができ、それは移植される前に長期に亘り貯蔵できる。本発明は、骨髄及び血液を含むいずれかの組織ソースから回収された幹細胞含有自己移植片に適用できる。
【0061】
造血幹細胞に加えて、本発明は、多くの他の細胞性組成物からras活性化新生物細胞を除去するために広く適用できる。例えばレオウイルスは、いずれかの組織または器官移植物を「クリーンアップ」(それらからのras活性化新生物細胞の除去)のために通常の実施として使用できる。前述のように、レオウイルスに対するレセプターは豊富であり、レオウイルス複製を阻害する正常細胞の機構、PKRもまた豊富であるため、本発明に応用は細胞または組織タイプによって制限されない。それ故、いずれの細胞もras活性化新生物細胞となり、レオウイルス感染に感受性となる。後の輸血のための全血またはそのいずれかの一部をクリーンアップするための本発明の方法は特に興味深い。同様に、組織または器官移植はますます一般的となり、移植の前にras活性化新生物細胞を除去するように移植物が処理できれば有益であろう。肝臓、腎臓、心臓、角膜、皮膚移植片、膵島細胞、骨髄、またはそれらのいずれかの一部は、本発明を適用できる組織または器官の例である。
【0062】
組織または器官は、自己物、同種物、または異種物であることができる。組織または器官はまた、トランスジェニック動物から由来しても良く、幹細胞からin vitroで形成された物、またはex vivoで増大したものである組織/器官でも良い。レオウイルスで処理される組織または器官は、胚性または成人由来であることができる。例えば、胚性神経細胞は、アルツハイマー患者に移植される前に処理できる。同様に本発明は、ex vivoで精子またはドナーの卵を処理するために使用できる。
【0063】
本発明の応用は、移植物に制限されない。むしろいずれの細胞性組成物も、いずれかの目的でレオウイルスで「クリーンアップ」できる。かくして、前述の全ての例は、組織または器官が移植のためのものを意味しなくても応用可能である。
【0064】
細胞系はまた、自然発生的または混在したras活性化新生物細胞に対して保護するために通常処理されても良い。再現すると、もちろんras経路の活性化によってトランスフォームされた細胞系を除き、いずれの細胞系もこの方法のための適格な候補であろう。
【0065】
最近多くの研究室が、免疫抑制マウス中に接種されたヒト前立腺ガン組織の連続的に移植可能な異種移植片を確立することを試みている。しかしながら、マウスガン細胞の混在が、移植片の連続する継代培養の間でしばしば生じており、これらの細胞を最終的にヒト前立腺ガン細胞に成長させ得る(Gao等, 1999)。混在したガンがras介在性であり、移植片がそうでなければ、本発明のこの問題に対する簡単な解決策となるであろう。
【0066】
本発明は、ウイルス性腫瘍崩壊物の調製方法とは区別される。腫瘍細胞は、しばしば免疫応答の微弱なインデューサーであり、それ故免疫系の攻撃を逃れることができる。ウイルス性腫瘍崩壊物、特にウイルス改変化腫瘍細胞膜は、腫瘍細胞の免疫原性を増大するためのアプローチにおいて使用されている。ウイルス性腫瘍崩壊物を調製するために、腫瘍細胞は腫瘍を有する患者から除去されて、腫瘍細胞を溶解するウイルスで感染される。次いで生成した物質は、腫瘍を有する患者に投与され、非感染腫瘍細胞に対する免疫がしばしば誘導される。腫瘍細胞のウイルス感染が非感染腫瘍細胞に免疫を誘導する機構は知られていないが、腫瘍細胞のウイルス異種化が関与しているかもしれない(Steele, 2000)。
【0067】
インフルエンザウイルス感染メラノーマ、外陰部カルシノーマ、及び卵巣カルシノーマの腫瘍崩壊物、並びにニューカッスル病ウイルス感染大腸カルシノーマの腫瘍崩壊物、及びワクシニアウイルス腫瘍崩壊物は、全て各種の腫瘍に対して使用されている。例えば、メラノーマ患者は、腫瘍の外科的摘出の後腫瘍崩壊物を受け取った。ウイルス性腫瘍崩壊物は、毎週で4週まで、2週間ごとに52週まで、3週間ごとに120週まで、および6週間ごとに160週まで投与された。別の臨床上のケースでは、大腸ガンに対する自己NDV腫瘍崩壊物の投与スケジュールは、手術の後2週間で開始され、2週間の間隔で5回繰り返され、引き続き3ヶ月後に一度追加された(Nemunaitis, 1999)。この研究により、ある患者では臨床上の応答、または腫瘍抗原に対する活性な免疫の生産が示された(Steele, 2000)。
【0068】
本発明は、ウイルス改変化腫瘍細胞に関連しないウイルス性腫瘍崩壊物とは別個である。ウイルス性腫瘍崩壊物とは対照的に、溶解した新生物細胞は、本発明の効力に影響することなくウイルス処理化細胞性組成物から除去でき、好ましくは除去される。さらに、ウイルス性腫瘍崩壊物は、ほとんどの腫瘍細胞を使用して調製される一方、本発明における混在した細胞性組成物は、好ましくは60%未満、より好ましくは40%未満、さらにより好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満の新生物細胞を含む。
【0069】
