温室の屋根組として用いられる構造体、温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法
揚重作業量及び高所での組立作業量を削減することが可能な構造体を提供する。
本発明の構造体1は、水平に配置される矩形の枠体11と、該枠体11上に鉛直に配置される矩形の主梁12と、該主梁12を支持する合掌材13とを具備して構成され、地上等で組立可能である。従って、この構造体1を、温室の屋根組として用いることにより、温室の屋根組、温室全体の軸組、さらに温室を組み立てる際の揚重作業量及び組立作業量を従来よりも大幅に削減することが可能となる。
本発明の構造体1は、水平に配置される矩形の枠体11と、該枠体11上に鉛直に配置される矩形の主梁12と、該主梁12を支持する合掌材13とを具備して構成され、地上等で組立可能である。従って、この構造体1を、温室の屋根組として用いることにより、温室の屋根組、温室全体の軸組、さらに温室を組み立てる際の揚重作業量及び組立作業量を従来よりも大幅に削減することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室の屋根組として用いられる構造体、該構造体を用いた温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温室の軸組としては、基礎上に立設される柱材と、該柱材の上端に剛接合される合掌材と、該合掌材に支持される棟木と、該棟木と平行に前記合掌材上に固定される母屋材とを具備して構成されるものが知られている。
【0003】
かかる温室の軸組を構成する屋根組は、上記合掌材、棟木及び母屋材により構成されるが、これらの部材は、その1つ1つがクレーン等を用いて基礎上に立設された柱材の上に運ばれた後、組み立てられているのが通常である。
【0004】
従って、これらの部材を高所へ運ぶ揚重作業量が甚大である。また、高所での組み立てとなるため、作業者に高度の技術が要求され、さらに、地上での組み立てと比較して格段に非能率的で危険な作業となるという問題がある。また、合掌材は多数のボルト等を用いて柱材に剛接合されることが必要であるなど、屋根組を構築するにあたって、接合箇所が非常に多く、そのため、多大な時間と手間を要し、組み立てにかかるコストも高く付くという問題もある。
【0005】
また、従来の温室の軸組として、ダッチライト型と称されるものが知られている。かかる温室の軸組は、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁が剛接合され、奥行き方向に平行して存する大梁間に、棟木、母屋材及び垂木からなる屋根組が構築されてなるものである。
【0006】
しかし、かかる温室の軸組では、例えば、強風時に屋根面に働く吸い上げ荷重に対して屋根組の強度が不足し、屋根組が倒壊し易いことが指摘されている。また、かかる温室の軸組も、屋根組を構成する部材の1つ1つをクレーン等を用いて基礎上に立設された柱材の上に運び、その後、組み立てられるため、揚重作業量が甚大であり、また、組み立てに熟練の作業者を要し、かつ熟練の作業者であっても、高所での組立作業となるため、非能率的で危険を伴うという問題がある。また、屋根組を構築するにあたって、接合箇所が非常に多く、そのため、多大な時間と手間を要し、組み立てにかかるコストも高く付くという問題もある。さらに、かかる温室の軸組では、屋根に働く鉛直荷重が大梁間に掛け渡される母屋材に集中するため、奥行き方向の柱材同士の間隔が小さく制限されるという問題もある。
【0007】
他方、多種類の部材を建築現場へ搬送した上で、多数の部材を組立加工しなければならないという温室建築の問題点に鑑み、柱、梁、棟木、垂木等の温室建築に必要な部材を長さ及び形状についてモジュール化することが提案されている(例えば、特開2002−291348号公報参照)。
【0008】
しかし、温室の軸組構造自体が従来通りでは、柱や梁等の長さ及び形状をモジュール化しても、屋根組を構築する場合には、これら1つ1つの部材を高所へ揚重し、高所で組み立てなければならないことに変わりはなく、また、組み立てに熟練の作業者を要し、かつ熟練の作業者であっても、高所での組立作業となるため、非能率的で危険を伴うという問題や、屋根組を構築するにあたって、接合箇所が非常に多く、そのため、多大な作業時間を要し、組立作業にかかるコストも高く付くという問題も依然として存在する。
【0009】
【特許文献1】特開2002−291348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能な構造体、該構造体を用いた温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法を提供することを課題とするものである。
また、本発明は、温室の軸組を構築するにあたって、剛接合を必要としないで所定の強度を保持し得る構造体、該構造体を用いた温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するため、以下の構造体、温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法を提供する。
(1)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成され、温室の屋根組として用いられることを特徴とする構造体。
(2)前記枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(1)に記載の構造体。
(3)温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の構造体。
(4)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されることを特徴とする温室の屋根組。
(5)前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(4)に記載の温室の屋根組。
(6)前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(5)に記載の温室の屋根組。
(7)温室の支承部を構成する柱材上に、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されることを特徴とする温室の軸組。
(8)前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(7)に記載の温室の軸組。
(9)前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(8)に記載の温室の軸組。
(10)支承部により支えられる屋根が、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成される屋根組を有して構成されることを特徴とする温室。
(11)前記屋根組を構成する各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記支承部を構成する柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(10)に記載の温室。
(12)前記屋根組を構成する各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(11)に記載の温室。
(13)a)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を組み立てる工程と、b)前記a)工程により組み立てられた構造体を、温室の支承部を構成する柱材上に、複数隣接させて設置する工程とを含むことを特徴とする温室の軸組工法。
(14)前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体を構成する枠体の四隅を、それぞれ柱材にピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けることを特徴とする前記(13)に記載の温室の軸組工法。
(15)前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部を、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集めてピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けることを特徴とする前記(14)に記載の温室の軸組工法。
(16)前記a)工程により組み立てられる構造体は、温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されることを特徴とする前記(13)〜(15)のいずれか1に記載の温室の軸組工法。
【発明の効果】
【0012】
前記(1)に記載の本発明によれば、構造体は、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成されるため、温室の支承部とは別個独立した単一の構造物として構築することができる。従って、この構造体を温室の屋根組として用いることにより、揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、前記主梁を有するため、従来の軸組のように、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁を設ける必要がないという利点もある。
