説明

添加剤としてシラン化合物を含有するポリウレタン接着剤

ポリウレタンおよび式(I)[式中、R1〜R4は、相互に無関係に有機基を表すが、ただし基R1〜R4の少なくとも2つは、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を表す]のシランを含有する水性接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンおよび式
【化1】

[式中、R1〜R4は、相互に無関係に有機基を表すが、ただし基R1〜R4の少なくとも2つは、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を表す]のシランを含有する水性接着剤に関する。
【0002】
水性ポリウレタン分散液は接着剤として、特に積層用接着剤として、たとえば自動車産業または家具産業において使用されている。
【0003】
このような工業用の積層のためには特に高い耐熱性が重要であり、接着部は高温でもできる限り長時間に亘ってその強度を維持すべきである。
【0004】
工業用の積層のために、WO2005/05565に記載されているように、たとえばカルボジイミド基を有するポリウレタン、またはカルボジイミドを添加剤として含有しているポリウレタン分散液が使用される。
【0005】
ポリウレタン骨格に結合しているアルコキシシラン基を有するポリウレタンは、たとえばEP−A163214またはEP−A315006に記載されている。DE−A4215648は、アルコキシシラン基を有するこのようなポリウレタンのコンタクト型接着剤としての使用に関する。
【0006】
添加剤としてシランを含有する水性接着剤はEP−A1479744から公知である。しかし該接着剤は、結合剤としてポリウレタンではなくポリアクリレートを含有している。
【0007】
本発明の課題は、工業用の積層のためのポリウレタン分散液の適用技術的特性をさらに改善することであった。特に耐熱性はできる限り良好であるべきである。接着剤は貯蔵安定性であり、かつできる限り簡単に製造可能であるべきである。
【0008】
これに応じて、上記で定義される水性接着剤が判明した。
【0009】
ポリウレタンについて
水性接着剤は結合剤としてポリウレタンを含有している。
【0010】
有利には、主としてポリイソシアネート、特にジイソシアネートと、反応相手としてのポリエステルジオール、ポリエーテルジオールまたはこれらの混合物とから構成されているポリウレタンが考えられる。
【0011】
該ポリウレタンは有利には少なくとも40質量%まで、特に有利には少なくとも60質量%まで、およびとりわけ有利には少なくとも80質量%までが、ジイソシアネート、ポリエーテルジオールおよび/またはポリエステルジオールから構成されている。
【0012】
有利には該ポリウレタンは、ポリエステルジオールを、ポリウレタンに対して10質量%以上の量で、特に有利には30質量%以上、とりわけ40質量%以上、または50質量%以上、殊に有利には60質量%以上の量で含有している。
【0013】
ポリエステルジオールは特に構造成分として使用され、ポリエステルジオールがポリエーテルジオールとの混合物中で使用される場合には、ポリエステルジオールおよびポリエーテルジオールの混合物の有利には少なくとも50モル%、特に有利には少なくとも80モル%、とりわけ有利には100モル%がポリエステルジオールである。
【0014】
該ポリウレタンは有利には30℃より高い融点、特に40℃より高い、特に有利には50℃より高い、または60℃より高い、または70℃より高い融点を有し、一般に融点は150℃を超えることはなく、特に100℃以下である。従って融点は特に30〜150℃、特に有利には40〜150℃、およびとりわけ有利には30〜100℃、および殊には50〜80℃の範囲である。
【0015】
ポリウレタンは有利には20J/gを上回る溶融エンタルピーを有する。
【0016】
この場合、融点および溶融エンタルピーの測定は、示差走査熱分析により行われる。
【0017】
測定は、測定前に、循環空気式乾燥棚中、40℃で72時間乾燥させた、厚さ200μmのポリウレタンフィルムを用いて行う。測定の準備のために、約13mgのポリウレタンを受皿に充填する。該受皿を閉鎖し、試料を120℃に加熱し、20K/分で冷却し、かつ20℃で20時間温度処理する。こうして準備した試料を、DSC法によりDIN53765により測定し、その際、試料を20K/分で加熱する。DIN53765によるピーク温度を溶融温度として評価し、溶融エンタルピーは、DIN53765の図4に記載されているように測定する。
【0018】
総じてポリウレタンは、有利には
a)ジイソシアネート、
b)ジオール、これは
b1)ジオール(b)の全量に対して、10〜100モル%が、500〜5000g/モルの分子量を有する、
b2)ジオール(b)の全量に対して、0〜90モル%が、60〜500g/モルの分子量を有する、
c)モノマー(a)および(b)とは異なる、少なくとも1のイソシアネート基または少なくとも1の、イソシアネート基に対して反応性の基を有し、さらに少なくとも1の親水基または潜在的な親水基を有し、このことによってポリウレタンの水分散性がもたらされるすモノマー、
d)場合によりモノマー(a)〜(c)とは異なる、反応性の基を有する別の多価化合物、この場合、反応性の基は、アルコールのヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基またはイソシアネート基である、および
e)場合によりモノマー(a)〜(d)とは異なる、反応性の基を有する一価の化合物、この場合、反応性の基は、アルコールのヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基またはイソシアネート基である