2.ras活性化新生物細胞を選択的に殺傷する他のウイルス
通常ウイルスが細胞に侵入すると、二本鎖RNAキナーゼ(PKR)が活性化され、タンパク質合成をブロックし、ウイルスはこの細胞では複製できない、あるウイルスはPKRを阻害し、ウイルスタンパク質合成、並びにウイルス複製を容易にするシステムを発達している。例えば、アデノウイルスは大量の小さなRNA、VA1 RNAを作製する。VA1 RNAは、伸長した二次構造を有し、通常PKRを活性化する二本鎖RNA(dsRNA)と競合してPKRに結合する。PKRを活性化するために最小の長さのdsRNAが必要であるため、VA1 RNAはPKRを活性化しない。代わりに、それはその大きな量によってPKRを隔離する。その結果タンパク質合成はブロックされず、アデノウイルスは細胞内で複製できる。
【0070】
ワクシニアウイルスは、異なる機構でPKRを下流調節する二つの遺伝子産物、K3LとE3Lをコードする。K3L遺伝子産物は、PKRの天然の基質であるeIF-2αのN末端領域と制限されたホモロジーを有し、PKRの偽基質として機能するであろう。E3L遺伝子産物は、dsRNA結合タンパク質であり、隔離アクチベーターdsRNAによって機能するようである。
【0071】
同様に、単純ヘルペスウイルス(HSV)遺伝子γ134.5は、PKRによって発揮される抗ウイルス効果を妨げることができる感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)の遺伝子産物をコードする。パラポックスウイルスorfウイルスは、PKR活性のブロックに関与する遺伝子OV20.0Lをコードする。かくしてこれらのウイルスは、PKRによって阻害されることなく細胞を成功して感染できる。
【0072】
前述のように、ras活性化新生物細胞は、rasがPKRを不活性化するため、PKRによるタンパク質合成阻害を受けない。それ故これらの細胞は、ウイルスがPKR阻害システムを有さなくとも、ウイルス感染に感受性である。従って、もしアデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはパラポックスorfウイルスにおいてPKR阻害が、PKR機能をさらにブロックするようにミューテートされたならば、生成したウイルスは、PKRによるタンパク質合成阻害のために正常細胞に感染しないが、PKR活性を欠くras活性化新生物細胞では複製する。
【0073】
従って本発明は、PKR機能を阻害しないように改変またはミューテートされた、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはパラポックスウイルスorfウイルスによる、混在した細胞性組成物からras活性化新生物細胞を除去する方法を提供する。改変されたまたはミューテートされたウイルスは、ras活性化新生物細胞において選択的に複製する一方、正常細胞は耐性である。好ましくはこの実施態様では、アデノウイルスはVA1領域でミューテートされ、ワクシニアウイルスはK3L及び/またはE3L領域でミューテートされ、単純ヘルペスウイルスはγ134.5遺伝子でミューテートされ、パラポックスウイルスorfウイルスはOV20.0L遺伝子ミューテートされる。
【0074】
ウイルスは、ウイルスPKRインヒビターの周知の構造−機能相互関係に従ってミューテートまたは改変できる。例えば、E3タンパク質のアミノ末端領域は、PKRのカルボキシ末端領域ドメインと相互作用するため、このドメインの欠失またはポイントミューテーションは、抗PKR機能を妨げる(Chang等, 1992, 1993, 1995; Sharp等, 1998; Romano等, 1998)。ワクシニアウイルスのK3L遺伝子は、PKRの偽基質であるpK3をコードする。K3L内には機能損失ミューテーションが存在する。K3Lタンパク質のC末端部分内の切り詰めまたはポイントミューテーションの配置にのいずれかによって、eIF-2αにおける79から83残基に相同的な部分が、PKR阻害活性を破壊する(Kawagishi-Kobayashi等, 1997)。
【0075】
3.腫瘍サプレッサー遺伝子または腫瘍サプレッサー関連遺伝子を有するウイルス
本発明の別の特徴点では、ウイルスは腫瘍サプレッサー遺伝子を有することによって新生物細胞を選択的に殺傷する。例えばp53は、正常細胞の非制御的な増殖を阻害する細胞性腫瘍サプレッサーである。しかしながら全ての腫瘍の約半分は、機能的に損傷したp53を有し、非制御的な態様で増殖する。それ故、野生型p53遺伝子を発現するウイルスは、p53遺伝子産物の不活性化のため新生物性となった新生物細胞を選択的に殺傷できる。そのようなウイルスは構築されており、ミュータントp53を発現するガン細胞においてアポトーシスを誘導することが示されている(Blagosklonny等, 1996)。
【0076】
