説明

混練押出機用スクリュ

【課題】スクリュセグメントの軸長が長くなっても、比較的安価に高精度に制作することができる、二軸混練押出機用スクリュを提供する。
【解決手段】スプライン溝が形成されているスクリュ軸と、このスクリュ軸に挿通される複数個のスクリュセグメント(1、1、…)からなる二軸混練押出機用スクリュにおいて、スクリュセグメント(1、1、…)のスプライン溝(5、5、…)を、該スクリュセグメントの軸方向の両端部に形成し、中間部は非加工部の逃げ部(6)とする。中間部は機械加工をしなくても良いので、スクリュセグメント(1、1、…)の軸長が長くても、短いものと同程度の加工費で高精度に製作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練押出機用スクリュに関し、さらに詳しくはシリンダ内で回転駆動されることにより、シリンダの一方の端部から供給される樹脂材料が混連溶融され、そして他方の端部から押し出されるようになっているスクリュに関するもので、限定するものではないが、特に二軸混練押出機のスクリュとして好適な混練押出機用スクリュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダ内に1本のスクリュが回転駆動されるように設けられている単軸混練押出機が、文献名を挙げるまでもなく従来周知であるように、シリンダと、このシリンダ内に互いに異なる方向に、あるいは同じ方向に回転駆動されるように設けられている2本のスクリュとからなる二軸混練押出機も従来周知である。このような二軸混練押出機は、図2に示されているように、概略的にはシリンダ30と、このシリンダ30内に回転駆動可能に設けられている2本のスクリュ40、40とから構成されている。シリンダ30は、双胴型でその内部に軸方向に2個の内孔が形成されている。そして、これらの内孔のそれぞにスクリュ40、40が抜き差し自在に設けられている。このようなシリンダ30の、図2の(イ)において左方の端部近傍には樹脂材料をシリンダ30内へ供給する材料供給口31が、そして右方端部近傍にはベント口32がそれぞれ設けられている。そして、右端部には図には示されていないが押出用のノズルが設けられている。また、シリンダ30の外周部には、個々に発熱温度が制御されるヒータが設けられている。
【0003】
スクリュ40、40は、スクリュ軸41、41と、このスクリュ軸41、41に挿通されている複数個のスクリュセグメント45、45、…からなっている。スクリュ軸41、41の外周部には、図には現れていないが、スプライン溝、セレーション溝等が加工されている。あるいは多角形に加工されている。スクリュセグメント45は、図2の(ロ)の斜視図に示されているように、ボス部46と、このボス部46と一体的に形成されているフライト47とからなっている。フライト47の形状の相違により、図には示されていないが、ダルメージスクリュ、ピンスクリュ、ニーディングデスク等に分かれている。このように形成されているスクリュセグメント45、45、…のボス部46の中心部には、スクリュ軸41に嵌る所定形状の挿通孔が軸方向に形成されている。この挿通孔は、スクリュ軸41の外周部の形状および大きさに対応し、スクリュ軸41がスプライン軸のときは、図2の(ロ)、(ハ)に示されているようにスプライン溝48、48、…からなり、また多角形の時は図2の(ニ)に示されているように、挿通孔は多角形状の貫通孔49に加工されている。
【0004】
上記のスクリュ軸41、41に、所定形状あるいは所定の機能を果たすフライト47を有するスクリュセグメント45、45、…を適宜選択して順次挿通し、そしてスクリュ軸41の先端部の締付けボルト42、42で締め付けると、軸方向に所定長さのスクリュ40、40が構成される。このようにして構成された2本のスクリュ40、40がシリンダ30内に挿入された状態が、図2の(イ)に示されている。この図2において、左方に位置する部分が搬送昇圧部33、その下流側が溶融混練部34、最下流側が脱揮昇圧部35となっている。なお、図2の(イ)においてスクリュセグメント45、45、…は同じ形状で示されているが、例えば溶融混練部34には図示の形状と異なるニーディングデスクが設けられている。
【0005】
二軸混練押出機は、上記のように構成されているので、2本のスクリュー40、40を回転駆動すると共に、樹脂材料を材料供給口31からシリンダ30の搬送昇圧部33に供給すると、樹脂材料は搬送昇圧部33から溶融混練部34を経て脱揮昇圧部35へと順次送られる。このとき、樹脂材料はシリンダ30の外周部から加えられる熱と、樹脂材料がスクリュー40、40から受ける摩擦作用、剪断作用等により生じる熱とにより溶融され、そして均一に混合される。脱揮昇圧部35のベント口32から水分、ガス分等が排出され、そして押出ノズルから押し出される。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2500532号公報
