説明

渡りレール装置

【課題】貨物列車の曲線区間走行に制限を与えることなく連結された複数の貨物車両間を連結された複数の鉄道車両が円滑に移動可能とする。
【解決手段】連結された二つの貨物車両110間に掛け渡され、嵌合構造を有し嵌合部分が摺動することによって伸縮可能な一対のスライド部材21,22を具備し、嵌合した一対のスライド部材21,22の上部が積載レール112と同様に鉄道車両210が走行可能な構造であって、積載レール112の延長線上に配置される一対の渡り部20と、各貨物車両110の端部の双方に設けられ、各渡り板20の一端部と他端部とをそれぞれ支持し、渡り板20を水平に回動可能に支持する台座部40と、を備えることを特徴とする渡りレール装置10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結された複数の鉄道車両を積載して走行する複数の貨物車両の間に設けられる渡りレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、軌間寸法の異なる線路区間(以下「異軌間軌道」という)において列車を連続的に移動させるための技術が種々提案されている。その一つとして、所定軌道を走行する複数の鉄道車両からなる鉄道列車を積載する、当該鉄道列車よりも広い軌間の軌道を走行可能な貨物列車(連結された複数の貨物車両)を使用して、広い軌間の線路区間は鉄道列車を積載した貨物列車で走行し、狭い軌間の線路区間では積載されていた鉄道列車で走行する技術を挙げることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−262914号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の従来技術においては、鉄道列車を貨物列車に積載する場合に、鉄道列車を構成する各鉄道車両を一両ずつ貨物列車に格納する作業を行っていては煩雑に過ぎ、その積載作業には多大な作業負担と時間が必要となってしまうため、より効率的な方法として、連結された複数の貨物車両の一端側から連結された鉄道車両が乗り入れて他端側まで移動することで積載する技術が取り入れられている。
その場合、鉄道列車は各貨物車両の連結部を渡って移動しなければならず、そのための渡り構造が必須となる。
貨物車両内には、鉄道列車が移動するための一対のレールが設けられており、渡り構造としては、一方の貨物車両から他方の貨物車両へ隙間が生じないように一対のレールを延出したものが考えられる。しかしながら、車両間に隙間なくレールを渡すと、貨物列車が曲線の線路区間を走行する際に、曲線における各貨物車両間の内輪側のレール同士が接触するおそれがあるため、貨物列車の走行が直線若しくは緩やかな曲線の線路区間に制限されるという問題があった。
【0004】
本発明は、貨物列車の曲線区間走行に制限を与えることなく連結された複数の貨物車両間を連結された複数の鉄道車両が円滑に移動可能とすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、連結された複数の鉄道車両を積載する連結された複数の貨物車両の相互間を前記各鉄道車両が移動することを可能とする渡りレール装置であって、
前記各貨物車両の鉄道車両積載面上には前記鉄道車両が走行するための一対の積載レールが設けられ、
連結された二つの貨物車両間に掛け渡され、嵌合構造を有し嵌合部分が摺動することによって伸縮可能な一対のスライド部材を具備し、嵌合した前記一対のスライド部材の上部が前記積載レールと同様に前記鉄道車両が走行可能な構造であって、前記積載レールの延長線上に配置される一対の渡り部と、
前記各貨物車両の端部の双方に設けられ、前記各渡り板の一端部と他端部とをそれぞれ支持し、前記渡り板を水平に回動可能に支持する台座部と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の渡りレール装置であって、
前記台座部は、前記渡り板を仰角方向にも回動可能に支持することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか一項に記載の渡りレール装置であって、
前記各渡り部が具備する前記スライド部材の一方のほぼ全長にわたって、積載する前記鉄道車両の車輪のフランジ内側面を当該フランジよりも内側から支えるガイドレールを有することを特徴とする。
