説明

清掃具及びその製造方法ならびに清掃具を用いた清掃方法

【課題】保管が容易で、洗浄成分を洗浄に有効に利用することができ、水を含ませるだけで他に洗剤や研磨剤等を用いる必要がなく、水垢や石けんかす、黒ずみ汚れに対して高い洗浄効果を有する清掃具を提供すること
【解決手段】不織布2の少なくとも表面上に、水に溶解してpH6.0未満を呈する固体洗浄成分4及びモース硬度4以下で平均粒子径が80μm以下の研磨剤5を水不溶性の樹脂系接着剤3により担持されていることを特徴とする清掃具1を提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は清掃具及びその製造方法ならびに清掃方法に関し、詳しくは、特に水垢や石けんかす、黒ずみ汚れに対し優れた洗浄効果を有する清掃具及びその製造方法ならびに清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、台所のシンク、洗面台のボウル、トイレの手洗いボウルなどの水周りの汚れを落とすために、研磨剤を付着させたスポンジが用いられている。(特許文献1)
【0003】
一方、最近では環境、安全性への配慮から、合成洗剤の代わりにクエン酸を用いた洗浄が注目されている。クエン酸は、安全性が高く、水溶液が酸性を呈すると共にキレート剤としての作用を持つため、クエン酸を粉状で洗剤として用いたり、洗剤中に配合されて台所、シンク周り等の洗浄に好適に用いられている。
【0004】
また特開平2003−225187には、液体が保持可能な基材シートに界面活性剤と酢酸、クエン酸等の酸性剤を含む水性洗浄剤が含浸されてなり、該基材シートの少なくとも一面が液透過性の繊維集合体からなり、該繊維集合体を構成する繊維にモース硬度が5以下の研磨粒子が保持固定されてなる清掃用シートについて開示されている。
【0005】
しかし、特開平2003−225187に記載された清掃用シートは、予め水や水溶性溶剤を含んであるため、清掃用シートの保管が困難であった。
【0006】
また、水性洗浄剤が単に含浸されているだけであるため、水を含ませて洗浄しようとした際に洗浄成分が流れ落ちてしまい、有効に洗浄成分を洗浄に利用することができないとともに、クエン酸等は潮解性であるため、空気中の水分を吸収して洗浄成分が流れ落ちてしまうといった問題点を有していた。また、モース硬度5の研磨剤は、ステンレスに使用した場合は、その表面を着付けてしまうといった問題点を有していた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−190469号公報
【特許文献2】特開2003−225187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって保管が容易で、洗浄成分を洗浄に有効に利用することができ、水を含ませるだけで他に洗剤や研磨剤等を用いる必要がなく、水垢や石けんかす、黒ずみ汚れに対して高い洗浄効果を有する清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために本発明の清掃具にあっては、不織布の少なくとも表面上に、水に溶解してpH6.0未満を呈する固体洗浄成分及びモース硬度4以下で平均粒子径が80μm以下の研磨剤を水不溶性の樹脂系接着剤により担持されている構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の清掃具は、固体洗浄成分及び研磨剤が樹脂系接着剤により不織布に固着されているため、固着段階で固体洗浄成分が溶解してしまうことがなく、固体洗浄成分及び研磨剤は樹脂系接着剤に覆われて担持されているため、清掃具の保存中に空気中の水分を固体洗浄成分が吸湿してしまい洗浄成分が流れ落ちてしまうことがない。
【0011】
そして、清掃具を用いて水をつけて洗浄対象物を擦ることにより、フェノール系接着剤表面が割れて研磨剤表面が露出され、研磨効果を発揮するとともに、クエン酸が水により溶解されて、水溶液はpH6.0未満の酸性を呈するため、洗浄効果を発揮することができるものである。したがって、他の洗浄剤等を用いることなく、水をつけて擦るだけで水垢、石けんかす、黒ずみ等の水周り汚れに対し高い洗浄力を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明にかかる清掃具の一実施の形態を示す図解図である。本発明にかかる清掃具1は、不織布2に樹脂系接着剤3を用いて固体洗浄成分4及び研磨剤5が固着されている。本発明に用いられる不織布2は、各種合成繊維から構成される不織布を用いることができる。合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、アクリル酸エステル等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができ、これらの内でも物理的な洗浄効果、湿潤度および固体洗浄成分4や研磨剤5を保持固定性が良好な点から好ましくはポリアミド、特にナイロンを50質量%以上含有する繊維を用いることが好ましい。
【0013】
不織布2に用いる繊維は洗浄・汚れの掻きこみ効果および水の含みやすさから1〜33デシテックス好ましくは11〜22デシテックスの繊維を用いることが好ましい。不織布2を構成する方法としては、従来公知の製造方法、例えばスパンボンド、ウォーターニードル、クロスウェブ、エアレイド、ウェットレイド等の方法により製造することができ、これらの方法で製造したものを張り合わせて用いることもできる。不織布2の目付けとしては100〜3000g/m好ましくは200〜2000g/mであることが、保水性、洗浄効果等の点で好ましい、
【0014】
本発明に用いられる水に溶解してpH6.0未満を呈する固体洗浄成分4は、常温で固体の有機酸、無機酸を用いることができ、具体的には氷酢酸、安息香酸、シュウ酸、乳酸、サリチル酸、マンデル酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸、グルコン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等の1種若しくは2種以上を混合して用いることができるが、扱いやすさ、コスト、環境への影響、水への溶解度等の点から、クエン酸が好ましい。
【0015】
固体洗浄成分4の不織布2への担持量は、2〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。これより多いと不織布2の劣化が著しくなり、耐久性、洗浄性が発揮できなくなる恐れがあるとともにpHが低くなりすぎ危険である。また、これより少ないと十分な効果が発揮されない場合がある。
【0016】
本発明の用いられる研磨剤5は、モース硬度1〜4好ましくは2〜3の研磨剤5を用いることが好ましい。固体洗浄成分4が酸性を呈するため、石けんかすや水垢を軟化して研磨するため必要以上のモース硬度を必要としない。モース硬度が5より大きい場合は洗浄対象物を傷つける恐れがあり、1未満では研磨効果が得られない場合がある。
【0017】
研磨剤5の具体例としては、酸化セリウム(モース硬度4)、水酸化アルミニウム(モース硬度3)、炭酸カルシウム(モース硬度3)、大理石(モース硬度3)、アルミニウム(モース硬度3)、アンチモン(モース硬度3)、銅(モース硬度3)、銀(モース硬度3)、ユリア樹脂(モース硬度3)、真珠(モース硬度2.5)、亜鉛(モース硬度2.5)、金(モース硬度2.5)、炭酸水素ナトリウム(モース硬度2)、石膏(モース硬度2)、雲母(モース硬度2)、マグネシウム(モース硬度2)、ナイロン(モース硬度2)、ポリカーボネート(モース硬度2)アクリル樹脂(モース硬度2)、くるみ(モース硬度2)、タルク(モース硬度1)の1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。これらの内でも、研磨性と洗浄対象物のキズつけ難さの点から水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
【0018】
研磨剤5の不織布2への担持量は、2〜50質量%、好ましくは5〜30質量%である。これより多いと研磨剤5の凝集が大きくなり対象物にキズをつけやすくなり、これより少ないと研磨剤5の効果が発揮されない。研磨剤5の粒径は 80μm以下、好ましくは4μmから20μm、である。80μmより大きいと、不織布2に加工されにくく、また均一な洗浄されにくくなり、4μmより小さいと研磨効果が十分に得られない。
【0019】
研磨剤5および固体洗浄成分4を不織布2に担時させる方法としては、従来公知の担持方法を用いることができるが、例えば、研磨剤5と固体洗浄成分4と樹脂系接着剤3を、トルエン等の有機溶剤に分散させた接着剤溶液に不織布2を浸漬して引き上げ、乾燥ないし接着剤を固化させて研磨剤5と固体洗浄成分4を担持させる方法により製造することができる。用いられる樹脂系接着剤3は、特に限定されないが、フェノール系接着剤、フェノール−アルデヒド系接着剤、ブチレート化尿素−アルデヒド系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤等を用いることができる。特にフェノール系接着剤を用いることが研磨剤5および固体洗浄成分4の保持、研磨効果および経済性の点で好ましい。
【0020】
上記方法で本発明の清掃具1を作成することにより、固体洗浄成分4が樹脂系接着剤3にコーティングされるように保持されるため、本発明の清掃具を使用前に研磨剤5または固体洗浄成分4が脱落してしまうことがない。また、クエン酸等の潮解性の固体洗浄成分4を用いた場合でも、清掃具の保存中に空気中の水分を固体洗浄成分4が吸湿してしまい洗浄成分が流れ落ちてしまうことがない。
【0021】
本発明の清掃具1を使用して洗浄する方法としては、まず本発明の清掃具1に水を含ませる。この状態では、研磨剤5および固体洗浄成分4は、樹脂系接着剤3にコーティングされて不織布2に保持されているため、水に洗浄成分が溶解してしまうことを防止できる。
【0022】
その状態で台所のシンク周り、洗面台のボウル、トイレの手洗いボウル等洗浄対象物を擦るように洗浄すると、不織布2と洗浄対象物表面との擦れや不織布2の変形により、固体洗浄成分4および研磨剤5をコーティングしている樹脂系接着剤3が壊れ固体洗浄成分4および研磨剤5が固形洗浄対象物表面に脱落する。脱落した固体洗浄成分4は水と接触することにより溶解し、溶解した水(水溶液)は酸性ないしは弱酸性を呈するため、水垢、黒ずみ、石けんかすを軟化させることができる。