同様なアプローチは、腫瘍サプレッサーのウイルス性の阻害を含む。例えば、特定のアデノウイルス、SV40及び広パピローマウイルスは、p53を不活性化するタンパク質を含み、それによってそれ自体の複製を可能にする(Nemunaitis 1999)。アデノウイルス血清型5については、このタンパク質はE1B領域によってコードされる55Kdタンパク質である。もしONYX-015ウイルスにおけるように、この55kdタンパク質をコードするE1B領域が欠失されたならば、(Bischoff等, 1996; Heise等, 2000; WO 94/18992)、55kdp53インヒビターはもはや存在しない。その結果、ONYX-015が正常細胞に侵入すると、p53は細胞増殖、並びに細胞増殖マシネリーに依存するウイルス複製を抑制するように機能する。それ故、ONYX-015は正常細胞において複製しない。他方で、破壊されたp53機能を有する新生物細胞では、ONYX-015は複製でき、結果として細胞を死に導く。従ってこのウイルスは、混在した細胞性組成物からp53欠失新生物細胞に選択に感染し、それを除去するために使用できる。当業者は、確立された方法に従って、アデノウイルス5または他のウイルスにおいてp53インヒビター遺伝子をミューテートして破壊でき、生成したウイルスは、混在した細胞性組成物から新生物細胞を除去するために本発明の方法で有用である。
【0077】
別の例は、E1A領域において24塩基対の欠失を有するミューテートされたアデノウイルスであるDelta24ウイルスである(Fueyo等, 2000)。この領域は、細胞性腫瘍サプレッサーRbに結合し、Rb機能を阻害し、それによって細胞増殖マシネリーを可能にし、ウイルス複製を非制御的な態様で進行させることに関与する。Delta24は、Rb結合領域において欠失を有し、Rbに結合しない。それ故、ミュータントウイルスの複製は、正常細胞ではRbによって阻害される。しかしながら、もしRbが不活性化され、細胞が新生物となると、Delta24はもはや阻害されない。代わりに、ミューテートされたウイルスは効率的に複製し、Rb欠失細胞を溶解する。再現すると、このウイルスは新生物細胞に特異的であり、混在した細胞性組成物を清浄化し、Rb欠失細胞を除去するために使用できる。
【0078】
4.他のウイルス
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、インターフェロンの存在下で新生物細胞を選択的に殺傷する。インターフェロンは、細胞表面レセプターに結合する循環因子であり、抗ウイルス応答と増殖阻害の誘導及び/または標的細胞におけるアポトーシスシグナルの誘導の両者を最終的に導く。インターフェロンは、腫瘍細胞の増殖を阻害するために理論的には使用できるが、インターフェロン経路のメンバーの腫瘍特異的なミューテーションのため、この試みはあまり成功していない。
【0079】
しかしながら、インターフェロンによって発揮される増殖阻害を避けるために、インターフェロン経路を破壊することによって、腫瘍細胞は抗ウイルス応答を自然発生的に抑制しているかもしれない。実際、エンベロープ化ネガティブセンスRNAウイルスであるVSVは、インターフェロンの存在下で各種のヒト腫瘍細胞系で迅速に複製してそれを殺傷し、一方で正常ヒト一次細胞培養物は、インターフェロンによって明白に保護された。VSVの腫瘍内感染はまた、皮下ヒトメラノーマ異種移植片を有するヌードマウスの腫瘍の重さを減少した(Stojdl等, 2000)。
【0080】
従って、本発明の別の実施態様では、インターフェロンの存在下で混在した細胞性組成物から新生物細胞を除去するためにVSVが使用される。さらに、本発明のこの特徴点は、いずれかの他のインターフェロン感受性ウイルス(WO 99/18799)特にインターフェロンの存在下で正常細胞で複製しないウイルスに適用されることが企図される。そのようなウイルスは、正常細胞の培養物を増殖し、その培養物を各種の濃度のインターフェロンの存在下で興味あるウイルスと接触させ、次いでインキュベーション期間の後の細胞殺傷のパーセンテージを測定することによって同定されても良い。好ましくは、20%未満の正常細胞が殺傷され、より好ましくは10%未満が殺傷される。
【0081】
ある新生物細胞は高レベルの酵素を発現し、この酵素に依存するウイルスを構築するという事実を利用することも可能である。例えば、リボヌクレオチドレダクターゼは肝臓転移物に豊富であるが、正常な肝臓では欠乏している。それ故、リボヌクレオチドレダクターゼ発現において欠失している単純ヘルペスウイルス1(HSV-1)μテントのhrR3は、大腸カルシノーマ細胞において複製するが、正常な肝臓細胞では複製しないことが示された(Yoon等, 2000)。
【0082】
前述のウイルスに加えて、各種の他のウイルスが腫瘍の殺傷と関連しているが、存在する機構は常に明らかであるわけではない。ニューカッスル病ウイルス(NDP)は、悪性細胞で選択的に複製し、その最も一般的に使用される株は73-Tである(Reichard等, 1992; Zorn等, 1994; Bar-Eli等, 1996)。NDPが腫瘍内接種の後腫瘍の重さを減少するという臨床上の抗腫瘍活性も、子宮系、大腸、膵臓、胃、メラノーマ、及び腎臓ガンを含む各種の腫瘍で観察された(WO 94/25627; Nemunaitis, 1999)。それ故、NDVは混在した細胞性組成物から新生物細胞を除去するために使用できる。
