説明

清拭用具

【課題】人体手指で直接的に把持されて被対象物に付着の塵埃の拭き取り作業に供される清拭用具に関して、清拭機能を簡単確実に復活させることができ、しかも廃棄部分を最小限化して、省資源化を図ることができるようにする。
【解決手段】本発明に係る清拭用具は、クッション材2と、該クッション材2を覆うように被せ付けられる扁平な拭布袋体3とからなる。拭布袋体3は、極細繊維を含む表面側層4aと、熱融着繊維を含む裏面側層4bとで構成される不織布シートを袋基材4とする。拭布袋体3には、クッション材2に対して拭布袋体3を被せ付けるための装着口15が開設されており、該装着口15からクッション材2の外面に拭布袋体3を被せ付け、あるいはクッション材2から拭布袋体3を取り外すことで、清拭機能を発揮する拭布袋体3がクッション材2に対して交換可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体手指で直接的に把持されて被対象物に付着の塵埃の拭き取り作業に供される清拭用具に関する。本発明に係る清拭用具は、例えばテレビの表示画面やパーソナルコンピュータのディスプレイ、あるいはコピー機の画像読み取り面等の各種被対象物に付着の塵埃を拭き取るための清拭用具として好適である。
【背景技術】
【0002】
この種の清拭用具の従来例としては、例えば特許文献1や特許文献2などを挙げることができる。特許文献1に係る清拭用具では、2枚の拭布間にクッション材を挟んだ状態で拭布およびクッション材を積重し、これら積重した拭布およびクッション材の周縁部を縫合して手挿入口を有する袋状に形成している。特許文献2の清拭用具では、不織布製の拭布を袋状にし、この袋の内部に四角ブロック状のクッション材が封じ込められている。このように、クッション材を内部に備える構造の清拭用具によれば、拭布が薄手のものであってもクッション材の存在により手が適度の弾力性を感じつつ確実に被対象物を払拭することができ、したがって、薄手の拭布を用いて安価に製造することができる利点がある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−116583号公報
【特許文献2】特開平10−295609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら特許文献の問題は、拭布が汚れると、清拭用具の全体を洗濯しなければ清拭機能が復活しないことにある。このため、拭き取り作業の対象物が多数個あり、清拭を必要とする面積や部分が広い場合には、多数個の清拭用具を用意する必要があり、コスト的に不利がある。また、洗濯処理を行った場合でも拭布に取り込まれた髪の毛等の塵埃を完全に取り除くのは不可能であり、清拭機能を完全に復活させることはできない。清拭機能が低下するたびに清拭用具の全体を交換することは、コストおよび資源の無駄でもある。
【0005】
本発明は、以上のような従来の清拭用具が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、良好な清拭機能を簡単確実に復活させることができ、しかも廃棄部分を最小限化して、省資源化を図ることができる清拭用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、図1および図2に示すごとく、クッション材2と、該クッション材2を覆うように被せ付けられる扁平な拭布袋体3とからなり、人体手指でクッション材2ごと拭布袋体3を把持して、該拭布袋体3の表面で被対象物を拭くことで、該被対象物に付着の塵埃を拭き取ることができる清拭用具を対象とする。拭布袋体3は、極細繊維を含む表面側層4aと、熱融着繊維を含む裏面側層4bとで構成される不織布シートを袋基材4とするものであり、拭布袋体3には、クッション材2に対して拭布袋体3を被せ付けるための装着口15が開設されており、図3に示すごとく該装着口15からクッション材2の外面に拭布袋体3を被せ付け、あるいはクッション材2から拭布袋体3を取り外すことで、清拭機能を発揮する拭布袋体3がクッション材2に対して交換可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明における表面側層4aを構成する極細繊維の具体例としては、アクリル系繊維、ポリエステル系繊維、ナイロン系繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、セルロース繊維等を挙げることができる。