減少した試料マトリックス効果を有するアッセイ方法及び装置
本発明は、試料マトリックス効果を減少させることにより環境試料において実施される免疫アッセイの感度を増大させるための方法、キット及び装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により全体が組み込まれる、2004年12月20日に出願された米国仮特許出願第60/636,867号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、試料中の抗原又はハプテンなどの分析対象物の検出のためのアッセイを含むアッセイ方法、装置及びキットに関する。分析対象物は、例えば、生物学的又は空気試料中のものを供給することができる。
【背景技術】
【0003】
医療、環境、生体防御及び食品安全性分野において、免疫診断検査により、社会に対して有害である疾患及び汚染物質の簡単な評価と迅速な特定を行うことができる。遅延性疾患及び/又は地方病の発生を防止するためには、臨床検体、土壌若しくは水試料又は食品中の抗原などの分析対象物の定性的、半定量的及び定量的検出を可能にする簡単な確認アッセイが必要である。さらに、近年、国家テロの脅威が認識されているため、多くの診断検査が、確立された研究施設以外の衛星施設で実施することができるように設計されている。
【0004】
従来の免疫アッセイを用いた検出システムは、検出可能な事象を発生させるために複数のアッセイ試薬を逐次的に加えることが必要である抗体−抗原相互作用に依拠している。一般的に明確な同定に対する信頼度は高いが、これらのアッセイ及び試薬調製手順は、試料マトリックスによる影響を受けることがある。例えば、試料中の成分が、アッセイ試薬が適切に機能する能力を妨害する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、非技術要員又は非専門要員が実施することができる、減少した試料マトリックス効果を有する、信頼度が高く、使用しやすい診断アッセイのための新規の方法及び装置を開発する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(d)得られる混合物中の標識結合パートナーを測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(c)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(d)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0007】
特定の実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な第1の標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な第2の結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)第1の結合パートナー、分析対象物、及び第2の結合パートナーの間で形成される複合体中の標識された第1の結合パートナーの量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0008】
種々の実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)分析対象物の標識類似体を加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)結合パートナーに結合した分析対象物の標識類似体の量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、フィルター、並びに(a)8以上若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び(b)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液から選択される少なくとも1つの試薬を含む、上記の方法を実施するためのキットを提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置であって、
(a)サンプリング器具からフィルターに向かって流れるように方向が定められた第1の一方向弁を介してサンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)第1の一方向弁とフィルターとの間の箇所に流体的に接続され、フィルターから廃棄物管路に向かって流れるように方向が定められた第2の一方向弁に流体的に接続されている廃棄物管路、
(c)液体の流れをフィルター中に不可逆的に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(d)前記1つ又は複数の分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(e)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(f)標識結合パートナーを測定する手段
を含む、上記装置を提供する。
【0011】
種々の実施形態において、本発明は、1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置であって、
(a)サンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)液体の流れをフィルター中に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(c)前記1つ又は複数の分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(d)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(e)標識結合パートナーを測定する手段
を含む、上記装置を提供する。
【0012】
特定の実施形態において、本発明は、
(a)フィルターにより下部容器から流体的に封じられている上部容器、及び
(b)上部容器を経ることなく、下部容器に出入りすることができる開口部
を含む、試料ろ過器具を提供する。
【0013】
前述の一般的説明及び以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものであるにすぎず、請求の範囲に記載されている発明を制限するものではないことを理解すべきである。項の見出しは、読者に対する案内として設けられており、いずれにしても本発明を限定するものでないことは理解されよう。
【0014】
添付図面は、本発明の実施形態を説明するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書には、試料マトリックス効果を減少させることにより、分析対象物を検出及び/又は定量する際に用いる方法、キット及び装置を開示する。
【0016】
I.定義
「乾燥組成物」という用語は、組成物がその総重量に対して5重量%以下の含水率を有することを意味する。
【0017】
「結合パートナー」という用語は、分析対象物に特異的に結合することができる1つ又は複数の物質を意味する。一般的に、特異的結合は、比較的高い親和力と比較的低ないし中容量を特徴とする。一般的に、親和定数Kaが少なくとも106M−1、少なくとも107M−1、少なくとも108M−1又は少なくとも109M−1であるとき、結合は特異的とみなされる。より高い親和定数は、より大きい親和力、したがって、一般的により大きい特異性を示す。例えば、抗体は一般的に、106M−1〜109M−1の範囲又はより高い親和定数で抗原に結合する。非特異的結合は通常、低親和力と中ないし高容量を有する。非特異的結合は通常、親和定数が106M−1を下回るときに発生する。
【0018】
「抗体」という用語は、抗原結合性を保持する1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)を含むタンパク質を意味する。いくつかの実施形態において、抗体は、免疫グロブリン又はその一部であり、起源、生産の方法又は他の特性にかかわりなく抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチド(糖部分(単及び多糖)による修飾をさらに伴う又は伴わない)を含む。この用語は、例えば、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異的、多特異的、ヒト化、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異及びCDRグラフト化抗体並びに融合タンパク質を含む。抗体の一部は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Facb、Fv、ScFv、Fd、VH及びVLを含むが、これらに限定されない、抗原に結合することができるフラグメントを含むことができる。
【0019】
「標識結合パートナー」という用語は、検出可能なシグナルを発生、修正又は調節することができる原子、部分、官能基又は分子を含む標識を含む結合パートナーを意味する。
【0020】
「分析対象物」という用語は、試料中に認められるウイルス、原始細菌、植物、動物、真菌及び/又は細菌の細胞若しくは細胞成分を含む、あらゆる分子若しくは分子の凝集体を意味する。試料中に認められるあらゆる分子の断片も「分析対象物」という用語の範囲に含まれる。この定義は、この定義の範囲内に示されている例のいずれかのうちの1つ又は複数のものを含む複合体をさらに含む。
【0021】
「分析対象物の類似体」という用語は、結合パートナーへの結合に対して問題の分析対象物と競合する物質を指す。分析対象物の類似体は、試料中に存在する問題の分析対象物と特定の結合パートナーへの結合に対して競合させるために加えられる既知量の問題の分析対象物自体であってよい。分析対象物の類似体の例としては、HIV逆転写酵素に結合するヌクレオチドの類似体であるアジドチミジン(AZT)、アミノアシルtRNAの末端アミノアシルアデノシン部分の類似体であるピューロマイシン、テトラヒドロ葉酸塩の類似体であるメトトレキセートなどがある。他の類似体は、問題の分析対象物の誘導体であってよい。本明細書で用いられている「分析対象物の標識類似体」という用語は、標識結合パートナーと同様に定義される。
【0022】
「陽性対照」という用語は、既知量の分析対象物又は分析対象物の類似体を指す。陽性対照は、適切な機器の動作及び/又は試料の測定を評価するために用いることができる。陽性対照は、機器を校正するために用いることができる。陽性対照は、試験試料のシグナルレベルを対照標準のシグナルレベルと比較するための対照標準として用いることができる。陽性対照はまた、シグナルレベルを分析対象物濃度に関連づける数学関数とともに使用することができ、そのうちの1つの使用は、試料のシグナル測定値を分析対象物濃度に変換することである。「陽性対照」という用語は、陽性対照及び陽性キャリブレータの一般的な定義を含む。
【0023】
「アッセイ陽性対照」という用語は、(a)試料の測定の成功を確認するため、又は(b)試料の実測シグナルを供試分析対象物の濃度に変換するために用いる組成物を指す。一般的に、アッセイ陽性対照は、陽性対照と、分析対象物を含む試料の測定を模擬するために結合アッセイに用いる試薬を含む。
【0024】
「試料」という用語は、分析対象物を含む可能性がある液体を含む。
【0025】
「液体」という用語は、液体のより伝統的な定義に加えて、粒子が地球の重力に起因する1mm/s以下の沈降速度を有するコロイド、懸濁液、スラリー及び液体中粒子の分散系を含む。
【0026】
「抽出緩衝液」という用語は、分析対象物又は分析対象物の類似体と試料マトリックスとの非特異的結合を減少させるために用いる組成物を指す。
【0027】
「流体的に接続された」という用語は、接続によって流体が構成要素の間を通ることが可能になる、2つの構成要素の間の接続を指す。
【0028】
「試料マトリックス」という用語は、分析対象物を除く試料中のすべてのものを指す。「環境マトリックス」という用語は、試料が採取される環境由来の試料マトリックスの成分を指す。例えば、試料マトリックスは、試料環境中に通常認められない検出アッセイを実施するために用いる試薬を含むことがあり得る。環境マトリックスという用語はまた、アッセイの開発のため、模擬のため、又は他の目的のために試料中の分析対象物はスパイクされていなかったが、試料を採取することを意図する環境由来の試料マトリックスの成分を指す。
【0029】
本明細書で用いるように、「支持体」という用語は、当技術分野で知られている結合パートナーを固定化するための手段のいずれかを意味する。支持体の例は、膜、ビーズ、粒子、電極又は容器の壁若しくは表面を含むが、これらに限定されない。
【0030】
「磁化可能ビーズ」という用語は、磁性、常磁性及び超常磁性ビーズを含む。
【0031】
II.方法
特定の実施形態において、本発明は、試料中の分析対象物の検出又はその量の定量のための結合アッセイに用いられ、測定に対する試料マトリックスの影響が最小限である方法に関する。
【0032】
A.分析対象物の検出に対する試料マトリックスの影響
試料マトリックスは、試料中に認められる分析対象物の測定に多くの点で影響を及ぼす可能性がある。試料マトリックスがアッセイに影響を及ぼすメカニズムに関する特定の理論により拘束されることを意図することなく、例えば、マトリックスは、試料の粘度を変化させることにより、或いは、さもなければ試料中の有効拡散速度を変化させることにより、分析対象物と結合パートナーとの間の結合の速度を減少させることができる。他のシナリオにおいて、マトリックスは、結合パートナーに非特異的に結合して、結合パートナー上の利用可能な結合部位の数を減少させることもできる。マトリックスは、複数の分析対象物又は複数の結合パートナーと非特異的に結合して、より緩慢に拡散するより大きい集塊を形成することもできる。マトリックスは、結合パートナーが位置する支持体に付着又は支持体上に沈降し、それにより、分析対象物との相互作用に利用可能な結合パートナーの数を減少させることができる。試料中で移動することができる支持体(例えば、ビーズ)の場合、マトリックスは、複数の支持体に付着して、より緩慢に拡散及び/又は試料の底部に沈降する集塊を形成することができる。マトリックスは、平衡状態で結合する分析対象物の量に影響を及ぼすことができる。例えば、高濃度のマトリックスは、平衡状態にある結合パートナーの結合部位のゼロでない一部を占有することができる。酵素を用いて基質を生成物に変換させる場合、マトリックスは生成物の生成速度を減少させる可能性がある。
【0033】
マトリックスは、標識結合パートナーの測定に影響を及ぼすことがあり得る。測定法が質量の変化である場合、マトリックスは、例えば、結合パートナー又は分析対象物に結合して、質量を効果的に増加させることがあり得る。測定が凝集に敏感である場合、マトリックスは、分析対象物の非存在下で凝集を引き起こす可能性がある。測定がルミネセンスである場合、マトリックスは、光を散乱させ、吸収し、又は別の仕方で光が検出器に到達することを妨げる可能性がある。測定がルミネセンスである場合、マトリックスは、励起状態から別の非発光経路を発生させる可能性がある。測定法が蛍光である場合、ルミネセンスメカニズムに加えて、マトリックスは、励起光が意図する蛍光化合物により吸収されることを妨げるか、又は自家蛍光を発する可能性がある。測定法が化学ルミネセンスである場合、ルミネセンスメカニズムに加えて、マトリックスは、前のパラグラフで述べたメカニズムにより励起状態の生成の速度を減少させる可能性があり、分析対照物と結合パートナーとの相互作用を妨げることができるときには、これが、発光をもたらす、いずれか2つの化合物の相互作用を妨げることがある。測定法が電気化学ルミネセンスである場合、化学ルミネセンスメカニズムに加えて、マトリックスは、例えば、前のパラグラフで述べた変速メカニズムにより、電極から電気化学ルミネセンス化合物又は電気化学ルミネセンス共反応物へのエネルギー輸送の速度を減少させることができる。
【0034】
B.試料マトリックス効果の減少
検出工程に対するマトリックスの影響は、2つの方法のいずれかにより減少させることができる。第1に、検出に対する分析対象物の有効性は、分析対象物のマトリックス成分との結合/会合を妨げるように溶液の特性を変化させることによって増加させることができる。第2に、検出工程を妨害するマトリックスの成分は、検出工程から除くことができる。この目的を達成するためにいくつかの方法を用いることができる。
【0035】
問題の分析対象物は、妨害マトリックスといくつかの物理的性質が異なることがあり得る。これらは、サイズ、密度、溶解度、表面電荷の分布又は表面部分の差異を含むが、これらに限定されない。サイズの差に基づく分離としては、ろ過器具の使用又はサイズ排除カラム通過などがある。密度差に基づく分離は、遠心分離機の使用又は重力沈降を含むが、これらに限定されない。溶解度に基づく分離は、2相分配又は不混和性相中への溶媒抽出を含むが、これらに限定されない。表面電荷の差に基づく分離は、イオン交換クロマトグラフィー又は凝析及び沈澱を含むが、これらに限定されない。これらの分離法の多くは、主として実験室環境において実際的なものである。実験室以外の環境で使用しやすい方法は、ろ過及び抽出溶液を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明は、妨害マトリックス粒子及び/又はろ過器具から分析対象物を放出させるための抽出緩衝液を用いて、試料からこれらのマトリックス粒子を除去する。
【0036】
1.ろ過
ろ過は、検出工程からマトリックスの妨害成分を除去する1つの方法である。このアプローチでは、フィルターのバリアを用いて検出工程を妨害するような微粒子成分を保持する。マトリックスの微粒子成分は、標識結合パートナー、分析対象物の標識類似体又は検出表面上のビーズの捕捉又は析出を必要とするいくつかの検出方法を妨害することがある。さらに、これらの成分を除去することにより、分析対象物に結合することができる表面の量が減少する。いくつかの実施形態において、微粒子成分を捕捉したフィルターを処理して、分析対象物を検出工程に対して放出することができる。
【0037】
ろ過は、所定のサイズより大きい粒子を排除する物理的バリアを設けることにより溶液から成分を主として分離する。ろ過技術にはこれらの種類バリアを作る多種の方法が存在し、各方法で基本材料の機能が操作される。例えば、粒径が50μmを超える極めて大きい粒子を捕捉するために用いることができる織りスクリーンを製造するのに、金属ワイヤーが一般的に用いられている。より小さい浮遊粒子を捕捉するために、より小さい直径の金属ワイヤースクリーンを用いることができるが、それらは、気流に対する抵抗(圧力降下)のため限界を有する。ポリマーを用いた膜は、一般的に溶液からより小さい粒子を除去するために用いられる。例えば、ポリマーナイロンは、10μmの孔径定格から0.1μmの孔径定格までの範囲の膜を作製するための転相注型法に用いられる。他のポリマーを用いた膜(例えば、ポリエーテルスルホン、ニトロセルロース又は酢酸セルロース)は、溶媒蒸発注型法により作製される。ろ過媒体は一般的に、問題の流体がフィルターバリアを制御された挙動で通過することを可能にする保持器具に組み込まれている。いくつかの実施形態において、本発明は、ポリエーテルスルホン(PES)ポリマーを用いたろ過媒体を含むフィルターを使用する。特定の実施形態において、PESフィルターは、(a)注射器に取付けることができる、(b)ロボットオートメーションを容易にするために設計された1回使用使い捨て器具の一部、又は(c)複数回使用使い捨て器具の一部であるプラスチックハウジングに収容されている。
【0038】
ろ過は主として、サイズにより溶液から成分を分離する。ほとんどのフィルターにおいて、フィルターを通しての経路は、直線的な穴ではなく、ねじれた経路である。これにより、フィルターの孔径の記述は操作上のものとなり、孔径定格という用語が生ずる。フィルターの孔径定格を決定するにあたって、既知の容積(又は量)の既知の粒径(顕微鏡観察、光散乱又はインピーダンス測定により知られる)の粒子でフィルターをチャレンジする。次いで、フィルターの下流の粒子の量を測定し、粒子の複数の粒径にわたってフィルターの上流の粒子の量と比較する。粒子の所定の粒径範囲について下流の粒子と上流の粒子の比が1以下に有意に低下した場合、フィルターは該粒径範囲について除去能力を有すると言われる。これらの比は、一般的に除去の対数単位で記述される。例えば、5μmと格付けされるフィルターは、一般的に5μmより大きい下流粒子のレベルを0.90の比(90%除去又は1log除去)から0.999の比(99.9%除去又は3log除去)低下させる。フィルターの孔径は多くの要因に基づいて選択される。孔径は、分析対象物を通過させるために十分に大きくなければならない。例えば、炭疸菌芽胞はサイズが約1μmである。孔径は、試料マトリックスからの妨害成分を阻止するために十分に小さくなければならない。孔径はフィルターを通過する流体の流速にも影響を及ぼし、孔径が小さいほど、生ずる流動抵抗が一般的に大きくなる。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明は、5μmの孔径定格を有するろ過器具を用いて試料マトリックスの妨害成分を除去することができる。いくつかの実施形態において、本発明は、0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、7、10、15、20、50又は100μmの孔径定格を有するろ過器具を用いて試料マトリックスの妨害成分を除去することができる。いくつかの実施形態において、フィルターは、試料マトリックスの妨害成分を除去するために約100μm以下及び約10μm以上の孔径定格を有する。いくつかの実施形態において、フィルターは、試料マトリックスの妨害成分を除去するために約10μm以下及び約1μm以上の孔径定格を有する。いくつかの実施形態において、フィルターは、試料マトリックスの妨害成分を除去するために約1μm以下及び約0.1μm以上の孔径定格を有する。いくつかの実施形態において、フィルターは、試料マトリックスの妨害成分を除去するために約0.1μm以下及び約0.02μm以上の孔径定格を有する。
【0040】
一般的に、フィルターの孔径定格より小さい粒子は、ろ過媒体に吸着されない限り、妨害を受けずにフィルターを通過する。非特異的吸着を防ぐためには、ろ過媒体を、表面修飾し、例えば、フィルター表面をより濡れ性、すなわち、より親水性にすることにより、この種の相互作用を減少させることができる。分析対象物の非特異的結合(回収の損失をもたらす)は疎水性相互作用、主としてファンデルワールス相互作用に起因すると一般的に考えられている。例えば、ろ過媒体ポリエーテルスルホン(PES)をグリセロールのような親水性化合物で被覆することにより、水が表面を濡らす能力が増大し、分析対象物の損失が減少する。
【0041】
いくつかの表面処理はより永久的なものであり、表面グラフトが考慮される。ろ過媒体の永久的表面修飾は、当業者により知られている多くの方法により達成することができる。これらの方法は、フリーラジカル重合、イオンビーム開始重合、電離放射線誘導重合、プラズマエッチング及び化学カップリングを含むが、これらに限定されない。これらの方法は、水和を促進し、疎水性相互作用を減少させるかなりの数のヒドロキシル基を有する分子を組み込む。表面修飾の特定の方法は、フィルター器具に用いられるろ材の化学的性質に主として依存する。例えば、電離放射線は、ナイロンろ過媒体を親水性にし、タンパク質結合性を低くするためにナイロンろ過媒体上へのヒドロキシ−プロピル−アクリレート部分のグラフティングを誘導するために用いることができる。いくつかの実施形態において、本発明は、表面を濡れやすくし、分析対象物の損失を減少させるためにグリセロールで被覆したポリエーテルスルホンポリマーを含むろ過媒体を使用する。
【0042】
逆に、フィルターは、妨害成分に特異的に結合する、表面に付着した化学部分を有していてよい。ろ過媒体は、結合反応(例えば、免疫反応)又は検出方法を妨害することが知られているクラスの分子と高親和性相互作用を有する分子に共有結合することができる。例えば、赤血球上の表面基に結合するレクチン、又は検出法を妨害する可能性がある金属イオンに結合するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)をろ過媒体に結合させることができる。
【0043】
本発明の様々な実施形態において、ろ過器具は、試料中の分析対象物の数が変化し、各分析対象物が固有の調製要件を有する適用例における試料を調製するために用いることができる。一部の分析対象物は、大きく、小孔径フィルターにより除去されるであろう。例えば、細菌の一部である分析対象物は、滅菌フィルターの孔径定格(0.2μm)を有するフィルターにより除去されるが、5μmの孔径定格を有するフィルターを用いたろ過の後には試料マトリックス中に残るであろう。逆に、トキシンのような小分子の検出は、1μm以上の孔径定格を有するフィルターにより大粒子を除去することによって向上させることができる。したがって、本発明の特定の実施形態は、適切なろ過器具の後に特定の分析対象物の試料を採取することができる、次第により小さい粒子を除去するための直列のいくつかのろ過器具を使用する。
【0044】
本発明によれば、試料を1回又は複数回ろ過することができる。いくつかの適用例において、試料の微粒子負荷が重く、保持粒子の層が非常に厚いので、ろ過器具を1回のみ用いることができる。他の試料において、粒子負荷が低いことがあり、そのため、流速があまりにも遅くなるか、又は圧力降下があまりにも高くなって実際的でなくなる前に複数の試料をろ過器具に通すことができる。これらの場合、ろ過器具は、必要及びサンプリング頻度の要件を満たすある定期的な間隔で交換することができる。例えば、粒子負荷が低く、陽性検出事象の頻度も低い場合、ろ過器具は、月1回、週1回、毎日、又は陽性検出事象の発生後より速やかに交換することができる。フィルター交換間隔は、例えば、ろ過した試料の数により、又はフィルターにわたる圧力降下を測定することにより、若しくはフィルターを通しての流速を測定することにより、設定することができる。
【0045】
2.流体の移動
本発明によれば、複数のメカニズムを用いて試料流体をフィルターを通して駆動することができる。流体は、重力流により、或いは、正のゲージ圧をフィルターの上流に加え、かつ/又は負のゲージ圧(真空)をフィルターの下流に加える、圧力により、フィルターを通して移動させることができる。
【0046】
本発明は、粒子保持層を逆流(逆洗)法により減少させることができる場合には、フィルターを試料の調製のために複数回使用することができることを企図する。これらの実施形態において、流体の逆流を用いてろ過器具の表面から微粒子を除去し、分析のためにろ過済み試料を採取した後にそれらの進路を廃棄物収集システムへと変えることができる。
【0047】
3.緩衝液
妨害マトリックスを含む試料からの分析対象物の回収及び検出は、適切な抽出緩衝液を用いて増大させることができる。いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、ホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び非イオン性界面活性剤を含む抽出緩衝液を用いて、分析対象物の回収を増大させることができる。代替抽出緩衝液は、酢酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム並びにホウ酸、塩化物、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸、硫酸及びリン酸のカリウム及びリチウム塩を含む。
【0048】
問題の分析対象物の一部は、低親和性非特異的相互作用により試料マトリックスと結合させることができる。これらの種類の相互作用は、例えば、イオン及び疎水結合を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、マトリックスのイオン表面電荷を有する可動性溶液イオン対がマトリックス粒子表面からの分析対象物の変位を促進するように、抽出緩衝液の総イオン強度を増加させることによって、分析対象物とマトリックス粒子とのイオン相互作用を低下させることができる。様々な実施形態において、非特異的イオン相互作用の低下時にイオン強度を増大させるために、溶液のpHを中性(すなわち、pH7)から高いpH又は低いpHに変化させることができる。ほとんどの環境マトリックス粒子は優勢な負の表面電荷を有するので、本発明の特定の実施形態は、抽出緩衝液中のイオンがマトリックス粒子から分析対象物を変位させることができるように、高いpHを用いて表面基をイオン化することができる。いくつかの実施形態において、本発明は、8.5のpHを有し、少なくとも0.5モルの塩化ナトリウムを含む抽出緩衝液を使用する。いくつかの実施形態において、本発明は、8以上のpHを有する抽出緩衝液を使用する。
【0049】
イオン相互作用に加えて、疎水性相互作用は、分析対象物の回収率を減少させることができる。これらの種類の相互作用は、ファンデルワールス型の相互作用と記載されており、水及び水素結合の複雑な性質から生ずることがあり得る。イオン性分子は、水分子に、水分子を組織化し、水分子の運動を減少させる傾向がある、荷電基の周りの水素結合ケージ構造(包接化合物)を形成させることができる。極性基を有する分子は、水の水素と極性基との間の水素結合構造を形成することによって水に溶解することができる。イオン電荷も極性基も有さない分子の部分は、疎水性とみなすことができ、これらの部分は、水和事象からの排除により共に追いやられる傾向がある。疎水性部分を有する分子は、ファンデルワールス相互作用に共にたずさわらされる可能性がある。このようにして、水の全体の構造を安定化させることができる。
【0050】
妨害マトリックス粒子との低親和性非特異的相互作用による分析対象物の回収を増加させるために、本発明の特定の実施形態は、水の組織化力の測定される崩壊を引き起こす物質を用いることができる。例えば、疎水性相互作用は、界面活性剤/洗剤及びカオトロピックイオン並びに電荷を有さないカオトロピック分子を用いて減少させることができる。本明細書で用いるように、界面活性剤と洗剤は同義語である。カオトロピック分子(イオンとして荷電又は非荷電)は、水の組織化力及び構造を崩壊させる傾向がある。いくつかの実施形態において、非イオン性界面活性剤(例えば、Tween(登録商標)20(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン))を用いて、洗剤分子の疎水性部分をマトリックス及び分析対象物の疎水性部分に結合させることにより分析対象物の回収を促進させることができる。非荷電カオトロピック分子(例えば、尿素)は、水の水素結合構造を崩壊させる十分に高い濃度の溶液を形成することができる。水の水素結合構造の崩壊を促進するために、様々な実施形態もホウ酸塩、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン又は他のカオトロピックイオンを用いることができる。ホウ酸イオンは、小さく、ほとんどのイオン以上に水分子ケージ構造を妨げる。リン酸及び硫酸イオンも本発明において用いることができる。本発明のいくつかの実施形態は、Mg2+、Ca2+、Li+、Na+又はK+などの1つ又は複数の陽イオンを使用する。当業者は、2価又は3価陽イオンを用いるとき、ある種のマトリックスとのさらなる好ましくない反応が起こる可能性があることを理解するであろう。当業者は、カオトロピックイオンの高い濃度において、タンパク質分子の2次及び3次構造が分解し、免疫アッセイで用いる高親和性相互作用が破壊されることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、抽出緩衝液は、0.1Mホウ酸ナトリウム(pH8.5)、0.5M塩化ナトリウム及び0.3%Tween(登録商標)20を含む。
【0051】
様々な実施形態において、抽出緩衝液は、表1に示すような様々な容量オスモル濃度範囲を有することができる。これらの範囲は代表的なものにすぎず、当業者は本発明に適用可能なさらなる範囲を認識することができる。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す代表的な抽出緩衝液は、2〜11、3〜10、4〜9.5、5〜8、6〜8、7〜10、8〜10、8.5〜9.7及び/又は6.5〜7.5の範囲内のいずれかのpHを任意に有していてよい。
【0054】
様々な実施形態において、抽出緩衝液は、表2に示すような様々なpH及び容量オスモル濃度の組合せを有していてよい。これらの組合せは代表的なものにすぎず、当業者は本発明に適用可能なさらなる組合せを認識することができる。
【0055】
【表2−1】
【表2−2】
【0056】
表1及び2に示す代表的な抽出緩衝液は、場合によって界面活性剤を含む。選択される特定の界面活性剤は、分析対象物及び試料マトリックスの化学的特性を反映する。タンパク質性結合パートナーについては、界面活性剤は、非イオン型であってよく、或いはいくつかの実施形態において、両性イオン型であってよい。核酸結合パートナーについては、界面活性剤は、非イオン、両性イオン、陰イオン又は陽イオン型であってよい。
【0057】
適切な非イオン性界面活性剤は、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アルキルマルトシド、グルカミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジメチルホスフィンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド及びアルキロールアミドを含むが、これらに限定されない、いくつかのカテゴリーから選択することができる。適切な両性イオン界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミノプロパンスルホン酸塩、(アルキルジメチルアミノ)プロパンスルホン酸塩、アリールアミノプロパンスルホン酸塩、アルキルホスホコリン、アミノプロピルアミンアルキルカルボン酸塩、アルキルジメチルグリシン、アルキルホスホコリン、アルキルイミドジプロピオネートアミンオキシド及びポリアルキルジメチルアミンプロピルアミンカルボン酸塩を含むが、これらに限定されない、いくつかのカテゴリーから選択することができる。適切な陰イオン界面活性剤は、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、胆汁酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニレンジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ナフタレン硫酸ホルムアルデヒド縮合物、アルキルアミノプロピオン酸塩及びポリカルボン酸塩を含むが、これらに限定されない、いくつかのカテゴリーから選択することができる。適切な陽イオン界面活性剤は、アルキルアミン塩、アルキルアルキル第四級アンモニウム塩及びアルキルアリール第四級アンモニウム塩を含むが、これらに限定されない、いくつかのカテゴリーから選択することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、抽出緩衝液は、ブロッキング剤を含んでいてよい。あらゆる従来のブロッキング剤を用いることができる。適切なブロッキング剤は、例えば、米国特許第5,807,752号、同第5,202,267号、同第5,399,500号、同第5,102,788号、同第4,931,385号、同第5,017,559号、同第4,818,686号、同第4,622,293号、同第4,468,469号並びにカナダ特許第1,340,320号、国際公開第97/05485号、欧州特許公開A1第566,205号、欧州特許公開A2第444,649号及び欧州特許公開A1第165,669号に記載されている。代表的なブロッキング剤としては、動物血清(例えば、ヤギ血清)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ゼラチン、ビオチン及び乳汁タンパク質(「blotto」)などの血清及び血清アルブミンなどがある。いくつかの実施形態において、本発明は、1〜25g/L BSA、1〜10g/L BSA、1〜5g/L BSA又は無BSAを含む抽出緩衝液を使用する。いくつかの実施形態において、本発明は、1.6g/L BSA、0.25M HBO3、0.5M NaCl及び0.3%Tween−20を含み9.2のpHの抽出緩衝液を使用する。いくつかの実施形態において、本発明は、BSAを含まず、0.25M HBO3、0.5M NaCl及び0.3%Tween−20を含み9.2のpHの抽出緩衝液を使用する。