【0083】
さらに、ワクシニアウイルスは、いくつかの悪性腫瘍細胞系で増殖できた。脳炎ウイルスは、マウス肉腫において腫瘍崩壊効果を有することが示されたが、正常細胞におけるその感染を減少するための減弱化は必要でないであろう。腫瘍抑制は、帯状疱疹、肝炎ウイルス、インフルエンザ、水痘、及び麻疹ウイルスで感染された腫瘍患者において記載されている(レビューとして、Nemunaitis, 1999参照)。ここに開示された方法及び当該技術分野で周知の方法に従って、当業者は新生物細胞を選択的に殺傷するこれらまたは他のウイルスの能力を試験でき、興味ある混在した細胞性組成物から新生物細胞を除去するためにウイルスが使用できるかどうかを決定できる。
【0084】
4.ウイルス処理の後のウイルスの除去
本発明において使用されるウイルスは正常細胞では複製しないが、ウイルス処理された細胞性組成物を使用する前にウイルスを除去することが望ましいであろう。例えばレオウイルスは、いずれかの周知の疾患と関連するものではないが、化学療法のため免疫系が弱化されたガン患者にはより感染性であるかもしれない。それ故、もしレオウイルスが、造血幹細胞を含む組成物を処理するために使用され、それがその後にガン患者に移植されるのであれば、レオウイルスは細胞性組成物の移植の前に除去できる。
【0085】
従って、本発明の別の実施態様では、ウイルスで処理された細胞性組成物は、DMSOを含む溶液で凍結され、移植の前に解凍される。DMSOは動物細胞を凍結して貯蔵するために一般的に使用される一方、それはウイルスを変性し、それによって幹細胞調製物から感染性ウイルスを除去する。これはウイルスが幹細胞移植を介して移植受容者内に導入された場合の非所望の感染を引き起こす危険を減少する。
【0086】
別の実施態様では、ウイルス処理された細胞組成物は、ウイルスを不活性化または溶解するために、特定のウイルスに対する抗体、または特定の抗体と補体の組み合わせで処理される。別法としてまたは加えて、特定のウイルスの表面の分子を認識する特異的な抗体が、ウイルス処理された細胞性組成物からウイルス粒子を除去するために使用されても良い。かくして、前記抗体は、当該技術分野で周知のカラム、ビーズ、またはいずれかの他の物質に固定化され、細胞性組成物を固定化抗体に適用し、抗体に結合しない組成物の一部を、固定化の特定の方法に適した方法に従って回収する。
【0087】
ウイルス処理された混合物からウイルスを除去するために使用されても良い別の方法は、ウイルスから細胞を分離し、細胞のみを含む層を回収する勾配に混合物をかけることである。
【0088】
別の実施態様では、移植受容者は、ウイルス感染の危険を減少するために免疫系を刺激する治療を受ける。この治療は、移植の前、同時、または後に実施されても良いが、移植の前に実施されるのが好ましい。別法の治療として、または免疫系刺激剤と組み合わせて、ウイルス感染の危険を減少するために、受容者は特定のウイルスに対する特異的な抗体が与えられることができる。
【0089】
組成物
本発明は、細胞性組成物において含まれる新生物細胞の実質的な殺傷をウイルスが引き起こすウイルス処理に、混在した細胞性組成物をかけることによって調製される組成物を提供する。この組成物は、ウイルス性腫瘍崩壊物ではない。ウイルス性腫瘍崩壊物は、ウイルスによる腫瘍細胞の腫瘍崩壊から生ずる組成物であり、活性成分としてウイルス改変化腫瘍細胞膜を含む。本発明では対照的に、ウイルス処理された細胞性組成物における活性成分は生存している非新生物細胞である。
【0090】
キット
前述のウイルスの全ては、新生物細胞を含んでも良い混在した細胞性組成物を清浄化するために使用できる。所望であれば、ウイルスが特定の細胞性組成物を清浄化するために使用できるかが最初に決定されても良い。例えば、混在した細胞性組成物が、ガン患者から得られた造血幹細胞を含む場合、ガンの生検が事前に回収され、ウイルスがそのガン細胞を有効に殺傷できるかを測定するために各種のウイルスで処理することができる。次いでそのウイルスが、造血幹細胞を清浄化するために使用できる。
【0091】
別法として、混在した細胞性組成物は、各ウイルスの効力を最初に測定することなく、ウイルスのカクテルで処理されても良い。従って本発明は、異なるまたはオーバーラップした特異性を有するウイルスの群を含むキットを提供する。例えば前記キットは、ras活性化新生物細胞に対するレオウイルス、p53欠失新生物細胞に対するp53発現ウイルス、Rb欠失新生物細胞に対するDelta24、p53欠失新生物細胞に対するOnyx-015、インターフェロン耐性新生物細胞に対する水疱性口内炎ウイルス、またはそれらのサブセットを含んでも良い。
【0092】
以下の実施例は、本発明を説明するために与えられ、いずれの態様でも本発明の範囲を制限するものとしては考慮されるべきではない。
【実施例】
【0093】