繊度としては、0.01〜0.1デシテックスの範囲にあることが好ましい。これら繊維を混合又は異種繊維と混合させてもよい。極細繊維には、多角断面繊維を用いることが好ましい。すなわち、1本の繊維を径中心から放射状に分割してなる繊維や、1本の繊維を上下方向に層状に分割してなる繊維を採用することが好ましい。このような多角断面繊維で袋基材4の表面側層4aを形成してあると、多角断面に由来するカキ取り効果により、被対象物に付着の脂分や塵埃などを効果的に拭き取ることができる。
【0008】
裏面側層4bを構成する熱融着繊維の具体例としては、ポリ乳酸繊維を主成分とする不織布シートや、メタロセン触媒を使用して製造した直鎖低密度ポリエチレン製の合成樹脂フィルムなどを挙げることができる。
【0009】
図2に示すごとく袋基材4が、クッション材2の下面側を受ける下面部10と、下面部10の前方に連なってクッション材2の上面前方部分を覆う前方上面部11と、下面部10の後方に連なってクッション材2の上面後方部分を覆う後方上面部12とを有し、前方上面部11と後方上面部12との左右端部が、下面部10の左右端部に熱融着されて、扁平な四角袋状に形成されており、前方上面部11と後方上面部12との間が、扁平な四角ブロック状のクッション材2に対する装着口15になっており、下面部10の表面が被対象物に対する主拭き取り面とされている形態を採ることができる。
【0010】
図2に示すごとく拭布袋体3は、袋基材4を長方扁平の四角袋状に成形してなるものであり、少なくとも下面部10の表面に、拭布袋体3の長さ方向に走る凹筋16と凸筋17とで構成される凹凸構造18が形成されている形態を採ることができる。
【0011】
図5に示すごとく、クッション材2の外表面に、拭布袋体3の長さ方向に走る凹筋20と凸筋21とで構成される凹凸構造22が形成されていることが好ましい。
【0012】
図6に示すごとく、前方上面部11および後方上面部12と下面部10との熱シール箇所7が、拭布袋体3の左右端縁に沿って間欠的に設けられている形態を採ることができる。
【0013】
図6に示すごとく、前方上面部11および後方上面部12と下面部10との熱シール箇所7が、拭布袋体3の左右端縁との間に一定幅を置いて設けられている形態を採ることができる。
【0014】
図7に示すごとく、クッション材2に対して複数の拭布袋体3が層状に被せ付けられている形態を採ることができる。
【0015】
クッション材2は、弾力の異なる二種のクッション層2a・2bを重ね合わせてなるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、極細繊維を含む表面側層4aを有する袋基材4で拭布袋体3を構成したので、極細繊維に由来する塵埃のこそぎ落とし機能および塵埃の捕捉機能により、当該拭布袋体3の表面側層4aで被対象物を擦ることで、被対象物に付着の塵埃を確実に拭き取り除去することができる。また、この清拭用具1によれば、拭布袋体3がクッション材2に被せ付けられた状態、換言すればクッション材2が拭布袋体3の内部に収容された状態で拭き取りを行うことができるため、袋基材4が薄手のものであってもクッション材2の存在により手が適度の弾力性を感じつつ確実に被対象物を清拭することができる。したがって、薄手の袋基材4を採用することができ、清拭用具1を安価に製造することができる。
クッション材2をベースとして拭き取り動作を行うことができるため、袋基材4のようなシート体の単体で拭き取り動作を行う場合に比べて、クッション材2の面積分だけ、より広い範囲を被対象物に確実に押し付けて拭き取り動作を行うことができ、より効率的に清拭作業を行うことができる。クッション材2を屈曲させて、当該屈曲部分に係る拭布袋体3の表面側層4aを被対象部分に強く押し付けて擦るように清拭作業を行うこともでき、被対象物の表面にこびり付いた塵埃等に対しても、これをこそぎ落として除去することもできる。