【0059】
C.アッセイの方式
本発明は、あらゆる結合アッセイ技術とともに用いることができる。例えば、The Immunoassay Handbook、第3版、Wild編、Stockton Press(2005年)並びにPrinciples and Practice of Immunoassay、Price及びNewman編、Stockton Press(1997年)を参照のこと。便宜のために、いくつかの結合アッセイ技術の手短な説明を以下に示す。
【0060】
結合アッセイ技術は、多くの観点で細分することができる。例えば、ある種のアッセイはシグナルの検出のために標識結合パートナーを必要とするが、他のアッセイは分析対象物と結合パートナーとの相互作用に基づいてシグナルを発生する、例えば、質量変化を測定する。ある種のアッセイは、標識結合パートナーを使用しないが、その代わりとして、分析対象物の標識類似体を使用する。
【0061】
ある種のアッセイは、両結合パートナーが同じ分析対象物に特異的に結合するサンドイッチアッセイを構築するために2つの結合パートナーを使用する。いくつかの実施形態において、2つの結合パートナーは、分析対象物の異なる部分、例えば、異なるエピトープに結合する。
【0062】
ある種のアッセイは、分析対象物に結合した標識結合パートナーと分析対象物に結合しなかった標識結合パートナーとを区別するために、分離ステップを必要とする。凝集アッセイ、及び標識結合パートナー上の標識が分析対象物の結合により直接的又は間接的に修飾、活性化又は不活性化されるアッセイなどのある種のアッセイは、分離ステップを必要としない。ある種のアッセイは、結合パートナーが付着する支持体を必要とする。支持体、分離、サンドイッチアッセイは、支持体に標識を結合させるために、2つの結合パートナー(第1の結合パートナーは支持体に付着するが、第2の結合パートナーは標識結合パートナーである)を使用し、その後、標識を測定する前に支持体を洗浄して遊離の標識結合パートナーを除去する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、標識結合パートナーを分析対象物に結合させることにより、分析対象物を検出する。いくつかの実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(d)得られる混合物中の標識結合パートナーを測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(c)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(d)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、1つが標識されている2つの結合パートナーの間に分析対象物をサンドイッチすることにより、分析対象物を検出する。特定の実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な第1の標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な第2の結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)第1の結合パートナー、分析対象物、及び第2の結合パートナーの間で形成される複合体中の標識された第1の結合パートナーの量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、結合パートナーへの結合を競合する標識分析対象物類似体を用いることにより、分析対象物を検出する。様々な実施形態において、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)分析対象物の標識類似体を加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)結合パートナーに結合した分析対象物の標識類似体の量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0066】
本発明の方法は、試料マトリックス効果を低下させるために、様々なステップで修正することができる。例えば、いくつかの実施形態において、検出すべき分析対象物の結合パートナーが試料に接触する前に、試料マトリックス中の成分を除去することができる。いくつかの実施形態において、方法の添加ステップを同時に実施してもよい。いくつかの実施形態において、方法の添加ステップを順次実施してもよい。いくつかの実施形態において、抽出緩衝液を試料に加え、試料をろ過し、複数の結合パートナーを用いる場合にはそのうちの1つが標識されている、結合パートナーを加え、標識結合パートナーを検出する。いくつかの実施形態において、試料をろ過し、抽出緩衝液をろ過済み試料に加え、複数の結合パートナーを用いる場合にはそのうちの1つが標識されている、結合パートナーを加え、標識結合パートナーを検出する。いくつかの実施形態において、抽出緩衝液を試料に加え、試料をろ過し、結合パートナーを加え、分析対象物の標識類似体を加え、標識類似体を検出する。いくつかの実施形態において、試料をろ過し、抽出緩衝液をろ過済み試料に加え、結合パートナーを加え、分析対象物の標識類似体を加え、標識類似体を検出する。いくつかの実施形態において、試料をろ過し、複数の結合パートナーを用いる場合にはそのうちの1つが標識されている、結合パートナーを加え、抽出緩衝液を加え、標識結合パートナーを検出する。いくつかの実施形態において、試料をろ過し、結合パートナーを加え、分析対象物の標識類似体を加え、抽出緩衝液を加え、標識類似体を検出する。他の実施形態は、標識結合パートナーが試料に接触する前に試料マトリックス中の成分を除去する方法を含む。いくつかの実施形態は、試料が、電気化学ルミネセンスを開始することができる電極に接触する前に試料マトリックス中の成分を除去する方法を含む。
【0067】
いくつかの実施形態は、検出すべき分析対象物の結合パートナーと前記分析対象物との間の平衡化又は反応速度を妨害する試料マトリックスの能力を減弱させる方法を含む。いくつかの実施形態は、標識結合パートナーと検出すべき分析対象物との間の平衡化又は反応速度を妨害する試料マトリックスの能力を減弱させる方法を含む。
【0068】
いくつかの実施形態は、標識結合パートナー及び/又は分析対象物の標識類似体上の標識の検出に対して影響を及ぼす試料マトリックスの能力を減弱させる方法を含む。
【0069】
いくつかの実施形態は、電気化学ルミネセンス測定に影響を及ぼす試料マトリックスの能力を減弱させる方法及び装置を含む。いくつかの実施形態は、空気サンプリングシステムを用いて結合アッセイを実施することができる装置に接続するための方法及び装置を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、複数の分析対象物を同時にアッセイする。他の実施形態において、複数の分析対象物を順次アッセイする。
【0071】
D.試料及び分析対象物
試料は、分析すべき源から抜き取ることができる。例えば、試料は、血液、血漿、血清、乳汁、精液、羊水、脳脊髄液、痰、涙液、汗、尿若しくは唾液などの体液又は他の生物学的流体から生じてよい。或いは、試料は、湖又は川などの水源から得た水の試料であってよい。試料は、水、微生物学的増殖培地又は水性緩衝液などの液体に試料を溶解又は懸濁することにより調製してもよい。試料は、土壌、タルク、ベビーパウダー、食品(例えば、果実、野菜及び/又は肉)及び/又はヒト、有蹄類、家禽及び/又は他の動物の糞であってよい。これら及び他の種類の試料は、Seward Stomacher(登録商標)装置、音波処理、混合などのマトリックスから分析対象物を除去するための機械的処理、或いは固体を液体マトリックス中に移す他のあらゆる物理的方法を用いて処理することができる。試料源は表面スワブであってよく、例えば、表面をスワブで拭き取り、スワブを液体で洗浄し、それにより、表面から分析対象物を液体中に移すことができる。スワブとしては、スポンジ、ペーパータオル、綿及び他の吸収材を先端に取付けたアプリケータなどがある。試料源は、空気に由来するものであってよく、例えば、空気をろ過し、フィルターを液体により洗浄し、それにより、分析対象物を空気から液体中に移す。空気サンプリング器具は、空気を直接液体中に吹き込んで、分析対象物を移すこともできる。例えば、空気は、郵便物処理機械の近くの郵便室内から採取することができる。
【0072】
本発明の方法は、試料中のいくつかの種類の分析対象物を検出することができる。結合パートナーが特異的に結合することができる分析対象物の例は、細菌毒素、ウイルス、細菌、タンパク質、ホルモン、DNA、RNA、薬物、抗生物質、神経毒素及びその代謝物を含むが、これらに限定されない。分析対象物としては、試料中に認められる分子の断片などもある。いくつかの実施形態において、分析対象物は、有機化合物、有機金属化合物又は無機化合物であってよい。分析対象物は、核酸(例えば、DNA、RNA、プラスミド、ベクター又はオリゴヌクレオチド)、タンパク質(例えば、抗体、抗原、受容体、受容体リガンド又はペプチド)、リポタンパク質、糖タンパク質、リボ若しくはデオキシリボ核タンパク質、ペプチド、多糖、リポ多糖、脂質、脂肪酸、ビタミン、アミノ酸、薬剤化合物(例えば、精神安定薬、バルビツレート、アヘン剤、アルコール、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗生物質、ステロイド、強心配糖体又は前出のもののいずれかの代謝物)、ホルモン、成長因子、酵素、補酵素、アポ酵素、ハプテン、レクチン、基質、細胞代謝物、細胞成分又はオルガネラ(例えば、膜、細胞壁、リボソーム、染色体、ミトコンドリア、細胞骨格成分)であってよい。他の実施形態において、分析対象物は、毒素、農薬、除草剤又は環境汚染物質である。
【0073】
分析対象物のさらなる例は、アエロモナス・ヒドロフィア(Aeromonas hydrophia)などのアエロモナス種、炭疸菌(Bacillus anthracis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、クロストリジウム属(Clostridium)のボツリヌス菌毒素産生種、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、ブタ流産菌(Brucella suis)、鼻疽菌(Burkholderia mallei(以前はPseudomonas mallei))、キャンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ(Welch)菌(Clostridium perfringens)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシイ(Coccidioides posadasii)、カウドリア・ルミナンチウム(Cowdria ruminantium)(心水病)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、大腸菌−腸管毒産生性(Escherichia coli−enterotoxigenic)(ETEC)、大腸菌−腸疾患発現性(Escherichia coli−enteropathogenic)(EPEC)、大腸菌−O157:H7腸管出血性(Escherichia coli−O157:H7 enterohemorrhagic)(EHEC)などの腸内毒性大腸菌(Escherichia coli)群(EEC群)、エーリッヒア・チャフェンシス(Ehrlichia chaffeenisis)などのエーリッヒア(Ehrlichia)種、野兎病菌(Francisella tularensis)、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、リベロバクター・アフリカヌス(Liberobacter africanus)、リベロバクター・アジアティカス(Liberobacter asiaticus)、リステリア・モノシトゲネス(Listeria monocytogenes)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス(Proteus)、シトロバクター(Citrobacter)、アエロバクター(Aerobacter)、プロビデンシア(Providencia)及びセラチア(Serratia)などの種々雑多な腸内細菌、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)、牛肺疫菌標準亜種(Mycoplasma mycoides ssp mycoides)、ペロノスクレロスポラ・フィリッピンシス(Peronosclerospora philippinensis)、ファコプソラ・パチリジ(Phakopsora pachyrhizi)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、青枯病菌(Ralstonia solanacearum)品種3、次亜種2、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)、斑点熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、サルモネラ種(Salmonella species)、シュレロフトラ・レイシアエ・バル・ゼアエ(Schlerophthora rayssiae var zeae)、赤痢菌種(Shigella species)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ジャガイモ癌腫病菌(Synchytrium endobioticum)、コレラ菌(Vibrio cholerae)non−O1、コレラ菌(Vibrio cholerae)O1、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)及び他のビブリオ菌、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、キサントモナス・オリザエ(Xanthomonas oryzae)、柑橘類ピアス氏病菌(Xylella fastidiosa)(柑橘類斑入病菌株)、エルジニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)及び偽結核エルジニア菌(Yersinia pseudotuberculosis)及びペスト菌(Yersinia pestis)などの細菌病原体を含む。
【0074】
分析対象物のさらなる例は、アフリカウマ病ウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、アカバネウイルス、鳥類インフルエンザウイルス(高度に病原性)、ブハンジャ(Bhanja)ウイルス、ブルータングウイルス(エキゾチック)、ラクダ痘ウイルス、オナガザルヘルペスヘルペスウイルス1、チクングニヤウイルス、古典的ブタ熱ウイルス、コロナウイルス(SARS)、クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、デング熱ウイルス、デュグベ(Dugbe)ウイルス、エボラウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎及びベネズエラウマ脳炎ウイルスなどの脳炎ウイルス、ウマ麻疹ウイルス、フレキサル(Flexal)ウイルス、口蹄疫ウイルス、ゲルミストン(Germiston)ウイルス、ヤギ痘ウイルス、ハンターン又は他のハンタウイルス、ヘンドラウイルス、イシククルウイルス、コウタンゴ(Koutango)ウイルス、ラッサ熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ランピースキン病ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、悪性カタル熱ウイルス(エキゾチック)、マルブルクウイルス、マヤロウイルス、メナングルウイルス、サル痘ウイルス、ムカンボ(Mucambo)ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(VVND)、ニパーウイルス、ノーウォークウイルス群、オロプーシェウイルス、オルンゴ(Orungo)ウイルス、小反芻獣疫(Peste Des Petits Ruminants)ウイルス、ピリーウイルス、プラムポックスポティウイルス、ポリオウイルス、ポテトウイルス、ポーワッサンウイルス、リフトバレー熱ウイルス、牛疫ウイルス、ロタウイルス、セムリキ森林ウイルス、ヒツジ痘ウイルス、Flexal、Guanarito、Junin、Machupo及びSabiaなどの南アフリカ出血熱ウイルス、スポンドウェニ(Spondweni)ウイルス、ブタ水疱病ウイルス、中央ヨーロッパダニ媒介脳炎、極東ダニ媒介脳炎、ロシア春及び夏脳炎、キャサヌール森林病並びにオムスク出血熱などのダニ媒介脳炎複合(フラビ)ウイルス、大痘瘡ウイルス(痘瘡ウイルス)、小痘瘡ウイルス(アラストリム)、水疱性口内炎ウイルス(エキゾチック)、ウェセルスブロンウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、SV40、JC及びBKなどのポリオーマウイルス属、並びに乳頭腫ウイルス属(例えば、HPV)を含むパポーバウイルス科のウイルス、パルボウイルス(例えば、B19及びRA−1)、並びにライノウイルス及びコクサッキーBを含むピコルナウイリス科のウイルスなどのウイルスを含む。標的核酸配列を含むことができる他のウイルスは、アデノウイルス、アレナウイルス、アルテリウイルス、アストロウイルス、バキュロウイルス、バンドナウイルス、バルナウイルス、ビルナウイルス、ブロモウイルス、ブニヤウイルス、カリチウイルス、カピロウイルス、カーラウイルス、カリモウイルス、サーコウイルス、クロステロウイルス、コモウイルス、コロナウイルス、コルチコウイルス、シストウイルス、デルタウイルス、ジアントウイルス、エナモウイルス、フィロウイルス、フラビウイルス、フロウイルス、フセロウイルス、ジェミニウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ホルデイウイルス、ハイポウイルス、イダエオウイルス、イノウイルス、イリドウイルス、レビウイルス、リポスリクスウイルス、ルテオウイルス、マクロモウイルス、マラフィウイルス、ミクロウイルス、ミオウイルス、ネクロウイルス、ノダウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、パルティティウイルス、パルボウイルス、フィコドナウイルス、プラズマウイルス、ポドウイルス、ポリドナウイルス、ポテクスウイルス、ポティウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、リジディオウイルス、セキウイルス、シフォウイルス、ソベモウイルス、テクティウイルス、テヌイウイルス、テトラウイルス、トバモウイルス、トブラウイルス、トガウイルス、トンブスウイルス、トティウイルス、ティモウイルス及びアンブラウイルスから選択される科に属する上で言及しなかった種を含む。
【0075】
分析対象物のさらなる例は、アブリン、アフラトキシン、ボツリヌス神経毒素、シグアテラ毒素、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)イプシロン毒素、コノトキシン、ジアセトキシスカーペノール、ジフテリア毒素、グラヤノトキシン、アマニティンス、ギロミトリン及びオレラニンなどのマッシュルーム毒素、フィトヘマグルチニン、ピロリジジンアルカロイド、リシン、サキシトキシン、サキシトキシン、アカダ酸、ディノフィシス毒素、ペクトノトキシン、イエッソトキシン、ブレベトキシン及びドモ酸などの貝毒素(麻痺性、下痢、神経毒性又は健忘)、志賀毒素、志賀毒素様リボソーム不活性化タンパク質、ヘビ毒素、ブドウ球菌腸毒素、T−2毒素及びテトロドトキシンなどの毒素を含む。
【0076】
分析対象物のさらなる例は、スクラピー、クールー、クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、慢性消耗病、致命的家族性不眠症(FFI)、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群(GSS)及び牛海綿状脳症(BSE又は狂牛病)を含む伝達性牛海綿状脳症の病原体のようなプリオンタンパク質を含む。
【0077】
分析対象物のさらなる例は、アカントアメーバ及び他の自由生活アメーバ、アニサキス種並びに他の関連蠕虫回虫(Ascaris lumbricoides)及びヒト鞭虫(Trichuris trichiuta)、クリプトスポリジウム・パーバム、サイクロスポーラカエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)、裂頭条虫(Diphyllobothrium)種、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、腎虫(Eustrongylides)種、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、住血吸虫(Nanophyetus)種、住血吸虫(Shistosoma)種、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)及び旋毛虫属(Trichinella)などの寄生原虫及び蠕虫を含む。
【0078】
分析対象物のさらなる例は、アスペルギルス(Aspergillus)種、ブラストミセス・デルマチチジス(Balstomyces dermatitidis)、カンジダ属(Candida)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシイイ(Coccidioides posadasii)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、メイズラスト(Maize rust)、イネいもち病、イネ褐斑病、ライブラスト(Rye blast)、スポロトリクス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)及びコムギカビなどの真菌を含む。
【0079】
分析対象物のさらなる例は、
(1)米国保健福祉省(HHS)及び米国農務省(USDA)選択因子(7CFR§331、9C.F.R.§121及び42C.F.R.§73)のいずれかの感染性及び/又は複製コンピテント形をエンコードすることができる核酸(合成又は天然由来、連続的又は断片化、宿主染色体中又は発現ベクター中)、
(2)核酸が以下の場合に、列挙した毒素のいずれかの機能型をエンコードする核酸(合成又は天然由来)
(i)ベクター中又は宿主染色体中に存在し、
(ii)in vivo又はin vitroで発現することができる、
及び/又は
(3)細胞調節事象に関与する以下の核酸−タンパク質複合体
(i)ウイルス複製の前駆体であるウイルス核酸−タンパク質複合体、
(ii)RNA構造を修飾し、タンパク質転写事象を調節するRNA−タンパク質複合体、
(iii)ホルモン又は二次細胞シグナリング分子により調節される核酸−タンパク質複合体、
(4)遺伝的に修飾されたウイルス、古細菌、細菌、真菌
などの遺伝子因子、組換え核酸及び組換え生物を含む。
【0080】
分析対象物のさらなる例は、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMなどの上述の分析対象物の例に対する免疫応答分子を含む。
【0081】
E.結合パートナー
1.結合パートナーの種類
結合パートナーとそれらの標的分析対象物の例は、相補的核酸配列(例えば、互いにハイブリッド形成する2つのDNA配列、互いにハイブリッド形成する2つのRNA配列、互いにハイブリッド形成するDNA及びRNA配列)、抗体と抗原、受容体とリガンド(例えば、TNFとTNFr−1、CD142とVIIa因子、B7−2とCD28、HIV−1とCD4、ATR/TEM8若しくはCMGと炭疸毒素の防御抗原部分)、酵素と基質、又は分子と結合タンパク質(例えば、ビタミンB12と内因性因子、葉酸と葉酸結合タンパク質)を含むが、これらに限定されない。結合パートナーのさらなる例は、結合タンパク質、例えば、ビタミンB12結合タンパク質、基本ドメインのスーパークラス、亜鉛配位DNA結合ドメイン、ヘリックス−ターン−ヘリックス、副溝接触を有するベータスカホールド因子、他の転写因子などのDNA結合タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施形態において、結合パートナーは、モノクローナル抗体又は1組のポリクローナル抗体であってよい抗体である。Biochemicals and Reagents for Life Science Research、Sigma−Aldrich Co.、P.O.Box 14508、St.Louis、Mo.、63178(2002/2003)、The Handbook−A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、Tenth Edition、Invitrogen Co.、Carlsbad、CA(2005)、Life Science Products and Services to Accelerate Your Discovery、Invitogen(商標)Life Technologies、1600 Faraday Avenue、Carlsbad、California 92008(2003)、Product Catalog、KPL、Two Cessna Court、Gaitherburg、MD.20879(2004及び2005)並びにPierce Catalog、Pierce Chemical Company、P.O.Box 117、Rockford、III.61105(2005)などの様々なカタログにおける一覧により例示されているように、問題の様々な分析対象物に結合する多数のモノクローナル抗体が入手可能である。
【0083】
他の代表的なモノクローナル抗体は、β−アクチン、DNA、ジゴキシン、インスリン、プロゲステロン、ヒト白血球マーカー、ヒトインターロイキン−10、ヒトインターフェロン、ヒトフィブリノーゲン、p53、B型肝炎ウイルス若しくはその一部、HIVウイルス若しくはその一部、腫瘍壊死因子又はFK−506に特異的に結合するものを含む。特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、T4、T3、遊離T3、遊離T4、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、チログロブリン、TSH受容体、プロラクチン、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(濾胞刺激ホルモン)、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)、hCG+β、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)、DHEA−S(硫酸デヒドロエピアンドロステロン)、hGH(ヒト成長ホルモン)、ACTH(副腎刺激ホルモン)、コルチソル、インスリン、フェリチン、葉酸塩、RBC(赤血球)葉酸塩、ビタミンB12、ビタミンD、C−ペプチド、トロポニンT、CK−MB(クレアチンキナーゼミオグロビン)、ミオグロビン、プロ−BNP(脳利尿ペプチド)、HbsAg(B型肝炎表面抗原)、HbeAg(B型肝炎e抗原)、HIV抗原、複合HIV、H.ピロリ、β−CrosLaps、オステオカルシン、PTH(副甲状腺ホルモン)、IgE、ジゴキシン、ジギトキシン、AFP(α−フェトプロテイン)、CEA(癌胎児抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、遊離PSA、CA(癌抗原)19−9、CA12−5、CA72−4、cyfra21−1、NSE(ニューロン特異エノラーゼ)、S100、P1NP(プロコラーゲンタイプ1N−プロペプチド)、PAPP−A(妊娠関連血漿プロテインA)、Lp−PLA2(リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2)、sCD40L(可溶性CD40リガンド)、IL18、リシン及びSurvivinのうちの少なくとも1つに特異的に結合する抗体から選択される。
【0084】
他の代表的なモノクローナル抗体は、上で代表的な分析対象物として述べた病原体、ウイルス、毒素、原生動物、蠕虫、プリオン、細菌、古細菌及び真菌に特異的に結合するものを含む。
【0085】
他の代表的なモノクローナル抗体は、抗TPO(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)、抗HBc(B型肝炎c抗原)、抗HBc/IgM、抗HAV(A型肝炎ウイルス)、抗HAV/IgM、抗HCV(C型肝炎ウイルス)、抗HIV、抗HIVp−24、抗風疹IgG、抗風疹IgM、抗トキソプラズマ症IgG、抗トキソプラズマ症IgM、抗CMV(サイトメガロウイルス)IgG、抗CMVIgM、抗HGV(G型肝炎ウイルス)、抗炭疸菌及び抗HTLV(ヒトTリンパ栄養ウイルス)を含む。
【0086】
2.支持体
いくつかの実施形態において、結合パートナーは、なんらかの従来の手段、例えば、吸着、吸収、非共有結合、架橋剤による共有結合、又は支持体若しくは第1の結合パートナーのいずれか、若しくは両方の化学的活性化に起因する共有結合により、支持体上に固定化させることができる。いくつかの実施形態において、支持体による第1の結合パートナーの固定化は、結合対を用いることによって達成することができる。例えば、結合対の1つのメンバー、例えば、ストレプトアビジン又はアビジンを支持体に結合させることができ、同じ結合対の他のメンバー、例えば、ビオチンを第1の結合パートナーに結合させることができる。第1の結合パートナーを支持体上に固定化する適切な手段は、例えば、Pierceカタログ(Pierce Chemical Company、P.O.Box 117、Rockford、III.61105、1994)に開示されている。
【0087】
結合パートナーとともに用いることができる支持体の他の例は、膜、ビーズ、粒子、電極、又は容器の壁若しくは表面を含むが、これらに限定されない。支持体は、ニトロセルロース、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、酢酸エチルビニル(EVA)、ガラス、炭素、ガラス質炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ若しくはフィブリル、白金、パラジウム、金、銀、塩化銀、イリジウム又はロジウムなどの、結合パートナーが固定化される材料を含んでいてよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、支持体は、ポリスチレンビーズ又は磁化可能ビーズなどのビーズである。様々な実施形態において、ビーズは、多くの異なるサイズ、例えば、3mm以上、3mm以下、1mm以下、0.1mm以下、100μm以下、10μm以下、5μm以下、2.8μm、1μm、1μm以下、0.5μm以下、0.1μm又は0.1μm以下を有していてよい。ビーズのサイズは、0.01μm〜5mm、0.1μm〜3mm、1μm〜3μm又は2.8μm〜5μmの範囲にあってもよい。特定の実施形態において、ビーズは主に球状である。特定の実施形態において、ビーズは球状でなくてよく、非球状ビーズについては、上の寸法はビーズの内部にとどまることができる最大直線部分の長さを指す。
【0089】
特定の実施形態において、支持体は、結合パートナーの溶解、結合、検出分子の非特異的結合の減少、又は検出工程に不可欠な制御分子の結合を促進するためのさらなるポリマーコーティングを有していてよい。
【0090】
他の実施形態において、支持体は、微小遠心管又は多ウエルプレートの少なくとも1つのウエルである。
【0091】
3.結合パートナーの標識
いくつかの実施形態において、結合パートナーを標識することができる。検出可能な標識は、例えば、発蛍光団、発色団、スピン標識、放射性同位元素、酵素、量子ドット、ビーズ、アミノヘキシル、ピレン、抗体により検出可能な抗原決定基、化学ルミネセンス部分、若しくは電気化学ルミネセンス部分(ECL部分)、ハプテン、ルミネセンス標識、放射性標識、量子ドット、ビーズ、アミノヘキシル、ピレン、金属粒子、スピン標識及び色素であってよい。代表的な標識は、Hemmilaら、J.Biochem.Biophys.Methods、第26巻、283〜290頁(1993)、Kakabakosら、Clin.Chem.、第38巻、338〜342頁(1992)、Xuら、Clin.Chem.、2038〜2043頁(1992)、Hemmilaら、Scand.J.Clin.Lab.Invest.、第48巻、389〜400頁(1988)、Bioluminescence and Chemiluminescence Proceedings of the 9th International Symposium 1996、J.W.Hastingsら編、Wiley、New York、1996、Bioluminescence and Chemiluminescence Instruments and Applications、Knox Van Dyre編、CRC Press、Boca Raton、1985、I.Hemmila、Applications of Fluorescence in Immunoassays、Chemical Analysis、第117巻、Wiley、New York、1991、及びBlackburnら、Clin.Chem.、第37巻、1534頁(1991)に開示されている。