【特許文献2】特開平5−220815号公報
【0007】
本発明の直接的な先行技術文献にはならないが、特許文献1、2に前述したような二軸混練押出機が示されている。特許文献1にはスクリュ軸と、このスクリュ軸に挿通されている複数個のスクリュセグメントすなわちセグメントピースとからなっているスクリュが示されている。このセグメントピースの端面の、スクリュ軸との合わせ面には案内溝が形成されている。この案内溝は、スクリュ軸の外周面から半径外方へ延び、そしてシリンダの内周壁に向かって開口している。したがって、混練溶融中にスクリュ軸とセグメントピースの挿通孔との間の隙間に溜まる水分、揮発分等は案内溝を通って材料供給用ホッパの方へ排出される。これにより、溶融樹脂中への気泡の混入が回避される。また、特許文献2には、スクリュセグメントをスクリュ軸に挿入し、挿入したスクリュセグメントをスクリュ軸に固定する締付ナットすなわちキャップを圧力シリンダで締め付けるようにした締め付け方法が示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来の二軸混練押出機によっても樹脂材料を混練溶融し、必要に応じて脱揮し、そして押し出すことができるので、使用上は格別に問題はない。しかしながら、従来の混練押出機は、その構造によっては、混練押出機用スクリュの製造コストあるいは加工費が高くなり、混練押出機全体のコストをあげることがある。以下、その理由を説明する。スクリュセグメント45、45、…の挿通孔は、図2の(ロ)、(ハ)に示されているように、スプライン溝48、48、…が全長にわたって加工されている。このとき、スクリュセグメント45、45、…の軸長Lと孔径の比L/Dが小さいときは、つまり、軸長Lが短いときはスプライン溝48、48、…の加工も比較的容易にできるが、軸長Lが長くなると、切削工具のストロークが長くなり、しかも挿通孔の内表面の溝加工であるので、加工コストが高くなる。このことは、セレーション溝あるいは多角形の挿通孔の加工についてもいえる。このようなスクリュセグメント45、45、…の加工コストの問題は、特許文献1、2に記載の発明では解決しようとしていないし、解決もされない。
したがって、本発明は混練押出機のスクリュを構成しているスクリュセグメントの軸長が長くなっても、比較的安価に精密に制作することができる、混練押出機用スクリュを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
スクリュ軸41とスクリュセグメント45、45、…は、前述したように例えばスプライン溝48、48、…により互いに係合している。スプライン溝48、48、…による係合は、スクリュ軸41の大きな回転力をスクリュセグメント45、45、…に伝えることができるので、スクリュセグメント45、45、…の全長にわたって伝える必要はなく、所定長さで混練溶融に必要な回転力を伝えることができることを見出した。このとき、スクリュセグメント45、45、…をスクリュ軸41に順次挿入し、そして締付けボルト42で締め付けるとき、スクリュセグメント45、45、…が互いに接触する端面近傍が強度上重要であることも判明し、端面近傍以外に非加工部すなわち「ぬすみ部あるいは逃げ部」を選定し、スクリュセグメント45、45、…の軸長が長くても、加工する長さを短くすることにより、本発明の前記目的が達成されることを見出した。
【0010】
かくして、請求項1に記載の発明は上記目的を達成するために、シリンダと、該シリンダ内で回転駆動されるように設けられているスクリュとからなり、前記シリンダの一方の端部から樹脂材料を供給しながら前記スクリュを回転駆動すると、供給される樹脂材料が混練溶融され、そして他端部から押し出されるようになっている混練押出機のスクリュであって、前記スクリュは、外周部に所定形状の係合用溝が形成されているスクリュ軸と、前記スクリュ軸の係合用溝に対応する被係合用溝が形成され、そして前記スクリュ軸に順次挿入されるようになっている複数個のスクリュセグメントからなり、前記スクリュセグメントの被係合用溝は、該スクリュセグメントの軸方向の両端部に加工され、中間部は非加工部の逃げ部となるように構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の混練押出機のスクリュにおいて、係合用溝がスプライン溝であるように構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によると、混練押出機のスクリュは外周部に所定形状の係合用溝が形成されているスクリュ軸と、前記スクリュ軸の係合用溝に対応する被係合用溝が形成され、そして前記スクリュ軸に順次挿入されるようになっている複数個のスクリュセグメントからなり、前記スクリュセグメントの被係合用溝は、該スクリュセグメントの軸方向の両端部に加工され、中間部は非加工部の逃げ部となるよう構成されているので、すなわちスクリュセグメントの被係合用溝の加工範囲は、限定されているので、スクリュセグメントの軸長が長くても、短いものと同程度の加工費で製造することができる。