説明

温度分布監視システム

【課題】温度異常発生箇所を即座に識別すること。
【解決手段】監視装置であるパソコン100により、光ファイバ401の長手方向の全長に対し複数のゾーンに分割するための設定を受け付けて第2データベースに登録され、第1データベースに登録された温度分布データと第2データベースに登録された複数のゾーンとが対応付けられ、それぞれのゾーン毎に温度状況が監視されるようにした。また、温度分布測定装置400によって測定された温度分布データからいずれかのゾーンの温度が異常であれば、その異常のあったゾーンがルートマップに特定表示されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度センサとなる光ファイバを用いた温度分布監視システムに係り、特に温度異常発生箇所の識別に適した温度分布監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ファイバを温度センサとし、その光ファイバ中で発生するラマン散乱光を用いることで光ファイバの長手方向での温度分布を測定して監視する温度分布監視システムが知られている。
【0003】
このような温度分布監視システムでは、光ファイバを、たとえばプラント、トンネル、鉄道、その他構築物に長距離(たとえば10km程度)に亘って張りめぐらせておくことで、温度分布のモニタリングが可能となることから、火災、設備異常等の早期発見に効果が発揮されている。
【0004】
このような光ファイバを温度センサとし、光ファイバの長手方向での温度分布を測定するものとして、特許文献1に示されているような温度分布測定方法が知られている。
【0005】
これは、光ファイバに光結合される測定装置からの光パルスをその光ファイバに入射した後、演算表示装置によりストークス光及び反ストークス光の検出強度を、光ファイバの分光屈折率に応じたサンプリング間隔でサンプリングし、散乱点までの距離を求めて温度分布の測定が行われるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−26940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、光ファイバを用いた温度分布監視システムでは、連続で温度分布をモニタできることから、監視目的で使用するためには光ファイバ上の温度と実際の場所との温度を正確に一対一に対応させ、目標物との関係も明確にし、異常発生時には速やかに急行できるような仕組みを構築する必要ある。
【0008】
すなわち、たとえば光ファイバ上で1500m地点に異常温度が発生した場合でも、それはどの目標物付近で何処の入口から入って右方向に進んだ場所なのか、あるいは左方向に進んだ場所なのか、さらには何メートルの場所なのかというような明確な情報を得ることにより、初めて監視システムとしての機能を発揮するといえる。
【0009】
ところが、上述した特許文献1での温度分布測定方法では、演算表示装置から得られるものは距離情報と温度情報であり、温度異常発生箇所が光ファイバ上で何メートルであるとの情報は得られるが、実際の場所は何処であるのかを即座に認識することは困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、温度異常発生箇所を即座に識別することができる温度分布監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の温度分布監視システムは、光源から発した光パルスを光ファイバに入射し、該光パルスにより生じた後方散乱光である、反ストークス光とストークス光の光強度分布比により前記光ファイバの長手方向での温度分布測定を行う温度分布測定装置と、該温度分布測定装置によって測定された温度分布データを取得し、前記光ファイバの長手方向での温度分布を監視する監視装置とを備え、前記監視装置は、前記取得した温度分布データをデータベースに登録する手段と、前記光ファイバの長手方向に対し複数のゾーンに分割するための設定を受け付けて前記データベースに登録する手段と、前記データベースに登録された前記温度分布データと前記複数のゾーンとを対応付けて、それぞれのゾーン毎に温度状況を監視する手段とを備えることを特徴とする。
また、所定時間毎に前記温度分布データを取得し、該取得した温度分布データからそれぞれの前記ゾーンの温度状況を測定し、それぞれの前記ゾーンの測定データで前記データベースのそれぞれの前記ゾーンに対応する測定データを更新する手段とを備えるようにすることができる。
