説明

混練処理装置の負荷監視方法及び負荷監視装置

【課題】 押出機や混練機において、設計上の機械強度は超えないが疲労破壊の原因となる負荷が加わって疲労破壊することからスクリュ軸を保護する。
【解決手段】スクリュ軸3の入力軸部5に設けられた負荷検出装置7により、入力軸部5に対する負荷(トルクT)を検出し、検出された負荷の負荷平均値Taと負荷振幅値Twとから過負荷状態を判定し、過負荷状態を維持している過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えたときに、異常警報22の報知及び/又はスクリュ軸3の回転停止を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機や混練機などの混練処理装置において、スクリュ軸に加わる負荷を監視する負荷監視方法及び負荷監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
混練機や押出機など混練処理装置は、軸方向に沿って長い空洞部を有するバレルと、バレルに供給された被混練材料を混練するスクリュ軸と、このスクリュ軸を回転させる駆動装置を備えている。スクリュ軸は混練翼を有しており、この混練翼が被混練材料を混練している。
混練において、被混練材料が十分に溶融していなかったり混練されにくい材料であったりすると、スクリュ軸に設計強度以上の負荷が加わることがある。そのため、従来の混練処理装置にはスクリュ軸に設計強度以上の負荷が加わらないように監視する負荷監視装置が設けられている。
【0003】
例えば特許文献1には、負荷監視装置を有する押出機が開示されている。特許文献1の押出機の負荷監視装置は、駆動装置に取り付けられた回転数センサとスクリュ軸に取り付けられた回転数センサでそれぞれの箇所の回転数を検出し、両者の回転数の差を負荷として捉え、負荷がスクリュ軸の設計上の機械強度を超えないように監視する。この押出機では、スクリュ軸に設計強度以上の負荷が加わった場合、スクリュ軸の回転速度を下げたり被混練材料の原料供給量を減少させたりしてスクリュ軸を保護する機構になっている。
【特許文献1】特開2000−225641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の押出機においては、設計上の機械強度を超えない程度の繰り返し負荷がスクリュ軸に加わって疲労破壊する場合までは考慮されていない。そのため、負荷がスクリュ軸の設計上の機械強度を超えないように運転を続けても、疲労破壊によりスクリュ軸が破壊されてしまう虞がある。
一方、特許文献1の押出機においては、スクリュ軸の設計上の機械強度より小さい負荷に制御してスクリュ軸を保護することもできる。しかし、あまり小さい負荷にしようとするとスクリュ軸の回転速度を下げたり被混練材料の原料供給量を減少させたりするため、稼働率が低下したり、また回転速度や原料供給量の制御の頻度が増加して供給量が大きく変動したりして、生産性を著しく悪化させてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、設計上の機械強度を超えない負荷がスクリュ軸に累積的に加わる場合において、疲労破壊の原因となる負荷がスクリュ軸に一定の時間以上に亘って加わらないように監視することができ、スクリュ軸を疲労破壊から保護することができる混練処理装置の負荷監視方法及び負荷監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の混練処理装置の負荷監視方法は次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の混練処理装置の負荷監視方法は、モータからの動力が伝達される入力軸部を有し且つ被混練材料を混練するスクリュ軸を備えた混練処理装置の負荷監視方法であって、
前記スクリュ軸の入力軸部に設けられた負荷検出装置により、当該入力軸部に対する負荷を検出し、
検出された負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めると共に、当該時間区間における負荷の最大値と最小値との差をとり負荷振幅値を求め、
求めた負荷平均値及び負荷振幅値が、予め定められた正常範囲内にある場合は正常状態と判定すると共に正常範囲内に無いときは過負荷状態であると判定し、
前記過負荷状態である場合は、過負荷状態を維持している時間を過負荷継続時間として積算してゆき、
前記正常状態である場合は、前記過負荷継続時間をリセットし、
前記過負荷継続時間が設定時間を超えたときに、異常警報の報知及び/又はスクリュ軸の回転停止を行うことを特徴とする。
【0007】
このようにすることで、スクリュ軸に設計上の機械強度を超えない程度の繰り返し負荷が累積的に加わる場合において、疲労破壊の起点となる微小クラックが伸展する原因となる一定の時間以上の過負荷が加わらないように監視することができ、スクリュ軸を疲労破壊から保護することができる。
