説明

温度センサ

【課題】測定子とリード線との接続部の過熱防止を図りながら、小型化や測定子の耐久性の向上が可能な温度センサを提供する。
【解決手段】鋳造品を成形する金型2の被測定部位3の温度を測定する温度センサ1は、金型2に取り付けられる取付部11を有するボディ10と、被測定部位3の温度を測定する測温部31aを有すると共に、ボディ10の内部に形成された収納空間14と金型2とに渡って延びて配置されるシース31と、収納空間14内でシース31と接続されると共に、収納空間14からボディ10の外部に延びているリード線32と、ボディ10と非接触状態で収納空間14内に配置されると共に、シース31とリード線32との接続部34を収納する収納体33と、収納空間14内に配置されると共に、シース31を押圧して測温部31aを被測定部位3に当接させるスプリング35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気温度よりも高温の測定対象物の温度を測定する温度センサに関し、該温度センサは、例えば成形品の成形工程(例えば鋳造)で使用される金型などの成形型の温度を測定するために使用される。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の部品、例えばシリンダヘッドなどの成形品を鋳造により成形する場合、成形精度を高めるためや鋳造欠陥の発生を防止するために、成形材料である金属の溶湯が鋳型である金型により形成されるキャビティ内で円滑に流動するように、金型の温度を管理することが重要になる。そこで、この温度管理を行うために、測定対象物としての金型の温度を測定する温度センサが使用され、該温度センサは金型に取り付けられる。
【0003】
そして、測定対象物に取り付けられる温度センサとして、測定対象物に取り付けられる取付具と、被測定部位の温度を測定する測温部を有する測定子と、測定子が測定対象物の被測定部位に当接するように該測定子を押圧する付勢部材と、測定子に接続されるリード線と、測定子とリード線との接続部を収納するコネクタハウジングとを備え、該コネクタハウジングが測定対象物を囲む周囲空間に配置されたものが知られている。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2512051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した構造の温度センサが、鋳造に使用される金型のように、測定対象物を囲む周囲空間の雰囲気温度よりも高温の測定対象物の温度測定に使用される場合、測定対象物からの放熱により加熱されるコネクタハウジング内で測定子とリード線との接続部が過熱状態になって、測定精度が低下することを防止するために、コネクタハウジングは測定対象物から遠ざけられて配置されるので、測定子の長さが長くなって、温度センサが大型化する。
【0006】
また、測定子の長さが長くなると、付勢部材により押圧されていることや、測定対象物に取り付けられる取付具とコネクタハウジングとの間隔が大きくなることなどにより、測定子が屈曲し易くなる。そして、取付具と測温部との間で、測定子が測定対象物により屈曲が制限されにくい比較的広い空間に配置される場合には、付勢部材により押圧されることにより、大きく屈曲することがある。しかしながら、メンテナンスなどにより取り外された温度センサが再び取り付けられるとき、屈曲部を伸展させて直線状にした状態で使用されるので、温度センサの着脱の度に測定子の曲折および伸展が繰り返されて、測定子の耐久性を低下させる原因になる。
さらに、測定子を被測定部位に当接させるために付勢部材により測定子を押圧するには、付勢部材がその付勢力を作用させる部材を測定子に取り付ける必要があるので、部品点数が増加して、温度センサのコストを増加させる原因になる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、測定子とリード線との接続部の過熱防止を図りながら、小型化や測定子の耐久性の向上が可能な温度センサを提供することを目的とする。