なお、ここでいう内側とは一対の渡り部の内側のことであり、一対の渡り部が並んでいる状態で当該渡り部に対して他方の渡り部側を示し、外側とは一対の渡り部が並んでいる状態で当該渡り部に対して他方の渡り部側とは逆側をいう。また、一対のレールに対しても、内側、外側は同様のことを示す。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、貨物車両が複数連結された貨物列車が水平かつ真っ直ぐなレールの軌道上に配置された状態で、貨物列車の一端から鉄道車両が内部に積載される。その際、鉄道車両は連結されたまま貨物列車内を進行する。そして、連結された各貨物車両間を渡りレール装置の渡り部で渡して鉄道車両の移動が行われる。
一方、貨物列車の走行時において、例えば、線路区間に曲がりが生じていた場合、互いに対向する積載レールのなす角度には変化が生じるとともに、各貨物車両間の隙間の距離は曲線の内輪側と外輪側で違いが生じる。しかしながら、角度の変化に対しては台座部が有する水平方向の回転軸に従って回動することによって、隙間の距離の変化に対しては、内輪側では渡り部が収縮し、外輪側では渡り部が伸長することによって対応し、従って、貨物列車は渡りレール装置によって制限を受けることなく曲線区間を円滑に走行することができる。
また、原則的には、貨物列車が直線区間にあるときに鉄道車両の積載が行われると前記したが、貨物列車の線路区間に曲がりが生じていた場合でも渡りレール装置が各貨物車両間を接続し続けるので、鉄道車両が貨物車両内を進行する際にある程度の曲がりがあっても、各貨物車両間を渡らせることが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、線路区間の高低差によっては、互いに対向する積載レールが仰角方向に角度を生じることもあるが、その場合は台座部が有する仰角方向の回転軸に従って回動することによって円滑に走行することができる。
また、原則的には、貨物列車が起伏のない直線区間にあるときに鉄道車両の積載が行われることが望ましいが、貨物列車の線路区間に起伏を生じていたとしても渡りレール装置が各貨物車両間を接続し続けるので、鉄道車両が貨物車両内を進行する際にある程度の起伏があっても、各貨物車両間を渡らせることが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、渡りレール装置がフランジ内側面を当該フランジよりも内側から支えるガイドレールを有することから、積載する鉄道車両の車輪が内側に変位してしまうことを抑止することが可能で、例えば、渡り部が伸長したときに、二つのスライド部材が伸長方向にスライドして、二つのスライド部材双方によって構成される上面の一部の区間に幅が狭くなる部分、つまり実質的にレールとレールの間の幅(軌間)が拡大しているのと同様な部分(例えば図3のS1)を生じるような構造を採っている場合であっても、反対側の渡り部に設けられたガイドレールと反対側の車輪のフランジ内側面とが接触することによって鉄道車両の横方向の変位を防ぐ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(貨物車両及び鉄道車両)
以下、本発明の実施の形態を、図を用いて詳細に説明する。
図1は、発明の実施形態である渡りレール装置10を積載した貨物列車100を示す側面図である。
貨物列車100は、図1に示すように、複数の連結された貨物車両110と、これら貨物車両110に接続されて牽引する機関車(図示略)とから構成されている。かかる貨物列車100は、当該貨物列車100が走行する軌道よりも軌間の狭い軌道を走行する鉄道列車200を積載して運行を行う車両である。積載される鉄道列車200も、複数の連結された鉄道車両210から構成され、各鉄道車両210が動力を持っていない場合には必要に応じて機関車が接続されていてもよい。
【0012】
上記各貨物車両110は、上記鉄道列車200を積載するために、“鉄道車両積載面”としての台枠111の上面に鉄道列車200の軌間幅に合わせた一対の積載レール112が前後方向に沿って設けられている。
そして、鉄道列車200を貨物列車100に積載する際には、連結された貨物車両110の一端部側から鉄道列車200が乗り入れて、貨物車両110の他端部側に移動可能となるように、各貨物車両110の間には、鉄道列車200が渡ることを可能とするための渡りレール装置10が設けられている。
なお、鉄道列車200の積載は、貨物列車100がなるべく直線状の線路区間に停車しているときに行われ、貨物列車100の走行時には鉄道列車200の移動は行われない。
