説明

温度又は光によってカラー画像を記録消去できる液晶材料、及びそれを用いた記録方法ないし情報記録装置

【課題】少なくとも一つが透明な一組の基板を含み、光と熱に応答する中間層を含む書き換え可能なフルカラー記録メデイアを提供する。
【解決手段】 光及び熱に応答する中間層はブタジエンを結合したコレステロール系液晶材料から成る。高温で形成されるコレステリック層から0℃まで急冷却することで、記録材料はガラス状態となりその温度で示された反射色特性が急冷後も維持される。材料のガラス状態での色は急冷却する前のフィルムの温度または350nm領域での紫外線照射量の調整によって制御できる。従って本材料を用いたデバイスは熱または紫外線照射によって安定なフルカラー画像を記録できるものである。熱的に記録された画像は試料を加熱することによって消去することができる。一方、紫外線照射によって記録された画像は266nm領域の光を照射することによって消去できる。従って本デバイスは書き換え可能なフルカラー画像の記録に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な熱又は光応答性のブタジエンが結合したコレステロール誘導体を用いたカラー画像記録媒体、及びそれを用いた記録方法ないし情報記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機光応答性材料の設計と開発は画像又は情報記録デバイスへの応用に関連し、非常に高い関心を集めている(特許文献1、非特許文献1)。液晶性化合物はその中でも微視的な分子間相互作用が巨視的レベルに増幅できその結果顕著な光学的変化をもたらすことから特に重要である(非特許文献1〜6)。
キラルネマティック(コレステリック)液晶(CLC)分子が螺旋配列をとることによって一定の波長の光を選択的に反射する特性を有する(非特許文献7、8)。コレステリック液晶によって反射される光の波長は螺旋状分子配列の周期に依存し、その周期は温度、圧力、不純物などの外部要因に依存する(非特許文献9〜12)。このような特徴に関しては多くの研究があり、その結果CLCは様々な表示素子や情報記録材料として有用なものとなっている。しかしCLCの流動性は様々な応用において欠点となっており、特に長期間の情報保持を目的とする応用では大きな問題となっている。そのような応用においては情報記録プロセスの後に重合反応を行う必要がある(非特許文献13〜14)。
【0003】
その他の方法として、特許文献2、3で玉置らが示しているようにコレステリック液晶ガラスを用いることが長期の保存に絶え得るフルカラー画像記録を実現するために有用である(特許文献2、3)。この系ではジインまたはアルキル鎖で二つのコレステロール部をつないだジメソゲンを用い、コレステリックフィルムが示す選択反射の特性を可逆的に変化させると同時にガラス化して固定することが可能である(非特許文献15〜18)。
これらのジメソゲンに適当な長さのアルキル基を導入したジアルキルアゾベンゼンを添加し、フィルムを360nm領域の紫外線で照射するとアゾベンゼン誘導体が光異性化反応を起こしCLCのコレステリックピッチが影響を受ける。その結果、フィルムの色が変化する。最近の特許文献4で玉置らが示しているようにこのデバイスは記録されたフルカラー画像を長期間安定に保つことができかつガラスフィルムをコレステリック状態に加熱する簡単な操作で画像を消去することができる。
【0004】
そのようなデバイスはカラー画像記録に用いることができるがいくつかの問題点がある。主な問題点は、アゾベンゼン誘導体のシス体が熱的に不安定でガラス化のプロセスが終了する前にトランス体への逆反応が起こることがある。第二の主な問題点は、ホスト液晶と光応答性材料の混合物からなることで、これらは長期間の保存によって結晶化する可能性がある。最近の研究によって我々は光応答性材料として光異性化可能なブタジエン誘導体を開発し光反応によって得られる異性体の熱安定性に関する問題点を解決した(非特許文献19)。これらの化合物を用いることでより高品質なカラー画像を記録することができる。しかし、本系においても二つの異なる物質の混合系であるために、長期間の保存で結晶化する問題は解決できていない。
【特許文献1】米国特許第6740255号明細書
【特許文献2】米国特許第6183666号明細書
【特許文献3】米国特許第6537711号明細書
【特許文献4】米国特許第6103431号明細書
【非特許文献1】Ikeda, T. J. MATER. CHEM. 2003, 13, 2037
【非特許文献2】Demus et al. Handbook of Liquid Crystals , Wiley-VCH, Weinheim, 1998
【非特許文献3】Chen et al. Adv. Mater. 2003, 15, 1061
【非特許文献4】Walba et al. Science 2000, 288, 2181
【非特許文献5】Eichhorn et al. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 12742;
【非特許文献6】D. Demus, in Modern Topics in Liquid Crystals, ed. A. Buka, New Jersey, 1993
【非特許文献7】F. Reinitzer, Monatsh, 1888, 9, 421
【非特許文献8】Chandrasekhar, S. Liquid crystals; 2nd ed.; Cambridge: Cambridge, 1992
【非特許文献9】Ruslim, C. and Ichimura, K. J. Phys. Chem. B 2000, 104, 6529
【非特許文献10】Moriyama, M.; Song, S.; Matsuda, H.; Tamaoki, N. J. Mater. Chem. 2001, 11, 1003
【非特許文献11】Chen et al. Adv. Mater. 2003, 15, 1061; Mallia, V. A. and Tamaoki, N. Chem. Mater. 2003, 15, 3237
【非特許文献12】Delden et al. Adv. Funct. Mater. 2003, 13, 319
【非特許文献13】Brehmer et al. Adv. Mater. 1998, 10, 17; Witte et al. Liq. Cryst. 1998, 24, 819
【非特許文献14】Tamaoki, N. Adv. Mater. 2001, 13, 1135
【非特許文献15】Tamaoki, N.; Song, S; Moriyama, M.; Matsuda, H. Adv. Matert. 2000, 12, 94
【非特許文献16】Tamaoki, N.; Aoki, Y.; Moriyama, M.; Kidowaki, M. Chem. Mater. 2003, 15, 719
【非特許文献17】Mallia, V. A.; Tamaoki, N. Chem. Soc. Rev. 2004, 33, 7
【非特許文献18】Mallia, V. A.; Tamaoki, N. J. Mater. Chem. 2003, 13, 219
【非特許文献19】Davis et al. Adv.Funct. Mater. 2004, 14, 74
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、単独で光応答性を有し、熱的に安定なフルカラー画像を記録することができ、しかも、短波長の紫外線照射で消去が可能な新規なキラルネマティック液晶、並びに当該液晶性化合物を記録層に用いたカラー記録媒体及び当該カラー記録媒体に対して記録や消去を行う方法ないしそれを行うために用いられる情報記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ブタジエンクロモファーとコレステロール誘導体を共有結合でつないだ新規な化合物により上記目的が達成できるという知見を得た。すなわち、光応答性のブタジエンクロモファーとコレステロール誘導体を共有結合でつないで得られたコレステリック液晶は、単独で光応答性を有するものであり、本材料を用いて熱的に安定なフルカラー画像を記録することができ、その画像は短波長の紫外線(250nm領域)を照射することで消去できることが判明した。
【0007】
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
(1)下記の式で示される、様々な強度のドナーおよびアクセプター置換基を有するアリルブタジエンとコレステロールを異なる長さのスペーサーを介して結合した化合物。
【化2】


