説明

清掃用物品

【課題】清掃作業を効率良く衛生的に行うことができる清掃用物品を提供する。
【解決手段】水解性材料からなるシート状の物品本体10と、物品本体10の側縁に設けられた差込片2と、物品本体10に形成された差込部6とを備える清掃用物品1であり、差込片2が差込部6に挿入されると、物品本体10が筒状に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用物品に関し、より詳しくは、水洗トイレの便器などの清掃に好適な清掃用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレの便器などの清掃に用いられる清掃用物品として、例えば、特許文献1に開示された構成が知られている。この清掃用物品は、水解性不織布又は水溶性パルプ紙から構成される二層の間に水解性パルプを含む中間層を挟んで構成されたパッドからなり、洗浄剤組成物を含むことを特徴とするものである。
【0003】
このパッドは、清掃具本体の先端に設けられた挟持部に挟持して便器などの清掃を行うことができ、清掃終了後は清掃具本体の手元操作でパッドを取り外し、水洗トイレの場合にはそのまま水で流すことができる。
【特許文献1】特開2006−6456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の清掃用物品は、清掃具本体と共に使用する必要があることから、コスト高になるだけでなく、清掃具本体に対する取り付けや取り外しが煩雑であるという問題があった。
【0005】
また、清掃用物品自体は使い捨て可能であるのに対し、清掃具本体は継続して使用するものであることから、清掃中に清掃具本体に付着した汚れによって雑菌が繁殖し易くなり、衛生上の問題も有していた。
【0006】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであって、清掃作業を効率良く衛生的に行うことができる清掃用物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、水解性材料からなるシート状の物品本体と、前記物品本体の側縁に設けられた差込片と、前記物品本体に形成された差込部とを備え、 前記差込部への前記差込片の挿入により、前記物品本体が筒状に保持可能に構成された清掃用物品により達成される。
【0008】
この清掃用物品は、前記物品本体が複数の折罫により角筒状に折り曲げ可能とすることができる。この場合、前記差込部は、前記折罫に沿って切り込み状に形成されていることが好ましい。そして、前記物品本体が三角筒状に折り曲げ可能とされていることがより好ましい。
【0009】
また、前記差込片は、前記差込部に挿入された状態で、筒状の前記物品本体の内面を押圧するように構成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記差込片は、前記物品本体と折罫を介さずに連接されていることが好ましい。
【0011】
また、前記差込部の長手方向長さの、前記差込片の先端部長さに対する比が、1以上で3より小さいことが好ましく、前記差込部の幅の、前記差込片の厚みに対する比が、0.9より大きく4.2より小さいことが好ましい。
【0012】
また、前記物品本体は、2層以上の多層抄き板紙からなり、1層あたりの付量が25〜130g/mとされ、且つ、離解性を阻害する添加剤を含まないものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、清掃中は適度な剛性および強度を有することで形状を安定に保持できるので清掃作業を効率良く衛生的に擦り洗いができ、かつ使用後、便器内の水溜り部などに廃棄することで、容易に水解し流通できる衛生的な清掃用物品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実態形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる清掃用物品の平面図である。
【0015】
図1に示すように、清掃用物品1は、水解性材料からなる矩形シート状の物品本体10を備えており、物品本体10における長手方向の側縁の一方側に差込片2が設けられて構成されている。物品本体10は、差込片2側から略等間隔に、長手方向に沿って延びる複数の折罫4a,4b,4cを有しており、差込片2から最も離れた折罫4cに沿って差込部6が形成されている。差込部6は、差込片2に対応する高さ位置に切り込み状に形成されており、折罫4cは、差込部6により分断されている。差込片2は、物品本体10と折罫を介さずに一体的に連接されている。
【0016】