また、前記光ファイバ上の位置とルートマップ上の位置とを一対一に対応させるようにルートマップの作成を行う手段と、前記データベースに登録された前記複数のゾーンを前記ルートマップに付加する手段と、それぞれの前記ゾーンに対応する測定データと前記ルートマップに付加された前記複数のゾーンとからそれぞれのルートマップ上のゾーン毎に温度状況を監視する手段とを備えるようにすることができる。
また、前記それぞれのゾーン毎に温度に関する各種の設定条件を受け付けて前記データベースに登録する手段と、前記それぞれのゾーン毎に監視した温度状況が前記各種の設定条件から変化すると警報を発する手段とを備えるようにすることができる。
本発明の温度分布監視システムでは、監視装置により、光ファイバの長手方向の全長に対し複数のゾーンに分割するための設定を受け付けてデータベースに登録され、データベースに登録された温度分布データと複数のゾーンとが対応付けられ、それぞれのゾーン毎に温度状況が監視される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の温度分布監視システムによれば、監視装置により、光ファイバの長手方向の全長に対し複数のゾーンに分割するための設定を受け付けてデータベースに登録され、データベースに登録された温度分布データと複数のゾーンとが対応付けられ、それぞれのゾーン毎に温度状況が監視されるようにしたので、温度異常発生箇所を即座に識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の温度分布監視システムの一実施形態を説明するための図である。
【図2】図1の温度分布監視システムにおけるマップ作成指示制御部及び状態表示制御部の詳細について説明するための図である。
【図3】図1の温度分布監視システムにおける運用開始の概要について説明するためのフローチャートである。
【図4】図1の温度分布監視システムにおける設定条件等の一例について説明するための図である。
【図5】図1の温度分布監視システムにおける設定条件等の一例について説明するための図である。
【図6】図1の温度分布測定装置によって得られる温度分布の詳細を説明するための図である。
【図7】図1の温度分布測定装置から得られる測定データ等の一例について説明するための図である。
【図8】図7の測定データ等の一部のピックアップ表示を説明するための図である。
【図9】図1の温度分布監視システムにおけるルートマップ上の異常箇所を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の詳細について説明する。図1は本発明の温度分布監視システムの一実施形態を説明するための図であり、図2は図1の温度分布監視システムにおけるマップ作成指示制御部及び状態表示制御部の詳細について説明するための図である。
【0015】
図1に示すように、温度分布監視システムは、パソコン100、200、300と、温度分布測定装置400とを備えている。これらパソコン100、200、300と、温度分布測定装置400とは、通信ケーブル501及びLAN500を介して相互に通信可能に接続されている。なお、通信回線としては、LAN500に限らず、専用回線等を用いることができる。
【0016】
ここで、パソコン100、200、300のうち、監視装置としてのパソコン100は温度分布測定装置400の監視等を行うために用いられるようになっており、パソコン200、300はパソコン100からのメール配信を受けて光ファイバ401の位置に対応したルートマップ等の表示を行うために用いられるようになっている。なお、パソコン100は特定監視施設の施設管理者が使用し、パソコン200、300は、所定の施設管理者が使用することができる。また、ここでは、温度分布測定装置400は、複数であってもよいことはもちろんであるが、説明の都合上、1個とした場合としている。
【0017】
また、パソコン100は、マップ作成指示制御部110、状態表示制御部120、温度分布データ出力ソフトウェア部130a、データ入力監視部140、第1データベース150、第2データベース160、警報出力用リレー駆動部170、メール配信駆動部171、外部機器遠隔駆動部172、警報情報読み上げ駆動部173を備えている。
【0018】
マップ作成指示制御部110は、図示しないキーボードやマウスからの指示により、任意の箇所に付設した光ファイバ401上の位置とルートマップ上の位置とを一対一に対応させるようにマップ作成の指示を与えるものである。その際、光ファイバ401の長手方向の全長に対し、任意の名称を与えた複数のメインのゾーンに分割し、その名称を与えた複数のメインのゾーンをさらにサブのゾーンに分割するようなマップ作成の指示が行われるが、これの詳細については後述する。
