説明

清掃装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】被清掃対象物上の残留付着物を板状掻取り部材にて清掃する際、小型化を維持しながら、清掃性能を長期的に維持する。
【解決手段】装置筐体3と、この装置筐体3内に設けられ、開口部3aを介して被清掃対象物1に接して当該被清掃対象物1上の残留付着物を掻取る板状掻取り部材4と、板状掻取り部材4に付着した前記残留付着物を掻出す掻出し機構5とを備え、掻出し機構5は、両端の回転軸部6aに対し径方向に偏倚する回転腕部6bが含まれる駆動軸6と、前記回転腕部6bに設けられて装置筐体3の空間部3bのうち前記板状掻取り部材4から離間する方向に残留付着物を掻出す掻出し部材7と、この掻出し部材7の両端部に設けられ、可撓性シート部材にて構成され且つ少なくとも前記板状掻取り部材4の前記回転軸部6aに対応する領域にて板状掻取り部材4の残留付着物を駆動軸6の端部から中央に向かう方向に掻出す掻出し補助部材8とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被清掃対象物に付着しているトナーや紙粉等の残留付着物を清掃する清掃装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来における画像形成装置としては、転写材保持体上の残留トナーを清掃する清掃装置として、転写材保持体上の残留トナーをブレードにて掻取り、このブレードの近傍にトナー掻出し機構を設けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。このトナー掻き出し機構は、両端の回転軸部に対し径方向に偏倚する回転腕部を有する駆動軸と、この回転腕部に一端側を回転自在に支持された掻出し部材とを備え、駆動軸の回転によって掻出し部材を回転させることで、ブレードによって掻取られた残留トナーを後方へ掻出すようにしたものである。
また、トナーを再利用する画像形成装置にあっては、清掃装置と現像装置との間にトナー戻し搬送路を設け、このトナー戻し搬送路内にトナー掻出し機構を配置し、トナー戻し搬送路内のトナーの搬送性を確保するようにしたものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−268399号公報(実施の形態2、図12)
【特許文献2】特開2000−330440号公報(発明の実施の形態、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の技術的課題は、被清掃対象物上の残留付着物を板状掻取り部材にて清掃する際、小型化を維持しながら、清掃性能を長期的に維持する清掃装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1に係る発明は、移動可能な被清掃対象物上の残留付着物を除去する清掃装置であって、少なくとも上方の一部に開口部を有し且つ内部に空間部が形成されるように構成された装置筐体と、この装置筐体内に固定的に支持され、前記開口部を介して被清掃対象物に接して当該被清掃対象物上の残留付着物を掻取る板状掻取り部材と、この板状掻取り部材に付着した前記残留付着物を掻出す掻出し機構とを備え、掻出し機構は、両端の回転軸部に対し径方向に偏倚する回転腕部が含まれる駆動軸と、前記回転腕部に設けられて装置筐体の空間部のうち前記板状掻取り部材から離間する方向に残留付着物を掻出す掻出し部材と、この掻出し部材の両端部に設けられ、可撓性シート部材にて構成され且つ少なくとも前記板状掻取り部材の前記回転軸部に対応する領域にて板状掻取り部材の残留付着物を駆動軸の端部から中央に向かう方向に掻出す掻出し補助部材とを具備する清掃装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る清掃装置において、掻出し部材は、少なくとも板状掻取り部材側に可撓性部材を備え、この可撓性部材が板状掻取り部材の上方から下方に向かって当該板状掻取り部材上の残留付着物を掻出すような移動軌跡をもっている清掃装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る清掃装置において、掻出し補助部材は、少なくとも前記掻出し部材より板状掻取り部材両端部側に突出して下方に向かう折曲面部を備え、この折曲面部は、駆動軸の端部から中央に向かう方向にて板状掻取り部材側に進出する傾斜面を構成している清掃装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1に係る清掃装置において、装置筐体の空間部には、板状掻取り部材の長手方向に沿って設けられ且つ当該空間部に滞留する残留付着物を装置筐体外に送り出す搬送部材を設けている清掃装置である。
