説明

混練装置および混練成形装置

【課題】高分子材料の劣化・分解を抑制しつつ高い剪断力を付与し、分散性のよい被混練物を生産することができる混練装置を提供すること。
【解決手段】高分子材料Mが供給されるシリンダ3と、シリンダ3内に配置され、回転駆動されることにより高分子材料Mを一方向に搬送するスクリュー2と、シリンダ3の高分子材料Mの搬送方向下流側に開口するように設けられ、高分子材料Mを排出する排出経路6と、排出経路6とシリンダ3との間に設けられ、高分子材料Mをシリンダ3における高分子材料Mの搬送方向上流側へ還流させる帰還経路9と、を備え、排出経路6と帰還経路9のそれぞれの径方向におけるそれぞれの断面積が、排出経路6の断面積>帰還経路9の断面積とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練装置および混練成形装置、より詳しくは高分子材料の混練に用いられる溶融混練装置および溶融混練成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子材料を混練するための装置として、溶融された高分子材料に対してその温度を制御しながら剪断力を与える溶融混練装置が知られている。溶融混練装置によれば、高分子材料が均一に混練され分散性が高い被混練物が得られる。
【0003】
このような混練装置の例として、特許文献1には、先端が縮径され互いに対向する方向に動作する2つのスクリューを備えた混練装置が記載されている。特許文献1に記載の混練装置によれば、先端が縮径されたスクリューによって高分子材料に圧力を加えるとともにスクリューが互いに噛み合う部分で高分子材料に対して剪断力を与える。その結果、溶融された高分子材料による被混練物の分散性を高めることができる。
【0004】
しかしながら、溶融された高分子材料は、強い剪断力が加わると剪断発熱によって高分子材料自体が発熱する。また、高い圧力で剪断力を加えると高分子材料の混練性が高まる一方で剪断発熱が大きくなる。
このため、特許文献1に記載の混練装置のような従来の混練装置では、剪断発熱によって高分子材料が過剰に発熱して劣化あるいは分解してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6129450号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高分子材料の発熱による劣化あるいは分解の問題を解消するためには、スクリューが配置された混練シリンダに水冷あるいは空冷等の温度制御手段を設けることが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載されたような循環式の混練装置では、温度制御手段を用いて高分子材料を急冷しようとすると、混練シリンダによる加工間の温度調整に時間がかかるため、被混練物の生産性が悪いという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の混練装置では、スクリューが噛み合った部分で特に剪断発熱が生じるため、溶融された高分子材料の温度に偏りがある。この溶融された高分子材料の温度を水冷あるいは空冷によって冷却する場合、温度制御にかかる装置構成が非常に複雑になり、混練装置自体の製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0008】
このため、高分子材料を水冷あるいは空冷で冷却するという手段では高分子材料に生じる剪断発熱を好適に抑制することが困難であった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は高分子材料の劣化・分解を抑制しつつ高い剪断力を付与し、分散性のよい被混練物を生産することができる混練装置の提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の混練装置は、高分子材料が供給されるシリンダを少なくとも1つと、該各シリンダ内に配置され、回転駆動されることにより前記高分子材料を一方向に搬送するスクリューと、前記各シリンダの前記高分子材料の搬送方向下流側に開口するように設けられ、前記高分子材料を排出する排出経路と、前記排出経路と前記シリンダとの間に設けられ、前記高分子材料を前記シリンダにおける前記高分子材料の搬送方向上流側へ還流させる帰還経路と、を備え、前記排出経路と前記帰還経路とのそれぞれの断面積が、前記排出経路の断面積>前記帰還経路の断面積とされていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の混練装置は、前記スクリューと前記シリンダとの組を複数組備え、前記排出経路は互いに合流する合流部をさらに備え、前記帰還経路は複数の前記シリンダに連通されていてもよい。
【0012】
また、本発明の混練装置は、前記排出経路に連通され、前記高分子材料を溶融させて前記排出経路内へ搬送する材料搬送部をさらに備えてもよい。
【0013】
本発明の混練成形装置は本発明の混練装置と、前記混練装置において前記被混練物を所定の形状に成形する成形部と、を備えることを特徴としている。
