説明

温度差画像形成用の自己冷却式基材

医療従事者が組織または皮膚表面の下側または近傍に位置する血管の位置を特定するのを助けるべく、血管の概ねの輪郭の画像を形成することができるデバイス及び医療技術を提供する。本発明のデバイスは、少なくともサーモクロミック色素を含む自己冷却式ポリマーゲルマトリックスから作製された基材を有し、身体の放熱部分に配置したときに、温度が異なる領域を互いに区別する手段を提供することができる。本発明のデバイスは、様々な治療または医療関連用途に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部の治療または医療関連用途に用いることができるデバイスに関する。特に、本発明は、少なくともサーモクロミック色素を含んでおり、放熱物体または身体に適用したときに、温度が異なる領域を互いに区別する方法を提供することができる自己冷却式ポリマーゲルパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
患者に対して行われる一般的な医療検査または処置は、患者の血液サンプルを採取し分析することや、患者に流体を注入することを伴うことが多い。これらの処置は、患者の血管、一般的には静脈への針の挿入を伴う。当然ながら、患者の静脈を穿刺するためには、まずは静脈の位置を把握しなければならない。静脈の位置を視覚的に見つけたり手で触って見つけたりできる場合は、静脈の位置を把握することは特に難しいことではない。目で見るかまたは手で触って静脈の位置を見つける可能性を高めるために、大抵の場合、針を挿入する標的領域と患者の心臓との間に止血帯(例えば、弾性ストラップ)が巻かれる。例えば、針を挿入する位置が手または肘の近傍である場合、止血帯は患者の上腕に巻きつけられる。この処置は、静脈を流れる血液の圧力差を生成する。ヒトの身体は、そのような圧力差に応答して、抵抗の低い伝達路を提供すべく静脈径を拡大させる。静脈径が拡大すると静脈が浮かび上がるので、患者の腕を目で見るかまたは手で触って静脈の位置が見つかる可能性が高まる。しかし残念ながら、静脈径を拡大させるこの手法が常に成功するとは限らない。例えば、静脈は一般的に暗い色なので、患者の肌の色が暗い色である場合は、患者の腕の静脈を目で見つけるのはますます困難になる。また、患者が幼児、肥満者、高齢者である場合も、目で見ることや手で触ることによって静脈を見つけることは困難となる。これらの患者は一般的に静脈が肌の表面から大幅に離間しているため、目で見たり手で触ったりして静脈を見つけることが困難となる。
【0003】
そのため、静脈の位置を把握するための様々な技術が開発されている。医療従事者及び臨床研究者は、恒温動物の静脈または一般的な循環系の熱画像形成(サーマルイメージング)に関心を持っている。サーモクロミックインク溶液の使用は、皮膚の真下の静脈の位置を把握するための簡潔で効果的な技術のいくつかの利点を示唆する。そのような技術の1つは、静脈の近傍の皮膚の温度は皮膚の他の部分の温度よりも高いという事実に基づいている。静脈の近傍の皮膚の温度を検出するために、所望の温度で変色する液晶材料が用いられている。色のコントラストを高めるために、前記液晶材料は一般的に、透過光を吸収する役割を果たす黒い下地と共に用いられ、前記黒い下地を背景にして視認される。米国特許第3,998,210号(Nosari)(特許文献1)には、例えば、身体内の静脈の位置を見つけるための黒い下地を含む積層物品中にカプセル化された液晶の使用について記載されている。色のコントラストを高めるための別の技術は、米国特許第4,175,543号(Suzuki他)(特許文献2)に記載されており、この技術は、静脈の真上の皮膚表面とその隣接領域との間の温度勾配を高めるために、マイクロカプセル化した液晶を適用する前または後に冷湿布で皮膚を冷却することを含んでいる。この温度勾配は、静脈を認識するために、静脈の明確な形状を提供するとされている。しかし、この従来の静脈位置把握方法の問題の1つは、使用される液晶材料は一般的に色密度が低く、色選択性が低く、さらに高価であることである。さらに、この方法は、非常に複雑であり、色コントラストや冷却などのユーザが行わなければならないいくつものステップを必要とする。
【0004】
したがって、血管の位置または有無を迅速に把握するための簡潔で、効率的で、かつ効果的な方法が現在求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,998,210号明細書
【特許文献2】米国特許第4,175,543号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一つには、医療従事者が患者の皮膚表面近傍に位置する血管網をより容易に視認できるようにする熱画像形成物品または補助具に関する。より具体的には、本発明は、例えばヒトや哺乳類の身体などの放熱体の様々な領域から伝達される熱の温度に応じて変色することができる感温性基材に関する。本発明の感温性基材は、少なくともサーモクロミック色素を含んでいる自己冷却式ポリマーゲルマトリックスから作製された膜、フィルム、シートまたはゲルパッドであり得る。サーモクロミック色素は、ゲルマトリックス中に混合されるか、あるいはゲルマトリックスの一方の主面上に層として形成される。ゲルマトリックスは、所定の温度範囲(例えば、サーモクロミック色素の変色温度や、ポリマーマトリックスの下限臨界溶解温度(LCST))において、色、不透明度及び/または体積などの光学的または物理的性質の変化を示す。このような観察可能な変化は比較的素早く生じ、かつ容易に検出可能であるので、温度差または変化の視覚的表示に用いるのに好適である。サーモクロミック色素で被覆された面(すなわち、第1の主面)は、放熱体に接触させる。一方、サーモクロミック色素で被覆されていない面(すなわち、第2の主面)は、ユーザがサーモクロミック色素の変色を観察できるように、放熱体から離間して位置させる。変色の程度は大きいため肉眼で観察可能であり、△E値は、約15または20ないし約60または65の範囲である。本発明の感温性基材は、様々な平面状の形態を取ることができる。本発明の感温性基材の2つの主面間の厚さは、約0.1または0.2mmないし約7または8mmである。本発明の感温性基材は、第1の主面から第2の主面にかけて、言い換えれば一方の面から他方の面にかけて貫通形成された複数の孔を有し、前記複数の孔は、本発明の基材の主面上に所定の規則的なパターンでまたはランダムに配されている。サーモクロミック色素は、次のうちの1つであり得る。プロトン受容性色原体、または、コレステロール系の液晶もしくは脂肪酸誘導体を含んでいるマイクロカプセル。
【0007】
医療ケア関連目的では、本発明の感温性基材は、哺乳類の皮膚上に配置したときに前記皮膚に自己粘着することができる。また、本発明の感温性基材は、哺乳類の皮膚上に配置したときに局所的に放出される抗菌剤、鎮痛剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。また、患者が動いたときでも本発明の感温性基材と皮膚との間の緊密な接触を確実にするために、他の手段(例えば、接着剤、ゴムバンド、ゴムひも)を用いることもできる。これらの活性抗菌剤、殺菌剤または鎮痛剤は、ポリマーゲルマトリックスの表面上または該マトリックス中に均等に分布するように含まれ得るか、あるいは少なくとも一方の主面上にコーティングとして配される。サーモクロミック色素は、約35.0〜40.5℃の温度範囲での変色感度を有するべきである。正常なヒト体温の範囲(すなわち、一般に認められている平均中核体温である37.0℃(98.6°F)や平均口腔体温である36.8±0.7℃(98.2±1.3°F))を含む約36〜38℃の温度範囲において良好な感受性を有することが望ましい。自己冷却式ポリマーゲルマトリックス(例えばヒドロゲル)は、放熱体に対して適用したときに、冷却剤(例えば水)が蒸発するように設計されている。