から構成されている。
【0019】
モノマー(a)として特に、ジイソシアネートX(NCO)2[式中、Xは、4〜15個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6〜15個の炭素原子を有する脂環式もしくは芳香族炭化水素基、または7〜15個の炭素原子を有する芳香族脂肪族炭化水素基を表す]が挙げられる。このようなジイソシアネートの例は、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,2−ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−プロパン、トリメチルヘキサンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、4,4′−ジイソシアナト−ジフェニルメタン、2,4′−ジイソシアナトジフェニルメタン、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(HMDI)の異性体、たとえばトランス/トランス−、シス/シス−およびシス/トランス−異性体、ならびにこれらの化合物からなる混合物である。
【0020】
このようなジイソシアネートは市販されている。
【0021】
これらのイソシアネートの混合物として、特にジイソシアナトトルエンおよびジイソシアナト−ジフェニルメタンのそれぞれの構造異性体の混合物が特に重要であり、特に2,4−ジイソシアナトトルエン80モル%と、2,6−ジイソシアナトトルエン20モル%とからなる混合物が適切である。さらに、芳香族イソシアネート、たとえば2,4−ジイソシアナトトルエンおよび/または2,6−ジイソシアナトトルエンと、脂肪族もしくは脂環式イソシアネート、たとえばヘキサメチレンジイソシアネートまたはIPDIとの混合物が特に有利であり、その際、脂肪族イソシアネート対芳香族イソシアネートの有利な混合比は4:1〜1:4である。
【0022】
ポリウレタンを構成するために、化合物として前記のもの以外に、遊離イソシアネート基とならんで別のキャップトイソシアネート基、たとえばウレトジオン基を有するイソシアネートも使用することができる。
【0023】
良好なフィルム形成および弾性に関して、ジオール(b)として、主として約500〜5000g/モル、有利には約1000〜3000g/モルの分子量を有する高分子ジオール(b1)が考えられる。これは数平均モル質量Mnである。Mnは、末端基の数(OH価)の測定により生じる。
【0024】
ジオール(b1)は、たとえばUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、第62〜65頁から公知のポリエステルポリオールであってもよい。有利には二価のアルコールと二価のカルボン酸との反応により得られるポリエステルポリオールを使用する。遊離のポリカルボン酸の代わりに、ポリエステルポリオールを製造するための、相応するポリカルボン酸無水物または低級アルコールの相応するポリカルボン酸エステル、またはこれらの混合物を使用することもできる。ポリカルボン酸は脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、芳香族もしくは複素環式であってもよく、かつ場合によりたとえばハロゲン原子により置換されているか、かつ/または不飽和であってもよい。このための例として、次のものが挙げられる:コルク酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸。一般式HOOC−(CH2y−COOH[式中、yは、1〜20の数、有利には2〜20の整数である]のジカルボン酸が有利であり、これはたとえばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸である。
【0025】
多価アルコールとして、たとえばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、たとえば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチル−プロパン−1,3−ジオール、メチルペンタンジオール、さらにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコールおよびポリブチレングリコールが考えられる。有利であるのは一般式HO−(CH2x−OH[式中、xは、1〜20の数、有利には2〜20の整数である]のアルコールである。このための例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、およびドデカン−1,12−ジオールである。さらに有利であるのはネオペンチルグリコールである。
【0026】
さらに場合によりポリカーボネート−ジオール、たとえばホスゲンと、ポリエステルポリオールのための構成成分として挙げた低分子アルコールの過剰量との反応により得ることができるポリカーボネート−ジオールが考えられる。
【0027】
場合によりラクトンベースのポリエステルジオールを併用することもでき、その際、これはラクトンのホモポリマーまたはコポリマーであり、有利には末端のヒドロキシル基を有する、適切な二官能性開始分子へのラクトンの付加生成物である。ラクトンとして有利には、一般式HO−(CH2z−COOHの化合物から誘導されるラクトンが考えられ、その際、zは、1〜20の数であり、かつメチレン単位のH原子は、C1〜C4−アルキル基により置換されていてもよい。その例は、ε−カプロラクトン、β−カプロラクトン、γ−ブチロラクトンおよび/またはメチル−ε−カプロラクトン、ならびにこれらの混合物である。適切な開始成分はたとえば、ポリエステルポリオールのための構成成分として前記で挙げた低分子の二価のアルコールである。相応するε−カプロラクトンのポリマーは特に有利である。低分子のポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールも、ラクトンポリマーを製造するための開始化合物として使用することができる。ラクトンのポリマーの代わりに、ラクトンに相応するヒドロキシカルボン酸の相応する化学的に等価の重縮合体を使用することもできる。