(2)上記式中のnが8,11または12である請求項1に記載の化合物。
(3)上記(1)又は(2)の化合物の温度を調整することで可視光の一部を選択的に反射して望みの色を呈するキラルスメティック相とし、その温度から急冷却することで化合物をガラス化して反射色を固定する方法。
(4)少なくとも一方が透明である2枚の基板間に、上記(1)又は(2)の化合物を含む記録層を設けたことを特徴とする書き換え可能なカラー画像記録媒体。
(5)上記(4)のカラー画像記録媒体に350nm領域の光照射し、光照射部位で必要な色を発現させた後に急冷することによって色を安定化するカラー画像記録方法。
(6)上記(4)のカラー画像記録媒体に250nm領域の光を照射し、記録媒体に使われた化合物が等方相を示す温度まで昇温して別の均一な色もしくは無色にすることを特徴とするカラー画像消去方法。
(7)上記(4)のカラー画像記録媒体を含む照射する光量に応じて反射光または透過光の波長を異ならせる性質を有し、所定の温度範囲において当該性質を保持する記録媒体へ記録保持を行う情報記録装置であって、照射する光量と当該光量に応じた色との対応関係を記憶する色設定記憶手段と、電子情報として与えられる画像データの単位毎の色情報と位置情報の内、色情報を前記色設定記憶手段から与えられるデータをもとに対応する光量情報に変換する色情報変換手段と、前記位置情報と光量情報をもとに単位毎の光量を制御するマイクロミラーアレイを備えたことを特徴とする情報記録装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコレステロールが結合した芳香族ブタジエンは画像形成材料として良好な特性を有している。本発明の主な特徴は、1)コレステロールが結合した芳香族ブタジエンは単一の化合物として使うことができる。2)合成ルートは経済的である。3)材料は熱的、光化学的実験条件で極めて安定である。4)スメクティック相からキラルネマティック相への相転移は1.5mW cm-2の低照射光量で起こり、画像形成のための光化学反応の速度は十分に速い。5)ブタジエンのシス異性体は熱的に反応せず、逆反応による画像の破壊は妨げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で提供される新規な化合物は、以下の式で表されるコレステロール誘導体である。
【化3】