【0008】
上述したように、本発明の感温性基材に含まれる感温性色素は、患者の皮膚上に配置したときに、本発明のゲルパッドの色または不透明度の変化をもたらすことができる。本発明のゲルパッドは、動脈または静脈の概略位置の真上に、皮膚の表面に接触配置される。周囲よりも温度が高い主要血管に近い皮膚領域と、主要血管から離れた位置にある周囲組織の皮膚領域との間での皮膚温度の相対差により、針を挿入するための標的となる皮膚内の血管の大体の位置を知ることができる。自己冷却式ゲルは、皮膚の局所的な温度を低くし、そのことにより、血管の真上の皮膚表面とその周囲領域との間の温度勾配を大きくすることができる。例えば、ヒドロゲルマトリックスの場合、本発明は、ヒドロゲルの連続的な水蒸発冷却によって、血管のはっきりとした画像を形成することができる。さらに、ヒドロゲルは温度勾配を長時間維持することができるので、医療従事者は長時間に渡って、静脈の画像をはっきりと視認することができる。
【0009】
別の態様では、本発明は、患者身体における周囲組織よりも温度が局所的に高い身体領域を検出し、熱画像を形成する方法に関する。本発明の方法は、サーモクロミック着色剤を含んでいる自己冷却式ポリマーゲル基材を用意するステップと、前記ヒドロゲルポリマー基材を、哺乳類の身体における放熱部分上に配置するステップと、前記ヒドロゲルポリマー基材により覆われた身体領域における、前記ヒドロゲルポリマー基材で覆われた領域における、温度がより高い身体領域とそれに隣接する温度がより低い身体領域との間の温度勾配により生じる色のコントラストを観察するステップとを含む。例えば、本発明の自己冷却式ポリマーゲル基材は、哺乳類の身体における、皮下動脈または静脈網が組織または皮膚の表面の近傍(例えば、約1〜3cm以内)に位置する領域に配置することができる。例えば、本発明は、薬物送達のための皮膚パッチを貼る標的領域の位置を特定するために用いることができる。
【0010】
また、本発明は、血管の位置を見つけるための方法に関する。本発明の方法は、約35.0〜40.5℃の温度範囲で変色するサーモクロミック着色剤を含んでいる自己冷却式ヒドロゲルポリマー基材を用意するステップと、前記ヒドロゲルポリマー基材を、血管が通っている身体部分の素肌上に配置するステップと、前記ヒドロゲルポリマー基材で覆われた領域における、温度がより高い身体領域とそれに隣接する温度がより低い身体領域との間の温度勾配により生じる色のコントラストを観察するステップと、前記ヒドロゲルポリマー基材により熱画像化された血管に皮下注射針またはカニューレを挿入するステップを含む。前記ヒドロゲルポリマー基材は、血管とその周囲組織との間に温度勾配が存在する状態を最大で約6または7分間に渡って維持し、画像コントラストの視認を向上させることができる。
【0011】
本発明のデバイス及び方法のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明により明らかになるであろう。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明及び例は、単に本発明の例示であり、本発明を理解するための概要を提供することを意図したものであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明のゲル基材の概略図であり、サーモクロミック色素を基材のポリマーゲルマトリックスの全体中に均一に分散させた実施形態を示す。
【図1B】本発明のゲル基材の概略図であり、サーモクロミック色素をゲル基材の下面に層または薄膜として形成した実施形態を示す。
【図2A】複数の小孔が形成されたゲル基材の概略上面図を示す。
【図2B】図2Aのゲル基材の拡大横断面図であり、ゲル基材を貫通する複数の経路すなわち孔を示している。皮下注射針の先端が1つの孔を通ってゲル基材の真下の皮膚にまさに穿刺されようとしている状態を示す。
【図3】本発明の自己冷却式ゲル基材をヒトの腕(肘の内側)と手の甲に適用した状態を示している。
【図4】本発明の自己冷却式ゲル基材を図3のようにヒトの手の甲に適用して生成した、皮膚の真下の血管の温度差画像の写真である。
【図5】本発明の自己冷却式ゲル基材を図3のようにヒトの腕の肘の内側に適用して生成した、皮膚の真下の血管の温度差画像の写真である。
【図6】本発明の自己冷却式ゲル基材をヒトの前腕の一部に適用して生成した、皮膚の真下の血管の温度差画像の写真である。
【図7】自己冷却式ゲル基材(図1Bのタイプ)を人の手の甲に適用して生成した別の画像である。
【図8】(A)〜(D)は、自己冷却式基材を用いずにサーモクロミックインクのみを皮膚上に直接的に塗布した場合の、ヒトの手の甲の皮膚の真下の血管の温度差画像の経時的な変化を示す一連の写真である。
【図9】(A)〜(G)は、本発明の実施形態によるゲル基材で被覆されたヒトの手の甲の皮膚の真下の血管の温度差画像の経時的な変化を示す一連の写真である。温度差画像は、(A)〜(G)まで約1〜2分間に渡って現れ、皮下の血管網の輪郭を明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般的に、本発明は、医療従事者が、組織または皮膚表面の下側または近傍に位置する表在血管網(すなわち、約0.2〜0.5cmまたは約1〜2cm以内)の位置を特定するのを助けるべく、表在血管網の概ねの輪郭の画像を形成することができるデバイス及び治療技術に関する。例えば、本発明を用いることにより、医療従事者が採血または静脈ラインの挿入をより容易に行うのを支援することができる。逆に言えば、本発明のデバイスは、医療従事者が、血管を避けたり、大静脈または大動脈がほとんど存在しない領域を特定したりするのを支援することができる。いくつかの実施形態では、適切に殺菌するという条件付きで、本発明は、外科手術中に内部組織または器官の表面に対して適用することもでき、周囲よりも温度が高い対象部位(例えば、血管が密集しており、血流量が異常に多いがん組織)の画像を形成し、肉眼で視覚的に認識することができるようにすることにより、外科医は前記対象部位を避けたり標的にしたりすることができる。画像形成の対象となる体内部位は、その周囲の組織に対して、約0.1または0.2℃ないし約2または3℃またはそれ以上の温度差を有し得る。
【0014】