【0092】
標識結合パートナーは、蛍光測定、時間分解蛍光測定及び/又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)測定に有用なものなどの発蛍光団で標識されていてよい。本発明の方法に用いることができる発蛍光団は、IR色素、Dyomics色素、フィコエリトリン、カスケードブルー、Oregonグリーン488、パシフィックブルー、ローダミングリーンなどのローダミン誘導体、5(6)−カルボキシフルオロセイン、シアニン色素(すなわち、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7)(ジエチルアミノ)クマリン、フルオレセイン(すなわち、FITC)、テトラメチルローダミン、リスマリン、Texas Red、AMCA、TRITC、bodipy色素、Alexa色素、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFP類似体、reef coral蛍光タンパク質(RCFPs)、RCFP類似体及び米国特許第5,783,673号、同第5,272,257号及び同第5,171,843号に記載されているtandem色素を含むが、これらに限定されない。
【0093】
本発明に用いることができる酵素標識は、ダイズペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼを含むが、これらに限定されない。
【0094】
本発明に用いることができる放射性同位元素は、131I、32P及び35Sを含むが、これらに限定されない。
【0095】
本発明に用いることができる化学ルミネセンス部分は、アクリジニウム、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、アクリジンジオン1,2−ジオキセタン、ピリドピリダジンを含むが、これらに限定されない。
【0096】
標識結合パートナーのさらなる例は、電気化学ルミネセンス(ECL)アッセイにおけるシグナルの発生に有用である部分、官能基又は分子で標識されている結合パートナーを含む。ECL部分は、電気化学エネルギー源に直接曝露させることにより、電磁波を繰返し放出するように誘導することができるあらゆる化合物であってよい。そのような部分、官能基又は分子は、米国特許第5,962,218号、同第5,945,344号、同第5,935,779号、同第5,858,676号、同第5,846,485号、同第5,811,236号、同第5,804,400号、同第5,798,083号、同第5,779,976号、同第5,770,459号、同第5,746,974号、同第5,744,367号、同第5,731,147号、同第5,720,922号、同第5,716,781号、同第5,714,089号、同第5,705,402号、同第5,700,427号、同第5,686,244号、同第5,679,519号、同第5,643,713号、同第5,641,623号、同第5,632,956号、同第5,624,637号、同第5,610,075号、同第5,597,910号、同第5,591,581号、同第5,543,112号、同第5,466,416号、同第5,453,356号、同第5,310,687号、同第5,296,191号、同第5,247,243号、同第5,238,808号、同第5,221,605号、同第5,189,549号、同第5,147,806号、同第5,093,268号、同第5,068,088号、同第5,061,445号及び同第6,808,939号、Dong L.ら、Anal.Biochem.、第236号、344〜347頁(1996年)、Blohmら、Biomedical Products、第21巻、4号、60頁(1996年)、Jameisonら、Anal.Chem.、第68巻、1298〜1302頁(1996年)、Kibbeyら、Nature Biotechnology、第14巻、3号、259〜260頁(1996年)、Yuら、Applied and Environmental Microbiology、第62巻、2号、587〜592頁(1996)、Williams、American Biotechnology、26頁(1996年1月)、Darsleyら、Biomedical Products、第21巻、1号、133頁(1996年1月)、Kobrynskiら、Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology、第3巻、1号、42〜46頁(1996年1月)、Williams、IVD Technology、28〜31頁(1995年11月)、Deaver、Nature、第377号、758〜760頁(1995年10月26日)、Yuら、BioMedical Products、第20巻、10号、20頁(1995年10月)、Kibbeyら、BioMedical Products、第20巻、9号、116頁(1995年9月)、Schutzbankら、Journal of Clinical Microbiology、第33巻、2036〜2041頁(1995年8月)、Sternら、Clinical Biochemistry、第28巻、470〜472頁(1995年8月)、Carlowicz、Clinical Laboratory News、第21巻、8号、1〜2頁(1995年8月)、Gatto−Menkingら、Biosensors & Bioelectronics、第10巻、501〜507頁(1995年7月)、Yuら、Journal of Bioluminescence and Chemiluminescence、第10巻、239〜245頁(1995年)、Van Gemenら、Journal of Virology Methods、第49巻、157〜168頁(1994年)、Yangら、Bio/Technology、第12巻、193〜194頁(1994)、Kentenら、Clinical Chemistry、第38巻、873〜879頁(1992年)、Kenten、Non−radioactive Labeling and Detection of Biomolecules、Kessler編、Springer、Berlin、175〜179頁(1992年)、Gudibandeら、Journal of Molecular and Cellular Probes、第6巻、495〜503頁(1992年)、Kentenら、Clinical Chemistry、第37巻、1626〜1632頁(1991年)、Blackburnら、Clinical Chemistry、第37巻、1534〜1539頁(1991年)、Electrogenerated Chemiluminescence、Bard編、Marcel Dekker(2004年)、並びにKnight A.及びGreenway G.、Analyst、第119巻、879〜890頁に開示されている。
【0097】
特定の実施形態において、電気化学ルミネセンス部分は、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、ロジウム、白金、パラジウム、モリブデン及びテクネチウムなどの金属を含んでいてよい。特定の実施形態において、電気化学ルミネセンス部分は、セリウム、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジウム、プロメチウム、テルビウム、ツリウム及びイッテルビウムなどの希土類金属を含んでいてよい。特定の実施形態において、電気化学ルミネセンス部分は、ルテニウム又はオスミウムなどの金属を含んでいてよい。特定の実施形態において、結合パートナーは、ルテニウム(II)トリスビピリジン及びその塩([Ru(bpy)3]2+)などのトリスビピリジルルテニウム基のようなルテニウム部分で標識することができる。他の代表的なECL部分は、構造が
【化1】
である[Ru(スルホ−bpy)2bpy]2+であってよい[式中、Wは、NHSエステル、活性化カルボキシル、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドラジド、マレイミド又はホスホルアミドなどの共有結合を形成するように、生物学的物質、結合パートナー、酵素基質又は他のアッセイ試薬と反応することができるECL部分に結合した官能基である]。[Ru(スルホ−bpy)2bpy]2+は、示した構造の他の塩も含む。
【0098】
III.装置
いくつかの実施形態において、本発明は、上述の方法を実施するための装置を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明は、
(a)サンプリング器具及びフィルターから流れるように方向が定められた第1の一方向弁を介してサンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)第1の一方向弁とフィルターとの間の箇所に流体的に接続され、フィルターから廃棄物管路に向かって流れるように方向が定められた第2の一方向弁に流体的に接続されている廃棄物管路、
(c)液体の流れをフィルター中に不可逆的に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(d)前記1つ又は複数の分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(e)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(f)標識結合パートナーを測定する手段
を含む、1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置を提供する。
【0100】
様々な実施形態において、本発明は、
(a)サンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)液体の流れをフィルター中に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(c)前記1つ又は複数の分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(d)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(e)標識結合パートナーを測定する手段
を含む、1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置を提供する。
【0101】
特定の実施形態において、本発明は、
(a)フィルターにより下部容器から流体的に封じられている上部容器、及び
(b)上部容器を経ることなく、下部容器に出入りすることができる開口部
を含む試料ろ過器具を提供する。
【0102】
いくつかの実施形態において、装置は、1回又は複数回使用することができる電極を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、サンプリング器具は、空気サンプラーである。
【0104】
いくつかの実施形態において、試料ろ過器具は、半径方向対称性を有する。他の実施形態において、試料ろ過器具の外部は、半径方向対称性を有さない。
【0105】
標識結合パートナーを測定するためにルミネセンス(例えば、電気化学ルミネセンス、蛍光又は化学ルミネセンス)を使用する実施形態において、装置は、ルミネセンスの放射を測定するための光検出器、例えば、フォトダイオード、CCD若しくはCMOSセンサ、及び/又は光電子倍増管を含んでいてよい。
【0106】
1.結合試薬容器
いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、乾燥組成物を収容する。乾燥組成物の例は、組成物の総重量に対して3重量%以下の含水率を有する組成物及び組成物の総重量に対して1重量%から3重量%の含水率を有する組成物を含む。いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、25℃で95%の相対湿度で少なくとも4週間にわたり容器内の乾燥組成物を乾燥した状態に維持するのに十分な水分バリアを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、乾燥組成物は、結合アッセイ及び陽性対照に用いる組成物を含む。
【0108】
特定の実施形態において、結合試薬容器は、凍結乾燥緩衝液をさらに含んでいてよい。凍結乾燥緩衝液は、当技術分野でよく知られており、リン酸緩衝剤、及びトレハロース若しくはスクロースなどの1つ又は複数の凍結防止剤を含んでいてよい。
【0109】
特定の実施形態において、結合試薬容器は、第2の結合パートナー、分析対象物又は分析対象物の類似体の支持体への非特異的結合を阻害又は減少させるために処理することができるアッセイ支持体を含む。あらゆる従来の阻害剤を用いることができる。適切な阻害剤は、例えば、米国特許第5,807,752号、同第5,202,267号、同第5,399,500号、同第5,102,788号、同第4,931,385号、同第5,017,559号、同第4,818,686号、同第4,622,293号、同第4,468,469号、カナダ特許第1,340,320号、国際公開第97/05485号、欧州特許公開A1第566,205号、欧州特許公開A2第444,649号、欧州特許公開A1第165,669号に記載されている。代表的な阻害剤は、動物血清(例えば、ヤギ血清)、ウシ血清アルブミンなどの血清及び血清アルブミン、ゼラチン、ビオチン並びに乳汁タンパク質(「blotto」)を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、各ウエルが1つ又は複数の乾燥組成物を含むことができる、例えば、24、96、384、1536又は6144ウエルを含む多ウエルプレートであってよい。特定の実施形態において、機器に用いられるような多ウエルプレートは、底部の寸法に関するANSI/SBS20004マイクロプレート規格(ANSI/SBS1−2004)に規定されているほぼ最大寸法より大きくない外側寸法を有していてよい。機器に用いられるような多ウエルプレートの第3の寸法(すなわち、高さ)は、約44mmより大きくない外側寸法を有していてよい。様々な実施形態において、容器は、直径が約9mm以下で、高さが約40mm以下の管であってよい。いくつかの実施形態において、容器は、約8.6mmの最大外径及び約33.8mmの高さを有する管であってよい。いくつかの実施形態において、結合試薬容器の2次元アレイは、上の寸法の多ウエルプレート内にあるホルダーに入れることができる。様々な実施形態において、ホルダー中の容器の2次元アレイは、高さが35mmであってよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、密封することができる。いくつかの実施形態において、容器は、容器の開口部に押し込むことができるEVA又はSantoprene(登録商標)などのエラストマー、熱硬化性又は熱可塑性材料で密封することができる。いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、フォイルマイクロプレートシールなどの金属層を含む積層材で密封することができる。様々な実施形態において、結合試薬容器は、容器にヒートシールすることができる積層材などの熱により変形できる層を含む積層材で密封することができる。いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、容器に積層材を結合させることができる接着性層を含む積層材で密封することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、密封バッグ内の1つ又は複数の外被(容器)などの少なくとも1つの外被を含む。いくつかの実施形態において、密封バッグは、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、アルミニウム、ニッケル、ポリエステル−フォイル−ポリエチレンの3積層体又はポリエステル−ポリエチレンの2積層体を含むことができる。いくつかの実施形態において、乾燥剤を最も内側の外被と最も外側の外被との間に加えることができる。乾燥剤は、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、非晶質ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、クレー、活性アルミナ、ゼオライト又はモレキュラーシーブを含んでいてよい。いくつかの実施形態において、湿度インジケータを最も内側の外被と最も外側の外被との間に加えることができる。湿度インジケータは、例えば、乾燥組成物が依然として十分に乾燥しており、その安定性は損なわれていなかったという表示として用いることができる。いくつかの実施形態において、湿度インジケータは、最も外側の外被を通して見ることができる。特定の実施形態において、湿度インジケータは、米国軍用規格MS20003に適合するように設計されたもののような変色により湿度が示される、カード又はディスクであってよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、容器により形成される湿度バリアは、外部条件が10日間、20日間、40日間、67日間、3カ月間、6カ月間、12カ月間、18カ月間、24カ月間又はより長期間にわたり45℃及び相対湿度100%であるとき、乾燥組成物を乾燥した状態に維持するのに十分であり得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、容器により形成される湿度バリアは、外部条件が1日間、1週間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、12カ月間、18カ月間、24カ月間又はより長期間にわたり25℃及び相対湿度100%であるとき、乾燥組成物を乾燥した状態に維持するのに十分であり得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、容器により形成される湿度バリアは、外部条件が3カ月間、6カ月間、12カ月間、18カ月間、24カ月間又はより長期間にわたり4℃及び相対湿度100%であるとき、乾燥組成物を乾燥した状態に維持するのに十分であり得る。
【0116】
2.フローセルに基づく生物学的検出システム
図1は、代表的な検出システム、例えば、フローセルに基づく生物学的検出システムの概略図である。示すように、検出システムの全動作は、コンピュータシステムにより制御することができる。試料の分析は、フローセル112、例えば、放射能、吸光度、磁性若しくは磁化可能物質、光散乱、光学干渉(すなわち、干渉測定)、屈折率変化、表面プラスモン共鳴及び/又はルミネセンス(例えば、蛍光、化学ルミネセンス及び電気化学ルミネセンス)を測定するように構成されたフローセルで行われる。1つの態様によれば、フローセル112は、電気化学ルミネセンス測定を行うように構成することができる。代表的な電気化学ルミネセンスフローセル及びそれらの使用の方法は、米国特許第6,200,531号に開示されている。フローセル112の動作は、フローセル112からアッセイのデータを受け、データ解析を行うこともできるコンピュータシステムにより制御することができる。フローセル112は、試料が適切に吸引されることを保証するために用いることができる、液体と空気との差を検出するように構成することができる。
【0117】
代表的なフローセルに基づく生物学的検出システムは、ガス及び液体を含むことができる1つ若しくは複数の試薬及び/又は1つ若しくは複数の試料を導入するための液体処理ステーションを含んでいてよい。図1に流量制御弁109及び116並びにピペッター111を受け入れるためのマニホールドを含むことができる液体処理ステーション110を示す。追加の流量制御弁並びに試薬/ガス検出器も存在していてよい。
【0118】
ピペッター111は、マニホールドの密閉面及びピペッターの密閉面(例えば、カラー、フランジ等)上に配置されたOリング120を用いて液体処理ステーション110内に気密シールを形成することができる。示すように、液体処理マニホールド密閉面は、試薬送入管路から離れた位置に設けることができる(例えば、試薬管路の吸引チャンバー入口箇所の上)。さらに、1つ又は複数の試薬入口箇所を吸引チャンバー内のあらかじめ決定した高さに配置することができる。例えば、示すように、液体試薬管路は、ガス管路の汚染を防止するために、ガス試薬管路の下に配置することができる。試薬の吸引は、試薬を選択される試薬ビン125から、フィルター107から、又は可能な追加のビンから、或いは空気を示されていない流量制御弁を介して吸引するように、ピペッターの適切な位置決め及びポンプ113の作動により、1つ又は複数の流量制御弁109、116の選択的な作動を調整することにより制御できる。
【0119】
検出システムは、容器及び/又は液体処理ステーションから液体を吸引/分配するようにピペッターを向けることができるように、ピペッター111及び1つ又は複数の結合試薬容器135を精密かつ正確に位置決めすることができる。容器は、乾燥又は湿潤結合試薬108を有することができる。ピペッター111と結合試薬容器135の相対的な位置決めは、3次元位置決めシステム117によって行われる。3方向の運動は、おそらく製造に関連する垂直性からの摂動のみを有するので、相互に垂直に非常に近いか、或いは矩形の箱のすべての箇所にわたり動く必要がおそらくないため、明確に垂直でないことがあり得る。或いは、位置決めシステムは、代替座標システム(例えば、1次元、2次元、極座標等)に基づくものであってよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、試料収集器具100は、例えば、湿潤濃縮空気試料を収集することができる。代表的な試料収集器具は、Spector Industries(Kansas City、MO)によるSpinCon(登録商標)改良型空気サンプラーである。特定の実施形態において、試料収集器具100は、試料を例えば手で入れることができる開放カップ又は貯蔵容器であってよい。場合によっては、試料収集器具は、配管123を介して試薬ビン125中にある抽出緩衝液を用いることができる。或いは、器具中又は容器の外部にある異なる液体を試料収集器具100により用いることができる。場合によっては、試料収集器具100からの配管101には、器具内の大気への通気穴を設けることができる。ポンプ113は、ピペッター111、流量制御弁109、フィルター107、配管105、配管103、一方向弁102及び配管101を介して試料収集器具100からろ液を吸引することができる。試料収集器具100は、液体を一方向弁102を介して配管105中に吸引し、配管105から液体を配管104及び一方向弁115を介して廃棄物容器106に送る別の方法でポンプ113を用いて過剰な試料液体を排出させることができる。フィルター107は、抽出緩衝液(例えば)を流量制御弁116を介して少なくともピペッター111中に吸引し、抽出緩衝液をフィルター107を経て、一方向弁115を介して廃棄物容器106に押し込む別の方法でポンプ113を用いて逆洗又は少なくとも部分的に洗浄することができる。
【0121】
試料収集器具100からの試料をフィルター107によりろ過し、ピペッター111中に吸引することができる。次いで、試料を結合試薬容器135中に分配することができる。試薬ビン125からの抽出緩衝液又は他の試薬をさらに結合試薬容器135中に分配することができる。次いで結合試薬と試料中に見出した分析対象物の間で結合反応は起こり得る。一定期間後に試薬ビン125からの追加の抽出緩衝液又は他の試薬は結合試薬容器135中に分配することができる。さらなる時間間隔の後に、反応混合物を測定のためにフローセル112中に吸引することができる。測定技術によって、測定が行われる前に追加の試薬がフローセルに必要なことがある。例えば、電気化学ルミネセンス測定の場合には、フローセル中の反応混合物について遊離−結合分離の実施中に一般的に共反応物をフローセルに加える。測定後、試料を廃棄物容器に分配することができる。
【0122】
3.フローセルを含まない検出システム
図2にフローセルを使用しない検出システムのいくつかの実施形態を示す。これらの実施形態は、液体対空気を検出する能力又は試料が吸引されることを保証する他の手段を保有することができる。これらの実施形態と上述のフローセル実施形態との相違点のみを述べると、これらの実施形態において、結合試薬容器202は、結合パートナー並びに測定に必要な他の物質を液体又は乾燥した形態で収容することができる。例えば、電気化学ルミネセンス測定の場合、結合試薬容器202は、電気化学ルミネセンスを開始させるための電極を含むことができる。比色測定の場合、結合試薬容器202は、試料の光学的特性をin sutuで測定するための光路を含むことができる。いくつかの実施形態において、結合試薬容器202は、複数の分析対象物に対する結合パートナーを収容することができる。これらの結合パートナーは、少なくとも一部は測定技術が標識結合パートナー間でどのように区別するかによって、201として図に示すように空間的に分離することができるか、又は同じ場所に配置することができる。ピペッター111は、試料を抽出緩衝液及び/又は測定に必要な他の試薬の容器にピペッティングにより移すことができる。ピペッター111は、結合試薬容器202の洗浄又は内容物を交換するために別の方法で用いることができる。
【0123】
4.代替構成
図3に試料を得るための代替構成を用いるいくつかの実施形態を示す。図3aに示すように、ポンプ301をフィルター107の前に置くことができる。この位置では、ポンプ301は、試料のより迅速なろ過を可能にするためにフィルター107にわたる大きい圧力を発生させることができる。ポンプ301はまた、過剰な圧力が生じないことを保証するための圧力監視器具を含むことができる。過剰な試料を廃棄物容器に送ったり、フィルター107を逆洗するなどの他の特徴を保有させることができる。簡潔のために、斜線398は、図1又は図2の装置をこのシステムに接続させることができる場所を示す。図3bに、試料収集器具100が用いる圧力で常に開いている通気穴を有さない代表的な実施形態を示す。ポンプ302は、試料収集器具100及びフィルター107を通して液体を押し出すことができる。ポンプ302はまた、過剰な圧力が生じないことを保証するための圧力監視器具を含むことができる。簡潔のために、斜線399は、図1又は図2の装置をこのシステムに接続させることができる場所を示す。
【0124】
図4に示すように、いくつかの実施形態の配管105は、フィルターと常時流体接触していない。ここに示すように、試料収集器具100は、試薬ビン125中に存在する抽出緩衝液に場合によってポンプ302及び配管123を介して接続させることができる。或いは、異なる液体を試料収集器具100により使用することができる。ポンプ302は、容器ホルダー402中にある容器401に試料を分配することができる。次に、結合パートナーとの結合及び最終的な測定のために、容器ホルダー402を動かす運動制御装置403及びピペッター111を動かす運動制御装置117により、試料を容器401から吸引して、例えば、結合試薬容器135又は結合試薬容器202中に入れることができる。いくつかの実施形態において、試料は、手又はロボット組込みの代替部品により容器401に入れることができる。図4に容器401及び容器ホルダー402の円形の配置を示すが、他の形状(例えば、矩形配列又は線状配列)も考えられる。
【0125】
図5に容器401のいくつかの実施形態を示す。いくつかの実施形態において、空間501及び503はフィルター502により分離することができる。試料が最初に空間501に入ることができ、ろ液が空間503に入ることができる。ピペッター111は、ろ液に接触するためにフィルター502を貫通することができる。いくつかの実施形態において、試料が最初に開口部505を経て空間507に入ることができ、フィルター502によりろ過されることができ、ろ液が空間506に入ることができる。次に、ピペッター111は、フィルター502に接触せずに開口部506を経てろ液に接触することができる。容器の底部は、ピペッター111がほぼすべてのろ液を吸引することができるように構成することができる。いくつかの実施形態において、空間507及びフィルター502は円環状であってよく、一方、開口部506は環状体の中心部にあってよい。これ及び同様な実施形態において、容器401の半径方向の対称性は、容器ホルダー402の回転と独立に生じ得る。いくつかの実施形態において、試料が最初に空間501に入ることができ、ろ液が空間503に入り、次いで、コネクタ509を経て空間508に流入することができる。次に、ピペッター111は、フィルター502に接触せずにろ液に接触することができる。容器401が半径方向に対称でない実施形態において、検出システムが容器401の向きを知ることができるように容器ホルダー402を調節することができる。ろ過工程を促進するために、容器ホルダー402を遠心分離機として動作させて重力を増大させる(一般相対性理論により)か、又は試料を受け入れる容器の上部の一部を密閉して加圧することができる。これらの容器401の位相上の同等物も本発明の一部である。
【0126】
図6に示すように、本発明のいくつかの実施形態は、フィルター601を含むピペットチップ600を使用する。試料収集器具100からのろ液は、配管105及びピペットチップ600を通過し、検出システムによって、結合試薬容器135又は結合試薬容器202に入ることができる。場合によっては、試料収集器具は、配管123を介して抽出緩衝液115を使用することができる。
【0127】
いくつかの実施形態は、図4及び/又は図6における変形形態であってよい。配管123にポンプ302を設置せずに、ポンプ301と同様な方法でポンプを配管105に設置することができる。試料収集器具100を空にする手段として、一方向弁102及び115の対が場合によって存在していてよい。
【0128】
特定の実施形態において、フィルター107、502及び/又は601は、本明細書における他所で記載した特性及び組成を有する。特定の実施形態において、試薬ビン125に入っている抽出緩衝液は、本明細書における他所で記載した特性及び組成を有する。
【0129】
ポンプ113、301及び302は、いくつかの種類であってよい。例えば、ポンプは、米国特許出願公開US−2004−0096368A1又はPCT国際公開2005/114175A2に記載されているものであってよい。ポンプは、蠕動式、シリンジ式、ギア式、ピストン式(Fluid Metering,Inc.、Syosset、NYにより販売されている無弁設計並びに弁を用いるより伝統的な設計を含む)又は他の容積式設計であってよい。ポンプは、真空ポンプ及び渦巻式ポンプなどの圧力源であってよい。特定の実施形態において、本発明におけるポンプは、液体を移動させるのに毛細管作用のみに依拠することはできない。
【0130】
IV.キット
いくつかの実施形態において、本発明は、問題の分析対象物を検出するためのアッセイを実施するための試薬、試料をろ過するためのフィルター及びアッセイに対する試料マトリックスの影響を減少させるための少なくとも1つの抽出緩衝液を含むキットを提供する。
【0131】
特定の実施形態において、本発明は、フィルター、並びに(a)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び(b)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液から選択される少なくとも1つの試薬を含む、上の方法を実施するためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、前記分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーをさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、前記分析対象物に対して特異的な第1の標識結合パートナー及び第2の標識結合パートナーをさらに含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2の結合パートナーのうちの少なくとも1つが抗体である。
【0132】
いくつかの実施形態において、キットは、分析対象物の標識類似体及び前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーをさらに含む。いくつかの実施形態において、分析対象物の標識類似体は、既知の量の標識された分析対象物自体である。
【0133】
特定の実施形態において、アッセイを実施するための試薬が上記のように結合試薬容器中に入れられており、一方、フィルター及びアッセイに対する試料マトリックスの影響を減少させるための少なくとも1つの抽出緩衝液が第2の容器中に入れられていてよい。
【0134】
様々な実施形態において、キットはキットの使用方法を記載している添付文書又はパッケージの形の取扱説明書を備えていてよい。
【0135】
本発明による特定のキットにおいて、アッセイを実施するための試薬が上述の標識のうちの少なくとも1つを含む。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態において、アッセイを実施するための試薬が上述の支持体のうちの少なくとも1つを含む。
【0137】
キットの構成要素は、問題の分析対象物を検出するためのアッセイを実施するのに有用なあらゆる試薬を含んでいてよい。特定の実施形態において、キットは、アッセイ用又は試薬の完全性を維持するための容器、湿度インジケータ又は湿度バリアのいずれかを含んでいてよい。
【0138】
以下の実施例は、本発明の例示であること意味するものであり、本発明の範囲及び適用を限定するものではない。当業者は、本発明の目的を反映するさらなる実施形態を認識することができる。
【実施例】
【0139】
これらの実施例では、分析対象物検出免疫アッセイの前又は実施中に試料を処理することの有用な効果を述べる。そのような処理のない場合、試料マトリックス中の成分が、特定の分析対象物を検出するのに必要な結合相互作用を妨害することがあり得る。結果として、結合シグナル及び/又はシグナル対バックグラウンド比(S:B)が減少し、分析対象物の検出が困難になる。1つの実施例で述べる試薬及び他の定義は、当該実施例における記述/定義によって明確に取って代わらない限り、他の実施例にも適用される。
【0140】
(実施例1)
環境マトリックスはシグナル及びシグナル対バックグラウンド比を著しく減少させる
検出する分析対象物としてマウスIgG抗体を用いて免疫アッセイを実施した。環境マトリックス(例えば、MRマトリックス)がアッセイに及ぼす影響を検討するために、分析対象物標準は、湿式濃縮装置(MRマトリックス)を通して郵便室内の空気をろ過して調製したマトリックス又はリン酸緩衝生理食塩液(PBSマトリックス)で保存マウスIgGを10μg/mlに希釈して調製した。PBSマトリックスは、pH7.4の0.3%(v/v)Tween(登録商標)(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、10mMリン酸緩衝液、120mM NaCl、2.7mM KCl、0.1%(v/v)ヒドロキシピリジン及び0.1%(v/v)メチルイソチアゾリノン(MIT)を含んでいた。MRマトリックス中に存在する物質を図10に示す。希釈保存溶液をMRマトリックス又はPBSでさらに連続希釈して、0.5ng/ml〜1000ng/mlの範囲の濃度のマウスIgGを含む試料を得た。