そして、本発明は、さらに、測定子とリード線との接続部を収納する収納体を介して測定子を押圧することにより、温度センサのコスト削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、測定対象物(2)が置かれる周囲空間(8)における雰囲気温度よりも高温の前記測定対象物(2)における被測定部位(3)の温度を測定する温度センサにおいて、前記測定対象物(2)に取り付けられる取付部(11)を有すると共に、前記周囲空間(8)に配置されるボディ(10)と、前記被測定部位(3)の温度を測定する測温部(31a)を有すると共に、前記ボディ(10)の内部に形成された収納空間(14)と前記測定対象物(2)とに渡って延びて配置される測定子(31)と、前記収納空間(14)内で前記測定子(31)と接続されると共に、前記収納空間(14)から前記ボディ(10)の外部に延びているリード線(32)と、前記ボディ(10)と非接触状態で前記収納空間(14)内に配置されると共に、前記測定子(31)と前記リード線(32)との接続部(34)を収納する収納体(33)と、前記収納空間(14)内に配置されると共に、前記測定子(31)を押圧して前記測温部(31a)を前記被測定部位(3)に当接させる付勢部材(35)とを備える温度センサである。
【0009】
これによれば、測定子とリード線との接続部を収納する収納体は、ボディの内部の収納空間内に配置され、しかもボディに対して接触しない状態で配置されるので、ボディから収納体への接触による伝熱が防止されるので、測定対象物からの伝熱(熱放射も含む。)による前記接続部の加熱が抑制される。このため、接続部および収納体を測定対象物に近づけて配置して、測定子の長さを短くした場合にも、接続部の過熱を防止できるので、接続部が過熱状態になることに起因する測温精度の低下を防止できる。この結果、接続部の過熱を防止しながら、測定子の長さを短くできるので、温度センサの小型化が可能になり、さらに測定子を屈曲しにくくすることができて、測定子の耐久性の向上が可能になる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の温度センサにおいて、前記付勢部材(35)は、前記収納体(33)に保持された前記測定子(31)を、前記収納体(33)を介して押圧することにより、前記測温部(31a)を前記被測定部位(3)に当接させるものである。
これによれば、接続部を収納する収納体を利用して、付勢部材の付勢力を該収納体に作用させることにより、付勢部材が測定子を押圧する。この結果、付勢部材の付勢力を測定子に作用させるための専用の部材が不要になるので、温度センサの部品点数の削減によるコスト削減が可能になり、また温度センサを小型化できる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の温度センサにおいて、前記収納体(33)に保持される前記付勢部材(35)は、前記収納体(33)が前記ボディ(10)に接近する方向に移動したとき、前記収納体(33)よりも先に前記付勢部材(35)が前記ボディ(10)に接触する大きさであるものである。
これによれば、収納体がボディに接近する方向に移動したとき、収納体に保持された付勢部材が収納体よりも先にボディに接触することにより、収納体がボディに接近する動きを抑制できるので、ボディに対して収納体を非接触状態に維持するための安定性が向上する。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の温度センサにおいて、前記ボディ(10)には、前記取付部(11)と前記収納空間(14)との間の外周面部分(17a)に、前記外周面部分(17a)の面積を増加させる放熱面積増加手段(19)が設けられているものである。
これによれば、放熱面積増加手段により、取付部を通じての伝熱や放射熱により収納空間を形成するボディへの伝熱量が低減する。この結果、ボディおよび収納空間の温度上昇が抑制されるので、収納体および接続部の過熱を防止できる。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の温度センサにおいて、前記放熱面積増加手段(19)は、複数の溝(21〜24)であり、前記複数の溝(21〜24)の溝径(d)は、前記取付部(11)に近い溝ほど大きくなり、前記取付部(11)は、前記ボディ(10)を回動させることにより前記測定対象物(2)に螺合するものである。