【0010】
本発明の新規なコレステロール誘導体は、分子内にキラルネマティック相を誘起するためのコレステロール部位と紫外線照射によって可逆的な異性化反応を示すブタジエン部位を有しているところに特徴がある。コレステロール部位とブタジエン部位はオリゴメチレン鎖をスペーサーとして、コレステロール部位ブタジエン部位側はエーテル結合または二級アミンによる結合で、コレステロール部位側は、エステル結合またはカーボネート結合でつなぐことができる。分子内にコレステロール部位とブタジエン部位を一つずつ有する構造と中央のブタジエン部位を二つのコレステロール部位で挟んだ構造をとることができる。スペーサーとなるオリゴメチレン鎖は様々な長さのものが可能であるが、特に4から18個のメチレン、より望ましくは8から12個のメチレンを含むものが望ましい。メチレンの数が4つ未満の化合物は、液晶性を示す温度が高くなりすぎるために望みの色を固定する作業が困難となり、また、メチレンの数が18を越える化合物は、ガラス状態が室温で不安定となり固定した化合物またはフィルムの色が保存過程で徐々に変化してしまう。
【0011】
本発明の化合物は、一定の温度範囲でキラルネマティック相を示す。また、一部の化合物ではキラルネマティック相を示す温度の低温側でスメクティック相を示す。化合物の温度をキラルネマティック相を示す温度に調整することで液晶分子は自発的にらせん状に配列してそのらせん周期に依存した一定の波長の光を反射する。反射する光の波長が可視光の範囲にある(約400〜700nm)場合には色(反射色)が観察される。本発明の化合物では、キラルスメクティック相を示す温度範囲内で高温にするに従いより短波長の光を反射する。従って、キラルスメクティック相の温度範囲で化合物の温度を調整することで様々な色を示すことになる。化合物がガラス化する特性を有している場合にはキラルネマティック相を示す温度から急冷却することで色を固定することができる。
【0012】
熱または光記録媒体は少なくとも一方が透明の二枚の基板もしくはフィルム間に前記化合物又は組成物を挟んだもの又は一枚の基板上に製膜したものである。基板としては石英板以外にも通常のガラス、高分子薄膜や金属板などでもよいが二枚のうち一枚は少なくとも一部の光が透過するような透明性が必要である。前記化合物または組成物を二枚の基板間に挟む方法としては、まず前記化合物または組成物を溶融状態かもしくは液晶状態の温度に加熱し、一方の基板に添加後もう一方の基板をのせるか、平行に保たれた二枚の基板間に減圧やキャピラリー現象を利用して添加する方法がある。また、後述する方法で1枚の基板上に記録媒体を作成した後に、もう一方の基板をのせる方法もある。基板間の間隔は特に限定されるものではないが数ミクロンから100ミクロン程度が望ましい。また、一枚の基板上に前記化合物又は組成物の記録媒体を作成する方法としては、バーコーター、スピンコーター等を用いて基板上に塗布する溶液塗布法や真空蒸着法等がある。
【0013】
本媒体に対する部分的もしくは全体的な加熱はサーマルヘッド、加熱ロール、レーザー光線などあらゆる方法が可能である。また液晶温度範囲への温度コントロールが必要な加熱はサーマルヘッドや加熱ロール等の温度をコントロールするかレーザー光線の強度やスポット径を調節すること、もしくは全体を一定の温度まで加熱した後でイメージ状の平らな金属板やゴム板で必要な温度まで降温することで可能である。本発明の液晶化合物または組成物に対して書込を行うための光反応をさせるための光源は350nm領域の光を発する水銀灯、キセノンランプ、タングステンランプ、レーザーなどから選択できる。光によって書き込んだ記録の消去には250nm領域の光を照射する方法が有効である。そのためには、水銀灯、レーザーなどの光源を用いることができる。ガラス転移以下への急冷は試料全体を冷媒もしくは冷却された雰囲気の中に浸せきする方法、試料の一部又は全体を冷却されたヘッドに接触させる方法等がある。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
上記の一般式で示される本発明のコレステロール誘導体の具体例を以下に例示する。
【化4】