なお、前記異常警報の報知及びスクリュ軸の回転停止を行うに際しては、前記設定時間より短く且つ1分以内に設定された第2の設定時間を新たに設け、前記第2の設定時間を超えたときに異常警報の報知を行い、その後、前記設定時間を超えたときにスクリュ軸の回転停止を行うのが好ましい。
【0008】
このようにすることで、異常警報とスクリュ軸の回転停止を時間をずらして行うことができ、スクリュ軸の回転停止よりも前に異常警報で過負荷状態であることを報知することができる。
なお、前記負荷監視方法においては、前記検出された負荷が予め定めた異常値を越えた際に、異常警報の報知及び/又はスクリュ軸の回転停止を行うのが好ましい。
このようにすることで、スクリュ軸の疲労破壊だけでなく、設計上の機械強度を超える負荷によるスクリュ軸の破壊からも、スクリュ軸を保護することができる。
【0009】
なお、前記負荷監視方法においては、前記検出された負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めるのに代えて、前記負荷平均値を固定値として与えておくこともできる。
このようにすることで、負荷振幅値をモニタするだけでスクリュ軸に加わった負荷が疲労破壊の原因となるかどうかが判断できるようになり、より簡単にスクリュ軸に対する負荷を監視できるようになる。
なお、前記負荷監視方法は、モータからの動力が伝達される入力軸部を有し且つ被混練材料を混練するスクリュ軸を備えた混練処理装置の負荷監視方法であって、
前記スクリュ軸の入力軸部に設けられた負荷検出装置により、当該入力軸部に対する負荷を検出し、
検出された負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めると共に、当該時間区間における負荷の最大値と最小値との差をとり負荷振幅値を求め、
求めた負荷平均値及び負荷振幅値が、予め定められた正常範囲内の高負荷領域の閾値を超えた場合には高負荷状態であると判定し、
前記高負荷状態である場合は、高負荷状態にあった時間を高負荷累積時間として積算してゆき、
前記高負荷累積時間が所定時間を超えたときに、前記スクリュ軸がメンテナンス時期に達したとして警報を報知することを特徴としても良い。
【0010】
このようにすることで、操業時間によらずスクリュ軸が受けた負荷量が毎回略同等となったこと(メンテナンス時期となったこと)を的確に知ることができるので、効果的にメンテナンスを行うことができる。
前記目的を達成するため、本発明の混練処理装置の負荷監視装置は次の技術的手段を講じている。
即ち、モータからの動力が伝達される入力軸部を有し且つ被混練材料を混練するスクリュ軸を備えた負荷監視装置であって、
前記スクリュ軸の入力軸部に設けられて当該入力軸部に対する負荷を検出する負荷検出装置と、
検出された前記負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めると共に、当該時間区間における負荷の最大値と最小値との差をとり負荷振幅値を求める特性抽出部と、
求めた前記負荷平均値及び負荷振幅値が、予め定められた正常範囲内にある場合は正常状態と判定し、正常範囲内に無いときは過負荷状態であると判定する判定部と、
過負荷状態である場合には過負荷状態に維持されている時間を示す過負荷継続時間を積算する時間積算部と、
正常状態である場合には前記過負荷継続時間をリセットするリセット部と、
前記過負荷継続時間が予め与えられた設定時間を超えたときに、異常警報の報知及び/又はスクリュ軸の回転停止を行う保護部と
を有している。
【0011】
このようにすることで、スクリュ軸に設計上の機械強度を超えない程度の繰り返し負荷が累積的に加わる場合において、疲労破壊の起点となる微小クラックが伸展する原因となる一定の時間以上の過負荷が加わらないように監視することができ、スクリュ軸を疲労破壊から保護することができる。
本発明の負荷監視装置においては、モータからの動力が伝達される入力軸部を有し且つ被混練材料を混練するスクリュ軸を備えた混練処理装置の負荷監視装置であって、
前記スクリュ軸の入力軸部に設けられて当該入力軸部に対する負荷を検出する負荷検出装置と、検出された前記負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めると共に、当該時間区間における負荷の最大値と最小値との差をとり負荷振幅値を求める特性抽出部と、求めた前記負荷平均値及び負荷振幅値が、予め定められた正常範囲内の高負荷領域の閾値を超えた場合には高負荷状態であると判定する判定部と、高負荷状態である場合には高負荷状態にあった時間を示す高負荷累積時間を積算する時間積算部と、前記高負荷累積時間が所定時間を超えたときに、前記スクリュ軸がメンテナンス時期に達したことを警報で報知する保護部とを有していても良い。
【0012】