【0141】
ヤギ抗マウスIgG Fc抗体で被覆したビーズを以下のように準備した。最初に、ヤギ抗体をビオチンで標識した。NHS−LC−LC−ビオチン(Pierce)をジメチルスルホキシド(DMSO)で1mg/mlの濃度に希釈して、ビオチン溶液を調製した。PBS中に0.5mgのヤギ抗体を含む容積を100μlのビオチン溶液と混合した。混合物を絶えず振とうしながら室温で1時間インキュベートした。ヤギ抗体−ビオチン複合体を、Pierce slide−a−lyzersを用いて、5時間ごとに緩衝液を交換し、3回交換のPBSに対して透析した。ストレプトアビジンを被覆した直径2.8μmの超常磁化可能ビーズ(Dynal Biotech)4mgを10μgのビオチン標識ヤギ抗体と混合し、微小遠心管中で絶えず振とうしながら室温で1時間インキュベートした。ビーズを1mlのアッセイ緩衝液で3回洗浄し、5mg/mlの最終濃度に再構成した。
【0142】
抗マウスIgGF(ab)2フラグメントを製造業者の指示に従って[Ru(bpy)3]2+(BV−TAG NHS Ester、BioVeris、Corp Gaithersburg、MD)で標識した。
【0143】
抗体被覆ビーズをアッセイ緩衝液で1:40に希釈し、25μlのこの懸濁液を各アッセイウエルに加えて、免疫アッセイを実施した。50μlの各マウスIgG試料を各ウエルに3系列で加えた。[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントをアッセイ緩衝液で670ng/mlに希釈した。25μlの標識F(ab)2フラグメント溶液をすべてのアッセイウエルに加えた。アッセイプレートを振とうしながら室温で15分間インキュベートした。製造業者の指示に従ってM−seriesM1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて超常磁化可能ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントの量を測定する前に、300μlのPBS希釈剤をすべてのウエルに加えた。
【0144】
結果を表3及び図7に示す。データから、MRマトリックスが該アッセイにおけるシグナル対バックグラウンド比を著しく減少させたことがわかる。
【0145】
【表3】
【0146】
(実施例2)
シグナル及びS:B比に対する試料の調製の影響
MRマトリックスで希釈したマウスIgGの試料を実施例1で述べたように調製した。抗マウスIgGFcフラグメント抗体被覆ビーズをアッセイ緩衝液で1:40に希釈し、25μlのこの懸濁液を各アッセイウエルに加えて、免疫アッセイを実施した。50μlの各マウスIgG試料を各ウエルに3系列で加えた。[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントをアッセイ緩衝液で670ng/mlに希釈した。25μlの標識F(ab)2フラグメント溶液をすべてのアッセイウエルに加えた。アッセイプレートを振とうしながら室温で15分間インキュベートした。製造業者の指示に従ってM−Series M1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて超常磁化可能ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントの量を測定する前に、300μlのホウ酸緩衝液(0.1Mホウ酸ナトリウム、0.5M NaCl、0.3%Tween(登録商標)20、pH8.5)をすべてのウエルに加えた。PBS希釈剤はPBSマトリックスと異なる保存剤を使用し、PBS希釈剤はヒドロキシピリジン及びMITの代わりに0.1%(v/v)KathonIIcG/ICP(Sigma Aldrich)を含む。
【0147】
結果を表4及び図8に示す。表3及び図7と比較することにより、インキュベーションの後、ECL測定の前にホウ酸緩衝液を免疫アッセイに加えることにより、シグナル対バックグラウンド比が著しく増加することわかる。
【0148】
【表4】
【0149】
(実施例3)
マトリックスのろ過の効果
MRマトリックスで希釈した試料について、リシンを検出するための免疫アッセイを実施した。リシン(Ricinus communis agglutinin II、RCA60)をMRマトリックスで1000ng/ml、100ng/ml、10ng/ml及び1ng/mlに希釈した。アッセイの前に、各試料の一部を5ml注射器を用いて5μmAcrodisc(登録商標)シリンジフィルター(Pall Corp.、Elmhurst、NY)によりろ過した。実施例1で述べたように、リシンに結合する抗体を用いてビーズを被覆した。実施例1で述べたように、リシンに結合する第2抗体を[Ru(bpy)3]2+で標識した。
【0150】
25μlの抗体被覆超常磁化可能ビーズ懸濁液を各アッセイウエルに加えた。50μlの各ろ過済みリシン試料をアッセイウエルに2系列で加えた。MRマトリックス希釈の影響をろ過と比較するために、100μlの未ろ過リシン試料をアッセイウエルに加えた。25μlの[Ru(bpy)3]2+標識抗リシン抗体及び25μlのビオチン標識抗体被覆ビーズをすべてのアッセイウエルに加えた。アッセイプレートを振とうしながら室温で15分間インキュベートした。製造業者の指示に従ってM−Series M1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて超常磁化可能ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントの量を測定する前に、300μlのホウ酸緩衝液(0.1Mホウ酸ナトリウム、0.5M NaCl、0.3%Tween(登録商標)20、pH8.5)をすべてのウエルに加えた。
【0151】
表5及び図9に示すように、分析対象物試料のろ過は、未ろ過試料と比較してシグナル及びシグナル対バックグラウンド比を実質的に改善した。
【0152】
【表5】
【0153】
図11に測定セル電極上へのろ過済み及び未ろ過試料からの超常磁化可能ビーズの沈着の間の差を示す。最も内側の円は、これらの画像を得るために除去した光検出器に直接可視である作用電極の一部である。1つ又は複数の垂直のバンドを形成している褐色の小粒は、超常磁化可能ビーズである。(A)は、試料を本発明によるフィルター及び抽出緩衝液で処理した場合のビーズの沈着を示す。(B)は、ろ過せずに処理した同じMRマトリックスを含む試料で開始したビーズの沈着の写真である。画像は、マトリックスは、両方が実測電気化学ルミネセンスに影響を及ぼすと予想される捕捉されるビーズの数並びにそれらの分布に影響を及ぼすことを示している。
【0154】
(実施例4)
アッセイの感度
本発明により実施されるリシンアッセイの感度の下限を試験するために、リシンをMRマトリックスで0.2、2、20、200及び2000pg/mlに希釈した。免疫アッセイインキュベーションステップの完了後までホウ酸緩衝液を加えず、米国政府により提供された重要試薬プログラム(Critical Reagent Program)(CPR)試薬を用いたこと以外は、実施例3で述べたように試料をろ過し、アッセイした。測定は、1回測定した0pg/ml濃度を除いて、2回繰り返して行った。
【0155】
表6に本実験におけるシグナル対バックグラウンド比を示す。図12に本実験におけるシグナル値を示す。本アッセイは、少なくとも200pg/mlのリシン濃度に対して感度が高かった。
【0156】
【表6】
【0157】
(実施例5)
アッセイシグナルに対するホウ酸緩衝液単独の影響
ホウ酸緩衝液がアッセイの性能を改善するかどうかを検討するために、炭疸菌芽胞(Sterne株)をPBSマトリックス、又はMRマトリックスとホウ酸緩衝液との50%/50%混合物で102コロニー形成単位(cfu)/mlから106cfu/mlまでの範囲の濃度に希釈した。各試料の一部における芽胞を製造業者の指示に従って標準CRP試薬を用いてろ過せずにアッセイした。簡単に述べると、100μlの試料ろ液又はPBS希釈芽胞を、CRPアッセイ試薬を含み各管に加えた。次いで、管をM1M分析装置に入れ、インキュベートし、読み取るように設定した。15分間のインキュベーションの終了時に、300μlのPBS希釈剤をすべての試料に加えた。超常磁化可能ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識抗炭疸菌抗体の量を製造業者の指示に従ってM1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて測定した。
【0158】
表7及び図13に結果を示す。ろ過しなかった試料中のMRマトリックス及びホウ酸緩衝液の存在下で測定したシグナル及びシグナル対バックグラウンド比は、両方とも対照値より低下した。
【0159】
【表7】
【0160】
インキュベーション期間の後の300μl希釈でPBS希釈剤の代わりにホウ酸緩衝液を用いた追加実験を行った。結果(示さず)は、表7及び図13と同様であった。インキュベーション期間の後のホウ酸緩衝液の添加は、ろ過しなかった場合の結果に影響を及ぼさなかった。
【0161】
(実施例6)
ろ過の前に加えたホウ酸緩衝液の影響
ろ過ステップの前の環境マトリックス試料へのホウ酸緩衝液の添加が後に測定されるECLシグナルに影響を及ぼすかどうかを検討するために、以下の実験を実施した。バシラス・グロビギー(Bacillus globigii)(BG)を含む2組の試料、すなわち、ホウ酸緩衝液で1:1に希釈したMRマトリックス中BGの連続希釈物(「試料1」)とMRマトリックス単独中BGの連続希釈物(「試料2」)を調製した。両方の組の試料を上述のように5μm Acrodisc(登録商標)シリンジフィルターを用いてろ過した。
【0162】
25μlの抗BG抗体被覆超常磁性ビーズ懸濁液を各アッセイウエルに加えた。100μlの試料1希釈物を3つのアッセイウエルに加えた。50μlの各試料2希釈物を3つのアッセイウエルに加えた。25μlの[Ru(bpy)3]2+標識抗BG抗体をすべてのアッセイウエルに加えた。アッセイプレートを振とうしながら室温で15分間インキュベートした。次いで、300μlのホウ酸緩衝液を試料1ウエルのそれぞれ、及び6つの試料2ウエルの各組の3つに加えた。300μlのPBS希釈剤を残りの試料2ウエルに加えた。次いで、超常磁性ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識抗体結合の量を製造業者の指示に従ってM−Series M1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて測定した。
【0163】
表8及び図14に結果を示す。低分析対象物濃度におけるシグナル及びシグナル対バックグラウンド比がホウ酸希釈を行うことによって改善された。
【0164】
【表8】
【0165】
本明細書は、本明細書で引用した参考文献の教示に照らして最も十分に理解される。本明細書における実施形態は、本発明の実施形態の実例であり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。当業者は、他の多くの実施例が本発明によって包含されることを容易に認識する。本開示で引用したすべての刊行物及び特許は、それらの全体が参照により組み込まれる。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾又は相反する限り、本明細書はそのような資料に取って代わるものとする。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の従来技術であることを容認するものではない。
【0166】
特に示さない限り、特許請求の範囲を含む本明細書で用いる成分の量、反応条件等を表すすべての数は、すべての場合に「約」という語により修正されると理解すべきである。したがって、反するものとして特に示さない限り、数値パラメーターは、概数であり、本発明によって得ようとする所望の特性に異なることがあり得る。少なくとも、また請求事項の範囲の同等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効数字の数及び通常の丸め法に照らして解釈すべきである。
【0167】
特に示さない限り、一連の要素の前の「少なくとも」という語は、該一続きのすべての要素に当てはまると理解すべきである。当業者は、わずかな通常の実験を用いて、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態の多くの同等物を認識、又は確認することができるであろう。そのような同等物は、以下の請求事項の範囲によって包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】再使用可能な検出システムのいくつかの例示的な実施形態の概略図である。
【図2】使い捨て式検出システムのいくつかの例示的な実施形態の概略図である。
【図3】aは、検出システムのサンプリング部分のいくつかの例示的な実施形態の概略図である。bは、検出システムのろ過部分のいくつかの例示的な実施形態の概略図である。
【図4】検出システムのサンプリング及びろ過部分のいくつかの例示的な実施形態の概略図である。
【図5】検出システム用の使い捨て式フィルターの例示的な実施形態の概略図である。
【図6】検出システム用の使い捨て式フィルターの例示的な実施形態の概略図である。
【図7】マウスIgG免疫検出アッセイにおける試料のシグナル対バックグラウンド比(S:B)に対する環境マトリックス(MRマトリックス)の抑制効果を示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【図8】本発明によるマウスIgG免疫検出を実施することにより、シグナル対バックグラウンド比(S:B)に対する環境マトリックス(MRマトリックス)の影響が減少することを示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【図9】免疫検出アッセイに使用する前にMRマトリックス及びリシンを含む環境マトリックス試料をろ過することにより、シグナルに対する環境マトリックスの影響が減少することを示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【図10】環境マトリックス(MRマトリックス)試料の顕微鏡写真である。格子線は40μm間隔である。
【図11】環境マトリックス(MRマトリックス)を含む試料について実施した免疫検出アッセイにおける超常磁化可能ビーズの沈着を示す図である。最も内側の円は、これらの画像を得るために除去した光検出器に直接可視である作用電極の一部である。1つ又は複数の垂直のバンドを形成している褐色の小粒は、超常磁化可能ビーズである。(A)は、試料を本発明によるフィルター及び抽出緩衝液で処理した場合のビーズの沈着を示す。(B)は、標準的な従来技術の方法を用いて処理した同じ環境マトリックスを含む試料で開始したビーズの沈着の写真である。
【図12】本発明による環境マトリックス(MRマトリックス)中のリシンの免疫アッセイの検出限界を示す図である。記号は平均測定値を表し、曲線はモデル式
【数1】
[式中、A、B、C、Dは適合パラメーターであり、yはECLシグナル値であり、xはリシンの濃度である]を有する用量反応一部位曲線適合である。
【図13】炭疽菌芽胞の免疫アッセイからのシグナルに対する環境マトリックス(MRマトリックス)の影響を示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【図14】環境マトリックス(MRマトリックス)及びバシラス・グロビギー(Bacillus globigii)を含むろ過済み試料に対するホウ酸抽出緩衝液の影響を示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により全体が組み込まれる、2004年12月20日に出願された米国仮特許出願第60/636,867号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、試料中の抗原又はハプテンなどの分析対象物の検出のためのアッセイを含むアッセイ方法、装置及びキットに関する。分析対象物は、例えば、生物学的又は空気試料中のものを供給することができる。
【背景技術】
【0003】
医療、環境、生体防御及び食品安全性分野において、免疫診断検査により、社会に対して有害である疾患及び汚染物質の簡単な評価と迅速な特定を行うことができる。遅延性疾患及び/又は地方病の発生を防止するためには、臨床検体、土壌若しくは水試料又は食品中の抗原などの分析対象物の定性的、半定量的及び定量的検出を可能にする簡単な確認アッセイが必要である。さらに、近年、国家テロの脅威が認識されているため、多くの診断検査が、確立された研究施設以外の衛星施設で実施することができるように設計されている。
【0004】
従来の免疫アッセイを用いた検出システムは、検出可能な事象を発生させるために複数のアッセイ試薬を逐次的に加えることが必要である抗体−抗原相互作用に依拠している。一般的に明確な同定に対する信頼度は高いが、これらのアッセイ及び試薬調製手順は、試料マトリックスによる影響を受けることがある。例えば、試料中の成分が、アッセイ試薬が適切に機能する能力を妨害する可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、非技術要員又は非専門要員が実施することができる、減少した試料マトリックス効果を有する、信頼度が高く、使用しやすい診断アッセイのための新規の方法及び装置を開発する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(d)得られる混合物中の標識結合パートナーを測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(c)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(d)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0007】
特定の実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な第1の標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な第2の結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)第1の結合パートナー、分析対象物、及び第2の結合パートナーの間で形成される複合体中の標識された第1の結合パートナーの量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0008】
種々の実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)分析対象物の標識類似体を加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)結合パートナーに結合した分析対象物の標識類似体の量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、フィルター、並びに(a)8以上若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び(b)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液から選択される少なくとも1つの試薬を含む、上記の方法を実施するためのキットを提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置であって、
(a)サンプリング器具からフィルターに向かって流れるように方向が定められた第1の一方向弁を介してサンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)第1の一方向弁とフィルターとの間の箇所に流体的に接続され、フィルターから廃棄物管路に向かって流れるように方向が定められた第2の一方向弁に流体的に接続されている廃棄物管路、
(c)液体の流れをフィルター中に不可逆的に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(d)前記1つ又は複数の分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(e)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(f)標識結合パートナーを測定する手段
を含む、上記装置を提供する。
【0011】
種々の実施形態において、本発明は、1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置であって、
(a)サンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)液体の流れをフィルター中に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(c)前記1つ又は複数の分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(d)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(e)標識結合パートナーを測定する手段
を含む、上記装置を提供する。
【0012】
特定の実施形態において、本発明は、
(a)フィルターにより下部容器から流体的に封じられている上部容器、及び
(b)上部容器を経ることなく、下部容器に出入りすることができる開口部
を含む、試料ろ過器具を提供する。
【0013】
前述の一般的説明及び以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものであるにすぎず、請求の範囲に記載されている発明を制限するものではないことを理解すべきである。項の見出しは、読者に対する案内として設けられており、いずれにしても本発明を限定するものでないことは理解されよう。
【0014】
添付図面は、本発明の実施形態を説明するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本明細書には、試料マトリックス効果を減少させることにより、分析対象物を検出及び/又は定量する際に用いる方法、キット及び装置を開示する。
【0016】
I.定義
「乾燥組成物」という用語は、組成物がその総重量に対して5重量%以下の含水率を有することを意味する。
【0017】
「結合パートナー」という用語は、分析対象物に特異的に結合することができる1つ又は複数の物質を意味する。一般的に、特異的結合は、比較的高い親和力と比較的低ないし中容量を特徴とする。一般的に、親和定数Kaが少なくとも106M−1、少なくとも107M−1、少なくとも108M−1又は少なくとも109M−1であるとき、結合は特異的とみなされる。より高い親和定数は、より大きい親和力、したがって、一般的により大きい特異性を示す。例えば、抗体は一般的に、106M−1〜109M−1の範囲又はより高い親和定数で抗原に結合する。非特異的結合は通常、低親和力と中ないし高容量を有する。非特異的結合は通常、親和定数が106M−1を下回るときに発生する。
【0018】
「抗体」という用語は、抗原結合性を保持する1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)を含むタンパク質を意味する。いくつかの実施形態において、抗体は、免疫グロブリン又はその一部であり、起源、生産の方法又は他の特性にかかわりなく抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチド(糖部分(単及び多糖)による修飾をさらに伴う又は伴わない)を含む。この用語は、例えば、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異的、多特異的、ヒト化、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異及びCDRグラフト化抗体並びに融合タンパク質を含む。抗体の一部は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Facb、Fv、ScFv、Fd、VH及びVLを含むが、これらに限定されない、抗原に結合することができるフラグメントを含むことができる。
【0019】
「標識結合パートナー」という用語は、検出可能なシグナルを発生、修正又は調節することができる原子、部分、官能基又は分子を含む標識を含む結合パートナーを意味する。
【0020】
「分析対象物」という用語は、試料中に認められるウイルス、原始細菌、植物、動物、真菌及び/又は細菌の細胞若しくは細胞成分を含む、あらゆる分子若しくは分子の凝集体を意味する。試料中に認められるあらゆる分子の断片も「分析対象物」という用語の範囲に含まれる。この定義は、この定義の範囲内に示されている例のいずれかのうちの1つ又は複数のものを含む複合体をさらに含む。
【0021】
「分析対象物の類似体」という用語は、結合パートナーへの結合に対して問題の分析対象物と競合する物質を指す。分析対象物の類似体は、試料中に存在する問題の分析対象物と特定の結合パートナーへの結合に対して競合させるために加えられる既知量の問題の分析対象物自体であってよい。分析対象物の類似体の例としては、HIV逆転写酵素に結合するヌクレオチドの類似体であるアジドチミジン(AZT)、アミノアシルtRNAの末端アミノアシルアデノシン部分の類似体であるピューロマイシン、テトラヒドロ葉酸塩の類似体であるメトトレキセートなどがある。他の類似体は、問題の分析対象物の誘導体であってよい。本明細書で用いられている「分析対象物の標識類似体」という用語は、標識結合パートナーと同様に定義される。
【0022】
「陽性対照」という用語は、既知量の分析対象物又は分析対象物の類似体を指す。陽性対照は、適切な機器の動作及び/又は試料の測定を評価するために用いることができる。陽性対照は、機器を校正するために用いることができる。陽性対照は、試験試料のシグナルレベルを対照標準のシグナルレベルと比較するための対照標準として用いることができる。陽性対照はまた、シグナルレベルを分析対象物濃度に関連づける数学関数とともに使用することができ、そのうちの1つの使用は、試料のシグナル測定値を分析対象物濃度に変換することである。「陽性対照」という用語は、陽性対照及び陽性キャリブレータの一般的な定義を含む。
【0023】
「アッセイ陽性対照」という用語は、(a)試料の測定の成功を確認するため、又は(b)試料の実測シグナルを供試分析対象物の濃度に変換するために用いる組成物を指す。一般的に、アッセイ陽性対照は、陽性対照と、分析対象物を含む試料の測定を模擬するために結合アッセイに用いる試薬を含む。
【0024】
「試料」という用語は、分析対象物を含む可能性がある液体を含む。
【0025】
「液体」という用語は、液体のより伝統的な定義に加えて、粒子が地球の重力に起因する1mm/s以下の沈降速度を有するコロイド、懸濁液、スラリー及び液体中粒子の分散系を含む。
【0026】
「抽出緩衝液」という用語は、分析対象物又は分析対象物の類似体と試料マトリックスとの非特異的結合を減少させるために用いる組成物を指す。
【0027】
「流体的に接続された」という用語は、接続によって流体が構成要素の間を通ることが可能になる、2つの構成要素の間の接続を指す。
【0028】
「試料マトリックス」という用語は、分析対象物を除く試料中のすべてのものを指す。「環境マトリックス」という用語は、試料が採取される環境由来の試料マトリックスの成分を指す。例えば、試料マトリックスは、試料環境中に通常認められない検出アッセイを実施するために用いる試薬を含むことがあり得る。環境マトリックスという用語はまた、アッセイの開発のため、模擬のため、又は他の目的のために試料中の分析対象物はスパイクされていなかったが、試料を採取することを意図する環境由来の試料マトリックスの成分を指す。
【0029】
本明細書で用いるように、「支持体」という用語は、当技術分野で知られている結合パートナーを固定化するための手段のいずれかを意味する。支持体の例は、膜、ビーズ、粒子、電極又は容器の壁若しくは表面を含むが、これらに限定されない。
【0030】
「磁化可能ビーズ」という用語は、磁性、常磁性及び超常磁性ビーズを含む。
【0031】
II.方法
特定の実施形態において、本発明は、試料中の分析対象物の検出又はその量の定量のための結合アッセイに用いられ、測定に対する試料マトリックスの影響が最小限である方法に関する。
【0032】
A.分析対象物の検出に対する試料マトリックスの影響
試料マトリックスは、試料中に認められる分析対象物の測定に多くの点で影響を及ぼす可能性がある。試料マトリックスがアッセイに影響を及ぼすメカニズムに関する特定の理論により拘束されることを意図することなく、例えば、マトリックスは、試料の粘度を変化させることにより、或いは、さもなければ試料中の有効拡散速度を変化させることにより、分析対象物と結合パートナーとの間の結合の速度を減少させることができる。他のシナリオにおいて、マトリックスは、結合パートナーに非特異的に結合して、結合パートナー上の利用可能な結合部位の数を減少させることもできる。マトリックスは、複数の分析対象物又は複数の結合パートナーと非特異的に結合して、より緩慢に拡散するより大きい集塊を形成することもできる。マトリックスは、結合パートナーが位置する支持体に付着又は支持体上に沈降し、それにより、分析対象物との相互作用に利用可能な結合パートナーの数を減少させることができる。試料中で移動することができる支持体(例えば、ビーズ)の場合、マトリックスは、複数の支持体に付着して、より緩慢に拡散及び/又は試料の底部に沈降する集塊を形成することができる。マトリックスは、平衡状態で結合する分析対象物の量に影響を及ぼすことができる。例えば、高濃度のマトリックスは、平衡状態にある結合パートナーの結合部位のゼロでない一部を占有することができる。酵素を用いて基質を生成物に変換させる場合、マトリックスは生成物の生成速度を減少させる可能性がある。
【0033】
マトリックスは、標識結合パートナーの測定に影響を及ぼすことがあり得る。測定法が質量の変化である場合、マトリックスは、例えば、結合パートナー又は分析対象物に結合して、質量を効果的に増加させることがあり得る。測定が凝集に敏感である場合、マトリックスは、分析対象物の非存在下で凝集を引き起こす可能性がある。測定がルミネセンスである場合、マトリックスは、光を散乱させ、吸収し、又は別の仕方で光が検出器に到達することを妨げる可能性がある。測定がルミネセンスである場合、マトリックスは、励起状態から別の非発光経路を発生させる可能性がある。測定法が蛍光である場合、ルミネセンスメカニズムに加えて、マトリックスは、励起光が意図する蛍光化合物により吸収されることを妨げるか、又は自家蛍光を発する可能性がある。測定法が化学ルミネセンスである場合、ルミネセンスメカニズムに加えて、マトリックスは、前のパラグラフで述べたメカニズムにより励起状態の生成の速度を減少させる可能性があり、分析対照物と結合パートナーとの相互作用を妨げることができるときには、これが、発光をもたらす、いずれか2つの化合物の相互作用を妨げることがある。測定法が電気化学ルミネセンスである場合、化学ルミネセンスメカニズムに加えて、マトリックスは、例えば、前のパラグラフで述べた変速メカニズムにより、電極から電気化学ルミネセンス化合物又は電気化学ルミネセンス共反応物へのエネルギー輸送の速度を減少させることができる。
【0034】
B.試料マトリックス効果の減少
検出工程に対するマトリックスの影響は、2つの方法のいずれかにより減少させることができる。第1に、検出に対する分析対象物の有効性は、分析対象物のマトリックス成分との結合/会合を妨げるように溶液の特性を変化させることによって増加させることができる。第2に、検出工程を妨害するマトリックスの成分は、検出工程から除くことができる。この目的を達成するためにいくつかの方法を用いることができる。
【0035】
問題の分析対象物は、妨害マトリックスといくつかの物理的性質が異なることがあり得る。これらは、サイズ、密度、溶解度、表面電荷の分布又は表面部分の差異を含むが、これらに限定されない。サイズの差に基づく分離としては、ろ過器具の使用又はサイズ排除カラム通過などがある。密度差に基づく分離は、遠心分離機の使用又は重力沈降を含むが、これらに限定されない。溶解度に基づく分離は、2相分配又は不混和性相中への溶媒抽出を含むが、これらに限定されない。表面電荷の差に基づく分離は、イオン交換クロマトグラフィー又は凝析及び沈澱を含むが、これらに限定されない。これらの分離法の多くは、主として実験室環境において実際的なものである。実験室以外の環境で使用しやすい方法は、ろ過及び抽出溶液を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明は、妨害マトリックス粒子及び/又はろ過器具から分析対象物を放出させるための抽出緩衝液を用いて、試料からこれらのマトリックス粒子を除去する。
【0036】
1.ろ過
ろ過は、検出工程からマトリックスの妨害成分を除去する1つの方法である。このアプローチでは、フィルターのバリアを用いて検出工程を妨害するような微粒子成分を保持する。マトリックスの微粒子成分は、標識結合パートナー、分析対象物の標識類似体又は検出表面上のビーズの捕捉又は析出を必要とするいくつかの検出方法を妨害することがある。さらに、これらの成分を除去することにより、分析対象物に結合することができる表面の量が減少する。いくつかの実施形態において、微粒子成分を捕捉したフィルターを処理して、分析対象物を検出工程に対して放出することができる。
【0037】
ろ過は、所定のサイズより大きい粒子を排除する物理的バリアを設けることにより溶液から成分を主として分離する。ろ過技術にはこれらの種類バリアを作る多種の方法が存在し、各方法で基本材料の機能が操作される。例えば、粒径が50μmを超える極めて大きい粒子を捕捉するために用いることができる織りスクリーンを製造するのに、金属ワイヤーが一般的に用いられている。より小さい浮遊粒子を捕捉するために、より小さい直径の金属ワイヤースクリーンを用いることができるが、それらは、気流に対する抵抗(圧力降下)のため限界を有する。ポリマーを用いた膜は、一般的に溶液からより小さい粒子を除去するために用いられる。例えば、ポリマーナイロンは、10μmの孔径定格から0.1μmの孔径定格までの範囲の膜を作製するための転相注型法に用いられる。他のポリマーを用いた膜(例えば、ポリエーテルスルホン、ニトロセルロース又は酢酸セルロース)は、溶媒蒸発注型法により作製される。ろ過媒体は一般的に、問題の流体がフィルターバリアを制御された挙動で通過することを可能にする保持器具に組み込まれている。いくつかの実施形態において、本発明は、ポリエーテルスルホン(PES)ポリマーを用いたろ過媒体を含むフィルターを使用する。特定の実施形態において、PESフィルターは、(a)注射器に取付けることができる、(b)ロボットオートメーションを容易にするために設計された1回使用使い捨て器具の一部、又は(c)複数回使用使い捨て器具の一部であるプラスチックハウジングに収容されている。
