説明

温度センサ用導光体

【課題】エジェクタピンと中間材7と光ファイバー5からなる温度センサ用導光体において測温時に光ファイバーにクラックが生じないようにする。
【解決手段】エジェクタピン1の貫通孔2の先端側には金属管7が挿入されて耐熱接着材で固定され、金属管の貫通孔には光ファイバーの先端側が挿入されて特殊耐熱接着材で固定される。光ファイバーの後端側は光センサ11に接続される。特殊耐熱接着材はシリコーンボールとシリコーンレジン溶液を含む。レジンと耐熱接着剤が球状粒子間を埋めている接着部分において、耐熱接着剤が多い部分は球状粒子を固着したグループを形成し、レジンが多い部分は弾性的に接着されているため、加熱時の熱膨張の違いによって光ファイバーにクラックが生じることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度センサに光を導くための温度センサ用導光体に関する。特に、本発明は、圧力が加わる密封容器内の温度を測定する場合に有用であり、例えば射出成形金型に使用されるエジェクタピンに設けられ、型内部の温度を測定するための温度センサに赤外線を導くための温度センサ用導光体として好適である。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、圧力容器に取り付けられて温度測定のために赤外線を光ファイバーで外部に導出することができる赤外線温度測定器が開示されている。ここには、中空管状のボルトを圧力容器に連通して設け、圧力容器の壁体に開口する当該ボルトの先端部分にはサファイヤからなる窓部を設け、その後方のボルト内に光ファイバーを設けて前記窓部から取り込んだ光を前記光ファイバーで圧力容器外のセンサに導くように構成されている。
【特許文献1】特開昭58−137721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記特許文献1記載の赤外線温度測定器は、圧力容器内から外へ赤外線を導くため、前述したように窓部にはサファイヤを設け、その後方に別途光ファイバーを設けなければならない等、構造が複雑である。また圧力容器との接続部に設けるサファイヤ製の窓部は、破壊や欠損を避けるための強度を確保するために、形状・寸法がある程度決められてしまうため、赤外線温度測定器の全体としての長さを任意に設定できないという問題もあった。
【0004】
そこで、本願出願人は、特許文献1のようなサファイヤからなる窓部を必要としない温度センサ用導光体として、射出成形金型に使用されるエジェクタピンを管状とし、その内部に光ファイバーを挿入固定して埋め込む構造を案出するに至った。
【0005】
しかし、射出成形金型の構成部品であるエジェクタピンには規格があり、内部に光ファイバーを挿入するとしても外径の規格は遵守しなければならない。ところが、通常のエジェクタピンは機械加工の難しい合金工具鋼(SKD)からなり、外径の規格を守りつつ、その内部に外径1mmの光ファイバーを挿入する孔を正確に形成することは困難である。
【0006】
そこで、本願発明者等は、光ファイバーの外径よりも大径の貫通孔をエジェクタピンに加工し、さらに加工しやすいステンレス鋼材(SUS)からなる中間材として光ファイバーの外径に合わせた貫通孔を有する管状の部材を加工し、この管状の中間材をエジェクタピンの貫通孔に挿入固定するとともに、光ファイバーを前記中間材の貫通孔に挿入固定することにより、光ファイバーをエジェクタピン内に埋め込む2重管構造を案出した。中間材とエジェクタピンの固定及び光ファイバーと中間材の固定は、共に耐熱接着剤を用いるものとした。
【0007】
この温度センサ用導光体によれば、サファイヤ製の窓部がなく、樹脂の加圧注入が行われる金型内に対して一定の気密性能を備えており、金型内から光ファイバーで外部に取り出した赤外線を直接光センサに導き、型内部の温度測定に供することができる。
【0008】
本願出願人の案出した上記温度センサ用導光体によれば、サファイヤ製の窓部がないため特許文献1記載の発明に見られるサファイ製窓部による不都合を解消することができたが、本発明者は上記温度センサ用導光体に関して新たな課題を発見するに至った。