この発明によれば、混練装置に成形部が設けられていることで混練と成形との工程を連続的に行うことができるので生産リードタイムを短縮できる。また、混練された被混練物への空気の混入を抑制できるので成形された成形品への気泡の混入が抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の混練装置によれば、高分子材料の劣化・分解を抑制しつつ高い剪断力を付与し、分散性のよい被混練物を生産することができる。
また、本発明の混練成形装置によれば、被混練物を成形する際の生産リードタイムを低減するとともに、成形された成形品への気泡の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の混練装置の構成を一部断面で示す平面図、(B)は同混練装置の一部の構成を拡大して示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態の混練装置の構成を一部断面で示す平面図である。
【図3】本発明の第3実施形態の混練装置の構成を一部断面で示す平面図である。
【図4】同混練装置の構成を示す側面図である。
【図5】本発明の第4実施形態の混練装置の構成を示す正面図である。
【図6】同混練装置の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の混練装置について図1(A)および(B)を参照して説明する。
図1(A)は、本実施形態の混練装置の概略構成図で、混練装置100の一部を断面視した平面図である。また、図1(B)は、混練装置100の一部の構成を拡大して示す断面図である。図1(A)および図1(B)に示すように、混練装置100は、高分子材料Mが供給されるシリンダ3と、シリンダ3内に配置され、駆動部1によって回転駆動されることにより高分子材料Mを一方向(図中aからb方向)に搬送するスクリュー2とを備えている。
【0017】
以下本明細書では、高分子材料Mが搬送される方向を、シリンダ3におけるa側を上流、b側を下流として説明する。
【0018】
スクリュー2には、その外周面に沿って螺旋状に延びて設けられて凸条部12が形成されている。凸条部12の間は一続きの溝になっており、スクリュー2とシリンダ3との間には、高分子材料Mを搬送するための空間Cが生じている。
【0019】
シリンダ3には、外周面に固定されたバンドヒーター4が設けられている。バンドヒーター4は例えば電力が供給されることで発熱しシリンダ3および空間Cを加熱する発熱体を有する。
【0020】
シリンダ3の下流側には、押出し先端部8が固定されている。押出し先端部8には、一端が空間Cに連通されるように開口して形成された排出経路6が設けられている。本実施形態では、排出経路6は径方向断面の形状が直径S1を有する円形になっている。排出経路6には、排出経路6に内に高分子材料Mを搬入するとともに、混練された被混練物を排出経路6から排出するための搬入搬出弁5が取り付けられている。また、搬入搬出弁5には、排出経路6の内部における温度を検出するための図示しない熱電対が一体に構成されている。
【0021】
排出経路6とシリンダ3との間には、筒状の流通管7が設けられている。流通管7の一端7aは排出経路6に連通され、流通管7の他端7bはシリンダ3の空間Cに連通するようにシリンダ3に接続されている。流通管7の内部は、径方向断面の形状がS2の内径を有する円形になっており、高分子材料Mをシリンダ3における高分子材料Mの搬送方向上流側へ還流させる帰還経路9になっている。
【0022】
図1(B)に示すように、排出経路6と帰還経路9とのそれぞれの直径はS1>S2を満たしており、すなわち排出経路6の径方向における断面積>帰還経路9の径方向における断面積である。
【0023】
以上に説明する構成の、本実施形態の混練装置の作用について、図1(A)および図1(B)を参照しながら説明を行う。
混練装置100では、搬入搬出弁5を通じて高分子材料Mがシリンダ3へと供給される。駆動部1が駆動されるとスクリュー2が軸回りに回転動作される。スクリュー2の外周面に形成された螺旋状の凸条部12と高分子材料Mとが接触された部分では、スクリュー2の回転運動がスクリュー2の軸方向への推力に変換される。すると、高分子材料Mがスクリュー2の先端(図1(A)に示すb方向)へと搬送される。ここで、バンドヒーター4によって高分子材料Mは加熱され、溶融された状態になっている。
【0024】
高分子材料Mは、スクリュー2による推力によってシリンダ3から押し出され、排出経路6内へと移動する。さらに、高分子材料Mは、排出経路6から帰還経路9へと押圧移動される。
【0025】
ここで、図1(B)に示すように、排出経路6と帰還経路9との境界部L0では、直径S1を有する排出経路6内にある高分子材料Mが、直径S1よりも小さい直径S2を有する帰還経路9へと流入する。このとき、高分子材料Mには断熱圧縮が生じ、高分子材料Mにかかる圧力が排出経路6における圧力P0よりも高い圧力P1となる。
【0026】
溶融された高分子材料Mでは、等しい温度であっても加えられる圧力が高いときには見かけの粘度が低下する。そのため、直径S2を有する帰還経路9の内部における圧力P1の高分子材料Mの流動性は圧力P0における流動性より高い。