また、貨物車両110の前後長さと鉄道車両210の前後長さとは各連結器間の長さで一致するように設定され、鉄道列車200の積載時には、当該鉄道列車200の各連結器201と貨物列車100の各連結器101とは前後方向について同位置となるように鉄道列車200は停車し保持される。従って、積載時に一両の鉄道車両210が二両の貨物車両110にまたがって積載されることはない。
【0013】
(渡りレール装置の全体構成)
図2は渡りレール装置10の平面図、図3は斜視図、図4は側面図、図5は図2におけるX−X線に沿った断面図である。
渡りレール装置10は、連結された二つの貨物車両110の間に掛け渡されると共に、“スライド部材”としての外側スライド部材21と内側スライド部材22と両者の摺動部分がくさび状に切り欠かれた切欠部21a,22aに嵌合し両者を摺動可能に接続する噛部材23とからなる渡り部20と、各貨物車両110の端部の双方に設けられ、各渡り部20の一端部と他端部とをそれぞれ支持し、仰角回転軸43および水平回転軸44によって二次元の回動を可能とする台座部40,40と、を備えている。
【0014】
(台座部)
台座部40は、土台となる台座台41と、台座台41の下部に設けられた水平回転軸44と、台座台41の上部に設けられた仰角軸受42と、仰角軸受42により支持される仰角回転軸43とを備えた構成となっている。仰角回転軸43は、詳しくは後述する渡り部20を支持している。
貨物車両110の台枠111の前後それぞれの端部には、図4に示すように、他の部位よりも一段低くなっている上面平滑な段部111aがあって、そこに四角い板状の台座台41,41が水平回転軸44,44を介して回動可能に設置されている。水平回転軸44は段部11aに設けられた図示しない軸受部により垂直方向を向いて回転可能に支持されており、台座台41,41の下面側に固定装備されている。つまり各台座台41はこれにより垂直軸回りに回動可能となっている。
各台座台41の上面には一対の仰角軸受42,42が固定立設されており、これらの仰角軸受42,42は仰角回転軸43が挿通される開口部が水平な同一直線状に形成されており、それらの内側に仰角回転軸43を回転可能とする軸受構造が形成されている。つまり、これにより仰角回転軸43は水平軸回りに回転可能となっている。
仰角回転軸43は一対の仰角軸受42,42の間において、外側スライド部材21又は内側スライド部材22の一端部を支持している。
各台座部40は、外側スライド部材21又は内側スライド部材22の端部を、仰角回転軸43と水平回転軸44とにより垂直軸回りと水平軸回りに回動可能に支持することを可能としている。
なお、水平回転軸44が滑らかに回動可能なようにベアリング等を介して段部111aに設置してもよい。
なお、段部111aは、主に、渡り部20の高さを積載レール112の高さに合わせるために設けられているため、より必要な部分にのみ段部を設けてもよいし、台座部40を小型化するなどの方法が可能であれば、必ずしも設けずに台枠111と同じ高さのままでもよい。
【0015】
(渡り部)
渡り部20は、図2から図5に示すように、外側スライド部材21と内側スライド部材22および噛部材23が摺動可能に組み合わされた構造をしており、外側スライド部材21と内側スライド部材22を組み合わせた状態でそれらの面を鉄道車両210が走行することが可能な形状となっている。
【0016】
渡り部20を構成する外側スライド部材21および内側スライド部材22は、互いにその対向面に棒状の噛部材23が嵌合する溝部21a,22aが形成されており、それぞれの溝部21a,22aの断面形状は、いずれも図5に示すような略台形状となっている。そして、溝部21a,22aの溝開口側に比して溝底部側の幅が広くなるように形成されている。
一方、噛部材23は、断面形状が二つの台形の上底同士を接合した略鼓状の棒状体であり、その断面形状の一方の台形部分が外側スライド部材21の溝部21aに嵌合し、その断面形状の他方の台形部分が内側スライド部材22の溝部22aに嵌合している。これにより、外側スライド部材21と内側スライド部材22とが分離しないよう接続し、それぞれが摺動することによって渡り部20の伸縮を可能としている。
また、鉄道車両210の車輪211が当接する渡り部20の上面は、伸長方向に沿った境界線により外側スライド部材21側と内側スライド部材22側とに二分されており、外側スライド部材21側の上面と内側スライド部材22側の上面とは同一高さに形成されている。そして、かかる構造により、渡り部20が伸長した場合、外側スライド部材21側の上面と内側スライド部材22側の上面とは伸長方向にズレを生じるため、図3に示すように、伸長距離に応じて、内側スライド部材22の先端部から外側スライド部材21を支持する台座部40までの間に隙間S1を生じると共に、外側スライド部材21の先端部から内側スライド部材22を支持する台座部40までの間に隙間S2を生じる。