【0009】
すなわち、本願出願人の案出した上記温度センサ用導光体によれば、前述した通り管状のエジェクタピンの貫通孔に管状の中間材を挿入して耐熱接着剤で固定し、さらに中間材の貫通孔に光ファイバーを挿入して耐熱接着剤で固定した構造であるが、ここでエジェクタピンと中間材は共に金属製で熱膨張率が近いので問題はないが、金属製の中間材と石英からなる光ファイバーは熱膨張率が大きく異なるので当該接着部分には問題が生じてしまう。つまり、射出成形金型の内部の温度は一般に400度程度まで上昇し、測温時の加熱による中間材の熱膨張が光ファイバーの熱膨張よりも大きいため、耐熱接着剤の接着力が強いほど光ファイバーには強い引張り力が加わり、光ファイバーに破壊をもたらしてしまうのである。
【0010】
本発明はかかる問題点を解決するためになされたものであり、エジェクタピンの内部に埋め込む中間材と光ファイバーからなる温度センサ用導光体において、光ファイバーと中間材の熱膨張率の違いにより測温時に光ファイバーにクラックが生じないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された温度センサ用導光体は、金属管に光ファイバーを挿入固定した温度センサ用導光体において、前記金属管と前記光ファイバーを、球状粒子を添加した耐熱接着剤で固着したことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載された温度センサ用導光体は、請求項1記載の温度センサ用導光体において、耐熱性レジン溶液を添加した前記耐熱接着剤を前記金属管の内周面と前記光ファイバーの外周面の少なくともいずれか一方に塗って前記光ファイバーを前記金属管に挿入することにより、前記金属管と前記光ファイバーの間に前記耐熱接着剤を均一に分布させて両者を固着したことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載された温度センサ用導光体は、請求項1記載の温度センサ用導光体において、前記球状粒子がシリコーンボールであることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載された温度センサ用導光体は、請求項1記載の温度センサ用導光体において、前記球状粒子が、Ca,Mg,C,Zn,Fe,Mn,Mo,Zr,Ni,Tiからなる群から選択された元素を含むボールであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された温度センサ用導光体によれば、エジェクタピン内に埋め込まれた金属管の貫通孔内に光ファイバーを固着している耐熱接着剤には球状粒子が添加されており、この球状粒子と耐熱接着剤の界面での接着力は、光ファイバーと耐熱接着剤の界面での接着力ほどには大きくないので、球状粒子の間を埋めている耐熱接着剤の部分で微少なすべりが生じて耐熱接着剤と光ファイバーとの間に生じている応力を緩和するので、金属製の金属管とガラス製の光ファイバーの熱膨張率の差異にも係わらず、加熱時の熱膨張の違いによって光ファイバーにクラックが生じることは避けられる。
【0016】
請求項2に記載された温度センサ用導光体によれば、請求項1記載の温度センサ用導光体による効果において、金属管と光ファイバーを固定する耐熱接着剤には耐熱性レジン溶液が添加されているので、耐熱接着剤を塗布した状態で金属管の貫通孔に光ファイバーを挿入する操作はレジン溶液の平滑性のために作業性良く行うことができる。また、レジンが含まれていない場合に比べて加熱時に溶剤成分が飛んだあとにもボイドが生じにくい。さらに、レジンと耐熱接着剤が球状粒子間を埋めている量が多く接着力がより高くなっており、その中でも耐熱接着剤が多い部分では球状粒子が固着されたグループが形成され、レジンが多い部分では弾性的な接着がされているため、光ファイバーと金属管の膨張係数の差はレジンの多い部分の弾性的変形によりさらに緩和される。
【0017】
請求項3に記載された温度センサ用導光体によれば、請求項1記載の温度センサ用導光体による効果において、球状粒子をシリコーンボールとしたので、シリコーン特有の物性により前記効果を確実に奏することができる。