【0019】
状態表示制御部120は、後述のマップ作成ソフトウェアの実行により、ルートマップ上に異常現場(温度異常発生箇所)等が即座に識別できるような状態表示を行う。このようなルートマップ上に異常現場等が即座に識別できるような状態表示を行う場合、任意の箇所に付設した光ファイバ401上の位置とルートマップ上の位置とを一対一に対応させるようにマップ作成することができるマップ作成ソフトウェアが用いられる。
【0020】
このマップ作成ソフトウェアは、たとえば既存の地図情報を表示するためのマップデータに、光ファイバ401上の位置を一対一に対応させるためのデータ等を付加するとともに、その位置における温度異常等を表示させる機能等を有するものであるが、その詳細については後述する。
【0021】
コンフィギュレータ130aは、LAN500を介して温度分布測定装置400を認識し、その温度分布測定装置400からの温度分布データである測定データをファイル形式で取り込む。
【0022】
データ入力監視部140は、温度分布測定装置400からのファイル形式の測定データを所定時間毎に取り込むように温度分布データ出力ソフトウェア部130aを駆動させる。また、データ入力監視部140は、温度分布データ出力ソフトウェア部130aを介して温度分布測定装置400からのファイル形式の測定データを取り込むと、その測定データを第1データベース150に登録する。そして、既に第1データベース150に登録されている測定データは、所定時間毎に取り込まれた測定データにより更新される。
【0023】
この場合、第1データベース150に、たとえば温度分布測定装置400に対応させたフォルダを設けておき、そのフォルダ内に温度分布測定装置400からのファイル形式の測定データを登録するようにすることができる。このようにすると、温度分布測定装置400が複数存在していても、それぞれの温度分布測定装置400に対応させて測定データを登録することができる。
【0024】
第1データベース150には、少なくともデータ入力監視部140による測定データが登録される。第2データベース160には、ルートマップの作成に必要なゾーン設定情報、警報一覧情報、リレー接点情報等が登録される。なお、ここでは、第1データベース150及び第2データベース160を設けているが、いずれか1個に集約してもよいことは勿論である。
【0025】
警報出力用リレー駆動部170は、状態表示制御部120からの指示を受けて、図示しないブザーやパソコン100〜300のディスプレイ等への警報信号や警報情報の出力を行う。メール配信駆動部171は、状態表示制御部120からの指示を受けて、パソコン200、300へ警報メッセージを配信する。
【0026】
外部機器遠隔駆動部172は、状態表示制御部120からの指示を受けて図示しない遠隔操作可能なネットワークカメラを切り換え駆動する。警報情報読み上げ駆動部173は、状態表示制御部120からの指示を受けて警報メッセージの内容を読み上げる。この場合、警報情報読み上げ駆動部173は、所定の放送施設に警報メッセージの内容の音声情報を出力し、その放送施設から警報メッセージが放送されるようにすることができる。
【0027】
一方、パソコン200は、メール配信制御部210、状態表示制御部220、データベース230を備えている。
【0028】
メール配信制御部210は、パソコン200側からのメールをパソコン100及び/又は300に配信する。状態表示制御部220は、パソコン100からの測定データ等を受け、図示しないディスプレイ上のルートマップ上に異常現場等が即座に識別できるような状態表示を行う。データベース230には、パソコン100からの測定データ等が登録される。
【0029】
なお、パソコン300には、パソコン200に備えられているメール配信制御部210、状態表示制御部220、データベース230と同様のものが備わっている。
【0030】
温度分布測定装置400は、光ファイバ401中で発生するラマン散乱光を用いることで光ファイバ401の長手方向での温度分布を所定時間毎に測定し、LAN500を介して測定データをファイル形式で送信する。なお、測定データのファイル形式での送信タイミングは、パソコン100側のデータ入力監視部140による温度分布データ出力ソフトウェア部130aを介しての取り込みタイミングに従うものであり、数十秒毎、数分毎、数十分毎等のように設定できる。
【0031】
次に、上述したマップ作成指示制御部110及び状態表示制御部120の詳細について、図2を参照し説明する。
【0032】
同図に示すように、マップ作成指示制御部110は、図示しないキーボードやマウスからのルートマップ作成指示、ゾーン分割作成指示、測定条件指示等を受け、状態表示制御部120に入力する。