本発明のデバイスは、少なくともサーモクロミック色素または染料5を含んでいる自己冷却式ポリマーゲルマトリックスから作製された基材10を含む。サーモクロミック色素5は、ポリマーマトリックス11中に混合されるか(図1A)、または基材10の主面14、16の一方にフィルムまたはコーティング12として形成される(図1B)。サーモクロミック色素5は、本発明のゲル基材で覆われた領域から放出された熱の相対量に応答して変色し、このことにより、温度がより高い領域と温度がより低い領域との間での視覚的に区別することができる色のコントラストが提供される。図2Aに示すように、複数の孔18が、基材10の表面14上に所定のパターンで形成されている。孔18は、ランダムに分布するようにしてもよいし、等間隔のパターンで規則的に配列するようにしてもよい。各孔間距離(孔の中心間の距離)は、各孔の平均幅または直径を超えず、各孔の平均幅または直径と略同一の寸法にすべきである。図2Bに示すように、各孔18は、第1の主面14から第2の主面16にかけてゲル基材10を貫通している。寸法通りには示していないが、各孔18は、皮下注射針19の直径または幅に適合するように形成されており、ユーザは、注射するときや血管から採血するときに感温性基材10の真下の患者の皮膚22へアクセスする際に、基材10のポリマーマトリックス11を穿通する必要がなく、前記針またはカニューレを前記孔を通じて挿入することができる。前記孔は、約0.05または0.07mmないし約1mm、一般的には約0.1または0.2mmないし約0.5mmの幅を有し得る。
【0015】
自己冷却式ポリマーゲルマトリックスは、感温性色素または染料を含む比較的薄いパッド(例えば、約0.25〜0.5または0.75mm、あるいは1または2〜3mm、あるいは最大で約5〜6または7mmまでの厚さ)として作製することができる。そのような薄いパッドは、血管が皮膚表面に浮かび上がっている身体部位(例えば、首/喉、手の甲、肘の裏側または前腕上、足の甲または脚)に配置される。図3は、各部位の下側の血管の温度差画像25を形成するために、ヒトの手の甲の領域20及び腕の肘の内側(後肘部)の領域30に配置された2つの自己冷却式基材10を示している。これらの解剖的部位に対して良好に適合するように構成するために、本発明の感温性基材は、非限定的な様々な平面的な幾何学的形状を取ることができる。例えば、本発明の感温性基材は、正方形または他の矩形状、円形または楕円形、二葉状(bi-lobal)または砂時計状、凸面状及び/または凹面状の不規則形状、あるいは、互いに対して略直交する長軸及び短軸を有する形状であり得る。一般的に、ヒトに使用する場合は、正方形または矩形、円形または楕円形、あるいは二葉状を有し、辺、直径または主軸に沿って約3、4または5cm、ないし約7、8または10cmの寸法を有するものが用いられ得る。他の哺乳類に使用する場合は、実際の寸法は、動物の大きさに応じて、辺、直径または主軸に沿って約1または2cmないし約20または30cmあるいはそれ以上であり得る。なお、身体に対して比較的強固に取り付けることができる限りは、本発明の基材はどのような形状または形態であってもよい。
【0016】
一実施形態によれば、本発明の自己冷却式ゲル基材は、サーモクロミック色素を含んでいる薄い感温層を一方の面に有するヒドロゲルマトリックスから作製することができる。本発明のゲルパッドの前記感温層は、哺乳類の皮膚上に直接的に接触させて配置することができる。前記色素は、平均的なヒト体温(すなわち、〜98.2ないし98.6°F)に適合する感温活性範囲を有することが望ましい。一般的に、健康的な成人の平均的な口腔体温は、約37.0℃(98.6°F)であり、正常範囲は、約36.1℃(97.0°F)から約37.8℃(100.0°F)までの範囲である。また、別の実施形態では、幼児または小さい子供の体温に良好に適合する様々な感温性色素を組み込むこともできる。
【0017】
サーモクロミック染料または色素が本発明の感温性基材のポリマーマトリックス中に混合されている図1Aの実施形態の感温性基材は、総重量パーセントで、ゲル、色素及び水を2:10:0.5ないし5:50:200の比率で有する組成物を含み得る。特定の望ましい実施形態では、ゲル、色素及び水の重量比は、例えば、2:1:100、3:1:160、3:2:150、または4:2:200であり得る。サーモクロミック色素がゲル基材を被覆する別個の層またはフィルムとして形成された図1Bの実施形態では、色素及び水の重量比は0.25〜10:100の範囲であり得る。特定の望ましい実施形態では、色素:水の比率は重量で0.5〜5:100であり得る。ポリマーの組成量(ゲル以外)の重量パーセントは、組成物に含まれるポリマーの種類に依存する。例えば、ゲル基材の引張強度または弾性などの特定の所望の物理的特性を実現するために含まれるポリマーの量は、用いられるポリマー材料の種類によって異なるからである。例えば、水中の0.5〜5wt%のアガロース(例えば2wt%が望ましい量である)が、ゲル基材に対して良好な物理的特性を提供することができる。また、5〜20wt%(例えば10wt%)のアクリルアミドが同様の良好な物理的特性を提供することができる。
【0018】
ヒドロゲル(「アクアゲル」とも呼ばれる)は、不水溶性のポリマー鎖網であり、分散媒が水であるときはコロイド状ゲルとして見られることもある。ヒドロゲルは、高吸収性(水を99%以上含むことができる)の天然または合成ポリマーである。また、ヒドロゲルは水含有量が非常に多いので、天然組織とよく似た柔軟性を有する。このことにより、ヒドロゲルは、静脈画像形成の用途のために皮膚の輪郭に密接に接着させるための理想的な候補となる。ヒドロゲルの構造は、液体媒体の体積に及ぶ固形三次元ネットワークから構成される。この内部ネットワーク構造は、物理的または化学的結合、あるいは、増量流体内で元の状態を保つ結晶または他の結合から得られる。増量剤としては事実上あらゆる流体を用いることができ、そのようなものとしては、水(ヒドロゲル)やオイル(オルガノゲル)がある。重量と体積の両方においてゲルの大部分は組成物内で流動性であるため、ゲルを構成する液体と同様の密度を示す。ヒドロゲルの組成には、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、及び、親水性基が豊富なアクリレートポリマー及び/またはコポリマーが含まれ得る。天然のヒドロゲル材料としては、例えば、アガロース、メチルセルロース、ヒアルロナン、または他の天然由来ポリマーが挙げられる。
【0019】
ヒドロゲルによる連続的な水気化冷却によって、血管の真上の皮膚表面領域とそれに隣接する皮膚表面領域との間の温度勾配が大きくなるので、ヒドロゲルマトリックスの使用中は相対的な皮膚温度を下げることができる。ヒドロゲルは、皮膚を冷却するのに十分に低い蒸発エンタルピーを提供する。一般的に言えば、前記冷却剤(ヒドロゲル)は、約45kJ/モルまたはそれ以下、ある実施形態では約40kJ/モルまたはそれ以下、別のある実施形態では約5〜39kJ/モルの気化潜熱を有する。ヒドロゲルの冷却効果は、温度勾配のコントラストの画像をより良く形成することができる期間を長くすることができる。また、このことは、温度がより高い血管とその周囲の温度がより低い組織との間の色のコントラストをより大きくし、より鮮明な画像を形成することを可能にする。また、血管を迅速に認識することが可能となる。一般的に、前記画像は、本発明の基材を皮膚表面上に配置した後の1または2分以内に形成される。
【0020】
ある実施形態の例では、図1Bに示すように、感温性をより向上させるために及びより良い視覚的コントラストを生成するために、本発明のゲル基材の皮膚接触面に薄い感温層が形成される。ある場合では、図2A及び図2Bに示すように、皮下注射針を患者に挿入したときに皮下注射針の内孔が塞がらないようにするために、前記ゲルシートに、皮下注射針がゲルシートを貫通するのを可能にする孔アレイを孔を形成することができる。画像形成された血管網をトレースするために、ゲルパッドの表面にペンまたは他の筆記用具で印をつける。このことにより、本発明のゲル基材が患者上の元の位置から移動しない限りは、血管の温度とその周囲組織の温度とが等しくなり実際に形成した熱画像が見づらくなったときでも、本発明のゲル基材の下側の血管の位置を医療従事者が容易に認識することができる。ゲルパッドをキャスティング成形する場合は、規則的にまたはランダムに配置された複数の直立ピン、バンプまたは突起部を有する金型を用いて孔を形成することができる。
