説明

温室構造

【課題】風圧による被覆シートのバタツキを効果的に抑えることができるとともに、被覆シートへの張力導入が均一かつ容易に行え、かつ温室設置後における被覆シートの一部補修時に、簡単に被覆シートの張力を開放できる温室構造を提供する。
【解決手段】一定間隔で配置された架構面材4,4…と、この架構面材4,4…を繋ぐ連結材5,5…とからなる架構2と、この架構空間を覆う日射透過性の被覆シート3とから構成される温室構造1において、前記連結材5,5…を支持材として、前記架構面材4方向に沿って被覆シート受け材7,7…を配設するとともに、該被覆シート受け材7,7…が前記架構2の室内外方向に移動調整可能とされる構造とする。前記被覆シート受け材7は、各架構面材4,4間に所定間隔で配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、花き、果樹などを栽培するための温室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、野菜、花き、果樹などを気候条件に左右されることなく生産するために、建屋として温室が利用されている。この温室は、気温、光、水分などの環境因子を調節する目的で、栽培空間を日射透過性の被覆資材で覆った構造のものである。
【0003】
前記温室は、被覆資材によって大きくはガラス温室とプラスチックハウスとに大別される。後者のプラスチックハウスは、任意断面形状の骨組(架構)の外面側をプラスチックフィルム(被覆シート)によって覆った構造であるが、例えば図10に示されるように、前記プラスチックフィルム52が風に煽られたり、重みなどにより垂れ下がるのを防止するため、屋根の勾配方向に沿って配設される垂木51、51…を、例えば600〜700mm程度の間隔で多数設けるようにしている(下記特許文献1等参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3030304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のように、小寸法間隔で多数の垂木51,51…を配設することによりプラスチックフィルム52の垂れ下がりは防止できるようになるが、前記プラスチックフィルム52は垂木51,51…が連結された構造材53,54を定着点として張設され、前記垂木51,51…はプラスチックフィルム52の裏面側に低い圧力で接触しているだけであるため、風圧によるバタツキを効果的に抑えることができないとともに、前記プラスチックフィルム52に対して、均一に張力を導入する作業は、人手が掛かり非常に面倒であるなどの問題があった。また、プラスチックフィルム52の一部に切れ等の破損が生じた場合の補修に際し、プラスチックフィルム52に張力が導入された状態で補修作業を行わなければならず作業性が非常に悪いという問題もあった。
【0005】
そこで本発明の主たる課題は、風圧による被覆シートのバタツキを効果的に抑えることができるとともに、被覆シートへの張力導入が均一かつ容易に行え、かつ温室設置後における被覆シートの一部補修時に、簡単に被覆シートの張力を開放できる温室構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、一定間隔で配置された架構面材と、この架構面材を繋ぐ連結材とからなる架構と、この架構空間を覆う日射透過性の被覆シートとから構成される温室構造において、
前記連結材を支持材として、前記架構面材方向に沿って被覆シート受け材を配設するとともに、該被覆シート受け材が前記架構の室内外方向に移動調整可能とされることを特徴とする温室構造を提供することにある。
【0007】
上記請求項1記載の本発明においては、従来の垂木に代えて架構の室内外方向に移動調整可能とした被覆シート受け材を設け、被覆シートで架構を覆い該被覆シートの側端部を所定位置に定着した後、前記被覆シート受け材を架構の外方側に移動させることにより、被覆シートへの張力導入が均一かつ容易に行えるようになる。また、前記被覆シート受け材が室外方向に移動し、被覆シートに張力を導入する構造としたため、前記被覆シート受け材は被覆シートの裏面側(室内側の面)に高い圧力で接触するため、風圧によるバタツキを効果的に防止できるようになる。ここで、前記被覆シート受け材の室内外方向への移動調整とは、被覆シート受け材が形状を保持したまま室内外方向にスライド移動する態様と、変形によって室外方向に膨縮するように変形する態様との両者を含むものである。
【0008】
さらに、温室設置後における被覆シートの一部補修時に際しては、前記被覆シート受け材を架構内側方向に後退させることにより、被覆シートの導入張力を簡単に開放することができ、切れなどの補修を容易に行えるようになる。
【0009】
なお、前記被覆シート受け材は、構造計算上、架構の構造部材となるものではないため、小断面の部材を使用すれば足りるため、日射を遮る部材面積を極小化でき、野菜、花き、果樹に対する日射量は十分に確保することができる。
【0010】
請求項2に係る本発明として、前記連結材と被覆シート受け材とを連結する支持具は、架構の室内外方向に移動調整可能とされた調整ボルトである請求項1記載の温室構造が提供される。前記支持具としては種々の構造が考えられるが、室内外方向に前進及び後退可能な調整ボルトとするのが、構造が簡単でかつ製作費が廉価で済む点で望ましい。