物品本体10の水解性材料としては、不織布、紙、フィルムやこれらの積層体を例示することができ、乾燥時において剛性および強度に優れるものが好ましい。水解性材料が紙の場合には、パルプを水解性バインダーで2層以上の多層に抄紙する際に、サイズ剤(水の浸透を阻害するもの)、紙力増強剤(繊維間の結合を強くするもの)などの離解性を阻害する材料を添加することなく、1層あたりの付量が25〜130g/mとなるように調整して得られる板紙であることが好ましい。このような材料からなる清掃用物品1は、乾燥時(使用時)には良好な剛性が得られる一方、水中では各層が速やかに分離して離解し、かつ一定水流によってシート状から繊維状に崩壊することで廃棄が容易である。例えば、本物品1で便器内を清掃後、便器内の水溜り部などに廃棄して水で流すことができる。
【0017】
物品本体10は、水解が容易すぎると、清掃中すぐに剛性および強度が低下して形状を安定に保持できず、擦り洗いする際に力が込め難くなるため使用感が低下する。一方、水解がし難いと剛性および強度が低下せず流通性が劣るため廃棄時に便器内や配水管に詰まりやすくなる。したがって、物品本体10の水解性を表す水解指数は、5以上14以下が好ましく、6以上12以下がより好ましく、7以上11以下が更に好ましい。ここで、水解指数とは、以下のパイプ法で求めた値である。
【0018】
まず、物品本体10と同じ材料および厚みからなる試験片を5×5cmの大きさにカットし、直径が約70mmの1000mLメスシリンダーに約400mL収容した蒸留水に投入する。そして、このメスシリンダーを約1秒で上下逆にして、更に約1秒で元に戻し、この一連の動作を「水解指数1」とする。これを繰り返し行い、試験片が均一に分解するまでの水解指数をカウントする。物品本体10の水解指数の調整は、例えば、物品本体10の目付け(厚み)の増減などで行うことができる。
【0019】
以上の構成を備える清掃用物品1は、未使用時においては、拡げた状態でコンパクトに保管することができる。一方、使用時は、物品本体10を折罫4a,4b,4cで順次折り曲げると共に、差込片2を内側に折り曲げて差込部6に挿入することにより、図2に端面図で示すように、清掃用物品1を三角筒状に保持することができる。そして、筒状にした清掃用物品1の一方側を把持し、他方端をトイレの便器内面などに押し当てて、汚れを擦り取る。このように清掃用物品1を筒状にすることで、手が便器に触れることなく便器を十分な力で擦ることができ、清掃作業を衛生的に効率良く行うことができる。物品本体10の他方端側には、切欠部を設けるなどして、筒状に折り曲げたときに角部やへら部が形成されるようにしてもよい。
【0020】
本実施形態の清掃用物品1は、差込部6が折罫4cに沿って切り込み状に形成されており、清掃用物品1を折罫4cで折り曲げたときに、差込部6が自然にスリット状に開口するので、差込片2を差込部6に容易に挿入することができる。差込部6の形成位置は、差込片2の挿入により物品本体10を筒状に保持できる限り、他の位置であってもよい。
【0021】
また、物品本体10の側縁に連接する差込片2の基端部には折罫が形成されていないので、折り曲げられた差込片2は、撓みの復元力によって筒状内面を押圧するように接触する。これにより、清掃用物品1は、清掃中に差込片2が差込部6から脱落するおそれがなく、筒状の状態が確実に保持される。使用時における清掃用物品1の形状は、必ずしも三角筒状である必要はなく、四角筒状やそれ以上の多角筒状としてもよいが、差込片2による筒状内面の押圧力を高めて物品本体10の筒形状を確実に保持する観点からは、差込片2の曲げ角度が最も大きい三角筒状とすることが好ましい。また、清掃用物品1に折罫を設けずに、清掃用物品1を多角筒状、円筒状、楕円筒状などに保持可能としても良く、この場合も差込部6に挿入された差込片2が、撓みにより筒状内面を押圧するように構成することができる。
【0022】
清掃終了後は、水洗トイレの場合は便器内に廃棄して水で流すことができ、衛生的である。便器内の水中に廃棄された清掃用物品1は、端部から水が浸透していくが、このとき、差込片2の先端部の方が、基端部よりも速く水が浸透し、強度が低下する。そのとき(先端部が水解し、基端部が水解していないとき)の、基端部の撓みの復元力による筒状内面に対する押圧力と、先端部の水解による強度の低下のバランスから差込片2が差込部6から自然に外れてシート状となり、フラッシュ時の水流によって容易に便器内から配水管へと流通することができる。この結果、清掃用物品1が便器内や配水管などに詰まるおそれがなく、容易且つ確実に廃棄することができる。また、前記のとおり、差込片2の先端部に比べて、基端部が水解しにくくするために、差込片2の基端部には折罫が設けられていないことが好ましい。
【0023】