これによれば、取付部に近い溝ほど溝径が大きいので、取付部を測定対象物に螺合させるためにボディを回動させるときの捩り剛性を高めることができて、測定対象物に着脱される温度センサの耐久性が向上する。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項記載の温度センサにおいて、前記測定子(31)は、前記ボディ(10)に収納される内側部分(31i)と、前記ボディ(10)の外部に露出する外側部分(31o)とに二分され、前記ボディ(10)が前記測定対象物(2)に取り付けられた状態で、前記外側部分(31o)の長さは前記内側部分(31i)の長さよりも短いものである。
これによれば、外側部分の長さが内側部分の長さよりも短いので、付勢部材に押圧されている測定子に曲折が発生しにくくなり、測定子の耐久性が向上する。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項記載の温度センサにおいて、前記測定対象物(2)は、溶融した成形材料から成形品を成形する金型(2)であるものである。
これによれば、金型の温度を測定する温度センサにおいて、請求項1〜7のいずれか1項記載の発明の効果が奏される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定子とリード線との接続部の過熱防止を図りながら、小型化や測定子の耐久性の向上が可能な温度センサが得られる。
本発明によれば、さらに、測定子とリード線との接続部を収納する収納体を介して測定子を押圧することにより、温度センサのコスト削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態である温度センサを示し、(a)は、図2のI−I線断面図であり、(b)は、(a)のb部分の拡大図である。
【図2】図1のII矢視での拡大図である。
【図3】図1のIII−III線での拡大断面図であり、シースは模式的に示される。
【図4】図1のIV−IV線での拡大断面図であり、リード線および収納体は模式的に示される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4を参照して説明する。
図1を参照すると、本発明の実施形態である温度センサ1は、機械である内燃機関の構成部品を、成形品である鋳造品として、成形加工としての鋳造により成形する鋳型である金型2に取り付けられる。
前記構成部品は、成形材料としての金属、ここでは軽金属(例えば、アルミニウム合金)から形成されるシリンダヘッドであり、金属加工としての鋳造、たとえば低圧鋳造により成形される。
【0019】
成形型としての金型2には、該金型2により形成されるキャビティ(図示されず)に高温(例えば、約650°C)の溶融した材料である溶湯が供給され、金型2の温度は、金型2が置かれる空間である周囲空間8の雰囲気温度よりも高い温度(例えば、約420°)まで上昇する。
【0020】
金型2における被測定部位3の温度を測定する温度センサ1は、金型2に取り付けられる取付部11を有するボディ10と、ボディ10に装着されるセンサ部30とを備える。
熱絶縁材料よりも熱伝導率が大きい材料、例えば金属から形成される単一の部材であるボディ10は、直線である中心軸線Lbを有する軸状または柱状の部材であり、小径部から構成される取付部11のほかに、取付部11の外径よりも大きな外径の大径部から構成される本体部12を有する。本体部12は、ボディ10が金型2に取り付けられた状態で周囲空間8に露出している。
【0021】
本体部12は、後記溝群20以外の部分である主要部12aの全体が中心軸線Lbを有する角柱状、ここでは六角柱状に形成された部材(図2〜図4参照)であり、中心軸線Lbに直交する平面での断面形状が同一である。そして、主要部12aの全体が、ボディ10を取付部11で金型2に螺合させて取り付ける際にボディ10を回動させる工具である締付用工具(例えば、スパナ)が係合される工具用係合部となっている。
これにより、ボディ10における前記締付用工具の係合位置の自由度が大きくなり、取付部11の周辺に配置される部材による前記締付用工具の操作に対する制約が小さくなって、温度センサ1の取付性が向上する。なお、別の例として、本体部12の一部が工具用係合部であってもよい。
【0022】
金型2には、取付部11が挿入される取付孔5aと、該取付孔5aに連なると共にセンサ部30のシース31が挿入される挿入孔5bとから構成される有底の孔5が設けられる。また、金型2は、本体部12が軸線方向で突き当てられることにより、ボディ10の位置決めをする当接面6を有する。
【0023】