【0018】
請求項4に記載された温度センサ用導光体によれば、請求項1記載の温度センサ用導光体による効果において、球状粒子を、Ca,Mg,C,Zn,Fe,Mn,Mo,Zr,Ni,Tiからなる群から選択された元素を含むボールとしても、同等の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に説明する本発明の実施の形態は、射出成形金型において、金型の開放動作に相対的に連動して製品を金型外に押し出すエジェクタピンに係り、具体的にはエジェクタピンの内部に埋め込んだ金属管の貫通孔内に光ファイバーを挿入固着し、金型内の温度を測定するための赤外線を外部のセンサに導く温度センサ用導光体に関するものである。
【0020】
本発明の実施の形態における特徴は、金型装置に設けられたエジェクタピン等の各種機能ピンに埋め込まれる温度センサ用導光体の構成にある。そこで、以下の説明では、金型装置の図示乃至説明は簡潔化のために省略し、当該機能ピンとしてのエジェクタピンを示す断面図等を主に参照する。なお、本発明の温度センサ用導光体が埋め込まれるピンはエジェクタピンには限定されず、例えば成形品の突き出し機能がないコアピン等も含まれる。
【0021】
1.構成(図1)
図1は、本例の温度センサ用導光体が埋め込まれたエジェクタピン1等を示す。
SKDからなるエジェクタピン1は内部に貫通孔2を有する管状であり、その下端には貫通孔2に連通するフランジ部3が設けられ、フランジ部3の開放口には蓋体4が取り付けられて光ファイバー5の出口6を側面に区画している。エジェクタピン1の貫通孔2の開口した先端側には、貫通孔2と略同等の外形を有する中間材としてのSUSからなる金属管7が挿入され、エジェクタピン1と先端面を一致させた状態で耐熱接着剤(珪酸ソーダ系接着剤)により気密に固定されている。金属管7の長さは、エジェクタピン1の全長と同じにする必要はなく、製造時に全長を調整するために先端側を切断する工程を経ることから、寸法調整が必要とされるだけの長さ(例えば10mm〜数10mm程度等)があればよい。すなわち、エジェクタピン1の貫通孔2の後方部分は金属管7のない空洞部分として残されている。
【0022】
前記金属管7の貫通孔には、光ファイバー5が挿入され、金属管7及びエジェクタピン1と先端面を一致させた状態で耐熱接着剤により気密に固定されている。金属管7と光ファイバー5の固定に使用される耐熱接着剤は珪酸アルカリ系接着剤であり、主に珪酸ソーダ、珪酸カリウムなどの無機バインダとAl2 3 、ZrO2 などの充填剤から構成され、セラミック同士、またはセラミックと金属の接合に使われて両材料の間に強固な結合を形成する。耐熱接着剤は500℃に加熱した後も強度を維持するために必要である。
【0023】
さらに本例では、この耐熱接着剤に応力緩和手段乃至接着剤全体としての弾性調整剤(又は剛性低下剤)である球状粒子としてのシリコーンボールと、金属管7への挿入性を高めるためのシリコーンレジン(耐熱性レジン)溶液とが添加されている。本例では、応力緩和手段である球状粒子が添加された耐熱接着剤を、球状粒子が添加されていない耐熱接着剤と区別するため、特殊耐熱接着剤と呼ぶ。
【0024】
本例のシリコーンボールはシロキサン結合が(RSiO3/2)n で表される三次元網目架橋構造を持つポリオルガノシルセスキオキサン硬化物粉末である。その形状は球状であって、その平均粒径は2.0μm、粒径分布は1〜4μm、真比重は1.3、含水率は1%である。
【0025】
本例のシリコーンレジン溶液は、不揮発分(レジン)を50%含み、粘度は18.0mPa・s(cp)、比重は1.5、溶剤としてはキシレンを含み、耐エタノール性が得られるまでの硬化条件は250度/60分である。
【0026】
なお、金属管7と光ファイバー5との隙間は、両者の接着が可能であって、焼成後にはボイドが生じにくい程度とするのがよく、後述するシリコーンボールの外径はその隙間より小さくする必要がある。
【0027】