【化5】

【化6】

【0015】
(実施例1)
(化合物1の合成)
【化7】

上記の式(Formula 1)で示される化合物1を、下記の工程にしたがって合成した。
【化8】

【0016】
4-ヒドロキシ-4’-シアノ-ジフェニルブタジエン(Structure 1)は、まず、四塩化炭素中でMBSとベンゾイルパーオキシドを用いるP-トルニトリルのアリル臭素化反応によって69%の収率で4-シアノベンジルブロミドを合成した。さらにトリエチルホスファイトと反応してジエチル(P-シアノベンジルブロミド)ホスフォネートを得た(72%)。ホスフォネートエステルを乾燥したTHF中で水素化ナトリウムを使い4-メトキシシンナモアルデヒドと反応させ、84%の収率で、4-メトキシ-4’-シアノ-ジフェニルブタジエン(Structure 2)を得た。乾燥したジクロロメタン中でBBr3を用いてメチルエーテル結合を解離し目的のStructure 1を得た。続く12-ブロモドデカノールとの反応によりStructure 3を59%の収率で得た。Structure 3を乾燥したベンゼン中乾燥ピリジン存在下コレステリルクロロホルメートと反応させ53%の収率で相当するコレステロールとブタジエン部を含む化合物1(Formula 1)を得た。
【0017】
化合物1の同定データ:
IR ・max (KBr): 792, 850, 987, 1031, 1167, 1255, 1513, 1586, 1733, 2225, 2366, 2853, 2937cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ (ppm) 0.06-2.4 (m, 65H, cholesterol and aliphatic protons), 3.9-4.1 (m, 4H, OCH2, BrCH2), 4.61 (m, 1H, OCH), 5.43 (m, 1H, vinylic), 6.55-6.61 (d, 1H, J=15.4 Hz), 6.68-6.73 (d, 1H J=15.4 Hz), 6.78-6.82 (dd, 1H, J = 15.4 Hz), 6.85-6.88 (d, 1H), 6.99-7.02 (dd, 1H, J = 15.4), 7.3-7.4 (d, 1H), 7.46-7.49 (d, 1H), 7.57-7.6 (d, 1H); MS (FAB+) m/z 845 (M+, C57H81NO4); Anal. calcd. for C57H81NO4. C - 81.09, H - 9.67, N,-1.66. Found C- 80.96, H - 9.60, N - 1.59.
【0018】
(実施例2)
化合物2の合成:
【化9】

実施例1の方法で合成したStructure 1を11-ブロモウンデカノールと反応し、Structure 4を59%の収率で得た。得られたStructure 4を乾燥したベンゼン中乾燥ピリジン存在下コレステリルクロロフォルメートと反応し相当するコレステロールとブタジエン部を含む化合物2(Formula 2)を得た(収率50%)。
【0019】
化合物2の同定データ:
IR・max (KBr): 728, 801, 852, 949, 990, 1030, 1116, 1135, 1173, 1202, 1255, 1300, 1359, 1373, 1392, 1401, 1470, 1507, 1597, 1737, 2225, 2857, 2933, 3014 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ (ppm) 0.06-2.4 (m, 65H, cholesterol and aliphatic protons), 3.9-4.1 (m, 4H, OCH2, BrCH2), 4.61 (m, 1H, OCH), 5.43 (m, 1H, vinylic), 6.55-6.61 (d, 1H, J= 15.4 Hz), 6.68-6.73 (d, 1H J = 15.4 Hz), 6.78-6.82 (dd, 1H, J =15.4 Hz), 6.85-6.88 (d, 1H), 6.99-7.02 (dd, 1H, J = 15.4), 7.36-7.39 (d, 1H), 7.46-7.49 (d, 1H), 7.57-7.60 (d, 1H); MS (FAB+) m/z 830 (M+, C56H79 NO4) Anal. calcd. for C56H79NO4 C- 80.01, H - 9.59, N - 1.69. Found: C-80.06, H - 10.05, N - 1.83.
【0020】
(実施例3)
化合物3の合成:
【化10】