なお、実施形態において、軸線方向は、中心軸線Lbに平行な方向であり、この実施形態では中心軸線Lbに沿って長細いボディ10の長手方向でもある。また、径方向および周方向は、それぞれ中心軸線Lbを中心とする径方向および周方向であるとする。
【0024】
当接面6に開口する取付孔5aを形成する被取付部4には、取付部11の外周に設けられた雄ネジ部が螺合する雌ネジ部が内周に設けられる。挿入孔5bは、取付孔5aから被測定部位3にまで達する直線状の孔である。
そして、取付部11が被取付部4の雌ネジ部に螺合することで、ボディ10が金型2に着脱可能に取り付けられる。被取付部4にボディ10が取り付けられた状態で、取付孔5aおよび挿入孔5bは、中心軸線Lb上に位置し、そして挿入孔5bは後記挿通空間13の延長上にその全体が位置し、さらに取付孔5aおよび挿入孔5bの中心線が中心軸線Lbに一致する。
【0025】
ボディ10は、その内部に、本体部12において互いに連なる挿通空間13および収納空間14を形成している。挿通空間13および収納空間14は、それぞれ軸線方向で一定の径を有する円柱状の孔15,16から構成されて中心線Laを共有し、該中心線Laは中心軸線Lbに一致する。そして、収納空間14は挿通空間13よりも大径の空間である。別の例として、挿通空間13および収納空間14が中心線を共有していなくてもよい。
挿通空間13は、取付部11および本体部12に渡って軸線方向に平行に延びていて、その一端部でボディ10における軸線方向での両端面11e,12eのうちの取付部側端面11eに開口し、他端部で収納空間14に開口する。挿通空間13の径はシース31の外径の2倍未満である。
孔16は、本体部12において軸線方向に平行に延びていて、その一端部で挿通空間13に連なり、他端部で本体部側端面12eに開口する。
【0026】
本体部12において、軸線方向で取付部11と収納空間14との間の部分である取付部寄り部分12bには、挿通空間13が設けられ、しかも金型2から伝達および放射された熱の放熱を促進する放熱部19が設けられる。放熱部19は、該放熱部19の外周面の面積を増加させる放熱面積増加手段である。該放熱面積増加手段は、1以上の、ここでは軸線方向に間隔をおいて設けられた複数としての4つの溝21〜24から構成される溝群20で構成される。各溝21〜24は、周方向に延びている環状溝であり、外周面の全周に渡って連続して形成されている。なお、溝群20を構成する溝の数は、後記接続部34の温度が許容温度を超えないようにするために、放熱部19での放熱量による調整が可能な範囲で、適宜設定される。
【0027】
本体部12の外周面17は、少なくとも取付部寄り部分12bの外周面部分17aにおいて溝21〜24以外の部分では同一の外径を有し、この実施形態では、溝21〜24以外の任意の部分(すなわち、前記主要部12aでの外周面全体)で同一の外径を有する。
【0028】
図1,図3を参照すると、溝21〜24のそれぞれにおいて、軸線方向での溝幅Aは周方向で同一であり、軸線方向で隣接する溝21,22;22,23;23,24の溝間隔Bは、周方向で同一である。別の例として、溝間隔Bが、軸線方向で取付部11に近い溝間隔Bほど大きくなり、溝21,22間の溝間隔Bが最も大きく、溝23,24間の溝間隔Bが最も小さくてもよい。
また、溝群20において、溝の深さは、軸線方向で取付部11に近い溝ほど浅くなり、溝21が最も浅く、溝24が最も深い。そして、各溝21〜24の底面21a〜24aの径である溝径dまたは中心軸線Lbからの最小距離は、軸線方向で取付部11に近い溝ほど大きくなり、溝21が最も大きく、溝24が最も小さい。各底面21a〜24aは、中心軸線Lbを中心とする円柱面である。さらに、溝幅Aは、軸線方向で取付部11い近いほど小さくなり、溝21が最も狭く、溝24が最も広い。
【0029】
そして、溝群20において、軸線方向で収納空間14から取付部11に向かって、取付部11に近い溝ほど、溝径dが大きくなること、溝の深さが浅くなること、溝幅Aが小さくなること、および、溝間隔Bが大きくなることは、いずれも、溝群20が設けられたボディ10を金型2に螺合させるときの締付トルクに対するボディ10の捩り剛性の向上に寄与する。
【0030】
