説明

清掃用シート

【課題】便器を清掃する際に好適に使用され、水中に投棄可能な清掃用シートであって、水中投棄前及び水中投棄後の各々において必要な機能を付与することが出来ると共に、当該機能を発揮させる際に特別な手間がかからず簡単に使用できる清掃用シートを提供する。
【解決手段】所定の機能を有する機能材1Aを備える機能層1と、機能層1の両面に積層され、水解性又は水溶性を有する中間シート2A、2Bを備える中間層2と、中間層2の両面に積層され、水解性又は水溶性の外層シート3A、3Bを備える外層3と、を備え、中間層2は、外層3よりも耐水性に優れ、当該清掃用シート10が水中に投棄されると中間層2及び外層3が分解又は溶解されて機能材1Aが所定の機能を発揮するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃時において、清掃箇所を拭き取るための清掃用シートが普及している。
このような清掃用シートとして、例えば、水解性シートと親水性フィルムとを積層させ、水分を浸み込ませても手を濡らすことなく、使用後にはそのまま水に流すことのできるトイレ清掃用シートが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
トイレ清掃においては、便器便座の外部を拭くには含浸される洗剤は低濃度の方がよく、便器内部を拭くには高濃度の方が好ましい。しかしながら、一般に、上記のような清掃用シートは、洗剤濃度のような機能を清掃時に変更することは難しい。
そこで、例えば、吸液性シートと、この吸液性シートに固定され内部に液が収納された液袋を具備し、液袋の一部を破ったときに液が流出する床清掃用シートが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−187010号公報
【特許文献2】特開2009−082300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2の床清掃用シートは、物理的に液袋を破らないと、液が流出しないので、液袋を破る作業が煩雑であるという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、特に、便器を清掃する際に好適に使用され、水中に投棄可能な清掃用シートであって、水中投棄前及び水中投棄後の各々において必要な機能を付与することが出来ると共に、当該機能を発揮させる際に特別な手間がかからず簡単に使用できる清掃用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る清掃用シートは、
所定の機能を有する機能材を備える機能層と、
前記機能層の両面に積層され、水解性又は水溶性を有する中間シートを備える中間層と、
前記中間層の両面に積層され、水解性又は水溶性の外層シートを備える外層と、を備え、
前記中間層は、前記外層よりも耐水性に優れ、
当該清掃用シートが水中に投棄されると前記外層及び前記中間層が分解又は溶解されて前記機能材が所定の機能を発揮するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用シートにおいて、
前記機能材は、乾燥状態では硬く、水中では軟化、分解、又は溶解する面状物体を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記面状物体が軟化、分解、又は溶解することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の清掃用シートにおいて、
前記機能材は、界面活性剤を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記界面活性剤が水中に溶けて壁面を洗浄することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の清掃用シートにおいて、
前記機能材は、発泡剤を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記発泡剤が発泡して水面の高さを上昇させ便器壁面の水と接する部分に付着した汚れを浮かせることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の清掃用シートにおいて、
前記機能材は、便器内の水よりも便器壁面との親和性の高い成分を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記成分が便器壁面に付着して当該壁面をコートすることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の清掃用シートにおいて、
前記機能材は、水に反応して変色する指示薬を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記指示薬が水に反応して変色することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の清掃用シートにおいて、
前記機能材は、水溶性マイクロカプセルに内包された香料を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記水溶性マイクロカプセルが溶けて内包された香料が水中に流出することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか一項に記載の清掃用シートにおいて、