【0033】
状態表示制御部120は、バス121に接続される、制御部122、ルートマップ作成制御部123、測定条件設定制御部124、異常ゾーン監視制御部125、最短ルート表示制御部126、警報情報設定制御部127、温度分布測定表示制御部128、光ファイバ断線情報表示制御部129、警報情報読み上げ制御部130、外部機器遠隔制御部131、メール配信制御部132、リレー出力設定制御部133、通信設定制御部134を有している。
【0034】
なお、これらの各要素は、上述したマップ作成ソフトウェアが導入されることで、実現されるものである。
【0035】
制御部122は、マップ作成指示制御部110からの指示を受けて、上述した各要素の制御を行う。
【0036】
ルートマップ作成制御部123は、図示しないキーボードやマウスからの指示を受けて任意の箇所に付設した光ファイバ401上の位置とルートマップ上の位置とを一対一に対応させるようにマップ作成する。
【0037】
測定条件設定制御部124は、図示しないキーボードやマウスからの後述の図5に示すような各種の設定条件(設定データ)を受け付け、これらの各種の設定条件を後述のゾーンナンバー毎に対応させるように制御する。第1データベース150は所定時間毎に各ゾーンの測定データでデータが更新され、異常ゾーン監視制御部125は、第1データベース150に登録された測定データから後述のゾーンにおける異常を監視し、異常があればリレー出力設定制御部133を介し、警報信号や警報情報の出力を行うための上述した警報出力用リレー駆動部170を駆動させる。
【0038】
最短ルート表示制御部126は、温度異常発生箇所への最短ルートをルートマップ上に表示させるように制御する。警報情報設定制御部127は、異常ゾーン監視制御部125によって監視される異常ゾーンの状態に応じた警報メッセージを設定する。
【0039】
温度分布測定表示制御部128は、図示しないキーボードやマウスからの温度分布測定表示の指示があると、第1データベース150に登録された測定データから後述の図6に示すような異常ゾーン内の詳細温度分布を表示させるように制御する。
【0040】
光ファイバ断線情報表示制御部129は、第1データベース150に登録された測定データから光ファイバ401の断線箇所を表示させるように制御する。警報情報読み上げ制御部130は、警報情報設定制御部127によって設定された警報メッセージを読み上げるための上述した警報情報読み上げ駆動部173を駆動させる。
【0041】
外部機器遠隔制御部131は、上述した外部機器遠隔駆動部172を切り換え駆動させる。すなわち、光ファイバ401の長手方向に沿って複数のネットワークカメラが配置されているとすると、異常ゾーン監視制御部125によって監視される異常ゾーンに対応するネットワークカメラに切り換えるように外部機器遠隔駆動部172を切り換え駆動させる。
【0042】
メール配信制御部132は、警報情報設定制御部127によって設定された警報メッセージを配信するための上述したメール配信駆動部171を駆動させる。リレー出力設定制御部133は、警報情報設定制御部127によって警報メッセージが設定されると、警報信号や警報情報の出力を行うための上述した警報出力用リレー駆動部170を駆動させる。通信設定制御部134は、LAN500等の通信設定を制御する。
【0043】
次に、図3を参照し、温度分布監視システムにおける運用開始の概要について説明する。まず、監視対象エリアとルートの確認を行う(ステップS1)。ここでは、顧客情報(たとえば駅名、ビル名、店舗等)のインプットや、ゾーン名、各ゾーンの始点名、終点名、警報閾値等の設定条件を設定する。これらの設定条件の詳細については後述の図5等で説明する。
【0044】
次いで、現地調査を行う(ステップS2)。ここでは、エリアマップやルートマップの作成を行うとともに、光ファイバ401の付設方法を確認する。次いで、光ファイバ401の付設を行う(ステップS3)。次いで、画面表示上の距離と現地との対応をとる(ステップS4)。
【0045】
次いで、現地データに基づきゾーン分割を行う(ステップS5)。ここでは、各ゾーンの始点及び終点について、それぞれの目印又は名称と対応させる。次いで、分割した各ゾーンとエリアマップやルートマップとの対応をとる(ステップS6)。そして、運用開始となる(ステップS7)。
【0046】
次に、図4〜図6を参照し、温度分布監視システムにおける設定条件の一例について説明する。
【0047】
