説明

減圧鋳型造型用の模型箱の真空源等への接続装置

【課題】減圧鋳型造型用の模型箱の中空室の減圧状態を急速に解除することが可能な模型箱の真空源等への接続装置を提供する。
【解決手段】チェック弁機構5に対して真空源6等を接続する装置において、弁座10に対して当接・分離可能に配設され、弁座10に当接された時に弁口13の外周を気密に包囲可能でありかつ真空源および圧縮空気源に開閉弁28,30をそれぞれ介して接続された包囲手段24と、包囲手段24内に装着され包囲手段24が弁座10に当接した時に2枚の磁性体17を吸着して弁口13を開放可能な電磁石25と、包囲手段24を弁座10に対して進退動させる駆動手段27と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減圧鋳型造型用の模型箱の真空源等への接続装置に係り、より詳しくは、内部に中空室を有するとともにこの中空室に貫通する小径孔を表面に多数穿設した減圧鋳型造型用の模型箱における前記中空室に対して、真空源および圧縮空気源を接続する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、減圧鋳型造型用鋳枠の内側を真空源に接続すべく、減圧鋳型造型用鋳枠の側面に装着されたチェック弁を提案し、特許出願している。このチェック弁は、減圧鋳型造型用鋳枠の側面部に、その鋳枠内外に連通するように形成された通気孔と、この通気孔と連通する弁口を有し、前記鋳枠の側面に固着された弁座と、この弁座の弁口を開閉するように設けられ前記鋳枠外方からの吸引作用によって前記弁口を開放するとともに前記鋳枠内部からの吸引作用によって前記弁口を閉鎖する弾性部材およびこの弾性部材の表面に装着された2枚の磁性体から成る弁体とを備えている(特許文献1)。
そして、このチェック弁を、内部に中空室を有するとともにこの中空室に貫通する小径孔を表面に多数穿設した減圧鋳型造型用の模型箱に適用したものも提案し、特許出願している(特許文献2)。
【特許文献1】特開昭54−133428号公報
【特許文献2】特開平11−320031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、減圧鋳型造型法においては、模型箱の表面に樹脂フィルムを吸着させ、樹脂フィルムを吸着した模型箱上に鋳枠を載せ、この鋳枠内に硅砂を充填したのち鋳枠および硅砂の上面を樹脂フィルムで被い、鋳枠内を吸引減圧して硅砂を固化させ、その後、固化した硅砂を内蔵する鋳枠を模型箱から分離して所望の鋳型を造型する。
【0004】
ところで、上記のように構成されたチェック弁では、模型箱外方からの負圧による吸引作用が働くと、弁体がくの字状に折り曲げって弁口を開放し、吸引作用がなくなると、弁体は元の状態に戻って弁口を閉鎖する。したがって、弁体に吸引作用が働かない場合、弁体をくの字状に折り曲げて弁口を開放する状態を維持することができず、そのため、硅砂が固化したのち樹脂フィルムの模型箱表面への吸着状態を解除して鋳枠を模型箱から分離する場合や、樹脂フィルムが不良のためこの樹脂フィルムを模型箱表面から分離する場合など、模型箱の中空室の減圧状態を急速に解除する必要がある場合でも、その中空室の減圧状態を急速に解除することができず、従来は、模型箱と樹脂フィルムとの隙間や、チェック弁自身からの空気の漏れを待って、中空室を大気圧に戻しその減圧状態を解除していた。そのため、減圧鋳型造型の生産性・効率が悪いなどの問題があった。

【0005】

本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、減圧鋳型造型用の模型箱の中空室の減圧状態を急速に解除することが可能な模型箱の真空源等への接続装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明における減圧鋳型造型用の模型箱の真空源等への接続装置は、内部に中空室を有するとともにこの中空室に貫通する小径孔を表面に多数穿設した減圧鋳型造型用の模型箱の側壁に前記中空室に連通するように形成された通気孔と、この通気孔と連通する弁口を有し、前記模型箱の側面に固着された弁座と、この弁座の弁口を開閉するように設けられ前記模型箱外方からの吸引作用によって前記弁口を開放するとともに前記中空室からの負圧による吸引作用によって前記弁口を閉鎖する弾性部材およびこの弾性部材の表面に装着された少なくとも2枚の磁性体から成る弁体と、を含むチェック弁機構にたいして、真空源および圧縮空気源を接続する装置であって、前記弁座に対して当接・分離可能に配設され、弁座に当接された時に前記弁口の外周を気密に包囲可能でありかつ真空源および圧縮空気源に開閉弁をそれぞれ介して接続された包囲手段と、この包囲手段内に装着され包囲手段が前記弁座に当接した時に前記2枚の磁性体を吸着して前記弁口を開放可能な電磁石と、前記包囲手段を前記弁座に対して進退動させる駆動手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