前記機能材は、水中の悪臭成分を封じ込める包接化合物を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記包接化合物が水中の悪臭成分を封じ込めることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れか一項に記載の清掃用シートにおいて、
前記機能層と前記中間層との間、及び/又は前記中間層と前記外層との間に、水解性又は水溶性の遮水層を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所定の機能を有する機能材を備える機能層と、機能層の両面に積層され、水溶性を有する中間シートを備える中間層と、中間層の両面に積層され、水解性の外層シートを備える外層と、を備え、中間層は、外層よりも耐水性に優れ、当該清掃用シートが水中に投棄されると中間層が分解又は溶解されて機能材が所定の機能を発揮するように構成されている。
従って、中間層は外層よりも耐水性に優れるため、通常は、多少、水に濡れても機能層に影響を与えることなく、清掃用シートとして外層により汚れを拭くことができる。そして、清掃後は、当該清掃用シートが水中に投棄されると中間層が溶解されて機能材が所定の機能を発揮するので、水中投棄前及び水中投棄後の各々において必要な機能を付与することが出来ると共に、当該機能を発揮させる際に特別な手間がかからず簡単に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の清掃用シートの外観図である。
【図2】図1の清掃用シートの拡大断面図である。
【図3】第2実施形態の清掃用シートの拡大断面図である。
【図4】本発明の清掃用シートの変形例を示す図である。
【図5】本発明の清掃用シートの変形例を示す図であり、(a)は、複数の機能材が機能層内部で混在する様子を示し、(b)は、複数の機能材が別々に覆われている様子を示している。
【図6】本発明の清掃用シートの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して、本発明に係る清掃用シートについて、詳細に説明する。
なお、本発明の清掃用シートは、特に、便器や便座の内外の汚れを拭き取りための清掃用シートであり、使用後はそのまま水に投棄可能に構成されるものである。
また、使用方法としては、乾燥した状態(ドライ状態)で使用しても良いし、薬液や水等を含浸させた状態(ウエット状態)で使用しても良い。
【0018】
[第1実施形態]
図1、2に示すように、本実施形態の清掃用シート10は、所定の機能を有する機能材を備える機能層1と、機能層1の両面に積層され、水溶性又は水解性を有する中間シート2A、2Bを備える中間層2と、中間層2の両面に積層され、水溶性又は水解性の外層シート3A、3Bを備える外層3と、を備えて構成されている。
本実施形態においては、機能層1には、機能材として、乾燥状態では硬く、水中では軟化、分解、又は溶解する面状物体である剛性シート1Aが備えられている。
清掃用シート10は、内部に剛性シート1Aを備えることによって、硬く、清掃対象場所を擦る場合に力を加えても破れることがないようになっている。
【0019】
剛性シート1Aは、乾燥時と湿潤時(水中に投棄した際)とで性質が異なる物質により形成されている。具体的には、剛性シート1Aは、乾燥状態では、所定箇所を擦るのに必要な剛性を有する程度に硬く、水中に投棄した状態で、流せる程度に軟化、分解、又は溶解する物質により形成されており、例えば、板状やスポンジ状の寒天、ゼラチン、水解紙、水解性不織布、米粉等の粉末を固めたもの、等により形成されている。
この剛性シート1Aは、両面が一定の耐水性を備えた中間シート2A、2Bにより覆われており、そのため清掃用シート10が所定値未満の湿潤状態にあるときには、乾燥状態に保たれるようになっている。従って、剛性シート1Aは、乾燥状態が維持される限りは、一定の剛性を清掃用シート10に対して付与することが可能である。
なお、剛性シート1Aの剛性の度合いは任意に決定されるものであるが、折り曲げて立たせることができる程度の剛性を有することが好ましい。
また、この剛性シート1Aは、清掃用シート10が所定値以上の湿潤状態にあるときには性質が変化する。つまり、清掃用シート10を、例えばトイレ等に投棄した場合には水よって軟化、分解、又は溶解することとなる。
【0020】
中間シート2A、2Bは、一定の耐水性を有し、所定量以上の水分によって水溶又は水解する性質を有するフィルムであって、具体的には、例えば、PVA(polyvinyl alcohol)、PVAc(polyvinyl acetate)、ゼラチン等からなるフィルムや、オブラート等により形成されている。
この中間シート2A、2Bは、剛性シート1Aと、外層シート3A、3Bとの間に介在し、一定量以下の水分であれば、外層シート3A、3B側から剛性シート1Aに水分が浸透するのを防ぐ保護膜として機能している。つまり、中間シート2A、2Bは、外層シート3A、3Bよりも耐水性に優れるように構成されている。
ここで、「耐水性に優れる」とは、具体的には、中間シート2A、2Bと、外層シート3A、3Bとを同じ量の水に曝したときに、中間シート2A、2Bの方が溶解または分解するのが遅いことを意味する。又は、溶解または分解するのに必要な水量が、中間シート2A、2Bの方が、外層シート3A、3Bより多いことを意味する。
なお、中間シート2A、2Bは、水蒸気の透過を防止するため、ガスバリア性を有することが好ましい。
【0021】