まず、図4は光ファイバ401を地下鉄に付設した例を示すものである。この例では、イ駅、ロ駅、ハ駅に跨るように光ファイバ401が付設されている。そして、その光ファイバ401上の位置と実際のルートマップ上の位置とが一対一に対応し、光ファイバ401の長手方向の全長に対し任意の名称を与えた複数のゾーンに分割されている。
【0048】
すなわち、イ駅〜ロ駅間がメインのゾーンAに設定され、ロ駅〜ハ駅間がメインのゾーンBに設定されている。これにより、ゾーンA、Bのいずれかでの異常があれば、少なくともイ駅〜ロ駅間であるか、あるいはロ駅〜ハ駅間であるかが識別されることになる。
【0049】
さらに、メインのゾーンA、Bのそれぞれがサブのゾーンa〜jに分割するように設定されている。すなわち、(1)〜(2)間をゾーンaとし、(2)〜(3)間をゾーンbとし、(3)〜(4)間をゾーンcとし、(4)〜(5)間をゾーンdとし、(5)〜(6)間をゾーンeとし、(6)〜(7)間をゾーンfとし、(7)〜(8)間をゾーンgとし、(8)〜(9)間をゾーンhとし、(9)〜(10)間をゾーンiとし、(10)〜(11)間をゾーンjとしている。
【0050】
これにより、メインのゾーンA、Bのいずれかでの異常があれば、そのゾーンA、Bの中でさらに細かく分割されたサブのゾーンa〜jのいずれかであるかが識別されることになる。
【0051】
このように、メインのゾーンA、Bとサブのゾーンa〜jとが設定された後、パソコン100の第1データベースには図5に示すような内容の設定条件が取り込まれることになる。
【0052】
すなわち、図5(a)はゾーンナンバーの項目を示し、図5(b)はゾーン名の項目を示し、図5(c)はゾーン位置の説明の項目を示し、図5(d)は距離の項目を示し、図5(e)〜(h)は温度の項目を示し、図5(i)は表示の有無の項目をそれぞれ示している。
【0053】
ここで、図5(b)に示しているゾーン名は、図4でのメインのゾーンA、Bとサブのゾーンa〜jにそれぞれ対応している。また、図5(c)に示しているゾーン位置の説明は、ゾーンa〜jのそれぞれの始点と終点にそれぞれ対応している。この場合、ゾーンa〜jのそれぞれの始点と終点である(1)〜(11)のそれぞれに任意の名称を付けることも可能であり、その名称によりルートマップ上での識別をより容易とすることができる。
【0054】
具体的には、(1)名称を「1番入口」とし、(2)名称を「1番入口から右手へ100m」としたような任意の名称を付けることが可能である。(3)名称〜(11)名称も同様にして任意の名称を付けることが可能である。
【0055】
また、図5(d)に示している距離は、温度分布測定装置400からの位置であり、その位置が分かることでサブのゾーンa〜jの始点又は終点が判別され、実際の場所がどこかを即座に識別することができ、速やかに異常現場に急行することができる。
【0056】
図5(e)に示す温度は測定温度が何度以上となったら警報発信するかを設定するものであり、図5(f)は測定温度が何度以下となったら警報発信するかを設定するものである。具体的には、たとえばゾーンナンバー1の場合、Highが50℃とされ、Lowが40℃とされていることから、測定温度が50℃以上となったら警報発信し、測定温度が40℃以下となったら警報発信するように設定されている。
【0057】
また、図5(g)に示すDIFは、前回の測定温度からの温度差が何度以上となったら警報発信するかを設定するための値である。具体的には、たとえばゾーンナンバー1の場合、3℃と設定されているため、前回の測定温度からの温度差が3℃以上となったら警報発信するように設定されている。
【0058】
また、図5(h)に示す値は、それぞれのサブのゾーンa〜jにおいて、平均、最高、最低のいずれの温度で判別するかを設定するものである。つまり、たとえばゾーンcの距離が100mであるとし、このゾーンc内での温度を、たとえば10箇所で測定したものから判別するものとする。
【0059】
この場合、ゾーンc内でのそれぞれの箇所の温度は同一とは限らずバラつく可能性があることから、平均、最高、最低のいずれの温度で判別するかを設定するようになっている。すなわち、最高の場合は10箇所で測定した測定温度のうちの最高温度を、最低の場合は10箇所で測定した測定温度のうちの最低温度を、平均の場合は10箇所で測定した測定温度の平均を基準温度として使用することになる。
【0060】
なお、最高、最低、平均のどれを設定温度とするかは、使用目的によって変えることができる。すなわち、たとえば火災警報の目的で使用するならば、設定温度としては最高温度を使用し、Highの設定温度を超えた場合には警報を発するという設定になる。
【0061】