以下の実施例では、以下の略語は以下の意味を有する。定義されていない略語は、一般的に受け入れられている意味を有する
℃ = 摂氏の温度
hr = 時間
min = 分
μM = マイクロモーラー
mM = ミリモーラー
M = モーラー
ml = ミリリットル
μl = マイクロリットル
mg = ミリグラム
μg = マイクログラム
PAGE = ポリアクリルアミドゲル電気泳動
rpm = 回転/分
FBS = 胎児ウシ血清
DTT = ジチオスレイトール
SDS = ドデシル硫酸ナトリウム
PBS = リン酸緩衝生理食塩水
DMEM = ダルベッコ修飾イーグル培地
α−MEM = α−修飾イーゲル培地
β−ME = β−メルカプトエタノール
MOI = 感染の多様性
PFU = プラーク形成ユニット
PKR = 二本鎖RNA活性化プロテインキナーゼ
EGF = 上皮増殖因子
PDGF = 血小板由来増殖因子
DMSO = ジメチルスルホキシド
CPE = 細胞変性効果
GCSF = 顆粒球コロニー刺激因子
【0094】
実施例1:レオウイルスは乳ガン細胞におけるレオウイルス誘導腫瘍崩壊とアポトーシスを誘導した
新生物細胞の生存能力に対するレオウイルスの効果を測定するために、最初に3種の乳ガンモデル系、MCF7(ATCCナンバーHTB-22)、SKBR3(ATCCナンバーHTB-30)、及びMDA MB 468(ATCCナンバーHTB 132)を使用した。各細胞系の細胞を50−60%の密度に増殖し、40の感染の多様性でレオウイルス血清型3、Dearing株で感染した。レオウイルスは、米国特許第6,136,307号に記載されたように得て維持した。レオウイルス感染及び非感染細胞を、感染の0、24、48及び72時間後に回収し、生存能力を測定した。
【0095】
その結果は図1A−1Dに示されている。レオウイルス感染MCF7(図1A)、SKBR3(図1B)、またはMDA MB 468細胞(図1C)における生存細胞カウントは感染の後に有意に減少する一方、死んだウイルスまたはウイルスなしで感染された細胞は、予測されるように増殖した。レオウイルス処理は、MCF7(図1D)及びSKBR3の生存の能力を感染の後72時間までに93%から16%の減少を引き起こした。MDA MB 468細胞では、ウイルス処理された完全な細胞数は、感染の24、48及び72時間までに、それぞれ元の細胞数の12.7%、8.8%及び3.6%に減少した。かくしてレオウイルスは、全ての3種のガン細胞において有効に腫瘍崩壊を引き起こした。
【0096】
細胞はアポトーシスによって死んだ。CPE、アネキシンV及びDNA断片化のような典型的なアポトーシスマーカーが、生存能力の減少と平行にタイムコースで観察できた。図2A−2Gは、レオウイルス感染の後の各種の時点でのDNA断片化(図2A−2C)、アネキシンV染色(2D)、またはAPO2.7+細胞(2E−2G)のパーセンテージを示す。レオウイルスで処理された細胞は、ウイルスなしまたは死んだ細胞でのコントロールと比較して、劇的なレベルでアポトーシスの全ての兆候を示し、これら3種の細胞系の全てでレオウイルスがアポトーシスを誘導したことを示した。コントロールにおけるアポトーシスは、時間と共にゆっくりと増大するようであり、おそらく細胞があまりに高密度で増殖した場合に死に始めるためであろう。
【0097】
実施例2:レオウイルスはガン細胞においてタンパク質合成を阻害するが、CD34+幹細胞では阻害しなかった
幹細胞の選択的なウイルス感染のさらなる証拠のために、ウイルスタンパク質の35Sラベリング/SDS/PAGEを実施した。ウイルスタンパク質合成は、レオウイルスで感染されたMCF7細胞において1−2日後に明らかであった一方、細胞のタンパク質合成は同じ時点で減少し、レオウイルスが細胞マシネリーを乗っ取っていることが示された。感染の4日後では、タンパク質合成はさらには検出できず、全ての細胞が死んでいることを示唆した。細胞を死んだレオウイルスまたはウイルスなしで感染したコントロール実験では、ウイルスタンパク質合成は存在しない一方、細胞のタンパク質合成は正常レベルであった。対照的に、レオウイルスの存在下または不存在下でのCD34+幹細胞の35Sラベリングは、ウイルスの添加の後72時間までウイルスタンパク質合成を示さなかった。それ故、レオウイルスはMCF7細胞に選択的に感染するが、CD34+幹細胞には感染しない。
【0098】
実施例3:レオウイルス処理はCD34+細胞の細胞増殖を阻害せず、分化能力も改変しなかった
タンパク質合成の結果と一致して、生存細胞カウントは、レオウイルス処理が、ウイルスなしのコントロールと比較してCD34+細胞における生存細胞の数を減少しないことを示した(図3A)。
【0099】