実施例1の方法で合成したStructure 1を8-ブロモオクタノールと反応し、Structure 5を59%の収率で得た。得られたStructure 5を乾燥したベンゼン中乾燥ピリジン存在下コレステリルクロロフォルメートと反応し相当するコレステロールとブタジエン部を含む化合物3( Formula 3)を得た(収率49%)。
【0021】
化合物3の同定データ:
IR・max (KBr): 795, 863, 990, 1033, 1179, 1255, 1513, 1586, 1733, 2225, 2369, 2853 cm-1; 1H NMR (CDCl3, 300MHz) δ (ppm) 0.67-2.4 (m, 52H, cholesterol and aliphatic protons), 3.9-4.1 (m, 4H, OCH2, BrCH2), 4.47 (m, 1H, OCH), 5.40 (m, 1H, vinylic), 6.55-6.61 (d, 1H, J=15.4 Hz), 6.68-6.73 (d, 1H J =15.4 Hz), 6.78-6.82 (dd, 1H, J=15.4 Hz), 6.85-6.88 (d, 1H), 6.99-7.02 (dd, 1H, J=15.4), 7.3-7.4 (d, 1H), 7.46-7.49 (d, 1H), 7.57-7.6 (d, 1H); 13C (CDCl3, 75MHz), δ (ppm); 55.31, 76.57, 76.99, 77.31, 114.22, 126.28, 126.46.127.76, 127.97, 129.43, 129.60, 132.37, 133.15, 135.14; MS (FAB+) m/z 788 (M+, C53H73NO4); Anal. calcd. for C53H73NO4: C- 80.77, H - 9.34, N - 1.78. Found: C-79.99, H - 9.27, N - 1.75
【0022】
(実施例4)
化合物4の合成:
【化11】

上記の式で示されれる化合物4を、次の工程にしたがって合成した。
【化12】

【0023】
4,4’-ジメトキシジフェニルブタジエン(Formula 6)をトリエシレングルコール中で水酸化カリウムで処理し4,4-ジヒドロキシジフェニルブタジエン(Formula 7)を得、更にヒドロキシブロモ化合物と処理することでスペーサー部が結合されたジフェニルブタジエンを得た(Formula 8、9)。得られたFormula 8、9を乾燥したベンゼン中で乾燥ピリジン存在下コレステリルクロロフォルメートと反応し最終生成物を得た。溶媒を減圧除去しジクロロメタンで抽出後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した化合物をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーによって生成し、無色の化合物4(Formula 4)を得た。
【0024】
化合物4の同定データ:
1H NMR; CDCl3 (300 MHz), δ (ppm): 0.8-2.4 (m, 62, aliphatic and cholesterol protons), 3.94-3.98 (t, 2H, -OCH2), 4.09-4.13 (t, 2H, -COOCH2), 4.45-5.40 (m, 3H), 6.86-6.90(m, 2H, olephinic), 7.26-7.41(m, 4H, aromatic). MS (MALDI-TOFF) m/z 1431 (M+, C96H150O8)
【0025】
(実施例5)
化合物5、6の合成:
【化13】

上記の式で示される化合物5を次のようにして合成した。
コレステロールを結合したシンナモアルデヒド(1当量)を1,4-ジオキサン(15ml)中1,3-インダンジオン(1当量)と共に室温で30分攪拌した。2滴の乾燥トリエチルアミンを加え終夜で攪拌した。反応終了後溶媒を減圧下で除去し、シリカゲルを固定相とし、酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒(5:95)を移動相とするカラムクロマトグラフィーによって生成した。最終生成物はジクロロメタンとエタノールの混合溶媒から再沈殿してオレンジ色の粉末として得られた。
【化14】

【0026】
化合物5の同定データ:
Yield: 12% IR ・max (KBr): 2939, 1735, 1680, 1575, 1465,1371,1257, 1163, 993, 827, 736, 528 cm-1; 1H NMR (300 MHz, CDCl3): ・ 1.01-2.41 (m, 56H, cholesteric and aliphatic), 4.02 (t, 2H, methoxy), 4.12 (t, 2H, methoxy), 4.47 (m, 1H vinylic ), 5.39 (m, 1H, methoxy), 6.92-6.95 (m, 1H, vinylic), 6.92-6.95 (d, 2H, aromatic), 7.34 (d, 1H, vinylic), 7.63-7.67 (m, 2H, aromatic), 7.76-7.79 (m, 2H, aromatic), 7.94-7.97 (m, 2H, aromatic), 8.29-8.38 (m, 1H, vinylic) ppm. Anal. calcd. for C54H72O6: C- 79.37, H - 8.88. Found: C-79.96, H - 8.78.
【0027】
X中のn-12のシンナモアルデヒドを用いて化合物5と同様に下記に示す化合物6を合成した。
【化15】