たとえば、高温側で監視する場合は、ゾーンナンバー3の図5(h)に示す値を“1”と設定し、Highの設定温度である70℃を超えた場合には警報を発するという設定にできる。また、低温側で監視する場合は、ゾーンナンバー4の図5(h)に示す値を“2”と設定すると、Lowの設定温度である40℃を下回った場合には警報を発するという設定にできる。
【0062】
また、図5(i)に示す値は、たとえば図6に示すような異常ゾーン内の詳細温度分布を表示させるかさせないかを設定するものである。すなわち、図6に示すような温度分布の詳細からどの場所での温度がどのぐらいであるかを即座に判別することができる。なお、図5(i)に示す値は、ゾーンナンバー1〜10のそれぞれにおいて0に設定することで表示無しとすることも可能である。
【0063】
次に、図7及び図8を参照し、上述した温度分布測定装置400から得られる測定データ等の一例について説明する。すなわち、図7(a)は図5(a)と同様にゾーンナンバーの項目を示し、図7(b)は図5(b)と同様にゾーン名の項目を示し、図7(c)は図5(c)と同様にゾーン位置の説明の項目を示している。
【0064】
図7(d)は測定した日時の項目を示し、図7(e)は図5(d)と同様に距離の項目を示し、図7(f)〜(h)は温度の項目を示し、図7(i)は警告メッセージの項目を示し、図7(j)は警報順位をそれぞれ示している。
【0065】
ここで、各サブのゾーンa〜jの温度が測定されると、図7(g)の項目にそれぞれのゾーンa〜jに対応する温度が表示される。また、図7(h)の項目においては温度精度の指標を示す当該区間温度の標準偏差σが表示される。通常時であれば、当該区間内の温度は一定であり、その標準偏差σは例えば0.5〜1℃等の小さな値をとるが、区間内のピンポイントで異常が発生した場合には、標準偏差σが数度を超える値を取ることから、警報表示(f)、温度(g)の補足データ的な意味合いを持つ。
【0066】
また、図7(i)の項目においては、図7(g)の項目におけるそれぞれのゾーンa〜jに対応する温度が図5の(e)〜(j)で設定した温度に対してどのような状況にあるのかが表示される。すなわち、ゾーンナンバー1のサブのゾーンaの測定した温度が25.5℃のとき、その温度は図5(e)(f)の設定温度の50℃〜40℃を下回っているため、図7(i)の項目には設定温度を下回っていることを示す温度変化のLが表示される。たとえば前回の測定温度が24.0℃とすると、図5(j)のDIFの3℃を上回っていないため、図7(i)の項目にはその温度差の変化についての表示は行われない。
【0067】
また、ゾーンナンバー5のサブのゾーンeの測定した温度が26.0℃のとき、その温度は図5(e)(f)の設定温度の50℃〜30℃を下回っているため、図7(i)の項目には設定温度を下回っていることを示す温度変化のLが表示される。たとえば前回の測定温度が25.5℃とすると、図5(j)のDIFの3℃を上回っていないため、図7(i)の項目にはその温度差の変化についての表示は行われない。
【0068】
また、ゾーンナンバー6のサブのゾーンfの測定した温度が40.0℃のとき、その温度は図5(e)(f)の設定温度の60℃〜10℃内にあるため、温度変化の表示は行われないが、たとえば前回の測定温度が50.0℃とすると、DIFの5℃を上回っているため、図7(i)の項目にはその温度差の変化があることを示すDが表示される。
【0069】
また、ゾーンナンバー7のサブのゾーンgの測定した温度が75.50℃のとき、その温度は図5(e)(f)の設定温度の70℃〜20℃を超えているため、温度変化の表示のHが表示される。この場合、たとえば前回の測定温度が65.0℃とすると、図5(j)のDIFの7℃を上回っているため、図7(i)の項目にはその温度差の変化があることを示すDも併せて表示される。
【0070】
また、ゾーンナンバー8のサブのゾーンhの測定した温度が25.5℃のとき、その温度は図5(e)(f)の設定温度の50℃〜40℃を下回っているため、図7(i)の項目にはその下回っていることを示す温度変化のLが表示される。たとえば前回の測定温度が22.5℃とすると、図5(j)のDIFの3℃と同じであるため、図7(i)の項目にはその温度差の変化についての表示は行われない。
【0071】
なお、ゾーンナンバー2〜4のサブのゾーンb〜dと、ゾーンナンバー9〜10のサブのゾーンi〜jについては、測定した温度及び温度差DIFが図5で設定した温度内にあるため、図7(i)の項目には設定温度を下回っていることを示す温度変化のL、設定温度を上回っていることを示す温度変化のH、温度差の変化があることを示すDのいずれも表示されない。
【0072】