【0027】
高分子材料Mの種類によって圧力変化に対する見かけの粘性の変化の程度は異なるが、圧力P0よりも高い圧力P1がかけられた高分子材料Mは、帰還経路9の中心軸線付近では排出経路6における流速V0よりも速い流速V1で流通する。一方、帰還経路9の壁面付近では、高分子材料Mと帰還経路9の壁面との間の抵抗によって高分子材料Mの流速が流速V1よりも遅い。このため、図1(B)に符号L1〜L3で示すように、帰還経路9の中心軸線付近と帰還経路9の壁面付近との間で高分子材料Mの移動距離に差が生じ、中心軸線方向に剪断応力が発生する。
【0028】
従って、境界部L0において揃って流入された高分子材料Mは、帰還経路9を通過する間にたとえば符号L3で示すように境界面が湾曲されており帰還経路9の中心軸線付近の高分子材料Mが先にシリンダ3に還流する。このように高分子材料Mが還流する時間に差があることで、空間C、排出経路6、および帰還経路9を通じて循環する高分子材料Mは分散されて均一に混練される。
【0029】
ところで、高分子材料Mが帰還経路9に流入される際には、断熱圧縮されることで発熱し、また帰還経路9を高分子材料Mが通過する際には剪断応力を受けることで剪断発熱する。ここで、これらの発熱が生じるのは高分子材料Mが帰還経路9に流入してから帰還経路9から流出するまでの間である。また、高分子材料Mが帰還経路9から流出された際には、直径S2を有する帰還経路9よりも広い空間Cへ流出するとともに、帰還経路9の内壁面との間に生じていた剪断応力がなくなる。このため、空間Cにある高分子材料Mの温度は帰還経路9の内部に高分子材料Mがあったときよりも低下する。
【0030】
混練装置100では、空間C、排出経路6、および帰還経路9を通じて循環する高分子材料Mは分散されて均一に混練され、高分子材料Mが均一に混練された被混練物が生産される。被混練物は、搬入搬出弁5を通じて混練装置100の外部に搬出され、引き続いて適宜の加工工程に使用される。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る混練装置100によれば、帰還経路9の内壁面との間に生じる剪断応力によって高分子材料Mが混練され、高分子材料Mに生じる剪断発熱は帰還経路9から空間Cに流出する際に放熱される。このため、混練装置100において高分子材料Mが循環して混練されても剪断発熱が高分子材料Mに蓄積されることが抑制されている。従って、高分子材料の劣化・分解を抑制しつつ高い剪断力を付与し、分散性のよい被混練物を生産することができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の混練装置について図2を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、上述した第1実施形態の混練装置100と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
【0033】
図2は、本実施形態の混練装置の概略構成を示す図であって、混練装置の一部を断面視した平面図である。図2に示すように、本実施形態の混練装置200は、スクリュー2とシリンダ3との組を2組備えている点で第1実施形態の混練装置100と構成が異なっている。
【0034】
また、駆動部1とスクリュー2との間には、ベルト1a、1bが介在されており、駆動部1による回転力はベルト1aによってスクリュー2aに伝達され、スクリュー2aの回転動作がベルト1bによってスクリュー2bに伝達される。
【0035】
また、押出し先端部8に代えて押出し先端部18を備えている。押出し先端部18は、排出経路6に代えて排出経路16a、16bを有し、それぞれ一端がシリンダ3a、3bにおける下流側に開口されている。本実施形態では、排出経路16a、16bのそれぞれの他端は集合された合流部16cになっている。
【0036】
また、流通管7に代えて、合流部16cとシリンダ3a、3bとの間に設けられた流通管17を備え、流通管17の内腔には、排出経路16a、16bと、空間Ca、Cbとのそれぞれに連通する帰還経路19が形成されている。
【0037】
合流部16cは排出経路16a、16bのそれぞれの径方向における断面積の総和と等しい断面積を有して合流後管路16dに連通されている。合流後管路16dは、排出経路の一部として機能し、排出経路16a、16bのそれぞれの径方向における断面積の総和と等しい断面積を有して帰還経路19に連通されている。帰還経路19では、合流後管路16d側の開口面積は排出経路16a、16bの断面積の総和よりも小さい。
【0038】
また、帰還経路19は、シリンダ3a、3bへと経路が分岐されているが、この分岐(分岐部19a)からシリンダ3a、3bに至るまでの帰還経路19の断面積の総和は、合流後管路16d側における断面積と等しい。
【0039】