このようにすることで、操業時間によらずスクリュ軸が受けた負荷量が毎回略同等となったこと(メンテナンス時期となったこと)を的確に知ることができるので、効果的にメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の負荷監視方法及び負荷監視装置によって、スクリュ軸を疲労破壊から保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る混練処理装置の負荷監視方法及び負荷監視装置の実施形態を、図面に基づき説明する。
図1は、第1実施形態の負荷監視装置1が設けられた押出機2(混練処理装置)を模式的に示している。
以下に、押出機2の装置構成を詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図1の左側を上流側とし、右側を下流側とする。
押出機2は、左右一対のスクリュ軸3を有しており、このスクリュ軸3を回転させる駆動機構4が接続されている。
【0015】
スクリュ軸3は、上流側に入力軸部5を有しており、入力軸部5より下流側に被混練材料(材料)を混練する混練部6が設けられている。スクリュ軸3は、内部がめがね孔状にくり抜かれたバレル8に挿入されている。
入力軸部5は、後述する駆動機構4の動力を混練部6に伝達しており、外周面には負荷検出装置7が備えられている。
混練部6は、混練セグメント(図示略)と送りセグメント9を有している。混練セグメントにはロータセグメントやニーディングディスクセグメントなどが用いられる。送りセグメント9は、スクリュ軸3の軸方向に螺旋状に捩れた送り用フライト9aを1条又は複数条有しており、被混練材料を上流側から下流側に向けて送っている。
【0016】
従って、スクリュ軸3を回転させると、溶融状態または半溶融状態に加熱された被混練材料が混練されながら上流側から下流側に向けて送られる。
駆動機構4は、動力を発生させるモータ10と、モータ10によって回転させられる駆動軸11と、駆動軸11の回転を一対のスクリュ軸3、3の回転に変換・伝達するギヤボックス12を有している。
駆動軸11は、モータ10により回転させられており、モータ10で発生した動力をギヤボックス12に伝達している。駆動軸11の中途側には、動力伝達の遮断が可能なカップリング装置13が設けられている。カップリング装置13は、本実施形態ではエア式クラッチで構成されているが、電磁クラッチなどで構成されていても良い。
【0017】
ギヤボックス12は、少なくとも駆動軸11の回転速度を減速して動力を押出機側へと伝達するものである。なお、ギヤボックス12には動力を左右のスクリュ軸3に分配したり、回転速度を変速したりする機能を一体構成または別体構成で付加してもよい。
負荷検出装置7は、左右のスクリュ軸3の入力軸部5にそれぞれ設けられており、それぞれの入力軸部5に対して負荷を検出している。なお、第1実施形態においては、負荷にはトルクメータ15(負荷検出装置7)で検出されるトルクTが用いられる。トルクメータ15には、光学式や電磁式のトルクメータやひずみゲージのトルクメータを用いることができる。
【0018】
第1実施形態の負荷監視装置1は、カップリング型のトルクメータ15と、制御部14とを有している。
図2に示すように、制御部14は、検出されたトルクTを予め定められた時間区間Sに亘って平均し負荷平均値Taを求めると共に、時間区間SにおけるトルクTの最大値Tmaxと最小値Tminとの差をとり負荷振幅値Twを求める特性抽出部16と、求めた負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twが疲労評価線図に対応して予め定められた正常範囲N内にある場合は正常状態と判定し、正常範囲N内に無いときは過負荷状態であると判定する第1判定部17(判定部)を有している。
【0019】
また、制御部14は、検出されたトルクTが過負荷状態である場合には過負荷状態に維持されている時間を示す過負荷継続時間t0を積算する時間積算部18と、正常状態である場合には過負荷継続時間t0をリセットするリセット部19と、過負荷継続時間t0が設定時間を超えたときに報知器21から異常警報22を報知したりスクリュ軸3の回転停止を行ったりする保護部20を有している。
具体的には、制御部14はコンピュータ又はシーケンサで構成される。
特性抽出部16は、トルクメータ15で検出されたトルクTと予め入力された時間区間Sに基づいて負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twを求め、求められた負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twを第1判定部17に出力する。また、その作業を繰り返し行っている。
【0020】
図3(a)に示すように、負荷平均値TaはトルクTを時間区間Sで平均することで求められ、負荷振幅値Twは時間区間SにおけるトルクTの最大値Tmaxと最小値Tminとの差をとることで求められる。
時間区間Sは、偶発的に生じ得る瞬間的な過負荷をオミットすることのできる時間を考慮して、数秒〜十数秒程度で適宜入力設定することができる。