このようにして、図7(i)の項目に、設定温度を下回っていることを示す温度変化のL、設定温度を上回っていることを示す温度変化のH、温度差の変化があることを示すDのいずれかが表示されると、図7(j)の項目に警報の順位が表示される。
【0073】
この警報の順位に際しては、少なくとも緊急を伴う順に表示されることが好ましい。そのため、ゾーンナンバー7のサブのゾーンgのように、測定した温度である75.50℃が設定温度の70℃〜20℃を超えていて、しかもDIFの7℃を上回っていることにより、図7(i)にHDと表示されているものが図7(j)の項目に“1”と表示される。
【0074】
次いで、ゾーンナンバー6のサブのゾーンfのように、測定した温度である40.0℃が設定温度の60℃〜10℃内にあるが、DIFの5℃を上回っていることにより、図7(i)にDと表示されているものが図7(j)の項目に“2”と表示される。
【0075】
次いで、ゾーンナンバー1、5、8のサブのゾーンa、e、hの測定した温度が設定温度を下回っていて、図7(i)にLと表示されているものが図7(j)の項目に“3”と表示される。
【0076】
また、図7のような測定データが得られた場合、その測定データから警告に関わるデータのみをピックアップ表示させることができる。すなわち、図8に示すように、ゾーンナンバー1、5〜8のサブのゾーンa、e〜hについては、設定温度を下回っていることを示す温度変化のL、設定温度を上回っていることを示す温度変化のH、温度差の変化があることを示すDのいずれかが表示されているため、これらのいずれかが表示されているもののみをピックアップ表示させることができる。
【0077】
よって、このピックアップ表示されたサブのゾーンa、e〜hがルートマップ上に表示されるようにすれば、どこのゾーンの温度が異常であるかを即座に識別することが可能となる。なお、ルートマップは図8のように表形式で作成してもよいし、図9のように図のイメージで作成してもよい。
【0078】
具体的には、たとえば図7のような測定データが得られた場合、図9に示すように、ルートマップ上のメインのゾーンbのサブのゾーンgに異常であることが特定表示される。この場合、そのサブのゾーンgのゾーン位置の説明にある(7)名称(始点)〜(8)名称(終点)からどこの場所であるかを即座に識別することが可能となる。
【0079】
すなわち、メインのゾーンBからロ駅〜ハ駅の間であることが識別できる。ここで、(7)名称を(7)番入口と決めておき、(8)名称を(8)番入口と決めておくことで、ロ駅の(7)番入口又は(8)番入口から近いところであるということを識別できる。さらに、図6に示した温度分布の詳細から、温度が異常である地点を判別できるため、その異常である地点がたとえば(7)番入口及び(8)番入口から50mであることが判別された場合、ルートマップ上には(7)番入口から右手50mであることや、(8)番入口から左手50mであることを表示することができる。このような表示は、上述したように、ルートマップ作成制御部123により、光ファイバ401上の位置とルートマップ上の位置とを一対一に対応させるようなマップ作成により、詳細に行われるようにすることができる。
【0080】
このように、本実施形態では、監視装置であるパソコン100により、光ファイバ401の長手方向の全長に対し複数のゾーンに分割するための設定を受け付けて第2データベース160に登録され、第1データベース150に登録された温度分布データと第2データベース160に登録された複数のゾーンとが対応付けられ、それぞれのゾーン毎に温度状況が監視されるようにしたので、温度異常発生箇所を即座に識別することができる。
【0081】
また、監視装置であるパソコン100により、光ファイバ401上の位置とルートマップ上の位置とが一対一に対応し、さらに複数のゾーンが識別できるようなルートマップの作成が行われ、温度分布測定装置400によって測定された温度分布データからいずれかのゾーンの温度が異常であれば、その異常のあったゾーンがルートマップに特定表示されるようにしたので、光ファイバ401の長手方向の距離ではなく、実際の場所がどこかを即座に識別することができることから、速やかに異常現場に急行することができる。
【0082】
また、監視装置であるパソコン100により、複数のゾーンのそれぞれに対する任意の名称を与えるための設定を受け付け、それぞれの任意の名称をルートマップに表示させるとともに、いずれかのゾーンの温度が異常であれば、その異常のあったゾーンに対応する任意の名称と異常内容とを警報メッセージとして出力するようにしたので、その警報メッセージから実際の場所と異常内容とを即座に識別することができる。
【0083】