【0017】
何よりも拭布袋体3に、クッション材2に対して拭布袋体3を被せ付けるための装着口15が開設されており、該装着口15からクッション材2の外面に拭布袋体3が被せ付け、あるいはクッション材2から拭布袋体3を取り外すことで拭布袋体3がクッション材2に対して交換可能に構成されていると、当該拭布袋体3を交換するだけで、新たな清拭機能を清拭用具に与えて、当該機能を復活させることができる。したがって、多くの塵埃を取り込んで拭布袋体3の清拭機能が低下した場合にも、これを交換するだけで、新たな清拭機能を与えることができ、廃棄される部位が拭布袋体3のみとなるため、清拭用具1の全体が廃棄される従来形態に比べて、コスト負担の低減化および省資源化を図ることができる。清拭用具1の洗濯等の手間が不要となる利点もある。安価な拭布袋体3を購入し、これを交換するだけで、清拭機能を復活させることができるため、清拭用具1の全体を購入する場合に比べて、利用者のコスト負担が安価に済む点でも優れている。
【0018】
熱融着繊維を含む裏面側層4bを有する不織布シートを袋基材4としていると、必要箇所に熱溶着処理を施すだけで、拭布袋体3を作成することができる。したがって、縫製等により拭布袋体3を作成する場合に比べて、格段に作業効率良く、しかも低コストに拭布袋体3を作成することができる。
【0019】
下面部10の前方に連なってクッション材2の上面前方部分を覆う前方上面部11と、下面部10の後方に連なってクッション材2の上面後方部分を覆う後方上面部12との間がクッション材2に対する装着口15とされていると、両上面部11・12を前後に押し広げることにより、装着口15を開放状態にして、クッション材2の外表面に容易に拭布袋体3を被せ付けることができる。清拭用具1を使って拭き取り動作を行うときには、装着口15が確りと閉じられて、クッション材2が不用意に食み出すこともない。拭布袋体3が扁平な四角袋状に形成されており、クッション材2が扁平な四角ブロック状に形成されていると、クッション材2で裏打ち状に支持される拭布袋体3のコーナー部を使って、被対象物に対する拭き取り動作を行うことができる。特にテレビ画面やパソコンのディスプレイ画面などを清拭対象とする場合には、当該画面の四隅に溜まった埃等を拭布袋体3のコーナー部を使って、容易に拭き取ることができる。パソコンのキーボードの隙間に溜まった埃等も、当該コーナー部を使えば容易に拭き取ることができる。
【0020】
拭布袋体3が、袋基材4を長方扁平の四角袋状に成形してなるものであり、少なくとも下面部の表面に、拭布袋体3の長さ方向に走る凹筋16と凸筋17とで構成される凹凸構造18が形成されていると、拭布袋体3の短辺方向を拭き取り方向として、被対象物上で清拭用具1を動かして清拭作業を行ったとき、当該凹凸構造18により、被対象物上の塵埃をこそぎ落として、軽い力で以て簡単確実に塵埃を除去することができる。つまり、清拭用具1を使った清拭作業の効率性の向上を図ることができる点で優れている。
同様にクッション材2の表面に拭布袋体3の長さ方向に走る凹筋20と凸筋21とで構成される凹凸構造22が形成されていると、当該凹凸構造22により、被対象物上の塵埃をこそぎ落として、軽い力で以て簡単確実に塵埃を除去することができる。
【0021】
熱シール処理を施すと、表面側層4aに含まれる極細繊維が溶融することから、極細繊維に由来する清拭機能が低下する。したがって、帯状の熱シール箇所7を設けると、該熱シール箇所7の長さ方向に清拭用具1を動かした場合に、被対象物上に筋状の拭き取り残しの生じるおそれがある。これに対し本実施形態のように、熱シール箇所7を間欠的に設けると、前方上面部11および後方上面部12と下面部10とを確りと接着できながら、清拭機能の低下を最小限に抑えることができる。
また、熱シール処理を施した箇所では、表面の繊維が溶融して硬化するため、清拭作業の際に熱シール箇所7で被対象物を擦ると、該被対象物の表面を傷付けるおそれがある。本発明のように、熱シール箇所7が間欠的に設けてあると、これを帯状とする場合に比べて、熱シール箇所7が被対象物に接する機会を少なくできるので、被対象物が傷付くおそれを低減化できる。