前記(2)に記載の本発明によれば、前記枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、前記主梁により、鉛直荷重に対する強度を増大させることができ、さらに前記枠体が、その四隅に接合された各柱材に、鉛直荷重及び水平荷重を分散させて伝達することができるため、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持し得る温室の軸組を構築することが可能となる。また、前記主梁を有するため、奥行き方向に立設される柱材同士の間隔を従来よりも大きくすることが可能となる。
前記(3)に記載の本発明によれば、温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されるため、揚重作業量及び高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。
前記(4)に記載の本発明によれば、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されるため、屋根組を構築する際の揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、この屋根組によれば、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁を設ける必要がないという利点もある。
前記(5)に記載の本発明によれば、前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、この屋根組によれば、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持し得る温室の軸組を構築することができ、また、奥行き方向に立設される柱材同士の間隔を従来よりも大きくすることが可能となる。
前記(6)に記載の本発明によれば、前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、屋根組を構築するにあたって、高度な技術が不要となり、熟練の作業者でなくても容易に屋根組を構築することが可能となる。また、プレートを介して各構造体が一体化されるため、柱材上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材同士の間にブレース(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎に伝達する鉛直ブレースを備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。また、柱材同士が、各構造体の枠体により結合されるため、鉛直ブレース及び柱材同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を用いて支承部の歪みを修正する建入れ調整作業を不要とすることが可能となる。
前記(7)に記載の本発明によれば、温室の支承部を構成する柱材上に、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されるため、温室の軸組を構築する際の揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、この軸組によれば、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁を設ける必要がないという利点もある。
前記(8)に記載の本発明によれば、前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、この軸組によれば、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持することができ、また、奥行き方向に立設される柱材同士の間隔を従来よりも大きくすることが可能となる。
前記(9)に記載の本発明によれば、前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、軸組を構築するにあたって、高度な技術が不要となり、熟練の作業者でなくても容易に軸組を構築することが可能となる。また、プレートを介して各構造体が一体化されるため、柱材上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材同士の間にブレース(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎に伝達する鉛直ブレースを備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。また、柱材同士が、各構造体の枠体により結合されるため、鉛直ブレース及び柱材同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を用いて支承部の歪みを修正する建入れ調整作業を不要とすることが可能となる。
前記(10)に記載の本発明によれば、支承部により支えられる屋根が、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成される屋根組を有して構成されるため、温室の軸組を構築する際の揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、この温室によれば、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁を設ける必要がないという利点もある。
前記(11)に記載の本発明によれば、前記屋根組を構成する各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記支承部を構成する柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、この温室によれば、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持することができ、また、奥行き方向に立設される柱材同士の間隔を従来よりも大きくすることが可能となる。
前記(12)に記載の本発明によれば、前記屋根組を構成する各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、温室の軸組を構築するにあたって、高度な技術が不要となり、熟練の作業者でなくても容易に軸組を構築することが可能となる。また、プレートを介して各構造体が一体化されるため、柱材上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材同士の間にブレース(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎に伝達する鉛直ブレースを備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。また、柱材同士が、各構造体の枠体により結合されるため、鉛直ブレース及び柱材同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を用いて支承部の歪みを修正する建入れ調整作業を不要とすることが可能となる。
前記(13)に記載の本発明によれば、a)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を組み立てる工程と、b)前記a)工程により組み立てられた構造体を、温室の支承部を構成する柱材上に、複数隣接させて設置する工程とを含むため、温室の軸組を構築する際の揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、構造体を組み立てた後、該構造体を支承部上に設置する方法を採用したことにより、構造体自体は、高所で組み立てる必要がなく、従って、地上等において極めて効率良く短時間で手間をかけずに組み立てることが可能であり、その結果、非常に短時間で温室の軸組全体を構築することが可能となる。
前記(14)に記載の本発明によれば、前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体を構成する枠体の四隅を、それぞれ柱材にピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、この方法によれば、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持し得る温室の軸組を構築することが可能となる。
前記(15)に記載の本発明によれば、前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部を、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集めてピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けるため、温室の軸組を構築するにあたって、高度な技術が不要となり、熟練の作業者でなくても容易に軸組を構築することが可能となる。また、プレートを介して各構造体が一体化されるため、柱材上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材同士の間にブレース(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎に伝達する鉛直ブレースを備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。また、柱材同士が、各構造体の枠体により結合されるため、鉛直ブレース及び柱材同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を用いて支承部の歪みを修正する建入れ調整作業を不要とすることが可能となる。