このように、本実施形態の混練装置200では、排出経路16a、16bが集合された合流部16cが合流後管路16dを介して帰還経路19と接続されている。合流後管路16dと帰還経路19とのそれぞれの断面積は、合流後管路16dの断面積>帰還経路19の断面積を満たしている。また、排出経路16a,16のそれぞれの径方向における断面積の総和>帰還経路19の径方向における断面積の総和、の関係も満たされている。従って、第1実施形態の混練装置100と同様に帰還経路19の内壁面との間に生じる剪断応力によって高分子材料Mが混練され、高分子材料Mに生じる剪断発熱は帰還経路19から空間Ca、Cbに流出する際に放熱される。このため、混練装置200において高分子材料Mが循環して混練されても剪断発熱が高分子材料Mに蓄積されることが抑制されている。従って、高分子材料の劣化・分解を抑制しつつ高い剪断力を付与し、分散性のよい被混練物を生産することができる。また、本実施形態では合流部19を備えており、高分子材料Mの合流による混練効果も有する。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の混練装置について図3および図4を参照して説明する。
図3は本実施形態の混練装置の概略構成図であって、混練装置の一部を断面視で示す平面図である。また、図4は同混練装置の側面図である。
図3および図4に示すように、本実施形態の混練装置300は、材料搬送部35を備えている点で第2実施形態の混練装置200と構成が異なっている。
材料搬送部35は、高分子材料Mが供給されるシリンダ23と、シリンダ23内に配置され、駆動部11によってベルト11aを介して回転駆動されることにより高分子材料Mを一方向(シリンダ3a、3b側)に搬送するスクリュー22とを備えている。
【0041】
スクリュー22はスクリュー2と同様に螺旋状の凸条部12を有しており、スクリュー22とシリンダ23との間には、高分子材料Mを搬送するための空間Ccが生じている。
【0042】
シリンダ23には、材料を貯留して空間Ccに供給するためのホッパー34が設けられている。また、シリンダ23には、ヒーター24が内蔵されている。ヒーター24は例えば電力が供給されることで発熱しシリンダ23および空間Ccを加熱する発熱体を有する。
【0043】
シリンダ23の下流側には、押出し先端部18に代えて設けられた押出し先端部28が固定されている。押出し先端部28では、合流部16cに弁26cが設けられ、弁26cによってシリンダ23と排出経路26a、26bとの間の投入経路31の連通状態が開状態あるいは閉状態になるように動作される。さらに、弁26cは図4に示すように混練装置300の外部に開口する排出口33と排出経路26a、26bとを連通させるように流路を選択可能に構成されている。
【0044】
また、本実施形態では高分子材料Mの温度は流通管17に設けられた熱電対25によって測定されている。
【0045】
本実施形態の混練装置300では、材料搬送部35において、ホッパー34にストックされた高分子材料Mのペレットは、自重によって空間Ccの内部に送られる。空間Ccに送られた高分子材料Mは、シリンダ23に内蔵されたヒーターによって溶融される。溶融された高分子材料Mは、スクリュー22の回転動作によって押出し先端部28に向かって搬送され、投入経路31から排出経路26a、26b、合流部16c、合流後管路16d、帰還経路19のそれぞれを通じて空間Ca、Cbへと押圧移動される。
【0046】
続いて、弁26cによって投入経路31が閉鎖され、第2実施形態の混練装置200と同様に高分子材料Mが混練される。高分子材料Mの混練の工程が完了したら、弁26cによって排出経路26a、26bと排出口33とが連通され、排出口33を通じて高分子材料Mが混練された被混練物が排出される。この被混練物は適宜の後工程に使用される。
【0047】
本実施形態においても、第2実施形態の混練装置200と同様に、排出経路26a、26bが集合された合流部16cと帰還経路19とが合流後管路16dを介して接続されている。合流後管路16dと帰還経路19とのそれぞれの断面積は、合流後管路16d>帰還経路19の断面積を満たしている。
従って、第2実施形態の混練装置200と同様に帰還経路19の内壁面との間に生じる剪断応力によって高分子材料Mが混練され、高分子材料Mに生じる剪断発熱は帰還経路19から空間Ca、Cbに流出する際に放熱される。
【0048】
このため、混練装置200において高分子材料Mが循環して混練されても剪断発熱が高分子材料Mに蓄積されることが抑制されている。従って、高分子材料の劣化・分解を抑制しつつ高い剪断力を付与し、分散性のよい被混練物を生産することができる。
【0049】
また、材料搬送部35において高分子材料Mがヒーター24によって溶融され、投入経路31から順にそれぞれの経路が高分子材料Mで満たされていく。このため、それぞれの経路には気泡が残留することが抑制されている。
【0050】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態の混練成形装置について図5および図6を参照して説明する。図5は本実施形態の混練成形装置の側面図である。また、図6は本実施形態の混練成形装置の変形例を示す側面図である。
【0051】
図5に示すように、本実施形態の混練成形装置400は、第3実施形態の混練装置300に対して、排出口33に連通する成形型41と、成形型41を通じて外部に排出された高分子材料Mの被混練物を成形型41の鉛直下方に引き取る引取機42とをさらに備えている。成形型41と引取機42とによって成形部43が構成されている。