なお、外側スライド部材21と内側スライド部材22の形状は必ずしも図5に示す形状でなくともよく、外側スライド部材21と内側スライド部材22が摺動可能で、渡り部20が伸縮可能であれば、どのような断面形状を有していてもよい。ただし、少なくとも渡り部20の上面の車輪211が走行する面は、渡り部20が伸長した際に拡大する隙間S1等によって車輪211が降下する落差を少なくするために、外側スライド部材21と内側スライド部材22の双方で構成される必要がある。また、外側スライド部材21の上面と内側スライド部材22の上面は必ずしも同一高さに形成されていなくともよく、上面を走行する車輪211の形状に合わせて斜面状にしたり、同じく段差を設けてもよい。
【0017】
また、外側スライド部材21と内側スライド部材22の摺動面は平面ではなく、段差Dが設けられている。これは、強度の問題で噛部材23を中央に配置したい要請と、渡り部20が伸長した際に拡がる隙間S1によって上面を通過する車輪211が受ける影響を最小限に抑えたい要請との折り合いから設けられたものである。渡り部20は、図3に示すように、伸縮するための余裕として隙間S1を有しており、当然ながら伸長した時には隙間S1も拡大する。渡り部20とその上面を通過する車輪211は、図5に示すような位置関係にある。隙間S1が車輪211の通過に即座に重大な影響を及ぼすことはないが、図示のように車輪211は内側(フランジ側)が大径となる様にその踏面が傾斜しているため、車輪211が隙間S1を通過する際には車輪211が多少降下し、衝撃や振動が発生する。これらの衝撃や振動を緩和するために、外側スライド部材21の上面の幅を広くしている。なお、外側スライド部材21の上面の幅を広くすると内側スライド部材22の上面の幅が狭くなるため、隙間S2において鉄道車両210の重量を支えきれなくならないように内側スライド部材22の上面の幅を設定している。
なお、噛部材23の形状は必ずしも図5に示す形状でなくともよく、外側スライド部材21と内側スライド部材22が分離不可能で、渡り部20が伸縮可能であれば、どのような断面形状を有していてもよい。
なお、噛部材23は必ずしも必要ではなく、外側スライド部材21と内側スライド部材22が直接嵌合可能なようにそれぞれの断面形状を設定してもよい。例えば、外側スライド部材21と噛部材23を一体に形成した部材と内側スライド部材22を嵌合させるようにしたり、内側スライド部材22と噛部材23を一体に形成した部材と外側スライド部材21を嵌合させるようにしたり、といった方法も採用可能である。
【0018】
なお、渡り部20の横幅は積載レール112の横幅と必ずしも同一である必要はなく、レール内側の面が揃っていて鉄道車両210の車輪211のフランジの通過を阻害しないよう配置されていればよい。
【0019】
渡り部20は、図2に示すように、貨物車両110の一対である左右の積載レール112,112ごとに個別に設けられている。つまり、一方の貨物車両110の左側のレールと他方の貨物車両110の左側のレールとを接続する渡り部20と、一方の貨物車両110の右側のレールと他方の貨物車両110の右側のレールとを接続する渡り部20とがそれぞれ配備されている。
これら左右の渡り部20,20は全く同一の構造であって、前後方向の向きのみが入れ替わっており、従って、一方の渡り部20においてレールの内側を向いている面は他方の渡り部20においてもレールの内側を向いている。
【0020】
内側スライド部材22にはガイドレール22cも設けられている。
ガイドレール22cは、内側スライド部材22のほぼ全長にわたって形成され、図5の断面形状に示すように、内側スライド部材22上を通過する車輪211のフランジを当該フランジよりも内側から支えるために、フランジが入ることは可能だが外側スライド部材21から車輪211が外れない程度の幅を開けて内側スライド部材22の上面とほぼ同じ高さまで迫り出した形状をしている。
例えば、渡り部20が大きく伸長して上述のように隙間S1が拡大した部分に鉄道車両210の車輪211がさしかかった時に、鉄道車両210に対して当該渡り部20にフランジを押付ける向きに何らかの力が加わると、フランジを支えるべき内側スライド部材22がないため、当該車輪211にはその力に逆らう力が働く要素がないが、かかるガイドレール22cを反対側の渡り部20が有していることで、当該ガイドレール22cに反対側の車輪211のフランジ内側面211aが接触することにより反力が発生し、車輪211が大きく変位することを防ぐことができる。
