清拭具
【課題】携帯電話や携帯多機能端末等の表示画面等に付着した指紋、薄い油膜汚れや曇り汚れを除去するのに適した清拭具として、従来のメガネ拭きやワイピングクロス等に比べて簡便で使い勝手がよく、しかも安価に製造できて薄い油膜汚れや曇り汚れ等に対する拭き取り性にも優れている清拭具を提供する。
【解決手段】繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布2と、この基材シート拭布2の裏面21の一部または全部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層3とを有する構成とする。そして、粘着剤層3を介して基材シート拭布2が本や手帳に仮止め可能とするとともに、基材シート拭布2で対象面を拭く際に粘着剤層3に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層3が当該指先に対する滑り止めとして機能する構成とする。
【解決手段】繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布2と、この基材シート拭布2の裏面21の一部または全部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層3とを有する構成とする。そして、粘着剤層3を介して基材シート拭布2が本や手帳に仮止め可能とするとともに、基材シート拭布2で対象面を拭く際に粘着剤層3に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層3が当該指先に対する滑り止めとして機能する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パソコンなどのOA機器のモニター画面、携帯電話やデジタルカメラの表示画面、「iPad(アイパッド)」(登録商標。以下、同様。)や「iPhone(アイフォーン)」(登録商標。以下、同様。)といった情報機器もしくは携帯多機能端末における表示画面、あるいはカメラやメガネのレンズ等に付着した汚れ(中でも特に指紋や油膜汚れといった油性汚れや、曇り汚れ)を拭き取るのに適した清拭具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や「iPad(アイパッド)」などの情報機器ないし携帯多機能端末が急速に普及しているが、これらに備えられる液晶パネルや有機ELパネル等の表示手段においては、表示画面に指紋や油膜汚れが付着しやすいだけでなく、付着した汚れが目立ちやすい。特に、「iPad(アイパッド)」や「iPhone(アイフォーン)」等で採用されているタッチパネルにおいてはその表面を指先でタッチして操作するようになっているうえに、画面が鮮明であることから、指紋や油膜汚れが付着しやすく目立ちやすい。
【0003】
このような対象面に付着した汚れを拭き取る目的で、雑巾や布巾といった布、ティッシュペーパーなどの紙が使用されるが、通常の布では油膜汚れ(表面の曇り)をきれいに拭き取るのが難しく、ティッシュペーパーのような紙では脱落した構成繊維(毛羽)が対象面に付着しやすい。
【0004】
そこで、従来においては、特許文献1に示されているように、油膜汚れ(表面の曇り)等をきれいに拭き取ることができ、しかも構成繊維の脱落も生じない清拭具として、極細繊維を使用したワイピングクロスや極細合成繊維と天然繊維とからなる織布等が提案されている。これらのワイピングクロスや織布等によれば、極細繊維の径や繊維同士の間隙が、被拭き取り面に付着した指紋や油膜の厚さ等に近づくだけでなく、繊維の表面積が非常に大きくなるため、通常の布やティッシュペーパーのような紙等に比べると効率よく被拭き取り面の指紋や油膜等の油性汚れや、曇りを拭き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−146657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなワイピングクロス等を使用して、タッチパネル等の対象面に付着した油性汚れや曇り汚れを拭き取る場合、汚れを完全に取り除こうとしてワイピングクロス等を対象面に比較的強く押しつけて拭き取り操作を行うとワイピングクロス等のスベリが悪くなることがある。
【0007】
その際、従来のワイピングクロス等においては、これを押さえている指の方が滑ってしまい、それが原因で対象面の汚れを十分に拭き取れなかったり、思い通りに対象面を拭けなかったりすることがあった。
【0008】
また、上記のようなワイピングクロス等は、織布であるがゆえに不織布や紙などと比べるとコストが高い。このため、通常は汚れたら洗濯して再使用されるが、そのような洗濯を行うのが面倒であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたもので、携帯電話や携帯多機能端末等の表示画面等に付着した指紋、薄い油膜汚れや曇り汚れを拭き取るのに適した清拭具として、従来のワイピングクロス等に比べて簡便で使い勝手がよく、しかも低コストで製造できて薄い油膜汚れや曇り汚れ等に対する拭き取り性にも優れている清拭具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、対象面(被拭き取り面)に付着した指紋や油膜等の汚れを拭き取るのに使用される清拭具として、下記のように構成したことを特徴とする。すなわち、繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布2と、この基材シート拭布2の裏面の一部または全部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層3とを有する構成とする。そして、前記粘着剤層3を介して基材シート拭布2を本や手帳に仮止め可能とするとともに、基材シート拭布2で対象面を拭く際に粘着剤層3に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層3が当該指先に対する滑り止めとして機能する構成とする。
【0011】
ここで、基材シート拭布2を構成する不織布の表面層に、繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を含ませたのは、これらの繊維の径が小さいために、被拭き取り面に付着した指紋、薄い油膜汚れや曇り汚れを除去するのに適しており、また繊維の表面積が非常に大きくなるため、その分だけ効率よく汚れを拭き取ることができるからである。
【0012】
基材シート拭布2を構成する不織布には親油性繊維を20〜30質量%含ませるのが好ましい。指で触ることの多いタッチパネルの表面やメガネなどには油分を多く含んだ汚れが付着しており、このような油分を多く含んだ汚れを効果的に拭き取れるようにするためである。親油性繊維の含有量を20〜30質量%とするのが好ましいのは、20質量%未満では油分を多く含んだ汚れに対する十分な拭き取り効果が得られず、30質量%を超えても拭き取り効果は変わらなくなる(つまり効果が飽和する)からである。本発明で使用する親油性繊維としては、例えばポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド繊維などを挙げることができる。親油性繊維の繊度は0.005〜0.3デニールが好ましい。これらの親油性繊維は、例えば、メルトブロー、スパンレース、フラッシュ紡糸などの方法で製造できる。
【0013】
本発明で使用する極細繊維は極細分割繊維を含んでいてもよいし、ナノ繊維はナノ繊維分割繊維を含んでいてもよい。言い換えると、極細繊維の一部または全部に極細分割繊維を使用することができ、ナノ繊維の一部または全部にナノ繊維分割繊維を使用することができる。一般に、この種の分割繊維は被拭き取り面に付着した指紋や薄い油膜(曇り)汚れ等の汚れを削り取りやすい繊維断面構造を有している。この点からいうと、本発明で使用する極細繊維の全てを極細分割繊維とし、ナノ繊維の全てをナノ繊維分割繊維とするのが好ましい。これらの分割繊維は、海島型と分割型などの複合紡糸もしくはブレンド紡糸によって製造できる。いずれも2成分からなる繊維を製造し、その後に当該繊維を2成分に分割したり、一方の成分を溶解させたりして極細化する。
【0014】
上記のような極細分割繊維またはナノ繊維を表面層に含ませた不織布とすることで僅かな油膜汚れでも拭き取ることが可能となる。一例を挙げると、上下の表面層(上下いずれも厚みが全厚の1/3程度の層)の素材構成をアクリル系分割前繊維(繊度;1.2dtex)60質量%:極細繊維(繊度;0.4dtex)40質量%とし、中央層の素材構成を熱融着性繊維のPE−PET芯鞘繊維70質量%:レーヨン30質量%とすることで、僅かな油膜汚れでも取ることができるようになる。また、表面層にナノ繊維10〜20質量%含ませることで、繊維の脱落を抑えることができるので、分析機器のレンズや電子顕微鏡周りの拭き具として最適である。
【0015】