第1判定部17は、特性抽出部16から与えられた負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twに基づいてスクリュ軸3が疲労破壊の虞がない正常状態にあるか疲労破壊の虞がある過負荷状態にあるかを判定し、正常状態であるとの判定結果をリセット部19に、また過負荷状態であるとの判定結果を時間積算部18に出力する。
【0021】
正常状態と過負荷状態との判別は、負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twが疲労評価線図の正常範囲N内にあるか否かで行われる。疲労評価線図はスクリュ軸3が設計上疲労破壊を起こさない負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twの範囲を正常範囲Nとして示したものである。
図3(b)に示されるように、例えば負荷平均値がTa2であり、負荷振幅値がTw2であって、疲労評価線図の正常範囲N内にある場合にはスクリュ軸3は正常状態であると判定され、負荷平均値がTa1であり、負荷振幅値がTw1であって、正常範囲N外(過負荷範囲E)にある場合にはスクリュ軸3は過負荷状態であると判定される。
【0022】
時間積算部18は、過負荷状態であるとの判定結果に基づいて過負荷状態に維持されている時間を示す過負荷継続時間t0を積算し、積算後の過負荷継続時間t0を保護部20に出力している。
リセット部19は、正常状態であるとの判定結果に基づいて過負荷継続時間t0をゼロに戻している。
保護部20は、入力された過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えているときに、異常警報22の報知及び/又はスクリュ軸3の回転停止を行う。
【0023】
設定時間tSは、過負荷状態が偶発的な異常でないことを判断するのに十分な時間であり、数十秒〜数分程度で適宜入力設定することができる。ただし、設定時間を30分以上と長くすると疲労破壊の起点となる微小クラックが在る場合に、微小クラックが伸展して疲労破壊を起こしやすくなるので、避ける必要がある。
異常警報22は報知器21から報知される。スクリュ軸3の回転停止は、電気信号に基づき接離自在なカップリング装置13により駆動軸11の動力を切断する及び/又はモータ10を停止させることで行われる。なお、異常警報22の報知、スクリュ軸3の回転停止はいずれか一方を行っても良いし、双方を行っても良い。
【0024】
図4を用いて、第1実施形態の負荷監視方法、具体的には制御部14の信号の流れについて説明する。
第1実施形態の負荷監視方法はS41〜S47に従って行われる。
まず、被混練材料をスクリュ軸3により混練しながら上流側から下流側に向けて送る際に、入力軸部5に設けられたトルクメータ15によりそれぞれのスクリュ軸3に対するトルクTを検出する[S41]。
次に、トルクTに基づいて負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twを算出する。つまり、トルクTを予め定められた時間区間Sに亘って平均して負荷平均値Taを求め、トルクTの時間区間Sにおける最大値Tmaxと最小値Tminとの差をとることで負荷振幅値Twを求める[S42]。
【0025】
求められた負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twが正常範囲N内にあるか否かの判定を行う。正常範囲Nは、スクリュ軸3が設計上疲労破壊を起こさない負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twの範囲である。
負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twが正常範囲N内に無い場合には、過負荷状態であると判定し、負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twが正常範囲N内にある場合には、正常状態と判定する[S43]。
トルクTが過負荷状態であると判定した場合は、過負荷状態を維持している時間を過負荷継続時間t0として積算する[S44]。
【0026】
トルクTが正常状態であると判定した場合は、過負荷継続時間t0をゼロにする[S45]。
過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えたかどうかの判定を行う[S46]。
過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えた場合は、報知器21から異常警報22を報知するか、スクリュ軸3の回転を停止する[S47]。過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えない場合は、S41に戻る。
なお、異常警報22の報知とスクリュ軸3の回転停止はいずれか一方を行っても良いし、双方を行っても良い。
【0027】