【0022】
熱シール箇所7が拭布袋体3の左右端縁との間に一定幅を置いて設けられていると、拭布袋体3の左右端部には、熱シール処理に起因する清拭機能の低下が生じず、拭布袋体3の左右端部に拭布袋体3の中央部と同程度の清拭機能を付与できる。かかる拭布袋体3の左右端部は、狭い場所、例えば、テレビ画面等の四隅やパソコンのキーボードの隙間に溜まった埃等を拭き取るのに好適である。
【0023】
クッション材2に対して複数の拭布袋体3が層状に被せ付けられていると、最外層の拭布袋体3の清拭機能が低下した場合には、この拭布袋体3のみを取り外すことにより、新たに露出する未使用の拭布袋体3を、塵埃の拭き取りの用に供することができるようになる。つまり、クッション材2に対して拭布袋体3を1枚しか装着できない場合は、拭布袋体3の清拭機能が低下する毎に、これを取り外して新規の拭布袋体3を被せ付けなければならないが、本発明では、最外層の拭布袋体3を取り外すだけで清拭機能を復活させることができる。また、新たに拭布袋体3を装着する必要はないことから、先の場合と比べて拭布袋体3の交換作業回数を削減でき、清拭用具1の使い勝手が向上する。未使用の拭布袋体3を紛失するおそれを排除できる点でも優れている。
【0024】
クッション材2が、弾力の異なる二種のクッション層2a・2bを重ね合わせてなるものであると、例えば、追従性が要求される被対象物の部分(例えば、テレビ画面の隅部等)に対しては、弾力の大きなクッション層2aで裏打ち状に支持された拭布袋体3の表面側層4aで以て、拭き取り作業を行って、清拭処理を行うことができる。
テレビ画面の盤面中央のような広い部分に対して清拭処理を行う場合には、弾力の小さなクッション層2bで裏打ち状に支持された拭布袋体3の表面側層4aで持って拭き取り動作を行えば、被対象物に対向する側のクッション層2bの変形を最小限化して、クッション層2bの全面が拭布袋体3を介して被対象物に均一に接する状態で拭き取り動作を行うことができる。つまり、弾力の小さなクッション層2bの側を被対象物に向けて拭き取り動作を行えば、被対象物に接する拭布袋体3の面に略均一な力を加えることができるので、広い部分に対して効率的に拭き取り動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1実施形態) 図1ないし図3に本発明に係る清拭用具の第1実施形態を示す。図1ないし図3において、清拭用具1は、クッション材2と、該クッション材2を覆うように被せ付けられる扁平な拭布袋体3とからなるものであり、人体手指でクッション材2ごと拭布袋体3を把持して、拭布袋体3の表面で被対象物を拭くことで、該被対象物に付着の塵埃を拭き取ることができる。
【0026】
図2に示すごとく、クッション材2は、第1のクッション層2aと、該第1のクッション層2aよりも弾力の大きな第2のクッション層2bの二種のクッション層を貼り合わせてなるものであり、全体として、扁平な四角ブロック形状を呈している。各クッション層2a・2bは、発泡ポリウレタン、ナイロンなど素材とする。
【0027】
図2に示すごとく、拭布袋体3は、極細繊維を含む表面側層4aと、熱融着繊維を含む裏面側層4bとで構成される不織布シートを袋基材4とする。かかる極細繊維および熱融着繊維の具体例は、上述したごとくであり、本実施形態では、極細繊維を含む不織布(表面側層4a)にプラスチックフィルム(裏面側層4b)を貼り合わせて、袋基材4を形成した。
【0028】
かかる袋基材4は、図4に示すごとく、折り工程、熱シール工程、およびカット工程を経て、拭布袋体3とされる。具体的には、折り工程においては、まずロール状に巻かれた長尺形態の袋基材4から、その幅方向の両端部が上方側に折り返される。ここでは、袋基材4のプラスチックフィルム(裏面側層4b)が上方側に向く姿勢状態から折り返し加工が行われ、折り返された両遊端部5a・5bが、幅方向の中央部において重なるようにする。折り返し後においては、表面側には、極細繊維を含む不織布(表面側層4a)が位置することとなる。次いで、所定箇所に対して、幅方向に走るように熱シール加工が施される。図4において、符号7は熱シール箇所を示す。かかる熱シール加工により、折り返し部分と下方の平坦部分とに係る、互いに対向するプラスチックフィルム(裏面側層4b)どうしが熱融着される。また、折り返し部分の重なり部分においては、上方側のプラスチックフィルム(裏面側層4b)が表面側層4aに熱融着される。最後に、隣接する熱シール箇所7・7の間でカットすることで、図1ないし図3に示すような拭布袋体3を得ることができる。