【0028】
ポリエステルジオールは、特にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシドまたはエピクロロヒドリン同士を、たとえばBF3の存在下で重合することにより、またはこれらの化合物を場合により混合物中で付加することにより、または順次、反応性の水素原子を有する開始成分、たとえばアルコールまたはアミン、たとえば水、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたはアニリンに付加することにより得られる。特に有利であるのは、240〜5000g/モル、および特に500〜4500g/モルの分子量を有するポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフランである。
【0029】
b1)には、20質量%未満がエチレンオキシドからなるポリエーテルジオールが該当する。ポリエーテルジオールは、少なくとも20質量%までが、モノマーc)に挙げられる親水性のポリエーテルジオールである。
【0030】
場合によりポリヒドロキシオレフィンを併用することもでき、有利には2つの末端ヒドロキシル基を有するもの、たとえばα,ω−ジヒドロキシポリブタジエン、α,ω−ジヒドロキシポリメタクリルエステル、またはα,ω−ジヒドロキシアクリルエステルをモノマー(c1)として併用することができる。このような化合物はたとえばEP−A622378から公知である。別の適切なポリオールは、ポリアセタール、ポリシロキサンおよびアルキド樹脂である。
【0031】
有利にはジオールb1)の少なくとも30モル%、特に有利には少なくとも70モル%がポリエステルジオールである。特に有利には、ジオールb1)としてもっぱらポリエステルジオールを使用する。
【0032】
ポリウレタンの硬度および弾性率は、ジオール(b)として、ジオール(b1)以外に、さらに約60〜500g/モル、有利には62〜200g/モルの分子量を有する低分子ジオール(b2)を使用する場合に高めることができる。
【0033】
モノマー(b2)として、特にポリエステルポリオールの製造のために挙げた短鎖のアルカンジオールの構成成分を使用することができ、その際、2〜12個の炭素原子を有する非分枝鎖状のジオール、および整数の炭素原子を有するジオールnならびにペンタン−1,5−ジオールおよびネオペンチルグリコールが有利である。
【0034】
ジオールb2)として、たとえばエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブテン−1,4−ジオール、ブチン−1,4−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ネオペンチルグルコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、たとえば1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2−メチル−プロパン−1,3−ジオール、メチルペンタンジオール、さらにジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、およびポリブチレングリコールが考えられる。有利であるのは、一般式HO−(CH2x−OH[式中、xは、1〜20の数、有利には2〜20の整数である]のアルコールである。このための例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオールおよびドデカン−1,12−ジオールである。さらに有利であるのは、ネオペンチルグリコールである。
【0035】
有利には、ジオール(b)の全量に対するジオール(b1)の割合は、10〜100モル%であり、かつジオール(b)の全量に対するモノマー(b2)の割合は、0〜90モル%である。特に有利には、ジオール(b1)対モノマー(b2)の比率は、0.1:1〜5:1、特に有利には0.2:1〜2:1である。
【0036】
ポリウレタンの水分散性を得るためには、ポリウレタンは有利には成分(a)、(b)および(d)とは異なる、少なくとも1のイソシアネート基もしくは少なくとも1の、イソシアネート基に対して反応性の基、およびさらに少なくとも1の親水基もしくは親水基に変換することができる1の基を有するモノマー(c)を構成成分として含有している。以下では「親水基または潜在的な親水基」という概念は、「(潜在的な)親水基」と略記する。(潜在的な)親水基は、ポリマー主鎖を構成するために役立つモノマーの官能基よりもイソシアネートとの反応が実質的に緩慢である。(潜在的な)親水基を有する成分の、成分(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の全量における割合は、一般に、全てのモノマー(a)〜(e)の質量に対する(潜在的な)親水基のモル量が、30〜1000、有利には50〜500、および特に有利には80〜300ミリモル/kgであるように量定する。
【0037】
(潜在的な)親水基は、非イオン性の、または有利には(潜在的な)イオン性の親水基であってよい。
【0038】