差込部6におけるスリットの大きさは、挿入される差込片2の大きさや厚みとの関係で適宜設定すればよいが、差込片2が緩やかに挿入される場合には、清掃時に差込片2が差込部6から外れやすくなる一方、差込片2がきつく挿入される場合は、廃棄時に水中で差込部6から差込片2が外れにくくなる。後述する実験結果によれば、差込部6の長手方向長さc(スリットの長辺)の、差込片2の先端部長さaに対する比(c/a)は、1以上で3より小さいことが好ましく、差込部6の幅d(スリットの短辺)の、差込片2の厚みbに対する比(d/b)は、0.9より大きく4.2より小さいことが好ましい。また、清掃用物品1の厚みは、薄すぎると清掃時に十分な強度や剛性が得にくくなる一方、厚すぎると廃棄が困難になり易いため、0.4〜1.15mmが好ましい。
【0024】
また、筒状の物品本体10の内面に対する差込片2の押圧力は、上述したように、筒形状を確実に保持する観点からは大きいことが好ましいが、この押圧力が大きすぎると、廃棄時に水中で差込部6から差込片2が外れにくくなる。このような押圧力を適切に表現するパラメータとして、本発明者らは開角度を使用した。開角度は、繊維の防しわ性試験方法(JIS L1059−1985)記載のA法(針金法)に準拠して測定することができ、具体的には、物品本体10と同じ材料および厚みからなる試験片を5×5cmの大きさにカットした後、これを2つ折りにして一対のガラス板の間に挟み、500gfの荷重を5分間加えた後に除重する。そして、この試験片を静かにピンセットで挟み、図3に示すように、直ちに緊張した針金Bの上に折り目の部分を掛けて5分間放置した後、側面視における試験片Sの両端部の表面に沿った直線同士がなす角度を測定し、これを開角度α(°)とする。
【0025】
開角度α(°)は、小さすぎると差込片2による筒状内面の押圧力が弱くなり、物品本体10を筒状に保持するのが困難になり、一方、大きすぎると押圧力が強すぎて廃棄性(流通性)が悪化する。本発明者らの実験によれば、60<α<180が好ましく、70≦α≦145がより好ましく、80≦α≦110が更に好ましい。これらの開角度αは、例えば、差込片2の基端部の折罫を設けないなど、実施形態に応じて適宜調整可能である。
【0026】
また、清掃用物品1が紙材からなる場合、紙目の方向が筒状の長手方向と直交するように形成することが好ましい。清掃用物品1は、水中で紙目の方向に拡がろうとするため、廃棄時に差込片2が差込部6から外れ易くなり、便器内や配水管などへの詰まりをより確実に防止することができる。
【実施例】
【0027】
実施例および比較例に基づき、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明の内容は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3および比較例1〜3)
物品本体10の形状は、図1に示すように5.7×15cmの矩形状とし、長手方向の側縁に、先端部長さaが3.0cmで、挿入長さが0.7cmの矩形状の差込片2を設けた。また、差込部6は、切り込み状に形成して物品本体10の折り曲げ時にスリット状に開口する構成とし、差込部6の長手方向長さcを3.5cm、幅dを0.15cmとした。また、差込片2の厚みbは、清掃用物品1の厚みと同じ0.09cmとした。なお、厚みの測定には、Mitutoyo社製の「厚み測定器(No2050-08 SHOCK PROOF)」を使用し、長さの測定には、Mitutoyo社製の「ノギス(ABSOLUTE DIGIMATIC)」を使用した。
【0028】
物品本体10の水解性材料としては、100%パルプを抄紙する際に、離解性を阻害するサイズ剤等の添加剤を添加することなく、層間強度(TAPPI UM522)が0.51MPa、密度が0.59g/cm、一層あたりの付量が64g/mとなるように調整された、坪量が450g/mからなる7層抄きの板紙を使用した。この物品本体10の水解指数は10であった。
【0029】
物品本体10において、実施例1は差込片基端部に折罫を設けずに円柱状に保持し(開角度αは95(°))、実施例2は差込片基端部に折罫を設けずに四角筒状に保持し(開角度αは95(°))、実施例3は差込片基端部に折罫を設けて三角筒状に保持し(開角度αは65(°))、それぞれの場合において、清掃時の保形性および廃棄時の流通性を評価した。この評価結果を表1に示す。なお、いずれの場合も、差込部6に挿入された差込片2は、筒状内面に接触していた。
【0030】
【表1】

表1において、保形性の評価は4段階で行っており、差込部6に差込片2を挿入して物品本体10を筒状にした状態で、80cmの高さから自然落下させても開かない(物品本体10が筒形状に保たれる)場合を「◎」、80cmの高さから自然落下させると開くが10cmの高さでは開かない場合を「○」、10cmの高さから自然落下させると開く場合を「△」、落下前から物品本体10の筒形状を保持できない場合を「×」で評価した。
【0031】