【0007】
請求項5に係る発明は、トナー像を保持するトナー像保持体と、トナー像保持体上の残留付着物を除去する清掃装置とを備え、清掃装置として請求項1に係る清掃装置を備えた画像形成装置である。
請求項6に係る発明は、トナー像を保持するトナー像保持体と、このトナー像保持体上のトナー像を転写材搬送体上の転写材に転写する転写材搬送体装置と、この転写材搬送体上の残留付着物を除去する清掃装置とを備え、清掃装置として請求項1に係る清掃装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、小型化を維持しながら、板状掻取り部材両端部での残留付着物の滞留を有効に防いで清掃性能を長期的に維持すると共に装置筐体からの残留付着物の漏れ発生を抑制できる清掃装置を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、板状掻取り部材から掻取った残留付着物を後方へ掻出すことが容易になる。
請求項3に係る発明によれば、板状掻取り部材の両端部から掻取った残留付着物を有効に装置筐体内の空間部の内寄りに掻出すことができるようになる。
請求項4に係る発明によれば、清掃装置内の空間部への残留付着物の滞留量を相対的に増やすことが可能になり、清掃装置の寿命を長くすることができる。
請求項5に係る発明によれば、小型化を維持しながら、板状掻取り部材両端部での残留付着物の滞留を有効に防いで清掃性能を長期的に維持すると共に装置筐体からの残留付着物の漏れ発生を抑制できる清掃装置を用いた画像形成装置を提供できる。
請求項6に係る発明によれば、小型化を維持しながら、板状掻取り部材両端部での残留付着物の滞留を有効に防いで清掃性能を長期的に維持すると共に装置筐体からの残留付着物の漏れ発生を抑制できる清掃装置を用いた転写材搬送体を使用した画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
先ず、本発明が適用される実施の形態モデルの概要について説明する。
◎実施の形態モデルの概要
図1(a)(b)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る清掃装置の概要を示す。同図において、清掃装置2は、被清掃対象物1の下方に配置され、被清掃対象物1自体の移動によってその表面に付着している残留付着物を清掃するようになっている。
被清掃対象物1としては、例えばトナー像を保持するトナー像保持体であってもよいし、記録材としての転写材を保持搬送する転写材搬送体であってもよい。また、清掃装置2が被清掃対象物1に対し移動するようになっていても差し支えなく、被清掃対象物1上の残留付着物を清掃する際に清掃装置2が被清掃対象物1に接触して清掃するようになっていてもよい。
【0010】
ここで、清掃装置2の代表的モデルの一つは、図1(a)(b)に示すように、移動可能な被清掃対象物1上の残留付着物を除去する清掃装置2であって、少なくとも上方の一部に開口部3aを有し且つ内部に空間部3bが形成されるように構成された装置筐体3と、この装置筐体3内に固定的に支持され、前記開口部3aを介して被清掃対象物1に接して当該被清掃対象物1上の残留付着物を掻取る板状掻取り部材4と、この板状掻取り部材4に付着した前記残留付着物を掻出す掻出し機構5とを備え、掻出し機構5は、回転軸部6aに対し径方向に偏倚する回転腕部6bが含まれる駆動軸6と、前記回転腕部6bに設けられて装置筐体3の空間部3bのうち前記板状掻取り部材4から離間する方向に残留付着物を掻出す掻出し部材7と、この掻出し部材7の両端部に設けられ、可撓性シート部材にて構成され且つ少なくとも前記板状掻取り部材4の前記回転軸部6aに対応する領域にて板状掻取り部材4の残留付着物を駆動軸6の端部から中央に向かう方向に掻出す掻出し補助部材8とを具備することを特徴とする。
【0011】
被清掃対象物1の残留付着物とは、被清掃対象物1に残留する付着物であればよく、例えばトナーや紙粉等が含まれる。
また、駆動軸6の回転腕部6bが連続しているかどうかは特に限定されず、例えば、回転腕部6bが分断されていても、掻出し部材7を介して駆動軸6が回転できるようになっていればよい。