この場合、警報メッセージを放送施設等に出力するようにすることで、実際の場所と異常内容とを一斉放送で知らせることができる。また、その警報メッセージをメール機能を用いて施設管理者へのパソコン200、300や携帯電話等へ配信することができる。
【0084】
また、監視装置あるパソコン100により、光ファイバ401の長手方向に沿って配置された図示しない複数のネットワークカメラを遠隔操作するようにし、いずれかのゾーンの温度が異常であれば、その異常のあったゾーンに対応するネットワークカメラに切り換えるようにしたので、視覚での認識も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
火災の早期発見等に限らず、設備異常等の早期発見等を行うシステムにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0086】
100〜300 パソコン
110 マップ作成指示制御部
120 状態表示制御部
121 バス
122 制御部
123 ルートマップ作成制御部
124 測定条件設定制御部
125 異常ゾーン監視制御部
126 最短ルート表示制御部
127 警報情報設定制御部
128 温度分布測定表示制御部
129 光ファイバ断線情報表示制御部
130a 温度分布データ出力ソフトウェア部
130 警報情報読み上げ制御部
131 外部機器遠隔制御部
132 メール配信制御部
133 リレー出力設定制御部
134 通信設定制御部
140 データ入力監視部
150 第1データベース
160 第2データベース
170 警報出力用リレー駆動部
171 メール配信駆動部
172 外部機器遠隔駆動部
173 警報情報読み上げ駆動部
210 メール配信制御部
220 状態表示制御部
230 データベース
400 温度分布測定装置
401 光ファイバ
500 LAN
501 通信ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から発した光パルスを光ファイバに入射し、該光パルスにより生じた後方散乱光である、反ストークス光とストークス光の光強度分布比により前記光ファイバの長手方向での温度分布測定を行う温度分布測定装置と、
該温度分布測定装置によって測定された温度分布データを取得し、前記光ファイバの長手方向での温度分布を監視する監視装置とを備え、
前記監視装置は、
前記取得した温度分布データをデータベースに登録する手段と、
前記光ファイバの長手方向に対し複数のゾーンに分割するための設定を受け付けて前記データベースに登録する手段と、
前記データベースに登録された前記温度分布データと前記複数のゾーンとを対応付けて、それぞれのゾーン毎に温度状況を監視する手段とを備える
ことを特徴とする温度分布監視システム。
【請求項2】
所定時間毎に前記温度分布データを取得し、該取得した温度分布データからそれぞれの前記ゾーンの温度状況を測定し、それぞれの前記ゾーンの測定データで前記データベースのそれぞれの前記ゾーンに対応する測定データを更新する手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の温度分布監視システム。
【請求項3】
前記光ファイバ上の位置とルートマップ上の位置とを一対一に対応させるようにルートマップの作成を行う手段と、
前記データベースに登録された前記複数のゾーンを前記ルートマップに付加する手段と、
それぞれの前記ゾーンに対応する測定データと前記ルートマップに付加された前記複数のゾーンとからそれぞれのルートマップ上のゾーン毎に温度状況を監視する手段とを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の温度分布監視システム。
【請求項4】
前記それぞれのゾーン毎に温度に関する各種の設定条件を受け付けて前記データベースに登録する手段と、
前記それぞれのゾーン毎に監視した温度状況が前記各種の設定条件から変化すると警報を発する手段とを備える
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の温度分布監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−209226(P2011−209226A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79285(P2010−79285)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(303040585)株式会社オーシーシー (47)
【Fターム(参考)】