【0011】
請求項3に係る本発明として、前記被覆シート受け材は、各架構面材間に所定間隔で配設されている請求項1、2いずれかに記載の温室構造が提供される。一般的に、被覆シートは架構面材の上面にシート定着具を設け、架構面材間毎に張設されるため、前記被覆シート受け材は各架構面材間に所定の間隔で、例えば1000〜1500mmの間隔で配設するのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上詳説のとおり本発明によれば、架構面材方向に沿って設けた被覆シート受け材を架構の室内外方向に移動調整可能としたため、被覆シートへの張力導入が均一かつ容易に行えるとともに、風圧による被覆シートのバタツキを効果的に防止できるようになる。また、温室設置後における被覆シートの一部補修時に際し、簡単に被覆シートの張力を開放できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る温室構造1の平面図、図2は図1のII−II線矢視図、図3は図1のIII−III線矢視図、図4は図1のIV−IV線矢視図である。
【0014】
温室構造1は、一方向に所定間隔で配置されたパイプ、H形鋼、角形鋼管、C形鋼材などの形材からなる架構面材4,4…と、これら架構面材4、4…を繋ぐパイプ、H形鋼、角形鋼管、C形鋼材などの形材からなる連結材5,5…とにより構成された架構2と、この架構2の空間を覆うように前記架構2の外面に張設された日射透過性の被覆シート3とからなるもので、本発明では特に、前記連結材5,5…を支持材として、前記架構面材4方向に沿って被覆シート受け材7、7…を配設するとともに、該被覆シート受け材7,7…が前記架構2の室内外方向に移動調整可能とされるものである。
【0015】
以下、更に具体的に詳述すると、
前記架構面材4は、図2に示されるように、一方側の側柱10を複合柱構造とし、他方側の側柱11を前記複合柱10よりも高さの低い単柱構造とし、前記複合柱10と単柱11との間に傾斜天井主梁9を架け渡した架構面材とされる。前記複合柱10は、横断面内に並列配置された2本の柱10A、10Bを弧状天井主梁12及び水平材13によって一体的に組み上げた構造とされ、前記傾斜天井主梁9は、前記複合柱10の内側柱10Bと、前記傾斜天井主梁9との中間とを連結する補強梁14によって補強されている。
【0016】
前記架構面材4,4間には、図1及び図2に示されるように、架構面材4の直交方向に複数列で、各架構面材4,4同士を連結する連結材5,5…が配設され、かつ前記架構面材群4,4…と、前記連結材5,5…群によって区画される各画成領域群の内、端部架構面材4と、これに隣接する次列の架構面材4との間の断面方向の各画成領域列にX状のブレース6、6を設けることにより、温室としての骨組が完成されている。
【0017】
前記架構2の外面側を覆うように設置される被覆シート3としては、日射透過性のプラスチックフィルムが使用されている。具体的には、ポリエステルフィルム、フッ素フィルムなどの硬質フィルム又は塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィン系フィルムなどの軟質フィルムを好適に使用することができる。
【0018】
前記被覆シート3は、前記各架構面材4,4…の上面にシート定着具(図示せず)を設け、各架構面材4,4間毎に張設されるようになっており、本温室1では、前記被覆シート3を張り上げるために、前記架構面材4,4の間に、複数条の、図示例では4条の被覆シート受け材7,7…が架構2の全周に亘り設けられている。
【0019】
前記被覆シート受け材7は、例えば傾斜天井主梁9区間では、図5に示されるように、架構面材4,4…を繋ぐ各連結材5,5…の内、棟部連結材5Aと、側部連結材5Bとの間の傾斜天井区間を1スパンとし、前記棟部連結材5A、3本の中間連結材5,5…及び側部連結材5Bを支持材として、架構面材4の方向に沿って配設されている。なお、前記弧状天井主梁12区間及び側面においても、前記被覆シート受け材7は、これに準じて連結材5,5…を支持材として架構面材4の方向に沿って配設される。
【0020】
前記被覆シート受け材7の支持部構造は、例えば前記傾斜天井主梁9区間では図7に示されるように、前記中間連結材5として溝型鋼が使用され、前記被覆シート受け材7としては単管パイプが使用されており、これら中間連結材5と被覆シート受け材7とを連結する支持具として調整ボルト15が使用されている。具体的には、同図に示されるように、前記中間連結材5の上面部に挿通孔5aを形成し、この挿通孔5aに貫通させた全ネジの調整ボルト15を、前記上面部を跨ぐ両側に配設したナット部材16によって挟持することにより固定を図るようにし、一方被覆シート受け材7の下面側に挿入孔7aを形成するとともに、該挿入孔7a位置に螺合ナット17を溶接等によって固定し、前記調整ボルト15の上端を螺入することにより、被覆シート受け材7が連結された構造とされる。なお、前記弧状天井主梁12区間及び側面区間についても同様である。
【0021】
