説明

温度センサ

【課題】 長期に渡って熱電対の先端を変形損傷させることのない温度センサを提供する。
【解決手段】 熱電対線16a,16bと接触板17と保護板18とから熱電対を形成する。熱電対を軸方向に変位自在に保護管24に取り付ける。スプリングとしてのコイル形状の形状記憶合金で作った温度応動部材8で熱電対を付勢して被検出物に押し当てる熱電対の先端の接触板17を保護管24の開口32から突出せしめる。熱電対の先端の接触板17を被検出物に押し当てて温度応動部材8を圧縮せしめることにより保護管24の開口32まで押し込む。温度応動部材8の変形により熱電対先端の接触板17の保護管24の開口32からの突出量を高温時よりも低温時に小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気配管系から蒸気を逃がさず復水を自動的に排出するスチームトラップ等の高温の被検出物の作動に伴う温度を検出して、作動の良否を確認するときに用いる温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の温度センサは、熱電対を軸方向に変位自在に保護管に取り付け、スプリングで熱電対を付勢して被検出物に押し当てる熱電対の先端を保護管の開口から突出せしめ、この熱電対の先端を被検出物に押し当ててスプリングを圧縮せしめることにより保護管の開口まで押し込むものである。
【0003】
スチームトラップが正常であり蒸気を逃がさず復水を排出していれば所定レベルの温度が検出され、スチームトラップが不良であり蒸気を逃がしていれば所定レベル以上の温度が検出される。また、スチームトラップが不良であり復水排出機能を喪失して詰まっていれば所定よりも遥かに低い外気温度が検出される。そのため、蒸気を逃がしているか否かを判定するためには所定レベル以上の温度であるか否かを正確に検出しなければならず、熱電対を所定以上の力で被検出物に押し当てる必要がある。しかしながら、復水排出機能の喪失は所定よりも遥かに低い外気温度が検出されるので、熱電対を所定以上の力で被検出物に押し当てる必要がない。上記従来の温度センサは、熱電対の先端を保護管の開口まで押し込むことにより、スチームトラップが復水排出機能を喪失している場合であっても、熱電対を所定以上の力で被検出物に押し当てるものであるので、復水排出機能を喪失したスチームトラップを多数含む多数の被検出物の温度を検出すると比較的早期に熱電対の先端が変形損傷して温度を検出できなくなる問題点があった。
【特許文献1】実開平3−83829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、長期に渡って熱電対の先端を変形損傷させることのない温度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱電対を軸方向に変位自在に保護管に取り付け、スプリングで熱電対を付勢して被検出物に押し当てる熱電対の先端を保護管の開口から突出せしめ、この熱電対の先端を被検出物に押し当ててスプリングを圧縮せしめることにより保護管の開口まで押し込むものにおいて、スプリングをバイメタルや形状記憶合金等の温度に応じて変形する温度応動部材により形成し、熱電対先端の保護管開口からの突出量を高温時よりも低温時に小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、スプリングをバイメタルや形状記憶合金等の温度に応じて変形する温度応動部材により形成し、熱電対先端の保護管開口からの突出量を高温時よりも低温時に小さくすることにより、長期に渡って熱電対の先端を変形損傷させることがないという優れた効果を生じる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の温度センサは、スプリングをバイメタルや形状記憶合金等の温度に応じて変形する温度応動部材により形成し、熱電対先端の保護管開口からの突出量を高温時よりも低温時に小さくするものである。そのため、スチームトラップが復水を排出したり蒸気を逃がしたりしている高温時は熱電対先端の保護管開口からの突出量が大きく、熱電対を所定以上の力で被検出物に押し当てることができ、スチームトラップが復水排出機能を喪失して詰まっている低温時は熱電対先端の保護管開口からの突出量が小さく、熱電対を所定以下の力で被検出物に押し当てることができる。そのため、復水排出機能を喪失したスチームトラップを多数含む多数の被検出物の振動を検出しても長期に渡って熱電対の先端を変形損傷させることがない。
【実施例1】
【0008】
上記の技術的手段の具体例を示す実施例を説明する(図1参照)。本実施例は本発明による温度センサを振動センサに組合せたものである。下部に小径の雄ねじが形成された振動検出針1に、雌ねじが形成された振動伝達板2がねじ結合され、大径部下面に振動伝達板2の上面が当接している。振動伝達板2の下側には上電極板3と圧電素子4と下電極板5とウエイト6とが順次挿入され、ナット7で夫々接触せしめられて振動検出針1に固定されている。振動検出針1と振動伝達板2はステンレス鋼で形成され、上下電極板3,5はリン青銅で形成され、ウエイト6はジルコニアセラミックで形成される。振動検出針1と振動伝達板2と上電極板3と圧電素子4と電極板5とウエイト6とから振動センサの振動検出ユニットが形成される。
【0009】
振動検出ユニットは、振動伝達板2の上面とウエイト6の下面が、手前から向う側へ切込みが設けられた上壁と、上壁の向う側の端から下方へ更に手前側へ延びた二股のばね部とから成るスイッチ金具9に挟まれて保持され、スイッチ金具9のばね部によって上方へ付勢されることによって、振動伝達板2の上面がスイッチ金具9の上壁下面に当接されている。またスイッチ金具9は、上壁から下方に延びた両側の2つの側壁を有し、この側壁と上壁とがケーシング10の内部壁で保持されることによって、振動検出ユニットがケーシング10に取付けられている。ケーシング10は紙面の向う側と手前側の2つのケーシング部材から形成され、テーパーねじ11,12によって連結されている。スイッチ金具9はステンレス鋼で形成され、ケーシング10はPEEKで形成されている。上下電極板3,5からの導線(図示せず)は信号処理回路13の端子14,15へ結線されている。