【0021】
これに対して、サーモクロミックインク溶液のみを皮膚表面上に直接に塗布する方法などの、血管を可視化するための他の方法にはいくつかの欠点があった。第1に、塗布した溶液が十分に乾燥するまで待つ必要があり、それまでは作業をすることができなかった。第2に、温度勾配を最大化させるために、インク溶液を塗布する前あるいは後に皮膚の温度が血管の温度よりも低くなるようにさせる必要があった。そうしないと、血管とその周囲組織との視覚的な解像度が低かった。第3に、塗布後、周囲環境条件に依存して、インク溶液は皮膚の平衡温度に短時間で順応する傾向にある。温度勾配差が比較的小さいため、サーモクロミックインクの塗布後短時間で、静脈はその実際の寸法よりも太く現れる傾向がある。このような方法では、皮膚が短時間で元の状態に戻るため、静脈の真上の皮膚表面とそれに隣接する領域との間の温度勾配が小さくなったときに解像度が損なわれる傾向があり、最終的には静脈が識別できなくなる。この現象により、医療従事者は、皮膚と静脈との間の温度勾配のはっきりとしたコントラストが平衡化し消えるまでの比較的短い時間(一般的には1または2分間未満)しか作業することができない。前記サーモクロミック色素は、区分された領域において変色することができる。
【0022】
本発明の基材における温度差の視覚的な色コントラストは、客観的に特徴付けることができる。初期の色相または色から別の色相または色までのシフトは、変色の観察の容易さの程度を表す△E値によって特徴付けることができる。色調または色相の差異がわずかである場合は、色の差異を認識することが困難になる。熟練者の場合、色の差異を肉眼で認識することができる△E値の閾値は約3である。より一般的な観察者の場合、視覚的な差異または変色は、△E値が約5または6のときに認識可能となる。したがって、本発明による光学的または色表示機構は、3よりも大きい、望ましくは5またはそれ以上、より望ましくは10またはそれ以上の△E値を示す。ある場合では、コントラストの△E値は、約12〜15または20から約70または80〜85までの範囲であり得る。一般的に、前記△E値は、約20〜40または50から約60〜65までの範囲である。
【0023】
本発明では、ヒドロゲルマトリックスは、単独で用いた場合でも、あるいは望ましくは配置パッドにおいて感温性色素と組み合わせた場合でも、素肌の表面上に配置したときに、温度勾配を長時間維持し、可視化コントラスト画像を向上させることができる。温度勾配が存在する状態を、最大で約5〜6分間または7分間まで維持することができる。一般的に、皮下血管の温度差画像を最も明確に認識できるのは、約20〜30または45秒間から約2〜3または4分間である。高い視覚的コントラストが得られる最適期間は、約1.5または2分間から約4または5分間であるべきである。この長い期間は、医療従事者が、静脈を効率的に認識し、採血や静脈(IV)ラインの挿入などの医療処置を実施するための十分な期間を提供する。
【0024】
サーモクロミック色素またはインクは治療対象(例えばヒトまたは動物)の皮膚に対して適用されるので、検出感度を高めるためには、本発明のヒドロゲル基材上に形成されるコーティングの厚さは比較的薄いことが望ましい。例えば、前記厚さは約0.01〜5mm、ある実施形態では約0.01〜3mm、別のある実施形態では0.1〜2mmであり得る。所望の厚さは、患者の皮膚に対してサーモクロミックインクを直接的に適用することによって実現することができる。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、サーモクロミック添加剤を含めることを必要とせずに、本発明の感温性ヒドロゲルマトリックス自体が、静脈を認識するための利点を提供することができる。本発明の感温性ヒドロゲルは、その温度が、例えば下限臨界溶解温度(LCST)などの既定の温度に近づいたときに、別の言い方をすれば、ヒドロゲルポリマー鎖が収縮または縮小して不透明(例えば白色)になる温度になったときに、劇的に変色する。例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(pNIPAAm)ゲルは、LCSTよりも低い温度では透明及び膨張状態になり、LCSTよりも高い温度では不透明及び収縮状態へ劇的に変化する。この特徴は、LCSTを超えたときに、ゲルネットワーク内のポリマー鎖が急激に崩壊して凝集することにより生じる。透明状態から不透明状態への遷移は、非常に素早く、可逆的であり、かつ容易に認識することができる傾向にあるので、このことは、温度変化または温度差の視覚的表示に用いることができる。前記遷移温度は、ゲル組成物の組成を変更することにより変更することができる。例えば、ゲル組成物中に、溶液全体の重量の0〜15%のアルコール(例えば、メタノール、エタノール)を加えると、pNIPAAmゲルのLCSTを25〜32℃の範囲に変更することができる。
【0026】
本発明の感温性ヒドロゲルマトリックスは、適切なLCST挙動を示すように設計されている。静脈に隣接する領域上に配置された本発明の感温性ゲルは、観察可能な外観変化を示さない。感温性ヒドロゲルマトリックスはまた、温度勾配を大きくするために皮膚を冷却することや、性能を向上させるために皮膚に対して密接に接触することなどのさらなる利点も提供する。
【0027】
一部の実施形態では、前記ヒドロゲルは、アガロースを2wt%となるように水に溶解させた後、金型内で冷却することにより作製され、その後、前記固形ゲルの上面にサーモクロミック色素をなだらかに塗布することができる。サーモクロミック色素はインクであり得、Matsui International Co. Inc.社製の感温性マイクロカプセルを49wt%の量で含有している水性スラリーをコーティングすることにより、層として形成することができる。前記マイクロカプセルは、プロトン受容色原体を含む。溶液中では、酸性pHレベル(例えば、約4またはそれ未満のpH)のときは、色原体のプロトン化形態が優勢である。一方、プロトン化によって前記溶液がアルカリ性になった場合、変色が生じる。プロトン受容性色原体のある特定の適切な種類はロイコ染料であり、そのようなものとしては、例えば、フタリド、フタラン、アシル−ロイコメチレン化合物、フルオラン、スピロピラン、クマリンなどがある。例示的なフルオランとしては、例えば、3,3´−ジメトキシフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−ブトキシフルオラン、3−クロロ−6−フェニルアミノ−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチル−7,8−ベンゾフルオラン、3,3´−ビス−(p−ジメチル−アミノフェニル)−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−フェニルアミノ−フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニル−アミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノ−フルオランがある。同様に、例示的な、フタリドとしては、3,3´,3´´−トリス(p−ジメチルアミノ−フェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチル−アミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジエチルアミノ−フェニル)−6−ジメチルアミノ−フタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−メチル)フェニル−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリドがある。さらなる別の適切な色原体は、米国特許第4,620,941号(Yoshikawa他)、米国特許第5,281,570号(Hasegawa他)、米国特許第5,350,634号(Sumii他)、米国特許第5,527,385号(Sumii他)に記載されており、これらの特許文献の内容全体は本明細書に援用されるものとする。