非イオン性の親水基として、特に有利に5〜100、好ましくは10〜80のエチレンオキシド繰返単位からなるポリエチレングリコールエーテルが考えられる。ポリエチレンオキシド単位の含有率は全てのモノマー(a)〜(e)の全量に対して、一般に0〜10質量%、有利には0〜6質量%である。
【0039】
非イオン性の親水基を有する有利なモノマーは、少なくとも20質量%のエチレンオキシドを含有するポリエチレンオキシドジオール、ポリエチレンオキシドモノオールならびにポリエチレングリコールと、末端にエーテル化されたポリエチレングリコール基を有するジイソシアネートとからの反応生成物である。このようなジイソシアネートならびにその製造方法は、特許文献US−A3,905,929およびUS−A3,920,598に記載されている。
【0040】
イオン性の親水基は、特にアルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形のアニオン基、たとえばスルホン酸イオン基、カルボン酸イオン基、およびリン酸イオン基、ならびにカチオン基、たとえばアンモニウム基、特にプロトン化された第三級アミノ基または第四級アンモニウム基である。
【0041】
潜在的なイオン性親水基は、特に単純な中和反応、加水分解反応または四級化反応によって上記のイオン性親水基へと変換することができる基であり、つまりたとえばカルボン酸基または第三級アミノ基である。
【0042】
(潜在的な)イオン性モノマー(c)は、たとえばUllmanns Encyklopaedie der technischen Chemie、第4版、第19巻、第311〜313頁およびたとえばDE−A1495745に詳細に記載されている。
【0043】
(潜在的な)カチオン性モノマー(c)として特に、第三級アミノ基を有するモノマーが特に実地では重要であり、たとえばこれはトリス−(ヒドロキシアルキル)−アミン、N,N′−ビス(ヒドロキシアルキル)−アルキルアミン、N−ヒドロキシアルキル−ジアルキルアミン、トリス−(アミノアルキル)−アミン、N,N′−ビス(アミノアルキル)−アルキルアミン、N−アミノアルキル−ジアルキルアミンであり、その際、これらの第三級アミンのアルキル基およびアルカンジイル単位は相互に無関係に1〜6個の炭素原子からなる。さらに、第三級窒素原子を有し、有利には2つの末端ヒドロキシル基を有するポリエーテル、たとえばアミン窒素に結合している2つの水素原子を有するアミン、たとえばメチルアミン、アニリンまたはN,N′−ジメチルヒドラジンのアルコキシル化により、それ自体慣用の方法で得られるポリエーテルが考えられる。このようなポリエーテルは、一般に、500〜6000g/モルのモル質量を有している。
【0044】
これらの第三級アミンは、酸により、有利には強い鉱酸、たとえばリン酸、硫酸、ハロゲン化水素酸、または強い有機酸により、または適切な四級化剤、たとえばC1〜C6−アルキルハロゲン化物またはベンジルハロゲン化物、たとえば臭化物または塩化物との反応により、アンモニウム塩へと変換される。
【0045】
(潜在的な)アニオン基を有するモノマーとして、通常、少なくとも1のアルコールのヒドロキシル基または少なくとも1の第一級もしくは第二級アミノ基を有する、脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族または芳香族のカルボン酸およびスルホン酸が考えられる。有利であるのはジヒドロキシアルキルカルボン酸であり、特に3〜10個の炭素原子を有するもの、たとえばUS−A3,412,054に記載されているものである。特に一般式(c1)
【化2】

[式中、R1およびR2は、C1〜C4−アルカンジイル−(単位)を表し、かつR3は、C1〜C4−アルキル−(単位)を表す]の化合物が有利であり、特にジメチロールプロピオン酸(DMPA)が有利である。
【0046】
さらに、相応するジヒドロキシスルホン酸およびジヒドロキシホスホン酸、たとえば2,3−ジヒドロキシプロパンホスホン酸が適切である。
【0047】
その他に適切なものは、500を超え10000g/モルまでの分子量を有し、少なくとも2つのカルボキシレート基を有するジヒドロキシ化合物であり、これらはDE−A3911827から公知である。該化合物は、ジヒドロキシ化合物とテトラカルボン酸二無水物、たとえばピロメリット酸二無水物またシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物との、2:1〜1.05:1のモル比での重付加反応における反応によって得られる。
【0048】
ジヒドロキシ化合物として、特に連鎖延長剤として記載されているモノマー(b2)ならびにジオール(b1)が適切である。
【0049】
イソシアネートに対して反応性のアミノ基を有するモノマー(c)として、アミノカルボン酸、たとえばリシン、β−アラニン、またはDE−A2034479に挙げられている、脂肪族二第一級ジアミンの、α,β−不飽和カルボン酸もしくはスルホン酸への付加物が考えられる。
【0050】
このような化合物は、たとえば式(c2)
2N−R4−NH−R5−X (c2)
[式中、
4およびR5は、相互に無関係に、C1〜C6−アルカンジイル単位、有利にはエチレンを表し、
かつXは、COOHまたはSO3Hを表す]により記載される。
【0051】
式(c2)の特に有利な化合物は、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンカルボン酸ならびにN−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸もしくは相応するアルカリ塩であり、その際、Naは対イオンとして特に有利である。
【0052】
さらに特に有利であるのは、上記の脂肪族二第一級ジアミンの、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸への付加物であり、これらはたとえばDE−B1954090に記載されている。