図1,図2を参照すると、センサ部30は、被測定部位3の温度を測定する測温部31aを有すると共に収納空間14と金型2とに渡って延びて配置される測定子としてのシース31と、収納空間14内でシース31に接続されると共に収納空間14からボディ10の外部である周囲空間8に導出されるリード線32と、ボディ10と非接触状態で収納空間14内に配置されると共にシース31とリード線32との接続部34を収納する収納体33と、収納空間14内に配置されると共に収納体33を押圧する付勢部材としてのスプリング35と、リード線32が挿通されると共にスプリング35を支持すべく本体部12に取り付けられる保持部材36とを備える。
保持部材36は、収納空間14を構成する孔16の端部16bにおいて、リード線32が貫通する部分を除いて、少なくとも収納空間14を部分的に塞ぐ蓋部材でもある。
【0031】
シース31は、測温素子としての熱電対31b(図1(b)参照)を収納して保護する金属製の保護管であり、比較的容易に屈曲させることが可能な棒状部材である。そして、シース31は、高温時には、スプリング35のスプリング力によっても屈曲し得る。
シース31の先端部は、被測定部位3と当接して該被測定部位3の温度を測定する測温部31aを構成し、収納体33に固定されて保持される基端部は、収納体33の内部においてリード線32と接続される接続部34を構成する。したがって、温度センサ1は、熱電対を使用した温度センサである。
【0032】
シース31は、ボディ10に収納される内側部分31iと、ボディ10の外部に露出する外側部分31oとに二分され、ボディ10が金型2に取り付けられた状態で外側部分31oの長さは内側部分31iの長さよりも短い。そして、温度センサ1が金型2に取り付けられた状態で、外側部分31oは金型2内に配置される。
【0033】
接続部34は、シース31が接続されたコネクタおよびリード線32が接続されたコネクタが互いに接続されて構成されるコネクタ体であり、収納体33に保持されることで、収納体33内に配置される。そして、これによって、シース31およびリード線32が収納体33に取り付けられる。なお、別の例として、接続部34が、シース31とリード線32とが直接接続された箇所が電気絶縁材料からなる絶縁体内に埋設されて構成されて、収納体33に保持されてもよい。
【0034】
収納体33は、軸線方向に延びている筒状、ここでは円筒状のスリーブを形成する周壁33wと、軸線方向で周壁33wを閉塞する両端部壁33a,33bとを有する部材である。図1に示されるように、取付部11側の端部33aからは収納体33内に位置する接続部34から延びているシース31が延出し、取付部11とは反対側の端部33bからは接続部34から延びているリード線32が延出している。そして、端部33bには、スプリング35の一方の端部35aが当接した状態で収納体33に保持される。
【0035】
図1,図4を参照すると、収納体33の外径は、スプリング35の最大外径よりも小さい。そして、中心軸線Lb上にシース31、収納体33およびスプリング35が整列して配置された状態で、収納体33はスプリング35およびシース31により支持されることにより、温度センサ1が金型2に取り付けられた状態において、収納体33の全体と本体部12との間には、径方向および軸線方向での環状の空隙Cが形成されて、収納体33が本体部12と非接触状態となるように保持される。
【0036】
そして、収納体33が本体部12内に、本体部12とは非接触状態で配置されることにより、収納体33が周囲空間8に露出して配置される場合に比べて、金型2からの伝熱(熱放射も含む。)による加熱が抑制されて、その温度上昇を抑制できるので、収納体33が金型2により近づけて配置される場合にも、接続部34が過熱状態になることが防止される。
【0037】
スプリング35は、軸線方向で収納体33と保持部材36との間に配置されて、軸線方向での両端部35a,35bにおいて収納体33および保持部材36にそれぞれ当接すると共に径方向への移動が規制された状態で保持される。そして、スプリング35は、収納体33に取り付けられて保持されたシース31を、収納体33を介して押圧することにより、測温部31aを被測定部位3に当接させる。
【0038】
収納体33および保持部材36に保持されるスプリング35の外形形状は、収納体33が収納空間14の周壁(すなわち、本体部12の内周壁)12cに接近する方向に移動したとき、収納体33よりも先にスプリング35がボディ10に接触する大きさである。