【0038】
ろ過は主として、サイズにより溶液から成分を分離する。ほとんどのフィルターにおいて、フィルターを通しての経路は、直線的な穴ではなく、ねじれた経路である。これにより、フィルターの孔径の記述は操作上のものとなり、孔径定格という用語が生ずる。フィルターの孔径定格を決定するにあたって、既知の容積(又は量)の既知の粒径(顕微鏡観察、光散乱又はインピーダンス測定により知られる)の粒子でフィルターをチャレンジする。次いで、フィルターの下流の粒子の量を測定し、粒子の複数の粒径にわたってフィルターの上流の粒子の量と比較する。粒子の所定の粒径範囲について下流の粒子と上流の粒子の比が1以下に有意に低下した場合、フィルターは該粒径範囲について除去能力を有すると言われる。これらの比は、一般的に除去の対数単位で記述される。例えば、5μmと格付けされるフィルターは、一般的に5μmより大きい下流粒子のレベルを0.90の比(90%除去又は1log除去)から0.999の比(99.9%除去又は3log除去)低下させる。フィルターの孔径は多くの要因に基づいて選択される。孔径は、分析対象物を通過させるために十分に大きくなければならない。例えば、炭疸菌芽胞はサイズが約1μmである。孔径は、試料マトリックスからの妨害成分を阻止するために十分に小さくなければならない。孔径はフィルターを通過する流体の流速にも影響を及ぼし、孔径が小さいほど、生ずる流動抵抗が一般的に大きくなる。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明は、5μmの孔径定格を有するろ過器具を用いて試料マトリックスの妨害成分を除去することができる。いくつかの実施形態において、本発明は、0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、7、10、15、20、50又は100μmの孔径定格を有するろ過器具を用いて試料マトリックスの妨害成分を除去することができる。いくつかの実施形態において、フィルターは、試料マトリックスの妨害成分を除去するために約100μm以下及び約10μm以上の孔径定格を有する。いくつかの実施形態において、フィルターは、試料マトリックスの妨害成分を除去するために約10μm以下及び約1μm以上の孔径定格を有する。いくつかの実施形態において、フィルターは、試料マトリックスの妨害成分を除去するために約1μm以下及び約0.1μm以上の孔径定格を有する。いくつかの実施形態において、フィルターは、試料マトリックスの妨害成分を除去するために約0.1μm以下及び約0.02μm以上の孔径定格を有する。
【0040】
一般的に、フィルターの孔径定格より小さい粒子は、ろ過媒体に吸着されない限り、妨害を受けずにフィルターを通過する。非特異的吸着を防ぐためには、ろ過媒体を、表面修飾し、例えば、フィルター表面をより濡れ性、すなわち、より親水性にすることにより、この種の相互作用を減少させることができる。分析対象物の非特異的結合(回収の損失をもたらす)は疎水性相互作用、主としてファンデルワールス相互作用に起因すると一般的に考えられている。例えば、ろ過媒体ポリエーテルスルホン(PES)をグリセロールのような親水性化合物で被覆することにより、水が表面を濡らす能力が増大し、分析対象物の損失が減少する。
【0041】
いくつかの表面処理はより永久的なものであり、表面グラフトが考慮される。ろ過媒体の永久的表面修飾は、当業者により知られている多くの方法により達成することができる。これらの方法は、フリーラジカル重合、イオンビーム開始重合、電離放射線誘導重合、プラズマエッチング及び化学カップリングを含むが、これらに限定されない。これらの方法は、水和を促進し、疎水性相互作用を減少させるかなりの数のヒドロキシル基を有する分子を組み込む。表面修飾の特定の方法は、フィルター器具に用いられるろ材の化学的性質に主として依存する。例えば、電離放射線は、ナイロンろ過媒体を親水性にし、タンパク質結合性を低くするためにナイロンろ過媒体上へのヒドロキシ−プロピル−アクリレート部分のグラフティングを誘導するために用いることができる。いくつかの実施形態において、本発明は、表面を濡れやすくし、分析対象物の損失を減少させるためにグリセロールで被覆したポリエーテルスルホンポリマーを含むろ過媒体を使用する。
【0042】
逆に、フィルターは、妨害成分に特異的に結合する、表面に付着した化学部分を有していてよい。ろ過媒体は、結合反応(例えば、免疫反応)又は検出方法を妨害することが知られているクラスの分子と高親和性相互作用を有する分子に共有結合することができる。例えば、赤血球上の表面基に結合するレクチン、又は検出法を妨害する可能性がある金属イオンに結合するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)をろ過媒体に結合させることができる。
【0043】
本発明の様々な実施形態において、ろ過器具は、試料中の分析対象物の数が変化し、各分析対象物が固有の調製要件を有する適用例における試料を調製するために用いることができる。一部の分析対象物は、大きく、小孔径フィルターにより除去されるであろう。例えば、細菌の一部である分析対象物は、滅菌フィルターの孔径定格(0.2μm)を有するフィルターにより除去されるが、5μmの孔径定格を有するフィルターを用いたろ過の後には試料マトリックス中に残るであろう。逆に、トキシンのような小分子の検出は、1μm以上の孔径定格を有するフィルターにより大粒子を除去することによって向上させることができる。したがって、本発明の特定の実施形態は、適切なろ過器具の後に特定の分析対象物の試料を採取することができる、次第により小さい粒子を除去するための直列のいくつかのろ過器具を使用する。
【0044】
本発明によれば、試料を1回又は複数回ろ過することができる。いくつかの適用例において、試料の微粒子負荷が重く、保持粒子の層が非常に厚いので、ろ過器具を1回のみ用いることができる。他の試料において、粒子負荷が低いことがあり、そのため、流速があまりにも遅くなるか、又は圧力降下があまりにも高くなって実際的でなくなる前に複数の試料をろ過器具に通すことができる。これらの場合、ろ過器具は、必要及びサンプリング頻度の要件を満たすある定期的な間隔で交換することができる。例えば、粒子負荷が低く、陽性検出事象の頻度も低い場合、ろ過器具は、月1回、週1回、毎日、又は陽性検出事象の発生後より速やかに交換することができる。フィルター交換間隔は、例えば、ろ過した試料の数により、又はフィルターにわたる圧力降下を測定することにより、若しくはフィルターを通しての流速を測定することにより、設定することができる。
【0045】
2.流体の移動
本発明によれば、複数のメカニズムを用いて試料流体をフィルターを通して駆動することができる。流体は、重力流により、或いは、正のゲージ圧をフィルターの上流に加え、かつ/又は負のゲージ圧(真空)をフィルターの下流に加える、圧力により、フィルターを通して移動させることができる。
【0046】
本発明は、粒子保持層を逆流(逆洗)法により減少させることができる場合には、フィルターを試料の調製のために複数回使用することができることを企図する。これらの実施形態において、流体の逆流を用いてろ過器具の表面から微粒子を除去し、分析のためにろ過済み試料を採取した後にそれらの進路を廃棄物収集システムへと変えることができる。
【0047】
3.緩衝液
妨害マトリックスを含む試料からの分析対象物の回収及び検出は、適切な抽出緩衝液を用いて増大させることができる。いくつかの実施形態において、本発明は、例えば、ホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム及び非イオン性界面活性剤を含む抽出緩衝液を用いて、分析対象物の回収を増大させることができる。代替抽出緩衝液は、酢酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム並びにホウ酸、塩化物、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、クエン酸、硫酸及びリン酸のカリウム及びリチウム塩を含む。
【0048】
問題の分析対象物の一部は、低親和性非特異的相互作用により試料マトリックスと結合させることができる。これらの種類の相互作用は、例えば、イオン及び疎水結合を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、マトリックスのイオン表面電荷を有する可動性溶液イオン対がマトリックス粒子表面からの分析対象物の変位を促進するように、抽出緩衝液の総イオン強度を増加させることによって、分析対象物とマトリックス粒子とのイオン相互作用を低下させることができる。様々な実施形態において、非特異的イオン相互作用の低下時にイオン強度を増大させるために、溶液のpHを中性(すなわち、pH7)から高いpH又は低いpHに変化させることができる。ほとんどの環境マトリックス粒子は優勢な負の表面電荷を有するので、本発明の特定の実施形態は、抽出緩衝液中のイオンがマトリックス粒子から分析対象物を変位させることができるように、高いpHを用いて表面基をイオン化することができる。いくつかの実施形態において、本発明は、8.5のpHを有し、少なくとも0.5モルの塩化ナトリウムを含む抽出緩衝液を使用する。いくつかの実施形態において、本発明は、8以上のpHを有する抽出緩衝液を使用する。
【0049】
イオン相互作用に加えて、疎水性相互作用は、分析対象物の回収率を減少させることができる。これらの種類の相互作用は、ファンデルワールス型の相互作用と記載されており、水及び水素結合の複雑な性質から生ずることがあり得る。イオン性分子は、水分子に、水分子を組織化し、水分子の運動を減少させる傾向がある、荷電基の周りの水素結合ケージ構造(包接化合物)を形成させることができる。極性基を有する分子は、水の水素と極性基との間の水素結合構造を形成することによって水に溶解することができる。イオン電荷も極性基も有さない分子の部分は、疎水性とみなすことができ、これらの部分は、水和事象からの排除により共に追いやられる傾向がある。疎水性部分を有する分子は、ファンデルワールス相互作用に共にたずさわらされる可能性がある。このようにして、水の全体の構造を安定化させることができる。
【0050】
妨害マトリックス粒子との低親和性非特異的相互作用による分析対象物の回収を増加させるために、本発明の特定の実施形態は、水の組織化力の測定される崩壊を引き起こす物質を用いることができる。例えば、疎水性相互作用は、界面活性剤/洗剤及びカオトロピックイオン並びに電荷を有さないカオトロピック分子を用いて減少させることができる。本明細書で用いるように、界面活性剤と洗剤は同義語である。カオトロピック分子(イオンとして荷電又は非荷電)は、水の組織化力及び構造を崩壊させる傾向がある。いくつかの実施形態において、非イオン性界面活性剤(例えば、Tween(登録商標)20(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン))を用いて、洗剤分子の疎水性部分をマトリックス及び分析対象物の疎水性部分に結合させることにより分析対象物の回収を促進させることができる。非荷電カオトロピック分子(例えば、尿素)は、水の水素結合構造を崩壊させる十分に高い濃度の溶液を形成することができる。水の水素結合構造の崩壊を促進するために、様々な実施形態もホウ酸塩、塩酸グアニジン、チオシアン酸グアニジン又は他のカオトロピックイオンを用いることができる。ホウ酸イオンは、小さく、ほとんどのイオン以上に水分子ケージ構造を妨げる。リン酸及び硫酸イオンも本発明において用いることができる。本発明のいくつかの実施形態は、Mg2+、Ca2+、Li+、Na+又はK+などの1つ又は複数の陽イオンを使用する。当業者は、2価又は3価陽イオンを用いるとき、ある種のマトリックスとのさらなる好ましくない反応が起こる可能性があることを理解するであろう。当業者は、カオトロピックイオンの高い濃度において、タンパク質分子の2次及び3次構造が分解し、免疫アッセイで用いる高親和性相互作用が破壊されることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、抽出緩衝液は、0.1Mホウ酸ナトリウム(pH8.5)、0.5M塩化ナトリウム及び0.3%Tween(登録商標)20を含む。
【0051】
様々な実施形態において、抽出緩衝液は、表1に示すような様々な容量オスモル濃度範囲を有することができる。これらの範囲は代表的なものにすぎず、当業者は本発明に適用可能なさらなる範囲を認識することができる。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示す代表的な抽出緩衝液は、2〜11、3〜10、4〜9.5、5〜8、6〜8、7〜10、8〜10、8.5〜9.7及び/又は6.5〜7.5の範囲内のいずれかのpHを任意に有していてよい。
【0054】
様々な実施形態において、抽出緩衝液は、表2に示すような様々なpH及び容量オスモル濃度の組合せを有していてよい。これらの組合せは代表的なものにすぎず、当業者は本発明に適用可能なさらなる組合せを認識することができる。
【0055】
【表2−1】
【表2−2】
【0056】
表1及び2に示す代表的な抽出緩衝液は、場合によって界面活性剤を含む。選択される特定の界面活性剤は、分析対象物及び試料マトリックスの化学的特性を反映する。タンパク質性結合パートナーについては、界面活性剤は、非イオン型であってよく、或いはいくつかの実施形態において、両性イオン型であってよい。核酸結合パートナーについては、界面活性剤は、非イオン、両性イオン、陰イオン又は陽イオン型であってよい。
【0057】
適切な非イオン性界面活性剤は、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アルキルマルトシド、グルカミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシアルキレンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジメチルホスフィンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド及びアルキロールアミドを含むが、これらに限定されない、いくつかのカテゴリーから選択することができる。適切な両性イオン界面活性剤は、アルキルベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミノプロパンスルホン酸塩、(アルキルジメチルアミノ)プロパンスルホン酸塩、アリールアミノプロパンスルホン酸塩、アルキルホスホコリン、アミノプロピルアミンアルキルカルボン酸塩、アルキルジメチルグリシン、アルキルホスホコリン、アルキルイミドジプロピオネートアミンオキシド及びポリアルキルジメチルアミンプロピルアミンカルボン酸塩を含むが、これらに限定されない、いくつかのカテゴリーから選択することができる。適切な陰イオン界面活性剤は、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、胆汁酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニレンジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ナフタレン硫酸ホルムアルデヒド縮合物、アルキルアミノプロピオン酸塩及びポリカルボン酸塩を含むが、これらに限定されない、いくつかのカテゴリーから選択することができる。適切な陽イオン界面活性剤は、アルキルアミン塩、アルキルアルキル第四級アンモニウム塩及びアルキルアリール第四級アンモニウム塩を含むが、これらに限定されない、いくつかのカテゴリーから選択することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、抽出緩衝液は、ブロッキング剤を含んでいてよい。あらゆる従来のブロッキング剤を用いることができる。適切なブロッキング剤は、例えば、米国特許第5,807,752号、同第5,202,267号、同第5,399,500号、同第5,102,788号、同第4,931,385号、同第5,017,559号、同第4,818,686号、同第4,622,293号、同第4,468,469号並びにカナダ特許第1,340,320号、国際公開第97/05485号、欧州特許公開A1第566,205号、欧州特許公開A2第444,649号及び欧州特許公開A1第165,669号に記載されている。代表的なブロッキング剤としては、動物血清(例えば、ヤギ血清)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ゼラチン、ビオチン及び乳汁タンパク質(「blotto」)などの血清及び血清アルブミンなどがある。いくつかの実施形態において、本発明は、1〜25g/L BSA、1〜10g/L BSA、1〜5g/L BSA又は無BSAを含む抽出緩衝液を使用する。いくつかの実施形態において、本発明は、1.6g/L BSA、0.25M HBO3、0.5M NaCl及び0.3%Tween−20を含み9.2のpHの抽出緩衝液を使用する。いくつかの実施形態において、本発明は、BSAを含まず、0.25M HBO3、0.5M NaCl及び0.3%Tween−20を含み9.2のpHの抽出緩衝液を使用する。
【0059】
C.アッセイの方式
本発明は、あらゆる結合アッセイ技術とともに用いることができる。例えば、The Immunoassay Handbook、第3版、Wild編、Stockton Press(2005年)並びにPrinciples and Practice of Immunoassay、Price及びNewman編、Stockton Press(1997年)を参照のこと。便宜のために、いくつかの結合アッセイ技術の手短な説明を以下に示す。
【0060】
結合アッセイ技術は、多くの観点で細分することができる。例えば、ある種のアッセイはシグナルの検出のために標識結合パートナーを必要とするが、他のアッセイは分析対象物と結合パートナーとの相互作用に基づいてシグナルを発生する、例えば、質量変化を測定する。ある種のアッセイは、標識結合パートナーを使用しないが、その代わりとして、分析対象物の標識類似体を使用する。
【0061】
ある種のアッセイは、両結合パートナーが同じ分析対象物に特異的に結合するサンドイッチアッセイを構築するために2つの結合パートナーを使用する。いくつかの実施形態において、2つの結合パートナーは、分析対象物の異なる部分、例えば、異なるエピトープに結合する。
【0062】
ある種のアッセイは、分析対象物に結合した標識結合パートナーと分析対象物に結合しなかった標識結合パートナーとを区別するために、分離ステップを必要とする。凝集アッセイ、及び標識結合パートナー上の標識が分析対象物の結合により直接的又は間接的に修飾、活性化又は不活性化されるアッセイなどのある種のアッセイは、分離ステップを必要としない。ある種のアッセイは、結合パートナーが付着する支持体を必要とする。支持体、分離、サンドイッチアッセイは、支持体に標識を結合させるために、2つの結合パートナー(第1の結合パートナーは支持体に付着するが、第2の結合パートナーは標識結合パートナーである)を使用し、その後、標識を測定する前に支持体を洗浄して遊離の標識結合パートナーを除去する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、標識結合パートナーを分析対象物に結合させることにより、分析対象物を検出する。いくつかの実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(d)得られる混合物中の標識結合パートナーを測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(c)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(d)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、1つが標識されている2つの結合パートナーの間に分析対象物をサンドイッチすることにより、分析対象物を検出する。特定の実施形態において、本発明は、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な第1の標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な第2の結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)第1の結合パートナー、分析対象物、及び第2の結合パートナーの間で形成される複合体中の標識された第1の結合パートナーの量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、結合パートナーへの結合を競合する標識分析対象物類似体を用いることにより、分析対象物を検出する。様々な実施形態において、分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)分析対象物の標識類似体を加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)結合パートナーに結合した分析対象物の標識類似体の量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法を提供する。
【0066】
本発明の方法は、試料マトリックス効果を低下させるために、様々なステップで修正することができる。例えば、いくつかの実施形態において、検出すべき分析対象物の結合パートナーが試料に接触する前に、試料マトリックス中の成分を除去することができる。いくつかの実施形態において、方法の添加ステップを同時に実施してもよい。いくつかの実施形態において、方法の添加ステップを順次実施してもよい。いくつかの実施形態において、抽出緩衝液を試料に加え、試料をろ過し、複数の結合パートナーを用いる場合にはそのうちの1つが標識されている、結合パートナーを加え、標識結合パートナーを検出する。いくつかの実施形態において、試料をろ過し、抽出緩衝液をろ過済み試料に加え、複数の結合パートナーを用いる場合にはそのうちの1つが標識されている、結合パートナーを加え、標識結合パートナーを検出する。いくつかの実施形態において、抽出緩衝液を試料に加え、試料をろ過し、結合パートナーを加え、分析対象物の標識類似体を加え、標識類似体を検出する。いくつかの実施形態において、試料をろ過し、抽出緩衝液をろ過済み試料に加え、結合パートナーを加え、分析対象物の標識類似体を加え、標識類似体を検出する。いくつかの実施形態において、試料をろ過し、複数の結合パートナーを用いる場合にはそのうちの1つが標識されている、結合パートナーを加え、抽出緩衝液を加え、標識結合パートナーを検出する。いくつかの実施形態において、試料をろ過し、結合パートナーを加え、分析対象物の標識類似体を加え、抽出緩衝液を加え、標識類似体を検出する。他の実施形態は、標識結合パートナーが試料に接触する前に試料マトリックス中の成分を除去する方法を含む。いくつかの実施形態は、試料が、電気化学ルミネセンスを開始することができる電極に接触する前に試料マトリックス中の成分を除去する方法を含む。
【0067】
いくつかの実施形態は、検出すべき分析対象物の結合パートナーと前記分析対象物との間の平衡化又は反応速度を妨害する試料マトリックスの能力を減弱させる方法を含む。いくつかの実施形態は、標識結合パートナーと検出すべき分析対象物との間の平衡化又は反応速度を妨害する試料マトリックスの能力を減弱させる方法を含む。
【0068】
いくつかの実施形態は、標識結合パートナー及び/又は分析対象物の標識類似体上の標識の検出に対して影響を及ぼす試料マトリックスの能力を減弱させる方法を含む。
【0069】
いくつかの実施形態は、電気化学ルミネセンス測定に影響を及ぼす試料マトリックスの能力を減弱させる方法及び装置を含む。いくつかの実施形態は、空気サンプリングシステムを用いて結合アッセイを実施することができる装置に接続するための方法及び装置を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、複数の分析対象物を同時にアッセイする。他の実施形態において、複数の分析対象物を順次アッセイする。
【0071】
D.試料及び分析対象物
試料は、分析すべき源から抜き取ることができる。例えば、試料は、血液、血漿、血清、乳汁、精液、羊水、脳脊髄液、痰、涙液、汗、尿若しくは唾液などの体液又は他の生物学的流体から生じてよい。或いは、試料は、湖又は川などの水源から得た水の試料であってよい。試料は、水、微生物学的増殖培地又は水性緩衝液などの液体に試料を溶解又は懸濁することにより調製してもよい。試料は、土壌、タルク、ベビーパウダー、食品(例えば、果実、野菜及び/又は肉)及び/又はヒト、有蹄類、家禽及び/又は他の動物の糞であってよい。これら及び他の種類の試料は、Seward Stomacher(登録商標)装置、音波処理、混合などのマトリックスから分析対象物を除去するための機械的処理、或いは固体を液体マトリックス中に移す他のあらゆる物理的方法を用いて処理することができる。試料源は表面スワブであってよく、例えば、表面をスワブで拭き取り、スワブを液体で洗浄し、それにより、表面から分析対象物を液体中に移すことができる。スワブとしては、スポンジ、ペーパータオル、綿及び他の吸収材を先端に取付けたアプリケータなどがある。試料源は、空気に由来するものであってよく、例えば、空気をろ過し、フィルターを液体により洗浄し、それにより、分析対象物を空気から液体中に移す。空気サンプリング器具は、空気を直接液体中に吹き込んで、分析対象物を移すこともできる。例えば、空気は、郵便物処理機械の近くの郵便室内から採取することができる。
【0072】
本発明の方法は、試料中のいくつかの種類の分析対象物を検出することができる。結合パートナーが特異的に結合することができる分析対象物の例は、細菌毒素、ウイルス、細菌、タンパク質、ホルモン、DNA、RNA、薬物、抗生物質、神経毒素及びその代謝物を含むが、これらに限定されない。分析対象物としては、試料中に認められる分子の断片などもある。いくつかの実施形態において、分析対象物は、有機化合物、有機金属化合物又は無機化合物であってよい。分析対象物は、核酸(例えば、DNA、RNA、プラスミド、ベクター又はオリゴヌクレオチド)、タンパク質(例えば、抗体、抗原、受容体、受容体リガンド又はペプチド)、リポタンパク質、糖タンパク質、リボ若しくはデオキシリボ核タンパク質、ペプチド、多糖、リポ多糖、脂質、脂肪酸、ビタミン、アミノ酸、薬剤化合物(例えば、精神安定薬、バルビツレート、アヘン剤、アルコール、三環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗生物質、ステロイド、強心配糖体又は前出のもののいずれかの代謝物)、ホルモン、成長因子、酵素、補酵素、アポ酵素、ハプテン、レクチン、基質、細胞代謝物、細胞成分又はオルガネラ(例えば、膜、細胞壁、リボソーム、染色体、ミトコンドリア、細胞骨格成分)であってよい。他の実施形態において、分析対象物は、毒素、農薬、除草剤又は環境汚染物質である。
【0073】
分析対象物のさらなる例は、アエロモナス・ヒドロフィア(Aeromonas hydrophia)などのアエロモナス種、炭疸菌(Bacillus anthracis)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、クロストリジウム属(Clostridium)のボツリヌス菌毒素産生種、ウシ流産菌(Brucella abortus)、マルタ熱菌(Brucella melitensis)、ブタ流産菌(Brucella suis)、鼻疽菌(Burkholderia mallei(以前はPseudomonas mallei))、キャンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、ウェルシュ(Welch)菌(Clostridium perfringens)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシイ(Coccidioides posadasii)、カウドリア・ルミナンチウム(Cowdria ruminantium)(心水病)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetii)、大腸菌−腸管毒産生性(Escherichia coli−enterotoxigenic)(ETEC)、大腸菌−腸疾患発現性(Escherichia coli−enteropathogenic)(EPEC)、大腸菌−O157:H7腸管出血性(Escherichia coli−O157:H7 enterohemorrhagic)(EHEC)などの腸内毒性大腸菌(Escherichia coli)群(EEC群)、エーリッヒア・チャフェンシス(Ehrlichia chaffeenisis)などのエーリッヒア(Ehrlichia)種、野兎病菌(Francisella tularensis)、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、リベロバクター・アフリカヌス(Liberobacter africanus)、リベロバクター・アジアティカス(Liberobacter asiaticus)、リステリア・モノシトゲネス(Listeria monocytogenes)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス(Proteus)、シトロバクター(Citrobacter)、アエロバクター(Aerobacter)、プロビデンシア(Providencia)及びセラチア(Serratia)などの種々雑多な腸内細菌、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)、牛肺疫菌標準亜種(Mycoplasma mycoides ssp mycoides)、ペロノスクレロスポラ・フィリッピンシス(Peronosclerospora philippinensis)、ファコプソラ・パチリジ(Phakopsora pachyrhizi)、プレシオモナス・シゲロイデス(Plesiomonas shigelloides)、青枯病菌(Ralstonia solanacearum)品種3、次亜種2、発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)、斑点熱リケッチア(Rickettsia rickettsii)、サルモネラ種(Salmonella species)、シュレロフトラ・レイシアエ・バル・ゼアエ(Schlerophthora rayssiae var zeae)、赤痢菌種(Shigella species)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ジャガイモ癌腫病菌(Synchytrium endobioticum)、コレラ菌(Vibrio cholerae)non−O1、コレラ菌(Vibrio cholerae)O1、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)及び他のビブリオ菌、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)、キサントモナス・オリザエ(Xanthomonas oryzae)、柑橘類ピアス氏病菌(Xylella fastidiosa)(柑橘類斑入病菌株)、エルジニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)及び偽結核エルジニア菌(Yersinia pseudotuberculosis)及びペスト菌(Yersinia pestis)などの細菌病原体を含む。
【0074】
分析対象物のさらなる例は、アフリカウマ病ウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、アカバネウイルス、鳥類インフルエンザウイルス(高度に病原性)、ブハンジャ(Bhanja)ウイルス、ブルータングウイルス(エキゾチック)、ラクダ痘ウイルス、オナガザルヘルペスヘルペスウイルス1、チクングニヤウイルス、古典的ブタ熱ウイルス、コロナウイルス(SARS)、クリミア−コンゴ出血熱ウイルス、デング熱ウイルス、デュグベ(Dugbe)ウイルス、エボラウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎及びベネズエラウマ脳炎ウイルスなどの脳炎ウイルス、ウマ麻疹ウイルス、フレキサル(Flexal)ウイルス、口蹄疫ウイルス、ゲルミストン(Germiston)ウイルス、ヤギ痘ウイルス、ハンターン又は他のハンタウイルス、ヘンドラウイルス、イシククルウイルス、コウタンゴ(Koutango)ウイルス、ラッサ熱ウイルス、跳躍病ウイルス、ランピースキン病ウイルス、リンパ球脈絡髄膜炎ウイルス、悪性カタル熱ウイルス(エキゾチック)、マルブルクウイルス、マヤロウイルス、メナングルウイルス、サル痘ウイルス、ムカンボ(Mucambo)ウイルス、ニューカッスル病ウイルス(VVND)、ニパーウイルス、ノーウォークウイルス群、オロプーシェウイルス、オルンゴ(Orungo)ウイルス、小反芻獣疫(Peste Des Petits Ruminants)ウイルス、ピリーウイルス、プラムポックスポティウイルス、ポリオウイルス、ポテトウイルス、ポーワッサンウイルス、リフトバレー熱ウイルス、牛疫ウイルス、ロタウイルス、セムリキ森林ウイルス、ヒツジ痘ウイルス、Flexal、Guanarito、Junin、Machupo及びSabiaなどの南アフリカ出血熱ウイルス、スポンドウェニ(Spondweni)ウイルス、ブタ水疱病ウイルス、中央ヨーロッパダニ媒介脳炎、極東ダニ媒介脳炎、ロシア春及び夏脳炎、キャサヌール森林病並びにオムスク出血熱などのダニ媒介脳炎複合(フラビ)ウイルス、大痘瘡ウイルス(痘瘡ウイルス)、小痘瘡ウイルス(アラストリム)、水疱性口内炎ウイルス(エキゾチック)、ウェセルスブロンウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、SV40、JC及びBKなどのポリオーマウイルス属、並びに乳頭腫ウイルス属(例えば、HPV)を含むパポーバウイルス科のウイルス、パルボウイルス(例えば、B19及びRA−1)、並びにライノウイルス及びコクサッキーBを含むピコルナウイリス科のウイルスなどのウイルスを含む。標的核酸配列を含むことができる他のウイルスは、アデノウイルス、アレナウイルス、アルテリウイルス、アストロウイルス、バキュロウイルス、バンドナウイルス、バルナウイルス、ビルナウイルス、ブロモウイルス、ブニヤウイルス、カリチウイルス、カピロウイルス、カーラウイルス、カリモウイルス、サーコウイルス、クロステロウイルス、コモウイルス、コロナウイルス、コルチコウイルス、シストウイルス、デルタウイルス、ジアントウイルス、エナモウイルス、フィロウイルス、フラビウイルス、フロウイルス、フセロウイルス、ジェミニウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ホルデイウイルス、ハイポウイルス、イダエオウイルス、イノウイルス、イリドウイルス、レビウイルス、リポスリクスウイルス、ルテオウイルス、マクロモウイルス、マラフィウイルス、ミクロウイルス、ミオウイルス、ネクロウイルス、ノダウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、パルティティウイルス、パルボウイルス、フィコドナウイルス、プラズマウイルス、ポドウイルス、ポリドナウイルス、ポテクスウイルス、ポティウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、リジディオウイルス、セキウイルス、シフォウイルス、ソベモウイルス、テクティウイルス、テヌイウイルス、テトラウイルス、トバモウイルス、トブラウイルス、トガウイルス、トンブスウイルス、トティウイルス、ティモウイルス及びアンブラウイルスから選択される科に属する上で言及しなかった種を含む。