前記(16)に記載の本発明によれば、前記a)工程により組み立てられる構造体は、温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されるため、二次部材を高所で組み付ける必要がなく、従って、地上等において二次部材を組み付けることが可能であり、その結果、非常に短時間で温室全体を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の一の実施例に係る構造体を示す斜視図である。
【図2】図2は枠体を示す斜視図である。
【図3】図3は主梁を示す斜視図である。
【図4】図4は構造体の構成を示す図である。
【図5】図5は構造体を用いた温室の軸組工法を説明するための図である。
【図6】図6は支承部に対する構造体の設置方法を示した図である。
【図7】図7は支承部上に構造体が設置された状態を示す図である。
【図8】図8は温室内に立設される柱材に構造体が設置された状態を示す図である。
【図9】図9は柱材に対する構造体の接合方法を示す図である。
【図10】図10は柱材に対する構造体の接合方法を示す平面図である。
【図11】図11は柱材に対する繋ぎ材の接合方法を示す平面図である。
【図12】図12は本発明の他の実施例に係る構造体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0014】
1 構造体
11 枠体
11a,11b 端梁
11c,11d 側桁梁
11e,11f 中間梁
11g ブレース
12 主梁
12a,12b 弦材
12c,12d 端束材
12e 束材
12f 斜材
13 合掌材
14 支持材
2 支承部
21 柱材
22 ブレース
23 間柱
24 プレート
25 繋ぎ材
3 基礎
4 クレーン
5 ボルト
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一の実施例に係る構造体を示す斜視図である。この図に示したように、本実施例に係る構造体1は、枠体11、主梁12及び合掌材13を有して構成される。
【0017】
枠体11は、図2に示したように、互いに平行に配置される一対の端梁11a,11bと、各端梁11a,11bに対して直交するように配置される一対の側桁梁11c,11dとにより矩形に形成される。枠体11は、また、その内側に、側桁梁11c,11d間に掛け渡される中間梁11e,11fと、該中間梁11e,11f、端梁11a,11b及び側桁梁11c,11dによって囲まれた空間に配設されるブレース11gとを有して構成される。中間梁11e,11f及びブレース11gの配置は、種々の形態を想定することができ、強度保持の観点から適宜設定し得る。
【0018】
主梁12は、図3に示したように、上下に平行に配置される弦材12a,12bと、各弦材12a,12bの両端部間に設けられる端束材12c,12dとにより矩形に形成される。主梁12は、また、各弦材12a,12b間に掛け渡される束材12eと、該束材12e、弦材12a,12b及び端束材12c,12dによって囲まれた空間に配設される斜材12fとを有して構成される。
【0019】
図1及び図4に示したように、主梁12は、水平に配置される枠体11上に鉛直に配置され、枠体11と共に逆T字状に立体化される。合掌材13は、主梁12の両側において、一端が主梁12に、他端が枠体11にそれぞれ連結され、主梁12を支持する。
【0020】
上記のように構成される構造体1は、温室の支承部とは別個独立した単一の構造物として構築することができる。つまり、構造体1は、枠体11、主梁12及び合掌材13又はこれらを構成する部材を、それぞれ基礎上に立設された柱材の上に運んだ後、組み立てなければ構築できないというものではなく、地上において、或いは工場等のように建築現場でない場所で構築することができる。
【0021】
また、枠体11を構成する端梁11a,11b、側桁梁11c,11d、中間梁11e,11f、主梁12を構成する弦材12a,12b、端束材12c,12d、束材12e、斜材12f及び合掌材13は、断面において同一形状、かつ同一寸法の鋼材(例えば、リップ付溝形鋼)から構成することが可能であり、これらの部材のモジュール化を容易に実現することができる。
【0022】
また、枠体11、主梁12及び合掌材13を構成する鋼材は、すべてビス止めにより連結することができ、従って、構造体1を組み立てる際に、鋼材同士を溶接しなくても良いという利点がある。さらに、最大の利点は、溶接歪みによる組立精度の低下がないため、構造体1、該構造体1を用いた温室の屋根組及び温室の軸組の良好な精度を実現することが可能となる。
【0023】
次に、本実施例に係る構造体1を用いた温室の軸組工法について説明する。
【0024】
まず、構造体1は、以下のように組み立てられる。すなわち、枠体11、主梁12及び合掌材13を構成する部材(鋼材)が、工場等において、予め所定の長さに切断されると共に、各鋼材の連結部にビス止めに用いられる孔部が加工された後、建築現場へ搬送される。建築現場では、これらの鋼材を用いて、まず、枠体11及び主梁12をビス止めにより組み立てる。次に、枠体11上に主梁12を配置すると共に、主梁12の両側に合掌材13を配置して、これらをビス止めにより連結して構造体1を組み立てる。従って、建築現場において、鋼材同士を溶接したり、鋼材の長さを調整する等の作業が不要で、ボルト等を用いて各鋼材同士を連結するだけで構造体1を組み立てることができる。なお、搬送条件が整えば、枠体11及び主梁12を予め工場等で組み立てた後、建築現場へ搬送することも可能である。
【0025】
また、構造体1の組立作業は、図5に示したように、地上において行うことができる。すなわち、構造体1は、上記したように、温室の支承部2を構成する柱材21を必要としないで、単独で構築し得る構造を有しているため、高所で組み立てる必要がなく、地上において組み立てることができる。従って、高所での組み立てと比較して、格段に効率的に組み立てることができる。
【0026】
組み立てられた構造体1は、クレーン4等を用いて基礎3上に立設された柱材21の上に運ばれ、図6に示したように、枠体11の四隅が、柱材21に対して、ボルト5等を用いてピン接合されることにより、支承部2上に設置される(図7及び図9参照)。このように、構造体1を構成する各部材を揚重するのではなく、地上において組み立てられた構造体1を揚重するため、揚重の回数は1回で足り、複数の構造体1を揚重する場合でも、各部材を揚重するのと比較して揚重の回数を非常に少なくすることができる。
【0027】
ここで、構造体1は、主梁12の頂部に存する弦材12aが、温室の間口方向に対して平行に配置されるように設置される(図5参照)。従って、かかる構造体1を用いた温室においては、棟が温室の奥行き方向に対して直交することとなる。
【0028】
また、支承部2とは、温室の屋根を支える部分を指し、柱材21や柱材21同士の間に設けられるブレース22等から構成される。図7に示した支承部2の構造は、構造体1が最初に設置される支承部2の構造の一例を示すものであり、構造体1を構成する枠体11の四隅に対応する位置に立設された柱材21同士の間に間柱23が配設されている。この間柱23は、構造体1を直接支持するものではなく、柱材21同士の間にブレース22を配設するために設けられたものである。また、支承部2に設けられる間柱23及びブレース22は、温室の外周部(妻面及び側面)に存する柱材21同士の間のみに配設すればよく、図8に示したように、温室の内部に存する柱材21同士の間には配設しなくてもよい。温室内部に立設される柱材21同士は、後述のように、構造体1により結合されるため、ブレース22を配設する必要がないからである。
【0029】
なお、支承部2を構成する柱材21、間柱23及び後述の繋ぎ材25も、断面において同一形状、かつ同一寸法の鋼材(例えば、リップ付溝形鋼)から構成することが可能であり、さらに、柱材21等は、上記した構造体1の枠体11、主梁12及び合掌材13と共通の鋼材を用いることも可能であり、従って、温室の軸組を構成する部材のモジュール化を容易に実現することが可能である。
【0030】
構造体1は、複数用意され、これらは、基礎3上に立設される柱材21上に、相互に隣接して据え付けられる。これにより、支承部2上に屋根組が構築される。
【0031】
ここで、各構造体1は、図9及び図10に示したように、互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体11の角部が、各柱材21の頂部に設けられるプレート24上に集められてピン接合されることにより、支承部2上に据え付けられることが好ましい。これにより、プレート24を介して各構造体1が一体化されるため、柱材21上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材21は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材21同士の間にブレース22(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎3に伝達する鉛直ブレース22を備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。