具体的には、スプリング35の最大外径は、収納体33と本体部12との接触を防止すべく、収納体33の外径よりも大きく設定される。そのために、最大外径は、例えば、スプリング35と収納空間14の周壁12cとの間に径方向(または収納体33が周壁12cに近づく方向)での所定間隔が形成されるように、例えば収納空間14の径よりも僅かに小さく設定される。そして、該所定間隔は、収納体33が径方向に移動して周壁12cに接触しようとする動きが発生したとき、収納体33に保持されたスプリング35が先に周壁12cに当接することで、収納体33が本体部12に接触することが防止される大きさに設定される。これにより、収納体33が本体部12に接触することを防止することができて、本体部12に対する収納体33の非接触状態が維持される。
【0039】
リード線32は、収納空間14内において、圧縮スプリング35であるコイルスプリング35からなるスプリング35に囲まれて該スプリング35の内側に配置される。本体部12から導出されたリード線32は、測定された温度を表示または信号とする受信装置(図示されず)に接続される。
【0040】
図1,図2を参照すると、保持部材36は、本体部12の端部に設けられたネジ部である雌ネジ部に螺合するネジ部である雄ネジ部が設けられた軸部36aと、工具用係合部である頭部36bと、スプリング35の端部35bを保持する保持部36cとを有し、軸部36a、頭部36bおよび保持部36cが一体成形されて一体化された部材である。
【0041】
リード線32が挿通されて該リード線32をボディ10の外部に導出すべく保持部材36に形成された導出空間36eは、保持部材36を軸線方向に貫通する貫通孔から構成される。導出空間36eは、保持部36cに当接するスプリング35の内側に開口すると共に収納空間14と中心線を共有する。
導出空間36eの径は、径方向でのリード線32の移動を規制して、リード線32が径方向に移動するときの移動量を極力小するために、リード線32の外径よりも僅かに大きく設定され、例えばリード線32の外径の2倍未満に設定される。
【0042】
保持部材36は、六角柱形状の頭部36bに係合される工具により、本体部12にねじ込まれて固定される。頭部36bと本体部12の端面12eとの間に環状の間隔調整部材(例えば、シム)を介在させて、軸線方向で本体部12に対する保持部材36の位置を調整することによりスプリング35によるシース31の付勢力であるスプリング力を調整することができる。
【0043】
シース31と収納体33とリード線32とは、互いに接続されて一体化され、スプリング35および保持部材36は、リード線32に挿入されることで、センサ部30が1つのユニットを構成する。このため、温度センサ1において、金型2に取り付けられた状態のボディ10に対して、センサ部30のみを着脱することができる。
【0044】
そして、温度センサ1は例えば以下のようにして、金型2に取り付けられる。
先ず、本体部12に係合させた工具により、取付部11を被取付部4に螺合させることで、温度センサ1においてボディ10のみが金型2に取り付けられる。次いで、ユニット化されたセンサ部30が、孔16の端部16bから、シース31、収納体33、スプリング35および保持部材36の順で収納空間14に挿入される。このセンサ部30の挿入過程で、直線状の形状にされているシース31が、収納空間14から挿通空間13に該挿通空間13の周壁に案内されつつ挿入され、さらに挿通空間13から金型2の挿入孔5bに該挿入孔5bの周壁に案内されつつ挿入される。
そして、保持部材36が、工具により本体部12の端部に螺合されて、ボディ10に対するセンサ部30の装着が完了して、金型2への温度センサ1の取付が完了する。
この状態で、シース31は、収納体33を介してスプリング35により押圧されて、測温部31aが被測定部位3に当接して、金型2の温度測定が可能になる。
【0045】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
溶湯から鋳造品を成形する金型2の被測定部位3の温度を測定する温度センサ1は、金型2に取り付けられる取付部11を有すると共に周囲空間8に配置されるボディ10と、被測定部位3の温度を測定する測温部31aを有すると共に、ボディ10の内部に形成された収納空間14と金型2とに渡って延びて配置されるシース31と、収納空間14内でシース31と接続されると共に、収納空間14からボディ10の外部に延びているリード線32と、ボディ10と非接触状態で収納空間14内に配置されると共に、シース31とリード線32との接続部34を収納する収納体33と、収納空間14内に配置されると共に、シース31を押圧して測温部31aを被測定部位3に当接させるスプリング35とを備える。