【0075】
分析対象物のさらなる例は、アブリン、アフラトキシン、ボツリヌス神経毒素、シグアテラ毒素、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)イプシロン毒素、コノトキシン、ジアセトキシスカーペノール、ジフテリア毒素、グラヤノトキシン、アマニティンス、ギロミトリン及びオレラニンなどのマッシュルーム毒素、フィトヘマグルチニン、ピロリジジンアルカロイド、リシン、サキシトキシン、サキシトキシン、アカダ酸、ディノフィシス毒素、ペクトノトキシン、イエッソトキシン、ブレベトキシン及びドモ酸などの貝毒素(麻痺性、下痢、神経毒性又は健忘)、志賀毒素、志賀毒素様リボソーム不活性化タンパク質、ヘビ毒素、ブドウ球菌腸毒素、T−2毒素及びテトロドトキシンなどの毒素を含む。
【0076】
分析対象物のさらなる例は、スクラピー、クールー、クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、慢性消耗病、致命的家族性不眠症(FFI)、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー症候群(GSS)及び牛海綿状脳症(BSE又は狂牛病)を含む伝達性牛海綿状脳症の病原体のようなプリオンタンパク質を含む。
【0077】
分析対象物のさらなる例は、アカントアメーバ及び他の自由生活アメーバ、アニサキス種並びに他の関連蠕虫回虫(Ascaris lumbricoides)及びヒト鞭虫(Trichuris trichiuta)、クリプトスポリジウム・パーバム、サイクロスポーラカエタネンシス(Cyclospora cayetanensis)、裂頭条虫(Diphyllobothrium)種、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、腎虫(Eustrongylides)種、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、住血吸虫(Nanophyetus)種、住血吸虫(Shistosoma)種、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)及び旋毛虫属(Trichinella)などの寄生原虫及び蠕虫を含む。
【0078】
分析対象物のさらなる例は、アスペルギルス(Aspergillus)種、ブラストミセス・デルマチチジス(Balstomyces dermatitidis)、カンジダ属(Candida)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コクシジオイデス・ポサダシイイ(Coccidioides posadasii)、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、メイズラスト(Maize rust)、イネいもち病、イネ褐斑病、ライブラスト(Rye blast)、スポロトリクス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)及びコムギカビなどの真菌を含む。
【0079】
分析対象物のさらなる例は、
(1)米国保健福祉省(HHS)及び米国農務省(USDA)選択因子(7CFR§331、9C.F.R.§121及び42C.F.R.§73)のいずれかの感染性及び/又は複製コンピテント形をエンコードすることができる核酸(合成又は天然由来、連続的又は断片化、宿主染色体中又は発現ベクター中)、
(2)核酸が以下の場合に、列挙した毒素のいずれかの機能型をエンコードする核酸(合成又は天然由来)
(i)ベクター中又は宿主染色体中に存在し、
(ii)in vivo又はin vitroで発現することができる、
及び/又は
(3)細胞調節事象に関与する以下の核酸−タンパク質複合体
(i)ウイルス複製の前駆体であるウイルス核酸−タンパク質複合体、
(ii)RNA構造を修飾し、タンパク質転写事象を調節するRNA−タンパク質複合体、
(iii)ホルモン又は二次細胞シグナリング分子により調節される核酸−タンパク質複合体、
(4)遺伝的に修飾されたウイルス、古細菌、細菌、真菌
などの遺伝子因子、組換え核酸及び組換え生物を含む。
【0080】
分析対象物のさらなる例は、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMなどの上述の分析対象物の例に対する免疫応答分子を含む。
【0081】
E.結合パートナー
1.結合パートナーの種類
結合パートナーとそれらの標的分析対象物の例は、相補的核酸配列(例えば、互いにハイブリッド形成する2つのDNA配列、互いにハイブリッド形成する2つのRNA配列、互いにハイブリッド形成するDNA及びRNA配列)、抗体と抗原、受容体とリガンド(例えば、TNFとTNFr−1、CD142とVIIa因子、B7−2とCD28、HIV−1とCD4、ATR/TEM8若しくはCMGと炭疸毒素の防御抗原部分)、酵素と基質、又は分子と結合タンパク質(例えば、ビタミンB12と内因性因子、葉酸と葉酸結合タンパク質)を含むが、これらに限定されない。結合パートナーのさらなる例は、結合タンパク質、例えば、ビタミンB12結合タンパク質、基本ドメインのスーパークラス、亜鉛配位DNA結合ドメイン、ヘリックス−ターン−ヘリックス、副溝接触を有するベータスカホールド因子、他の転写因子などのDNA結合タンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施形態において、結合パートナーは、モノクローナル抗体又は1組のポリクローナル抗体であってよい抗体である。Biochemicals and Reagents for Life Science Research、Sigma−Aldrich Co.、P.O.Box 14508、St.Louis、Mo.、63178(2002/2003)、The Handbook−A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、Tenth Edition、Invitrogen Co.、Carlsbad、CA(2005)、Life Science Products and Services to Accelerate Your Discovery、Invitogen(商標)Life Technologies、1600 Faraday Avenue、Carlsbad、California 92008(2003)、Product Catalog、KPL、Two Cessna Court、Gaitherburg、MD.20879(2004及び2005)並びにPierce Catalog、Pierce Chemical Company、P.O.Box 117、Rockford、III.61105(2005)などの様々なカタログにおける一覧により例示されているように、問題の様々な分析対象物に結合する多数のモノクローナル抗体が入手可能である。
【0083】
他の代表的なモノクローナル抗体は、β−アクチン、DNA、ジゴキシン、インスリン、プロゲステロン、ヒト白血球マーカー、ヒトインターロイキン−10、ヒトインターフェロン、ヒトフィブリノーゲン、p53、B型肝炎ウイルス若しくはその一部、HIVウイルス若しくはその一部、腫瘍壊死因子又はFK−506に特異的に結合するものを含む。特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、T4、T3、遊離T3、遊離T4、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、チログロブリン、TSH受容体、プロラクチン、LH(黄体形成ホルモン)、FSH(濾胞刺激ホルモン)、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)、hCG+β、SHBG(性ホルモン結合グロブリン)、DHEA−S(硫酸デヒドロエピアンドロステロン)、hGH(ヒト成長ホルモン)、ACTH(副腎刺激ホルモン)、コルチソル、インスリン、フェリチン、葉酸塩、RBC(赤血球)葉酸塩、ビタミンB12、ビタミンD、C−ペプチド、トロポニンT、CK−MB(クレアチンキナーゼミオグロビン)、ミオグロビン、プロ−BNP(脳利尿ペプチド)、HbsAg(B型肝炎表面抗原)、HbeAg(B型肝炎e抗原)、HIV抗原、複合HIV、H.ピロリ、β−CrosLaps、オステオカルシン、PTH(副甲状腺ホルモン)、IgE、ジゴキシン、ジギトキシン、AFP(α−フェトプロテイン)、CEA(癌胎児抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、遊離PSA、CA(癌抗原)19−9、CA12−5、CA72−4、cyfra21−1、NSE(ニューロン特異エノラーゼ)、S100、P1NP(プロコラーゲンタイプ1N−プロペプチド)、PAPP−A(妊娠関連血漿プロテインA)、Lp−PLA2(リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2)、sCD40L(可溶性CD40リガンド)、IL18、リシン及びSurvivinのうちの少なくとも1つに特異的に結合する抗体から選択される。
【0084】
他の代表的なモノクローナル抗体は、上で代表的な分析対象物として述べた病原体、ウイルス、毒素、原生動物、蠕虫、プリオン、細菌、古細菌及び真菌に特異的に結合するものを含む。
【0085】
他の代表的なモノクローナル抗体は、抗TPO(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)、抗HBc(B型肝炎c抗原)、抗HBc/IgM、抗HAV(A型肝炎ウイルス)、抗HAV/IgM、抗HCV(C型肝炎ウイルス)、抗HIV、抗HIVp−24、抗風疹IgG、抗風疹IgM、抗トキソプラズマ症IgG、抗トキソプラズマ症IgM、抗CMV(サイトメガロウイルス)IgG、抗CMVIgM、抗HGV(G型肝炎ウイルス)、抗炭疸菌及び抗HTLV(ヒトTリンパ栄養ウイルス)を含む。
【0086】
2.支持体
いくつかの実施形態において、結合パートナーは、なんらかの従来の手段、例えば、吸着、吸収、非共有結合、架橋剤による共有結合、又は支持体若しくは第1の結合パートナーのいずれか、若しくは両方の化学的活性化に起因する共有結合により、支持体上に固定化させることができる。いくつかの実施形態において、支持体による第1の結合パートナーの固定化は、結合対を用いることによって達成することができる。例えば、結合対の1つのメンバー、例えば、ストレプトアビジン又はアビジンを支持体に結合させることができ、同じ結合対の他のメンバー、例えば、ビオチンを第1の結合パートナーに結合させることができる。第1の結合パートナーを支持体上に固定化する適切な手段は、例えば、Pierceカタログ(Pierce Chemical Company、P.O.Box 117、Rockford、III.61105、1994)に開示されている。
【0087】
結合パートナーとともに用いることができる支持体の他の例は、膜、ビーズ、粒子、電極、又は容器の壁若しくは表面を含むが、これらに限定されない。支持体は、ニトロセルロース、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、酢酸エチルビニル(EVA)、ガラス、炭素、ガラス質炭素、カーボンブラック、カーボンナノチューブ若しくはフィブリル、白金、パラジウム、金、銀、塩化銀、イリジウム又はロジウムなどの、結合パートナーが固定化される材料を含んでいてよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、支持体は、ポリスチレンビーズ又は磁化可能ビーズなどのビーズである。様々な実施形態において、ビーズは、多くの異なるサイズ、例えば、3mm以上、3mm以下、1mm以下、0.1mm以下、100μm以下、10μm以下、5μm以下、2.8μm、1μm、1μm以下、0.5μm以下、0.1μm又は0.1μm以下を有していてよい。ビーズのサイズは、0.01μm〜5mm、0.1μm〜3mm、1μm〜3μm又は2.8μm〜5μmの範囲にあってもよい。特定の実施形態において、ビーズは主に球状である。特定の実施形態において、ビーズは球状でなくてよく、非球状ビーズについては、上の寸法はビーズの内部にとどまることができる最大直線部分の長さを指す。
【0089】
特定の実施形態において、支持体は、結合パートナーの溶解、結合、検出分子の非特異的結合の減少、又は検出工程に不可欠な制御分子の結合を促進するためのさらなるポリマーコーティングを有していてよい。
【0090】
他の実施形態において、支持体は、微小遠心管又は多ウエルプレートの少なくとも1つのウエルである。
【0091】
3.結合パートナーの標識
いくつかの実施形態において、結合パートナーを標識することができる。検出可能な標識は、例えば、発蛍光団、発色団、スピン標識、放射性同位元素、酵素、量子ドット、ビーズ、アミノヘキシル、ピレン、抗体により検出可能な抗原決定基、化学ルミネセンス部分、若しくは電気化学ルミネセンス部分(ECL部分)、ハプテン、ルミネセンス標識、放射性標識、量子ドット、ビーズ、アミノヘキシル、ピレン、金属粒子、スピン標識及び色素であってよい。代表的な標識は、Hemmilaら、J.Biochem.Biophys.Methods、第26巻、283〜290頁(1993)、Kakabakosら、Clin.Chem.、第38巻、338〜342頁(1992)、Xuら、Clin.Chem.、2038〜2043頁(1992)、Hemmilaら、Scand.J.Clin.Lab.Invest.、第48巻、389〜400頁(1988)、Bioluminescence and Chemiluminescence Proceedings of the 9th International Symposium 1996、J.W.Hastingsら編、Wiley、New York、1996、Bioluminescence and Chemiluminescence Instruments and Applications、Knox Van Dyre編、CRC Press、Boca Raton、1985、I.Hemmila、Applications of Fluorescence in Immunoassays、Chemical Analysis、第117巻、Wiley、New York、1991、及びBlackburnら、Clin.Chem.、第37巻、1534頁(1991)に開示されている。
【0092】
標識結合パートナーは、蛍光測定、時間分解蛍光測定及び/又は蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)測定に有用なものなどの発蛍光団で標識されていてよい。本発明の方法に用いることができる発蛍光団は、IR色素、Dyomics色素、フィコエリトリン、カスケードブルー、Oregonグリーン488、パシフィックブルー、ローダミングリーンなどのローダミン誘導体、5(6)−カルボキシフルオロセイン、シアニン色素(すなわち、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7)(ジエチルアミノ)クマリン、フルオレセイン(すなわち、FITC)、テトラメチルローダミン、リスマリン、Texas Red、AMCA、TRITC、bodipy色素、Alexa色素、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFP類似体、reef coral蛍光タンパク質(RCFPs)、RCFP類似体及び米国特許第5,783,673号、同第5,272,257号及び同第5,171,843号に記載されているtandem色素を含むが、これらに限定されない。
【0093】
本発明に用いることができる酵素標識は、ダイズペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ及び西洋ワサビペルオキシダーゼを含むが、これらに限定されない。
【0094】
本発明に用いることができる放射性同位元素は、131I、32P及び35Sを含むが、これらに限定されない。
【0095】
本発明に用いることができる化学ルミネセンス部分は、アクリジニウム、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウムエステル、アクリジンジオン1,2−ジオキセタン、ピリドピリダジンを含むが、これらに限定されない。
【0096】
標識結合パートナーのさらなる例は、電気化学ルミネセンス(ECL)アッセイにおけるシグナルの発生に有用である部分、官能基又は分子で標識されている結合パートナーを含む。ECL部分は、電気化学エネルギー源に直接曝露させることにより、電磁波を繰返し放出するように誘導することができるあらゆる化合物であってよい。そのような部分、官能基又は分子は、米国特許第5,962,218号、同第5,945,344号、同第5,935,779号、同第5,858,676号、同第5,846,485号、同第5,811,236号、同第5,804,400号、同第5,798,083号、同第5,779,976号、同第5,770,459号、同第5,746,974号、同第5,744,367号、同第5,731,147号、同第5,720,922号、同第5,716,781号、同第5,714,089号、同第5,705,402号、同第5,700,427号、同第5,686,244号、同第5,679,519号、同第5,643,713号、同第5,641,623号、同第5,632,956号、同第5,624,637号、同第5,610,075号、同第5,597,910号、同第5,591,581号、同第5,543,112号、同第5,466,416号、同第5,453,356号、同第5,310,687号、同第5,296,191号、同第5,247,243号、同第5,238,808号、同第5,221,605号、同第5,189,549号、同第5,147,806号、同第5,093,268号、同第5,068,088号、同第5,061,445号及び同第6,808,939号、Dong L.ら、Anal.Biochem.、第236号、344〜347頁(1996年)、Blohmら、Biomedical Products、第21巻、4号、60頁(1996年)、Jameisonら、Anal.Chem.、第68巻、1298〜1302頁(1996年)、Kibbeyら、Nature Biotechnology、第14巻、3号、259〜260頁(1996年)、Yuら、Applied and Environmental Microbiology、第62巻、2号、587〜592頁(1996)、Williams、American Biotechnology、26頁(1996年1月)、Darsleyら、Biomedical Products、第21巻、1号、133頁(1996年1月)、Kobrynskiら、Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology、第3巻、1号、42〜46頁(1996年1月)、Williams、IVD Technology、28〜31頁(1995年11月)、Deaver、Nature、第377号、758〜760頁(1995年10月26日)、Yuら、BioMedical Products、第20巻、10号、20頁(1995年10月)、Kibbeyら、BioMedical Products、第20巻、9号、116頁(1995年9月)、Schutzbankら、Journal of Clinical Microbiology、第33巻、2036〜2041頁(1995年8月)、Sternら、Clinical Biochemistry、第28巻、470〜472頁(1995年8月)、Carlowicz、Clinical Laboratory News、第21巻、8号、1〜2頁(1995年8月)、Gatto−Menkingら、Biosensors & Bioelectronics、第10巻、501〜507頁(1995年7月)、Yuら、Journal of Bioluminescence and Chemiluminescence、第10巻、239〜245頁(1995年)、Van Gemenら、Journal of Virology Methods、第49巻、157〜168頁(1994年)、Yangら、Bio/Technology、第12巻、193〜194頁(1994)、Kentenら、Clinical Chemistry、第38巻、873〜879頁(1992年)、Kenten、Non−radioactive Labeling and Detection of Biomolecules、Kessler編、Springer、Berlin、175〜179頁(1992年)、Gudibandeら、Journal of Molecular and Cellular Probes、第6巻、495〜503頁(1992年)、Kentenら、Clinical Chemistry、第37巻、1626〜1632頁(1991年)、Blackburnら、Clinical Chemistry、第37巻、1534〜1539頁(1991年)、Electrogenerated Chemiluminescence、Bard編、Marcel Dekker(2004年)、並びにKnight A.及びGreenway G.、Analyst、第119巻、879〜890頁に開示されている。
【0097】
特定の実施形態において、電気化学ルミネセンス部分は、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、ロジウム、白金、パラジウム、モリブデン及びテクネチウムなどの金属を含んでいてよい。特定の実施形態において、電気化学ルミネセンス部分は、セリウム、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジウム、プロメチウム、テルビウム、ツリウム及びイッテルビウムなどの希土類金属を含んでいてよい。特定の実施形態において、電気化学ルミネセンス部分は、ルテニウム又はオスミウムなどの金属を含んでいてよい。特定の実施形態において、結合パートナーは、ルテニウム(II)トリスビピリジン及びその塩([Ru(bpy)3]2+)などのトリスビピリジルルテニウム基のようなルテニウム部分で標識することができる。他の代表的なECL部分は、構造が
【化1】
である[Ru(スルホ−bpy)2bpy]2+であってよい[式中、Wは、NHSエステル、活性化カルボキシル、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ヒドラジド、マレイミド又はホスホルアミドなどの共有結合を形成するように、生物学的物質、結合パートナー、酵素基質又は他のアッセイ試薬と反応することができるECL部分に結合した官能基である]。[Ru(スルホ−bpy)2bpy]2+は、示した構造の他の塩も含む。
【0098】
III.装置
いくつかの実施形態において、本発明は、上述の方法を実施するための装置を提供する。
【0099】
いくつかの実施形態において、本発明は、
(a)サンプリング器具及びフィルターから流れるように方向が定められた第1の一方向弁を介してサンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)第1の一方向弁とフィルターとの間の箇所に流体的に接続され、フィルターから廃棄物管路に向かって流れるように方向が定められた第2の一方向弁に流体的に接続されている廃棄物管路、
(c)液体の流れをフィルター中に不可逆的に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(d)前記1つ又は複数の分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(e)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(f)標識結合パートナーを測定する手段
を含む、1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置を提供する。
【0100】
様々な実施形態において、本発明は、
(a)サンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)液体の流れをフィルター中に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(c)前記1つ又は複数の分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(d)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(e)標識結合パートナーを測定する手段
を含む、1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置を提供する。
【0101】
特定の実施形態において、本発明は、
(a)フィルターにより下部容器から流体的に封じられている上部容器、及び
(b)上部容器を経ることなく、下部容器に出入りすることができる開口部
を含む試料ろ過器具を提供する。
【0102】
いくつかの実施形態において、装置は、1回又は複数回使用することができる電極を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、サンプリング器具は、空気サンプラーである。
【0104】
いくつかの実施形態において、試料ろ過器具は、半径方向対称性を有する。他の実施形態において、試料ろ過器具の外部は、半径方向対称性を有さない。
【0105】
標識結合パートナーを測定するためにルミネセンス(例えば、電気化学ルミネセンス、蛍光又は化学ルミネセンス)を使用する実施形態において、装置は、ルミネセンスの放射を測定するための光検出器、例えば、フォトダイオード、CCD若しくはCMOSセンサ、及び/又は光電子倍増管を含んでいてよい。
【0106】
1.結合試薬容器
いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、乾燥組成物を収容する。乾燥組成物の例は、組成物の総重量に対して3重量%以下の含水率を有する組成物及び組成物の総重量に対して1重量%から3重量%の含水率を有する組成物を含む。いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、25℃で95%の相対湿度で少なくとも4週間にわたり容器内の乾燥組成物を乾燥した状態に維持するのに十分な水分バリアを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、乾燥組成物は、結合アッセイ及び陽性対照に用いる組成物を含む。
【0108】
特定の実施形態において、結合試薬容器は、凍結乾燥緩衝液をさらに含んでいてよい。凍結乾燥緩衝液は、当技術分野でよく知られており、リン酸緩衝剤、及びトレハロース若しくはスクロースなどの1つ又は複数の凍結防止剤を含んでいてよい。
【0109】
特定の実施形態において、結合試薬容器は、第2の結合パートナー、分析対象物又は分析対象物の類似体の支持体への非特異的結合を阻害又は減少させるために処理することができるアッセイ支持体を含む。あらゆる従来の阻害剤を用いることができる。適切な阻害剤は、例えば、米国特許第5,807,752号、同第5,202,267号、同第5,399,500号、同第5,102,788号、同第4,931,385号、同第5,017,559号、同第4,818,686号、同第4,622,293号、同第4,468,469号、カナダ特許第1,340,320号、国際公開第97/05485号、欧州特許公開A1第566,205号、欧州特許公開A2第444,649号、欧州特許公開A1第165,669号に記載されている。代表的な阻害剤は、動物血清(例えば、ヤギ血清)、ウシ血清アルブミンなどの血清及び血清アルブミン、ゼラチン、ビオチン並びに乳汁タンパク質(「blotto」)を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、各ウエルが1つ又は複数の乾燥組成物を含むことができる、例えば、24、96、384、1536又は6144ウエルを含む多ウエルプレートであってよい。特定の実施形態において、機器に用いられるような多ウエルプレートは、底部の寸法に関するANSI/SBS20004マイクロプレート規格(ANSI/SBS1−2004)に規定されているほぼ最大寸法より大きくない外側寸法を有していてよい。機器に用いられるような多ウエルプレートの第3の寸法(すなわち、高さ)は、約44mmより大きくない外側寸法を有していてよい。様々な実施形態において、容器は、直径が約9mm以下で、高さが約40mm以下の管であってよい。いくつかの実施形態において、容器は、約8.6mmの最大外径及び約33.8mmの高さを有する管であってよい。いくつかの実施形態において、結合試薬容器の2次元アレイは、上の寸法の多ウエルプレート内にあるホルダーに入れることができる。様々な実施形態において、ホルダー中の容器の2次元アレイは、高さが35mmであってよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、密封することができる。いくつかの実施形態において、容器は、容器の開口部に押し込むことができるEVA又はSantoprene(登録商標)などのエラストマー、熱硬化性又は熱可塑性材料で密封することができる。いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、フォイルマイクロプレートシールなどの金属層を含む積層材で密封することができる。様々な実施形態において、結合試薬容器は、容器にヒートシールすることができる積層材などの熱により変形できる層を含む積層材で密封することができる。いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、容器に積層材を結合させることができる接着性層を含む積層材で密封することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、結合試薬容器は、密封バッグ内の1つ又は複数の外被(容器)などの少なくとも1つの外被を含む。いくつかの実施形態において、密封バッグは、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、アルミニウム、ニッケル、ポリエステル−フォイル−ポリエチレンの3積層体又はポリエステル−ポリエチレンの2積層体を含むことができる。いくつかの実施形態において、乾燥剤を最も内側の外被と最も外側の外被との間に加えることができる。乾燥剤は、例えば、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、非晶質ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、クレー、活性アルミナ、ゼオライト又はモレキュラーシーブを含んでいてよい。いくつかの実施形態において、湿度インジケータを最も内側の外被と最も外側の外被との間に加えることができる。湿度インジケータは、例えば、乾燥組成物が依然として十分に乾燥しており、その安定性は損なわれていなかったという表示として用いることができる。いくつかの実施形態において、湿度インジケータは、最も外側の外被を通して見ることができる。特定の実施形態において、湿度インジケータは、米国軍用規格MS20003に適合するように設計されたもののような変色により湿度が示される、カード又はディスクであってよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、容器により形成される湿度バリアは、外部条件が10日間、20日間、40日間、67日間、3カ月間、6カ月間、12カ月間、18カ月間、24カ月間又はより長期間にわたり45℃及び相対湿度100%であるとき、乾燥組成物を乾燥した状態に維持するのに十分であり得る。
【0114】
いくつかの実施形態において、容器により形成される湿度バリアは、外部条件が1日間、1週間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、12カ月間、18カ月間、24カ月間又はより長期間にわたり25℃及び相対湿度100%であるとき、乾燥組成物を乾燥した状態に維持するのに十分であり得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、容器により形成される湿度バリアは、外部条件が3カ月間、6カ月間、12カ月間、18カ月間、24カ月間又はより長期間にわたり4℃及び相対湿度100%であるとき、乾燥組成物を乾燥した状態に維持するのに十分であり得る。
【0116】
2.フローセルに基づく生物学的検出システム
図1は、代表的な検出システム、例えば、フローセルに基づく生物学的検出システムの概略図である。示すように、検出システムの全動作は、コンピュータシステムにより制御することができる。試料の分析は、フローセル112、例えば、放射能、吸光度、磁性若しくは磁化可能物質、光散乱、光学干渉(すなわち、干渉測定)、屈折率変化、表面プラスモン共鳴及び/又はルミネセンス(例えば、蛍光、化学ルミネセンス及び電気化学ルミネセンス)を測定するように構成されたフローセルで行われる。1つの態様によれば、フローセル112は、電気化学ルミネセンス測定を行うように構成することができる。代表的な電気化学ルミネセンスフローセル及びそれらの使用の方法は、米国特許第6,200,531号に開示されている。フローセル112の動作は、フローセル112からアッセイのデータを受け、データ解析を行うこともできるコンピュータシステムにより制御することができる。フローセル112は、試料が適切に吸引されることを保証するために用いることができる、液体と空気との差を検出するように構成することができる。
【0117】
代表的なフローセルに基づく生物学的検出システムは、ガス及び液体を含むことができる1つ若しくは複数の試薬及び/又は1つ若しくは複数の試料を導入するための液体処理ステーションを含んでいてよい。図1に流量制御弁109及び116並びにピペッター111を受け入れるためのマニホールドを含むことができる液体処理ステーション110を示す。追加の流量制御弁並びに試薬/ガス検出器も存在していてよい。
【0118】