本発明の負荷監視装置及び負荷監視方法により、設計上の機械強度は超えない程度の繰り返し負荷により生じ得る疲労破壊の起点となる微小クラックが過負荷(トルクT)により伸展することのないように、当該過負荷がスクリュ軸3に一定の時間以上に亘って加わらないように監視することができ、スクリュ軸3を疲労破壊から保護することができる。
また、本発明の負荷監視装置及び負荷監視方法は、負荷平均値Taが一定の時間以上に亘って連続して加わるとスクリュ軸3の保護が行われる機構とされている。そのため、一時的(偶発的)な負荷によりスクリュ軸3の回転が停止して稼働率が低下したり供給量が大きく変動することを防止することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の負荷監視方法及び負荷監視装置を説明する。
【0028】
図5にあるように、第2実施形態の負荷監視方法が第1実施形態と異なる点は、異常警報22の報知及びスクリュ軸3の回転停止の双方を行うに際して、設定時間tSより短く且つ1分以内に設定された第2の設定時間tbを新たに設け、この第2の設定時間tbを過負荷継続時間t0が超えたときに異常警報22の報知を行い、その後、過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えたときにスクリュ軸3の回転停止を行う点にある。
すなわち、第2実施形態の負荷監視方法は、S51〜S59に従って行われるものであるが、S51〜S55までは第1実施形態のS41〜S45と同様にして行われる。そして、第2実施形態の負荷監視方法では、S56以降の工程が第1実施形態とは異なっている。
【0029】
まず、第2実施形態の負荷監視方法では、設定時間tS以外に第2の設定時間tbが設定されている。この第2の設定時間tbは、過負荷状態が継続してスクリュ軸3が破壊されないように、疲労破壊の起点となる微小クラックが伸展するのを抑える観点から、1分以内であって且つ設定時間tSより短い時間に設定される。そして、過負荷継続時間t0が第2の設定時間tbを超えたかどうかの判定を行う[S56]。
次に、過負荷継続時間t0が第2の設定時間tbを超えた場合は、報知器21から異常警報22を報知する[S57]。過負荷継続時間t0が第2の設定時間tbを超えない場合は、S51に戻る。
【0030】
そして、異常警報22の報知後に、さらに過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えたかどうかの判定を行う[S58]。
過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えた場合は、スクリュ軸3の回転停止を行う[S59]。過負荷継続時間t0が設定時間tSを超えない場合は、S51に戻る。
第2実施形態に示すように異常警報22の報知とスクリュ軸3の回転停止とを時間をずらして行う(スクリュ軸3を回転停止する前に異常警報22を報知する)ことで、スクリュ軸3が回転を停止する以前に異常を知ることができる。その結果、スクリュ軸3を停止させる前に正常な運転状態にすることが可能となり、生産を継続したままスクリュ軸3が過負荷状態にさらされることを防止することが可能となる。
【0031】
なお、第2実施形態の負荷監視方法及び負荷監視装置におけるその他構成及び作用効果については、第1実施形態と同様である。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の負荷監視方法及び負荷監視装置を説明する。
図6にあるように、第3実施形態の負荷監視方法が第1実施形態と異なる点は、検出されたトルクTが予め定めた異常値を越えた際に、異常警報22の報知及び/又はスクリュ軸3の回転停止を行う点にある。そのため、第3実施形態の制御部14には、図9にあるように検出されたトルクTが予め定めた異常値を越えたかどうかを判定する第2判定部31が設けられている。
【0032】
第3実施形態の制御部14は、検出されたトルクTがスクリュ軸3の設計上の機械強度以上であるか否かを判定する第2判定部31を有しており、トルクTが異常値より大きい場合の判定結果を示す信号は保護部20に出力される。
異常値は、計算上の機械強度限界に安全率を考慮して決定する設計上の機械強度に応じて設定すればよく、例えばスクリュ軸3の許容限界トルクを基準値とすればよい。なお、制御部14における判定を行うにあたり、異常値はモータ10の定格トルクによる運転時にギヤボックス12の出力軸に発生する出力軸トルクに代替えさせてもよい。この場合の異常値は定格出力軸トルクに対して110〜130%の範囲の所定値に設定され、本実施形態では定格出力軸トルクの110%とされている。
【0033】
図6にあるように、第3実施形態の負荷監視方法は、S61〜S68に従って行われる。
まず、トルクメータ15でトルクTを検出する[S61]。
次に、トルクメータ15から入力されたトルクTが異常値(定格出力軸トルクの110%)より大きいか否かを判定する[S62]。
トルクTが異常値より小さい場合は、第1判定部17でトルクTに基づいて負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twを求める[S64]。S64からS67までは、第1実施形態のS43からS46までと同様である。