更に、掻出し部材7は、残留付着物を掻き出す観点からすれば、剛性部材で構成されることが好ましいが、例えば板状掻取り部材4側に可撓性部材を備えるようにして、板状掻取り部材4に滞留した残留付着物を掻き出すようにしても差し支えない。更に、板状掻取り部材4から掻出した残留付着物を装置筐体3の空間部3bに効果的に搬送する観点からすれば、下方に突起部を備えることが好ましく、掻出し部材7の回転に伴って残留付着物を後方に搬送するようにすればよい。そして、板状掻取り部材4上の残留付着物を効果的に掻き出す観点からすれば、掻出し部材7が駆動軸6によって、板状掻取り部材4の上方から下方に向かって当該板状掻取り部材4上の残留付着物を掻き出すような移動軌跡をもっていることが好ましい。
【0012】
本実施の形態モデルの掻出し補助部材8は、少なくとも一部に残留付着物を板状掻取り部材4の駆動軸6の端部から中央に向かう方向に掻出すような部位を備えていればよく、例えば、少なくとも掻出し部材7より板状掻取り部材4両端部側に突出して下方に向かう折曲面部8aを備え、この折曲面部8aは、駆動軸6の端部から中央に向かう方向にて板状掻取り部材4側に進出する傾斜面を構成していることが好ましい。また、掻出し補助部材8の可撓性シート部材は、例えばPET(ポリエステル樹脂)シート等のようにある程度の剛性を備え、長期耐久性があるものがよく、PETシート以外にも例えばPC(ポリカーボネート樹脂)シート等が適用できる。更に、折曲面部8aの数量は特に限定せられず、複数備えるようにしてもよい。
【0013】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明をより詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は、本実施の形態における画像形成装置の概要を示す。
同図において、符号21は例えば矢印方向に回転するトナー像保持体としての感光体ドラムであり、この感光体ドラム21の周囲には、回転方向上流側から順に、感光体ドラム21を帯電するコロトロン等の帯電器22、帯電された感光体ドラム21に静電潜像を書き込むレーザ走査装置等の露光装置23(図2では露光装置からのレーザ光に符号を付している)、感光体ドラム21上の静電潜像を所定色のトナーにて可視像化する現像装置24、現像後のトナー像に対し転写前処理を施すコロトロン等の転写前処理器25、感光体ドラム21上のトナー像を転写材Pに転写させる転写材搬送体装置としての転写ベルト装置30、転写後の感光体ドラム21を清掃工程前に除電するコロトロン等の清掃前処理器26、感光体ドラム21上の残留トナー等を清掃するドラム清掃器27を順次配設するようにしたものである。
尚、符号28は感光体ドラム21上に濃度制御用のパッチ画像を形成する場合に当該パッチ画像の濃度を検出する濃度センサ、符号29は転写後の転写材Pを通過させ、転写材P上の未定着トナー像を定着する定着装置である。
【0014】
本実施の形態において、転写ベルト装置30は、例えば図示外の支持フレームに3つの張架ロール41(41a〜41c)を配設すると共に、これらの張架ロール41に転写材搬送体としての転写ベルト40を架け渡し、この転写ベルト40の下方に断面略三角形状の空間部を確保するようにした転写ベルトユニット31と、この転写ベルトユニット31の断面略三角形状の空間部に対応して配設され、転写ベルト40表面の残留付着物を清掃する清掃装置としての清掃ユニット32とを備えている。
【0015】
本実施の形態での転写ベルトユニット31は、転写ベルト40の感光体ドラム21に対向する裏面に転写ロール43を配設し、この転写ロール43に所定の転写バイアスを印加することで、感光体ドラム21上のトナー像を転写材Pに転写するようになっている。
また、転写ベルトユニット31の上方側に位置する一対の張架ロール41a,41bは、感光体ドラム21に対向する転写ベルト40の搬送面を規制する一方、これら一対の張架ロール41a,41bの下方側に位置する一つの張架ロール41cは、例えば張架ロール41bの略直下近傍位置に配置され、張架ロール41aとの間に転写ベルト40の緩やかな傾斜角の傾斜部40aを確保すると共に、この転写ベルト40の傾斜部40aが斜辺となる断面略三角形状の空間部を確保するようになっている。
ここで、転写ベルト40としては例えばゴム等の弾性状ベルトが用いられ、張架ロール41aが駆動ロール、張架ロール41bが従動ロール、張架ロール41cが張力付与ロールとして使用されており、本例では、転写ベルト40は、傾斜部40aを上方側から下方側へと移動するようになっている。尚、本例では、転写ベルト40が移動方向に直交する方向に蛇行しようとしても、その弾性作用により自動的に中立位置に補正されるため、蛇行矯正ロールは使用されていない。
【0016】