CD34+細胞の数はレオウイルス感染によって影響されない一方で、適切な割合で全ての造血系列に分化するCD34+細胞の能力を、レオウイルスは変化しないかどうか疑問が残った。もしこの場合であれば、レオウイルスで処理された幹細胞は、全部の造血系の再構成のための適切な候補足り得ないであろう。この可能性を調べるために、CD34+細胞をレオウイルス細胞でそれぞれ2、24、48または72時間インキュベートした。次いでレオウイルスを除去し、細胞を希釈して、14日間新鮮な培地で培養し、コロニーを形成させた。各コロニーを、白血球、赤血球、または白血球赤血球マクロファージ巨核球に属するかどうか測定するために調べた。図3Bに召されるように、生存ウイルスで処理された幹細胞(LV)は、ウイルスなし(NV)のコントロールと同様な白血球(G)、赤血球(E)または白血球赤血球マクロファージ巨核球(GEMM)の数を生産した。それ故、レオウイルス処理は、CD34+細胞の分化能力を変えなかった。
【0100】
実施例4:レオウイルスは混在した細胞性組成物からガン細胞を選択的に除去した
新生物細胞をアフェレーシス産物と混合し、レオウイルス感染にかけ、レオウイルスが混在した細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去できるかを調べた。アフェレーシス産物は、以前に記載された方法に従って調製した(Stewart等, 1999; Duggan等, 2000)。アフェレーシス産物(90%)とMCF7(10%)の混合物をレオウイルスで処理し、細胞カウントを生存能力について毎日試験すると、サイトケラチンポジティブMCF7細胞の数の100倍の枯渇が存在する一方、CD34+細胞は完全で生存したままであった。図4A−4Cは、MCF7、SKBR3またはMDA MB 468細胞を有するアフェレーシス産物の混合物に対するレオウイルスの清浄化効果を示す。これらの結果は、レオウイルスが細胞混合物中の新生物細胞を選択的に殺傷し、幹細胞は完全なまま維持すること示す。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1A】図1Aは、示されているように生存レオウイルス、死んだウイルス、ウイルスなしで感染されたMCF7における生存細胞の数を示す図である。
【図1B】図1Bは、示されているように生存レオウイルス、死んだウイルス、ウイルスなしで感染されたSKRB3における生存細胞の数を示す図である。
【図1C】図1Cは、示されているように生存レオウイルス、死んだウイルス、ウイルスなしで感染されたHTB132における生存細胞の数を示す図である。
【図1D】図1Dは、レオウイルス感染の後の各種の時点での生存中のMCF7細胞のパーセンテージを示す図である。
【図2A】図2Aは、MCF7細胞におけるレオウイルス感染によってアポトーシスが誘導されたことを示す図である。レオウイルス感染の後に断片化したDNAのパーセンテージが示されている。
【図2B】図2Bは、SKRB3細胞におけるレオウイルス感染によってアポトーシスが誘導されたことを示す図である。レオウイルス感染の後に断片化したDNAのパーセンテージが示されている。
【図2C】図2Cは、HTB1327細胞におけるレオウイルス感染によってアポトーシスが誘導されたことを示す図である。レオウイルス感染の後に断片化したDNAのパーセンテージが示されている。
【図2D】図2Dは、レオウイルス感染の後のアポトーシスマーカーアネキシンV染色のパーセンテージを示す図である。
【図2E】図2Eは、MCF7細胞におけるAPO2.7+細胞のパーセンテージを示す図である。
【図2F】図2Fは、HTB132細胞におけるAPO2.7+細胞のパーセンテージを示す図である。
【図2G】図2Gは、SKRB3細胞におけるAPO2.7+細胞のパーセンテージを示す図である。
【図3A】図3Aは、CD34+幹細胞がレオウイルスで感染された後の各種の時点での生存細胞の数を示す図である。
【図3B】図3Bは、長期的な幹細胞培養に対するレオウイルスの効果を示す図である。幹細胞をレオウイルスで感染し、それぞれ2,24,48または72時間インキュベートし、次いで細胞を希釈して細胞を14日間培養し、個々のコロニーを形成させた。顆粒球(G)、赤血球(E)、または顆粒球赤血球マクロファージ巨核球(GEMM)の各種のコロニーの数を、それぞれウイルスなし(NV)及び生存ウイルス(LV)で感染した細胞について測定した。例えば、NV-Gはウイルスなしで処理された細胞から由来する顆粒球コロニーを示し、LV-Gは生存ウイルスで処理された細胞から由来する顆粒球を示す。
【図4A】図4Aは、MCF7細胞を有するアフェレーシス産物の混合物に対するレオウイルスの清浄化効果を示す図である。
【図4B】図4Bは、MDA MB 468細胞を有するアフェレーシス産物の混合物に対するレオウイルスの清浄化効果を示す図である。
【図4C】図4Cは、SKRB3細胞を有するアフェレーシス産物の混合物に対するレオウイルスの清浄化効果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混在した細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去する方法であって、前記組成物を生きた生物の外側に配置し、以下の工程:
(a)前記組成物から新生物細胞を選択的に除去するように、新生物細胞の実質的な殺傷を引き起こす条件下で、混在した細胞性組成物をウイルスと接触させる工程;並びに