【0029】
カット工程後の拭布袋体3の構成を図1および図2を使って説明すると、以下の如くとなる。すなわち、拭布袋体3は、クッション材2の下面側を受ける下面部10と、下面部10の前方に連なってクッション材2の上面前方部分を覆う前方上面部11と、下面部の後方に連なってクッション材2の上面後方部分を覆う後方上面部12とを有し、前方上面部11と後方上面部12との左右端部が、下面部10の左右端部に熱融着されて、扁平な四角形状を呈している。ここでは、左右寸法が前後寸法よりも大きな、平面視で長方四角形状に拭布袋体3を形成した。図4と同様に、図1において符号7はシール加工が施された部分、すなわち熱シール箇所を示す。図2および図3に示すように、前方上面部11と後方上面部12との間が、クッション材2に対する装着口15となっている。
袋基材4の極細繊維を含む表面側層4aには、凹筋16と凸筋17とで構成される凹凸構造18が形成されており、本実施形態においては、当該凹筋16と凸筋17とが拭布袋体3の長さ方向(左右方向)に走るように、拭布袋体3を形成した。
【0030】
この拭布袋体3は、装着口15を押し広げて、拭布袋体3の内部空隙にクッション材2を収容することで、該クッション材2の外表面に拭布袋体3を被せ付けることができる。また、拭布袋体3の内部空隙からクッション材2を取り出すことで、拭布袋体3をクッション材2から取り外して、両者2・3を分離することができる。つまり、該装着口15からクッション材2の外面に拭布袋体3を被せ付け、あるいはクッション材2から拭布袋体3を取り外すことで、拭布袋体3をクッション材2に対して適宜に交換することが可能となっている。
【0031】
以上のような構成からなる清拭用具1によれば、極細繊維を含む表面側層4aを有する袋基材4で拭布袋体3を構成したので、極細繊維に由来する塵埃のこそぎ落とし機能および塵埃の捕捉機能により、当該拭布袋体3の表面側層4aで被対象物を擦ることで、被対象物に付着の塵埃を確実に拭き取り除去することができる。また、この清拭用具1によれば、拭布袋体3がクッション材2に被せ付けられた状態、換言すればクッション材2が拭布袋体3の内部に収容された状態で清拭作業を行うことができるため、袋基材4が薄手のものであってもクッション材2に存在により手が適度の弾力性を感じつつ確実に被対象物を清拭することができる。したがって、薄手の袋基材4を採用することができ、清拭用具1を安価に製造することができる。
【0032】
クッション材2をベースとして拭き取り動作を行うことができるため、袋基材4の単体で拭き取り動作を行う場合に比べて、クッション材2の面積分だけ、より広い範囲を確実に被対象物に押し付けて拭き取り動作を行うことができ、より効率的に清拭作業を行うことができる。クッション材2を屈曲させて、当該屈曲部分に係る拭布袋体4の表面側層4aを被対象部分に強く押し付けて擦るように清拭作業を行うこともでき、被対象物の表面にこびり付いた塵埃等に対しても、当該塵埃をこそぎ落として除去することもできる。
【0033】
拭布袋体3がクッション材2に対して交換可能に構成されていると、当該拭布袋体3を交換するだけで、新たな清拭機能を清拭用具1に与えて、当該機能を復活させることができる。したがって、多くの塵埃を取り込んで拭布袋体3の清拭機能が低下した場合にも、これを交換するだけで、新たな清拭機能を与えることができ、廃棄される部位が拭布袋体3のみとなるため、清拭用具1の全体が廃棄される従来形態に比べて、コスト負担の低減化および省資源化を図ることができる。清拭用具1の洗濯等の手間が不要となる利点もある。安価な拭布袋体3を購入し、これを交換するだけで、清拭機能を復活させることができるため、清拭用具1の全体を購入する場合に比べて、利用者のコスト負担が安価に済む点でも優れている。なお、この清拭用具1は、一個のクッション材2と、数枚(3〜5枚程度)の拭布袋体3とをセットとして販売され、また、数枚の交換用の拭布袋体3が別売される。したがって、使用者は、一旦、清拭用具1を購入した後は、安価な交換用の拭布袋体3を購入し、拭布袋体3を交換すれば、清拭用具1を使い続けることができる。