外層シート3A、3Bは、例えば、スパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術により製造される水解性不織布であって、清掃シートの用途等に応じて選択された任意の繊維を任意の配合率で混合して製造される。
具体的には、外層シート3A、3Bは、繊維を主体として構成された水溶性又は水解性を有するシート材であり、例えば、PVA繊維のように繊維自体が溶解する素材の他、水中で繊維間の結合が解除されて細片化する素材等により構成される。水中で細片化する素材の例としては、例えば、水中で水素結合が弱まるパルプ繊維から構成されるシート材や、非水溶性繊維同士を水溶性錯体(例えば、ホウ酸とPVA、2価金属とCMC等)により架橋して構成されるシート材、非水溶性繊維同士を水溶性の繊維やバインダ(例えば、PVAやでんぷん類等)の混合により接着して構成されるシート材、等が挙げられる。
【0022】
上記の中間シート2A、2Bは、例えば、剛性シート1Aを内包した状態で両端部をセーラで折り畳み、水溶着又は熱融着により端部を閉じることで内部に水が入らないように密閉されている。
このように密閉された中間シート2A、2Bは、さらにその表面を外層シート3A、3Bによりそれぞれ覆われ、中間シート2A、2Bと外層シート3A、3Bとは、上下に積層された状態で少なくとも2箇所にて、ヒートシール、超音波接着、ホットメルト、エンボス、などの熱融着処理によって接着されている。
なお、外層シート3A、3Bをそれぞれ中間シート2A、2Bに止着していても良いが、外層シート3A、3Bの周端部同士を直接止着することとしても良い。
【0023】
次に、清掃用シート10の作用について説明する。
清掃用シート10は、その内部において、一定の耐水性を有する中間シート2A、2Bにより覆われているので、清掃用シート10をドライ状態で使用した場合であっても、ウエット状態で使用した場合であっても、剛性シート1Aの乾燥状態を維持しつつ清掃が行える。
このため、濡れ拭きをする際にも剛性シート1Aの剛性を利用して強く擦ったり、折り曲げた角で清掃箇所の細かい部分などを拭いたりすることができることとなる。
また、清掃用シート10を水中に投棄した際には、外層シート3A、3B、中間シート2A、2B、剛性シート1Aは何れも水に溶解する。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の清掃用シート10によれば、中間層2は外層3よりも耐水性に優れるため、通常は、多少、水に濡れても機能層1に影響を与えることなく、清掃用シート10として外層3により汚れを拭くことができる。そして、清掃後は、当該清掃用シート10が水中に投棄されると中間層2が溶解されて機能材が所定の機能を発揮するので、水中投棄前及び水中投棄後の各々において必要な機能を付与することが出来ると共に、当該機能を発揮させる際に特別な手間がかからず簡単に使用できる。
また、機能材として、剛性シート1Aを備えることにより、ドライ状態で使用する場合であってもウエット状態で使用する場合であっても、便器内部を清掃するのに使用に耐え得る強度を付与できることとなり、従って、便器外部から内部を清掃するのに、用具を持ち替える等の手間を省略でき、効率的に清掃することができる。
また、剛性シート1Aを備えることにより、擦る際に裏面に液汚れが染み出し難く、使用者の手が汚れづらいため、衛生的に清掃することができる。
【0025】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
図3に示すように、本実施形態の清掃用シート20は、機能層1と、中間シート2A、2Bを備える中間層2と、外層シート3A、3Bを備える外層3と、を備えて構成されている。
本実施形態においては、機能層1には、機能材として、剛性シート1A、界面活性剤1B、及び発泡剤1Cが備えられている。
清掃用シート20は、内部に剛性シート1Aを備えることによって、硬く、清掃対象場所を擦る場合に力を加えても破れることがないようになっている。また、清掃用シート20は、内部に界面活性剤1B、及び発泡剤1Cを備えることによって、清掃用シート20を水中に投棄した際に、発泡剤1Cが発泡するとともに界面活性剤1Bが水中に溶けて壁面を洗浄するようになっている。
【0027】
具体的に、図3に示すように、界面活性剤1B及び発泡剤1Cは、剛性シート1Aと中間シート2A、2Bとの間に介在するように備えられている。
界面活性剤1B及び発泡剤1Cは、剛性シート1Aと同様に中間シート2A、2Bにより覆われているため、清掃用シート10が所定値未満の湿潤状態にあるときには、乾燥状態に保たれるようになっている。
また、清掃用シート10を水中に投棄した際には、外層シート3A、3B、中間シート2A、2B、の溶解に伴って水中に溶け出すこととなる。
このため、界面活性剤1Bは、例えば、粉末、顆粒、シート状、シート含浸・内包型等の何れであっても利用可能である。
なお、界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミンオキシド等の双性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等のノニオン性界面活性剤等、が何れも適応可能である。
また、発泡剤1Cは、例えば、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、過炭酸ナトリウム等の過炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の塩素酸塩、及びアルカリ金属やアルカリ土類金属の超酸化物塩や過酸化物、等が利用可能であるが、特に、安定性の観点から炭酸塩、過炭酸塩が好ましい。