ピペッター111は、マニホールドの密閉面及びピペッターの密閉面(例えば、カラー、フランジ等)上に配置されたOリング120を用いて液体処理ステーション110内に気密シールを形成することができる。示すように、液体処理マニホールド密閉面は、試薬送入管路から離れた位置に設けることができる(例えば、試薬管路の吸引チャンバー入口箇所の上)。さらに、1つ又は複数の試薬入口箇所を吸引チャンバー内のあらかじめ決定した高さに配置することができる。例えば、示すように、液体試薬管路は、ガス管路の汚染を防止するために、ガス試薬管路の下に配置することができる。試薬の吸引は、試薬を選択される試薬ビン125から、フィルター107から、又は可能な追加のビンから、或いは空気を示されていない流量制御弁を介して吸引するように、ピペッターの適切な位置決め及びポンプ113の作動により、1つ又は複数の流量制御弁109、116の選択的な作動を調整することにより制御できる。
【0119】
検出システムは、容器及び/又は液体処理ステーションから液体を吸引/分配するようにピペッターを向けることができるように、ピペッター111及び1つ又は複数の結合試薬容器135を精密かつ正確に位置決めすることができる。容器は、乾燥又は湿潤結合試薬108を有することができる。ピペッター111と結合試薬容器135の相対的な位置決めは、3次元位置決めシステム117によって行われる。3方向の運動は、おそらく製造に関連する垂直性からの摂動のみを有するので、相互に垂直に非常に近いか、或いは矩形の箱のすべての箇所にわたり動く必要がおそらくないため、明確に垂直でないことがあり得る。或いは、位置決めシステムは、代替座標システム(例えば、1次元、2次元、極座標等)に基づくものであってよい。
【0120】
いくつかの実施形態において、試料収集器具100は、例えば、湿潤濃縮空気試料を収集することができる。代表的な試料収集器具は、Spector Industries(Kansas City、MO)によるSpinCon(登録商標)改良型空気サンプラーである。特定の実施形態において、試料収集器具100は、試料を例えば手で入れることができる開放カップ又は貯蔵容器であってよい。場合によっては、試料収集器具は、配管123を介して試薬ビン125中にある抽出緩衝液を用いることができる。或いは、器具中又は容器の外部にある異なる液体を試料収集器具100により用いることができる。場合によっては、試料収集器具100からの配管101には、器具内の大気への通気穴を設けることができる。ポンプ113は、ピペッター111、流量制御弁109、フィルター107、配管105、配管103、一方向弁102及び配管101を介して試料収集器具100からろ液を吸引することができる。試料収集器具100は、液体を一方向弁102を介して配管105中に吸引し、配管105から液体を配管104及び一方向弁115を介して廃棄物容器106に送る別の方法でポンプ113を用いて過剰な試料液体を排出させることができる。フィルター107は、抽出緩衝液(例えば)を流量制御弁116を介して少なくともピペッター111中に吸引し、抽出緩衝液をフィルター107を経て、一方向弁115を介して廃棄物容器106に押し込む別の方法でポンプ113を用いて逆洗又は少なくとも部分的に洗浄することができる。
【0121】
試料収集器具100からの試料をフィルター107によりろ過し、ピペッター111中に吸引することができる。次いで、試料を結合試薬容器135中に分配することができる。試薬ビン125からの抽出緩衝液又は他の試薬をさらに結合試薬容器135中に分配することができる。次いで結合試薬と試料中に見出した分析対象物の間で結合反応は起こり得る。一定期間後に試薬ビン125からの追加の抽出緩衝液又は他の試薬は結合試薬容器135中に分配することができる。さらなる時間間隔の後に、反応混合物を測定のためにフローセル112中に吸引することができる。測定技術によって、測定が行われる前に追加の試薬がフローセルに必要なことがある。例えば、電気化学ルミネセンス測定の場合には、フローセル中の反応混合物について遊離−結合分離の実施中に一般的に共反応物をフローセルに加える。測定後、試料を廃棄物容器に分配することができる。
【0122】
3.フローセルを含まない検出システム
図2にフローセルを使用しない検出システムのいくつかの実施形態を示す。これらの実施形態は、液体対空気を検出する能力又は試料が吸引されることを保証する他の手段を保有することができる。これらの実施形態と上述のフローセル実施形態との相違点のみを述べると、これらの実施形態において、結合試薬容器202は、結合パートナー並びに測定に必要な他の物質を液体又は乾燥した形態で収容することができる。例えば、電気化学ルミネセンス測定の場合、結合試薬容器202は、電気化学ルミネセンスを開始させるための電極を含むことができる。比色測定の場合、結合試薬容器202は、試料の光学的特性をin sutuで測定するための光路を含むことができる。いくつかの実施形態において、結合試薬容器202は、複数の分析対象物に対する結合パートナーを収容することができる。これらの結合パートナーは、少なくとも一部は測定技術が標識結合パートナー間でどのように区別するかによって、201として図に示すように空間的に分離することができるか、又は同じ場所に配置することができる。ピペッター111は、試料を抽出緩衝液及び/又は測定に必要な他の試薬の容器にピペッティングにより移すことができる。ピペッター111は、結合試薬容器202の洗浄又は内容物を交換するために別の方法で用いることができる。
【0123】
4.代替構成
図3に試料を得るための代替構成を用いるいくつかの実施形態を示す。図3aに示すように、ポンプ301をフィルター107の前に置くことができる。この位置では、ポンプ301は、試料のより迅速なろ過を可能にするためにフィルター107にわたる大きい圧力を発生させることができる。ポンプ301はまた、過剰な圧力が生じないことを保証するための圧力監視器具を含むことができる。過剰な試料を廃棄物容器に送ったり、フィルター107を逆洗するなどの他の特徴を保有させることができる。簡潔のために、斜線398は、図1又は図2の装置をこのシステムに接続させることができる場所を示す。図3bに、試料収集器具100が用いる圧力で常に開いている通気穴を有さない代表的な実施形態を示す。ポンプ302は、試料収集器具100及びフィルター107を通して液体を押し出すことができる。ポンプ302はまた、過剰な圧力が生じないことを保証するための圧力監視器具を含むことができる。簡潔のために、斜線399は、図1又は図2の装置をこのシステムに接続させることができる場所を示す。
【0124】
図4に示すように、いくつかの実施形態の配管105は、フィルターと常時流体接触していない。ここに示すように、試料収集器具100は、試薬ビン125中に存在する抽出緩衝液に場合によってポンプ302及び配管123を介して接続させることができる。或いは、異なる液体を試料収集器具100により使用することができる。ポンプ302は、容器ホルダー402中にある容器401に試料を分配することができる。次に、結合パートナーとの結合及び最終的な測定のために、容器ホルダー402を動かす運動制御装置403及びピペッター111を動かす運動制御装置117により、試料を容器401から吸引して、例えば、結合試薬容器135又は結合試薬容器202中に入れることができる。いくつかの実施形態において、試料は、手又はロボット組込みの代替部品により容器401に入れることができる。図4に容器401及び容器ホルダー402の円形の配置を示すが、他の形状(例えば、矩形配列又は線状配列)も考えられる。
【0125】
図5に容器401のいくつかの実施形態を示す。いくつかの実施形態において、空間501及び503はフィルター502により分離することができる。試料が最初に空間501に入ることができ、ろ液が空間503に入ることができる。ピペッター111は、ろ液に接触するためにフィルター502を貫通することができる。いくつかの実施形態において、試料が最初に開口部505を経て空間507に入ることができ、フィルター502によりろ過されることができ、ろ液が空間506に入ることができる。次に、ピペッター111は、フィルター502に接触せずに開口部506を経てろ液に接触することができる。容器の底部は、ピペッター111がほぼすべてのろ液を吸引することができるように構成することができる。いくつかの実施形態において、空間507及びフィルター502は円環状であってよく、一方、開口部506は環状体の中心部にあってよい。これ及び同様な実施形態において、容器401の半径方向の対称性は、容器ホルダー402の回転と独立に生じ得る。いくつかの実施形態において、試料が最初に空間501に入ることができ、ろ液が空間503に入り、次いで、コネクタ509を経て空間508に流入することができる。次に、ピペッター111は、フィルター502に接触せずにろ液に接触することができる。容器401が半径方向に対称でない実施形態において、検出システムが容器401の向きを知ることができるように容器ホルダー402を調節することができる。ろ過工程を促進するために、容器ホルダー402を遠心分離機として動作させて重力を増大させる(一般相対性理論により)か、又は試料を受け入れる容器の上部の一部を密閉して加圧することができる。これらの容器401の位相上の同等物も本発明の一部である。
【0126】
図6に示すように、本発明のいくつかの実施形態は、フィルター601を含むピペットチップ600を使用する。試料収集器具100からのろ液は、配管105及びピペットチップ600を通過し、検出システムによって、結合試薬容器135又は結合試薬容器202に入ることができる。場合によっては、試料収集器具は、配管123を介して抽出緩衝液115を使用することができる。
【0127】
いくつかの実施形態は、図4及び/又は図6における変形形態であってよい。配管123にポンプ302を設置せずに、ポンプ301と同様な方法でポンプを配管105に設置することができる。試料収集器具100を空にする手段として、一方向弁102及び115の対が場合によって存在していてよい。
【0128】
特定の実施形態において、フィルター107、502及び/又は601は、本明細書における他所で記載した特性及び組成を有する。特定の実施形態において、試薬ビン125に入っている抽出緩衝液は、本明細書における他所で記載した特性及び組成を有する。
【0129】
ポンプ113、301及び302は、いくつかの種類であってよい。例えば、ポンプは、米国特許出願公開US−2004−0096368A1又はPCT国際公開2005/114175A2に記載されているものであってよい。ポンプは、蠕動式、シリンジ式、ギア式、ピストン式(Fluid Metering,Inc.、Syosset、NYにより販売されている無弁設計並びに弁を用いるより伝統的な設計を含む)又は他の容積式設計であってよい。ポンプは、真空ポンプ及び渦巻式ポンプなどの圧力源であってよい。特定の実施形態において、本発明におけるポンプは、液体を移動させるのに毛細管作用のみに依拠することはできない。
【0130】
IV.キット
いくつかの実施形態において、本発明は、問題の分析対象物を検出するためのアッセイを実施するための試薬、試料をろ過するためのフィルター及びアッセイに対する試料マトリックスの影響を減少させるための少なくとも1つの抽出緩衝液を含むキットを提供する。
【0131】
特定の実施形態において、本発明は、フィルター、並びに(a)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び(b)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液から選択される少なくとも1つの試薬を含む、上の方法を実施するためのキットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、前記分析対象物に対して特異的な標識結合パートナーをさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、前記分析対象物に対して特異的な第1の標識結合パートナー及び第2の標識結合パートナーをさらに含む。いくつかの実施形態において、第1及び第2の結合パートナーのうちの少なくとも1つが抗体である。
【0132】
いくつかの実施形態において、キットは、分析対象物の標識類似体及び前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーをさらに含む。いくつかの実施形態において、分析対象物の標識類似体は、既知の量の標識された分析対象物自体である。
【0133】
特定の実施形態において、アッセイを実施するための試薬が上記のように結合試薬容器中に入れられており、一方、フィルター及びアッセイに対する試料マトリックスの影響を減少させるための少なくとも1つの抽出緩衝液が第2の容器中に入れられていてよい。
【0134】
様々な実施形態において、キットはキットの使用方法を記載している添付文書又はパッケージの形の取扱説明書を備えていてよい。
【0135】
本発明による特定のキットにおいて、アッセイを実施するための試薬が上述の標識のうちの少なくとも1つを含む。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態において、アッセイを実施するための試薬が上述の支持体のうちの少なくとも1つを含む。
【0137】
キットの構成要素は、問題の分析対象物を検出するためのアッセイを実施するのに有用なあらゆる試薬を含んでいてよい。特定の実施形態において、キットは、アッセイ用又は試薬の完全性を維持するための容器、湿度インジケータ又は湿度バリアのいずれかを含んでいてよい。
【0138】
以下の実施例は、本発明の例示であること意味するものであり、本発明の範囲及び適用を限定するものではない。当業者は、本発明の目的を反映するさらなる実施形態を認識することができる。
【実施例】
【0139】
これらの実施例では、分析対象物検出免疫アッセイの前又は実施中に試料を処理することの有用な効果を述べる。そのような処理のない場合、試料マトリックス中の成分が、特定の分析対象物を検出するのに必要な結合相互作用を妨害することがあり得る。結果として、結合シグナル及び/又はシグナル対バックグラウンド比(S:B)が減少し、分析対象物の検出が困難になる。1つの実施例で述べる試薬及び他の定義は、当該実施例における記述/定義によって明確に取って代わらない限り、他の実施例にも適用される。
【0140】
(実施例1)
環境マトリックスはシグナル及びシグナル対バックグラウンド比を著しく減少させる
検出する分析対象物としてマウスIgG抗体を用いて免疫アッセイを実施した。環境マトリックス(例えば、MRマトリックス)がアッセイに及ぼす影響を検討するために、分析対象物標準は、湿式濃縮装置(MRマトリックス)を通して郵便室内の空気をろ過して調製したマトリックス又はリン酸緩衝生理食塩液(PBSマトリックス)で保存マウスIgGを10μg/mlに希釈して調製した。PBSマトリックスは、pH7.4の0.3%(v/v)Tween(登録商標)(モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、10mMリン酸緩衝液、120mM NaCl、2.7mM KCl、0.1%(v/v)ヒドロキシピリジン及び0.1%(v/v)メチルイソチアゾリノン(MIT)を含んでいた。MRマトリックス中に存在する物質を図10に示す。希釈保存溶液をMRマトリックス又はPBSでさらに連続希釈して、0.5ng/ml〜1000ng/mlの範囲の濃度のマウスIgGを含む試料を得た。
【0141】
ヤギ抗マウスIgG Fc抗体で被覆したビーズを以下のように準備した。最初に、ヤギ抗体をビオチンで標識した。NHS−LC−LC−ビオチン(Pierce)をジメチルスルホキシド(DMSO)で1mg/mlの濃度に希釈して、ビオチン溶液を調製した。PBS中に0.5mgのヤギ抗体を含む容積を100μlのビオチン溶液と混合した。混合物を絶えず振とうしながら室温で1時間インキュベートした。ヤギ抗体−ビオチン複合体を、Pierce slide−a−lyzersを用いて、5時間ごとに緩衝液を交換し、3回交換のPBSに対して透析した。ストレプトアビジンを被覆した直径2.8μmの超常磁化可能ビーズ(Dynal Biotech)4mgを10μgのビオチン標識ヤギ抗体と混合し、微小遠心管中で絶えず振とうしながら室温で1時間インキュベートした。ビーズを1mlのアッセイ緩衝液で3回洗浄し、5mg/mlの最終濃度に再構成した。
【0142】
抗マウスIgGF(ab)2フラグメントを製造業者の指示に従って[Ru(bpy)3]2+(BV−TAG NHS Ester、BioVeris、Corp Gaithersburg、MD)で標識した。
【0143】
抗体被覆ビーズをアッセイ緩衝液で1:40に希釈し、25μlのこの懸濁液を各アッセイウエルに加えて、免疫アッセイを実施した。50μlの各マウスIgG試料を各ウエルに3系列で加えた。[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントをアッセイ緩衝液で670ng/mlに希釈した。25μlの標識F(ab)2フラグメント溶液をすべてのアッセイウエルに加えた。アッセイプレートを振とうしながら室温で15分間インキュベートした。製造業者の指示に従ってM−seriesM1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて超常磁化可能ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントの量を測定する前に、300μlのPBS希釈剤をすべてのウエルに加えた。
【0144】
結果を表3及び図7に示す。データから、MRマトリックスが該アッセイにおけるシグナル対バックグラウンド比を著しく減少させたことがわかる。
【0145】
【表3】
【0146】
(実施例2)
シグナル及びS:B比に対する試料の調製の影響
MRマトリックスで希釈したマウスIgGの試料を実施例1で述べたように調製した。抗マウスIgGFcフラグメント抗体被覆ビーズをアッセイ緩衝液で1:40に希釈し、25μlのこの懸濁液を各アッセイウエルに加えて、免疫アッセイを実施した。50μlの各マウスIgG試料を各ウエルに3系列で加えた。[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントをアッセイ緩衝液で670ng/mlに希釈した。25μlの標識F(ab)2フラグメント溶液をすべてのアッセイウエルに加えた。アッセイプレートを振とうしながら室温で15分間インキュベートした。製造業者の指示に従ってM−Series M1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて超常磁化可能ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントの量を測定する前に、300μlのホウ酸緩衝液(0.1Mホウ酸ナトリウム、0.5M NaCl、0.3%Tween(登録商標)20、pH8.5)をすべてのウエルに加えた。PBS希釈剤はPBSマトリックスと異なる保存剤を使用し、PBS希釈剤はヒドロキシピリジン及びMITの代わりに0.1%(v/v)KathonIIcG/ICP(Sigma Aldrich)を含む。
【0147】
結果を表4及び図8に示す。表3及び図7と比較することにより、インキュベーションの後、ECL測定の前にホウ酸緩衝液を免疫アッセイに加えることにより、シグナル対バックグラウンド比が著しく増加することわかる。
【0148】
【表4】
【0149】
(実施例3)
マトリックスのろ過の効果
MRマトリックスで希釈した試料について、リシンを検出するための免疫アッセイを実施した。リシン(Ricinus communis agglutinin II、RCA60)をMRマトリックスで1000ng/ml、100ng/ml、10ng/ml及び1ng/mlに希釈した。アッセイの前に、各試料の一部を5ml注射器を用いて5μmAcrodisc(登録商標)シリンジフィルター(Pall Corp.、Elmhurst、NY)によりろ過した。実施例1で述べたように、リシンに結合する抗体を用いてビーズを被覆した。実施例1で述べたように、リシンに結合する第2抗体を[Ru(bpy)3]2+で標識した。
【0150】
25μlの抗体被覆超常磁化可能ビーズ懸濁液を各アッセイウエルに加えた。50μlの各ろ過済みリシン試料をアッセイウエルに2系列で加えた。MRマトリックス希釈の影響をろ過と比較するために、100μlの未ろ過リシン試料をアッセイウエルに加えた。25μlの[Ru(bpy)3]2+標識抗リシン抗体及び25μlのビオチン標識抗体被覆ビーズをすべてのアッセイウエルに加えた。アッセイプレートを振とうしながら室温で15分間インキュベートした。製造業者の指示に従ってM−Series M1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて超常磁化可能ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識F(ab)2フラグメントの量を測定する前に、300μlのホウ酸緩衝液(0.1Mホウ酸ナトリウム、0.5M NaCl、0.3%Tween(登録商標)20、pH8.5)をすべてのウエルに加えた。
【0151】
表5及び図9に示すように、分析対象物試料のろ過は、未ろ過試料と比較してシグナル及びシグナル対バックグラウンド比を実質的に改善した。
【0152】
【表5】
【0153】
図11に測定セル電極上へのろ過済み及び未ろ過試料からの超常磁化可能ビーズの沈着の間の差を示す。最も内側の円は、これらの画像を得るために除去した光検出器に直接可視である作用電極の一部である。1つ又は複数の垂直のバンドを形成している褐色の小粒は、超常磁化可能ビーズである。(A)は、試料を本発明によるフィルター及び抽出緩衝液で処理した場合のビーズの沈着を示す。(B)は、ろ過せずに処理した同じMRマトリックスを含む試料で開始したビーズの沈着の写真である。画像は、マトリックスは、両方が実測電気化学ルミネセンスに影響を及ぼすと予想される捕捉されるビーズの数並びにそれらの分布に影響を及ぼすことを示している。
【0154】
(実施例4)
アッセイの感度
本発明により実施されるリシンアッセイの感度の下限を試験するために、リシンをMRマトリックスで0.2、2、20、200及び2000pg/mlに希釈した。免疫アッセイインキュベーションステップの完了後までホウ酸緩衝液を加えず、米国政府により提供された重要試薬プログラム(Critical Reagent Program)(CPR)試薬を用いたこと以外は、実施例3で述べたように試料をろ過し、アッセイした。測定は、1回測定した0pg/ml濃度を除いて、2回繰り返して行った。
【0155】
表6に本実験におけるシグナル対バックグラウンド比を示す。図12に本実験におけるシグナル値を示す。本アッセイは、少なくとも200pg/mlのリシン濃度に対して感度が高かった。
【0156】
【表6】
【0157】
(実施例5)
アッセイシグナルに対するホウ酸緩衝液単独の影響
ホウ酸緩衝液がアッセイの性能を改善するかどうかを検討するために、炭疸菌芽胞(Sterne株)をPBSマトリックス、又はMRマトリックスとホウ酸緩衝液との50%/50%混合物で102コロニー形成単位(cfu)/mlから106cfu/mlまでの範囲の濃度に希釈した。各試料の一部における芽胞を製造業者の指示に従って標準CRP試薬を用いてろ過せずにアッセイした。簡単に述べると、100μlの試料ろ液又はPBS希釈芽胞を、CRPアッセイ試薬を含み各管に加えた。次いで、管をM1M分析装置に入れ、インキュベートし、読み取るように設定した。15分間のインキュベーションの終了時に、300μlのPBS希釈剤をすべての試料に加えた。超常磁化可能ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識抗炭疸菌抗体の量を製造業者の指示に従ってM1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて測定した。
【0158】
表7及び図13に結果を示す。ろ過しなかった試料中のMRマトリックス及びホウ酸緩衝液の存在下で測定したシグナル及びシグナル対バックグラウンド比は、両方とも対照値より低下した。
【0159】
【表7】
【0160】
インキュベーション期間の後の300μl希釈でPBS希釈剤の代わりにホウ酸緩衝液を用いた追加実験を行った。結果(示さず)は、表7及び図13と同様であった。インキュベーション期間の後のホウ酸緩衝液の添加は、ろ過しなかった場合の結果に影響を及ぼさなかった。
【0161】
(実施例6)
ろ過の前に加えたホウ酸緩衝液の影響
ろ過ステップの前の環境マトリックス試料へのホウ酸緩衝液の添加が後に測定されるECLシグナルに影響を及ぼすかどうかを検討するために、以下の実験を実施した。バシラス・グロビギー(Bacillus globigii)(BG)を含む2組の試料、すなわち、ホウ酸緩衝液で1:1に希釈したMRマトリックス中BGの連続希釈物(「試料1」)とMRマトリックス単独中BGの連続希釈物(「試料2」)を調製した。両方の組の試料を上述のように5μm Acrodisc(登録商標)シリンジフィルターを用いてろ過した。
【0162】
25μlの抗BG抗体被覆超常磁性ビーズ懸濁液を各アッセイウエルに加えた。100μlの試料1希釈物を3つのアッセイウエルに加えた。50μlの各試料2希釈物を3つのアッセイウエルに加えた。25μlの[Ru(bpy)3]2+標識抗BG抗体をすべてのアッセイウエルに加えた。アッセイプレートを振とうしながら室温で15分間インキュベートした。次いで、300μlのホウ酸緩衝液を試料1ウエルのそれぞれ、及び6つの試料2ウエルの各組の3つに加えた。300μlのPBS希釈剤を残りの試料2ウエルに加えた。次いで、超常磁性ビーズに結合した[Ru(bpy)3]2+標識抗体結合の量を製造業者の指示に従ってM−Series M1M分析装置(BioVeris Corp.)を用いて測定した。
【0163】
表8及び図14に結果を示す。低分析対象物濃度におけるシグナル及びシグナル対バックグラウンド比がホウ酸希釈を行うことによって改善された。
【0164】
【表8】
【0165】
本明細書は、本明細書で引用した参考文献の教示に照らして最も十分に理解される。本明細書における実施形態は、本発明の実施形態の実例であり、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。当業者は、他の多くの実施例が本発明によって包含されることを容易に認識する。本開示で引用したすべての刊行物及び特許は、それらの全体が参照により組み込まれる。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾又は相反する限り、本明細書はそのような資料に取って代わるものとする。本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の従来技術であることを容認するものではない。
【0166】
特に示さない限り、特許請求の範囲を含む本明細書で用いる成分の量、反応条件等を表すすべての数は、すべての場合に「約」という語により修正されると理解すべきである。したがって、反するものとして特に示さない限り、数値パラメーターは、概数であり、本発明によって得ようとする所望の特性に異なることがあり得る。少なくとも、また請求事項の範囲の同等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効数字の数及び通常の丸め法に照らして解釈すべきである。
【0167】
特に示さない限り、一連の要素の前の「少なくとも」という語は、該一続きのすべての要素に当てはまると理解すべきである。当業者は、わずかな通常の実験を用いて、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態の多くの同等物を認識、又は確認することができるであろう。そのような同等物は、以下の請求事項の範囲によって包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】再使用可能な検出システムのいくつかの例示的な実施形態の概略図である。
【図2】使い捨て式検出システムのいくつかの例示的な実施形態の概略図である。
【図3】aは、検出システムのサンプリング部分のいくつかの例示的な実施形態の概略図である。bは、検出システムのろ過部分のいくつかの例示的な実施形態の概略図である。
【図4】検出システムのサンプリング及びろ過部分のいくつかの例示的な実施形態の概略図である。
【図5】検出システム用の使い捨て式フィルターの例示的な実施形態の概略図である。
【図6】検出システム用の使い捨て式フィルターの例示的な実施形態の概略図である。
【図7】マウスIgG免疫検出アッセイにおける試料のシグナル対バックグラウンド比(S:B)に対する環境マトリックス(MRマトリックス)の抑制効果を示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【図8】本発明によるマウスIgG免疫検出を実施することにより、シグナル対バックグラウンド比(S:B)に対する環境マトリックス(MRマトリックス)の影響が減少することを示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【図9】免疫検出アッセイに使用する前にMRマトリックス及びリシンを含む環境マトリックス試料をろ過することにより、シグナルに対する環境マトリックスの影響が減少することを示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【図10】環境マトリックス(MRマトリックス)試料の顕微鏡写真である。格子線は40μm間隔である。
【図11】環境マトリックス(MRマトリックス)を含む試料について実施した免疫検出アッセイにおける超常磁化可能ビーズの沈着を示す図である。最も内側の円は、これらの画像を得るために除去した光検出器に直接可視である作用電極の一部である。1つ又は複数の垂直のバンドを形成している褐色の小粒は、超常磁化可能ビーズである。(A)は、試料を本発明によるフィルター及び抽出緩衝液で処理した場合のビーズの沈着を示す。(B)は、標準的な従来技術の方法を用いて処理した同じ環境マトリックスを含む試料で開始したビーズの沈着の写真である。
【図12】本発明による環境マトリックス(MRマトリックス)中のリシンの免疫アッセイの検出限界を示す図である。記号は平均測定値を表し、曲線はモデル式
【数1】
[式中、A、B、C、Dは適合パラメーターであり、yはECLシグナル値であり、xはリシンの濃度である]を有する用量反応一部位曲線適合である。
【図13】炭疽菌芽胞の免疫アッセイからのシグナルに対する環境マトリックス(MRマトリックス)の影響を示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【図14】環境マトリックス(MRマトリックス)及びバシラス・グロビギー(Bacillus globigii)を含むろ過済み試料に対するホウ酸抽出緩衝液の影響を示す図である。記号は平均測定値を表し、直線は平均測定値を結んだものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な第1の標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)場合によって、前記分析対象物に対して特異的な第2の結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、又は
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)第1の結合パートナー、分析対象物、及び存在する場合、第2の結合パートナーの間で形成される複合体中の標識された第1の結合パートナーの量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法。
【請求項2】
前記フィルターが約100μm以下でかつ約10μm以上と評価される孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルターが約10μm以下でかつ約1μm以上と評価される孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルターが約1μm以下でかつ約0.1μm以上と評価される孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルターが約0.1μm以下でかつ約0.02μm以上と評価される孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出緩衝液が8以上のpH及び0.8オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出緩衝液が8以上のpH及び1.0オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出緩衝液が界面活性剤を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
結合パートナーが電気化学ルミネセンス(ECL)部分で標識されている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ECL部分がRu又はOsを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ECL部分が[Ru(bpy)3]2+又は[Ru(スルホ−bpy)2bpy]2+を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の標識結合パートナーが抗体を含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の結合パートナーが抗体を含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の結合パートナーがビーズに結合している、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の結合パートナーがビーズに共有結合している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の結合パートナーが結合パートナーの対の相互作用によりビーズに結合している、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
結合パートナーの対がアビジン:ビオチン、ストレプトアビジン:ビオチン及びジゴキシゲニン:アンチジゴキシゲニンから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ビーズが磁化可能である、請求項14から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
複数の分析対象物について試料を分析する方法である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抽出緩衝液を前記試料に加えてその後前記試料をろ過する、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(i)(a)、(b)及び(d)を同時に実施することにより、
(ii)(a)、(b)及び(d)を、(d)、(a)、(b)の順序で実施することにより、或いは