【0032】
また、柱材21同士が、各構造体1の枠体11により結合されるため、かかる柱材21同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を改めて設ける必要がなく、また、従来のように、鉛直ブレース及び水平ブレースを用いた建入れ調整作業も不要とすることが可能となる。
【0033】
すなわち、従来は、支承部上に屋根組を構築した際に生じる歪みを、鉛直ブレース及び水平ブレースを用いて修正していたが、水平ブレースの調整を行うと、鉛直ブレースの調整も必要となり、この建入れ調整作業には、多大な労力と、高度の技術が必要であった。しかし、この軸組工法によれば、柱材21の頂部がプレート24を介して一体化される各構造体1の枠体11に接合されるため、歪みを発生させることなく、支承部2上に屋根組を構築することができ、従って、水平ブレースを改めて設ける必要もないし、建入れ作業も不要となる。
【0034】
また、プレート24を介して1本の柱材21に複数の枠体11の角部を集めてピン接合する構成を採用することにより、柱材21の本数を最小限に抑えることが可能となる。また、温室内部に立設される柱材21同士が構造体1により結合されることとなるため、柱材21同士の間にブレース22を設けなくても強度を保持することが可能となり、その結果、支承部2における部材(柱材21やブレース22等)の数を減少させることも可能となる。
【0035】
また、各構造体1を支承部2上に据え付ける作業は、高所での作業となるが、枠体11の角部とプレート24は、1のボルト等で固定すれば良いため、屋根組と支承部2との接合箇所は、非常に少ない数で済む。従って、高所での据え付け作業でも、簡易迅速に行うことが可能となる。また、支承部2上に屋根組を構築するにあたって、この工法によれば、構造体1を構成する枠体11に形成される孔部と、柱材21の頂部に設けられるプレート24に形成される孔部とを連通させるように合わせ、両孔部にボルト5を挿通させ、固定するだけで、支承部2上に屋根組を構築することができるため、作業者に高度な技術は要求されず、また、高所作業であっても危険を少なくすることができる。
【0036】
なお、図7において、符号25は繋ぎ材であり、これは、支承部2を構築する際に、柱材21同士の間に掛け渡され、柱材21が倒れないように支える働きをするものである。この繋ぎ材25も、図11に示したように、柱材21の頂部に設けられるプレート24に端部が固定される。
【0037】
また、構造体1としては、温室の被覆材(例えば、プラスチックフィルムや硝子又は樹脂からなる板材等)や、該被覆材を支持する支持材(例えば、アーチパイプやフレーム材等)などの二次部材を具備して構成されるものであってもよい。かかる二次部材としては、被覆材、該被覆材の支持材、天窓、樋などが典型例として挙げられる。そして、かかる二次部材も、地上において組み立てることができるため、高所で組み立てる場合と比較して、非常に効率が良く、作業自体も容易なものとなる。また、二次部材を具備する構造体1を地上で組み立てた後、柱材21の上に運ぶようにすることで、揚重作業量を非常に少なくすることが可能となる。図12は、二次部材としての支持材14(被覆材として利用されるプラスチックフィルムを支持するアーチパイプ)を備えた構造体1の例を示す。
【0038】
上記のように構築される温室の軸組によれば、上記したように、揚重作業量及び高所での組立作業量を、従来の温室の軸組と比較して、大幅に削減することが可能となる。
【0039】
また、かかる温室の軸組によれば、温室の屋根に働く鉛直荷重は、屋根の被覆材から該被覆材の支持材を介して該支持材を支持する枠体11及び主梁12に伝達される。枠体11に働く鉛直荷重は、合掌材13を介して主梁12に伝達され、結果的に主梁12の両端に存する合掌材13に集められ、枠体11の端梁11a,11bを介して柱材12に伝達され、基礎3に伝わる。また、風、地震等による屋根面に働く水平力は、主梁12から枠体11、若しくは直接枠体11に伝達され、一方、壁面に働く水平力は、温室外周部では枠体11に伝達され、複数隣接する枠体11に伝達経由して、温室外周部若しくは奥行き方向の柱材21間に設けられたブレース22を介して基礎3に伝達される。従って、この温室の軸組によれば、剛接合しなくても、地震力、風圧力等の外力に対して十分な強度が得られる。
【0040】
また、かかる温室の軸組によれば、構造体1を構成する主梁12が、従来温室の軸組として間口方向の柱材同士の間に設けられた大梁と、温室に働く外力に対して同様の強度を保持し得るため、支承部2に大梁を設ける必要がなく、大梁の設置にかかる時間や手間を無くすことができ、コストも削減することができる。
【0041】
また、枠体11上に鉛直に配置される矩形の主梁12により、梁せいを大きくすることが可能であり、鉛直荷重に対する負担能力を増大させることができる。
【0042】
また、かかる温室の軸組によれば、温室の奥行き方向に対して直交して配設される主梁12が、四隅を柱材21により支持された枠体11上に鉛直に配置されるため、奥行き方向に立設される柱材21同士の間隔を従来の温室の軸組よりも大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の構造体1は、地上等で組み立て可能で、また支承部2に対してピン接合可能である。従って、この構造体を用いて温室の屋根組、温室全体の軸組、さらに温室を組み立てることで、温室に働く外力に対して十分な強度を保持し得ると共に、揚重作業量及び組立作業量を従来よりも大幅に削減することが可能であり、大規模栽培面積を有する大型温室に好適である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室の屋根組として用いられる構造体、該構造体を用いた温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温室の軸組としては、基礎上に立設される柱材と、該柱材の上端に剛接合される合掌材と、該合掌材に支持される棟木と、該棟木と平行に前記合掌材上に固定される母屋材とを具備して構成されるものが知られている。
【0003】
かかる温室の軸組を構成する屋根組は、上記合掌材、棟木及び母屋材により構成されるが、これらの部材は、その1つ1つがクレーン等を用いて基礎上に立設された柱材の上に運ばれた後、組み立てられているのが通常である。
【0004】
従って、これらの部材を高所へ運ぶ揚重作業量が甚大である。また、高所での組み立てとなるため、作業者に高度の技術が要求され、さらに、地上での組み立てと比較して格段に非能率的で危険な作業となるという問題がある。また、合掌材は多数のボルト等を用いて柱材に剛接合されることが必要であるなど、屋根組を構築するにあたって、接合箇所が非常に多く、そのため、多大な時間と手間を要し、組み立てにかかるコストも高く付くという問題もある。
【0005】
また、従来の温室の軸組として、ダッチライト型と称されるものが知られている。かかる温室の軸組は、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁が剛接合され、奥行き方向に平行して存する大梁間に、棟木、母屋材及び垂木からなる屋根組が構築されてなるものである。
【0006】
しかし、かかる温室の軸組では、例えば、強風時に屋根面に働く吸い上げ荷重に対して屋根組の強度が不足し、屋根組が倒壊し易いことが指摘されている。また、かかる温室の軸組も、屋根組を構成する部材の1つ1つをクレーン等を用いて基礎上に立設された柱材の上に運び、その後、組み立てられるため、揚重作業量が甚大であり、また、組み立てに熟練の作業者を要し、かつ熟練の作業者であっても、高所での組立作業となるため、非能率的で危険を伴うという問題がある。また、屋根組を構築するにあたって、接合箇所が非常に多く、そのため、多大な時間と手間を要し、組み立てにかかるコストも高く付くという問題もある。さらに、かかる温室の軸組では、屋根に働く鉛直荷重が大梁間に掛け渡される母屋材に集中するため、奥行き方向の柱材同士の間隔が小さく制限されるという問題もある。
【0007】
他方、多種類の部材を建築現場へ搬送した上で、多数の部材を組立加工しなければならないという温室建築の問題点に鑑み、柱、梁、棟木、垂木等の温室建築に必要な部材を長さ及び形状についてモジュール化することが提案されている(例えば、特開2002−291348号公報参照)。
【0008】
しかし、温室の軸組構造自体が従来通りでは、柱や梁等の長さ及び形状をモジュール化しても、屋根組を構築する場合には、これら1つ1つの部材を高所へ揚重し、高所で組み立てなければならないことに変わりはなく、また、組み立てに熟練の作業者を要し、かつ熟練の作業者であっても、高所での組立作業となるため、非能率的で危険を伴うという問題や、屋根組を構築するにあたって、接合箇所が非常に多く、そのため、多大な作業時間を要し、組立作業にかかるコストも高く付くという問題も依然として存在する。
【0009】