(b)処理された細胞性組成物を回収する工程;
を含む方法。
【請求項2】
混在した細胞性組成物が造血幹細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
造血幹細胞が骨髄から収集されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
造血幹細胞が血液から収集されている、請求項2記載の方法。
【請求項5】
細胞性組成物が、組織、器官、または組織若しくは器官のいずれかの一部を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
組織または器官が、肝臓、腎臓、心臓、大腸、皮膚、肺、膵島細胞、及び全血からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
組織、器官、または組織若しくは器官の一部が、移植に有用である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
細胞性組成物が、培養細胞、精子、または卵を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ウイルスが複製可能ウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ウイルスがレオウイルスではない、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ウイルスが、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、及びパラポックスウイルスorfからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ウイルスが、二本鎖RNAキナーゼ(PKR)を阻害する遺伝子産物を生産しないようにミューテートまたは改変されている、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アデノウイルスが、生成したE1A遺伝子産物がRbに結合しないようにE1A領域でミューテートされている、請求項11記載の方法。
【請求項14】
アデノウイルスが、生成したE1B遺伝子産物がp53に結合しないようにE1B領域でミューテートされている、請求項11記載の方法。
【請求項15】
アデノウイルスが野生型p53タンパク質を発現可能である、請求項11記載の方法。
【請求項16】
混在した細胞性組成物にインターフェロンを添加することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
インターフェロンが、ウイルスの前またはウイルスと同時に添加される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ウイルスがインターフェロン感受性ウイルスである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
ウイルスが水疱性口内炎ウイルス(VSV)である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ウイルスがニューカッスル病ウイルス(NDV)ではない、請求項1記載の方法。
【請求項21】
ウイルスで処理された細胞性組成物からウイルスを除去する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
ウイルスで処理された細胞性組成物を貯蔵する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
細胞性組成物がDMSOを含む溶液中に貯蔵される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項1記載のウイルスで処理された細胞性組成物を含む、生存可能な非新生物細胞の組成物。
【請求項25】
レオウイルス、機能的なp53タンパク質を発現するウイルス、Delta24、ONYX-015、ニューカッスル病ウイルス、及び水疱性口内炎ウイルスからなる群から選択される少なくとも二つのウイルスを含むキット。
【請求項1】
混在した細胞性組成物から新生物細胞を選択的に除去する方法であって、前記組成物を生きた生物の外側に配置し、以下の工程:
(a)前記組成物から新生物細胞を選択的に除去するように、新生物細胞の実質的な殺傷を引き起こす条件下で、混在した細胞性組成物をウイルスと接触させる工程;並びに
(b)処理された細胞性組成物を回収する工程;
を含む方法。
【請求項2】
混在した細胞性組成物が造血幹細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
造血幹細胞が骨髄から収集されている、請求項2記載の方法。
【請求項4】
造血幹細胞が血液から収集されている、請求項2記載の方法。
【請求項5】