【0034】
トルクTが異常値より大きい場合は、設計上の機械強度を超えるトルクT(負荷)がスクリュ軸3に加わっていると判断して異常警報22で報知し、必要に応じてスクリュ軸3の回転を停止する[S68]。
検出された負荷(トルク)がスクリュ軸3の設計上の機械強度以上であるか否かを判定することで、スクリュ軸3が疲労破壊されることからだけでなく、設計上の機械強度を超える負荷によりスクリュ軸3が破壊されることからも保護することができる。
なお、第3実施形態の負荷監視装置及び負荷監視方法におけるその他構成及び作用効果については、第1実施形態と同様である。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の負荷監視方法及び負荷監視装置を説明する。
【0035】
図7にあるように、第4実施形態の負荷監視方法が第1実施形態と異なる点は、検出されたトルクTを予め定められた時間区間Sに亘って平均することで負荷平均値Taを求めるのに代えて、負荷平均値Taを固定値として与えておく点にある。そのため、第4実施形態の負荷監視装置では、図10にあるように負荷平均値Taに予め入力された固定値が用いられている。
第4実施形態の負荷監視方法は、S71〜S77に従って行われる。
まず、トルクメータ15で第1実施形態のS41と同様に、トルクTを求める[S71]。
【0036】
次に、トルクメータ15より入力されたトルクTに基づいて負荷振幅値Twを算出する[S72]。このとき、負荷平均値Taは固定値として与えられる。固定値として与えられる負荷平均値Taには、過去に同一の混練条件において求められた負荷平均値などを用いることができる。
第1判定部17において、求めた負荷振幅値Twと固定値として与えられた負荷平均値Taに基づいて、トルクTが過負荷状態にあるか正常状態にあるかの判定を行う[S73]。S73からS77までは、第1実施形態のS43からS47までと同様である。
【0037】
第4実施形態の負荷監視方法においては、特性抽出部16で負荷振幅値Twをモニタするだけで済み、負荷平均値Taを求める場合よりも特性抽出部16の構成をより簡単にできる。
また、第1判定部17でも、負荷平均値Taと時間区間Sが固定値として与えられているため、前記負荷振幅値Twをモニタするだけでスクリュ軸3に加わった負荷が疲労破壊の原因となるか過負荷かどうかが判断できるようになり、より簡単にスクリュ軸3に対する負荷を監視できるようになる。
【0038】
なお、第4実施形態の負荷監視方法及び負荷監視装置におけるその他構成及び作用効果については、第1実施形態と同様である。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の負荷監視方法及び負荷監視装置を説明する。図8にあるように、第5実施形態の負荷監視方法が第1実施形態と異なる点は、求めた負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twが、疲労評価線図に対応して予め定められた正常範囲N内の高負荷範囲Mの閾値Hを超えた場合には高負荷状態であると判定し、時間積算部18で高負荷状態にあった時間を高負荷累積時間t1として積算してゆき、高負荷累積時間t1が所定時間tmを超えたときにスクリュ軸3がメンテナンス時期に達したとして異常警報22を報知する点にある。
【0039】
また、第5実施形態の負荷監視装置1が第1実施形態と異なる点は、図11にあるように、スクリュ軸3が高負荷状態にあるかどうかを判定する第1判定部17と、高負荷状態にあった時間を高負荷累積時間t1として積算する時間積算部18と、高負荷累積時間t1が所定時間tmを超えているかどうかを判定して高負荷累積時間t1が所定時間tmを超えている場合にはスクリュ軸3がメンテナンス時期に達したことを警報(異常警報22)で報知する保護部20とを備えている点にある。そして、第5実施形態の負荷監視装置1では第1実施形態のように高負荷累積時間t1をリセットするリセット部19は存在しない(ただし、制御外での人為的なリセットは可能である)。
【0040】
第1判定部17は、特性抽出部16から与えられた負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twに基づいてスクリュ軸3が高負荷範囲Mの下限である閾値Hを超えているか否かを判定し、閾値Hを超えている場合にはスクリュ軸3が高負荷状態であるとの判定結果を時間積算部18に出力する。
図3(b)に示すように、高負荷範囲Mは、疲労評価線図の正常範囲Nに対して安全率を乗じることで得られるものであり、疲労評価線図の正常範囲N内にはあっても過負荷範囲Eに近いためメンテナンスの必要性が認められる領域である。本実施形態の高負荷範囲Mは、正常範囲Nの閾値に安全率0.85を乗じて得られる高負荷範囲Mの閾値Hを基準に定められており、正常範囲N内であって閾値Hを超える領域のことを示している。なお、高負荷範囲Mの閾値Hを求める際に必要となる安全率は0.85〜1.00の範囲で適宜定めることができる。