【特許文献1】特開2002−291348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能な構造体、該構造体を用いた温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法を提供することを課題とするものである。
また、本発明は、温室の軸組を構築するにあたって、剛接合を必要としないで所定の強度を保持し得る構造体、該構造体を用いた温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するため、以下の構造体、温室の屋根組、温室の軸組、温室及び温室の軸組工法を提供する。
(1)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成され、温室の屋根組として用いられることを特徴とする構造体。
(2)前記枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(1)に記載の構造体。
(3)温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の構造体。
(4)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されることを特徴とする温室の屋根組。
(5)前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(4)に記載の温室の屋根組。
(6)前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(5)に記載の温室の屋根組。
(7)温室の支承部を構成する柱材上に、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されることを特徴とする温室の軸組。
(8)前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(7)に記載の温室の軸組。
(9)前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(8)に記載の温室の軸組。
(10)支承部により支えられる屋根が、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成される屋根組を有して構成されることを特徴とする温室。
(11)前記屋根組を構成する各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記支承部を構成する柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(10)に記載の温室。
(12)前記屋根組を構成する各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする前記(11)に記載の温室。
(13)a)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を組み立てる工程と、b)前記a)工程により組み立てられた構造体を、温室の支承部を構成する柱材上に、複数隣接させて設置する工程とを含むことを特徴とする温室の軸組工法。
(14)前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体を構成する枠体の四隅を、それぞれ柱材にピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けることを特徴とする前記(13)に記載の温室の軸組工法。
(15)前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部を、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集めてピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けることを特徴とする前記(14)に記載の温室の軸組工法。
(16)前記a)工程により組み立てられる構造体は、温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されることを特徴とする前記(13)〜(15)のいずれか1に記載の温室の軸組工法。
【発明の効果】
【0012】
前記(1)に記載の本発明によれば、構造体は、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成されるため、温室の支承部とは別個独立した単一の構造物として構築することができる。従って、この構造体を温室の屋根組として用いることにより、揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、前記主梁を有するため、従来の軸組のように、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁を設ける必要がないという利点もある。
前記(2)に記載の本発明によれば、前記枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、前記主梁により、鉛直荷重に対する強度を増大させることができ、さらに前記枠体が、その四隅に接合された各柱材に、鉛直荷重及び水平荷重を分散させて伝達することができるため、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持し得る温室の軸組を構築することが可能となる。また、前記主梁を有するため、奥行き方向に立設される柱材同士の間隔を従来よりも大きくすることが可能となる。
前記(3)に記載の本発明によれば、温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されるため、揚重作業量及び高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。
前記(4)に記載の本発明によれば、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されるため、屋根組を構築する際の揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、この屋根組によれば、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁を設ける必要がないという利点もある。
前記(5)に記載の本発明によれば、前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、この屋根組によれば、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持し得る温室の軸組を構築することができ、また、奥行き方向に立設される柱材同士の間隔を従来よりも大きくすることが可能となる。
前記(6)に記載の本発明によれば、前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、屋根組を構築するにあたって、高度な技術が不要となり、熟練の作業者でなくても容易に屋根組を構築することが可能となる。また、プレートを介して各構造体が一体化されるため、柱材上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材同士の間にブレース(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎に伝達する鉛直ブレースを備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。また、柱材同士が、各構造体の枠体により結合されるため、鉛直ブレース及び柱材同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を用いて支承部の歪みを修正する建入れ調整作業を不要とすることが可能となる。
前記(7)に記載の本発明によれば、温室の支承部を構成する柱材上に、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されるため、温室の軸組を構築する際の揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、この軸組によれば、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁を設ける必要がないという利点もある。
前記(8)に記載の本発明によれば、前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、この軸組によれば、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持することができ、また、奥行き方向に立設される柱材同士の間隔を従来よりも大きくすることが可能となる。
前記(9)に記載の本発明によれば、前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、軸組を構築するにあたって、高度な技術が不要となり、熟練の作業者でなくても容易に軸組を構築することが可能となる。また、プレートを介して各構造体が一体化されるため、柱材上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材同士の間にブレース(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎に伝達する鉛直ブレースを備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。また、柱材同士が、各構造体の枠体により結合されるため、鉛直ブレース及び柱材同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を用いて支承部の歪みを修正する建入れ調整作業を不要とすることが可能となる。