上述のように、左右の渡り部20,20は全く同一の構造であって、前後方向の向きのみを入れ替えて設けられているため、渡り部20の隙間S1がある位置の反対側の渡り部20の同じ位置には必ずガイドレール22cが存在することとなっている。
【0021】
渡り部20は、その両端に台座部40が備える仰角回転軸43が挿入される軸受け部21b,22bが設けられ、それぞれ台座部40,40に接続されている。
なお、渡り部20と積載レール112の間には極力隙間がない方が鉄道車両210の走行には都合がよいが、渡り部20が台座部40によって動くことができる程度の余裕を持たせるとともに、渡り部20の各端部を面取りして渡り部20が動きやすいようにしてもよい。
なお、軸受け部21b,22bには、挿入される仰角回転軸43が滑らかに回動するようにベアリング等を取付けてもよい。
【0022】
渡り部20の伸縮のストローク長は、貨物列車100が加速・減速をする際等に発生する衝撃や荷重を緩和するために連結器101が有する緩衝ゴムの伸縮について考慮されており、緩衝ゴムの伸縮によって、渡り部20が最短となる長さにまで収縮したり、伸長し過ぎて外側スライド部材21、内側スライド部材22および噛部材23が外れたりすることがないよう設定されている。
また、渡り部20の伸縮のストローク長は、貨物列車100が走行する区間に設定される曲率半径が最小となる曲線における伸縮についても考慮されており、当該曲線区間において、貨物列車100の内輪側の渡り部20は余裕を持って収縮し、外輪側の渡り部20は外側スライド部材21、内側スライド部材22および噛部材23が外れることなく伸長するよう設定されている。
さらに、当該曲線区間における伸縮に加えて、緩衝ゴムによる伸縮が重畳される場合にも、内輪側の渡り部20は余裕を持って収縮し、外輪側の渡り部20は外側スライド部材21、内側スライド部材22および噛部材23が外れることなく伸長するよう設定されている。
【0023】
(渡りレール装置の作用及び効果)
貨物列車100に鉄道列車200を積載する際には、貨物列車100の一端部側から鉄道列車200を乗り入れて、貨物列車100内を鉄道列車200を移動させることにより行われる。そして、当該積載は、原則として、左右の曲がりと起伏のない線路区間に貨物列車100を置いて行われる。
貨物列車100内を鉄道列車200が進行する際には、各貨物車両110間を渡りレール装置10の渡り部20,20が渡して移動を可能とする。
【0024】
また、貨物列車100の走行時において、例えば図6に示すように、線路区間に曲がりが生じていた場合、互いに対向する積載レール112のなす角度θ1には変化が生じるとともに、各貨物車両110間の隙間の距離は曲線の内輪側L1と外輪側L2で違いが生じる。しかしながら、角度θ1の変化に対しては台座部40が有する水平回転軸44に従って回動することによって、隙間の距離L1,L2の変化に対しては、内輪側では渡り部20が収縮し、外輪側では渡り部20が伸長することによって対応し、従って、貨物列車100は渡りレール装置10による制限を受けることなく曲線区間を円滑に走行することができる。
【0025】
さらには、線路区間の高低差によっては、例えば図7に示すように、互いに対向する積載レール112が仰角方向に角度θ2を生じることもあるが、その場合は台座部40が有する仰角回転軸43に従って回動することによって、貨物列車100は渡りレール装置10による制限を受けることなく起伏のある区間を円滑に走行することができる。
【0026】
また、原則的には、貨物列車100が直線区間にあるときに鉄道車両210の積載が行われるが、貨物列車100の線路区間に曲がりや起伏が生じていた場合でも渡りレール装置10が各貨物車両110間を接続し続けるので、鉄道車両210が貨物車両110内を進行する際にある程度の曲がりや起伏があっても、各貨物車両110間を渡らせることが可能となる。
【0027】