また、前記被覆シート受け材7の棟部がわ端部は、図8に示されるように、棟部連結材5Aの側面に断面略L字状の板状連結具18を固設し、この板状連結具18に被覆シート受け材7の端部がボルト・ナット締結具19により連結されるとともに、前記被覆シート受け材7の側部がわ端部も、図9に示されるように、側部連結材5Bの側面に断面略L字状の板状連結具20を固設し、この板状連結具20に被覆シート受け材7の端部がボルト・ナット締結具21により連結された構造となっている。すなわち、前記被覆シート受け材7の両端部は、比較的剛性の低い板状の連結具18,20を介して、中間連結材5A、5Bに連結されることによって、回転方向の変形が容易に許容される構造とされる。
【0022】
温室1の設置時に、前記被覆シート3へ張力を導入するには、各架構面材4,4間に、ほぼ架構面材4,4区間幅の被覆シート3を順次被せたならば、各架構面材4、4の上部位置でシート定着具(図示せず)によって被覆シート3の側縁部を定着させる。次に、図6及び図7に示されるように、下部側ナット部材16を緩め、温室1の内側から被覆シート受け材7を持ち上げて上方向に移動(変形)させるか、ナット部材16を回転させて調整ボルト15を室外側方向に前進させることにより被覆シート受け材7を上方向に押し上げて、被覆シート3に所望の張力を導入したならば、前記ナット部材16、16を締め付け固定を図るようにする。
【0023】
温室1の設置後に被覆シート3の一部に切れが生じ、その補修を行う場合や、一部の被覆シート3の張り替えを行う場合には、前記ナット部材16を緩め、前記調整ボルト15を室内側方向に後退させると、被覆シート受け材7が室内側に移動(変形)し、被覆シート3の張力が開放されるため、被覆シート3の張り替えや補修が容易に行えるようになる。
【0024】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記被覆シート受け材7は、上記調整ボルト15によって、架構内外方向に移動調整可能な構造としたが、架構内外方向に移動調整できれば任意の構造とすることでもよい。
(2)上記形態例では、傾斜天井主梁9、弧状天井主梁12及び側面のすべての周方向範囲に被覆シート受け材7を配設するようにしたが、傾斜天井主梁9,弧状天井梁12及び側面の内の一部、例えば傾斜天井主梁9の範囲のみに被覆シート受け材7を設けるようにしてもよい。
(3)上記形態例では、被覆シート受け材7の両端部は固定点とし、その中間部分を室外側に膨出させるように変形させるようにしたが、前記被覆シート受け材7の両端部を非拘束とし、形状を保持したまま単に室内外方向にスライド移動させるようにしてもよい。
(4)上記形態例では架構面材4,4間毎(1スパン毎)に被覆シート3を張設するようにしたが、複数スパン毎に被覆シート3を張設するようにしてもよい。
(5)本形態例では複合柱10を備える特殊断面構造の温室1の例について述べたが、本発明が適用される温室の断面構造は任意であり、温室一般に対して適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る温室1の平面図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】図1のIII−III線矢視図(側面図)である。
【図4】図1のIV−IV線矢視図(側面図)である。
【図5】被覆シート3への張力導入前の被覆シート受け材7の横断骨組図である。
【図6】被覆シート3への張力導入時の被覆シート受け材7の横断骨組図である。
【図7】連結材5と被覆シート受け材7との接合部詳細図である。
【図8】被覆シート受け材7と棟部連結材5Aとの連結部詳細図である。
【図9】被覆シート受け材7と側部連結材5Bとの連結部詳細図である。
【図10】従来の温室における垂木配設例を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1…温室、2…架構、3…被覆シート、4…架構面材、5…連結材、6…ブレース、7…被覆シート受け材、9…傾斜天井主梁、10…複合柱、11…側柱、12…弧状天井主梁、15…調整ボルト、16…ナット部材、18・20…板状連結具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔で配置された架構面材と、この架構面材を繋ぐ連結材とからなる架構と、この架構空間を覆う日射透過性の被覆シートとから構成される温室構造において、
前記連結材を支持材として、前記架構面材方向に沿って被覆シート受け材を配設するとともに、該被覆シート受け材が前記架構の室内外方向に移動調整可能とされることを特徴とする温室構造。
【請求項2】
前記連結材と被覆シート受け材とを連結する支持具は、架構の室内外方向に移動調整可能とされた調整ボルトである請求項1記載の温室構造。
【請求項3】
前記被覆シート受け材は、各架構面材間に所定間隔で配設されている請求項1、2いずれかに記載の温室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−158248(P2006−158248A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352152(P2004−352152)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(303026350)有限会社洋テック (3)
【出願人】(503076168)三善加工株式会社 (14)
【Fターム(参考)】