なお、発泡助剤として、例えば塩化アンモニウム、クエン酸等の炭酸よりも強い酸を含有させても良い。
また、発泡剤及び発泡助剤(例えば、炭酸ナトリウムと塩化アンモニウム等)を別々に中間層で包んでおき、水中に投棄時に水中で反応させるようにすることもできる。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。
清掃用シート20は、その内部に剛性シート1Aの他に界面活性剤1B及び発泡剤1Cが備えられている。よって、清掃用シート20を水中に投棄した際には、発泡剤1Cは水と反応して炭酸ガスを発生させる。このとき発泡によって便器内の水面が僅かに上昇し、便器壁面の水と接する部分に付着した汚れを浮かせるため、便器内の喫水線部の汚れを界面活性剤1Bにより除去することが可能となる。
【0029】
以上のように、本実施形態の清掃用シート20によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるのは勿論のこと、使用後に水に投棄すると、便器内の水面が僅かに上昇して便器壁面の水と接する部分に付着した汚れを浮かせ、その状態で洗剤が放出されるため、便器内の喫水線部の汚れも除去されることとなって、より衛生的且つ機能的に清掃を行うことができる。
【0030】
なお、上記第2実施形態においては、機能材として、剛性シート1A、界面活性剤1B、及び発泡剤1Cが備えられた構成について説明したが、例えば、剛性シート1A及び界面活性剤1Bだけを備えた構成であっても良い。その場合であっても、清掃用シート20が水中に投棄されると、界面活性剤1Bが水中に溶けて壁面を洗浄することとなる。
あるいは、機能材としては、界面活性剤1B及び発泡剤1Cだけ備えた構成であっても良い。その場合、清掃用シート20が水中に投棄されると、発泡剤1Cが発泡するとともに界面活性剤1Bが水中に溶けて壁面を洗浄することとなる。
【0031】
また、上記第1、第2実施形態においては、機能材として剛性シート1A、界面活性剤1B、及び発泡剤1Cを例示して説明したが、機能材の成分はこれに限定されるものではなく、図4に示すように、他の機能材1Xを更に含むこともできる。
図4は、機能層1に、機能材として、剛性シート1A、界面活性剤1B、発泡剤1C、及び他の機能材1Xを備えた清掃用シート30の例である。
他の機能材1Xとしては、具体的には、例えば、便器内の水よりも便器壁面との親和性の高い成分、水に反応して変色する指示薬、水溶性マイクロカプセルに内包された香料、シクロデキストリン等の包接化合物、酸とアルカリ(強酸と弱塩基の塩、弱酸と強塩基の塩など)等の互いに反応して発熱する2成分の物質、石灰、鉄粉、尿素、糖アルコール、硝酸アンモニウム等の水と反応して発熱又は吸熱する反応物質、等が挙げられる。
【0032】
例えば、機能材として、便器内の水よりも便器壁面との親和性の高い成分を含有させた場合、清掃用シート30を水中に投入した後は、当該成分は水面に浮き、最も汚れが付着し易い喫水線近辺をコートすることとなる。具体的には、油系で水と混ざり難い油性成分等が挙げられる。
また、機能材として、水に反応して変色する指示薬を含有させた場合、例えば清掃中に清掃用シート30が過度の汚水等に曝された際には、これに伴って清掃用シート30が変色することとなり、使用者は清掃用シート30を流すタイミングを知ることができる。
また、機能材として、水溶性マイクロカプセルに内包された香料を含有させた場合、清掃用シート30を水中に投入した後に、芳香することとなる。
また、機能材として、シクロデキストリン等の包接化合物を含有させた場合、清掃用シート30を水中に投入した後、水中の悪臭成分を封じ込めることとなる。
また、機能材として、酸とアルカリ等の互いに反応して発熱する2成分の物質を含有させた場合、清掃用シート30を水中に投入した後、中和熱が発生し、水中温度を変化させて汚れを落とし易くする。
また、機能材として、石灰、鉄粉、尿素、糖アルコール、硝酸アンモニウム等の水と反応して発熱又は吸熱する反応物質を含有させた場合、清掃用シート30を水中に投入した後、例えば、石灰や鉄粉であれば発熱し、例えば、尿素、糖アルコール、硝酸アンモニウムであれば吸熱して、水中温度を変化させて汚れを落とし易くする。
【0033】
即ち、清掃用シート30が多量の水に曝された際には、付与した機能が発現することとなる。従って、より効果的に清掃を行うことができる。
【0034】
なお、これらの機能材のうち何れを用いるかは適宜設定可能であり、何れか1つを選択して含有させても良いし、複数種類同時に含有させても良い。
また、上記の清掃用シート30の例では、機能層1に、機能材として、剛性シート1A、界面活性剤1B、発泡剤1C、及び他の機能材1Xが備えられた構成について説明したが、剛性シート1A、界面活性剤1B、及び発泡剤1Cの機能材が介在することなく、他の機能材1Xのうち、少なくとも一つが含まれる構成であってもよい。
【0035】
また、上記第1、第2実施形態においては、機能層1の構成として、剛性シート1Aと中間シート2A、2Bとの間に、界面活性剤1B及び発泡剤1Cが介在することとして説明したが、図5(a)に示すように、剛性シート1Aと界面活性剤1Bと発泡剤1Cとが、中間シート2A、2Bの内部で混在するように構成しても良い。
また、図5(b)に示すように、剛性シート1Aと、界面活性剤1Bと、発泡剤1Cと、を別々に中間シート2A、2Bで覆うように構成することとしても良い。
【0036】