このように構成されたものは、開閉弁が閉じられて包囲手段と真空源の連通状態が解除され、模型箱外方からの負圧による吸引作用が働かず弁口の開放状態を維持することができないが、模型箱の中空室の減圧状態を急速に解除する必要がある場合、包囲手段を弁座に当接させるとともに包囲手段と真空源とを連通させた状態で、電磁石に電気を供給してチェック弁機構の弁体の磁性体を電磁石に吸着させ、これにより弁口の開放状態を維持し、続いて、包囲手段と真空源の連通状態を解除したのち、開閉弁を開いて包囲手段を圧縮空気源に連通させて包囲手段を介して模型箱の中空室に圧縮空気を供給する。この結果、模型箱の中空室の減圧状態は急速に解除されることになる。
【発明の効果】
【0008】
上記の説明から明らかなように本発明によれば、開閉弁が閉じられて包囲手段と真空源の連通状態が解除され、模型箱外方からの負圧による吸引作用が働かず、弁口の開放状態を維持することができないが、模型箱の中空室の減圧状態を急速に解除する必要がある場合、包囲手段を弁座に当接させた状態で、電磁石に電気を供給してチェック弁機構の弁体の磁性体を電磁石に吸着させ、これにより弁口の開放状態を維持することができるため、包囲手段を介して模型箱の中空室に圧縮空気を供給して、その中空室の減圧状態を急速にして適確に解除することができるなどの優れた実用的効果を奏する。
【発明の実施の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した減圧鋳型造型設備の実施例について図1〜図5に基づき詳細に説明する。図3に示すように、本減圧鋳型造型設備は、内部に中空室1を有するとともにこの中空室1に貫通する小径孔2を表面に多数穿設した減圧鋳型造型用の模型箱3と、前記中空室1に連通するようにして前記模型箱3の側壁に形成された通気孔4を開閉するチェック弁機構5と、このチェック弁機構5に対して真空源としての真空ポンプ6および圧縮空気源としてのエアコンプレッサ7を接続する接続手段8と、で構成してある。
【0010】
そして、前記チェック弁機構5においては、図1に示すように、前記通気孔4に、外側面に大径の凹陥部9を有する弁座10が取付け座11を介して取り付けてあり、前記凹陥部9には、中央部に所定幅のリム部12を挟んで対向する半円形状の2個の弁口13が形成してあって、凹陥部9の底部に相当するシート面が2個の弁口13の周囲部を囲繞するようになっている。さらに、前記凹陥部9のリム部12には例えばゴム等の弾性部材からなる円形板状の弁体14が装着してあり、弁体14の背面の中央部には溝状に陥没させることによってリム部12と対向する溝部15が形成してあって、弁体14はこの溝部15にて座金16を介してリム部12に装着してある。また、弁体14の背面部における溝部15を除く部位には鋼板等の2枚の磁性体17が焼付け貼着してある。
【0011】
また、前記接続手段8においては、図1および2に示すように、円筒状を成し、先端に貼着されたシール部材18を介して前記弁口13の外周を気密に包囲可能でありかつ前記真空ポンプ6に連通する第1配管孔19と前記エアコンプレッサ7に連通する第2配管孔20とを胴部にそれぞれ有する接続本体21と、この接続本体21が気密に環装された有底の円筒部22を左端部に有する支持部材23とで包囲手段24を構成してあり、さらに、前記支持部材23の円筒部22の底位置には電磁石25が装着してある。また、前記包囲手段24は、ブラケット26を介して駆動手段としての横向きエアシリンダ27のピントンロッドの先端に装着してある(図1参照)。そして、前記電磁石25の芯体の先端は、前記弁体14がくの字状に折れ曲がった時の前記2枚の磁性体17が密着可能な形状を成している。
【0012】
なお、図3に示すように、前記第1配管孔19は開閉弁28を介して前記真空ポンプ6に、また前記第2配管孔20は流量調整弁29、開閉弁30および減圧弁31を順に介して前記エアコンプレッサ7に接続してある。また、前記エアシリンダ27は2個の流量調整弁32および方向切換弁33を順に介して前記エアコンプレッサ7に接続してあり、しかも、前記ブラケット26にはガイドバー34を備えたガイド機構35が装着してあって、前記方向切換弁33の切換により前記エアシリンダ27が伸縮作動して前記包囲手段24は前記弁座10に当接・分離するようになっている。
【0013】
このように構成したものは、図4−Aに示すように、チェック弁機構5と包囲手段24とが分離した状態から、図4−Bに示すように、エアシリンダ27を伸長作動して包囲手段24を弁座10に当接し、チェック弁機構5と包囲手段24とを接続する。次いで、開閉弁28を開いて包囲手段24を真空ポンプ6に連通させ、チェック弁機構5の弁体14をくの字状に折り曲げて弁口13を開放し、この弁口13の開放により模型箱3の中空室1内を吸引減圧して模型箱1の表面に樹脂フィルムを吸着させる。そして、模型箱3の中空室1の減圧状態を急速に解除する必要がある場合、包囲手段24を弁座10に当接させた状態で、電磁石25に電気を供給してチェック弁機構5の弁体14の磁性体17を電磁石25の芯体に吸着させ、これにより弁口13の開放状態を維持し、続いて、開閉弁28を閉じて包囲手段24と真空ポンプ6の連通状態を解除し、その後、開閉弁30を開いて包囲手段24をエアコンプレッサ7に連通させ、包囲手段24を介して中空室1に圧縮空気を供給する。この結果、模型箱3の中空室1の減圧状態は急速に解除されることになる。