【0028】
所望の温度での色原体のプロトン化を促進するために、減感剤も感温変色性マイクロカプセルに含まれ得る。より具体的には、減感剤の融点よりも低い温度では、色原体は一般的に第1の色(例えば白)を呈する。減感剤がその溶融点まで加熱された場合、色原体がプロトン化され、それによって、色原体の吸収極大がスペクトルの赤端(深色シフト)または青端(浅色シフト)へシフトする。変色の性質は様々な要素に依存し、そのような要素としては、使用されるプロトン受容性色原体の種類や、追加的な感温性色原体の存在がある。変色は一般的には可逆性であり、色原体は冷却されたときに脱プロトン化する。任意の減感剤を本発明に使用することができるが、一般的には減感剤は低揮発性のものが望ましい。例えば、減感剤は、約150℃またはそれ以上の、ある実施形態では約170〜280℃の沸点を有し得る。また、減感剤は、一般的には約26〜34℃、ある実施形態では約28〜33℃の融点を有し得る。好適な減感剤の例としては、約6〜30個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和アルコール(例えば、オクチルアルコール、ドデシルアルコール、ウラリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ビフェニルアルコール、ゲラニオール)、約6〜30個の炭素原子を含んでいる飽和または不飽和アルコールのエステル(例えば、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ラウリル、ステアリン酸ラウリル、ラウリン酸ステアリル、ミリスチン酸塩メチル、ミリスチン酸塩デシル、ミリスチン酸塩ラウリル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸ラウリル、パルミチン酸デシル、パルミチン酸グリセリド)、アゾメチン(例えば、ベンジリデンアニリン、ベンジリデンラウリルアミド、o−メトキシベンジリデンラウリルアミン、ベンジリデンp−トルイジン、p−クミルベンジリデン)、アミド(例えば、アセトアミド、ステアリン酸アミド)などが挙げられる。
【0029】
変色性マイクロカプセルは、色変化の可逆性を促進するために、プロトン供与剤(「顕色剤」とも呼ばれる)も含み得る。そのようなプロトン供与剤としては、例えば、フェノール、アゾール、有機酸、有機酸のエステル、有機酸の塩が挙げられる。フェノールの例としては、フェニルフェノール、ビスフェノールA、クレゾール、レゾルシノール、クロロルシノール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ピロカテコール、ピロガロール、p−クロロフェノール−ホルムアルデヒド縮合物の三量体などが挙げられる。アゾールの例としては、ベンゾトリアゾール(例えば、5−クロロベンゾトリアゾール、4−ラウリルアミノスルホベンゾトリアゾール、5−ブチルベンゾトリアゾール、ジベンゾトリアゾール、2−オキシベンゾトリアゾール、5−エトキシカルボニルベンゾトリアゾール)、イミダゾール(例えば、オキシベンズイミダゾール)、テトラゾールなどが挙げられる。有機酸の例としては、芳香族カルボン酸(例えば、サリチル酸、メチレンビスサリチル酸、レゾルシル酸、没食子酸、安息香酸、p−オキシ安息香酸、ピロメリット酸、b−ナフトエ酸、タンニン酸、トルイル酸、トリメリット酸、フタル酸、テレフタル酸、アントラニル酸)、脂肪族カルボン酸(例えば、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、ラウリン酸)などが挙げられる。エステルの例としては、アルキル部分が1〜6個の炭素原子を有する、芳香族カルボン酸類のアルキルエステル類(例えば、没食子酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、サリチル酸メチル)が挙げられる。
【0030】
上述した成分のカプセル化は、使用時のサーモクロミックインクの安定性を向上させる。例えば、色原体、減感剤、顕色剤または他の成分を、界面重合法やin-situ重合法などの任意の従来の方法によって、ポリマー樹脂(例えば熱硬化性)に混合させることができる。適切な熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フタル酸ジアリル樹脂、ビニルエステル樹脂などが挙げられる。そして、得られた混合物を粒状にし、随意的に、親水性高分子化合物(例えば、アルギン酸及びその塩、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン)または半合成高分子化合物(例えば、メチルセルロース、カチオン化デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチル化デンプン、ビニール・ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、マレイン酸共重合体)などでコーティングする。得られたマイクロカプセルは、一般的に、約5nm〜25mm、ある実施形態では10nm〜10mm、別のある実施形態では50nm〜5mmの平均粒子サイズを有する。様々な他の適切なカプセル化技術が、米国特許第4,957,949明細書(Kamada他)、米国特許第5,431,697号明細書(Kamata他)及び米国特許第6,863,720号明細書(Kitagawa他)に記載されており、これらの特許文献の内容全体はこの参照により全ての目的のために本明細書に援用されるものとする。市販のカプセル化されたサーモクロミック基材は、日本国京都府所在のMatsui Shikiso Chemical Co., Ltd.社から「Chromicolor」(例えばChromicolor AQ-Ink)の商品名で販売されている。また、米国イリノイ州ストリームウッド所在のColor Change Corporation社からも入手可能である(例えば、遷移温度が33〜41℃の黒色ロイコ粉末、遷移温度が28℃の赤色ロイコ粉末、遷移温度が31℃の黄色ロイコ粉末、遷移温度が33〜36℃の青色ロイコ粉末)。
【0031】