前記(10)に記載の本発明によれば、支承部により支えられる屋根が、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成される屋根組を有して構成されるため、温室の軸組を構築する際の揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、この温室によれば、間口方向に立設された柱材同士の間に大梁を設ける必要がないという利点もある。
前記(11)に記載の本発明によれば、前記屋根組を構成する各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記支承部を構成する柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、この温室によれば、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持することができ、また、奥行き方向に立設される柱材同士の間隔を従来よりも大きくすることが可能となる。
前記(12)に記載の本発明によれば、前記屋根組を構成する各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられるため、温室の軸組を構築するにあたって、高度な技術が不要となり、熟練の作業者でなくても容易に軸組を構築することが可能となる。また、プレートを介して各構造体が一体化されるため、柱材上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材同士の間にブレース(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎に伝達する鉛直ブレースを備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。また、柱材同士が、各構造体の枠体により結合されるため、鉛直ブレース及び柱材同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を用いて支承部の歪みを修正する建入れ調整作業を不要とすることが可能となる。
前記(13)に記載の本発明によれば、a)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を組み立てる工程と、b)前記a)工程により組み立てられた構造体を、温室の支承部を構成する柱材上に、複数隣接させて設置する工程とを含むため、温室の軸組を構築する際の揚重作業量及び高所での組立作業量を大幅に削減することが可能となる。また、構造体を組み立てた後、該構造体を支承部上に設置する方法を採用したことにより、構造体自体は、高所で組み立てる必要がなく、従って、地上等において極めて効率良く短時間で手間をかけずに組み立てることが可能であり、その結果、非常に短時間で温室の軸組全体を構築することが可能となる。
前記(14)に記載の本発明によれば、前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体を構成する枠体の四隅を、それぞれ柱材にピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けるため、高所での組立作業量をさらに大幅に削減することが可能となる。また、この方法によれば、従来のように、剛接合しなくても、所定の強度を保持し得る温室の軸組を構築することが可能となる。
前記(15)に記載の本発明によれば、前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部を、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集めてピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けるため、温室の軸組を構築するにあたって、高度な技術が不要となり、熟練の作業者でなくても容易に軸組を構築することが可能となる。また、プレートを介して各構造体が一体化されるため、柱材上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材同士の間にブレース(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎に伝達する鉛直ブレースを備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。また、柱材同士が、各構造体の枠体により結合されるため、鉛直ブレース及び柱材同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を用いて支承部の歪みを修正する建入れ調整作業を不要とすることが可能となる。
前記(16)に記載の本発明によれば、前記a)工程により組み立てられる構造体は、温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されるため、二次部材を高所で組み付ける必要がなく、従って、地上等において二次部材を組み付けることが可能であり、その結果、非常に短時間で温室全体を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の一の実施例に係る構造体を示す斜視図である。
【図2】図2は枠体を示す斜視図である。
【図3】図3は主梁を示す斜視図である。
【図4】図4は構造体の構成を示す図である。
【図5】図5は構造体を用いた温室の軸組工法を説明するための図である。
【図6】図6は支承部に対する構造体の設置方法を示した図である。
【図7】図7は支承部上に構造体が設置された状態を示す図である。
【図8】図8は温室内に立設される柱材に構造体が設置された状態を示す図である。
【図9】図9は柱材に対する構造体の接合方法を示す図である。
【図10】図10は柱材に対する構造体の接合方法を示す平面図である。
【図11】図11は柱材に対する繋ぎ材の接合方法を示す平面図である。
【図12】図12は本発明の他の実施例に係る構造体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0014】
1 構造体
11 枠体
11a,11b 端梁
11c,11d 側桁梁
11e,11f 中間梁
11g ブレース
12 主梁
12a,12b 弦材
12c,12d 端束材
12e 束材
12f 斜材
13 合掌材
14 支持材
2 支承部
21 柱材
22 ブレース
23 間柱
24 プレート
25 繋ぎ材
3 基礎
4 クレーン
5 ボルト
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に示した実施例に従って説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一の実施例に係る構造体を示す斜視図である。この図に示したように、本実施例に係る構造体1は、枠体11、主梁12及び合掌材13を有して構成される。
【0017】
枠体11は、図2に示したように、互いに平行に配置される一対の端梁11a,11bと、各端梁11a,11bに対して直交するように配置される一対の側桁梁11c,11dとにより矩形に形成される。枠体11は、また、その内側に、側桁梁11c,11d間に掛け渡される中間梁11e,11fと、該中間梁11e,11f、端梁11a,11b及び側桁梁11c,11dによって囲まれた空間に配設されるブレース11gとを有して構成される。中間梁11e,11f及びブレース11gの配置は、種々の形態を想定することができ、強度保持の観点から適宜設定し得る。
【0018】
主梁12は、図3に示したように、上下に平行に配置される弦材12a,12bと、各弦材12a,12bの両端部間に設けられる端束材12c,12dとにより矩形に形成される。主梁12は、また、各弦材12a,12b間に掛け渡される束材12eと、該束材12e、弦材12a,12b及び端束材12c,12dによって囲まれた空間に配設される斜材12fとを有して構成される。
【0019】
図1及び図4に示したように、主梁12は、水平に配置される枠体11上に鉛直に配置され、枠体11と共に逆T字状に立体化される。合掌材13は、主梁12の両側において、一端が主梁12に、他端が枠体11にそれぞれ連結され、主梁12を支持する。
【0020】
上記のように構成される構造体1は、温室の支承部とは別個独立した単一の構造物として構築することができる。つまり、構造体1は、枠体11、主梁12及び合掌材13又はこれらを構成する部材を、それぞれ基礎上に立設された柱材の上に運んだ後、組み立てなければ構築できないというものではなく、地上において、或いは工場等のように建築現場でない場所で構築することができる。
【0021】
また、枠体11を構成する端梁11a,11b、側桁梁11c,11d、中間梁11e,11f、主梁12を構成する弦材12a,12b、端束材12c,12d、束材12e、斜材12f及び合掌材13は、断面において同一形状、かつ同一寸法の鋼材(例えば、リップ付溝形鋼)から構成することが可能であり、これらの部材のモジュール化を容易に実現することができる。