【0014】
なお、上記の実施例では、開閉弁28を閉じたのち開閉弁30を開いて包囲手段24を介して中空室1に圧縮空気を供給し、中空室1の減圧状態を急速に解除するようにしてあるが、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、接続本体21におけるエアコンプレッサ7に連通する第2配管孔20を省略し、かつ、第1配管孔19を方向切換弁36を介して真空ポンプ6に連通させて、中空室1の減圧状態を解除する場合には、方向切換弁36を切り換えて、包囲手段24内と真空ポンプ6とを遮断するとともに、方向切換弁36を介して包囲手段24内を大気中に連通させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した減圧鋳型造型設備の一実施例の主要部の縦断面図である。
【図2】図1における所要部(包囲手段24)の左側面図である。
【図3】本発明を適用した減圧鋳型造型設備の一実施例の模式図である。
【図4】図3に示す減圧鋳型造型設備の作動説明図である。
【図5】本発明を適用した減圧鋳型造型設備の他の実施例の模式図である。
【符号の説明】
【0016】
3 模型箱
5 チェック弁機構
6 真空ポンプ
7 エアコンプレッサ
8 接続手段
10 弁座
13 弁口
14 弁体
17 磁性体
21 接続本体
23 支持部材
24 包囲手段
25 電磁石
27 エアシリンダ
28;30 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空室を有するとともにこの中空室に貫通する小径孔を表面に多数穿設した減圧鋳型造型用の模型箱の側壁に前記中空室に連通するように形成された通気孔と、この通気孔と連通する弁口を有して前記模型箱の外側面に固着された弁座と、この弁座の弁口を開閉するように設けられ前記模型箱外方からの吸引作用によって前記弁口を開放するとともに前記中空室からの負圧による吸引作用によって前記弁口を閉鎖する弾性部材およびこの弾性部材の表面に装着された2枚の磁性体から成る弁体と、を含むチェック弁機構に対して、真空源および圧縮空気源を接続する装置であって、
前記弁座に当接・分離可能に配設され弁座に当接された時に前記弁口の外周を気密に包囲可能でありかつ真空源および圧縮空気源に開閉弁をそれぞれ介して接続された包囲手段と、
この包囲手段内に装着され包囲手段が前記弁座に当接した時に前記弁体の2枚の磁性体を吸着して前記弁口を開放可能な電磁石と、
前記包囲手段を前記弁座に対して進退動させる駆動手段と、
を含むことを特徴とする減圧鋳型造型用の模型箱の真空源等への接続装置。
【請求項2】
前記電磁石の芯体の先端を、くの字状に折れ曲がった前記弁体の2枚の磁性体を密着可能な形状に構成したことを特徴とする請求項1に記載の減圧鋳型造型用の模型箱の真空源等への接続装置。
【請求項3】
前記弁体の2枚の磁性体は鋼板で構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の減圧鋳型造型用の模型箱の真空源等への接続装置。
【請求項4】
内部に中空室を有するとともにこの中空室に貫通する小径孔を表面に多数穿設した減圧鋳型造型用の模型箱における前記中空室に対して、真空源および圧縮空気源を接続する装置であって、
前記模型箱の側壁に前記中空室に連通するように形成された通気孔を開閉するチェック弁機構と、
このチェック弁機構に対して真空源および圧縮空気源を接続する接続手段と、
を具備し、
前記チェック弁機構は、
前記通気孔と連通する弁口を有して前記模型箱の外側面に固着された弁座と、
この弁座の弁口を開閉するように設けられ前記模型箱外方からの負圧による吸引作用によって前記弁口を開放するとともに前記中空室からの吸引作用によって前記弁口を閉鎖する弾性部材およびこの弾性部材の表面に装着された2枚の磁性体から成る弁体と、
を含み、
前記接続手段は、
前記弁座に当接・分離可能に配設され弁座に当接された時に前記弁口の外周を気密に包囲可能でありかつ真空源および圧縮空気源に開閉弁をそれぞれ介して接続された包囲手段と、
この包囲手段内に装着され包囲手段が前記弁座に当接している時に前記弁体の2枚の磁性体を吸着して前記弁口を開放可能な電磁石と、
前記包囲手段を前記弁座に対して進退動させる駆動手段と、
を含むことを特徴とする減圧鋳型造型用の模型箱の真空源等への接続装置。
【請求項5】
前記包囲手段を方向切換弁を介して真空源および大気中にそれぞれ接続可能に構成したことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の減圧鋳型造型用の模型箱の真空源等への接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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