また、渡りレール装置10がフランジ内側面211aを当該フランジよりも内側から支えるガイドレール22cを有することから、積載する鉄道車両210の車輪211が内側に変位してしまうことを抑止することが可能で、渡り部20が伸長したときに、外側スライド部材21および内側スライド部材22が伸長方向にスライドして、外側スライド部材21および内側スライド部材22双方によって構成される上面の一部の区間に幅が狭くなる部分、つまり実質的にレールとレールの間の幅(軌間)が拡大しているのと同様な部分を生じても、反対側の渡り部20に設けられたガイドレール22cと反対側の車輪211のフランジ内側面211aとが接触することによって鉄道車両210の横方向の変位を防ぎ、脱輪等も防ぐことができる。
【0028】
また、図5に示すように、渡りレール装置10上を鉄道車両210が通過する際に車輪211が接する渡り部20の上面は外側スライド部材21と内側スライド部材22の双方で構成されることから、渡り部20の伸縮状態に関わらず車輪211は必ず外側スライド部材21と内側スライド部材22の一方または双方の上面と接しながら積載レール112,112間を渡るため、鉄道車両210は滑らかに各貨物車両110間を渡ることができる。
【0029】
また、渡りレール装置10を用いることによって、鉄道列車200を貨物列車100に積載した後でも、貨物車両110,110間の連結部分に関して特別な作業を行うことなくそのまま貨物列車100が走行を開始できるなど、鉄道列車200の異軌間軌道における連続的な移動をより円滑に行うことができる。
【0030】
(その他)
なお、渡りレール装置10を、貨物車両110と貨物車両110との間に設置する代りに、貨物車両110と地上に設けられたレールとの間に設置することにより、鉄道列車200を地上から貨物列車100へと積載する場面でも使用することができる。ただし、この場合は、鉄道列車200の積載を完了した時点で渡り部20を取り外すなどの分離作業が必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】発明の実施形態である渡りレール装置を搭載した貨物列車に鉄道列車を積載した状態を示す側面図である。
【図2】渡りレール装置の平面図である。
【図3】渡りレール装置の斜視図である。
【図4】渡りレール装置の側面図である。
【図5】渡りレール装置の図2におけるX−X線に沿った断面図である。
【図6】貨物列車の線路区間が曲線区間である場合の例を示す説明図である。
【図7】前後の貨物車両に高低差を生じて渡り板が前後方向に対して傾斜を生じた場合の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10 渡りレール装置
20 渡り部
21 外側スライド部材(スライド部材)
22 内側スライド部材(スライド部材)
21a,22a 溝部
21b,22b 軸受け部
22c ガイドレール
23 噛部材
40 台座部
41 台座台
42 仰角軸受
43 仰角回転軸
44 水平回転軸
100 貨物列車
101 連結器
110 貨物車両
111 台枠(鉄道車両積載面)
111a 段部
112 積載レール
200 鉄道列車
201 連結器
210 鉄道車両
211 車輪
211a フランジ内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結された複数の鉄道車両を積載する連結された複数の貨物車両の相互間を前記各鉄道車両が移動することを可能とする渡りレール装置であって、
前記各貨物車両の鉄道車両積載面上には前記鉄道車両が走行するための一対の積載レールが設けられ、
連結された二つの貨物車両間に掛け渡され、嵌合構造を有し嵌合部分が摺動することによって伸縮可能な一対のスライド部材を具備し、嵌合した前記一対のスライド部材の上部が前記積載レールと同様に前記鉄道車両が走行可能な構造であって、前記積載レールの延長線上に配置される一対の渡り部と、
前記各貨物車両の端部の双方に設けられ、前記各渡り板の一端部と他端部とをそれぞれ支持し、前記渡り板を水平に回動可能に支持する台座部と、
を備えることを特徴とする渡りレール装置。
【請求項2】
前記台座部は、前記渡り板を仰角方向にも回動可能に支持することを特徴とする請求項1に記載の渡りレール装置。
【請求項3】
前記各渡り部が具備する前記スライド部材の一方のほぼ全長にわたって、積載する前記鉄道車両の車輪のフランジ内側面を当該フランジよりも内側から支えるガイドレールを有することを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の渡りレール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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