また、流通性の評価は、同じく4段階で行っており、小林製薬(株)中央研究所に設置された試験用洗い落とし式便器(TOTO C14、水量12L)の水溜り部に、清掃用物品1を筒状のまま廃棄した後、フラッシュ(大)を繰り返し行い、清掃用物品1が便器から完全に流れ出るまでのフラッシュ(大)の回数が、1〜3の場合を「◎」、4〜6の場合を「○」、7〜9の場合を「△」、10以上の場合を「×」で評価した。
【0032】
清掃時の保形性および廃棄時の流通性は、上述したように清掃作業を衛生的に効率良く行うためにはいずれも必要となることから、総合評価においては、両者の評価結果のうち劣る方の評価(評価結果が同じ場合はその評価)を採用した。
【0033】
実施例1は、保形性がやや劣るものの流通性は良好であり、総合評価は「△」であった。実施例2及び3は、保形性および流通性のいずれも良好であり、総合評価は「○」であった。
【0034】
ついで、比較例1〜3について、同様の評価を行った。比較例1は、清掃用物品1の材料としてダンボール紙を用いたものであり、流通性がないために総合評価は「×」であった。比較例2及び3は、それぞれ物品本体10を三角筒状および四角筒状に折り曲げたものであるが、差込片2の基端部に折罫を形成して差込片2を曲がり易くしたことにより、差込部6に挿入した差込片2が筒状内面に接触しない状態となった(開角度α:50(°))。この結果、僅かな力で差込片2が差込部6から外れてしまい、総合評価は「×」であった。
(実施例4〜19)
次に、実施例7として図1に示す物品本体10(開角度α:80(°))を用い、実施例7の構成において、差込部6の長手方向長さcの、差込片2の先端部長さaに対する比(c/a)をパラメータとし、他は実施例7と同じ条件で同様の評価を行った(実施例4〜11)。この結果を表2に示す。表2から明らかなように、c/aの値は、1以上で3より小さいことが好ましく、1以上で2.7以下がより好ましく、1.1以上で1.7以下が更に好ましい。
【0035】
【表2】


次に、実施例7の構成において、差込部6の幅dの、差込片2の厚みbに対する比(d/b)をパラメータとし、他は実施例7と同じ条件で同様の評価を行った(実施例12〜19)。この結果を表3に示す。表3から明らかなように、d/bの値は、0.9より大きく4.2より小さいことが好ましく、1.0以上で4.1以下がより好ましく、1.2以上で4.0以下が更に好ましい。
【0036】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態にかかる清掃用物品の平面図である。
【図2】図1に示す清掃用物品を筒状としたときの端面図である。
【図3】パラメータの測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
1 清掃用物品
2 差込片
4a,4b,4c 折罫
6 差込部
10 物品本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水解性材料からなるシート状の物品本体と、
前記物品本体の側縁に設けられた差込片と、
前記物品本体に形成された差込部とを備え、
前記差込部への前記差込片の挿入により、前記物品本体が筒状に保持可能に構成された清掃用物品。
【請求項2】
前記物品本体は、複数の折罫により角筒状に折り曲げ可能とされており、
前記差込部は、前記折罫に沿って切り込み状に形成されている請求項1に記載の清掃用物品。
【請求項3】
前記物品本体は、三角筒状に折り曲げ可能とされている請求項2に記載の清掃用物品。
【請求項4】
前記差込片は、前記差込部に挿入された状態で、筒状の前記物品本体の内面を押圧するように構成されている請求項1から3のいずれかに記載の清掃用物品。
【請求項5】
前記差込片は、前記物品本体と折罫を介さずに連接されている請求項1から4のいずれかに記載の清掃用物品。
【請求項6】
前記差込部の長手方向長さの、前記差込片の先端部長さに対する比が、1以上で3より小さく、
前記差込部の幅の、前記差込片の厚みに対する比が、0.9より大きく4.2より小さい請求項1から5のいずれかに記載の清掃用物品。
【請求項7】
前記物品本体は、2層以上の多層抄き板紙からなり、1層あたりの付量が25〜130g/mとされ、且つ、離解性を阻害する添加剤を含まない請求項1から6のいずれかに記載の清掃用物品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−260337(P2007−260337A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92989(P2006−92989)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】