【0053】
潜在的なイオン基を有するモノマーを使用する場合、これらのイオンの形への変換は、イソシアネートの重付加の前に、その間に、しかし有利にはその後に行うことができる。というのも、イオン性のモノマーは反応混合物中でしばしば難溶性であるからである。中和剤はたとえばアンモニア、NaOH、トリエタノールアミン(TEA)、トリイソプロピルアミン(TIPA)またはモルホリン、もしくはその誘導体である。特に有利にはスルホン酸基またはカルボン酸基は、対イオンとしてのアルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンとの塩の形で存在している。
【0054】
ポリウレタンは、有利にはアニオン基を有しており、特にスルホン酸基および特に有利にはカルボン酸基を有している。
【0055】
モノマー(a)〜(c)とは異なり、かつ場合によりポリウレタンの成分であるモノマー(d)は、一般に架橋または鎖長の延長に役立つ。一般に2価より大きい価数を有する非フェノールアルコール、2以上の第一級および/または第二級アミノ基を有するアミン、ならびに1以上のアルコールのヒドロキシル基とならんで、1以上の第一級および/または第二級アミノ基を有する化合物である。
【0056】
2より大きい価数を有するアルコールは、一定の分岐度または架橋度の調整に役立つことができ、たとえばトリメチロールプロパン、グリセリンまたは糖である。
【0057】
さらに、ヒドロキシル基とならんで、イソシアネートに対して反応性の別の基を有するモノアルコール、たとえば1以上の第一級および/または第二級アミノ基を有するモノアルコール、たとえばモノエタノールアミンが考えられる。
【0058】
2以上の第一級および/または第二級アミノ基を有するポリアミンは、特に、鎖長の延長もしくは架橋を、水の存在下で行うべき場合に使用する。というのも、アミンは通常、アルコールまたは水よりも迅速にイソシアネートと反応するからである。これはしばしば、架橋したポリウレタンまたは高い分子量を有するポリウレタンの水性分散液が所望される場合には必要となる。このような場合には、イソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、該プレポリマーを迅速に水中に分散させ、かつ引き続き、イソシアネートに対して反応性の複数のアミノ基を有する化合物の添加によって鎖長を延長するか、または架橋させて行う。
【0059】
このために適切なアミンは一般に、32〜500g/モル、有利には60〜300g/モルの分子量範囲を有する多官能価アミンであり、これは、第一級および第二級アミノ基の群から選択される少なくとも2つのアミノ基を有する。このための例は、ジアミン、たとえばジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、ピペリジン、2,5−ジメチルピペラジン、アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、またはトリアミン、たとえばジエチレントリアミンまたは1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタンである。
【0060】
アミンは、ブロックされた形で、たとえば相応するケチミン(たとえばCA−A1129128を参照のこと)、ケタジン(たとえばUS−A4,269,748を参照のこと)またはアミン塩(US−A4,292,226を参照のこと)の形で使用することができる。オキサゾリジン、たとえばUS−A4,192,937において使用されるオキサゾリジンは、キャップトポリアミンであり、これは本発明によるポリウレタンを製造するために、プレポリマーの鎖長延長のために使用することができる。このようなキャップトポリアミンを使用する際に、これらを一般には水の存在下でプレポリマーと混合し、かつこの混合物を引き続き、分散水と、または分散水の一部と混合して、加水分解反応により相応するポリアミンが遊離する。
【0061】
有利には、ジアミンとトリアミンとの混合物を使用するが、特に有利にはイソホロンジアミン(IPDA)とジエチレントリアミン(DETA)との混合物を使用する。
【0062】
ポリウレタンは成分(b)および(d)の全量に対して、イソシアネートに対して反応性のアミノ基を少なくとも2つ有するポリアミンをモノマー(d)として有利には1〜30モル%、特に有利には4〜25モル%含有する。
【0063】
同じ目的のために、2価より高い価数を有するイソシアネートも、モノマー(d)として使用することができる。市販の化合物はたとえばイソシアヌレートまたはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットである。
【0064】
場合により併用されるモノマー(e)は、モノイソシアネート、モノアルコールおよびモノ第一級および第二級アミンである。一般にその割合は、モノマーの全モル量に対して最大で10モル%である。これらの一官能価化合物は通常、別の官能基、たとえばオレフィン基またはカルボニル基を有しており、かつポリウレタンの分散性もしくは架橋、またはその他のポリマー類似の反応を可能にする官能基をポリウレタンへ導入するために役立つ。このために、イソプロペニル−a,a−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)およびアクリル酸もしくはメタクリル酸のエステル、たとえばヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートのようなモノマーが考えられる。
【0065】