この構造により、シース31とリード線32との接続部34を収納する収納体33は、ボディ10の内部の収納空間14内に配置され、しかもボディ10に対して接触しない状態で配置されるので、ボディ10から収納体33への接触による伝熱が防止されるので、金型2からの伝熱(熱放射も含む。)による接続部34の加熱が抑制される。このため、接続部34および収納体33を金型2に近づけて配置して、シース31の長さを短くした場合にも、接続部34の過熱を防止できるので、接続部34が過熱状態になることに起因する測温精度の低下を防止できる。この結果、接続部34の過熱を防止しながら、シース31の長さを短くできるので、温度センサ1の小型化が可能になり、さらにシース31を屈曲しにくくすることができて、シース31の耐久性の向上が可能になる。
【0046】
スプリング35は、収納体33に保持されたシース31を収納体33を介して押圧することにより、測温部31aを被測定部位3に当接させるので、接続部34を収納する収納体33を利用して、スプリング35の付勢力を該収納体33に作用させることにより、スプリング35がシース31を押圧する。この結果、スプリング35の付勢力をシース31に作用させるための専用の部材が不要になるので、温度センサ1の部品点数の削減によるコスト削減が可能になり、また温度センサ1を小型化できる。
【0047】
収納体33に保持されるスプリング35は、収納体33がボディ10に接近する方向に移動したとき、収納体33よりも先にスプリング35がボディ10に接触する大きさである。この構造により、収納体33がボディ10に接近する方向に移動したとき、収納体33に保持されたスプリング35が収納体33よりも先にボディ10に接触することで、収納体33がボディ10に接近する動きを抑制できるので、ボディ10に対して収納体33を非接触状態に維持するための安定性が向上する。
【0048】
ボディ10には、取付部11と収納空間14との間の外周面部分17aに、外周面部分17aの面積を増加させる放熱面積増加手段である放熱部19が設けられている。このため、該放熱部19により、取付部11を通じての伝熱や放射熱により収納空間14を形成するボディ10への伝熱量が低減する。この結果、ボディ10および収納空間14の温度上昇が抑制されるので、収納体33および接続部34の過熱を防止できる。
【0049】
取付部11は、ボディ10を回動させることにより金型2に螺合し、放熱部19は、溝群20を構成する複数の溝21〜24であり、複数の溝21〜24について、軸線方向で取付部11に近い溝ほど、溝径dが大きくなること(この実施形態では、溝の深さが浅くなることと同義である。)、または、溝幅Aが小さくなること、または、溝間隔Bが大きくなることにより、取付部11を金型2に螺合させるためにボディ10を回動させるときの捩り剛性を高めることができて、金型2に着脱される温度センサ1の耐久性が向上する。
また、溝の深さは、取付部11から収納空間14に近づくほど深くなるので、その分、放熱面積が増加して、放熱量が増加する。この結果、ボディ10および収納空間14の温度上昇が抑制されるので、収納体33および接続部34の過熱を防止できる。
【0050】
シース31は、ボディ10に収納される内側部分31iと、ボディ10の外部に露出する外側部分31oとに二分され、ボディ10が金型2に取り付けられた状態で、外側部分31oの長さは内側部分31iの長さよりも短いことにより、外側部分31oの長さが短いので、スプリング35に押圧されているシース31に曲折が発生しにくくなり、シース31の耐久性が向上する。
【0051】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
ボディ10は、複数の部材が結合されて一体に構成されてもよい。
収納体33は、ボディ10と収納体33との間に介在する熱絶縁材料からなる部材に支持されて、ボディ10と非接触状態で収納空間14内に配置されてもよい。
溝群2を構成する溝は、環状溝の代わりに、軸線方向において平行または螺旋状に延びている軸方向溝であってもよく、さらに環状溝および軸方向溝の組合せであってもよい。
放熱部19を構成する放熱面積増加手段は、径方向で外方に突出する1以上のフィンであってもよく、また該フィンと溝との組合せであってもよい。
成形加工は、樹脂加工であり、成形型は、成形材料としての樹脂から成形品を成形する金型であってもよい。