(iii)(a)、(b)及び(d)を、(a)、(d)、(b)の順序で実施することにより実施する、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
(c)を(b)の後に実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(c)を(a)と(b)との間に実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
(c)を(d)と(b)との間に実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記試料をろ過した後に前記抽出緩衝液を前記試料に加える、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)分析対象物の標識類似体を加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)結合パートナーに結合した分析対象物の標識類似体の量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法。
【請求項27】
前記フィルターが約100μm以下でかつ約10μm以上と評価される孔径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記フィルターが約10μm以下でかつ約1μm以上と評価される孔径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記フィルターが約1μm以下でかつ約0.1μm以上と評価される孔径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記フィルターが約0.1μm以下でかつ約0.02μm以上と評価される孔径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記抽出緩衝液が8以上のpH及び0.8オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記抽出緩衝液が8以上のpH及び1.0オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記抽出緩衝液が界面活性剤を含む、請求項26から32までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記結合パートナーが電気化学ルミネセンス(ECL)部分で標識されている、請求項26から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ECL部分がRu又はOsを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ECL部分が[Ru(bpy)3]2+又は[Ru(スルホ−bpy)2bpy]2+を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記結合パートナーが抗体を含む、請求項26から36までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記結合パートナーがビーズに結合している、請求項26から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
第2の結合パートナーが前記ビーズに共有結合している、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記結合パートナーが結合パートナーの対の相互作用により前記ビーズに結合している、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
結合パートナーの対がアビジン:ビオチン、ストレプトアビジン:ビオチン及びジゴキシゲニン:アンチジゴキシゲニンから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ビーズが磁化可能である、請求項38から41までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
複数の分析対象物について試料を分析する方法である、請求項26から42までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記抽出緩衝液を前記試料に加えてその後前記試料をろ過する、請求項26から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
(i)(a)、(b)及び(d)を同時に実施することにより、
(ii)(a)、(b)及び(d)を、(d)、(a)、(b)の順序で実施することにより、或いは
(iii)(a)、(b)及び(d)を、(a)、(d)、(b)の順序で実施することにより実施する、請求項26から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
(c)を(b)の後に実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
(c)を(a)と(b)との間に実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
(c)を(d)と(b)との間に実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記試料をろ過した後に前記抽出緩衝液を前記試料に加える、請求項26から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
フィルター、並びに(a)8以上若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び(b)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液から選択される少なくとも1つの試薬を含む、請求項1に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項51】
前記抽出緩衝液が8を超えるpH及び0.8オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記抽出緩衝液が8を超えるpH及び1.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項50に記載のキット。
【請求項53】
第1の標識結合パートナー及び前記分析対象物に対して特異的な第2の結合パートナーをさらに含む、請求項50から52までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項54】
前記第1及び第2の結合パートナーの少なくとも1つが抗体を含む、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
磁化可能ビーズをさらに含む、請求項50から54までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項56】
取扱説明書をさらに含む、請求項50から55までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項57】
フィルター、並びに(a)8以上若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び(b)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液から選択される少なくとも1つの試薬を含む、請求項26に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項58】
前記抽出緩衝液が8を超えるpH及び0.8オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
前記抽出緩衝液が8を超えるpH及び1.0オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項57に記載のキット。
【請求項60】
分析対象物の標識類似体及び前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーをさらに含む、請求項57から59までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項61】
結合パートナーが抗体を含む、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
磁化可能ビーズをさらに含む、請求項57から61までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項63】
取扱説明書をさらに含む、請求項57から62までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項64】
1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置であって、
(a)サンプリング器具からフィルターに向かって流れるように方向が定められた第1の一方向弁を介してサンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)第1の一方向弁とフィルターとの間の箇所に流体的に接続され、フィルターから廃棄物管路に向かって流れるように方向が定められた第2の一方向弁に流体的に接続されている廃棄物管路、
(c)液体の流れをフィルター中に不可逆的に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(d)前記1つ又は複数の分析対象物のそれぞれに対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(e)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(f)標識結合パートナーを測定する手段
を含む装置。
【請求項65】
1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置であって、
(a)サンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)液体の流れをフィルター中に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(c)前記1つ又は複数の分析対象物のそれぞれに対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(d)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(e)標識結合パートナーを測定する手段
を含み、次の要素、すなわち、(i)装置が少なくとも1つの電極をさらに含むこと、(ii)ポンプが液体を移動させるために毛細管作用のみに依拠しないこと、(iii)ポンプが容積式ポンプであること、(iv)装置が、抽出緩衝液を試料に加えるための手段をさらに含むこと、(v)装置が、試料がフィルターに接触する前に、抽出緩衝液を試料に加える手段をさらに含むこと、(vi)サンプリング器具が空気サンプラーであること、のうちの少なくとも1つが当てはまる装置。
【請求項66】
(a)電気化学ルミネセンスを開始させるための少なくとも1つの作用電極、及び
(b)光検出器
をさらに含む、請求項64又は65に記載の装置。
【請求項67】
前記ポンプが液体を移動させるために毛細管作用にのみ依拠しない、請求項64から66までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項68】
前記試料に抽出緩衝液を加える手段をさらに含む、請求項64から67までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項69】
前記試料が前記フィルターに接触する前に、抽出緩衝液を前記試料に加える手段をさらに含む、請求項64から67までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項70】
前記標識結合パートナーを測定する手段が電気化学ルミネセンスである、請求項64から69までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項71】
前記サンプリング器具が空気サンプラーである、請求項64から70までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項72】
前記サンプリング器具が開放カップ又は貯蔵容器である、請求項64から70までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項73】
前記ポンプが容積式ポンプである、請求項64から72までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項74】
前記結合試薬容器が乾燥試薬を収容している、請求項64から73までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項75】
前記結合試薬容器が、25℃、相対湿度95%で、容器内の乾燥組成物を少なくとも4週間にわたり乾燥した状態に維持するのに十分な水分バリアを含む、請求項74に記載の装置。
【請求項76】
(a)フィルターにより下部容器から流体的に封じられている上部容器、及び
(b)上部容器を経ることなく、下部容器に出入りすることができる開口部
を含む試料ろ過器具。
【請求項77】
前記器具が半径方向対称性を有する、請求項76に記載の試料ろ過器具。
【請求項78】
前記器具の外部が半径方向対称性を有さない、請求項76に記載の試料ろ過器具。
【請求項79】
前記フィルターが約100μm以下でかつ約10μm以上と評価される孔径を有する、請求項64から78までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項80】
前記フィルターが約10μm以下でかつ約1μm以上と評価される孔径を有する、請求項64から78までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項81】
前記フィルターが約1μm以下でかつ約0.1μm以上と評価される孔径を有する、請求項64から78までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項82】
前記フィルターが約0.1μm以下でかつ約0.02μm以上と評価される孔径を有する、請求項64から78までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項1】
分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)前記分析対象物に対して特異的な第1の標識結合パートナーを加えるステップと、
(c)場合によって、前記分析対象物に対して特異的な第2の結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、又は
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)第1の結合パートナー、分析対象物、及び存在する場合、第2の結合パートナーの間で形成される複合体中の標識された第1の結合パートナーの量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法。
【請求項2】
前記フィルターが約100μm以下でかつ約10μm以上と評価される孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルターが約10μm以下でかつ約1μm以上と評価される孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルターが約1μm以下でかつ約0.1μm以上と評価される孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルターが約0.1μm以下でかつ約0.02μm以上と評価される孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出緩衝液が8以上のpH及び0.8オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記抽出緩衝液が8以上のpH及び1.0オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出緩衝液が界面活性剤を含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
結合パートナーが電気化学ルミネセンス(ECL)部分で標識されている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ECL部分がRu又はOsを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ECL部分が[Ru(bpy)3]2+又は[Ru(スルホ−bpy)2bpy]2+を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の標識結合パートナーが抗体を含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の結合パートナーが抗体を含む、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の結合パートナーがビーズに結合している、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の結合パートナーがビーズに共有結合している、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の結合パートナーが結合パートナーの対の相互作用によりビーズに結合している、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
結合パートナーの対がアビジン:ビオチン、ストレプトアビジン:ビオチン及びジゴキシゲニン:アンチジゴキシゲニンから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ビーズが磁化可能である、請求項14から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
複数の分析対象物について試料を分析する方法である、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抽出緩衝液を前記試料に加えてその後前記試料をろ過する、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
(i)(a)、(b)及び(d)を同時に実施することにより、
(ii)(a)、(b)及び(d)を、(d)、(a)、(b)の順序で実施することにより、或いは
(iii)(a)、(b)及び(d)を、(a)、(d)、(b)の順序で実施することにより実施する、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
(c)を(b)の後に実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(c)を(a)と(b)との間に実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
(c)を(d)と(b)との間に実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記試料をろ過した後に前記抽出緩衝液を前記試料に加える、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
分析対象物を含むと推定される試料を分析する方法であって、
(a)試料をフィルターによりろ過するステップと、
(b)分析対象物の標識類似体を加えるステップと、
(c)前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーを加えるステップと、
(d)(i)8以上のpH若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び
(ii)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液
から選択される抽出緩衝液を加えるステップと、
(e)結合パートナーに結合した分析対象物の標識類似体の量を測定するステップと
を含み、ステップ(a)からステップ(d)までをどのような順序で実施してもよく、ステップ(e)は最後に実施する、上記方法。
【請求項27】
前記フィルターが約100μm以下でかつ約10μm以上と評価される孔径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記フィルターが約10μm以下でかつ約1μm以上と評価される孔径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記フィルターが約1μm以下でかつ約0.1μm以上と評価される孔径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記フィルターが約0.1μm以下でかつ約0.02μm以上と評価される孔径を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記抽出緩衝液が8以上のpH及び0.8オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記抽出緩衝液が8以上のpH及び1.0オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記抽出緩衝液が界面活性剤を含む、請求項26から32までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記結合パートナーが電気化学ルミネセンス(ECL)部分で標識されている、請求項26から33までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ECL部分がRu又はOsを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ECL部分が[Ru(bpy)3]2+又は[Ru(スルホ−bpy)2bpy]2+を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記結合パートナーが抗体を含む、請求項26から36までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記結合パートナーがビーズに結合している、請求項26から37までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
第2の結合パートナーが前記ビーズに共有結合している、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記結合パートナーが結合パートナーの対の相互作用により前記ビーズに結合している、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
結合パートナーの対がアビジン:ビオチン、ストレプトアビジン:ビオチン及びジゴキシゲニン:アンチジゴキシゲニンから選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ビーズが磁化可能である、請求項38から41までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
複数の分析対象物について試料を分析する方法である、請求項26から42までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記抽出緩衝液を前記試料に加えてその後前記試料をろ過する、請求項26から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
(i)(a)、(b)及び(d)を同時に実施することにより、
(ii)(a)、(b)及び(d)を、(d)、(a)、(b)の順序で実施することにより、或いは
(iii)(a)、(b)及び(d)を、(a)、(d)、(b)の順序で実施することにより実施する、請求項26から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
(c)を(b)の後に実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
(c)を(a)と(b)との間に実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
(c)を(d)と(b)との間に実施する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記試料をろ過した後に前記抽出緩衝液を前記試料に加える、請求項26から43までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
フィルター、並びに(a)8以上若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び(b)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液から選択される少なくとも1つの試薬を含む、請求項1に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項51】
前記抽出緩衝液が8を超えるpH及び0.8オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記抽出緩衝液が8を超えるpH及び1.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項50に記載のキット。
【請求項53】
第1の標識結合パートナー及び前記分析対象物に対して特異的な第2の結合パートナーをさらに含む、請求項50から52までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項54】
前記第1及び第2の結合パートナーの少なくとも1つが抗体を含む、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
磁化可能ビーズをさらに含む、請求項50から54までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項56】
取扱説明書をさらに含む、請求項50から55までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項57】
フィルター、並びに(a)8以上若しくは6以下のpH及び0.1オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液、及び(b)1.1オスモル/Lを超える容量オスモル濃度を有する抽出緩衝液から選択される少なくとも1つの試薬を含む、請求項26に記載の方法を実施するためのキット。
【請求項58】
前記抽出緩衝液が8を超えるpH及び0.8オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項57に記載のキット。
【請求項59】
前記抽出緩衝液が8を超えるpH及び1.0オスモル/L以上の容量オスモル濃度を有する、請求項57に記載のキット。
【請求項60】
分析対象物の標識類似体及び前記分析対象物に対して特異的な結合パートナーをさらに含む、請求項57から59までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項61】
結合パートナーが抗体を含む、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
磁化可能ビーズをさらに含む、請求項57から61までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項63】
取扱説明書をさらに含む、請求項57から62までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項64】
1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置であって、
(a)サンプリング器具からフィルターに向かって流れるように方向が定められた第1の一方向弁を介してサンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)第1の一方向弁とフィルターとの間の箇所に流体的に接続され、フィルターから廃棄物管路に向かって流れるように方向が定められた第2の一方向弁に流体的に接続されている廃棄物管路、
(c)液体の流れをフィルター中に不可逆的に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(d)前記1つ又は複数の分析対象物のそれぞれに対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(e)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(f)標識結合パートナーを測定する手段
を含む装置。
【請求項65】
1つ又は複数の分析対象物を含むと推定される試料の分析用の装置であって、
(a)サンプリング器具に流体的に接続されているフィルター、
(b)液体の流れをフィルター中に駆動させることができるように配置されているポンプ、
(c)前記1つ又は複数の分析対象物のそれぞれに対して特異的な標識結合パートナーを収容する結合試薬容器、
(d)前記フィルターからのろ液を前記結合試薬容器に導入する手段、及び
(e)標識結合パートナーを測定する手段
を含み、次の要素、すなわち、(i)装置が少なくとも1つの電極をさらに含むこと、(ii)ポンプが液体を移動させるために毛細管作用のみに依拠しないこと、(iii)ポンプが容積式ポンプであること、(iv)装置が、抽出緩衝液を試料に加えるための手段をさらに含むこと、(v)装置が、試料がフィルターに接触する前に、抽出緩衝液を試料に加える手段をさらに含むこと、(vi)サンプリング器具が空気サンプラーであること、のうちの少なくとも1つが当てはまる装置。
【請求項66】
(a)電気化学ルミネセンスを開始させるための少なくとも1つの作用電極、及び
(b)光検出器
をさらに含む、請求項64又は65に記載の装置。
【請求項67】
前記ポンプが液体を移動させるために毛細管作用にのみ依拠しない、請求項64から66までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項68】
前記試料に抽出緩衝液を加える手段をさらに含む、請求項64から67までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項69】
前記試料が前記フィルターに接触する前に、抽出緩衝液を前記試料に加える手段をさらに含む、請求項64から67までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項70】
前記標識結合パートナーを測定する手段が電気化学ルミネセンスである、請求項64から69までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項71】
前記サンプリング器具が空気サンプラーである、請求項64から70までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項72】
前記サンプリング器具が開放カップ又は貯蔵容器である、請求項64から70までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項73】
前記ポンプが容積式ポンプである、請求項64から72までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項74】
前記結合試薬容器が乾燥試薬を収容している、請求項64から73までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項75】
前記結合試薬容器が、25℃、相対湿度95%で、容器内の乾燥組成物を少なくとも4週間にわたり乾燥した状態に維持するのに十分な水分バリアを含む、請求項74に記載の装置。
【請求項76】
(a)フィルターにより下部容器から流体的に封じられている上部容器、及び
(b)上部容器を経ることなく、下部容器に出入りすることができる開口部
を含む試料ろ過器具。
【請求項77】
前記器具が半径方向対称性を有する、請求項76に記載の試料ろ過器具。
【請求項78】
前記器具の外部が半径方向対称性を有さない、請求項76に記載の試料ろ過器具。
【請求項79】
前記フィルターが約100μm以下でかつ約10μm以上と評価される孔径を有する、請求項64から78までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項80】
前記フィルターが約10μm以下でかつ約1μm以上と評価される孔径を有する、請求項64から78までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項81】
前記フィルターが約1μm以下でかつ約0.1μm以上と評価される孔径を有する、請求項64から78までのいずれか一項に記載の装置。
【請求項82】
前記フィルターが約0.1μm以下でかつ約0.02μm以上と評価される孔径を有する、請求項64から78までのいずれか一項に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2008−524604(P2008−524604A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547014(P2007−547014)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046021
【国際公開番号】WO2006/069023
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(505000103)バイオヴェリス コーポレイション (7)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/046021
【国際公開番号】WO2006/069023
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(505000103)バイオヴェリス コーポレイション (7)
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