【0022】
また、枠体11、主梁12及び合掌材13を構成する鋼材は、すべてビス止めにより連結することができ、従って、構造体1を組み立てる際に、鋼材同士を溶接しなくても良いという利点がある。さらに、最大の利点は、溶接歪みによる組立精度の低下がないため、構造体1、該構造体1を用いた温室の屋根組及び温室の軸組の良好な精度を実現することが可能となる。
【0023】
次に、本実施例に係る構造体1を用いた温室の軸組工法について説明する。
【0024】
まず、構造体1は、以下のように組み立てられる。すなわち、枠体11、主梁12及び合掌材13を構成する部材(鋼材)が、工場等において、予め所定の長さに切断されると共に、各鋼材の連結部にビス止めに用いられる孔部が加工された後、建築現場へ搬送される。建築現場では、これらの鋼材を用いて、まず、枠体11及び主梁12をビス止めにより組み立てる。次に、枠体11上に主梁12を配置すると共に、主梁12の両側に合掌材13を配置して、これらをビス止めにより連結して構造体1を組み立てる。従って、建築現場において、鋼材同士を溶接したり、鋼材の長さを調整する等の作業が不要で、ボルト等を用いて各鋼材同士を連結するだけで構造体1を組み立てることができる。なお、搬送条件が整えば、枠体11及び主梁12を予め工場等で組み立てた後、建築現場へ搬送することも可能である。
【0025】
また、構造体1の組立作業は、図5に示したように、地上において行うことができる。すなわち、構造体1は、上記したように、温室の支承部2を構成する柱材21を必要としないで、単独で構築し得る構造を有しているため、高所で組み立てる必要がなく、地上において組み立てることができる。従って、高所での組み立てと比較して、格段に効率的に組み立てることができる。
【0026】
組み立てられた構造体1は、クレーン4等を用いて基礎3上に立設された柱材21の上に運ばれ、図6に示したように、枠体11の四隅が、柱材21に対して、ボルト5等を用いてピン接合されることにより、支承部2上に設置される(図7及び図9参照)。このように、構造体1を構成する各部材を揚重するのではなく、地上において組み立てられた構造体1を揚重するため、揚重の回数は1回で足り、複数の構造体1を揚重する場合でも、各部材を揚重するのと比較して揚重の回数を非常に少なくすることができる。
【0027】
ここで、構造体1は、主梁12の頂部に存する弦材12aが、温室の間口方向に対して平行に配置されるように設置される(図5参照)。従って、かかる構造体1を用いた温室においては、棟が温室の奥行き方向に対して直交することとなる。
【0028】
また、支承部2とは、温室の屋根を支える部分を指し、柱材21や柱材21同士の間に設けられるブレース22等から構成される。図7に示した支承部2の構造は、構造体1が最初に設置される支承部2の構造の一例を示すものであり、構造体1を構成する枠体11の四隅に対応する位置に立設された柱材21同士の間に間柱23が配設されている。この間柱23は、構造体1を直接支持するものではなく、柱材21同士の間にブレース22を配設するために設けられたものである。また、支承部2に設けられる間柱23及びブレース22は、温室の外周部(妻面及び側面)に存する柱材21同士の間のみに配設すればよく、図8に示したように、温室の内部に存する柱材21同士の間には配設しなくてもよい。温室内部に立設される柱材21同士は、後述のように、構造体1により結合されるため、ブレース22を配設する必要がないからである。
【0029】
なお、支承部2を構成する柱材21、間柱23及び後述の繋ぎ材25も、断面において同一形状、かつ同一寸法の鋼材(例えば、リップ付溝形鋼)から構成することが可能であり、さらに、柱材21等は、上記した構造体1の枠体11、主梁12及び合掌材13と共通の鋼材を用いることも可能であり、従って、温室の軸組を構成する部材のモジュール化を容易に実現することが可能である。
【0030】
構造体1は、複数用意され、これらは、基礎3上に立設される柱材21上に、相互に隣接して据え付けられる。これにより、支承部2上に屋根組が構築される。
【0031】
ここで、各構造体1は、図9及び図10に示したように、互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体11の角部が、各柱材21の頂部に設けられるプレート24上に集められてピン接合されることにより、支承部2上に据え付けられることが好ましい。これにより、プレート24を介して各構造体1が一体化されるため、柱材21上に、水平荷重に対して耐力を有する構造面を形成することができる。また、温室内に立設される柱材21は、前記構造面に接合されるため、間口方向又は奥行き方向に隣接する柱材21同士の間にブレース22(鉛直ブレース)を設けなくても、水平荷重に対して耐力を発揮することができる。従って、水平荷重を基礎3に伝達する鉛直ブレース22を備える構造面を、温室の使用に支障のない外周部(妻面及び側面)に配置することが容易に実現できる。
【0032】
また、柱材21同士が、各構造体1の枠体11により結合されるため、かかる柱材21同士を対角線上に結ぶブレース(水平ブレース)を改めて設ける必要がなく、また、従来のように、鉛直ブレース及び水平ブレースを用いた建入れ調整作業も不要とすることが可能となる。
【0033】
すなわち、従来は、支承部上に屋根組を構築した際に生じる歪みを、鉛直ブレース及び水平ブレースを用いて修正していたが、水平ブレースの調整を行うと、鉛直ブレースの調整も必要となり、この建入れ調整作業には、多大な労力と、高度の技術が必要であった。しかし、この軸組工法によれば、柱材21の頂部がプレート24を介して一体化される各構造体1の枠体11に接合されるため、歪みを発生させることなく、支承部2上に屋根組を構築することができ、従って、水平ブレースを改めて設ける必要もないし、建入れ作業も不要となる。
【0034】
また、プレート24を介して1本の柱材21に複数の枠体11の角部を集めてピン接合する構成を採用することにより、柱材21の本数を最小限に抑えることが可能となる。また、温室内部に立設される柱材21同士が構造体1により結合されることとなるため、柱材21同士の間にブレース22を設けなくても強度を保持することが可能となり、その結果、支承部2における部材(柱材21やブレース22等)の数を減少させることも可能となる。
【0035】
また、各構造体1を支承部2上に据え付ける作業は、高所での作業となるが、枠体11の角部とプレート24は、1のボルト等で固定すれば良いため、屋根組と支承部2との接合箇所は、非常に少ない数で済む。従って、高所での据え付け作業でも、簡易迅速に行うことが可能となる。また、支承部2上に屋根組を構築するにあたって、この工法によれば、構造体1を構成する枠体11に形成される孔部と、柱材21の頂部に設けられるプレート24に形成される孔部とを連通させるように合わせ、両孔部にボルト5を挿通させ、固定するだけで、支承部2上に屋根組を構築することができるため、作業者に高度な技術は要求されず、また、高所作業であっても危険を少なくすることができる。
【0036】
なお、図7において、符号25は繋ぎ材であり、これは、支承部2を構築する際に、柱材21同士の間に掛け渡され、柱材21が倒れないように支える働きをするものである。この繋ぎ材25も、図11に示したように、柱材21の頂部に設けられるプレート24に端部が固定される。
【0037】
また、構造体1としては、温室の被覆材(例えば、プラスチックフィルムや硝子又は樹脂からなる板材等)や、該被覆材を支持する支持材(例えば、アーチパイプやフレーム材等)などの二次部材を具備して構成されるものであってもよい。かかる二次部材としては、被覆材、該被覆材の支持材、天窓、樋などが典型例として挙げられる。そして、かかる二次部材も、地上において組み立てることができるため、高所で組み立てる場合と比較して、非常に効率が良く、作業自体も容易なものとなる。また、二次部材を具備する構造体1を地上で組み立てた後、柱材21の上に運ぶようにすることで、揚重作業量を非常に少なくすることが可能となる。図12は、二次部材としての支持材14(被覆材として利用されるプラスチックフィルムを支持するアーチパイプ)を備えた構造体1の例を示す。
【0038】
上記のように構築される温室の軸組によれば、上記したように、揚重作業量及び高所での組立作業量を、従来の温室の軸組と比較して、大幅に削減することが可能となる。
【0039】
また、かかる温室の軸組によれば、温室の屋根に働く鉛直荷重は、屋根の被覆材から該被覆材の支持材を介して該支持材を支持する枠体11及び主梁12に伝達される。枠体11に働く鉛直荷重は、合掌材13を介して主梁12に伝達され、結果的に主梁12の両端に存する合掌材13に集められ、枠体11の端梁11a,11bを介して柱材12に伝達され、基礎3に伝わる。また、風、地震等による屋根面に働く水平力は、主梁12から枠体11、若しくは直接枠体11に伝達され、一方、壁面に働く水平力は、温室外周部では枠体11に伝達され、複数隣接する枠体11に伝達経由して、温室外周部若しくは奥行き方向の柱材21間に設けられたブレース22を介して基礎3に伝達される。従って、この温室の軸組によれば、剛接合しなくても、地震力、風圧力等の外力に対して十分な強度が得られる。
【0040】