変色性マイクロカプセルの作製に使用されるポリマー樹脂(例えば熱硬化性)の量は様々であり得るが、一般的には、マイクロカプセルの約20〜80wt%、ある実施形態では約30〜70wt%、別のある実施形態では約40〜60wt%である。使用されるプロトン受容性色原体の量は、マイクロカプセルの約0.1〜20wt%、ある実施形態では約0.5〜15wt%、別のある実施形態では1〜10wt%であり得る。プロトン供与剤は、マイクロカプセルの約0.5〜30wt%、ある実施形態では約1〜20wt%、別のある実施形態では約2〜15wt%を構成し得る。加えて、減感剤は、マイクロカプセルの約10〜70wt%、ある実施形態では約15〜60wt%、別のある実施形態では約20〜50wt%を構成し得る。
【0032】
感温変色性マイクロカプセルに含まれる成分の性質及び重量%は一般的に、皮膚の静脈領域において、所望の活性化温度(一般的には約26〜34℃、ある実施形態では約28〜33℃)で、インクがある色から他の色へ変化するか、無色からある色に変化するか、あるいはある色から無色に変化するように選択される。しかし、所望の活性化温度は、身体部位によって異なり得る。例えば、最大皮膚温度は、通常は、静脈穿刺のための最も一般的な部位である、腕の肘前窩及び上前腕部位(例えば、肘の内側)の静脈上で観察され、約32℃である(検査室の温度は約21〜25℃とする)。静脈穿刺のための別の部位としては、例えば、静脈上の最大皮膚温度が通常は約30℃である上肢のさらなる部位(例えば、手、手首、前腕部位の残りの部分)や、静脈上の最大皮膚温度が通常は約28℃である下肢(例えば、足、脚)が挙げられる。上述のことを踏まえて、前記活性化温度は、所望する身体部位に合わせて設定する。例えば、前記活性化温度は、肘前窩部位では、約30〜34℃、ある実施形態では約31〜33℃に設定し、上肢では、約28〜32℃、ある実施形態では約29〜31℃に設定し、下肢では、約26〜30℃、ある実施形態では約27〜29℃に設定する。
【0033】
他の実施形態によれば、本発明のゲル基材は、ヒドロゲルマトリクスに加えて、他の適切な冷却剤を含み得、そのようなものとしては、例えば、グリコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、ジプロピレングリコール)、グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、イソプロピルグリコールエーテル)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、ブタノール)、トリグリセリド、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ジエチレングリコールエーテル、酢酸メトキシプロピル)、アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、カプリル酸ジメチル/カプリン脂肪酸アミド、N−アルキルピロリドン)、ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル)、スルホキシドまたはスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン)などが挙げられる。また、例えば有機溶媒などの特定の溶媒は、静脈穿刺中の感染または汚染の危険性を減らすことができる殺菌及び/または抗菌性を有し得る。例えば、エタノール(蒸発エンタルピーは38.6KJ/mol)やメタノール(蒸発エンタルピーは37.4KJ/mol)などの有機溶媒が適切な冷却剤であり得、皮膚に対する殺菌効果も提供する。
【0034】
溶媒を使用する場合、溶媒の総濃度は様々であり得るが、一般的にはサーモクロミックインクの約30〜50wt%、ある実施形態では約40〜50wt%、別のある実施形態では約50〜90wt%であり得る。同様に、変色性マイクロカプセルの総濃度は約1〜70wt%、ある実施形態では約5〜60wt%、別のある実施形態では約10〜50wt%であり得る。当然ながら、使用される溶媒の具体的な量は、所望する固形成分量及び/またはサーモクロミックインクの粘度に部分的に依存する。例えば、前記固形成分量は、約0.01〜30wt%、ある実施形態では約0.1〜25wt%、別のある実施形態では約0.5〜20wt%であり得る。サーモクロミックインクの固形成分量を変更することにより、前記インクに含まれる変色性マイクロカプセルの量を制御することができる。例えば、マイクロカプセルを高い割合で含むサーモクロミックインクを作製するためには、前記インクに変色性マイクロカプセルが高い割合で含まれるように、前記組成物は比較的多い固形成分量を有し得る。加えて、サーモクロミックインクの粘度は、適用方法及び/または使用される溶媒の種類によっても異なり得る。前記粘度は、25℃、12rpmで作動させたSpindle No. 18を用いてBrookfield DV-1粘度計で測定すると、一般的に約1〜200パスカル秒、ある実施形態では5〜150パスカル秒、別のある実施形態では10〜100パスカル秒であり得る。所望に応じて、粘性を増加または減少させるために、増粘剤または他の粘度調製剤をサーモクロミックインクに用いることもできる。
【0035】
サーモクロミックインクはまた、当該技術分野で公知の他の成分も含有することができ、そのような成分としては、例えば、担体(例えば水)や、共担体(例えば、ラクタム、N−メチルピロリドン、N−メチルアセトアミド、N−メチルモルホリン−N−オキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、プロピレングリコール−モノメチルエーテル、テトラメチレンスルホン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、トリエタノールアミン(TEA))などがある。また、保湿剤を用いることもできる。保湿剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール200、300、400、600、プロパン1,3ジオール、プロピレン−グリコールモノメチルエーテル(例えば、米国カルフォルニア州サンタアナ所在のGallade Chemical Inc.社製のDowanol PM)、多価アルコール、またはそれらの組み合わせがある。さらに、サーモクロミックインクの使用中に観察される色を制御するために、追加的な感温性色原体を用いることもできる。前記インクの性能を高めるために他の添加物を含めることもでき、例えば、化学反応によって経時的に蓄積される金属イオンを封鎖するためにキレート剤を使用したり、プリンタまたはインク送達システムの金属成分を保護するために腐食防止剤を使用したり、インクの表面張力を調節するために界面活性剤を使用したりすることもできる。前記インクに使用され得る様々な他の成分(例えば、色素、安定剤、光開始剤、結合剤、界面活性剤、電解質塩、pH調整剤など)は、米国特許第5,681,380号明細書(Nohr他)及び米国特許第6,542,379号明細書(Nohr他)に記載されており、これらの特許文献の内容全体はこの参照により全ての目的のために本明細書に援用されるものとする。
【0036】