引取機42は、被混練物の方向を変えるプーリー42aと、被混練物を巻き取る本体42bとを有している。
【0052】
本実施形態では、排出口33から排出された高分子材料Mの被混練物は成形型41に送られる。成形型41では、所定の金型形状にならい、例えばチューブ状など所定の形状に被混練物が成形され、続いて成形された被混練物が成形型41から排出される。さらに引取機42によって成形型41から排出された被混練物が引き取られ、空気によって冷却されて固化した成形品が生産される。
【0053】
このように、本実施形態の混練成形装置400によれば、排出口33から排出される被混練物を連続的に成形して成形品を生産することができるので、成形品の生産リードタイムを短縮することができる。
【0054】
また、成形部43において成形型41から排出された被混練物を鉛直下方に引き取ることができるので、被混練物が空気によって冷却されて固化する過程における成形品の撓みなどの影響を低減して成形品の成形精度を高く保つことができる。
【0055】
(変形例)
以下では、本実施形態の混練成形装置の変形例について図6を参照して説明する。図6は本変形例の混練成形装置500の側面図である。
図6に示すように、本変形例の混練成形装置500は、成形部43に代えて成形部51を備えている。成形部51は、成形部43と異なり射出形成に好適に適用可能な成形部である。
【0056】
本変形例においても、上述の第4実施形態と同様に、排出口33から排出される被混練物を連続的に成形して成形品を生産することができるので、成形品の生産リードタイムを短縮することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、本発明の各実施形態では、帰還経路の直径が排出経路の直径よりも小さく構成されている例を示したが、これに限らず、帰還経路の経路上の少なくとも一部に帰還経路の断面積が排出経路の断面積よりも小さい小径部があれば本発明の効果を奏することができる。
【0058】
また、本発明の第1実施形態では、排出経路6と帰還経路9とが径方向断面が円形である例を示したが、これに限らず排出経路の断面積>帰還経路の断面積の関係を満たしていれば他の形状を採用することができる。例えば排出経路と帰還経路との径方向断面の形状が多角形でもよいし、排出経路と帰還経路との径方向断面の形状が互いに異なっていても構わない。
【0059】
また、本発明の第2実施形態では、合流後管路16dは排出経路の一部である構成を採用したが、これに限らず、合流部16cまでが排出経路で、合流後管路19は帰還経路の一部であり、合流後管路16dの断面積が、排出経路16a、16bの断面積の総和および合流部16cの断面積よりも小さい構成を採用しても良い。
【0060】
また、上述の実施形態及び変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
例えば、第3実施形態において説明した材料搬送部35は、第1実施形態の混練装置100に対しても好適に組み合わせることができる。すなわち、搬入搬出弁5に代えて材料搬送部35を備えることができる。この場合、材料搬送部35は押出し先端部8において排出経路6に連通するように構成され、排出経路6や帰還経路9を通じて高分子材料Mをシリンダ3の内部の空間Cに充填することができる。
【符号の説明】
【0061】
2、2a、2b スクリュー
3、3a、3b シリンダ
6、16a、16b、26a、26b 排出経路
9、19 帰還経路
16c 合流部
35 材料搬送部
43、51 成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料が供給されるシリンダを少なくとも一つと、
該各シリンダ内に配置され、回転駆動されることにより前記高分子材料を一方向に搬送するスクリューと、
前記各シリンダの前記高分子材料の搬送方向下流側に開口するように設けられ、前記高分子材料を排出する排出経路と、
前記排出経路と前記シリンダとの間に設けられ、前記高分子材料を前記シリンダにおける前記高分子材料の搬送方向上流側へ還流させる帰還経路と、
を備え、
前記排出経路と前記帰還経路のそれぞれの径方向におけるそれぞれの断面積が
前記排出経路の断面積>前記帰還経路の断面積
とされている、
混練装置。
【請求項2】
前記スクリューと前記シリンダとの組を複数組備え、
前記排出経路は互いに合流する合流部をさらに備え、
前記帰還経路は複数の前記シリンダに連通されている、
請求項1に記載の混練装置。
【請求項3】
前記排出経路に連通され、前記高分子材料を溶融させて前記排出経路内へ搬送する材料搬送部をさらに備える請求項1または2に記載の混練装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の混練装置と、
前記混練装置において前記被混練物を所定の形状に成形する成形部と、
を備える混練成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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