また、上記第1、第2実施形態においては、清掃用シートは、機能層1、中間層2、及び外層3から構成されることとして説明したが、例えば、図6(a)に示すように、中間シート2Aと外層シート3Aとの間、及び中間シート2Bと外層シート3Bとの間に、それぞれ、水解性又は水溶性を有し、水分の浸入を遮断する遮水層4を設けることとしても良い。
この遮水層4は、例えば、多量の水が存在する場合にのみ水分を透過させる貫通孔の形成されたフィルムやパルプ、自身が吸湿して内部への湿気の流入を阻止し、吸水量の臨界点に達した時点で内部に水が流入するセルロース系の不織布、積織ウェブ、SAPシート等で構成することができる。
なお、この遮水層4は、図6(b)に示すように、剛性シート1Aと中間シート2A、2Bとの間に設けることとしても良い。
また、図示は省略するが、中間シート2Aと外層シート3Aとの間、中間シート2Bと外層シート3Bとの間、及び剛性シート1Aと中間シート2A、2Bとの間に、遮水層4を設けることとしても良い。
【0037】
また、上記第1、第2実施形態においては、外層シート3A、3Bの外面(表面及び裏面)は平坦なものであったが、外層シート3A、3Bの外面に凹部及び凸部を形成することとしても良い。
この場合、凸部により汚れ掻き取り効果が向上し、凹部により汚れ収容効果が向上するため、汚れ除去効果を向上させることができる。
【0038】
また、外層シート3A、3B(清掃用シートの表裏)が識別可能となるように着色することとしても良い。
【符号の説明】
【0039】
10、20、30 清掃用シート
1 機能層
1A 剛性シート(機能材)
1B 界面活性剤(機能材)
1C 発泡剤(機能材)
1X 他の機能材(機能材)
2 中間層
2A、2B 中間シート
3 外層
3A、3B 外層シート
4 遮水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機能を有する機能材を備える機能層と、
前記機能層の両面に積層され、水解性又は水溶性を有する中間シートを備える中間層と、
前記中間層の両面に積層され、水解性又は水溶性の外層シートを備える外層と、を備え、
前記中間層は、前記外層よりも耐水性に優れ、
当該清掃用シートが水中に投棄されると前記外層及び前記中間層が分解又は溶解されて前記機能材が所定の機能を発揮するように構成されていることを特徴とする清掃用シート。
【請求項2】
前記機能材は、乾燥状態では硬く、水中では軟化、分解、又は溶解する面状物体を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記面状物体が軟化、分解、又は溶解することを特徴とする請求項1に記載の清掃用シート。
【請求項3】
前記機能材は、界面活性剤を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記界面活性剤が水中に溶けて壁面を洗浄することを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃用シート。
【請求項4】
前記機能材は、発泡剤を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記発泡剤が発泡して水面の高さを上昇させ便器壁面の水と接する部分に付着した汚れを浮かせることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の清掃用シート。
【請求項5】
前記機能材は、便器内の水よりも便器壁面との親和性の高い成分を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記成分が便器壁面に付着して当該壁面をコートすることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の清掃用シート。
【請求項6】
前記機能材は、水に反応して変色する指示薬を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記指示薬が水に反応して変色することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の清掃用シート。
【請求項7】
前記機能材は、水溶性マイクロカプセルに内包された香料を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記水溶性マイクロカプセルが溶けて内包された香料が水中に流出することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の清掃用シート。
【請求項8】
前記機能材は、水中の悪臭成分を封じ込める包接化合物を含み、
当該清掃用シートが水中に投棄されると、前記包接化合物が水中の悪臭成分を封じ込めることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の清掃用シート。
【請求項9】
前記機能層と前記中間層との間、及び/又は前記中間層と前記外層との間に、水解性又は水溶性の遮水層を備えることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の清掃用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−30712(P2011−30712A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178892(P2009−178892)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】