また、清掃ユニット32は、転写ベルトユニット31を下方側から覆う装置筐体51を有し、この装置筐体51は、転写ベルト40の傾斜部40aに面した部位に断面略三角形状の空間部を区画し、更に、転写ベルト40の張架ロール41b,41c間の急な傾斜角の傾斜部40bに対向する縦壁部51aを備え、転写ベルト40の傾斜部40aに対向した部位に遮蔽部52を設けると共に、この遮蔽部52の一部、本例では、転写ベルト40の傾斜部40aの下方寄り部分に対応して開口部53を開設したものである。尚、装置筐体51の開口内縁には転写ベルト40に弾性接触する遮蔽部材54,55が夫々設けられ、転写ベルトユニット31との間で清掃ユニット32の気密性が確保されるようになっている。
【0017】
更に、本実施の形態において、清掃ユニット32は、装置筐体51の開口部53に対応した装置筐体51の底部に支持片57を介して板状掻取り部材56を取り付け、転写ベルト40の傾斜部40aの下方寄り部分、例えば張架ロール41cの近傍に、板状掻取り部材56の先端が転写ベルト40の移動方向に沿って接触するようになっている。そして、転写ベルトユニット31が清掃ユニット32に装着された際に転写ベルト40に接触して、転写ベルト40の移動に伴って当該転写ベルト40上の残留付着物を清掃するようになっている。
【0018】
ここで、本実施の形態における転写ベルト装置30の取り付け構造について説明する。図3は、転写ベルト装置30の外観を示す斜視図であり、清掃ユニット32上に転写ベルトユニット31が装着されたものとなっている。転写ベルト40の幅方向両端側には、転写ベルトユニット31から突出形成された支持片44,45が設けられ、また、駆動ロールである張架ロール41aの両端には、回転支持軸(回転支点)46を突出形成するようにしたものとなっている。そして、この回転支持軸46から、転写ベルト装置30の側面に設けたギア列47を介して清掃ユニット32への駆動力を伝達するようになっている。尚、図中符号48は、張架ロール41aを駆動する駆動モータであり、符号49は、転写ベルト40上を搬送された転写材を剥離する剥離部材であり、多針電極によって転写ベルト40上の転写材に対し剥離電界を印加できるようになっている。また、符号78は、支持片45と一体的に構成される転写支持片であり、この転写支持片78には転写ロール43に電気的に接続される電極が設けられており、上述の支持片45には、転写ベルト装置30内の電源のための2個の電極が設けられている。
【0019】
転写ベルトユニット31は、例えば図4に示すように、支持フレーム42の軸方向両端側に支持片44,45(図では片側のみ示す)を突出形成し、清掃ユニット32側に設けられた後述する受部74,75に嵌め込まれるようになっている。また、支持フレーム42に凹部42aを設け、この凹部42aに転写ロール43(図2参照)を装着できるようになっている。
【0020】
一方、清掃ユニット32は、図5に示すように、装置筐体51に転写ベルトユニット31側の支持片44,45が嵌め込まれる受部74,75と、転写ベルトユニット31の回転支持軸46が回転支持される軸受部76を設け、更に、図示外の転写ロール43が装着される転写受部77が設けられ、この転写受部77の外方には、上述したごとく、転写ベルトユニット31の支持片45と同様の突出形成された転写支持片78が設けられている。そして、装置筐体51の内部には、転写ベルト40上の残留付着物を掻き取るための例えばゴム材料からなる板状掻取り部材56が、装置筐体51の幅方向に亘って装置筐体51内に固定的に支持されるように取り付けられている。また、この板状掻取り部材56の近傍には、板状掻取り部材56によって転写ベルト40から掻取られた残留付着物を後方の空間部に掻出す掻出し機構60が設けられている。
【0021】
本実施の形態における掻出し機構60は、図6(a)(b)に示すように、回転軸部63aに対し径方向に偏倚する回転腕部63bが含まれる駆動軸63と、合成樹脂等からなる剛性の掻出し部材61とこの掻出し部材61の両端側で掻出し部材61に一部が固定支持された可撓性シート部材からなる掻出し補助部材62とで構成されている。そして、掻出し部材61の板状掻取り部材56寄りに設けられ、駆動軸63の回転腕部63bにて駆動軸63に回転自在に支持される受部61aを介して、駆動軸63と連結されるようになっている。尚、図6(b)は(a)の下方から見た断面図を示している。
【0022】
本実施の形態における駆動軸63は、装置筐体51の一端側に設けられた軸受け64から直進し、端部近傍で略直角に折れ曲がり、掻出し部材61の受部61aを通った後、装置筐体51の他端側で略直角に折れ曲がって、再度軸受け64と同一方向に装置筐体51を抜けるように延びる所謂クランク状の形状となっている。そのため、駆動軸63は、その両端部にて回転中心に沿った方向に延びる回転軸部63aと、回転軸部63aから径方向に偏倚する回転腕部63bとで構成されている。