また、かかる温室の軸組によれば、構造体1を構成する主梁12が、従来温室の軸組として間口方向の柱材同士の間に設けられた大梁と、温室に働く外力に対して同様の強度を保持し得るため、支承部2に大梁を設ける必要がなく、大梁の設置にかかる時間や手間を無くすことができ、コストも削減することができる。
【0041】
また、枠体11上に鉛直に配置される矩形の主梁12により、梁せいを大きくすることが可能であり、鉛直荷重に対する負担能力を増大させることができる。
【0042】
また、かかる温室の軸組によれば、温室の奥行き方向に対して直交して配設される主梁12が、四隅を柱材21により支持された枠体11上に鉛直に配置されるため、奥行き方向に立設される柱材21同士の間隔を従来の温室の軸組よりも大きくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の構造体1は、地上等で組み立て可能で、また支承部2に対してピン接合可能である。従って、この構造体を用いて温室の屋根組、温室全体の軸組、さらに温室を組み立てることで、温室に働く外力に対して十分な強度を保持し得ると共に、揚重作業量及び組立作業量を従来よりも大幅に削減することが可能であり、大規模栽培面積を有する大型温室に好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成され、温室の屋根組として用いられることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項4】
水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されることを特徴とする温室の屋根組。
【請求項5】
前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項4に記載の温室の屋根組。
【請求項6】
前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項5に記載の温室の屋根組。
【請求項7】
温室の支承部を構成する柱材上に、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されることを特徴とする温室の軸組。
【請求項8】
前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項7に記載の温室の軸組。
【請求項9】
前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項8に記載の温室の軸組。
【請求項10】
支承部により支えられる屋根が、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成される屋根組を有して構成されることを特徴とする温室。
【請求項11】
前記屋根組を構成する各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記支承部を構成する柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項10に記載の温室。
【請求項12】
前記屋根組を構成する各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項11に記載の温室。
【請求項13】
a)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を組み立てる工程と、b)前記a)工程により組み立てられた構造体を、温室の支承部を構成する柱材上に、複数隣接させて設置する工程とを含むことを特徴とする温室の軸組工法。
【請求項14】
前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体を構成する枠体の四隅を、それぞれ柱材にピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けることを特徴とする請求項13に記載の温室の軸組工法。
【請求項15】
前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部を、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集めてピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けることを特徴とする請求項14に記載の温室の軸組工法。
【請求項16】
前記a)工程により組み立てられる構造体は、温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1に記載の温室の軸組工法。
【請求項1】
水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成され、温室の屋根組として用いられることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項4】
水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されることを特徴とする温室の屋根組。
【請求項5】
前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ柱材にピン接合されることにより、前記柱材を含む温室の支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項4に記載の温室の屋根組。
【請求項6】
前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項5に記載の温室の屋根組。
【請求項7】
温室の支承部を構成する柱材上に、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成されることを特徴とする温室の軸組。
【請求項8】
前記各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項7に記載の温室の軸組。
【請求項9】
前記各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項8に記載の温室の軸組。
【請求項10】
支承部により支えられる屋根が、水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を、複数隣接させて設置することにより構成される屋根組を有して構成されることを特徴とする温室。
【請求項11】
前記屋根組を構成する各構造体は、該構造体を構成する枠体の四隅がそれぞれ前記支承部を構成する柱材にピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項10に記載の温室。
【請求項12】
前記屋根組を構成する各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部が、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集められてピン接合されることにより、前記支承部上に据え付けられることを特徴とする請求項11に記載の温室。
【請求項13】
a)水平に配置される矩形の枠体と、該枠体上に鉛直に配置される矩形の主梁と、該主梁を支持する合掌材とを具備して構成される構造体を組み立てる工程と、b)前記a)工程により組み立てられた構造体を、温室の支承部を構成する柱材上に、複数隣接させて設置する工程とを含むことを特徴とする温室の軸組工法。
【請求項14】
前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体を構成する枠体の四隅を、それぞれ柱材にピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けることを特徴とする請求項13に記載の温室の軸組工法。
【請求項15】
前記b)工程では、前記a)工程により組み立てられた各構造体のうち互いに隣接するもの同士をそれぞれ構成する各枠体の角部を、各柱材の頂部に設けられるプレート上に集めてピン接合することにより、前記各構造体を、前記支承部上に据え付けることを特徴とする請求項14に記載の温室の軸組工法。
【請求項16】
前記a)工程により組み立てられる構造体は、温室の被覆材、該被覆材の支持材等の二次部材を具備して構成されることを特徴とする請求項13〜15のいずれか1に記載の温室の軸組工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【国際公開番号】WO2005/058015
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516316(P2005−516316)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018704
【国際出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(506183063)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/018704
【国際出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(506183063)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]