光ファイバー5は、前述したように、その先端において金属管7に挿入固定されており、金属管7の貫通孔よりも後方の部分はエジェクタピン1の貫通孔2を経てフランジ部3の出口6から外に導かれている。
【0028】
そして、光ファイバー5は、エジェクタピン1の外部(例えば、このエジェクタピン1が設けられた金型装置の近傍)に設置されたセンサ部10に接続されている。センサ部10において、光ファイバー5に接続された光センサ11の出力は、プリアンプ12からゼロ点調整用及びゲイン調整用の2つの可変抵抗器13,14を経て出力される。センサ部10からのデータは、データ処理手段としてのパソコン15に入力されて処理された後に、パソコン15のモニター(表示部)に表示される。
【0029】
2.製造工程
以上の構成になる温度センサ用導光体が埋め込まれたエジェクタピン1を製造する工程(手順)を説明すると、以下の通りである。
1)エジェクタピン1の貫通孔2の内面と、金属管7の外周面の双方に耐熱接着剤を塗布しておく。
2)エジェクタピン1の貫通孔2の先端側に金属管7を挿入して接着固定する。
【0030】
3)金属管7の貫通孔に前記特殊耐熱接着剤を充填する。エジェクタピン1の先端を下にして、上方にあるエジェクタピン1の貫通孔2の開口から光ファイバー5の先端側を下向きにして通し、エジェクタピン1内で金属管7の貫通孔内に挿入して接着固定する。なお、光ファイバー5は、エジェクタピン1のフランジ部3に相当する部分で出口6から導出できるように予め略90度に曲げ加工しておく。
【0031】
この挿入工程の際、下となったエジェクタピン1の先端及び金属管7の先端に指等を添えて特殊接着剤がそのまま押し出されないように配慮し、これによって特殊接着剤が金属管7の貫通孔の内周面と光ファイバー5の外周面との間に隙間なく行き渡るようにする。前記特殊耐熱接着剤はシリコーンレジン溶液を含んでいるので、耐熱接着剤にシリコーンボールを添加しているにも拘わらず光ファイバー5を金属管7に挿入する際の抵抗が小さく、挿入がしやすい。また、シリコーンレジン溶液には固形分であるシリコーンレジンが含まれているので焼成後はボイドが生じにくく、また後述するように前記シリコーンボールと相俟って発生応力を減殺する等、シリコーンボールとの相性も良好である。
【0032】
4)そして、エジェクタピン1を焼成し、耐熱接着剤及び特殊耐熱接着剤による接着部分を硬化・固定した後、エジェクタピン1のフランジ部3に蓋体4を取り付けて光ファイバー5を出口6から外に導出する。
【0033】
5)エジェクタピン1の先端側を、金属管7と光ファイバー5と共に適当な寸法だけ切断し、取付け対象となる金型の寸法に合致した所望の長さに設定する。どの位置で切断しても平滑な切断面が得られ、また金属であるエジェクタピン1及び金属管7の間は耐熱接着剤で気密が保持されており、金属管7と光ファイバー5の間は特殊耐熱接着剤により気密が保持されているので、この切断工程によって全体の気密性に問題が生じることもない。
【0034】
3.特殊耐熱接着剤の状態等(図2〜図5)
図2は前記特殊耐熱接着剤が含むシリコーンボールの未処理品のSEMによる拡大写真であり、図3は前記特殊耐熱接着剤が含むシリコーンボールを500℃で焼成した後のSEMによる拡大写真であり、図4は前記特殊耐熱接着剤のSEMによる拡大写真である。これらの図より、シリコーンボールは500℃の焼成によってもほとんど変化せず、また耐熱接着剤と隙間なく十分気密性を保った状態で塗布形成されることがわかる。
【0035】
図5は、本例で使用する前記シリコーンボールと前記シリコーンレジンのTG−DTAによる熱重量変化結果を示すグラフである。TGとは熱重量分析( Thermogravimetric Analysis)であり、温度に対して熱による物体の重量変化の割合をプロットした熱解析を意味し、DTAとは示差熱分析( Differential Thermogravimetric Analysis)であり、温度を連続的に上げていった場合に物質に熱反応が生ずる温度を求める方法であり熱反応の性質や強さを測定できる。
【0036】
この図5から分かるように、シリコーンボールは450℃までの加熱でほとんど重量変化がなく、熱的に安定であることを示している。これに対し、シリコーンレジンは450℃までの加熱で重量が53%程減っているが、47%は固形分として残る。