【0028】
(実施例6)
ブタジエンが結合したコレステロール誘導体の相転移特性:
ブタジエンが結合したコレステロール誘導体の相転移挙動を表1にまとめた。
【表1】

【0029】
(実施例7)
化合物1から6をコレステリック液晶温度で偏光顕微鏡観察したところコレステリック反射色が温度、圧力、シス異性体の量などの外部刺激によって変化する現象が見られた。
【0030】
(実施例8)
得られた化合物をキラルネマティック相の温度まで過熱すると温度に依存した一定の波長の光を選択的に反射する挙動が見られた。図1及び図2には、それぞれ化合物1及び化合物6の温度に対する反射バンドの変化を示す。反射バンドの波長は昇温と共に短波長シフトしフィルムの色は赤から緑へ変化した。そのフィルムを急冷することで色を保った安定なガラス状態を得た。
【0031】
(実施例9)
スメクティック相における化合物1を350nm領域の紫外線で照射すると等温相転移を起こしキラルネマティック相が現れた。形成されたコレステリック螺旋ピッチはシス/トランス異性対比によって大きく変化した。シス異性体の割合が増えるとピッチは短くなり反射バンドは短波長へシフトした。図3は温度を105℃に保ち紫外線の照射時間を変化させて得た試料の反射バンドの変化を示す。反射波長は照射時間を変化させることで近赤外から可視域まで変化する。得られたフィルムを急冷却することでいかなる色をも安定なガラス状態として固定することができる。
【0032】
(実施例10)
化合物1を2cm角の二枚のカバーガラス間に挟んだ。その際、10マイクロメーターの径を有するプラスチック製スペーサーを化合物中に分散することで試料膜厚を10マイクロメーターに保持するようにした。ヒーターで二枚のカバーガラスに挟んだ試料を200℃以上に加熱して溶融し、その後温度制御されたホットステージ上で105℃に保ち、光記録表示メディアとした。光記録表示メディアに対しデジタルライトプロセッサー(ミラーアレイ)と365nm光を選択的に透過する光学フィルターを装備した高圧水銀灯で光照射を行った。その際、デジタルライトプロセッサーはコンピュータから与えられる画像ファイルの色データをもとに、色調−反射率の変換を化合物1の特性に合わせて行った。光照射後に光記録表示メディアを氷水に浸漬して急冷し、画像を安定化させた。得られた光記録表示メディアの写真を図4に示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】化合物1の温度に対する反射バンドの変化を示す図。
【図2】化合物6の温度に対する反射バンドの変化を示す図。
【図3】温度を105℃に保ち紫外線の照射時間を変化させて得た化合物1の反射バンドの変化を示す図。
【図4】デジタルライトプロセッサーを装備した情報記録装置で記録した光記録表示メディアの写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式で示される、様々な強度のドナー及びアクセプター置換基を有するアリルブタジエンとコレステロールを異なる長さのスペーサーを介して結合した化合物。
【化1】

【請求項2】
上記式中のnが8,11又は12である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の化合物の温度を調整することで可視光の一部を選択的に反射して望みの色を呈するキラルスメティック相とし、その温度から急冷却することで化合物をガラス化して反射色を固定する方法。
【請求項4】
少なくとも一方が透明である2枚の基板間に、請求項1又は請求項2に記載の化合物を含む記録層を設けたことを特徴とする書き換え可能なカラー画像記録媒体。
【請求項5】
請求項4に記載のカラー画像記録媒体に350nm領域の光照射し、光照射部位で必要な色を発現させた後に急冷することによって色を安定化するカラー画像記録方法。
【請求項6】
請求項4に記載のカラー画像記録媒体に250nm領域の光を照射し、記録媒体に使われた化合物が等方相を示す温度まで昇温して別の均一な色もしくは無色にすることを特徴とするカラー画像消去方法。
【請求項7】
請求項4に記載のカラー画像記録媒体を含む照射する光量に応じて反射光または透過光の波長を異ならせる性質を有し、所定の温度範囲において当該性質を保持する記録媒体へ記録保持を行う情報記録装置であって、照射する光量と当該光量に応じた色との対応関係を記憶する色設定記憶手段と、電子情報として与えられる画像データの単位毎の色情報と位置情報の内、色情報を前記色設定記憶手段から与えられるデータをもとに対応する光量情報に変換する色情報変換手段と、前記位置情報と光量情報をもとに単位毎の光量を制御するマイクロミラーアレイを備えたことを特徴とする情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−127280(P2008−127280A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310051(P2006−310051)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】