【0034】
熱融着繊維を含む裏面側層4bを有する不織布シートを袋基材4としていると、図4に示すように、必要箇所に対する熱溶着処理を施すだけで、拭布袋体3を作成することができる。したがって、縫製等により拭布袋体3を作成する場合に比べて、格段に作業効率良く、しかも低コストに拭布袋体3を作成することができる。
【0035】
下面部10の前方に連なってクッション材2の上面前方部分を覆う前方上面部11と、下面部10の後方に連なってクッション材2の上面後方部分を覆う後方上面部12との間がクッション材2に対する装着口15とされていると、両上面部11・12を前後に押し広げることにより、装着口15を開放状態にして、クッション材2の外表面に拭布袋体3を容易に被せ付けることができる。清拭用具1を使って拭き取り動作を行うときには、装着口15が確りと閉じられて、クッション材2が不用意に食み出すこともない。拭布袋体3が扁平な四角袋状に形成されており、クッション材2が扁平な四角ブロック状に形成されていると、クッション材2で裏打ち状に支持される拭布袋体3のコーナー部を使って、被対象物に対する拭き取り動作を行うことができる。特にテレビ画面やパソコンのディスプレイ画面などを清拭対象とする場合には、当該画面の四隅に溜まった埃等を拭布袋体3のコーナー部を使って、容易に拭き取ることができる。パソコンのキーボードの隙間に溜まった埃等も、当該コーナー部を使えば容易に拭き取ることができる。
【0036】
下面部10の表面に、凹筋16と凸筋17とで構成される凹凸構造18が形成されていると、例えば、拭布袋体3の短辺方向を拭き取り方向として、被対象物上で清拭用具1を動かして清拭作業を行ったとき、当該凹凸構造18により、被対象物上の塵埃をこそぎ落として、軽い力で以て簡単確実に塵埃を除去することができる。つまり、清拭用具1を使った清拭作業の効率性の向上を図ることができる点で優れている。
【0037】
図2に示すように、クッション材2が、弾力の異なる二種のクッション層2a・2bを重ね合わせてなるものであると、例えば、追従性が要求される被対象物の部分(例えば、テレビ画面の隅部等)に対しては、弾力の大きなクッション層2aで裏打ち状に支持された拭布袋体3の表面側層4aで以て、拭き取り作業を行って、清拭処理を行うことができる。
テレビ画面の盤面中央のような広い部分に対して清拭処理を行う場合には、弾力の小さなクッション層2bで裏打ち状に支持された拭布袋体3の表面側層4aで持って拭き取り動作を行えば、被対象物に対向する側のクッション層2bの変形を最小限化して、クッション材2の全面が拭布袋体3を介して被対象物に均一に接する状態で拭き取り動作を行うことができる。つまり、弾力の小さなクッション層2bの側を被対象物に向けて拭き取り動作を行えば、被対象物に接する拭布袋体3の表面側層4aに略均一な力を加えることができるので、広い部分に対して効率的に拭き取り動作を行うことができる。
【0038】
(第2実施形態) 図5に、本発明の第2実施形態に係る清拭用具を示す。そこでは、クッション材2の表裏面に、多数本の凹筋20と凸筋21とで構成される凹凸構造22が形成されている点が、先の第1実施形態と相違する。これら凹筋20と凸筋21とは、クッション材2の長辺方向に走るように形成されている。それ以外の点は、第1実施形態と同様であるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
これによれば、当該凹凸構造22により、被対象物上の塵埃をこそぎ落として、軽い力で以て簡単確実に塵埃を除去することができる。さらに、拭き取り時には凹筋20内に拭布袋体3が侵入することにより、被対象物と拭布袋体3の表面層側4aとの間に空隙ができる。この空隙に塵埃を保持することができるので、拭き取った粉塵が被対象物に再付着する不具合もない。