【0041】
なお、第1判定部17での高負荷状態にあるか否かの判定は以下のように行われる。例えば、図3(b)において負荷平均値がTa2であり、負荷振幅値がTw2であって、疲労評価線図の正常範囲N内にある場合にはスクリュ軸3は正常状態である(高負荷状態でない)と判定され、負荷平均値がTa3であり、負荷振幅値がTw3であって、高負荷範囲M内又は過負荷範囲E内にある場合にはスクリュ軸3は高負荷状態であると判定される。
時間積算部18は、高負荷状態であるとの判定結果が入力されると、高負荷状態にあった時間を高負荷累積時間t1として積算し、高負荷累積時間t1を保護部20に出力する。
【0042】
保護部20は、入力された高負荷累積時間t1が所定時間tmを超えているかどうかを判定し、高負荷累積時間t1が所定時間tmを超えている場合にはスクリュ軸3がメンテナンス時期に達したことを異常警報22で報知する。なお、所定時間tmは、10〜100時間の間で被混練材料の種類や混練条件に応じて適宜設定することができる。
第5実施形態の負荷監視方法は、図8にあるようにS81〜S86に従って行われる。
まず、第1実施形態のS41〜S43と同様に、トルクメータ15でトルクTを検出し[S81]、トルクTから負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twを求める[S82]。
【0043】
次に、求められた負荷平均値Ta及び負荷振幅値Twが高負荷範囲Mの下限である閾値Hを超えているか否かの判定を行い[S83]、高負荷範囲Mの閾値Hを超えている場合には、高負荷状態にあった時間を高負荷累積時間t1として積算する[S84]。
その後、高負荷累積時間t1が所定時間tmを超えたかどうかの判定を行い[S85]、高負荷累積時間t1が所定時間tmを超えた場合は、スクリュ軸3がメンテナンス時期に達したとして異常警報22を報知する[S86]。
第5実施形態の負荷監視方法では、疲労評価線図に対応して予め定められた正常範囲N内の運転を行っている場合にも、疲労破壊を起こし得る負荷よりも小さな負荷(トルクT)が繰り返し加わった高負荷累積時間t1を求めることで、メンテナンスに最適なタイミングが報知されるため、スクリュ軸3が疲労破壊を起こす前に的確にかつ効果的に探傷検査などのメンテナンスを行うことができる。
【0044】
なお、第5実施形態の負荷監視方法及び負荷監視装置におけるその他構成及び作用効果については、第1実施形態と同様である。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、発明の本質を変更しない範囲で各部材の形状、構造、材質、組み合わせなどを適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、混練処理装置として2軸押出機が例示されている。しかし、処理装置に単軸または3軸以上の押出機または混練機を用いることもできる。
なお、上記実施形態では、負荷監視装置は左右一対のスクリュ軸の双方にそれぞれ備えられていたが、いずれか一方のスクリュ軸にだけ負荷監視装置を設けることもできる。
【0045】
なお、上記実施形態では負荷検出装置7はカップリング型のトルクメータ15であったが、負荷検出装置7にはその他公知のものを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の負荷監視装置を備える押出機の平面図である。
【図2】制御部の構造を示す説明図である。
【図3】検出された負荷からスクリュ軸の過負荷状態を判定する機構を示す説明図である。
【図4】第1実施形態の負荷監視方法を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態の負荷監視方法を示すフローチャートである。
【図6】第3実施形態の負荷監視方法を示すフローチャートである。
【図7】第4実施形態の負荷監視方法を示すフローチャートである。
【図8】第5実施形態の負荷監視方法を示すフローチャートである。
【図9】第3実施形態の制御部の構造を示す説明図である。
【図10】第4実施形態の制御部の構造を示す説明図である。
【図11】第5実施形態の制御部の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1 負荷監視装置
2 押出機
3 スクリュ軸
5 入力軸部
7 負荷検出装置
10 モータ
14 制御部
16 特性抽出部
17 第1判定部(判定部)
18 時間積算部
19 リセット部
20 保護部
22 異常警報
S 時間区間
a 負荷平均値
m 所定時間
S 設定時間
b 第2の設定時間
w 負荷振幅値
max 最大値
min 最小値
N 正常範囲
M 高負荷範囲
H 高負荷範囲の閾値
0 過負荷継続時間
1 高負荷累積時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータからの動力が伝達される入力軸部を有し且つ被混練材料を混練するスクリュ軸を備えた混練処理装置の負荷監視方法であって、