【0037】
4.特殊耐熱接着剤による作用効果(図6、図7)
前記特殊耐熱接着剤による金属管7と光ファイバー5の固定部分には、金属管7と光ファイバー5の熱膨張率の差異にも係わらず、加熱時の熱膨張量の違いによって光ファイバー5にクラックが生じることは避けられ、約500℃まで温度測定が再現性良く行える。これは、添加したシリコーンボールと耐熱接着剤の界面での接着力は、光ファイバー5と耐熱接着剤の界面での接着力ほどには大きくないので、シリコーンボールの間を埋めている耐熱接着剤の部分で微少なすべりが生じて耐熱接着剤と光ファイバー5との間に生じている応力が緩和されるからであると考えられる。
【0038】
また、特殊耐熱接着剤には耐熱性レジンが添加されているので、シリコーンボールの間はレジンと耐熱接着剤によって埋められており、レジンを添加しない場合に比べてシリコーンボールとの接着力はより高くなっていると考えられる。そして、レジンと耐熱接着剤で埋められたシリコーンボールの隙間において、その中でも耐熱接着剤が多い部分では球状粒子同士が互いに固着されたグループが形成され、レジンが多い部分では球状粒子同士が弾性的に接着されているため、レジンの多い当該部分の弾性的変形により光ファイバー5と金属管7の膨張係数の差はさらに緩和される。
【0039】
図6は、金属管7と光ファイバー5の間にシリコーンボール9入りの特殊耐熱接着剤が充填された状態を示す軸方向に垂直な切断面で示した断面図であり、図7は同軸方向に平行な切断面で示した断面図である。本例の特殊耐熱接着剤によれば、熱膨張係数が極端に異なる金属管7と光ファイバー5をある程度の気密性を維持しつつ接着することができる。その機構は、図6及び図7に示すように、シリコーンボール9の平滑性による滑りや、金属管7及び光ファイバー5との接触面積の小ささにより、金属管7の熱膨張により光ファイバー5に加わる応力が緩和されるためと考えられる。
【0040】
5.実施例(表1及び表2)
本例の温度センサ用導光体を種々の条件下で実際に製作し、類似の条件下で製作した比較例と性能を比較した実例について以下に説明する。
光ファイバー5は外径1mmの石英製であり、金属管7は外径5mm、内径1.05mmのSUS製である。表1に示すように、シリコーンボールの集合であるシリコーンパウダー(信越シリコーン社製、型番KMP−590、「1.構成」で説明したものと同一)と、耐熱接着剤と、シリコーンレジン溶液(信越シリコーン社製、型番KR242A、「1.構成」で説明したものと同一)とを、種々の%で組み合わせて混合してなる材料により、金属管7に挿入した光ファイバー5の接着固定を行って状況を観察する。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、第1行目の例は耐熱接着剤のみの比較例であり、光ファイバー5にはクラックが入ってしまい、実用にならない(評価×)。第2行目の例はシリコーンパウダ50%と耐熱接着剤50%の本発明の一例であり、光ファイバー5が金属管7に挿入しにくいという製造上の課題はあるが、光ファイバー5にクラックが入ることはなく、実用になる(評価○)。第3行目の例はシリコーンパウダ50%とシリコーンレジン溶液50%の比較例であり、500℃加熱後に金属管7から光ファイバー5が抜けてしまい、実用にならない(評価×)。第4行目の例は耐熱接着剤50%とシリコーンレジン溶液50%の比較例であり、光ファイバー5にはクラックが入ってしまい、実用にならない(評価×)。
【0043】
【表2】

【0044】