本発明では、基材シート拭布2を構成する不織布として天然由来繊維不織布を使用することができる。具体的には例えば、コットン不織布、レーヨン不織布、パルプ不織布、あるいはコットン、レーヨン、パルプから選ばれた一種以上の繊維不織布などである。これらの不織布を構成する繊維は天然由来のセルローズ繊維であることから、生物分解性があり環境負荷が少ない。不織布の目付けは、15g/m2 〜70g/m2 が好ましく、積層タイプ製品ではコスト、厚さを抑えるために20g/m2 〜40g/m2 が好ましい。この場合の不織布の製造には水流交絡法(繊維ウエブを水流で交絡させる方法)を適用できる。
【0016】
粘着剤層3を形成する再貼着再剥離可能な粘着剤としては、溶剤型アクリル粘着剤やアクリルエマルジョン型粘着剤(水系)などのアクリル系粘着剤が好適であるが、これ以外にも例えば、ゴム系あるいはシリコーン系の溶剤型粘着剤や、エマルジョン型やホットメルト型などの無溶剤型粘着剤を使用することができる。この種の粘着剤には、タッキファイヤーとして、例えば、ロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂、石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂などを配合することができる。また、粘着剤層3を構成する粘着剤には抗菌剤を添加しておくのが望ましい。
【0017】
本発明の清拭具においては、基材シート拭布2を、その裏面側の粘着剤層3を介して順次複数枚積層させて、一個の積層体Sを形成した構成とするのが好ましい。基材シート拭布2は、これを単独で或いは複数枚積層した状態で手帳や文庫本の裏表紙等に貼り付けておけば必要なときに直ぐに使用できて便利である。このような使用方法を考慮すると、その大きさおよび形状は、普及タイプの手帳や文庫本よりも所定量だけ小さくて似たような形状とするのが望ましい。具体的には、基材シート拭布2は、その長辺が60〜140mmで短辺が40〜100mmの長方形、または一辺が40〜150mmの正方形とするのが望ましい。ただし、本発明における基材シート拭布2が、前記の大きさおよび形状に限定されるものでないことは勿論である。
【0018】
基材シート拭布2の裏面側の粘着剤層3は、基材シート拭布2の一端2aから他端2b側に向けて裏面側の面積の1/3〜1/2にわたる範囲に設けるのが好ましい。このようにすると、粘着剤層3が表面側となるように基材シート拭布2を半分に折って使用する際に、当該粘着剤層3の設けられていない残りの部分(面積の2/3〜1/2にわたる部分)を拭き取りに有効活用できるからである。
【0019】
上記の基材シート拭布2の一端2aから他端2b側に向かう方向は、当該基材シート拭布2を構成している不織布の生産流れ方向(MD方向)と一致させておくのが好ましい。一般に、不織布の生産流れ方向(MD方向)の強度Aと幅方向(CD方向)の強度Bとの間にはA>Bが成り立つから、上記のように方向を設定しておくと、指に基材シート拭布2を仮止めして使用する際に、指の外側部分に沿うように基材シート拭布2を変形させやすくなり、その結果、基材シート拭布2を指の周りに張った状態で仮止めできて使いやすくなるからである。
【0020】
基材シート拭布2は、表面に凹凸10を有する不織布で構成する。不織布表面の凹凸10は、当該不織布の生産時においてその生産流れ方向(MD方向)に沿って形成される多数の畝状の凸部と、その隣り合う凸部間にそれぞれ位置する溝状の凹部とからなる凹凸でもよいし、これとは別に不織布の表面に新たに形成した凹凸でもよい。
【0021】
本発明に係る別の清拭具は、対象面(被拭き取り面)に付着した指紋や油膜等の汚れを拭き取るのに使用される清拭具として、下記のように構成したことを特徴とする。すなわち、繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布2の一面に、プラスチックフィルムまたは紙からなる筆記層5を積層して構成されるシート本体Pと、筆記層5の表面の一部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層3とを有する構成とする。そして、前記粘着剤層3を介してシート本体Pを本や手帳に仮止め可能とするとともに、基材シート拭布2で対象面を拭く際に粘着剤層3に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層3が当該指先に対する滑り止めとして機能する構成とする。
【0022】
第一のシート本体Pの基材シート拭布2と、第二のシート本体Pの筆記層5とが対向する状態で、二枚のシート本体P・Pを接合する。第一のシート本体Pの筆記層5の表面に粘着剤層3を設ける。二枚のシート本体P・Pは、挿入部12を除く外縁どうしが接合してあり、挿入部12を介して二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入できる。また、筆記層5がプラスチックフィルムからなり、筆記層5の表面に粗面化処理が施してある構成にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の清拭具においては、基材シート拭布2の裏面の一部または全部に再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層3が設けられているので、この粘着剤層3に手の指先を当てて基材シート拭布2を被拭き取り面上で滑らせることによって、被拭き取り面に付着している汚れを拭き取ることができる。その場合に、粘着剤層3が当該指先に対する滑り止めとして機能するので、指先が粘着剤層3に密着して基材シート拭布2に対して滑りにくくなる。したがって、被拭き取り面に付着している汚れによって基材シート拭布2のスベリが多少悪くなったとしても、指先に基材シート拭布2を密着固定した状態で確実かつ快適に拭き取り作業を行うことができる。
【0024】
また、粘着剤層3は再貼着再剥離可能な粘着剤で構成されているから、この部分を利用して基材シート拭布2を、例えば被拭き取り面を取り囲むフレーム部分、手帳、本の裏表紙等に仮止めしておくことで、必要が生じたときに直ぐに使用できるようになる。さらに、手帳やノートに挟んでおいたり、室内の机、壁などに貼り付けておいたりすることで、場所を取ることなく保管が可能となる。このように、本発明によれば簡便で使い勝手の良い清拭具を実現できる。
【0025】
本発明の清拭具においては、基材シート拭布2を構成する不織布の表面層に、繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を含ませているので、これらによって被拭き取り面に付着した指紋や薄い曇り汚れ等を効率よく拭き取ることができる。この場合、不織布中に所定量の親油性繊維を含ませておくと、被拭き取り面に油分を多く含んだ指紋や薄い油膜汚れ等が付着していても、これらを前記親油性繊維によって、さらに効果的に拭き取ることができる。そして、不織布からなる基材シート拭布2は、織布からなる従来のメガネ拭きやワイピングクロス等に比べると低コストで製造できる。
【0026】
不織布の表面層に含ませた極細繊維が極細分割繊維を含み、ナノ繊維がナノ繊維分割繊維を含んでいると、これらの分割繊維によって、被拭き取り面に付着した指紋や薄い油膜(曇り)汚れ等の汚れが削り取られやすくなるので、この種の汚れに対する拭き取り性が一層向上する。
【0027】
基材シート拭布2を、その裏面側の粘着剤層3を介して順次複数枚積層させて、一個の積層体Sを形成した構成とした場合には、そこから一枚づつ剥がして使用することによって、常に清潔な基材シート拭布2で拭き取りを行うことができる。その場合、表面に凹凸10を有する不織布で基材シート拭布2が構成されていると、各層が分離しやすくなるから、一枚ずつ剥がして使用するのが容易になる。しかも、凹凸構造の不織布とすることで、基材シート拭布2がカールすることも回避できる。
【0028】
基材シート拭布2の一端2aから他端2b側に向けて裏面側の面積の1/3〜1/2にわたる範囲に上記の粘着剤層3を設けておくと、粘着剤層3が表面側となるように基材シート拭布2を半分に折って使用する際に、当該粘着剤層3の設けられていない残りの部分(面積の2/3〜1/2にわたる部分)を拭き取りに有効に活用できる。
【0029】
基材シート拭布2に筆記層5を積層してシート本体Pを構成すると、粘着剤層3を設けた部分を除く筆記層5の表面に、筆記具で文字などを記入することができる。つまり、本発明に係るシート本体Pは、被拭き取り面の汚れを拭き取る本来の用途に加えて、メモとしても使用することができる。筆記層5を基材シート拭布2の裏面側に配置したので、粘着剤層3を介してシート本体Pを仮止めしたときに筆記層5が露出せず、したがって、筆記層5に記入した文字が他者の目に触れるのを避けることができる。例えば、筆記層5にログインIDを記入したシート本体Pを、パソコンのモニタの縁に仮止めしておけば、普段はログインIDが他者の目に触れるのを避けることができ、必要時には筆記層5を見て速やかにログインすることができる。また、筆記層5の表面に粘着剤層3を設けたので、粘着剤が基材シート拭布2の表面まで浸透するのを確実に防止でき、基材シート拭布2の表面の全体を拭き取り作業に供することができる。