ポリウレタン化学の分野では、ポリウレタンの分子量を、相互に反応性のモノマーの割合の選択により、ならびに分子あたりの反応性の官能基の数の数学的平均値の選択によりどのようにして調整することができるかは一般に公知である。
【0066】
通常、成分(a)〜(e)ならびにこれらのそのつどのモル量は、
A イソシアネート基のモル量および
B ヒドロキシル基のモル量と、付加反応においてイソシアネートと反応することができる官能基のモル量との合計
とした場合の比A:Bが、0.5:1〜2:1、有利には0.8:1〜1.5、特に有利には0.9:1〜1.2:1であるように選択される。A:Bの比が、できる限り1:1に近いことが特に有利である。
【0067】
使用されるモノマー(a)〜(e)は、平均して通常は1.5〜2.5、有利には1.9〜2.1、特に有利には2.0のイソシアネート基もしくは付加反応においてイソシアネートと反応することができる官能基を有する。
【0068】
ポリウレタンを製造するための成分(a)〜(e)の重付加は、有利には180℃までの反応温度で、好ましくは150℃までの反応温度で、標準圧力下または自然発生的に生じる圧力下で行う。
【0069】
ポリウレタン、もしくは水性ポリウレタン分散液の製造は、当業者に公知である。
【0070】
ポリウレタンは有利には水性分散液として存在し、かつこの形で使用される。
【0071】
シランについて
シランは、式
【化3】

[式中、R1〜R4は、相互に無関係に、有機基を表すが、ただし、基R1〜R4の少なくとも2つは、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を表す]を有する。
【0072】
有利には基R1〜R4の2つもしくは3つ、特に有利には3つは、ヒドロキシ基であるか、またはアルコキシ基である。一般にはアルコキシ基であり、この場合、アルコキシ基は後の使用の際に加水分解されてヒドロキシ基となり、該ヒドロキシ基はさらに反応もしくは架橋する。
【0073】
これは特にC1〜C9の、有利にはC1〜C6の、特に有利にはC1〜C3のアルコキシ基であり、とりわけ有利にはメトキシ基またはエトキシ基、特にメトキシ基である。
【0074】
残りの基R1〜R4は、任意の有機基であり、そのモル質量は一般に、500g/モル未満、特に200g/モル未満、特に有利には150g/モル未満、もしくは100g/モル未満である。
【0075】
残りの基R1〜R4は、たとえば脂肪族もしくは芳香族の炭化水素基であるか、脂肪族成分も、脂環式成分も、芳香族成分も有する炭化水素基である。
【0076】
特別な実施態様では、残りの基R1〜R4の少なくとも1つは、第一級もしくは第二級アミノ基、酸基、酸無水物基、カルバメート基、ヒドロキシル基、イソシアネート基またはエポキシ基から選択される少なくとも1の官能基を有する有機基である。
【0077】
官能基として特に有利であるのは、第一級または第二級アミノ基、エポキシ基、特にグリシジル基であるか、またはカルバメート基である。特に有利であるのはエポキシ基であり、特にグリシジル基である。残りの基R1〜R4は、さらに複数の官能基、たとえば2つの第一級アミノ基、2つの第二級アミノ基または1の第一級アミノ基と1の第二級アミノ基とを有していてもよい。
【0078】
有利なシランの場合、基R1〜R4の3つがヒドロキシ基またはアルコキシ基(有利にはアルコキシ基、上記を参照のこと)を表し、かつ残りの1つの基は、少なくとも1の官能基を有する有機基を表す。同様に有利であるのは、基R1〜R4の2つが、ヒドロキシ基またはアルコキシ基(有利にはアルコキシ基、上記を参照のこと)を表し、かつ残りの2つの基がそれぞれ少なくとも1の官能基を有する有機基を表す。
【0079】
適切なシランは、特に低分子の、かつ5000g/モル未満、特に2000g/モル未満、特に有利には1000g/モル未満、およびとりわけ有利には500g/モル未満の分子量を有し、分子量は一般に50g/モルを超え、特に100g/モルを超え、もしくは150g/モルを越える。
【0080】
シランとしてたとえば
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、
3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、
N−トリメトキシシリルメチル−O−メチル−カルバメート
が考えられる。
【0081】
水性接着剤中でのシランの含有率は、ポリウレタン100質量部に対して、一般に1質量部を上回り、特に2質量部を上回り、特に有利には5質量部を上回り、シランの含有率は、ポリウレタン100質量部に対して一般に最大で30質量部、特に最大で20質量部、特に有利には最大で15質量部である。
【0082】
水性接着剤の別の成分について
本発明による接着剤は水性接着剤である。
【0083】
接着剤の主成分は、結合剤としてのポリウレタンである。接着剤は固体含有率に対して、つまり、水またはその他の、21℃、1バールで液状の溶剤を含有しないで、有利には少なくとも20質量%まで、特に有利には少なくとも30質量%まで、殊に有利には少なくとも40質量%まで、およびとりわけ少なくとも50質量%まで、もしくは少なくとも70質量%までが、ポリウレタンからなる。
【0084】
接着剤は、乾燥の際に蒸発する水およびその他の溶剤以外は、単にポリウレタンとシランとからなっていてもよいが、あるいははまた、別の添加剤、たとえば別の結合剤、充填剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、架橋剤を含有していてもよい。別の添加剤は、簡単な方法でポリウレタン、もしくはポリウレタンの水性分散液に添加することができる。
【0085】
混合物中でポリウレタンと一緒に使用することができる別の結合剤として、特にラジカル重合されるポリマー、有利には水性分散液の形のポリマーが考えられる。
【0086】
このようなポリマーは、有利には少なくとも60質量%までが、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、20個までの炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、20個までの炭素原子を有するビニル芳香族化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、1〜10個の炭素原子を有するアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子および1もしくは2の二重結合を有する脂肪族炭化水素、またはこれらのモノマーの混合物から選択されるいわゆる主モノマーからなる。ポリマーとして特に挙げられるのは、60質量%以上が、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレートから構成されているポリマー(略してポリアクリレート)であるか、または60質量%以上が、たとえば100質量%までビニルエステル、特に酢酸ビニル、およびエチレンからなるポリマー(酢酸ビニル/エチレンコポリマー)である。エチレン15〜25質量%および酢酸ビニル75〜85質量%からなるコポリマーからの水性分散液は、混合成分として特に有利である。
【0087】
特別な実施態様では、接着剤はポリウレタン以外に、別の成分を含有していない。
【0088】
接着剤の別の成分は、たとえば別の架橋剤であってもよい。
【0089】
たとえば化学的にブロックされたイソシアネート、カプセル化イソシアネート、カプセル化ウレトジオン、ビウレットまたはアロファネートまたはカルボジイミド基を有する化合物が考えられる。
【0090】
付加的な架橋剤は、ポリウレタンに結合していてもよく、あるいはポリウレタン中に溶解もしくは分散している化合物であってもよい。
【0091】
接着剤は所望の特性を達成するために、その他の架橋剤を必要とせず、従って有利には該接着剤は、別の架橋剤を含有していない。
【0092】
固体含有率(水およびその他の、21℃、1バールで液状の溶剤以外の全ての成分)は、有利には20〜80質量%である。
【0093】
使用について
本発明による接着剤は、一成分(1K)接着剤としても、二成分(2K)接着剤としても使用することができる。2K接着剤の場合、使用の前にさらに別の添加剤、一般に架橋剤、たとえばイソシアネート化合物またはアジリジン化合物、または本発明の場合にはシランが添加される。1K接着剤は、すでに架橋剤を含有しているか、または別の添加剤もしくは架橋剤を必要としない。
【0094】
1K接着剤または2K接着剤としての本発明による接着剤
本発明による接着剤は積層用接着剤として、つまり面積の大きい支持体を持続的に接着するために特に適切である。面積の大きい支持体は、特にポリマーシート、紙、金属シート、または木質化粧張り、天然もしくは合成繊維からなる繊維フリースから選択され、これらを相互に、またはその他の成形部材、たとえば木材もしくはプラスチックからなる成形部材と接着する。
【0095】
特に有利であるのは、ポリマーシートであり、たとえばポリエステル、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ塩化ビニルからなるか、ポリアセテートからなるシート、特に発泡PVCシートおよび発泡熱可塑性ポリオレフィンシート(TPO)である。
【0096】
成形部材は、合成繊維または天然繊維、またはチップから構成され、結合剤によって結合されて成形体となっている成形部材であってもよい。特にプラスチック、たとえばABSからなる成形部材が適切である。成形部材は任意の形状を有していてもよい。
【0097】
接着すべき支持体または成形部材は前処理されてもよく、たとえば定着剤により被覆されていてもよい。
【0098】
接着剤による支持体または成形部材の被覆は、慣用の塗布法により行うことができる。被覆後に乾燥を、有利には室温で、または80℃までの温度で行って、水またはその他の溶剤を除去する。
【0099】
施与される接着剤の量は、有利には0.5〜100g/m2,特に有利には2〜80g/m2、とりわけ有利には10〜70g/m2である。好ましくは接着すべき支持体(シート)のみを、または成形部材のみを片側で被覆する。しかし、接着すべき支持体もしくは支持体と成形部材との両側(両面被覆)を被覆することも考えられる。
【0100】
1K接着剤を使用する場合には、接着剤で被覆した支持体または成形部材を貯蔵することができる。柔軟性のある支持体はたとえばロールに巻き取ることができる。
【0101】
2K接着剤を使用する場合には、相応して実施することができるが、しかし有利には成形部材を被覆し、かつシートは被覆しない。短い貯蔵時間(数時間)で、成形部材は積層されるはずである。
【0102】
接着のためには、接着すべき部材を貼り合わせる。次いで接着剤を熱により活性化する。接着剤層中の温度は有利には20〜200℃であり、特に有利には30〜180℃である。
【0103】
接着は有利には加圧下で行い、このためにたとえば接着すべき部材を0.005〜5N/mm2の圧力で一緒にプレスする。
【0104】
得られた接着部は、高温(耐熱性)でも、または著しく変化する気候条件(耐候性)でも、高い機械的強度により優れている。
【0105】
本発明による方法は自動車、家具または靴の産業において、たとえば柔軟性のある支持体を、自動車の内部部材、たとえばダッシュボード、ドア内部のライニングおよびトランクの接着の際に、またはシート被覆された家具、たとえばキッチン化粧材を製造するために、または靴の部材を相互に接着するために特に重要である。
【0106】
実施例
使用物質:
シラン:
Geniosil(登録商標)GF80として、Wacker Chemie社から得られる3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
【0107】
Geniosil(登録商標)GF82として、Wacker Chemie社から得られる3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン。
【0108】
その他の架橋剤(比較用):
Basonat(登録商標)F200WD、水性分散液の架橋のためにBASF社から市販されている自己乳化性のイソシアネート。
【0109】
ポリウレタン分散液:
Luphen(登録商標)D200A、工業用の積層のためにBASF社から市販されているポリエステルポリウレタンの水性分散液。
【0110】
接着剤の製造
ポリウレタン100質量部(固体、水を含まない)に対して架橋剤12.5質量部を、ポリウレタン分散液Luphen D200A中に攪拌導入した。
【0111】
工業用の積層試験、家具:
接着剤38〜40g/m2(固体)を、三次元的な表面を有する繊維成形部材上に、家具成形部材の製造のために使用されているように噴霧塗布し、かつ乾燥させた。市販の真空深絞りプレス機(Buerkle Thermoformer)中で、PVCシート(Roxanタイプ5371744、Buche Taunus)を積層した。積層はホットプレート温度121℃および圧力4.5バールで行った。圧力は、45秒間維持した。真空時間は約6秒であった。
【0112】
得られた成形部材を、端部までシートと積層した。
【0113】
成形部材とシートとからなる積層体をまず室温で7日間貯蔵した。その後、75〜90℃で貯蔵を行い、その際、貯蔵温度は75℃で開始して1時間毎に5℃ずつ高めた。1時間毎に、積層されたシートが収縮しているか、およびどの程度収縮しているかを、つまりシートの端部が成形部材の端部から、試験体の中心の方向に向かって何mm移動したかを、成形部材の端部において測定した。この値が小さいほど、耐熱性は良好である。
【0114】
【表1】

【0115】
上記の表は、シランを用いて達成された結果が、イソシアネート架橋剤を用いて達成された結果に匹敵することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンおよび式
【化1】

[式中、R1〜R4は、相互に無関係に有機基を表すが、ただし基R1〜R4の少なくとも2つは、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を表す]のシランを含有する水性接着剤。
【請求項2】
基R1〜R4の2つもしくは3つが、アルコキシ基を表すことを特徴とする、請求項1記載の水性接着剤。
【請求項3】
基R1〜R4の残りの基の少なくとも1つが、第一級もしくは第二級アミノ基、酸基、酸無水物基、カルバメート基、イソシアネート基、ヒドロキシル基またはエポキシ基から選択される少なくとも1の官能基を有する有機基を表すことを特徴とする、請求項1または2記載の水性接着剤。
【請求項4】
組成物が、ポリウレタン100質量部に対してシランを1〜30質量部含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の水性接着剤。
【請求項5】
ポリウレタンが少なくとも60質量%までジイソシアネート、ポリエーテルジオールおよび/またはポリエステルジオールから構成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の水性接着剤。
【請求項6】
ポリウレタンが水中に分散しており、水性ポリウレタン分散液であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の水性接着剤。
【請求項7】
ポリウレタンが、アニオン基、特にスルホン酸イオン基またはカルボン酸イオン基を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の水性接着剤。
【請求項8】
ポリウレタンが−50〜150℃、有利には0〜100℃の範囲の融点を有していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の水性接着剤。
【請求項9】
固体含有率(つまり水および溶剤を含まない)に対して、少なくとも40質量%までがポリウレタンからなることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の水性接着剤。
【請求項10】
一成分(1K)接着剤であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の接着剤。
【請求項11】
積層用接着剤としての、つまり面積の大きい支持体を持続的に接着するための前記接着剤の使用。
【請求項12】
ポリマーシート、紙、金属シートまたは木質化粧張り、天然もしくは合成繊維からなる繊維フリースから選択される、面積の大きい支持体を相互に、またはその他の成形部材、たとえば木材もしくはプラスチックからなる成形部材と接着することを特徴とする、請求項12記載の使用。

【公表番号】特表2009−542877(P2009−542877A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518841(P2009−518841)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056666
【国際公開番号】WO2008/006733
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】