溝群20を構成する複数の溝の深さは、取付部11に近づくほど深くなるように設けられてもよく、この場合には、取付部寄り部分12bにおいて、金型2に近いために比較的温度が高い部分での表面積が大きくなるので、放熱量を多くすることができる。また、この場合、前記締付用工具は、軸線方向で取付部11に最も近い溝と、取付部11の間で係合することが望ましい。
シース31は、外側部分31oが内側部分31iよりも長いものであってもよい。
シース31は、熱電対31b以外の測温素子(例えば、抵抗体)を収納したシースであってもよく、金属製の保護管を備えていないものであってもよい。
測定対象物は、金型2以外の鋳型であってもよく、樹脂加工で使用される金型であってもよい。また、測定対象物は、成形加工に使用されるもの以外の物であってもよく、さらにその温度が、成形加工で使用される成形型よりも低温または高温の物であってもよい。
成形品は、内燃機関以外の機械の構成部品であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 温度センサ
2 金型
3 被測定部位
8 周囲空間
10 ボディ
11 取付部
14 収納空間
19 放熱部
21〜24 溝
30 センサ部
31 シース
31a 測温部
32 リード線
33 収納体
34 接続部
35 スプリング
36 保持部材
A 溝幅
d 溝径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物が置かれる周囲空間における雰囲気温度よりも高温の前記測定対象物における被測定部位の温度を測定する温度センサにおいて、
前記測定対象物に取り付けられる取付部を有すると共に、前記周囲空間に配置されるボディと、
前記被測定部位の温度を測定する測温部を有すると共に、前記ボディの内部に形成された収納空間と前記測定対象物とに渡って延びて配置される測定子と、
前記収納空間内で前記測定子と接続されると共に、前記収納空間から前記ボディの外部に延びているリード線と、
前記ボディと非接触状態で前記収納空間内に配置されると共に、前記測定子と前記リード線との接続部を収納する収納体と、
前記収納空間内に配置されると共に、前記測定子を押圧して前記測温部を前記被測定部位に当接させる付勢部材と、を備えることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記収納体に保持された前記測定子を、前記収納体を介して押圧することにより、前記測温部を前記被測定部位に当接させることを特徴とする請求項1記載の温度センサ。
【請求項3】
前記収納体に保持される前記付勢部材は、前記収納体が前記ボディに接近する方向に移動したとき、前記収納体よりも先に前記付勢部材が前記ボディに接触する大きさであることを特徴とする請求項1または2記載の温度センサ。
【請求項4】
前記ボディには、前記取付部と前記収納空間との間の外周面部分に、前記外周面部分の面積を増加させる放熱面積増加手段が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項5】
前記放熱面積増加手段は、複数の溝であり、
前記複数の溝の溝径は、前記取付部に近い溝ほど大きくなり、
前記取付部は、前記ボディを回動させることにより前記測定対象物に螺合することを特徴とする請求項4記載の温度センサ。
【請求項6】
前記測定子は、前記ボディに収納される内側部分と、前記ボディの外部に露出する外側部分とに二分され、
前記ボディが前記測定対象物に取り付けられた状態で、前記外側部分の長さは前記内側部分の長さよりも短いことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の温度センサ。
【請求項7】
前記測定対象物は、溶融した成形材料から成形品を成形する金型であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の温度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−153954(P2011−153954A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16333(P2010−16333)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】