また、加工長さが短いので、加工精度を落とすことなく軸長の長いスクリュセグメントを提供できる効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図1により説明する。本実施の形態に係わるスクリュセグメントも、図2に関して説明したように、そのフライトの形状は様々でスクリュ軸に適宜装着すると、軸方向に所定長さの、所定機能の押出機用のスクリュが構成されるが、図1には標準的なフライトを有するスクリュセグメントのみが示されている。
【0013】
図1に示されている本実施の形態に係わるスクリュセグメント1も、ボス部2とこのボス部2と一体的に形成されている螺旋状のフライト3とからなり、ボス部2の中心部には前述したように、スクリュ軸に挿通される挿通孔4が形成されている。このように構成されているスクリュセグメント1の軸長はAで、挿通孔の径はDで、その比A/Dは比較的大きくなっている。そして、本実施の形態では挿通孔4のスプライン溝5、5、…は、スクリュセグメント1の両端部に形成され、その中心部は所定長さにわたって非加工部、あるいは逃げ部すなわちぬすみ部6となっている。この非加工部6は、スクリュ軸のスプライン溝と係合しない部分で、機械的加工を必要としない部分である。この非加工部6の長さaは、格別に限定されないが、処理する樹脂材料の物理的あるいは化学的性質、処理量等により、スクリュ軸からスクリュセグメント1への力の伝達を考慮して本実施の形態では、軸長Aの1〜70%(10〜70%?)に選定されている。また、図1の(ハ)に示されているように、非加工部6側に位置するスプライン溝5の山7の端面8と、軸線と直角の線9とがなす角度θは、本実施の形態によると10〜90度になっている。このような角度になっていると、スクリュ軸にスクリュセグメント1を容易に挿入することができる。
【0014】
本実施の形態によると、スクリュセグメント1の中心部には、非加工部6が設けられているが、前述した従来のスクリュセグメントと同じようにしてスクリュ軸に挿入してスクリュを組み立てることができ、同様にして樹脂材料を混練溶融して押し出すことができる。このとき、スクリュ軸からの回転トルクは、スプライン溝5、5、…が形成されている部分のみでスクリュセグメント1に伝達されることになる。なお、セレーション溝あるいは多角形についても、同様に実施できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係わるスクリュセグメントを示す図で、その(イ)はその断面斜視図で、その(ロ)は断面正面図、その(ハ)は(ロ)において矢印ハーハ方向に見た断面図である。
【図2】従来例を示す図で、その(イ)は二軸混練押出機を軸方向に断面にして示す平面図、その(ロ)はスクリュセグメントの斜視図、その(ハ)はその断面図、その(ニ)はスクリュセグメントの他の形状の挿通孔を示す断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 スクリュセグメント 2 ボス部
3 フライト 5 スプライン溝
6 非加工部(逃げ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、該シリンダ内で回転駆動されるように設けられているスクリュとからなり、前記シリンダの一方の端部から樹脂材料を供給しながら前記スクリュを回転駆動すると、供給される樹脂材料が混練溶融され、そして他端部から押し出されるようになっている混練押出機のスクリュであって、
前記スクリュは、外周部に所定形状の係合用溝が形成されているスクリュ軸と、前記スクリュ軸の係合用溝に対応する被係合用溝が形成され、そして前記スクリュ軸に順次挿入されるようになっている複数個のスクリュセグメントからなり、
前記スクリュセグメントの被係合用溝は、該スクリュセグメントの軸方向の両端部に加工され、中間部は非加工部の逃げ部となっていることを特徴とする、混練押出機用スクリュ。
【請求項2】
請求項1に記載の混練押出機のスクリュにおいて、係合用溝がスプライン溝である、混練押出機用スクリュ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate