説明

清拭用ブラシ

【課題】十分な汚れ落とし効果が得られ、しかも、頭皮や頭髪などの清拭される対象物を傷つけることなく清拭でき、さらに、汚れ除去効果が容易に認識できる清拭用ブラシを提供する。
【解決手段】基板1と、該基板1の一方の面1aに設けられた複数の突起部2とを有し、突起部2は、面状の頂部2aと、剛性の弱い弱化部の形成された側面22とを有する清拭用ブラシ10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清拭用ブラシに関し、特に、頭髪および頭皮の清拭に好適に使用される清拭用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
頭皮や頭髪に付着している汚れには、ほこりやヘアケア剤などの外部由来のものや、皮脂や新陳代謝によって不要となった角質層などの人体由来のものがある。このような頭皮や頭髪の汚れを除去する方法としては、湯または水で頭髪と頭皮を濡らした後、界面活性剤が主成分であるシャンプー剤をつけてよく泡立て、湯または水で十分にすすぎ流す洗髪方法が一般的である。2、3日洗髪をしないと、頭皮から分泌される皮脂による不快なべたつき感や、皮脂の酸化などを原因とするにおいが発生する。このため、ほとんどの人が毎日あるいは1〜2日おきに洗髪を行っている。
【0003】
しかしながら、病気やケガで入院して入浴できない時や、地震などの大規模な自然災害により多量の湯や水が使用できない時には、数日間、長い場合には数週間、頭皮や頭髪を洗うことができない。
このような場合には、濡れたタオルや、水やアルコールを含浸させたウェットティッシュなどを用いて頭皮や頭髪を拭くことにより、頭皮や頭髪の汚れを除去しているが、汚れ落ちは不十分である。特に頭皮の汚れは、頭髪がじゃまするので落としにくい。
【0004】
また、水やエタノールあるいはその混合物を基本的な成分としたドライシャンプー剤を頭皮および頭髪に塗布し、タオルなどで汚れと一緒にドライシャンプー剤を拭取る洗髪方法が知られている。しかし、ドライシャンプー剤を用いた場合であっても、濡れたタオルやウェットティッシュを用いた場合と同様、十分に頭皮や頭髪の汚れを除去することはできない。
【0005】
また、シャンプー剤などの薬液と、紙や繊維からなり、多数の突起を備えた種々のブラシとを用いて洗髪を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−332650号公報
【特許文献2】特開2000−106937号公報
【特許文献3】特開2000−189249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のブラシでは、突起の強度が適切でないため、頭皮を傷つけてしまいやすかったり、汚れ落とし効果が十分に得られなかったりすることが問題となっていた。また、従来のブラシは、単独では手に安定して保持させることができない、または、手に保持される部分の強度が弱いという問題があった。このため、従来のブラシでは、洗髪時に頭皮に十分な荷重が負荷できなかったり、時間をかけて丁寧に洗髪することができなかったりして、汚れ落とし効果が十分に得られない場合があった。
さらに、従来の洗髪方法では、頭皮や頭髪の汚れ除去効果が認識しにくかった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、十分な汚れ落とし効果が得られ、しかも、頭皮や頭髪などの清拭される対象物を傷つけることなく清拭でき、さらに、汚れ除去効果が容易に認識できる清拭用ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を重ね、突起の形状および強度を適切なものとすることにより、本発明の清拭用ブラシを想到した。
本発明の清拭用ブラシは、基板と、該基板の一方の面に設けられた複数の突起部とを有し、前記突起部は、面状の頂部と、剛性の弱い弱化部の形成された側面とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の清拭用ブラシでは、前記頂部が平面状であり、前記突起部の圧縮強度が、前記頂部に近い位置ほど弱いものであるものとすることができる。
また、本発明の清拭用ブラシでは、前記突起部は、10N3分間の圧縮力に対して0.1〜1.5mmつぶれるものとすることができる。
また、本発明の清拭用ブラシでは、前記突起部は、20N3分間の圧縮力に対して1.5mm以上つぶれるものとすることができる。
【0010】
また、本発明の清拭用ブラシにおいては、前記基板および前記突起部は不織布からなり、前記突起部は該基板の一部を突出させることにより形成されたものであり、前記不織布厚さは、前記頂部から基部側に向かって3mmまでの範囲を形成する上側面部および前記頂部が0.1mm〜0.5mmであり、前記上側面部から前記基部までの範囲を形成する下側面部が前記上側面部の厚みを超える寸法であるものとすることができる。
【0011】
また、本発明の清拭用ブラシにおいては、前記基板には、該基板の縁部から帯状に延在する第1のバンド部と、該基板の縁部から前記第1のバンド部と反対方向に帯状に延在する第2のバンド部とが備えられ、前記第1のバンド部には、該第1のバンド部の幅方向に切り込まれてなる少なくとも1つの第1切込み部が設けられ、前記第2のバンド部には、該第2のバンド部の幅方向に切り込まれてなり、前記第1切込み部と嵌合可能な少なくとも1つの第2切込み部が設けられ、前記第1切込み部と前記第2切込み部とを嵌合させることにより、前記基板と前記第1のバンド部と前記第2のバンド部とからなる環状体が形成されるものとすることができる。
【0012】
また、本発明の清拭用ブラシにおいては、頭髪および頭皮の清拭に使用されるものとすることができる。
【0013】
また、本発明の清拭用ブラシにおいては、前記不織布が、スパンボンド不織布であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の清拭用ブラシは、基板と、基板の一方の面に設けられた複数の突起部とを有し、前記突起部が、面状の頂部と、剛性の弱い弱化部の形成された側面とを有するので、十分な汚れ落とし効果が得られ、しかも、頭皮や頭髪などの清拭される対象物を傷つけることなく清拭でき、さらに、汚れ除去効果が容易に認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を用いて本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施の形態に限定されない。
「第1実施形態」
図1は、本発明の清拭用ブラシの一例を説明するための図であり、図1(a)は清拭用ブラシの全体を示した斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示す清拭用ブラシを構成する突起部のうちの1つを示した拡大図であり、図1(c)は図1(a)に示す清拭用ブラシを構成する突起部のうちの1つを示した断面図である。
【0016】
図1(a)に示す清拭用ブラシ10は、頭髪および頭皮の清拭に使用されるものであり、本体を構成する基板1と、基板1の一方の面1aに設けられた複数の突起部2とを有している。また、基板1には、図1(a)に示すように、基板1の縁部から帯状に延在する第1のバンド部3と、基板1の縁部から第1のバンド部3と反対方向に帯状に延在する第2のバンド部4とが備えられている。基板1、第1のバンド部3、第2のバンド部4、突起部2は、全てスパンボンド不織布からなるものであり、一体成形されている。
【0017】
突起部2は、図1(a)に示すように、基板1の一部を突出させることにより形成されたものであり、図1(b)に示すように、頂部2aが平面視長方形の平面状とされ、図1(c)に示すように、中空で、頂部2aから基部2bに向かって徐々に外周が大きくなる外形形状を有している。
【0018】
図1(a)に示す清拭用ブラシ10では、突起部2はすべて同じ材質及び形状のものであり、頂部2aの長辺方向の揃えられた4個または5個の突起部2からなる列が、第1のバンド部3と第2のバンド部4との間に5列設けられている。なお、列ごとに揃えられている頂部2aの長辺方向は、隣接する列を構成する突起部2の頂部2aの長辺方向と直交するように配置され、第1のバンド部3および第2のバンド部4の延在方向に対して約45°傾いて配置されている。
このように図1(b)に示す突起部2を、図1(a)に示すように配置することで、例えば、第1のバンド部3および第2のバンド部4の延在方向に沿って清拭用ブラシ10を動かした場合に、突起部2と頭髪および頭皮とを十分に接触させて効率よく汚れを除去することができるとともに、櫛通りのよい使用感に優れたものとなる。
【0019】
なお、図1(a)に示す清拭用ブラシ10では、頂部2aが平面視長方形の平面状とされているが、頂部2aを平面視したときの形状は長方形のみに限定されるものではなく、例えば、円形、三角形、ひし形など如何なる形状であってもよい。さらに、頂部2aは平面状に限定されるものではなく、例えば、中心に向かって凸状または凹状に形成された曲面であってもよく、面状であればよい。
また、突起部2の向きや数についても図1(a)に示す例に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0020】
突起部2の平面状の頂部2aの面積は、4mm〜20mmの範囲であることが好ましい。頂部2aの面積が上記の範囲を超えると、突起部2の頂部2aが頭髪に邪魔されて頭皮に接触しにくくなり、汚れ落とし効果が十分に得られなくなる恐れが生じる。また、頂部2aの面積が上記の範囲未満であると、頭皮に接触する突起部2の面積が少なくなり、突起部2と頭皮とを十分に接触させることができなくなるため、汚れ落とし効果が十分に得られない場合がある。頭皮に接触する突起部2の面積が少なくなるため、洗髪時に頭皮に負荷される荷重が大きくなりすぎて、頭皮に傷みを感じたり、頭皮や頭髪を傷つけてしまったりする恐れが生じる。さらに、頂部2aの面積が小さすぎて、頂部2aに付着した汚れが視認しにくくなるので、汚れ除去効果が認識しにくくなる恐れがある。なお、図1(a)に示す清拭用ブラシ10を用いて頭皮や頭髪を清拭した場合、通常、頂部2aには黒ずんだ汚れが付着する。スパンボンド不織布は、通常白色であるので、汚れの付着の有無は容易に判断できる。
【0021】
なお、突起部2の頂部2aが平面視長方形である場合、長方形の長辺寸法は7mm以下とすることが好ましく、5mm以下とすることがより好ましい。また、長方形の短辺寸法は1mm以上とすることが好ましく、2mm以上とすることがより好ましい。
【0022】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10において、図1(c)に示す突起部2の高さHは3mm〜10mmの範囲とするのが好ましい。突起部2の高さHが3mm未満であると、頭髪に邪魔されて頂部2aが頭皮に接触しにくくなり、汚れ落とし効果が十分に得られない場合がある。また、突起部2の高さHが10mmを超えると、十分な圧縮強度を有する突起部2が製造できなくなる恐れが生じる。
【0023】
清拭ブラシ1を用いて頭髪および頭皮を清拭する際には、通常、突起部2に対して10N3分間程度の圧縮力が加わり、突起部2に対して20N3分間程度の圧縮力が加わえられると、かなり強い負荷が感じられ、突起部2に対して30N程度の圧縮力が加わえられると、頭皮に傷みを感じる。
図1(a)に示す清拭用ブラシ10では、図1(c)に示すように突起部2を構成する不織布厚さを、頂部2aに近い部分を薄くし、基部2bに近づくにしたがって厚くなるようにすることにより、突起部2の圧縮強度が頂部2aに近い位置ほど弱いものとし、突起部2の側面22を剛性の弱い弱化部(頂部2aに近い部分)と剛性の強い部分(基部2bに近い部分)とが存在する剛性の不均一なものとしている。
【0024】
具体的には、不織布厚さは、突起部2の頂部2aおよび図1(b)に示す頂部2aから基部2b側に向かって3mmまでの範囲hを形成する上側面部2cでは、好ましくは0.1mm〜0.5mm、より好ましくは0.1mm〜0.3mmとされ、上側面部2cから基部2bまでの範囲を形成する下側面部2dでは、頂部2aおよび上側面部2cの厚みを超える寸法とされている。
【0025】
突起部2の頂部2aおよび上側面部2cの不織布厚さが0.5mmを超えると、突起部2の圧縮強度が強すぎて、洗髪時の突起部2への荷重によって突起部2がつぶれにくくなり、汚れ除去効果が視認しにくくなったり、清拭時に頭皮に傷みを感じやすくなったりする場合がある。また、突起部2の頂部2aおよび上側面部2cの不織布厚さが0.1mmを未満であると、突起部2に穴が開いたり、突起部2の圧縮強度が弱すぎて、通常の清拭における突起部2への負荷により突起部2が大きく変形したりする場合がある。突起部2が大きく変形してしまうと、清拭時に突起部2の頂部2aが頭皮に到達しにくくなったり、突起部2の外形形状に沿って頭髪を接触させることができなくなったりし、汚れ落とし効果が十分に得られなくなる恐れがある。
【0026】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10においては、突起部2は全て、10N3分間の圧縮力に対して0.1〜1.5mmつぶれるものとされており、0.3mm〜1mmつぶれるものとされていることがより好ましい。突起部2が10N3分間の圧縮力に対してつぶれる寸法が上記の範囲未満であると、汚れ除去効果が視認しにくくなったり、清拭時に頭皮に傷みを感じる場合がある。また、突起部2が10N3分間の圧縮力に対してつぶれる寸法が上記の範囲を超えると、通常の清拭における突起部2への負荷により突起部2が大きく変形してしまう場合がある。
【0027】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10においては、突起部2は全て、20N3分間の圧縮力に対して1.5mm以上つぶれるものとされている。突起部2が20N3分間の圧縮力に対してつぶれる寸法が上記の範囲未満であると、清拭時に通常以上の圧縮力が突起部2に加わった場合に、突起部2がつぶれることによって頭皮への衝撃を効果的に吸収することができず、頭皮に傷みを感じる場合がある。
【0028】
なお、本実施形態においては、突起部2は全て、10N3分間の圧縮力に対して0.1〜1.5mmつぶれ、20N3分間の圧縮力に対して1.5mm以上つぶれるという力学的特性を有するものとしたが、本発明の清拭用ブラシを構成する突起部は、突起部2の側面22に剛性の弱い弱化部の形成されたものであればよく、上記の力学的特性を有していなくてもよい。例えば、突起部2の側面22にリング状に剛性の弱い部分(弱化部)が形成されているものとしてもよいし、突起部2の圧縮強度が頂部2aに近い位置ほど強いものとしてもよい。
【0029】
また、突起部の力学的特性は、全ての突起部が同じであってもよいし一部または全部の突起部が異なっていてもよい。しかし、例えば、複数の突起部のうちの1つの突起部のみ圧縮力が極端に高い場合には、清拭時に発生する清拭用ブラシから頭皮への負荷が圧縮力の高い1つの突起部に集中し、頭皮に強い衝撃が加わり、頭皮に傷みを感じる場合がある。しかし、複数の突起部のうちの数個の突起部の圧縮力が極端に低くても、問題ない。
【0030】
また、図1(a)に示すように、第1のバンド部3には、第1のバンド部3の幅方向に切り込まれてなる2つの第1切込み部3a、3bが設けられている。また、第2のバンド部4には、第2のバンド部4の幅方向に切り込まれてなり、第1切込み部3a、3bと嵌合可能な1つの第2切込み部4aが設けられている。
図1(a)に示す清拭用ブラシ10では、第1切込み部3a、3bと第2切込み部4aとを嵌合させることにより、第1のバンド部3と第2のバンド部4とが連結されるようになっている。第1のバンド部3と第2のバンド部4とを連結させると、第1のバンド部3と第2のバンド部4と基板1からなる環状体が形成される。
【0031】
ここで、図1に示す清拭用ブラシ10では、2つの第1切込み部3a、3bが設けられているので、第2切込み部4aを第1切込み部3aと嵌合させた場合と、第2切込み部4aを第1切込み部3a、3bと嵌合させた場合とで、外周寸法の異なる環状体が形成される。したがって、図1(a)に示す清拭用ブラシ10では、環状体の中に手を入れて清拭用ブラシ10を把持する場合に、使用者の手の大きさに対応して環状体の外周寸法を調節することができ、容易に安定して手に保持させることができるので、優れた使用性が得られる。
【0032】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10は、上述したようにスパンボンド不織布からなるものである。スパンボンド不織布は、(1)突起形状を有する金型を用いて容易に突起部2の形状を付与することができる、(2)安定して手に保持させることができる十分な強度を有する第1のバンド部3および第2のバンド部4が得られる、(3)清拭剤を併用して頭皮および頭髪を清拭する場合に清拭剤に含まれる水やエタノールを含むことで軟化したり溶解したりしない、(4)安全性上の懸念がある接着剤などの薬剤が使用されていない清拭用ブラシ10を得ることができるため好ましい。
【0033】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10を構成するスパンボンド不織布としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルなどからなり、坪量が100〜400g/m2であるものを用いることが望ましい。坪量が100g/m2未満であると、十分な強度を有する突起部2、第1のバンド部3、第2のバンド部4が形成できない恐れがある。また、坪量が400g/m2を超えると、第1のバンド部3と第2のバンド部4との連結がしにくくなったり、好適な力学的特性を有する突起部2を形成することが困難となったりして、使用感が低下する恐れがある。
【0034】
図1(a)に示す清拭用ブラシ10を製造するには、例えば、均一な厚みを有する板状のスパンボンド不織布を用意し、突起部2の形状に対応する突起形状を有する金型を用いて、加熱しながらスパンボンド不織布に突起部2の形状を付与する。
なお、突起部2の成形方法は、上述した圧縮成形(プレス形成)の他、真空成形や圧穴成形などの方法により成形することができる。
このようにして突起部2を形成することで、突起部2を構成する不織布厚さは、頂部2aに近い部分が薄く、基部2bに近づくにしたがって厚いものとなり、突起部2の圧縮強度が頂部2aに近い位置ほど弱いものとなり、突起部2の側面22に剛性の弱い弱化部の形成されたものとなる。
その後、突起部2の形成されたスパンボンド不織布を抜き型で所定の形に切り抜くことにより、第1のバンド部3および第2のバンド部4を形成するとともに、第1切込み部3a、3bおよび第2切込み部4aを形成し、図1(a)に示す清拭用ブラシ10が得られる。
【0035】
図1(a)に示す清拭用ブラシ10を用いて頭皮および頭髪を清拭する場合には、まず、第1のバンド部3と第2のバンド部4とを基板1の一方の面1aが外側となるようにして連結させ、第1のバンド部3と第2のバンド部4と基板1からなる環状体を形成する。そして、得られた環状体の中に、基板1側が手の平側となるように手を入れて清拭用ブラシ10を把持し、突起部2で頭皮および頭髪を擦る方法によって行うことができる。
【0036】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10を用いて頭皮および頭髪を清拭する場合、使用者は通常、突起部2で頭皮および頭髪に押し付けながら、第1のバンド部3および第2のバンド部4の延在方向に沿って清拭用ブラシ10を動かす。このとき、使用者の手から清拭用ブラシ10に負荷される第1のバンド部3および第2のバンド部4の延在方向の力は、第1のバンド部3および第2のバンド部4の幅全体によって受け止められる。このため、図1に示す清拭用ブラシ10においては、使用者の手から清拭用ブラシ10に負荷される力への強度が十分に得られる。よって、頭皮および頭髪の清拭時に、清拭用ブラシ10から頭皮に十分な荷重を負荷することができるとともに、時間をかけて丁寧に清拭することができ、十分に汚れ落としを行なうことができる。
【0037】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10を用いて頭皮および頭髪を清拭する場合には、清拭剤を併用して、清拭効果を向上させることが望ましい。ここで用いられる清拭剤としては、特に限定されないが、例えば、水やエタノールあるいはその混合物を基本的な成分とした市販のドライシャンプー剤などを用いることができる。
【0038】
図1(a)に示す清拭用ブラシ10では、頂部2aが平面状である複数の突起部2を有し、突起部2の側面22に剛性の弱い弱化部の形成されたものであるので、十分な汚れ落とし効果が得られ、しかも、頭皮や頭髪を傷つけることなく清拭でき、さらに、汚れ除去効果が容易に認識できる優れた清拭用ブラシ1となる。
例えば、図1(a)に示す清拭用ブラシ10を用いて他人の頭皮および頭髪を清拭する場合には、他人の頭皮に一時的に強い力が加わってしまったとしても、突起部がつぶれて頭皮への衝撃を吸収するため、痛みを感じさせてしまうことを防止できる。また、清拭中や清拭後に、平面状の頂部2aに付着した汚れを視認できるので、汚れ除去効果を容易に認識できる。したがって、本実施形態の清拭用ブラシ10は、安心して確実に他人の頭皮および頭髪の清拭に使用できる。
【0039】
これに対し、例えば、従来の清拭用ブラシを用いて頭皮および頭髪を清拭する場合、自分の頭皮および頭髪を自分で清拭する場合には清拭用ブラシに負荷する力を自分で適切に調節しながら清拭できるが、入院患者など自分で清拭できない人の頭皮および頭髪を他人が清拭する場合には清拭用ブラシに負荷する力の調節がしづらいため、他人の頭皮に一時的に強い力が加わってしまい、痛みを感じさせてしまうことがあった。
【0040】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10は、突起部2の圧縮強度が頂部2aに近い位置ほど弱いものであるので、清拭時に突起部2に荷重が負荷された場合に、突起部2が容易に変形して頭皮への衝撃を効果的に吸収するものとなり、頭皮に傷みを感じることを効果的に防止できるものとなる。
【0041】
さらに、図1(a)に示す清拭用ブラシ10では、突起部2が10N3分間の圧縮力に対して0.1〜1.5mmつぶれるものであるので、汚れ除去効果が非常に視認しやすく、清拭時に通常の圧縮強度が突起部2に加わった場合に突起部2が適度につぶれて頭皮への衝撃を吸収することにより頭皮に傷みを感じることを防止でき、しかも、通常の清拭における突起部2への負荷により突起部2が大きく変形して汚れ落とし効果が低下することがない優れた清拭用ブラシ1となる。
【0042】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10では、突起部2が20N3分間の圧縮力に対して1.5mm以上つぶれるものであるので、清拭時に通常以上の圧縮強度が突起部2に加わった場合に、突起部2がつぶれて頭皮への衝撃を吸収することにより頭皮に傷みを感じることを防止できる。
【0043】
また、図1(a)に示す清拭用ブラシ10において、基板1および突起部2を不織布からなるものとし、突起部2を基板1の一部を突出させることにより形成されたものとし、不織布厚さを、頂部2aおよび上側面部2cでは0.1mm〜0.5mmとし、下側面部2dでは上側面部2cの厚みを超える寸法とすることで、汚れ除去効果が非常に視認しやすく、清拭時に頭皮に傷みが発生することを効果的に防止でき、しかも、突起部2に穴が開いたり、通常の清拭における突起部2への負荷により突起部2が大きく変形したりすることのない良好な清拭用ブラシ10となる。
【0044】
なお、上述した実施形態においては、突起部2を構成する不織布厚さを頂部2aに近い部分と基部2bに近い部分とで変化させることにより、突起部2の圧縮強度が、頂部2aに近い位置ほど弱いものとなるようにしたが、本発明の清拭用ブラシは上述した実施形態に限定されるものでなく、例えば、突起部2の側面22の一部に不織布の軟化剤などを塗布する方法などにより、突起部2の側面22に剛性の弱い弱化部を形成してもよい。
【0045】
また、上述した実施形態においては、第1のバンド部3には2つの第1切込み部3a、3bが設けられ、第2のバンド部には1つの第2切込み部4aが設けられているものを例に挙げて説明したが、第1のバンド部および第2のバンド部には、少なくとも1つの切込み部が設けられていればよい。なお、使用者の手の大きさに対応して環状体の外周寸法を調節することができるものとする場合には、第1のバンド部および第2のバンド部のうち少なくとも一方に、少なくとも2つの切込み部が設けられていればよく、例えば、第1のバンド部に3つの第1切込み部を設けて、3段階に環状体の外周寸法を調節可能なものとしてもよいし、第2のバンド部に2つの第2切込み部を設けてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態においては、スパンボンド不織布からなる清拭用ブラシを例に挙げて説明したが、清拭用ブラシの材質はスパンボンド不織布のみに限定されるものではなく、例えば、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、ステッチボンド不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブロー不織布などの不織布を用いることができる。中でも、スパンボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ステッチボンド不織布、メルトブロー不織布を用いると、適度な圧縮強度が得られるため好ましく、スパンボンド不織布を用いることが最も好ましい。
【0047】
「第2実施形態」
図2は、本発明の清拭用ブラシの他の例を説明するための斜視図である。図2に示す清拭用ブラシ20は、上述した第1実施形態と同様に、頭髪および頭皮の清拭に使用されるものであり、基板1と、基板1の一方の面1aに設けられた複数の突起部2とを有している。基板1および突起部2は、第1実施形態と同様にスパンボンド不織布からなるものであり、一体成形されている。また、突起部2は第1実施形態と同様のものが同様に配列されている。
【0048】
しかし、図2に示す清拭用ブラシ20では、第1実施形態と異なり、基板1の平面形状は略長方形とされており、対向する短辺1b側の縁部には、それぞれ短辺1b、1bに沿って切込み1c、1dが形成されている。また、図2に示す清拭用ブラシ20では、第1実施形態と異なり、頂部2aの長辺方向の揃えられた4個または5個の突起部2からなる列の方向が、切込み1c、1dの延在方向と略直交するようになっている。また、列ごとに揃えられている頂部2aの長辺方向は、切込み1c、1dの延在方向に対して約45°傾いて配置されている。
図2に示す突起部2を、図2に示すように配置することで、例えば、切込み1c、1dの延在方向に沿って清拭用ブラシ20を動かした場合に、突起部2と頭髪および頭皮とを十分に接触させて効率よく汚れを除去することができるとともに、櫛通りのよい使用感に優れたものとなる。
【0049】
図2に示す清拭用ブラシ20を製造するには、例えば、上述した第1実施形態と同様に、均一な厚みを有する板状のスパンボンド不織布を用意し、突起部2の形状に対応する突起形状を有する金型を用いて、加熱しながらスパンボンド不織布に突起部2の形状を付与する。
その後、突起部2の形成されたスパンボンド不織布を抜き型で所定の形に切り抜くとともに、切込み1c、1dを形成することにより、図2に示す清拭用ブラシ20が得られる。
【0050】
図2に示す清拭用ブラシ20を用いて頭皮および頭髪を清拭する場合には、まず、切込み1c、1dの中に、基板1の一方の面1aと反対側の面が手の平側となるように手を入れて清拭用ブラシ20を把持し、突起部2で頭皮および頭髪を擦る方法によって行うことができる。
なお、図2に示す清拭用ブラシ20を用いて頭皮および頭髪を清拭する場合にも、上述した第1実施形態と同様に、清拭剤を併用して、清拭効果を向上させることが望ましい。
【0051】
図2に示す清拭用ブラシ20においても、頂部2aが平面状である複数の突起部2を有し、突起部2の側面22に剛性の弱い弱化部の形成されたものであるので、十分な汚れ落とし効果が得られ、しかも、頭皮や頭髪を傷つけることなく清拭でき、さらに、汚れ除去効果が容易に認識できる優れた清拭用ブラシ20となる。
【0052】
また、図2に示す清拭用ブラシ20は、基板1の対向する縁部にそれぞれ縁部に沿って形成された切込み1c、1dを備え、切込み1c、1dを用いて清拭用ブラシ20を把持するものであるので、第1実施形態と比較して、コンパクトな形状を有するものとなる。
【0053】
「第3実施形態」
図2は、本発明の清拭用ブラシの他の例を説明するための斜視図である。図3に示す清拭用ブラシ30は、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様に、頭髪および頭皮の清拭に使用されるものであり、基板1と、基板1の一方の面1aに設けられた複数の突起部2とを有している。基板1および突起部2は、第1実施形態および第2実施形態と同様にスパンボンド不織布からなるものであり、一体成形されている。また、突起部2も第1実施形態および第2実施形態と同様のものとされている。
【0054】
また、図3に示す清拭用ブラシ30では、第2実施形態と同様に、基板1の平面形状は略長方形とされているが、第2実施形態と異なり、中央部に短辺1b方向に延在する切込み1e、1fが形成されている。また、図3に示す清拭用ブラシ30では、切込み1e、1fの両側に、頂部2aの長辺方向の揃えられた2個または3個の突起部2からなる列がそれぞれ5列設けられており、列の方向が、切込み1e、1fの延在方向と略直交するように配置されている。また、列ごとに揃えられている頂部2aの長辺方向は、切込み1e、1fの延在方向に対して約45°傾いて配置されている。
図3に示す突起部2を、図3に示すように配置することで、例えば、切込み1e、1fの延在方向に沿って清拭用ブラシ30を動かした場合に、突起部2と頭髪および頭皮とを十分に接触させて効率よく汚れを除去することができるとともに、櫛通りのよい使用感に優れたものとなる。
【0055】
図3に示す清拭用ブラシ30を製造するには、例えば、上述した第2実施形態と同様に、均一な厚みを有する板状のスパンボンド不織布を用意し、突起部2の形状に対応する突起形状を有する金型を用いて、加熱しながらスパンボンド不織布に突起部2の形状を付与する。
その後、上述した第2実施形態と同様に、突起部2の形成されたスパンボンド不織布を抜き型で所定の形に切り抜くとともに、切込み1e、1fを形成することにより、図3に示す清拭用ブラシ30が得られる。
【0056】
図3に示す清拭用ブラシ30を用いて頭皮および頭髪を清拭する場合には、まず、切込み1eの中に基板1の一方の面1aと反対側の面側から手を入れ、その手を切込み1fの中に入れ、基板1の一方の面1aと反対側の面が手の平側となるように清拭用ブラシ30を把持し、突起部2で頭皮および頭髪を擦る方法によって行うことができる。
なお、図3に示す清拭用ブラシ30を用いて頭皮および頭髪を清拭する場合にも、上述した第1実施形態と同様に、清拭剤を併用して清拭効果を向上させることが望ましい。
【0057】
図3に示す清拭用ブラシ30においても、頂部2aが平面状である複数の突起部2を有し、突起部2の側面22に剛性の弱い弱化部の形成されたものであるので、十分な汚れ落とし効果が得られ、しかも、頭皮や頭髪を傷つけることなく清拭でき、さらに、汚れ除去効果が容易に認識できる優れた清拭用ブラシ30となる。
【0058】
また、図3に示す清拭用ブラシ30には、基板1の中央部に対向する縁部の方向に延在する切込み1e、1fが形成されており、切込み1e、1fを用いて清拭用ブラシ30を把持するものであるので、第1実施形態と比較して、コンパクトな形状を有するものとなる。
【0059】
「第4実施形態」
図4は、本発明の清拭用ブラシの他の例を説明するための斜視図である。図4に示す清拭用ブラシ60は、上述した第1実施形態および第2実施形態と同様に、頭髪および頭皮の清拭に使用されるものであり、基板1と、基板1の一方の面1aに設けられた複数の突起部23とを有している。図4に示す清拭用ブラシ60が、上述した第1実施形態の清拭用ブラシ10と異なるところは、突起部23の数と形状のみであるので、上述した第1実施形態の清拭用ブラシ10と同じところについての説明を省略し、異なるところのみ説明する。
【0060】
図4に示す清拭用ブラシ60では、4個の突起部23からなる列が、第1のバンド部3と第2のバンド部4との間に5列設けられている。なお、突起部23からなる列の方向は、第1のバンド部3および第2のバンド部4の延在方向とほぼ同じとされている。
突起部23を、図4に示すように配置することで、例えば、第1のバンド部3および第2のバンド部4の延在方向に沿って清拭用ブラシ60を動かした場合に、突起部23と頭髪および頭皮とを十分に接触させて効率よく汚れを除去することができるとともに、櫛通りのよい使用感に優れたものとなる。
【0061】
また、図4に示す清拭用ブラシ60では、第1実施形態の清拭用ブラシ10と異なり、突起部23の頂部23aが平面視円形の平面状とされ、基部23bが平面視円形され、断面視台形状とされている。
また、図4に示す清拭用ブラシ60においても、第1実施形態の清拭用ブラシ10と同様に、突起部23を構成する不織布厚さを、頂部23aに近い部分を薄くし、基部23bに近づくにしたがって厚くなるようにすることにより、突起部23の圧縮強度が頂部23aに近い位置ほど弱いものとし、突起部23の側面24を剛性の弱い弱化部(頂部23aに近い部分)と剛性の強い部分(基部23bに近い部分)とが存在する剛性の不均一なものとしている。
【0062】
図4に示す清拭用ブラシ60においても、頂部23aが平面状である複数の突起部23を有し、突起部23の側面24に剛性の弱い弱化部の形成されたものであるので、十分な汚れ落とし効果が得られ、しかも、頭皮や頭髪を傷つけることなく清拭でき、さらに、汚れ除去効果が容易に認識できる優れた清拭用ブラシ60となる。
【0063】
なお、上述した実施形態では、清拭用ブラシを用いて頭皮や頭髪を清拭する場合を例に挙げて説明したが、本発明の清拭用ブラシは、頭皮や頭髪以外のものを清拭する場合にも適用できる。
上述した実施形態の清拭用ブラシは、例えば、フライパンにこびりついた油汚れを洗浄する場合や、木製品の清拭を行なう場合、おふろの浴槽を洗浄する場合などにも好ましく適用できる。これらの場合においても、本発明の清拭用ブラシが、頂部2aが面状である複数の突起部2を有し、突起部2の側面22に剛性の弱い弱化部の形成されたものであるので、十分な汚れ落とし効果が得られ、しかも、清拭される対象物を傷つけることなく清拭でき、さらに、汚れ除去効果が容易に認識できる。
【0064】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
「実施例1」
坪量200g/m2、厚さ0.55mmのPET素材のスパンボンド不織布を用意し、突起形状を有する金型を用いて、加熱しながらスパンボンド不織布に金型の突起形状を付与し、基部が縦12mm横8mmの長方形、頂部が縦5mm横3mmの長方形の平面状である略台錐形の表1に示す高さ寸法および表2に示す不織布厚み寸法の図1(a)に示す突起部2を23個形成した。
その後、突起部2の形成されたスパンボンド不織布を抜き型で所定の形に切り抜くことにより、基板の縁部との接続部分の幅が40mmで先端部の幅が36mmで基板の縁部から先端部に向かって徐々に幅が狭くなっている第1のバンド部3および第2のバンド部4を形成するとともに、長さ18mmの2つの第1切込み部3a、3bと、長さ18mmの第2切込み部4aとを形成し、図1(a)に示す清拭用ブラシ10を得た。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
「比較例1」
坪量300g/m2、厚さ0.8mmのサーマルボンド不織布を用意し、突起形状を有する金型を用いて、加熱しながらサーマルボンド不織布に金型の突起形状を付与し、基部が直径11mmの円形で頂点の尖った円錐形の表3に示す高さ寸法および表2に示す不織布厚み寸法の図5に示す突起部21を23個形成した。その後、実施例1と同様にして、第1のバンド部3および第2のバンド部4を形成するとともに、2つの第1切込み部3a、3bと第2切込み部4aとを形成し、図5に示す清拭用ブラシ40を得た。
【0068】
【表3】

【0069】
このようにして得られた実施例1および比較例1の清拭用ブラシを水道水で濡らし、縦80mm横80mmの平らなプラスチック製プレートに全ての突起部を接触させた状態で、プラスチック製プレートを介して突起部に3分間表1および表3に示す荷重を負荷しながら、プラスチック製プレートを小刻みに動かした。そして、上記の荷重を加えた時の突起部の高さおよびつぶれた寸法を調べた。
その結果を表1および表3に示す。なお、表1および表3に示す突起部の高さおよびつぶれた寸法は、清拭用ブラシの中央部に配置された10個の突起部の平均値である。
【0070】
表1に示すように、実施例1の清拭用ブラシでは、10N3分間の清拭時(通常の力)には0.27mmつぶれ、20N3分間の清拭時(かなり強い力)には1.65mmつぶれている。
このことにより、実施例1の清拭用ブラシでは、10N3分間の清拭時には、突起部が適度につぶれて頭皮との接触面が広くなり、汚れの付着面積が広くなるので、頭皮の汚れを効果的に除去できることが確認できた。また、実施例1の清拭用ブラシでは、10N3分間の清拭時に、突起部が適度につぶれて頭皮の微細な凹凸形状に沿って頭皮に接触し、頭皮の汚れを除去できることが確認できた。また、実施例1の清拭用ブラシでは、10N3分間の清拭時には、突起部が大きく変形してしまうことはなく、突起部の形状が維持されるため、頭皮の汚れを効果的に除去できることが確認できた。
さらに、実施例1の清拭用ブラシでは、20N3分間の清拭時には突起部がつぶれて、頭皮への衝撃を吸収できることが確認できた。
【0071】
これに対し、比較例1の清拭用ブラシでは、表3に示すように、10N3分間の清拭時につぶれた寸法は0.04mmであり、突起のつぶれがほとんど認められなかった。また、比較例1の清拭用ブラシでは、20N3分間の清拭時(かなり強い力)でもほとんどつぶれないことから、汚れの付着面積が狭く頭皮の汚れを効果的に除去できない上、頭皮に強い力が直接加わって、頭皮の痛みを感じやすいことが分かった。
【0072】
また、表2に示すように、実施例1の清拭用ブラシでは、突起部を構成する不織布厚さは、頂部に近い部分が薄く、基部に近づくにしたがって厚くなっている。よって、突起部の側面に剛性の弱い弱化部が形成されていることが確認できた。
また、表2に示すように、実施例1の清拭用ブラシでは、頂部および頂部より基部側に向かって1mm、頂部より3mmの不織布厚さ寸法が0.1mm〜0.5mmであり、頂部より5mmの不織布厚さ寸法が頂部および頂部より1mm、頂部より3mmの不織布厚さ寸法を超えている。
これに対し、比較例1の清拭用ブラシでは、表2に示すように、突起部全体の不織布厚さが厚く、側面の不織布厚さは全て同じとなっている。よって、突起部全体が硬いものとなっている。
【0073】
また、このようにして得られた実施例1および比較例1の清拭用ブラシの第1のバンド部と第2のバンド部とを連結させ、第1のバンド部と第2のバンド部と基板とからなる環状体を形成した。そして、2日間洗髪をしていない男性パネル3名が各自、実施例1の清拭用ブラシの環状体の中に左手を入れて清拭用ブラシを把持するとともに、比較例1の清拭用ブラシの環状体の中に右手を入れて清拭用ブラシを把持し、両手を同時に同じように動かして、水で濡れた状態の頭髪および頭皮を、表4に示す圧縮力(負荷荷重)を表4に示す時間で負荷して清拭した。そして、実施例1および比較例1の清拭用ブラシについて、清拭後に目視で観察した場合の汚れの視認性のよさと、清拭による痛みの有無とについて調べた。その結果を表4に示す。
【0074】
【表4】

【0075】
表4に示すように、実施例1では、10N3分間と20N3分間のいずれにおいても、突起部の頂部を構成する平面部全体に汚れが認められ、汚れ除去効果が十分に視認できた。また、実施例1では、10N3分間の清拭時にも20N3分間の清拭時にも、痛みを感じなかった。このことから、実施例1では、通常の力でも強い力でも汚れの視認性に優れており、痛みを感じることなく清拭できることが確認できた。
【0076】
これに対し、比較例1では、10N3分間の清拭後に目視で観察したところ、円錐状の頂部にわずかに汚れが付着していたが、汚れの視認性が悪く、汚れ除去効果の確認が困難であった。また、比較例1では、10N3分間の清拭開始後30秒を過ぎたころから、頭皮がややひりひりとし始め、20N3分間の清拭は頭皮の痛みが強いため清拭することができなかった。
【0077】
「実施例2」
実施例1と同様のスパンボンド不織布を用意し、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布に金型の突起形状を付与し、実施例1と同様の高さ寸法および不織布厚み寸法の図2に示す突起部2を23個形成した。
その後、突起部2の形成されたスパンボンド不織布を抜き型で所定の形に切り抜くことにより、対向する短辺1b側の縁部に、それぞれ短辺1b、1bに沿って最大幅5mm長さ60mmの切込み1c、1dを形成し、図2に示す清拭用ブラシ20を得た。
【0078】
「実施例3」
実施例1と同様のスパンボンド不織布を用意し、実施例1と同様にしてスパンボンド不織布に金型の突起形状を付与し、実施例1と同様の高さ寸法および不織布厚み寸法の図3に示す突起部2を25個形成した。
その後、突起部2の形成されたスパンボンド不織布を抜き型で所定の形に切り抜くことにより、中央部に短辺1b方向に延在する最大幅5mm長さ60mmの切込み1e、1fを形成し、図3に示す清拭用ブラシ30を得た。
【0079】
「比較例2」
実施例1と同様のスパンボンド不織布を用意し、突起部を形成せずにスパンボンド不織布を抜き型で所定の形に切り抜くことにより、実施例1と同様の第1のバンド部3および第2のバンド部4を形成するとともに、実施例1と同様の第1切込み部3a、3bおよび第2切込み部4aとを形成し、図6に示す清拭用ブラシ50を得た。
【0080】
このようにして得られた実施例1〜実施例3、比較例2の清拭用ブラシを用いて、以下に示すように、頭髪および頭皮の清拭を行なった。
まず、2日間洗髪をしていない男性パネル3名の頭髪および頭皮を、以下に示す清拭剤で濡らし、タオルで拭取った。その後、各男性パネルが各自、実施例1〜実施例3、比較例2の清拭用ブラシを把持して、清拭剤で濡れた状態の頭髪および頭皮を清拭した。
【0081】
なお、実施例1および比較例2の清拭用ブラシは、第1のバンド部と第2のバンド部とを連結させ、第1のバンド部と第2のバンド部と基板とからなる環状体を形成し、環状体の中に手を入れて清拭用ブラシを把持して使用した。また、実施例2および実施例3の清拭用ブラシでは、切込みの中に手を入れて清拭用ブラシを把持して使用した。
また、清拭剤としては、水とエタノールとを1:1(質量%)の割合で含有する溶液にピロクトンオラミンを0.05質量%溶解してなる原液と、ジメチルエーテルからなる噴射剤とを、原液/噴射剤=65/35(質量%)となるように、内面がアルミ製、容量100mLのエアゾール缶に充填されたものを用いた。
【0082】
実施例1〜実施例3、比較例2の清拭用ブラシを用いて、頭髪および頭皮の清拭を行なった結果、実施例1〜実施例3では、清拭後の突起部の頂部を構成する平面部全体に汚れが認められ、汚れ除去効果が目視で十分に視認できた。
これに対し、比較例2の清拭用ブラシには、汚れが付着せず、汚れ除去効果が目視で視認できなかった。
【0083】
また、実施例1では、実施例2および実施例3と比較して、手に安定して保持させることができ、頭髪および頭皮の清拭を、丁寧に十分に時間をかけて行なうことができた。
実施例2および実施例3では、清拭中に、頭皮を擦る力を通常よりも強くしたり、清拭用ブラシを大きく動かしたりすることにより、切り込みの周縁部が裂けてしまい、頭皮に十分な荷重が負荷できなくなり、頭髪および頭皮の清拭を、丁寧に十分に時間をかけて行なうことができなかった。
また、実施例2および実施例3では、清拭中に切り込みに頭髪が挟まってしまう場合があり、実施例1の方が使用しやすかった。
【0084】
「実施例4」
実施例1と同様のスパンボンド不織布を用意し、突起形状を有する金型を用いて、加熱しながらスパンボンド不織布に金型の突起形状を付与し、高さが8.0mm、基部が直径10.5mmの円形、頂部が直径3mmの円形の平面状であり、なだらかな丘陵形状の表2に示す不織布厚み寸法の図4に示す突起部23を20個形成した。
その後、実施例1と同様にして、実施例1と同様の第1のバンド部3、第2のバンド部4、第1切込み部3a、3b、第2切込み部4aを形成し、図4に示す清拭用ブラシ60を得た。
【0085】
このようにして得られた実施例4の清拭用ブラシを用いて、以下に示すように、頭髪および頭皮の清拭を行なった。
シャンプー剤を用いて洗髪をし、タオルで水分をふき取った後の男性パネル3名が各自、実施例4の清拭用ブラシを把持し、頭髪および頭皮を10Nの圧縮力(負荷荷重)を3分間負荷して清拭した。
【0086】
なお、実施例4の清拭用ブラシは、第1のバンド部と第2のバンド部とを連結させ、第1のバンド部と第2のバンド部と基板とからなる環状体を形成し、環状体の中に手を入れて清拭用ブラシを把持して使用した。
そして、実施例4の清拭用ブラシについて、清拭後に目視で観察した場合の汚れの視認性のよさと、清拭による痛みの有無とについて調べた。
【0087】