一部の実施形態では、本発明のポリマーゲル基材またはパッドに、局所抗生物質、殺菌剤、鎮痛薬剤、またはそれらの組み合わせが注入される。上記の薬剤は、本発明の基材を哺乳類動物の皮膚上に配置したときに、局所的に放出される。殺菌剤なる用語は、感染性細菌を破壊するため(殺菌性)または成長を抑制するため(静菌性)に、ヒト、他の動物または植物の生きている組織に適用される薬剤を指す。殺菌剤は、表面組織の細菌感染を防止または阻止するためか、あるいは機器または感染物質を消毒するために医療現場で使用される。内部感染または全身感染を治療するために経口的にまたは注射により投与されるか、または表面感染を治療または防止するために局所的に塗布され得る、例えば抗生物質とスルホンアミドなどの殺菌剤と化学療法剤は互いに区別するべきである。殺菌剤の主な種類は次の通りである。アルコールは、最も幅広く使用されている殺菌剤であり、特に、エチル及びイソプロピルアルコールがよく使用されており、70%の濃度で水と共に使用される。また、これらは、他の殺菌剤と組み合わせて幅広く使用される。フェノール類には様々な一般的な殺菌剤及び消毒剤が含まれ、それらの中でも、フェノール(岩炭酸)及びセルロース、そして、ヘキシルレソルシノール及びヘキサクロロフェンなどのビスフェノールが、殺菌剤としてせっけんにおいて幅広く使用されている。塩素及びヨウ素は両方とも非常に効果的な薬剤であり、高希釈度で使用することができる。次亜塩素酸塩溶液(例えば、デーキン溶液)は、手術現場で使用される。ヨウ素は、特にアルコール溶液で使用した場合、創傷に対して効果的な消毒剤である。第4級アンモニウム化合物は、殺菌剤としてよりも消毒剤としてより幅広く使用される。特定のアクリジン染料は、殺菌剤として使用され、或る芳香性を有するか、または本質的にオイルである。
【0037】
注射または穿刺の痛みを軽減するために、局所鎮痛剤を本発明のゲルマトリクスに加えるか、またはコーティング組成物として皮膚接触面に配することができる。そのような化合物としては、例えば、イブプロフェンまたはジクロフェナク含有ゲル、カプサイチン、リドカインがある。サリチル酸塩は炎症を抑えることにより痛みを軽減することができるので、サリチル酸塩を前記組成物に含めることもできる。前記組成物に含めることができる局所鎮痛剤の他の例としては、ラナケイン、ベンゾカイン、プレモキシアンがある。様々な皮膚疾患に関連する赤み、そう痒、腫れ、または痛みを治療するために、ハイドロコルチゾンを加えることもできる。
【0038】
実施例
【0039】
以下の例は、血管パターンの位置を視覚的に認識する方法に従って、本発明のデバイスの実施形態の使用を説明するものである。
【0040】
I.単層型のヒドロゲルマトリックス
【0041】
本発明の感温性基材は、単一のヒドロゲルマトリックス層で形成されており、前記ゲルマトリックスにはサーモクロミック色素が混合されている。色素が注入された本発明のゲルは、局所皮膚温度を調節することができる。基材ゲルマトリックスの全体厚さは、約0.1〜5mm、いくつかの実施形態では約0.5〜2mmであり得る。
【0042】
例1
【0043】
20gの蒸留水に0.4gのスーパーアガロース(OPTIMA USA, Inc.)を加え、アガロースが完全に溶解するまで加熱した(〜80ないし90℃)。上記のように調製したアガロース水溶液に、マゼンタ色の水性サーモクロミックインク(Matsui International Co. Inc.製のChromicolor AQ-Ink, type#25、遷移温度は31℃、水溶液中で49wt%、0.4g)を加えた後、前記染料とアガロースとが完全に混合するまで撹拌した(前記染料はアガロース溶液中で懸濁すると考えられている)。この混合物をゲルプレート金型に注ぎ、ゲルが形成されるまで一晩静置した。ゲルの厚さは、ゲルプレート金型の成形空間の厚さを変更することにより調節することができる(例えば、〜3cmから〜7cmまでの間)。
【0044】
このようにして作製されたゲル基材を、ヒトの手の甲の部分に配置し、血管認識を行った。本発明のゲル基材を配置した数秒後、図4に示すように、背側中手静脈により形成された手背静脈網の主流が明確に視認できる白線として認識された。
【0045】
別の例では、別の作製されたゲル基材を肘の内側に配置した。本発明のゲル基材を配置した数秒後、図5に示すように、ゲルパッドの暗い色を背景にして白線として明確に視認できる円形の経路(橈骨及び尺骨動脈、または肘正中皮静脈)が認識された。別の作製されたゲル基材を前腕上に配置し、同様の静脈認識を行った。図6に示すように、数秒後に、静脈が白線として明確に視認された。本発明のヒドロゲルマトリックスは、他の材料を使用して作製することもできる。例えば、本発明のヒドロゲルマトリックスは、ポリアクリルアミドまたはポリアクリル酸塩を使用して作製することができる。作製方法の詳細は、例2及び例3でそれぞれ後述する。
【0046】
例2
【0047】
アクリルアミド及びビスメチレンアクリルアミド(29:1)(Bio-rad)の30%水溶液を希釈して10%水溶液にする。上記のように調製したモノマー溶液(5mL)に0.5gのサーモクロミックインクを加えて完全に混合させた。開始剤としての過硫酸アンモニウム(Sigma)を10%水溶液として調製した。前記モノマーとサーモクロミック染料溶液との混合物に、50μlの開始剤溶液と5μlのテトラメチルエチレンアミン(Sigma)溶液を加えた後、緩やかに攪拌して完全に混合させた。前記混合物をすぐにゲルプレートに注ぎ、室温で3時間硬化させた。作製されたゲルをゲルプレートから分離した後、未反応モノマーを除去するために、蒸留水で二日間洗浄した。
【0048】
例3
【0049】
5mlの蒸留水に、1.45gのメタクリル酸ヒドロキシエチルと0.05gのジアクリル酸ポリエチレングリコール(架橋剤として溶液中に混合させた)を溶解させた。このモノマー溶液に0.5gのサーモクロミックインク染料を加えた後、完全に混合させた。開始剤としての過硫酸アンモニウム(Sigma)を10%水性溶液として調製した。前記モノマーとサーモクロミック染料溶液との混合物に、50μlの開始剤溶液と5μlのテトラメチルエチレンアミンを加えた後、緩やかに攪拌して完全に混合させた。前記混合物をすぐにゲルプレートに注ぎ、室温で3時間硬化させた。作製されたゲルをゲルプレートから分離した後、未反応モノマーを除去するために、蒸留水で二日間洗浄した。
【0050】
例4
【0051】
別の実施形態では、ポリマーマトリックスまたはゲルパッドは、NIPAMの感温性ゲルから構成される(サーモクロミック染料は含んでいない)。pNIPAAmゲルパッドは、以下のステップに従って合成し作製した。約1.43gのN−イソプロピルアクリルアミド(Sigma)を、5mlの水/メタノール(体積比は10/1)の混合物に完全に溶解させた。0.2gのN,N´−メチレンビスアクリルアミド(Sigma)を架橋剤として加えた。0.2gの過硫酸アンモニウム(Sigma)を0.5mlの蒸留水に溶解させた後、上記の調製したモノマー溶液に加えた。5μlのN,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン(Sigma)を加えた後、室温(20℃)で、ガラスゲルプレート内で24時間重合させた。作製されたゲル基材をゲルプレートから分離した後、未反応モノマーを除去するために、蒸留水で二日間洗浄した。
【0052】
II.2層型のヒドロゲルマトリックス
【0053】
2層型の感温性基材は、半透明または透明ヒドロゲルマトリックスの皮膚接触面上に薄い感温性色素コーティングまたは層を積層させることにより構成することができる。前記基材を患者の皮膚に対して適用する場合、サーモクロミック色素は皮膚表面に対向するように透明ゲルの底面に配される。このタイプの構造は、使用されるサーモクロミック色素の総量を減少させることにより、いくつかの製造上の利点を提供する。感温性色素層の厚さは、約0.05〜2mmであり得、いくつかの実施形態では、約0.1〜1mmであり得る。透明ゲルの厚さは、約0.5〜3mmであり得、いくつかの実施形態では、約0.75〜1mmであり得る。