細胞性組成物が、組織、器官、または組織若しくは器官のいずれかの一部を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
組織または器官が、肝臓、腎臓、心臓、大腸、皮膚、肺、膵島細胞、及び全血からなる群から選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
組織、器官、または組織若しくは器官の一部が、移植に有用である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
細胞性組成物が、培養細胞、精子、または卵を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ウイルスが複製可能ウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
ウイルスがレオウイルスではない、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ウイルスが、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、及びパラポックスウイルスorfからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ウイルスが、二本鎖RNAキナーゼ(PKR)を阻害する遺伝子産物を生産しないようにミューテートまたは改変されている、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アデノウイルスが、生成したE1A遺伝子産物がRbに結合しないようにE1A領域でミューテートされている、請求項11記載の方法。
【請求項14】
アデノウイルスが、生成したE1B遺伝子産物がp53に結合しないようにE1B領域でミューテートされている、請求項11記載の方法。
【請求項15】
アデノウイルスが野生型p53タンパク質を発現可能である、請求項11記載の方法。
【請求項16】
混在した細胞性組成物にインターフェロンを添加することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
インターフェロンが、ウイルスの前またはウイルスと同時に添加される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
ウイルスがインターフェロン感受性ウイルスである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
ウイルスが水疱性口内炎ウイルス(VSV)である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ウイルスがニューカッスル病ウイルス(NDV)ではない、請求項1記載の方法。
【請求項21】
ウイルスで処理された細胞性組成物からウイルスを除去する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
ウイルスで処理された細胞性組成物を貯蔵する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
細胞性組成物がDMSOを含む溶液中に貯蔵される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
請求項1記載のウイルスで処理された細胞性組成物を含む、生存可能な非新生物細胞の組成物。
【請求項25】
レオウイルス、機能的なp53タンパク質を発現するウイルス、Delta24、ONYX-015、ニューカッスル病ウイルス、及び水疱性口内炎ウイルスからなる群から選択される少なくとも二つのウイルスを含むキット。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【公開番号】特開2008−283982(P2008−283982A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166112(P2008−166112)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【分割の表示】特願2001−580319(P2001−580319)の分割
【原出願日】平成13年5月1日(2001.5.1)
【出願人】(501332264)オンコリティクス バイオテク,インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【分割の表示】特願2001−580319(P2001−580319)の分割
【原出願日】平成13年5月1日(2001.5.1)
【出願人】(501332264)オンコリティクス バイオテク,インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】
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