【0030】
二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入できると、粘着剤層3に指先を押し当てる場合と同様に、基材シート拭布2による拭き取り作業を快適に行うことができる。長期の使用によって粘着剤層3の粘着力が低下した後も、二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入することにより、拭き取り作業を快適に行える。プラスチックフィルムからなる筆記層5の表面に粗面化処理を施すと、鮮明な文字を記入でき、しかも、記入した文字が擦れて消えるのを長期にわたって防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に係る清拭具を示す斜視図である。
【図2】図1の清拭具を構成する基材シート拭布の裏面側を示す図である。
【図3】図1の清拭具の積層構造を示す縦断面図である。
【図4】実施例1に係る清拭具の使用例を示す斜視図である。
【図5】実施例1に係る清拭具の他の使用例を示す斜視図である。
【図6】実施例1に係る清拭具を手帳の裏表紙に仮止めする一方、ページ間には1枚の基材シート拭布を挟んで栞のようにして使用した態様を示す斜視図である。
【図7】表裏の両面に凹凸を形成した不織布の他の例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例2に係る清拭具を、その使用状態とともに示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例をそれぞれ示すもので、(a)〜(d)のいずれも基材シート拭布の裏面に粘着剤層が所定のパターンないし模様を有するように設けられた状態を示す平面図である。
【図10】本発明の実施例3に係る清拭具を示す斜視図である。
【図11】図10の清拭具を構成するシート本体の筆記層を示す図である。
【図12】図10の清拭具の積層構造を示す縦断面図である。
【図13】本発明の実施例4に係る清拭具を示す斜視図である。
【図14】図13の清拭具の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施例1) 図1ないし図6は、本発明の実施例1を示すものである。このうちの図1ないし図3に示すように、本実施例に係る清拭具1は、長方形(図示例では長辺2c・2dが100mm、短辺2a・2bが70mmの長方形)の基材シート拭布2の裏面21の一部に粘着剤層3をそれぞれ設け、これらの基材シート拭布2を各粘着剤層3を介して複数枚積層して直方体状の積層体Sの構造としたものである。この積層体Sの下面側には、台紙兼用の剥離紙4が設けられている。この剥離紙4は、最下層の基材シート拭布2の裏面に粘着剤層3を介して貼り付けられており、必要に応じて容易に剥離できるようになっている。
【0033】
基材シート拭布2は、上下の表面層に親油性繊維でもある極細繊維や極細分割繊維を含ませた不織布で構成されている。このような不織布として、本実施例では、上下の表面層(上下いずれも厚みが全厚の1/3程度の層)がアクリル系分割前繊維(繊度;1.2dtex、分割後1dtex以下)60質量%(当該層の全質量を100%とした場合の比率、以下同様):ポリエステル系ナノ繊維(繊度;0.1dtex)40質量%で構成され、中央層が熱融着性繊維のPE−PET芯鞘繊維70質量%:レーヨン30質量%で構成された不織布が使用されている。この場合において、上下の表面層を構成している極細分割繊維および極細繊維は親油性を有していることから、本発明でいう親油性繊維を兼ねている。
【0034】
なお、図示しないが、基材シート拭布2を構成している不織布の表面には、当該不織布の生産時においてその生産流れ方向(MD方向)に素材繊維が配向することによって形成される平面視で筋状の微細な凹凸が多数存在している。
【0035】
粘着剤層3は、基材シート拭布2の裏面21の一端(図示例では一方の短辺)2aに沿ってその短手方向(図2におけるy−y'方向)に再貼着再剥離可能な粘着剤(この実施例ではアクリル系粘着剤)を帯状に塗布して形成したもので、図示例では、基材シート拭布2の一端2aから他端(他方の短辺)2b側に向けて当該裏面21側の面積の約1/3にわたる範囲に設けられている。そして、この基材シート拭布2の一端2aから他端2b側に向かう方向、すなわち基材シート拭布の長手方向(図2におけるx−x'方向)が、当該基材シート拭布2を構成している不織布の生産流れ方向(MD方向)と一致した構成となっている。
【0036】
上記の清拭具1によれば、図1に示した積層体Sから最上層の基材シート拭布2を一枚ずつ剥がして使用することによって、常に清潔な基材シート拭布2で拭き取りを行うことができる。その場合、表面に多数の微細な凹凸(図示せず)を有する不織布で基材シート拭布2が構成されているから、各基材シート拭布2を一枚ずつ剥がすのは容易であり、基材シート拭布2がカールすることもない。
【0037】
図4ないし図6に、清拭具1の使用例をそれぞれ示す。このうち、図4は、図1の積層体Sから最上層の基材シート拭布2を一枚だけ剥がして、その粘着剤層3の設けられていない面(表面)側で被拭き取り対象物(図示例では携帯電話)7における被拭き取り面(図示例では表示画面)71を拭く場合を示したものである。この図に示すように、基材シート拭布2の裏面21側に設けた粘着剤層3に手の指8・8を押し当てると、指8・8が粘着剤層3に密着するから基材シート拭布2に対して滑りにくくなる。したがって、このように粘着剤層3に指8・8を当てた状態で、基材シート拭布2の表面側で被拭き取り面71を拭くことによって、基材シート拭布2と指8・8との間にスベリを生じさせることなく、快適に拭き取り作業を行うことができる。
【0038】
本実施例の場合、粘着剤層3は基材シート拭布2の一端2aから他端(他方の短辺)2b側に向けて当該裏面21側の面積の約1/3にわたる範囲に設けられているので、残りの約2/3の部分は拭き取りに使用することが可能である。その場合、例えば図5に示したように、基材シート拭布2を粘着剤層3の存在しない部分で半分に折った状態で使用する。そして、上述した場合と同様に粘着剤層3に指8・8を当てた状態で、基材シート拭布2の裏面21側で被拭き取り面71を拭くことによって、基材シート拭布2と指8・8との間にスベリを生じさせることなく、快適に拭き取り作業を行うことができる。
【0039】
なお、上記のようにして被拭き取り面71を拭く場合、被拭き取り面71に接触させた基材シート拭布2をその短手方向(図2のy−y'方向)に往復動させて拭くのがよい。このようにすると、基材シート拭布2を構成している不織布の表面にある微細な筋状の凹凸(図示せず)の当該筋目の方向(図2に示すx−x'方向)が基材シート拭布2の移動方向と直交することとなり、その凹凸表面によって被拭き取り面71の汚れが効率良く拭き取られるからである。しかも、上記凹凸表面の筋目の方向が基材シート拭布2の長手方向(図2に示すx−x'方向)となるので、例えば、基材シート拭布2の両長辺2c・2d側の部分を、粘着剤層3に当てた指8・8とその外側の指(図示せず)とで挟んで保持する際に、基材シート拭布2の両長辺2c・2d側の部分を上記の筋目に沿って折り曲げやすくなる。
【0040】
図6は、図1の積層体構造の清拭具1から下面の剥離紙4を剥がしたうえで、最下層の粘着剤層3を利用して手帳9の裏表紙91に当該清拭具1を仮止めするとともに、当該清拭具1から基材シート拭布2を一枚だけ剥がして栞として利用した状態を示したものである。同図に示したように手帳9の裏表紙91に清拭具1を貼り付けて(仮止めして)おけば、必要が生じたときに直ぐに使用できるようになるだけでなく、場所を取ることなく清拭具1の保管が可能となる。
【0041】
本発明の清拭具1においては、基材シート拭布2が、上下の表面層に親油性繊維でもある極細繊維や極細分割繊維を含ませた不織布で構成されているので、それらの繊維によって被拭き取り面71に付着した指紋や薄い曇り汚れ等を効率よく拭き取ることができる。また、被拭き取り面71に油分を多く含んだ指紋や薄い油膜汚れ等が付着していても、これらを前記親油性繊維でもある極細繊維によって効果的に拭き取ることができる。しかも、このような不織布からなる基材シート拭布2は、織布からなる従来のメガネ拭きやワイピングクロス等に比べると低コストで製造可能である。
【0042】
上記の実施例では、基材シート拭布2を構成する不織布として、その生産時に形成された微細な凹凸のみを表面に有する不織布を使用したが、このような凹凸以外に、例えば図7に示すように比較的大きな凹凸10を表面に形成した不織布で基材シート拭布2を構成してもよい。
【0043】
(実施例2) 図8は、本発明の実施例2に係る清拭具1を示したものである。この清拭具においては、不織布からなる基材シート拭布2の裏面全体に粘着剤層3が設けられている。それ以外は実施例1と同様であるので、対応する部分に同符号を付して説明を省略する。この清拭具1によれば、基材シート拭布2の裏面全体に粘着剤層3が設けられているので、拭き取りに利用できる部分が実施例1の場合と比べて少なくなるが、粘着剤層3の範囲が広いので、その分だけ指8・8を粘着剤層3の部分に密着させやすくなる。したがって、拭き取り時に基材シート拭布2と指8・8との間のスベリを更に確実に防止できる。
【0044】
粘着剤層3を設ける範囲ないし部分は、上述のものに限らない。図9に、基材シート拭布2の裏面に設ける粘着剤層3の他の例を示す。このうちの(a)は基材シート拭布2の一端2a側に点状の粘着剤層3を複数個分散配置した状態に形成したもの、(b)は基材シート拭布2の一端2a側に沿って複数本の粘着剤層3を筋状に形成したもの、(c)は基材シート拭布2の一端2a寄りに粘着剤層3を星型に形成したもの、(d)は基材シート拭布2の一端2a寄りに粘着剤層3をリング状に形成し、そのリング内にさらに「3」の字状に粘着剤層3を形成したものである。なお、これらは、いずれも平面視における状態を示している。
【0045】
(実施例3) 図10ないし図12は、本発明の実施例3に係る清拭具1を示す。ここでは、基材シート拭布2の一面に、ポリエチレン(PE)フィルムからなる筆記層5を積層してシート本体Pが構成してあり、筆記層5の表面の一部に粘着剤層3が設けてある。基材シート拭布2および筆記層5は、長辺が65mm、短辺が50mmの長方形状に形成してある。筆記層5は、ラミネート加工、接着剤による貼り合わせ、あるいは熱融着などの任意の方法によって、基材シート拭布2と一体化してある。筆記層5の表面は、コロナ放電などによる粗面化処理が施してある。粘着剤層3は、筆記層5の表面の一方の短辺に沿って配置してある。それ以外は実施例1と同様であるので、対応する部分に同符号を付して説明を省略する。
【0046】
筆記層5の表面には、粘着剤層3を設けた部分を除き、筆記具で文字などを記入することができる。つまり、本実施例に係るシート本体Pは、被拭き取り面の汚れを拭き取る本来の用途に加えて、メモとしても使用することができる。筆記層5の表面に粗面化処理を施したので、鮮明な文字を記入でき、しかも、記入した文字が擦れて消えるのを長期にわたって防止できる。筆記層5を基材シート拭布2の裏面側に配置したので、粘着剤層3を介してシート本体Pを仮止めしたときに筆記層5が露出せず、したがって、筆記層5に記入した文字が他者の目に触れるのを避けることができる。例えば、筆記層5にログインIDを記入したシート本体Pを、パソコンのモニタの縁に仮止めしておけば、普段はログインIDが他者の目に触れるのを避けることができ、必要時には筆記層5を見て速やかにログインすることができる。また、筆記層5の表面に粘着剤層3を設けたので、粘着剤が基材シート拭布2の表面まで浸透するのを確実に防止でき、基材シート拭布2の表面の全体を拭き取り作業に供することができる。
【0047】
(実施例4) 図13および図14は、本発明の実施例4に係る清拭具1を示す。ここでの清拭具1は、両図において上側のシート本体(第一のシート本体)Pの基材シート拭布2と、下側のシート本体(第二のシート本体)Pの筆記層5とが対向する状態で、二枚のシート本体P・Pを接合し、上側のシート本体Pの筆記層5の表面に、一方の短辺に沿って粘着剤層3を配置して構成される。符号11は熱溶着部を示しており、二枚のシート本体P・Pの一対の長辺および一方の短辺どうしが、ヒートシール加工によって接合してある。つまり、二枚のシート本体P・Pの四辺のうち三辺を接合して、清拭具1の全体が袋状に形成してあり、接合されていないシート本体P・Pの他方の短辺の間は、シート本体P・Pの間への指先の挿入を許す挿入部12とされている。それ以外は実施例3と同様であるので、対応する部分に同符号を付して説明を省略する。
【0048】
二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入すると、粘着剤層3に指先を押し当てる場合と同様に、基材シート拭布2による拭き取り作業を快適に行うことができる。長期の使用によって粘着剤層3の粘着力が低下した後も、二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入することにより、拭き取り作業を快適に行える。また、清拭具1を袋状に形成したので、シート本体P・Pの間に切符などの小型の紙片を保管しておくことができる。
【0049】
実施例3および4において、粘着剤層3の形態は上述のものに限られない。例えば、図9(a)〜(d)のように、点状の粘着剤層3を複数個分散配置したり、細長い複数本の粘着剤層3を平行に配置したり、粘着剤層3を星型、リング型、文字型などに形成することができる。要は、基材シート拭布2で対象面を拭く際に粘着剤層3が指先に対する滑り止めとして機能し、かつ、筆記層5の表面の少なくとも一部に粘着剤層3が設けられておらず、そこに筆記具で文字などを記入できるようになっていればよい。また、実施例3および4において、筆記層5の素材はPEに限られず、PE以外の任意のプラスチックフィルム、あるいは紙で筆記層5を構成することができる。筆記層5を紙で構成する場合には、接着剤による貼り合わせによって筆記層5を基材シート拭布2に一体化することができる。実施例4では、清拭具1を袋状にしたがその必要は無く、例えば一対の長辺どうしのみを接合し、両側に挿入部12を設けることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 清拭具
2 基材シート拭布(不織布)
2a 基材シート拭布の一端
2b 基材シート拭布の他端
21 基材シート拭布の裏面
3 粘着剤層
5 筆記層
10 凹凸
12 挿入部
P シート本体
S 積層体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パソコンなどのOA機器のモニター画面、携帯電話やデジタルカメラの表示画面、「iPad(アイパッド)」(登録商標。以下、同様。)や「iPhone(アイフォーン)」(登録商標。以下、同様。)といった情報機器もしくは携帯多機能端末における表示画面、あるいはカメラやメガネのレンズ等に付着した汚れ(中でも特に指紋や油膜汚れといった油性汚れや、曇り汚れ)を拭き取るのに適した清拭具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や「iPad(アイパッド)」などの情報機器ないし携帯多機能端末が急速に普及しているが、これらに備えられる液晶パネルや有機ELパネル等の表示手段においては、表示画面に指紋や油膜汚れが付着しやすいだけでなく、付着した汚れが目立ちやすい。特に、「iPad(アイパッド)」や「iPhone(アイフォーン)」等で採用されているタッチパネルにおいてはその表面を指先でタッチして操作するようになっているうえに、画面が鮮明であることから、指紋や油膜汚れが付着しやすく目立ちやすい。
【0003】
このような対象面に付着した汚れを拭き取る目的で、雑巾や布巾といった布、ティッシュペーパーなどの紙が使用されるが、通常の布では油膜汚れ(表面の曇り)をきれいに拭き取るのが難しく、ティッシュペーパーのような紙では脱落した構成繊維(毛羽)が対象面に付着しやすい。
【0004】
そこで、従来においては、特許文献1に示されているように、油膜汚れ(表面の曇り)等をきれいに拭き取ることができ、しかも構成繊維の脱落も生じない清拭具として、極細繊維を使用したワイピングクロスや極細合成繊維と天然繊維とからなる織布等が提案されている。これらのワイピングクロスや織布等によれば、極細繊維の径や繊維同士の間隙が、被拭き取り面に付着した指紋や油膜の厚さ等に近づくだけでなく、繊維の表面積が非常に大きくなるため、通常の布やティッシュペーパーのような紙等に比べると効率よく被拭き取り面の指紋や油膜等の油性汚れや、曇りを拭き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−146657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなワイピングクロス等を使用して、タッチパネル等の対象面に付着した油性汚れや曇り汚れを拭き取る場合、汚れを完全に取り除こうとしてワイピングクロス等を対象面に比較的強く押しつけて拭き取り操作を行うとワイピングクロス等のスベリが悪くなることがある。
【0007】
その際、従来のワイピングクロス等においては、これを押さえている指の方が滑ってしまい、それが原因で対象面の汚れを十分に拭き取れなかったり、思い通りに対象面を拭けなかったりすることがあった。
【0008】
また、上記のようなワイピングクロス等は、織布であるがゆえに不織布や紙などと比べるとコストが高い。このため、通常は汚れたら洗濯して再使用されるが、そのような洗濯を行うのが面倒であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたもので、携帯電話や携帯多機能端末等の表示画面等に付着した指紋、薄い油膜汚れや曇り汚れを拭き取るのに適した清拭具として、従来のワイピングクロス等に比べて簡便で使い勝手がよく、しかも低コストで製造できて薄い油膜汚れや曇り汚れ等に対する拭き取り性にも優れている清拭具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、対象面(被拭き取り面)に付着した指紋や油膜等の汚れを拭き取るのに使用される清拭具として、下記のように構成したことを特徴とする。すなわち、繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布2と、この基材シート拭布2の裏面の一部または全部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層3とを有する構成とする。そして、前記粘着剤層3を介して基材シート拭布2を本や手帳に仮止め可能とするとともに、基材シート拭布2で対象面を拭く際に粘着剤層3に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層3が当該指先に対する滑り止めとして機能する構成とする。
【0011】
ここで、基材シート拭布2を構成する不織布の表面層に、繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を含ませたのは、これらの繊維の径が小さいために、被拭き取り面に付着した指紋、薄い油膜汚れや曇り汚れを除去するのに適しており、また繊維の表面積が非常に大きくなるため、その分だけ効率よく汚れを拭き取ることができるからである。
【0012】
基材シート拭布2を構成する不織布には親油性繊維を20〜30質量%含ませるのが好ましい。指で触ることの多いタッチパネルの表面やメガネなどには油分を多く含んだ汚れが付着しており、このような油分を多く含んだ汚れを効果的に拭き取れるようにするためである。親油性繊維の含有量を20〜30質量%とするのが好ましいのは、20質量%未満では油分を多く含んだ汚れに対する十分な拭き取り効果が得られず、30質量%を超えても拭き取り効果は変わらなくなる(つまり効果が飽和する)からである。本発明で使用する親油性繊維としては、例えばポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド繊維などを挙げることができる。親油性繊維の繊度は0.005〜0.3デニールが好ましい。これらの親油性繊維は、例えば、メルトブロー、スパンレース、フラッシュ紡糸などの方法で製造できる。
【0013】
本発明で使用する極細繊維は極細分割繊維を含んでいてもよいし、ナノ繊維はナノ繊維分割繊維を含んでいてもよい。言い換えると、極細繊維の一部または全部に極細分割繊維を使用することができ、ナノ繊維の一部または全部にナノ繊維分割繊維を使用することができる。一般に、この種の分割繊維は被拭き取り面に付着した指紋や薄い油膜(曇り)汚れ等の汚れを削り取りやすい繊維断面構造を有している。この点からいうと、本発明で使用する極細繊維の全てを極細分割繊維とし、ナノ繊維の全てをナノ繊維分割繊維とするのが好ましい。これらの分割繊維は、海島型と分割型などの複合紡糸もしくはブレンド紡糸によって製造できる。いずれも2成分からなる繊維を製造し、その後に当該繊維を2成分に分割したり、一方の成分を溶解させたりして極細化する。
【0014】
上記のような極細分割繊維またはナノ繊維を表面層に含ませた不織布とすることで僅かな油膜汚れでも拭き取ることが可能となる。一例を挙げると、上下の表面層(上下いずれも厚みが全厚の1/3程度の層)の素材構成をアクリル系分割前繊維(繊度;1.2dtex)60質量%:極細繊維(繊度;0.4dtex)40質量%とし、中央層の素材構成を熱融着性繊維のPE−PET芯鞘繊維70質量%:レーヨン30質量%とすることで、僅かな油膜汚れでも取ることができるようになる。また、表面層にナノ繊維10〜20質量%含ませることで、繊維の脱落を抑えることができるので、分析機器のレンズや電子顕微鏡周りの拭き具として最適である。
【0015】
本発明では、基材シート拭布2を構成する不織布として天然由来繊維不織布を使用することができる。具体的には例えば、コットン不織布、レーヨン不織布、パルプ不織布、あるいはコットン、レーヨン、パルプから選ばれた一種以上の繊維不織布などである。これらの不織布を構成する繊維は天然由来のセルローズ繊維であることから、生物分解性があり環境負荷が少ない。不織布の目付けは、15g/m2 〜70g/m2 が好ましく、積層タイプ製品ではコスト、厚さを抑えるために20g/m2 〜40g/m2 が好ましい。この場合の不織布の製造には水流交絡法(繊維ウエブを水流で交絡させる方法)を適用できる。
【0016】
粘着剤層3を形成する再貼着再剥離可能な粘着剤としては、溶剤型アクリル粘着剤やアクリルエマルジョン型粘着剤(水系)などのアクリル系粘着剤が好適であるが、これ以外にも例えば、ゴム系あるいはシリコーン系の溶剤型粘着剤や、エマルジョン型やホットメルト型などの無溶剤型粘着剤を使用することができる。この種の粘着剤には、タッキファイヤーとして、例えば、ロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂、石油樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂などを配合することができる。また、粘着剤層3を構成する粘着剤には抗菌剤を添加しておくのが望ましい。
【0017】
本発明の清拭具においては、基材シート拭布2を、その裏面側の粘着剤層3を介して順次複数枚積層させて、一個の積層体Sを形成した構成とするのが好ましい。基材シート拭布2は、これを単独で或いは複数枚積層した状態で手帳や文庫本の裏表紙等に貼り付けておけば必要なときに直ぐに使用できて便利である。このような使用方法を考慮すると、その大きさおよび形状は、普及タイプの手帳や文庫本よりも所定量だけ小さくて似たような形状とするのが望ましい。具体的には、基材シート拭布2は、その長辺が60〜140mmで短辺が40〜100mmの長方形、または一辺が40〜150mmの正方形とするのが望ましい。ただし、本発明における基材シート拭布2が、前記の大きさおよび形状に限定されるものでないことは勿論である。
【0018】
基材シート拭布2の裏面側の粘着剤層3は、基材シート拭布2の一端2aから他端2b側に向けて裏面側の面積の1/3〜1/2にわたる範囲に設けるのが好ましい。このようにすると、粘着剤層3が表面側となるように基材シート拭布2を半分に折って使用する際に、当該粘着剤層3の設けられていない残りの部分(面積の2/3〜1/2にわたる部分)を拭き取りに有効活用できるからである。
【0019】
上記の基材シート拭布2の一端2aから他端2b側に向かう方向は、当該基材シート拭布2を構成している不織布の生産流れ方向(MD方向)と一致させておくのが好ましい。一般に、不織布の生産流れ方向(MD方向)の強度Aと幅方向(CD方向)の強度Bとの間にはA>Bが成り立つから、上記のように方向を設定しておくと、指に基材シート拭布2を仮止めして使用する際に、指の外側部分に沿うように基材シート拭布2を変形させやすくなり、その結果、基材シート拭布2を指の周りに張った状態で仮止めできて使いやすくなるからである。
【0020】
基材シート拭布2は、表面に凹凸10を有する不織布で構成する。不織布表面の凹凸10は、当該不織布の生産時においてその生産流れ方向(MD方向)に沿って形成される多数の畝状の凸部と、その隣り合う凸部間にそれぞれ位置する溝状の凹部とからなる凹凸でもよいし、これとは別に不織布の表面に新たに形成した凹凸でもよい。
【0021】
本発明に係る別の清拭具は、対象面(被拭き取り面)に付着した指紋や油膜等の汚れを拭き取るのに使用される清拭具として、下記のように構成したことを特徴とする。すなわち、繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布2の一面に、プラスチックフィルムまたは紙からなる筆記層5を積層して構成されるシート本体Pと、筆記層5の表面の一部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層3とを有する構成とする。そして、前記粘着剤層3を介してシート本体Pを本や手帳に仮止め可能とするとともに、基材シート拭布2で対象面を拭く際に粘着剤層3に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層3が当該指先に対する滑り止めとして機能する構成とする。
【0022】
第一のシート本体Pの基材シート拭布2と、第二のシート本体Pの筆記層5とが対向する状態で、二枚のシート本体P・Pを接合する。第一のシート本体Pの筆記層5の表面に粘着剤層3を設ける。二枚のシート本体P・Pは、挿入部12を除く外縁どうしが接合してあり、挿入部12を介して二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入できる。また、筆記層5がプラスチックフィルムからなり、筆記層5の表面に粗面化処理が施してある構成にすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の清拭具においては、基材シート拭布2の裏面の一部または全部に再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層3が設けられているので、この粘着剤層3に手の指先を当てて基材シート拭布2を被拭き取り面上で滑らせることによって、被拭き取り面に付着している汚れを拭き取ることができる。その場合に、粘着剤層3が当該指先に対する滑り止めとして機能するので、指先が粘着剤層3に密着して基材シート拭布2に対して滑りにくくなる。したがって、被拭き取り面に付着している汚れによって基材シート拭布2のスベリが多少悪くなったとしても、指先に基材シート拭布2を密着固定した状態で確実かつ快適に拭き取り作業を行うことができる。
【0024】
また、粘着剤層3は再貼着再剥離可能な粘着剤で構成されているから、この部分を利用して基材シート拭布2を、例えば被拭き取り面を取り囲むフレーム部分、手帳、本の裏表紙等に仮止めしておくことで、必要が生じたときに直ぐに使用できるようになる。さらに、手帳やノートに挟んでおいたり、室内の机、壁などに貼り付けておいたりすることで、場所を取ることなく保管が可能となる。このように、本発明によれば簡便で使い勝手の良い清拭具を実現できる。
【0025】
本発明の清拭具においては、基材シート拭布2を構成する不織布の表面層に、繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を含ませているので、これらによって被拭き取り面に付着した指紋や薄い曇り汚れ等を効率よく拭き取ることができる。この場合、不織布中に所定量の親油性繊維を含ませておくと、被拭き取り面に油分を多く含んだ指紋や薄い油膜汚れ等が付着していても、これらを前記親油性繊維によって、さらに効果的に拭き取ることができる。そして、不織布からなる基材シート拭布2は、織布からなる従来のメガネ拭きやワイピングクロス等に比べると低コストで製造できる。
【0026】
不織布の表面層に含ませた極細繊維が極細分割繊維を含み、ナノ繊維がナノ繊維分割繊維を含んでいると、これらの分割繊維によって、被拭き取り面に付着した指紋や薄い油膜(曇り)汚れ等の汚れが削り取られやすくなるので、この種の汚れに対する拭き取り性が一層向上する。
【0027】
基材シート拭布2を、その裏面側の粘着剤層3を介して順次複数枚積層させて、一個の積層体Sを形成した構成とした場合には、そこから一枚づつ剥がして使用することによって、常に清潔な基材シート拭布2で拭き取りを行うことができる。その場合、表面に凹凸10を有する不織布で基材シート拭布2が構成されていると、各層が分離しやすくなるから、一枚ずつ剥がして使用するのが容易になる。しかも、凹凸構造の不織布とすることで、基材シート拭布2がカールすることも回避できる。
【0028】
基材シート拭布2の一端2aから他端2b側に向けて裏面側の面積の1/3〜1/2にわたる範囲に上記の粘着剤層3を設けておくと、粘着剤層3が表面側となるように基材シート拭布2を半分に折って使用する際に、当該粘着剤層3の設けられていない残りの部分(面積の2/3〜1/2にわたる部分)を拭き取りに有効に活用できる。
【0029】
基材シート拭布2に筆記層5を積層してシート本体Pを構成すると、粘着剤層3を設けた部分を除く筆記層5の表面に、筆記具で文字などを記入することができる。つまり、本発明に係るシート本体Pは、被拭き取り面の汚れを拭き取る本来の用途に加えて、メモとしても使用することができる。筆記層5を基材シート拭布2の裏面側に配置したので、粘着剤層3を介してシート本体Pを仮止めしたときに筆記層5が露出せず、したがって、筆記層5に記入した文字が他者の目に触れるのを避けることができる。例えば、筆記層5にログインIDを記入したシート本体Pを、パソコンのモニタの縁に仮止めしておけば、普段はログインIDが他者の目に触れるのを避けることができ、必要時には筆記層5を見て速やかにログインすることができる。また、筆記層5の表面に粘着剤層3を設けたので、粘着剤が基材シート拭布2の表面まで浸透するのを確実に防止でき、基材シート拭布2の表面の全体を拭き取り作業に供することができる。
【0030】
二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入できると、粘着剤層3に指先を押し当てる場合と同様に、基材シート拭布2による拭き取り作業を快適に行うことができる。長期の使用によって粘着剤層3の粘着力が低下した後も、二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入することにより、拭き取り作業を快適に行える。プラスチックフィルムからなる筆記層5の表面に粗面化処理を施すと、鮮明な文字を記入でき、しかも、記入した文字が擦れて消えるのを長期にわたって防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に係る清拭具を示す斜視図である。
【図2】図1の清拭具を構成する基材シート拭布の裏面側を示す図である。
【図3】図1の清拭具の積層構造を示す縦断面図である。
【図4】実施例1に係る清拭具の使用例を示す斜視図である。
【図5】実施例1に係る清拭具の他の使用例を示す斜視図である。
【図6】実施例1に係る清拭具を手帳の裏表紙に仮止めする一方、ページ間には1枚の基材シート拭布を挟んで栞のようにして使用した態様を示す斜視図である。
【図7】表裏の両面に凹凸を形成した不織布の他の例を示す断面図である。
【図8】本発明の実施例2に係る清拭具を、その使用状態とともに示す斜視図である。
【図9】本発明の他の実施例をそれぞれ示すもので、(a)〜(d)のいずれも基材シート拭布の裏面に粘着剤層が所定のパターンないし模様を有するように設けられた状態を示す平面図である。
【図10】本発明の実施例3に係る清拭具を示す斜視図である。
【図11】図10の清拭具を構成するシート本体の筆記層を示す図である。
【図12】図10の清拭具の積層構造を示す縦断面図である。
【図13】本発明の実施例4に係る清拭具を示す斜視図である。
【図14】図13の清拭具の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施例1) 図1ないし図6は、本発明の実施例1を示すものである。このうちの図1ないし図3に示すように、本実施例に係る清拭具1は、長方形(図示例では長辺2c・2dが100mm、短辺2a・2bが70mmの長方形)の基材シート拭布2の裏面21の一部に粘着剤層3をそれぞれ設け、これらの基材シート拭布2を各粘着剤層3を介して複数枚積層して直方体状の積層体Sの構造としたものである。この積層体Sの下面側には、台紙兼用の剥離紙4が設けられている。この剥離紙4は、最下層の基材シート拭布2の裏面に粘着剤層3を介して貼り付けられており、必要に応じて容易に剥離できるようになっている。
【0033】
基材シート拭布2は、上下の表面層に親油性繊維でもある極細繊維や極細分割繊維を含ませた不織布で構成されている。このような不織布として、本実施例では、上下の表面層(上下いずれも厚みが全厚の1/3程度の層)がアクリル系分割前繊維(繊度;1.2dtex、分割後1dtex以下)60質量%(当該層の全質量を100%とした場合の比率、以下同様):ポリエステル系ナノ繊維(繊度;0.1dtex)40質量%で構成され、中央層が熱融着性繊維のPE−PET芯鞘繊維70質量%:レーヨン30質量%で構成された不織布が使用されている。この場合において、上下の表面層を構成している極細分割繊維および極細繊維は親油性を有していることから、本発明でいう親油性繊維を兼ねている。
【0034】
なお、図示しないが、基材シート拭布2を構成している不織布の表面には、当該不織布の生産時においてその生産流れ方向(MD方向)に素材繊維が配向することによって形成される平面視で筋状の微細な凹凸が多数存在している。
【0035】
粘着剤層3は、基材シート拭布2の裏面21の一端(図示例では一方の短辺)2aに沿ってその短手方向(図2におけるy−y'方向)に再貼着再剥離可能な粘着剤(この実施例ではアクリル系粘着剤)を帯状に塗布して形成したもので、図示例では、基材シート拭布2の一端2aから他端(他方の短辺)2b側に向けて当該裏面21側の面積の約1/3にわたる範囲に設けられている。そして、この基材シート拭布2の一端2aから他端2b側に向かう方向、すなわち基材シート拭布の長手方向(図2におけるx−x'方向)が、当該基材シート拭布2を構成している不織布の生産流れ方向(MD方向)と一致した構成となっている。
【0036】
上記の清拭具1によれば、図1に示した積層体Sから最上層の基材シート拭布2を一枚ずつ剥がして使用することによって、常に清潔な基材シート拭布2で拭き取りを行うことができる。その場合、表面に多数の微細な凹凸(図示せず)を有する不織布で基材シート拭布2が構成されているから、各基材シート拭布2を一枚ずつ剥がすのは容易であり、基材シート拭布2がカールすることもない。
【0037】
図4ないし図6に、清拭具1の使用例をそれぞれ示す。このうち、図4は、図1の積層体Sから最上層の基材シート拭布2を一枚だけ剥がして、その粘着剤層3の設けられていない面(表面)側で被拭き取り対象物(図示例では携帯電話)7における被拭き取り面(図示例では表示画面)71を拭く場合を示したものである。この図に示すように、基材シート拭布2の裏面21側に設けた粘着剤層3に手の指8・8を押し当てると、指8・8が粘着剤層3に密着するから基材シート拭布2に対して滑りにくくなる。したがって、このように粘着剤層3に指8・8を当てた状態で、基材シート拭布2の表面側で被拭き取り面71を拭くことによって、基材シート拭布2と指8・8との間にスベリを生じさせることなく、快適に拭き取り作業を行うことができる。
【0038】
本実施例の場合、粘着剤層3は基材シート拭布2の一端2aから他端(他方の短辺)2b側に向けて当該裏面21側の面積の約1/3にわたる範囲に設けられているので、残りの約2/3の部分は拭き取りに使用することが可能である。その場合、例えば図5に示したように、基材シート拭布2を粘着剤層3の存在しない部分で半分に折った状態で使用する。そして、上述した場合と同様に粘着剤層3に指8・8を当てた状態で、基材シート拭布2の裏面21側で被拭き取り面71を拭くことによって、基材シート拭布2と指8・8との間にスベリを生じさせることなく、快適に拭き取り作業を行うことができる。
【0039】
なお、上記のようにして被拭き取り面71を拭く場合、被拭き取り面71に接触させた基材シート拭布2をその短手方向(図2のy−y'方向)に往復動させて拭くのがよい。このようにすると、基材シート拭布2を構成している不織布の表面にある微細な筋状の凹凸(図示せず)の当該筋目の方向(図2に示すx−x'方向)が基材シート拭布2の移動方向と直交することとなり、その凹凸表面によって被拭き取り面71の汚れが効率良く拭き取られるからである。しかも、上記凹凸表面の筋目の方向が基材シート拭布2の長手方向(図2に示すx−x'方向)となるので、例えば、基材シート拭布2の両長辺2c・2d側の部分を、粘着剤層3に当てた指8・8とその外側の指(図示せず)とで挟んで保持する際に、基材シート拭布2の両長辺2c・2d側の部分を上記の筋目に沿って折り曲げやすくなる。
【0040】
図6は、図1の積層体構造の清拭具1から下面の剥離紙4を剥がしたうえで、最下層の粘着剤層3を利用して手帳9の裏表紙91に当該清拭具1を仮止めするとともに、当該清拭具1から基材シート拭布2を一枚だけ剥がして栞として利用した状態を示したものである。同図に示したように手帳9の裏表紙91に清拭具1を貼り付けて(仮止めして)おけば、必要が生じたときに直ぐに使用できるようになるだけでなく、場所を取ることなく清拭具1の保管が可能となる。
【0041】
本発明の清拭具1においては、基材シート拭布2が、上下の表面層に親油性繊維でもある極細繊維や極細分割繊維を含ませた不織布で構成されているので、それらの繊維によって被拭き取り面71に付着した指紋や薄い曇り汚れ等を効率よく拭き取ることができる。また、被拭き取り面71に油分を多く含んだ指紋や薄い油膜汚れ等が付着していても、これらを前記親油性繊維でもある極細繊維によって効果的に拭き取ることができる。しかも、このような不織布からなる基材シート拭布2は、織布からなる従来のメガネ拭きやワイピングクロス等に比べると低コストで製造可能である。
【0042】
上記の実施例では、基材シート拭布2を構成する不織布として、その生産時に形成された微細な凹凸のみを表面に有する不織布を使用したが、このような凹凸以外に、例えば図7に示すように比較的大きな凹凸10を表面に形成した不織布で基材シート拭布2を構成してもよい。
【0043】
(実施例2) 図8は、本発明の実施例2に係る清拭具1を示したものである。この清拭具においては、不織布からなる基材シート拭布2の裏面全体に粘着剤層3が設けられている。それ以外は実施例1と同様であるので、対応する部分に同符号を付して説明を省略する。この清拭具1によれば、基材シート拭布2の裏面全体に粘着剤層3が設けられているので、拭き取りに利用できる部分が実施例1の場合と比べて少なくなるが、粘着剤層3の範囲が広いので、その分だけ指8・8を粘着剤層3の部分に密着させやすくなる。したがって、拭き取り時に基材シート拭布2と指8・8との間のスベリを更に確実に防止できる。
【0044】
粘着剤層3を設ける範囲ないし部分は、上述のものに限らない。図9に、基材シート拭布2の裏面に設ける粘着剤層3の他の例を示す。このうちの(a)は基材シート拭布2の一端2a側に点状の粘着剤層3を複数個分散配置した状態に形成したもの、(b)は基材シート拭布2の一端2a側に沿って複数本の粘着剤層3を筋状に形成したもの、(c)は基材シート拭布2の一端2a寄りに粘着剤層3を星型に形成したもの、(d)は基材シート拭布2の一端2a寄りに粘着剤層3をリング状に形成し、そのリング内にさらに「3」の字状に粘着剤層3を形成したものである。なお、これらは、いずれも平面視における状態を示している。
【0045】
(実施例3) 図10ないし図12は、本発明の実施例3に係る清拭具1を示す。ここでは、基材シート拭布2の一面に、ポリエチレン(PE)フィルムからなる筆記層5を積層してシート本体Pが構成してあり、筆記層5の表面の一部に粘着剤層3が設けてある。基材シート拭布2および筆記層5は、長辺が65mm、短辺が50mmの長方形状に形成してある。筆記層5は、ラミネート加工、接着剤による貼り合わせ、あるいは熱融着などの任意の方法によって、基材シート拭布2と一体化してある。筆記層5の表面は、コロナ放電などによる粗面化処理が施してある。粘着剤層3は、筆記層5の表面の一方の短辺に沿って配置してある。それ以外は実施例1と同様であるので、対応する部分に同符号を付して説明を省略する。
【0046】
筆記層5の表面には、粘着剤層3を設けた部分を除き、筆記具で文字などを記入することができる。つまり、本実施例に係るシート本体Pは、被拭き取り面の汚れを拭き取る本来の用途に加えて、メモとしても使用することができる。筆記層5の表面に粗面化処理を施したので、鮮明な文字を記入でき、しかも、記入した文字が擦れて消えるのを長期にわたって防止できる。筆記層5を基材シート拭布2の裏面側に配置したので、粘着剤層3を介してシート本体Pを仮止めしたときに筆記層5が露出せず、したがって、筆記層5に記入した文字が他者の目に触れるのを避けることができる。例えば、筆記層5にログインIDを記入したシート本体Pを、パソコンのモニタの縁に仮止めしておけば、普段はログインIDが他者の目に触れるのを避けることができ、必要時には筆記層5を見て速やかにログインすることができる。また、筆記層5の表面に粘着剤層3を設けたので、粘着剤が基材シート拭布2の表面まで浸透するのを確実に防止でき、基材シート拭布2の表面の全体を拭き取り作業に供することができる。
【0047】
(実施例4) 図13および図14は、本発明の実施例4に係る清拭具1を示す。ここでの清拭具1は、両図において上側のシート本体(第一のシート本体)Pの基材シート拭布2と、下側のシート本体(第二のシート本体)Pの筆記層5とが対向する状態で、二枚のシート本体P・Pを接合し、上側のシート本体Pの筆記層5の表面に、一方の短辺に沿って粘着剤層3を配置して構成される。符号11は熱溶着部を示しており、二枚のシート本体P・Pの一対の長辺および一方の短辺どうしが、ヒートシール加工によって接合してある。つまり、二枚のシート本体P・Pの四辺のうち三辺を接合して、清拭具1の全体が袋状に形成してあり、接合されていないシート本体P・Pの他方の短辺の間は、シート本体P・Pの間への指先の挿入を許す挿入部12とされている。それ以外は実施例3と同様であるので、対応する部分に同符号を付して説明を省略する。
【0048】
二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入すると、粘着剤層3に指先を押し当てる場合と同様に、基材シート拭布2による拭き取り作業を快適に行うことができる。長期の使用によって粘着剤層3の粘着力が低下した後も、二枚のシート本体P・Pの間に指先を挿入することにより、拭き取り作業を快適に行える。また、清拭具1を袋状に形成したので、シート本体P・Pの間に切符などの小型の紙片を保管しておくことができる。
【0049】
実施例3および4において、粘着剤層3の形態は上述のものに限られない。例えば、図9(a)〜(d)のように、点状の粘着剤層3を複数個分散配置したり、細長い複数本の粘着剤層3を平行に配置したり、粘着剤層3を星型、リング型、文字型などに形成することができる。要は、基材シート拭布2で対象面を拭く際に粘着剤層3が指先に対する滑り止めとして機能し、かつ、筆記層5の表面の少なくとも一部に粘着剤層3が設けられておらず、そこに筆記具で文字などを記入できるようになっていればよい。また、実施例3および4において、筆記層5の素材はPEに限られず、PE以外の任意のプラスチックフィルム、あるいは紙で筆記層5を構成することができる。筆記層5を紙で構成する場合には、接着剤による貼り合わせによって筆記層5を基材シート拭布2に一体化することができる。実施例4では、清拭具1を袋状にしたがその必要は無く、例えば一対の長辺どうしのみを接合し、両側に挿入部12を設けることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 清拭具
2 基材シート拭布(不織布)