表2は、耐熱接着剤にシリコーンパウダとシリコーンレジン溶液を各種の配合で添加した例を示すが、第1行目の例では、シリコーンパウダ10%、耐熱接着剤45%、シリコーンレジン45%の場合であり、光ファイバー5にはクラックが入ってしまうので実用にならない(評価×)。第2行目の例は、シリコーンパウダ30%、耐熱接着剤35%、シリコーンレジン溶液35%の場合であり、光ファイバー5にはクラックは生じず本発明の一例として実用となる(評価○)。第3行目の例は、シリコーンパウダ50%、耐熱接着剤25%、シリコーンレジン溶液25%の場合であり、光ファイバー5にはクラックは生じず本発明の一例として実用となる(評価○)。第4行目の例は、シリコーンパウダ40%、耐熱接着剤30%、シリコーンレジン溶液30%の場合であり、光ファイバー5にはクラックは生じず本発明の一例として実用となる(評価○)。従って、本発明においては、シリコーンパウダと耐熱接着剤とシリコーンレジン溶液の配合については、上記3つの例により区画される数値範囲内とすることが好ましい。
【0045】
6.実施形態乃至実施例の効果
本例によれば、温度センサーに赤外線を導く光ファイバー5を金属管7内に固定する構造において、シリコーンボールの働きにより測温時の熱膨張で光ファイバー5にクラックが発生することは避けられ、約500℃程度までの温度測定が再現性良く行える。また、シリコーンレジン溶液を添加した場合には、光ファイバー5を金属管7に実装するのが容易で、均一に量産性良く作業が行える。また、金属管7と光ファイバー5を共に切断して長さ調整を行う場合、いかなる位置で切っても容易に平滑なカット面が得られ、気密性も損なわれない。
【0046】
なお、以上の説明では、球状粒子としてはシリコーンボール(シリコーンパウダ)を例示したが、球状粒子が、Ca,Mg,C,Zn,Fe,Mn,Mo,Zr,Ni,Tiからなる群から選択された元素を含むボールであっても同様の作用、効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は本例の温度センサ用導光体が埋め込まれたエジェクタピンの断面とセンサ部を示す図である。
【図2】図2は特殊耐熱接着剤が含むシリコーンボールの未処理品のSEMによる拡大写真である。
【図3】図3は特殊耐熱接着剤が含むシリコーンボールを500℃で焼成した後のSEMによる拡大写真である。
【図4】図4は特殊耐熱接着剤のSEMによる拡大写真である。
【図5】図5は本例で使用するシリコーンボールとシリコーンレジンのTG−DTAによる熱重量変化結果を示すグラフである。
【図6】図6は金属管と光ファイバーの間にシリコーンボール入りの特殊耐熱接着剤が充填された状態を示す軸方向に垂直な切断面における断面図である。
【図7】図7は金属管と光ファイバーの間にシリコーンボール入りの特殊耐熱接着剤が充填された状態を示す軸方向に平行な切断面における断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…エジェクタピン
5…光ファイバー
7…中間材としての金属管
9…球状粒子としてのシリコーンボール
10…センサ部
11…光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管に光ファイバーを挿入固定した温度センサ用導光体において、
前記金属管と前記光ファイバーを、球状粒子を添加した耐熱接着剤で固着したことを特徴とする温度センサ用導光体。
【請求項2】
耐熱性レジン溶液を添加した前記耐熱接着剤を前記金属管の内周面と前記光ファイバーの外周面の少なくともいずれか一方に塗って前記光ファイバーを前記金属管に挿入することにより、前記金属管と前記光ファイバーの間に前記耐熱接着剤を均一に分布させて両者を固着したことを特徴とする請求項1記載の温度センサ用導光体。
【請求項3】
前記球状粒子がシリコーンボールであることを特徴とする請求項1記載の温度センサ用導光体。
【請求項4】
前記球状粒子が、Ca,Mg,C,Zn,Fe,Mn,Mo,Zr,Ni,Tiからなる群から選択された元素を含むボールであることを特徴とする請求項1記載の温度センサ用導光体。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−14716(P2008−14716A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184675(P2006−184675)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)
【Fターム(参考)】