【0039】
(第3実施形態) 図6に、本発明の第3実施形態に係る清拭用具を示す。そこでは、前方上面部11および後方上面部12と下面部10との熱シール箇所7が、拭布袋体3の左右端縁に沿って間欠的に設けられている点が、先の第1実施形態と相違する。一列に並ぶ熱シール箇所7の整列方向の総長さ寸法は、拭布袋体3の左端縁あるいは右端縁の長さ寸法の50%未満に設定されている。それ以外の点は、第1実施形態と同様であるので、同一部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0040】
熱シール処理を施すと、表面側層4aに含まれる極細繊維が溶融することから、極細繊維に由来する清拭機能が低下する。したがって、先の第1実施形態のように帯状の熱シール箇所7を設けると、該熱シール箇所7の長さ方向に清拭用具1を動かした場合に、被対象物上に筋状の拭き取り残しの生じるおそれがある。これに対し本実施形態のように、熱シール箇所7を間欠的に設けると、前方上面部11および後方上面部12と下面部10とを確りと接着できながら、清拭機能の低下を最小限に抑えることができる。
また、熱シール処理を施した箇所では、表面の繊維が溶融して硬化するため、清拭作業の際に熱シール箇所7で被対象物を擦ると、該被対象物の表面を傷付けるおそれがある。本実施形態のように、熱シール箇所7が間欠的に設けてあると、これを帯状とする場合に比べて、熱シール箇所7が被対象物に接する機会を少なくできるので、被対象物が傷付くおそれを低減化できる。
【0041】
また、本実施形態に係る熱シール箇所7は、拭布袋体3の左右端縁との間に一定幅を置いて設けられている。これにより、拭布袋体3の左右端部には、熱シール処理に起因する清拭機能の低下が生じず、拭布袋体3の左右端部に拭布袋体3の中央部と同程度の清拭機能を付与できる。かかる拭布袋体3の左右端部は、狭い場所、例えば、テレビ画面等の四隅やパソコンのキーボードの隙間に溜まった埃等を拭き取るのに好適である。
【0042】
(第4実施形態) 図7に、本発明の第4実施形態に係る清拭用具を示す。そこでは、クッション材2に対して複数(図示では3枚)の拭布袋体3が層状に被せ付けられている。これによれば、最外層の拭布袋体3の清拭機能が低下した場合には、この拭布袋体3のみを取り外すことにより、新たに露出する未使用の拭布袋体3を、塵埃の拭き取りに供することができる。つまり、クッション材2に対して拭布袋体3を1枚しか装着できない場合は、拭布袋体3の清拭機能が低下する毎に、これを取り外して新規の拭布袋体3を被せ付けなければならないが、本実施形態では、最外層の拭布袋体3を取り外すだけで、清拭機能を復活させることができる。すなわち、清拭用具1の使い勝手が向上する。
【0043】
本実施形態に係る清拭用具1によれば、新たに拭布袋体3を装着する必要はないことから、先の第1実施形態と比べて拭布袋体3の交換作業回数を削減でき、これによっても清拭用具1の使い勝手が向上する。更に、拭布袋体3を1枚しか装着しない場合のように、未使用の拭布袋体3を紛失するおそれもない。
【0044】
図8(a)〜(d)に、本発明に係る清拭用具1の拭布袋体3の変形例を示す。図8(a)・(b)では、前方上面部11により拭布袋体3の上面の全体が覆われており、装着口15は、上面の左右一方の側縁の近傍に配されている。(a)では前方上面部11の上面に後方上面部12が重なり、(b)では後方上面部12の上面に前方上面部11が重なっている。図8(c)では、前方上面部11を更に左右方向に伸ばして、拭布袋体3の左右一方の側面に、装着口15が設けられている。図8(d)では、左右一方の側面を開放して、これを装着口15としている。
【0045】
その他、本発明に係る清拭用具1は、ホワイトボード用イレイサーに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態に係る清拭用具の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る清拭用具の斜視図である。