そのため、図示外の駆動手段によって駆動軸63が回転すると、回転腕部63bは回転中心の周囲を回転する回転軌跡を採るようになり、掻出し部材61は、図6(b)の状態で反時計回りに板状掻取り部材56に対し上方から下方に向かって移動するようになる。そして、この駆動軸63の回転によって、掻出し部材61は受部61a側が回転腕部63bの回転に伴った回転軌跡を採ると共に、受部61aと反対側の自由端側では楕円軌跡を採るようになる。
【0023】
ここで、掻出し部材61について詳述する。掻出し部材61は、軽量化や回転時の抵抗を抑え、残留付着物の掻出し動作を良好にするために、部材を貫通する適宜数の孔61bが開けられ、下方面側には、掻出し部材61が楕円軌跡を行う際に、掻取られた残留付着物を奥側に有効に搬送するための複数の突起部61cが設けられている。また、掻出し部材61の板状掻取り部材56側には、ポリエステル樹脂シート等からなる先端掻取り部材61dが設けられ、掻出し部材61の回転軌跡に沿ってその一端側が板状掻取り部材56をその上方から下方に向かってなぞるようになり、板状掻取り部材56に付着滞留した残留付着物を掻出すようになっている。尚、本実施の形態では、先端掻取り部材61dは板状掻取り部材56の装置筐体51に接しない範囲の幅方向に亘って設けられており、また図示外の適宜数の孔が設けられている。
【0024】
そして、掻出し部材61の両端部で、回転軸部63aに対応する位置には、ポリエステル樹脂等からなる可撓性シート部材で構成される掻出し補助部材62(図中斜線部にて示す)が取り付けられている。
本実施の形態における掻出し補助部材62は、図6及び清掃ユニット32内の部分拡大斜視図である図7に示すように、掻出し部材61の上面と略平行し且つ掻出し部材61から回転軸部63a側に突出する略平行四辺形形状の平面部62aと、この平面部62aの板状掻取り部材56と交差する方向の両端部に設けられ且つ平面部62aから下方に向かう折曲面部62bとを備えている。また、この二つの折曲面部62bは、共に、駆動軸63の端部から中央に向かう方向にて板状掻取り部材56側に進出する傾斜面となっており、駆動軸63に対し、所定の角度で設定されている。そのため、掻出し部材61の回転軌跡と共に、掻出し補助部材62も同様の回転軌跡を採るようになっている。
【0025】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動について説明する。例えば感光体ドラム21の画像領域と次の画像領域との間の非画像領域では、濃度制御用のパッチ画像が形成されたり、かぶりトナーが付着したりするため、これらが転写ベルト装置30の転写部位を通過すると、転写ロール43に転写バイアスが印加されていないとしても、パッチ画像やかぶりトナーなどが転写ベルト40に直接転移する虞がある。このような状況下において、転写ベルト40上のトナー等の残留付着物は清掃ユニット32にて清掃されるようになる。
【0026】
ここで、本実施の形態における清掃ユニット32の清掃動作について述べると、転写ベルト40上の残留付着物は傾斜部40aの上方側から下方側へと移動していき、転写ベルト40の傾斜部40aの下方寄り領域にて板状掻取り部材56によって掻き取られる。そして、板状掻取り部材56で掻取られた残留付着物は板状掻取り部材56に沿って下方側へ移動していき、掻出し部材61側に至る。
このとき、掻出し機構60の駆動軸63が外部からの駆動力によって回転することで、掻出し部材61の先端掻取り部材61dは板状掻取り部材56を上方から下方に向かってなでるように移動するようになり、板状掻取り部材56に滞留した残留付着物を後方に掻出すようになる。また、この掻出された残留付着物は、掻出し部材61の突起部61cによって、その楕円軌跡に沿って後方に掻出される。
【0027】
しかしながら、このような掻出し動作において、掻出し部材61によって掻出される残留付着物のうち、先端掻取り部材61dによって板状掻取り部材56から掻取られた残留付着物は、駆動軸63の回転軸部63aに対応する部位では滞留するようになる。これは、掻出し部材61の突起部61cがこの回転軸部63aに相当する部位には設けることができないため、先端掻取り部材61dによって掻取られた残留付着物が有効に後方に搬送されないことによる。そのため、この部位での残留付着物の滞留が進み、装置筐体51に取り付けられた軸受け64と駆動軸63との間に残留付着物が侵入して駆動軸63の回転動作を阻害したり、残留付着物が装置筐体51から溢れるようにもなる。
【0028】