前記スクリュ軸の入力軸部に設けられた負荷検出装置により、当該入力軸部に対する負荷を検出し、
検出された負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めると共に、当該時間区間における負荷の最大値と最小値との差をとり負荷振幅値を求め、
求めた負荷平均値及び負荷振幅値が、予め定められた正常範囲内にある場合は正常状態と判定すると共に正常範囲内に無いときは過負荷状態であると判定し、
前記過負荷状態である場合は、過負荷状態を維持している時間を過負荷継続時間として積算してゆき、
前記正常状態である場合は、前記過負荷継続時間をリセットし、
前記過負荷継続時間が設定時間を超えたときに、異常警報の報知及び/又はスクリュ軸の回転停止を行うことを特徴とする混練処理装置の負荷監視方法。
【請求項2】
前記異常警報の報知及びスクリュ軸の回転停止を行うに際しては、
前記設定時間より短く且つ1分以内に設定された第2の設定時間を新たに設け、
前記第2の設定時間を超えたときに異常警報の報知を行い、
その後、前記設定時間を超えたときにスクリュ軸の回転停止を行うことを特徴とする請求項1記載の混練処理装置の負荷監視方法。
【請求項3】
前記検出された負荷が予め定めた異常値を越えた際に、異常警報の報知及び/又はスクリュ軸の回転停止を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の混練処理装置の負荷監視方法。
【請求項4】
前記検出された負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めるのに代えて、前記負荷平均値を固定値として与えておくことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の混練処理装置の負荷監視方法。
【請求項5】
モータからの動力が伝達される入力軸部を有し且つ被混練材料を混練するスクリュ軸を備えた混練処理装置の負荷監視方法であって、
前記スクリュ軸の入力軸部に設けられた負荷検出装置により、当該入力軸部に対する負荷を検出し、
検出された負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めると共に、当該時間区間における負荷の最大値と最小値との差をとり負荷振幅値を求め、
求めた負荷平均値及び負荷振幅値が、予め定められた正常範囲内の高負荷領域の閾値を超えた場合には高負荷状態であると判定し、
前記高負荷状態である場合は、高負荷状態にあった時間を高負荷累積時間として積算してゆき、
前記高負荷累積時間が所定時間を超えたときに、前記スクリュ軸がメンテナンス時期に達したとして警報を報知することを特徴とする混練処理装置の負荷監視方法。
【請求項6】
モータからの動力が伝達される入力軸部を有し且つ被混練材料を混練するスクリュ軸を備えた混練処理装置の負荷監視装置であって、
前記スクリュ軸の入力軸部に設けられて当該入力軸部に対する負荷を検出する負荷検出装置と、
検出された前記負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めると共に、当該時間区間における負荷の最大値と最小値との差をとり負荷振幅値を求める特性抽出部と、
求めた前記負荷平均値及び負荷振幅値が、予め定められた正常範囲内にある場合は正常状態と判定し、正常範囲内に無いときは過負荷状態であると判定する判定部と、
過負荷状態である場合には過負荷状態に維持されている時間を示す過負荷継続時間を積算する時間積算部と、
正常状態である場合には前記過負荷継続時間をリセットするリセット部と、
前記過負荷継続時間が予め与えられた設定時間を超えたときに、異常警報の報知及び/又はスクリュ軸の回転停止を行う保護部と
を有していることを特徴とする混練処理装置の負荷監視装置。
【請求項7】
モータからの動力が伝達される入力軸部を有し且つ被混練材料を混練するスクリュ軸を備えた混練処理装置の負荷監視装置であって、
前記スクリュ軸の入力軸部に設けられて当該入力軸部に対する負荷を検出する負荷検出装置と、
検出された前記負荷を予め定められた時間区間に亘って平均し負荷平均値を求めると共に、当該時間区間における負荷の最大値と最小値との差をとり負荷振幅値を求める特性抽出部と、
求めた前記負荷平均値及び負荷振幅値が、予め定められた正常範囲内の高負荷領域の閾値を超えた場合には高負荷状態であると判定する判定部と、
高負荷状態である場合には高負荷状態にあった時間を示す高負荷累積時間を積算する時間積算部と、
前記高負荷累積時間が所定時間を超えたときに、前記スクリュ軸がメンテナンス時期に達したことを警報で報知する保護部と
を有していることを特徴とする混練処理装置の負荷監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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