【図4】清拭用具の拭布袋体の作製方法を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る清拭用具の縦断側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る清拭用具の平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る清拭用具の構成を模式的に示す図である。
【図8】(a)〜(d)は、拭布袋体の変形例を示す、縦断側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 清拭用具
2 クッション材
3 拭布袋体
4 袋基材
4a 表面側層
4b 裏面側層
7 熱シール箇所
15 装着口
16 凹溝
17 凸溝
18 凹凸構造
20 凹溝
21 凸溝
22 凹凸構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション材(2)と、該クッション材(2)を覆うように被せ付けられる扁平な拭布袋体(3)とからなり、人体手指でクッション材(2)ごと拭布袋体(3)を把持して、該拭布袋体(3)の表面で被対象物を拭くことで、該被対象物に付着の塵埃を拭き取ることができる清拭用具であって、
拭布袋体(3)は、極細繊維を含む表面側層(4a)と、熱融着繊維を含む裏面側層(4b)とで構成される不織布シートを袋基材(4)とするものであり、
拭布袋体(3)には、クッション材(2)に対して拭布袋体(3)を被せ付けるための装着口(15)が開設されており、該装着口(15)からクッション材(2)の外面に拭布袋体(3)を被せ付け、あるいはクッション材(2)から拭布袋体(3)を取り外すことで、清拭機能を発揮する拭布袋体(3)がクッション材(2)に対して交換可能に構成されていることを特徴とする清拭用具。
【請求項2】
袋基材(4)が、クッション材(2)の下面側を受ける下面部(10)と、下面部(10)の前方に連なってクッション材(2)の上面前方部分を覆う前方上面部(11)と、下面部(10)の後方に連なってクッション材(2)の上面後方部分を覆う後方上面部(12)とを有し、前方上面部(11)と後方上面部(12)との左右端部が、下面部(10)の左右端部に熱融着されて、扁平な四角袋状に形成されており、
前方上面部(11)と後方上面部(12)との間が、扁平な四角ブロック状のクッション材(2)に対する装着口(15)になっており、
下面部(10)の表面が被対象物に対する主拭き取り面とされている請求項1記載の清拭用具。
【請求項3】
拭布袋体(3)は、袋基材(4)を長方扁平の四角袋状に成形してなるものであり、
少なくとも下面部(10)の表面に、拭布袋体(3)の長さ方向に走る凹筋(16)と凸筋(17)とで構成される凹凸構造(18)が形成されている請求項2記載の清拭用具。
【請求項4】
クッション材(2)の外表面に、拭布袋体(3)の長さ方向に走る凹筋(20)と凸筋(21)とで構成される凹凸構造(22)が形成されている請求項3記載の清拭用具。
【請求項5】
前方上面部(11)および後方上面部(12)と下面部(10)との熱シール箇所(7)が、拭布袋体(3)の左右端縁に沿って間欠的に設けられている請求項2ないし4のいずれかに記載の清拭用具。
【請求項6】
前方上面部(11)および後方上面部(12)と下面部(10)との熱シール箇所(7)が、拭布袋体(3)の左右端縁との間に一定幅を置いて設けられている請求項2ないし5のいずれかに記載の清拭用具。
【請求項7】
クッション材(2)に対して複数の拭布袋体(3)が層状に被せ付けられている請求項2ないし6のいずれかに記載の清拭用具。
【請求項8】
クッション材(2)が、弾力の異なる二種のクッション層(2a・2b)を重ね合わせてなるものである請求項2ないし7のいずれかに記載の清拭用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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