このような不測の事態に対し、本実施の形態では、この部位に対応して掻出し補助部材62を設けることで、このような部位に滞留する残留付着物を後方へ掻出すようになっている。図8(a)〜(c)はその様子を示すもので、掻出し部材61が駆動軸63によって回転するときの代表的位置を夫々示している。
図8(a)では、掻出し部材61が回転腕部63bの略上死点に位置し、これから図の反時計回りに回転しようとしている状態を示している。このとき、掻出し補助部材62は、残留付着物から遠ざかっているため、掻出し補助部材62による残留付着物の掻出し効果は殆ど発揮されない。
また、図8(b)では、掻出し部材61が板状掻取り部材56側に最も進出した位置となっている。このとき、掻出し部材61の先端掻取り部材61dは、掻出し部材61の回転に伴って板状掻取り部材56から残留付着物を掻出すようになる。このとき、掻出し補助部材62も残留付着物を掻出せる位置に配置される。
更に、掻出し部材61が回転すると、図8(c)のように、回転腕部63bの略下死点の位置になると、掻出し部材61の先端掻取り部材61dは、板状掻取り部材56に沿って移動し、掻出し補助部材62もその折曲面部62bの移動によって有効に残留付着物を後方に掻出すようになる。尚、図中、二点鎖線は、板状掻取り部材56や支持片57の表面位置を示している。
【0029】
本実施の形態では、掻出し補助部材62がこのような回転軌跡を採ることで、回転軸部63aに対応した位置に滞留する残留付着物を有効に後方へ掻出すようになるが、更に、掻出し補助部材62が折曲面部62bを備えていることから、掻出し補助部材62によって掻出された残留付着物は、駆動軸63の端部から中央寄りに掻出されるようになり、空間部の内寄りに位置する掻出し部材61側に掻出される。そして、この掻出された残留付着物は掻出し部材61の楕円軌跡によって後方に搬送されるようになる。
【0030】
図9(a)〜(c)は掻出し補助部材62の回転軌跡によって、残留付着物が掻出される様子を模式的に示したもので、(a)は掻出し補助部材62の外観、(b)(c)は、掻出し補助部材62の回転軌跡によって残留付着物が掻出される方法を示したものとなっている。
今、(a)のように、両端側に折曲面部62bが設けられた掻出し補助部材62において、(b)のように、折曲面部62bが残留付着物の上流側に位置しており、この折曲面部62bが(c)の細線矢印のように移動した場合には、折曲面部62bの移動方向下流側にある残留付着物は、折曲面部62bの移動によって折曲面部62bの移動方向より内側に向かって残留付着物を掻出すようになる。このとき、折曲面部62bの移動による残留付着物の移動方向は、折曲面部62bの移動方向に対する設定角度、部材の硬さや移動速度等によって異なるが、図中白抜き矢印方向に掻出されるようになる。
そして、折曲面部62bのこのような動作が次々行われることで、残留付着物が有効に奥側に掻出されるようになる。
【0031】
本実施の形態では、掻出し補助部材62を掻出し部材61に対し、固定配置するようにしたが、これに限られず、掻出し補助部材62を、例えば掻出し部材61に対し弾性部材を介して固定するようにしてもよい。
また、掻出し補助部材62の二つの折曲面部62bは略同じ角度の傾斜面とするようにしたが、曲面状に形成されていてもよいし、互いに異なる角度に設定されるようにしても差し支えない。ただし、掻出し補助部材62にて回転軸部63aに対応した領域から掻出された残留付着物を内寄りに掻出すことができるような角度で設けられることは云うまでもない。
更に、本実施の形態では、掻出し補助部材62として折曲面部62bを二箇所備える態様を示したが、回転軸部63aに対応する領域での残留付着物が掻出される部位にて一方のみの折曲面部62bを備えるようにしてもよい。この場合、板状掻取り部材56側に折曲面部62bを備える方が好ましく、回転軸部63aに滞留した残留付着物を掻出すことが有効になされるようになる。
更にまた、本実施の形態では、掻出し部材61の両端部は回転軸部63aに対応した部位まで達するようにはなっていないが、例えば掻出し部材61の板状掻取り部材56から離れた部位(自由端側)で掻出し補助部材62より奥側にて、装置筐体51内壁に近いところまで広く設けるようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、掻出し部材61の突起部61cは直線状の突起としたが、例えば弧状に設けるようにしてもよく、掻出し部材61で掻出される残留付着物を装置筐体51内の空間部の所定の部位に集めるようにすることも可能になる。
そして、板状掻取り部材56によって掻取られた残留付着物が板状掻取り部材56に留まることなく、有効に板状掻取り部材56の下方側へ落下するときには、掻出し部材61に先端掻取り部材61dを設けなくてもよい。
【0032】
図10(a)(b)は、上述した実施の形態での掻出し補助部材62の変形例を示すもので、掻出し補助部材62の折曲面部62bが両端部で異なる角度のものとなっている。
(a)では、掻出し補助部材62の板状掻取り部材56に近い方の上流側の折曲面部62b1の角度は上述の実施の形態と同様に駆動軸63の中央寄りに進出する角度となっているが、下流側の折曲面部62b2の角度は駆動軸63と略平行となっている。このような角度の場合には、上流側の折曲面部62b1で掻出された残留付着物は下流側の折曲面部62b2で有効に遮蔽され、より内寄りに向かって掻出されるようになる。
また、(b)では、掻出し補助部材62を2箇所(62,62’)設けたもので、(a)の掻出し補助部材62を互いに対称的に対向配置させたものとなっている。この場合には、外側の掻出し補助部材62によって内寄りに掻出された残留付着物は、内側の掻出し補助部材62’側に移動し、この内側の掻出し補助部材62’の折曲面部62b1’,62b2’によって有効に内寄り奥側に掻出されるようになる。
【0033】
◎実施の形態2
本実施の形態に係る画像形成装置は実施の形態1と同様であるが、転写ベルト装置30内の清掃ユニット32の構成が異なる。そのため、ここでは、清掃ユニット32についてのみ説明する。
図11は、清掃ユニット32の概略を示すもので、装置筐体51内に、板状掻取り部材56が取り付けられ、板状掻取り部材56の近傍には、掻出し部材61が設けられている。本実施の形態の掻出し機構60は、クランク状に曲がった駆動軸63に掻出し部材61が回転可能に支持されたものとなっている。尚、図11では、掻出し部材61の孔部、先端掻取り部材、掻出し補助部材は省略しているが、これらが設けられていることは云うまでもない。
【0034】
そして、本実施の形態では、掻出し部材61の奥側に、撹拌搬送部材66が駆動軸63と略平行に設けられている。この撹拌搬送部材66は、回転可能な軸の周りに螺旋状の羽根を設けたもので、装置筐体51の一方側に開けられた貫通口67を介して貫通するように設けられており、掻出し部材61によって掻出された残留付着物を撹拌搬送部材66の回転によって貫通口67から装置筐体51外へ搬送するようになっている。尚、貫通口67の装置筐体51外には、残留付着物を収容可能な図示外の収容容器が設けられ、撹拌搬送部材66によって搬送される残留付着物を収容容器に収容するようになっている。そのため、装置筐体51内の残留付着物の見かけ上の収容量が大きくなり、長期に亘る収容がなされるようになる。
【0035】
◎実施の形態3
本実施の形態に係る画像形成装置は、実施の形態1と異なり清掃ユニット32と略同様の清掃装置が、転写材を搬送する転写ベルトではなく、トナー像を保持して搬送するトナー像保持体としての中間転写ベルトに対して設けられている。
図12は、本実施の形態における画像形成装置の概略を示すもので、トナー像を形成保持する感光体ドラム81と、この感光体ドラム81に対向して配置され、3本の張架ロール83〜85に架け渡されて循環搬送するトナー像保持体としての中間転写ベルト82とで構成されており、中間転写ベルト82に対し清掃装置87(32)が接触するように設けられている。尚、清掃装置87は少なくとも中間転写ベルト82の清掃時に接触するようになっていればよい。
【0036】
本実施の形態における中間転写ベルト82は、3本の張架ロール83〜85のうち、例えば張架ロール85に対向する位置に、この張架ロール85を対向ロールとする二次転写ロール86が設けられている。
このような構成の画像形成装置では、感光体ドラム81上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト82を挟んで感光体ドラム81に対向配置される一次転写ロール89によって中間転写ベルト82上に一次転写される。中間転写ベルト82上に転写されたトナー像は、二次転写ロール86によって転写材P上に二次転写される。尚、図では、感光体ドラム81の周囲に配置されてトナー像を形成する各要素、例えば現像器等は省略しており、また、転写材P上に転写されたトナー像を定着する定着器等も省略している。
【0037】
このような画像形成装置において、二次転写後に中間転写ベルト82上に残留する転写残トナーや、転写材Pのジャム等により中間転写ベルト82上に残留する残留トナーが生じるようになる。このような中間転写ベルト82上の残留付着物を清掃するために、清掃装置87が設けられている。