【0010】
クロメルとアルメルの長い薄板から成る熱電対線16a,16bは、夫々の上端が内側へ曲げられ、曲げられた部分の上下に中央に孔を有する円板状で周囲に下方に伸びた4つの足を有する接触板17と中央に孔を有する円板状の保護板18とが溶接によって固定されている。熱電対線16a,16bと接触板17と保護板18とから熱電対が形成される。熱電対の内側に位置する中空円筒の断熱管19は、上部の小径部と下部の大径部とその中間の長い中径部とから成り、中径部には上端と下端を残して、中空部の径とほぼ同じ幅で中空部を介して連通する2つの窓20a,20bが両側に形成され、両窓20a,20bの上側の残された部分は夫々垂直にカットされ、また両窓20a,20bの下側の残された部分は上に向かって内向きにカットされている。
【0011】
熱電対は、熱電対線16a,16bが断熱管19の小径部の外側から窓内そして大径部の外側から下面を通って大径孔に巻込まれ、大径孔に圧入されたリング22によって固定されている。熱電対線16a,16bの窓内に位置する部位は夫々予め内側に曲げられた弾性変形部23a,23bとして形成されている。断熱管19の小径部及び中径部の外側には中径部の外径よりも僅かに大きな内径を有する保護管24が挿入されている。保護管24は断熱管19の中径部の側面の下端に形成された点線で示す突起25に嵌め合されて抜出しが防止されている。断熱管19と保護板18の間に熱電対を保護管24の軸方向に変位させるスプリングとしてのコイル形状の形状記憶合金で作った温度応動部材8を配置する。形状記憶合金8の一端は断熱管19に固定し他端は保護板18に固定する。形状記憶合金8は温度に応じて変形し、所定温度例えば60度以下であれば母相からマルテンサイト相にマルテンサイト変態して予め縮み記憶させておいた短い形状に変形し、熱電対の先端の接触板17を保護管24の開口32から少し突出させ、所定温度以上になればマルテンサイト相から母相に逆変態して伸び記憶させておいた長い形状になり、熱電対の先端の接触板17を保護管24の開口32から大きく突出させる。熱電対と形状記憶合金8と断熱管19とリング22と保護管24とから温度センサの測温ユニットが形成される。接触板17と保護板18と保護管24はステンレス鋼で形成され、断熱管19はPEEKで形成され、リング22はベークライトで形成されている。熱電対線16a,16bは、接触板17の足の下端に面する部位から断熱管19の大径部の上部に面する部位まで絶縁被覆している。
【0012】
測温ユニットが振動検出針1に通され、ケーシング10の上端開口から挿入される。断熱管19の大径部の外側に位置する熱電対線16a,16bの部位が信号処理回路13の端子26,27に結線された熱電対接点28,29に接触して結線されている。テーパーねじ11,12に対応するケーシング10のねじ孔の周囲には夫々上下に切割りが設けられ、テーパーねじ11,12がねじ込まれることによって夫々の切割りの内側部分30,31が内向きに変形される。これによって熱電対線16a,16bと熱電対接点28,29が強固に圧接せしめられると共に測温ユニットがケーシング10に固定される。テーパーねじ11,12が付勢手段を構成し、このテーパーねじ11,12を緩めることによって、測温ユニットをケーシング10から引抜くことができる。
【0013】
次に本実施例の温度センサ付き振動センサの作用について説明する。振動検出針1の先端を被検出物としてのスチームトラップの表面に押し当て、スイッチ金具9のばね部の弾性力に抗して保護管24の開口32の上面まで押し込む過程で、熱電対の先端の接触板17をスチームトラップの表面に押し当てて形状記憶合金8を圧縮せしめることにより保護管24の開口32の上面まで押し込む。スチームトラップの機械的振動が振動検出針1を通して振動伝達板2に伝わり、圧力変動として圧電素子4に作用する。これに応じて圧電素子4に電圧変動が生じる。この電圧変動は電極板3,5から導線を介して信号処理回路13の端子14,15に送られ、信号処理回路13で増幅され検波されると共に平均値やピーク値等に演算されて、表示部(図示せず)に表示される。一方スチームトラップの温度信号が接触板17を介して熱電対線16a,16bによって検出され、熱電対接点28,29を介して信号処理回路13の端子26,27に送られ、増幅されて表示部に表示される。
【0014】
スチームトラップが復水を排出したり蒸気を逃がしたりしていると高温であり、温度応動部材8が熱電対の先端の接触板17を保護管24の開口32から大きく突出させようとするので、熱電対が所定以上の力でスチームトラップに押し当てられる。スチームトラップが復水排出機能を喪失して詰まっていると低温であり、温度応動部材8が熱電対の先端の接触板17を保護管24の開口32から小さく突出させようとするので、熱電対が所定以下の力でスチームトラップに押し当てられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による実施例の温度センサを振動センサに組合せた温度センサ付き振動センサの断面図である。
【符号の説明】
【0016】
8 形状記憶合金
16a,16b 熱電対線
17 接触板
19 断熱管
24 保護管
32 保護管の開口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電対を軸方向に変位自在に保護管に取り付け、スプリングで熱電対を付勢して被検出物に押し当てる熱電対の先端を保護管の開口から突出せしめ、この熱電対の先端を被検出物に押し当ててスプリングを圧縮せしめることにより保護管の開口まで押し込むものにおいて、スプリングをバイメタルや形状記憶合金等の温度に応じて変形する温度応動部材により形成し、熱電対先端の保護管開口からの突出量を高温時よりも低温時に小さくすることを特徴とする温度センサ。


【図1】
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【公開番号】特開2008−170388(P2008−170388A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6084(P2007−6084)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】