【0023】
そして、研磨剤5および不織布2の研磨効果で軟化した水垢、黒ずみ、石けんかすを除去することにより洗浄対象表面を洗浄することができる。
【0024】
以上のように本発明の清掃具1は、水を含ませるだけで、他の洗浄剤を用いることない。さらに固体洗浄成分4と研磨剤5の相乗作用により洗浄対象物の表面を傷つけることなく洗浄することができる。
【実施例1】
【0025】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら製造例、実施例等に何ら限定されるものではない。
【0026】
単糸繊度22デシテックスのナイロン繊維を40質量%と、単糸繊度16デシテックスのナイロン繊維を40質量%と、単糸繊度17デシテックスのポリエステル繊維を20質量%の比率で配合して得られた繊維目付量460g/mの繊維集合体(ランダムウェブ)に、合成ゴム系接着剤をスプレー法にて、両面合わせて乾燥固形分132g/mを塗布した。続けて、浸漬法にてSBR樹脂を乾燥固形分508g/m塗布し、不織布2を作製した。次に、この不織布2に、樹脂系接着剤3であるフェノール樹脂と、研磨剤5である平均粒径11μmの水酸化アルミニウムと、固体洗浄成分4である平均粒径30μmのクエン酸とを固形比100/140/60となるように調整したスラリーを作製し、乾燥固形分が800g/mとなるように不織布2に付着させ厚み32mmの本発明の清掃具(本発明品1)を得た。
【実施例2】
【0027】
研磨剤5に平均粒径80μmの酸化アルミニウムを用いた。以外は実施例1と同様の方法で本発明の清掃具(本発明品2)を得た。
【0028】
比較例1
実施例1から研磨剤5を取り除き、樹脂系接着剤3中に平均粒径30μmのクエン酸のみを配合し比較品1として作製した。
【0029】
比較例2
実施例1からクエン酸を取り除き、樹脂系接着剤3中に研磨剤5である水酸化アルミニウムのみが配合し比較品2として作製した。
【0030】
比較例3
実施例1からクエン酸および研磨剤5を取り除き比較品2として作製した。
【0031】
本発明品1,2および比較品1〜3を用いて以下の方法で洗浄力および傷について下記
の基準で評価を行った。
【0032】
試験方法
汚染板:ステンレス製の台所シンク
汚れ:通常の使用環境下でに付着させた石けんかす、水垢、黒ずみ汚れ
洗浄試験:各々、同等に荷重をかけて汚染板の汚れを洗浄し、汚れの除去割合および傷のつき具合を目視において評価。
【0033】
洗浄力の評価(目視における汚れ除去割合)
8割以上除去・・・・・・・・○
5割程度除去・・・・・・・・△
3割以下除去・・・・・・・・×
【0034】
傷の評価(目視評価)
目立たない・・・・・・・・・・○
やや目立つ・・・・・・・・・・△
目立つ・・・・・・・・・・・・×
【0035】
【表1】

【0036】
以上の結果からわかるように、本発明にかかる清掃具1は、固体洗浄成分4であるクエン酸と、研磨剤5との相乗効果により、石けんかす汚れに対し非常に有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の清掃具は、石けんかす、水垢、黒ずみ等に対して優れた洗浄効果を有するので、台所のシンクや洗面台のボウル、トイレの手洗いボウルなどの水周りの洗浄に有利に利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる清掃具の一実施の形態を示す図解図である。
【符号の説明】
【0039】
1 清掃具
2 不織布
3 樹脂系接着剤
4 固体洗浄成分
5 研磨剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布の少なくとも表面上に、水に溶解してpH6.0未満を呈する固体洗浄成分及びモース硬度4以下で平均粒子径が80μm以下の研磨剤を水不溶性の樹脂系接着剤により担持されていることを特徴とする清掃具。
【請求項2】
不織布がナイロン繊維を50%以上含む目付け量200g/m〜2000g/mである請求項1項記載の清掃具。
【請求項3】
固体洗浄成分がクエン酸である請求項1項記載の清掃具。
【請求項4】
研磨剤が水酸化アルミニウムである請求項1項記載の清掃具。
【請求項5】
樹脂系接着剤がフェノール系接着剤である請求項1項記載の清掃具。
【請求項6】
不織布に、研磨剤及び洗浄成分を分散させた有機溶剤溶液にフェノール系接着剤を混合した溶液に浸漬したのち乾燥させることを特徴とする清掃具の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の清掃具に水を含ませ、洗浄対象を擦ることを特徴とする清掃方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−301926(P2008−301926A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150075(P2007−150075)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【出願人】(000163774)金井重要工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】