本実施の形態の清掃装置87は、実施の形態1の清掃ユニット32と略同様に構成されるため、ここではその説明を省略する。尚、図中符号88が板状掻取り部材である。
本実施の形態でも清掃装置87によって、中間転写ベルト82上の残留付着物の清掃が実施の形態1と同様になされるようになる。
【0038】
本実施の形態では、モノクロ用の画像形成装置を示したが、カラー用の画像形成装置としてもよいことは云うまでもない。
また、中間転写ベルト82に対して清掃装置87を用いる態様を示したが、例えば感光体ドラム81にこのような清掃装置を設けるようにしてもよく、ベルト状の感光体に用いるようにしてもよいことは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は本発明を適用する実施の形態モデルに係る清掃装置の概要を示す説明図であり、(b)は(a)を上方から見た図である。
【図2】実施の形態1に係る画像形成装置の詳細を示す説明図である。
【図3】実施の形態1の転写ベルト装置を示す説明図である。
【図4】転写ベルト装置の転写ベルトユニットを示す斜視図である。
【図5】転写ベルト装置の清掃ユニットを示す斜視図である。
【図6】(a)は清掃ユニット内の掻出し部材を示す説明図であり、(b)は(a)の断面図である。
【図7】清掃ユニットの部分拡大斜視図である。
【図8】(a)〜(c)は掻出し部材の回転による変移状態を示す説明図である。
【図9】(a)は掻出し補助部材の斜視図であり、(b)、(c)は残留付着物の掻出し方向を示す説明図である。
【図10】(a)(b)は実施の形態1の変形例を示す説明図である。
【図11】実施の形態2に係る画像形成装置に用いられる清掃ユニットの概要を示す説明図である。
【図12】実施の形態3に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1…被清掃対象物,2…清掃装置,3…装置筐体,3a…開口部,3b…空間部,4…板状掻取り部材,5…掻出し機構,6…駆動軸,6a…回転軸部,6b…回転腕部,7…掻出し部材,8…掻出し補助部材,8a…折曲面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な被清掃対象物上の残留付着物を除去する清掃装置であって、
少なくとも上方の一部に開口部を有し且つ内部に空間部が形成されるように構成された装置筐体と、
この装置筐体内に固定的に支持され、前記開口部を介して被清掃対象物に接して当該被清掃対象物上の残留付着物を掻取る板状掻取り部材と、
この板状掻取り部材に付着した前記残留付着物を掻出す掻出し機構とを備え、
掻出し機構は、
両端の回転軸部に対し径方向に偏倚する回転腕部が含まれる駆動軸と、
前記回転腕部に設けられて装置筐体の空間部のうち前記板状掻取り部材から離間する方向に残留付着物を掻出す掻出し部材と、
この掻出し部材の両端部に設けられ、可撓性シート部材にて構成され且つ少なくとも前記板状掻取り部材の前記回転軸部に対応する領域にて板状掻取り部材の残留付着物を駆動軸の端部から中央に向かう方向に掻出す掻出し補助部材とを具備することを特徴とする清掃装置。
【請求項2】
請求項1記載の清掃装置において、
掻出し部材は、少なくとも板状掻取り部材側に可撓性部材を備え、
この可撓性部材が板状掻取り部材の上方から下方に向かって当該板状掻取り部材上の残留付着物を掻出すような移動軌跡をもっていることを特徴とする清掃装置。
【請求項3】
請求項1記載の清掃装置において、
掻出し補助部材は、少なくとも前記掻出し部材より板状掻取り部材両端部側に突出して下方に向かう折曲面部を備え、
この折曲面部は、駆動軸の端部から中央に向かう方向にて板状掻取り部材側に進出する傾斜面を構成していることを特徴とする清掃装置。
【請求項4】
請求項1記載の清掃装置において、
前記装置筐体の空間部には、板状掻取り部材の長手方向に沿って設けられ且つ当該空間部に滞留する残留付着物を装置筐体外に送り出す搬送部材を設けていることを特徴とする清掃装置。
【請求項5】
トナー像を保持するトナー像保持体と、
トナー像保持体上の残留付着物を除去する請求項1記載の清掃装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
トナー像を保持するトナー像保持体と、
このトナー像保持体上のトナー像を転写材搬送体上の転写材に転写する転写材搬送体装置と、
この転写材搬送体上の残留付着物を除去する請求項1記載の清掃装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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