2a 基材シート拭布の一端
2b 基材シート拭布の他端
21 基材シート拭布の裏面
3 粘着剤層
5 筆記層
10 凹凸
12 挿入部
P シート本体
S 積層体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象面に付着した指紋や油膜等の汚れを拭き取るのに使用される清拭具であって、
繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布(2)と、
この基材シート拭布(2)の裏面(21)の一部または全部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層(3)とを有し、
粘着剤層(3)を介して基材シート拭布(2)が本や手帳に仮止め可能とされており、
基材シート拭布(2)で対象面を拭く際に粘着剤層(3)に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層(3)が当該指先に対する滑り止めとして機能することを特徴とする清拭具。
【請求項2】
基材シート拭布(2)を構成する不織布には親油性繊維が20〜30質量%含まれている、請求項1記載の清拭具。
【請求項3】
極細繊維は極細分割繊維を含み、ナノ繊維はナノ繊維分割繊維を含む、請求項1または2記載の清拭具。
【請求項4】
基材シート拭布(2)が裏面(21)側の粘着剤層(3)を介して順次複数枚積層されて一個の積層体(S)を形成している、請求項1ないし3のいずれかに記載の清拭具。
【請求項5】
基材シート拭布(2)の大きさおよび形状は、長辺が60〜140mmで短辺が40〜100mmの長方形、または一辺が40〜150mmの正方形である、請求項1ないし4のいずれかに記載の清拭具。
【請求項6】
基材シート拭布(2)は、その裏面(21)側における一端(2a)から他端(2b)側に向けて当該裏面(21)側の面積の1/3〜1/2にわたる範囲に前記粘着剤層(3)が設けられている、請求項1ないし5のいずれかに記載の清拭具。
【請求項7】
前記基材シート拭布(2)の裏面(21)側における一端(2a)から他端(2b)側に向かう方向が、当該基材シート拭布(2)を構成している不織布の生産流れ方向(MD方向)と一致している、請求項6記載の清拭具。
【請求項8】
基材シート拭布(2)は、表面に凹凸(10)を有する不織布で構成されている、請求項1ないし7のいずれかに記載の清拭具。
【請求項9】
前記不織布表面の凹凸(10)は、前記不織布の生産時においてその生産流れ方向(MD方向)に沿って形成される多数の畝状の凸部と、その隣り合う凸部間にそれぞれ位置する溝状の凹部とからなる、請求項8記載の清拭具。
【請求項10】
粘着剤層(3)を構成する粘着剤には抗菌剤が添加されている、請求項1ないし9のいずれかに記載の清拭具。
【請求項11】
対象面に付着した指紋や油膜等の汚れを拭き取るのに使用される清拭具であって、
繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布(2)の一面に、プラスチックフィルムまたは紙からなる筆記層(5)を積層して構成されるシート本体(P)と、
筆記層(5)の表面の一部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層(3)とを有し、
粘着剤層(3)を介してシート本体(P)が本や手帳に仮止め可能とされており、
基材シート拭布(2)で対象面を拭く際に粘着剤層(3)に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層(3)が当該指先に対する滑り止めとして機能することを特徴とする清拭具。
【請求項12】
第一のシート本体(P)の基材シート拭布(2)と、第二のシート本体(P)の筆記層(5)とが対向する状態で、二枚のシート本体(P・P)が接合されており、
第一のシート本体(P)の筆記層(5)の表面に粘着剤層(3)が設けられており、
二枚のシート本体(P・P)は、挿入部(12)を除く外縁どうしが接合してあり、挿入部(12)を介して二枚のシート本体(P・P)の間に指先を挿入できる請求項11記載の清拭具。
【請求項13】
筆記層(5)がプラスチックフィルムからなり、
筆記層(5)の表面に粗面化処理が施してある請求項11または12記載の清拭具。
【請求項1】
対象面に付着した指紋や油膜等の汚れを拭き取るのに使用される清拭具であって、
繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布(2)と、
この基材シート拭布(2)の裏面(21)の一部または全部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層(3)とを有し、
粘着剤層(3)を介して基材シート拭布(2)が本や手帳に仮止め可能とされており、
基材シート拭布(2)で対象面を拭く際に粘着剤層(3)に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層(3)が当該指先に対する滑り止めとして機能することを特徴とする清拭具。
【請求項2】
基材シート拭布(2)を構成する不織布には親油性繊維が20〜30質量%含まれている、請求項1記載の清拭具。
【請求項3】
極細繊維は極細分割繊維を含み、ナノ繊維はナノ繊維分割繊維を含む、請求項1または2記載の清拭具。
【請求項4】
基材シート拭布(2)が裏面(21)側の粘着剤層(3)を介して順次複数枚積層されて一個の積層体(S)を形成している、請求項1ないし3のいずれかに記載の清拭具。
【請求項5】
基材シート拭布(2)の大きさおよび形状は、長辺が60〜140mmで短辺が40〜100mmの長方形、または一辺が40〜150mmの正方形である、請求項1ないし4のいずれかに記載の清拭具。
【請求項6】
基材シート拭布(2)は、その裏面(21)側における一端(2a)から他端(2b)側に向けて当該裏面(21)側の面積の1/3〜1/2にわたる範囲に前記粘着剤層(3)が設けられている、請求項1ないし5のいずれかに記載の清拭具。
【請求項7】
前記基材シート拭布(2)の裏面(21)側における一端(2a)から他端(2b)側に向かう方向が、当該基材シート拭布(2)を構成している不織布の生産流れ方向(MD方向)と一致している、請求項6記載の清拭具。
【請求項8】
基材シート拭布(2)は、表面に凹凸(10)を有する不織布で構成されている、請求項1ないし7のいずれかに記載の清拭具。
【請求項9】
前記不織布表面の凹凸(10)は、前記不織布の生産時においてその生産流れ方向(MD方向)に沿って形成される多数の畝状の凸部と、その隣り合う凸部間にそれぞれ位置する溝状の凹部とからなる、請求項8記載の清拭具。
【請求項10】
粘着剤層(3)を構成する粘着剤には抗菌剤が添加されている、請求項1ないし9のいずれかに記載の清拭具。
【請求項11】
対象面に付着した指紋や油膜等の汚れを拭き取るのに使用される清拭具であって、
繊度が1dtex(デシテックス)未満の極細繊維または0.1dtex未満のナノ繊維の一方または両方を表面層に含ませた不織布からなる基材シート拭布(2)の一面に、プラスチックフィルムまたは紙からなる筆記層(5)を積層して構成されるシート本体(P)と、
筆記層(5)の表面の一部に設けられた再貼着再剥離可能な粘着剤からなる粘着剤層(3)とを有し、
粘着剤層(3)を介してシート本体(P)が本や手帳に仮止め可能とされており、
基材シート拭布(2)で対象面を拭く際に粘着剤層(3)に掌の指先側を当てた状態で拭き取り操作を行うことによって粘着剤層(3)が当該指先に対する滑り止めとして機能することを特徴とする清拭具。
【請求項12】
第一のシート本体(P)の基材シート拭布(2)と、第二のシート本体(P)の筆記層(5)とが対向する状態で、二枚のシート本体(P・P)が接合されており、
第一のシート本体(P)の筆記層(5)の表面に粘着剤層(3)が設けられており、
二枚のシート本体(P・P)は、挿入部(12)を除く外縁どうしが接合してあり、挿入部(12)を介して二枚のシート本体(P・P)の間に指先を挿入できる請求項11記載の清拭具。
【請求項13】
筆記層(5)がプラスチックフィルムからなり、
筆記層(5)の表面に粗面化処理が施してある請求項11または12記載の清拭具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−81249(P2012−81249A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151737(P2011−151737)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(390022851)
【出願人】(000169983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(390022851)
【出願人】(000169983)
【Fターム(参考)】
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