その結果、実施例4の清拭用ブラシでは、突起部の頂部を構成する平面部全体に汚れが認められ、汚れ除去効果が目視で十分に視認できた。また、実施例4の清拭用ブラシでは、清拭時に痛みを感じなかった。このことから、実施例4の清拭用ブラシでは、通常の力で痛みを感じることなく清拭でき、しかも、汚れの視認性に優れていることが確認できた。
【0088】
「試験例1」
実施例1の清拭ブラシまたは市販の食器洗い用スポンジを用いて、フライパンにこびりついた油汚れを洗浄した。
【0089】
その結果、実施例1の清拭ブラシでは、手に安定して保持させた状態で、突起部でこびりついた油汚れを掻き落とすことができ、フライパンの表面を傷つけることなく容易に清拭でき、十分な汚れ落とし効果が得られた。また、実施例1の清拭ブラシは、水に濡れても手に安定して保持させることができ、清拭ブラシの第1のバンド部と第2のバンド部とが、水に濡れても十分な強度を有するものであることが確認できた。さらに、実施例1の清拭ブラシでは、汚れ除去効果が容易に認識できた。
しかし、市販の食器洗い用スポンジでは、十分な汚れ落とし効果を得るためには、強い力を入れて擦る必要があった。また、市販の食器洗い用スポンジでは、スポンジに付着したフライパン汚れが、皿を洗う際に皿に移ってしまうため、手間がかかった。これに対し、実施例1の清拭ブラシは、使い捨てのため、汚れた清拭ブラシから他の皿への汚れ移動が生じず、手間がかからなかった。
【0090】
「試験例2」
実施例1の清拭ブラシまたは市販のテーブルクロスを用いて、木製のダイニングテーブルを洗浄した。
【0091】
目視で観察すると汚れが付着していないように見えるダイニングテーブルの表面を、水で濡らした実施例1の清拭ブラシで清拭した。その結果、清拭ブラシの突起部に汚れが付着し、ダイニングテーブルの表面が汚れていたことが容易に視認できた。これに対し、テーブルクロスを用いて同じダイニングテーブル清拭した場合には、汚れが視認できず、汚れ除去効果の確認ができなかった。
また、実施例1の清拭ブラシまたは市販のテーブルクロスを用いて、木製のダイニングテーブルにこびりついた乾燥した米粒を除去したところ、実施例1の清拭ブラシではダイニングテーブルの表面を傷つけることなく容易に除去できたが、市販のテーブルクロスでは除去しにくかった。
【0092】
「試験例3」
実施例1の清拭ブラシ、市販の浴室用洗浄ブラシ、市販の金属製ブラシを用いて、浴槽の壁面の水面に相当する位置にこびりついている汚れを洗浄した。
その結果、実施例1の清拭ブラシでは、汚れを容易に落とすことができ、十分な汚れ落とし効果が得られ、かつ浴槽を傷つけることもなかった。また、汚れ除去効果が容易に認識できた。
これに対し、市販の浴室用洗浄ブラシでは、ブラシの強度が弱すぎて落としにくく、十分な汚れ落とし効果が得られなかった。また、汚れ除去効果が認識できなかった。
また、市販の金属製ブラシでは、浴槽に傷がついてしまった。また、汚れ除去効果も認識でなかった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、本発明の清拭用ブラシの一例を説明するための図である。
【図2】図2は、本発明の清拭用ブラシの他の例を説明するための斜視図である。
【図3】図3は、本発明の清拭用ブラシの他の例を説明するための斜視図である。
【図4】図4は、本発明の清拭用ブラシの他の例を説明するための斜視図である。
【図5】図5は、本発明の清拭用ブラシの比較例としての清拭用ブラシの一例を説明するための斜視図である。
【図6】図6は、本発明の清拭用ブラシの比較例としての清拭用ブラシの他の例を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
1・・・基板、1a・・・一方の面、1b・・・短辺、1c、1d、1e、1f・・・切込み、2・・・突起部、2a・・・頂部、2b・・・基部、2c・・・上側面部、2d・・・下側面部、3・・・第1のバンド部、3a、3b・・・第1切込み部、4・・・第2のバンド部、4a・・・第2切込み部、10、20、30、40、50・・・清拭用ブラシ、22・・・側面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板の一方の面に設けられた複数の突起部とを有し、
前記突起部は、面状の頂部と、剛性の弱い弱化部の形成された側面とを有することを特徴とする清拭用ブラシ。
【請求項2】
前記頂部が平面状であり、
前記突起部の圧縮強度が、前記頂部に近い位置ほど弱いものであることを特徴とする清拭用ブラシ。
【請求項3】
前記基板および前記突起部は不織布からなり、
前記突起部は該基板の一部を突出させることにより形成されたものであり、
前記不織布厚さは、前記頂部から基部側に向かって3mmまでの範囲を形成する上側面部および前記頂部が0.1mm〜0.5mmであり、
前記上側面部から前記基部までの範囲を形成する下側面部が前記上側面部の厚みを超える寸法であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の清拭用ブラシ。
【請求項4】
前記基板には、該基板の縁部から帯状に延在する第1のバンド部と、該基板の縁部から前記第1のバンド部と反対方向に帯状に延在する第2のバンド部とが備えられ、
前記第1のバンド部には、該第1のバンド部の幅方向に切り込まれてなる少なくとも1つの第1切込み部が設けられ、
前記第2のバンド部には、該第2のバンド部の幅方向に切り込まれてなり、前記第1切込み部と嵌合可能な少なくとも1つの第2切込み部が設けられ、
前記第1切込み部と前記第2切込み部とを嵌合させることにより、前記第1のバンド部と前記第2のバンド部とが連結されるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の清拭用ブラシ。
【請求項5】
頭髪および頭皮の清拭に使用されるものであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の清拭用ブラシ。
【請求項6】
前記不織布が、スパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の清拭用ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−119236(P2008−119236A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306407(P2006−306407)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】