【0054】
例5
【0055】
二層型の実施形態(すなわち、透明ゲル層とサーモクロミック層の二層型)では、ゲルプレート金型内でサーモクロミック染料溶液から感温性層を形成した後、前記感温性層上にアガロース水溶液(上述の例1のように2wt%のアガロースが完全に溶解している)を注ぎ、ゲルが形成されるまで静置する(図2)。図7に示すように、作製したゲル基材を手の甲の上に置き、静脈認識を行った。静脈の真上の皮膚上のゲルは数秒後に半透明になり、静脈の隣接領域のゲルは長時間透明のままであった。例5と例1の2つの実施形態を比較すると、ヒドロゲルマトリックスが熱伝導率を調節または制御するので、2つのタイプのヒドロゲルマトリックスの間で大きな機能的な差異は観察されなかった。これらの自己冷却式基材の例は両方とも、比較的良好な感温性と、主要血管の概ね明確な画像形成を示した。この二層型基材は、単層型のゲル懸濁液に使用されるのよりも少なくとも10〜20%少ない量のサーモクロミック色素で作製することができる。
【0056】
比較例
【0057】
サーモクロミックインクが、Matsui International Co. Inc.社製の感温性染料マイクロカプセルを49wt%の量で含んでいる水性スラリーとして提供される。ゲル基材を有していないこのサーモクロミックインクは、ヒトの手の甲または手の平の表面に直接的になだらかに広げられ、図8A〜8Dに示す一連の写真のように、その真下に位置する血管の温度差画像が経時的に得られた。血管の画像は約15秒以内に現れるが、認識された静脈は明確には表れなかった。ゲルポリマーマトリックスによって冷却しないと、最初の適用から短時間で、静脈の温度差画像は実際のサイズよりも大きくなるかまたは小さくなる。これは、最初の蒸発効果が弱まるかまたは失われたときに、血管とその周囲組織との間の温度勾配が小さくなることに起因する。サーモクロミックインクの塗布領域における静脈の真上の皮膚表面領域とその周囲領域との間の温度勾配は、約1分以内に元の温度に戻る。そのため、静脈を認識して明確な画像を形成する能力は、インクの水分が乾燥する前にすら失われてしまう。
【0058】
対照的に、本発明によれば、上述したのと同一のサーモクロミックインクが、ヒドロゲルマトリックスと共に適用される。ヒドロゲルは、アガロースを2wt%となるように水中に溶解させた後、ゲル形成金型内で冷却することにより作製される。自己冷却式ゲルパッドの場合、サーモクロミックインクをヒドロゲルの表面になだらかに広げた後、徐々に乾燥させてコーティングを完成させる。ゲルパッドを、感温性染料側の面が皮膚と対向するようにして、ヒトの手の甲の表面に配置し、温度差画像を経時的に得る。真下の血管の画像は約45〜50秒以内に現れ始め、約60〜150秒間、比較的はっきりと見え明確に認識することができる。図9A〜9Gに示すように、画像は、約45〜7秒の間、比較的はっきりと残る。
【0059】
以上、例及び図を用いて、本発明の概略及び詳細を両方とも説明した。しかし、本発明が、具体的に説明した上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨及び範囲から逸脱しない限り、適宜変更することが可能であることは、当業者であれば容易に理解できるであろう。したがって、そのような変更は、本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温性基材であって、
第1の主面及び第2の主面を有し、
自己冷却式のポリマーゲルマトリックスから形成され、かつ
(a)前記マトリックスに混合されたか、または(b)前記主面の一方に層として形成された、約35.0〜40.5℃の温度範囲での変色感度を有するサーモクロミック色素、インクまたは染料を少なくとも含むことを特徴とする基材。
【請求項2】
請求項1に記載の感温性基材であって、
前記基材の前記第1の主面から前記第2の主面にかけて貫通形成され、かつ前記基材の前記主面上にランダムにまたは所定のパターンで配された複数の孔を有することを特徴とする基材。
【請求項3】
請求項2に記載の感温性基材であって、
前記複数の孔が、注射針またはカニューレの幅に適合するように形成されたことを特徴とする基材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の感温性基材であって、
前記自己冷却式ポリマーゲルが、放熱体上に配置したときに水分が蒸発するヒドロゲルマトリックスであることを特徴とする基材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の感温性基材であって、
前記サーモクロミック着色剤、インクまたは染料が、プロトン受容性色原体、または、コレステロール系の液晶もしくは脂肪酸誘導体の1つを含有しているマイクロカプセルを含むことを特徴とする基材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の感温性基材であって、
前記基材の厚さが、約0.1〜7mm、望ましくは約0.25〜3mmであることを特徴とする基材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の感温性基材であって、
前記基材が、色素及び水を0.25〜10:100、望ましくは0.5〜5:100の範囲の重量比で有する組成物を含むことを特徴とする基材。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の感温性基材であって、
前記基材が、前記主面の少なくとも一方に形成されたか、または前記基材中に均等に分布された抗菌剤をさらに含むことを特徴とする基材。
【請求項9】
請求項1に記載の感温性基材であって、
前記基材が、哺乳類の皮膚上に配置したときに前記皮膚に自己粘着することを特徴とする基材。
【請求項10】
請求項1に記載の感温性基材であって、
前記ポリマーゲルが、哺乳類の皮膚に配置したときに局所的に放出される殺菌剤、鎮痛剤、またはそれらの組み合わせをさらに含むことを特徴とする基材。
【請求項11】
請求項10に記載の感温性基材であって、
前記殺菌剤または鎮痛剤が、前記基材における哺乳類の皮膚に接触する主面を覆う層として形成されたことを特徴とする基材。
【請求項12】
熱画像形成物品であって、
自己冷却式ヒドロゲルポリマーマトリックスから形成され、哺乳類の皮膚上に配置したときに前記皮膚に自己粘着する基材を含み、
前記基材が、
前記基材の第1の主面から第2の主面にかけて貫通する複数の孔を有し、
(a)前記ヒドロゲルポリマーマトリックスに混合されたか、または(b)前記主面の一方を被覆する、サーモクロミック色素、インクまたは染料を少なくとも含み、かつ、
哺乳類の皮膚上に配置したときに局所的に放出される殺菌剤、鎮痛剤またはそれらの組み合わせを含んでいることを特徴とする物品。
【請求項13】
請求項12に記載の熱画像形成物品であって、
前記基材が、色素及び水を0.25〜10:100の範囲の重量比で有する組成物を含むことを特徴とする物品。
【請求項14】
請求項12に記載の熱画像形成物品であって、
前記基材が、皮膚表面の真下の血管の位置を見つけるためのものであることを特徴とする物品。
【請求項15】
血管の位置を見つけるための方法であって、
約35.0〜40.5℃の温度範囲で変色するサーモクロミック色素を含んでいる自己冷却式ヒドロゲルポリマー基材を用意するステップと、
前記ヒドロゲルポリマー基材を、血管が通っている身体部分の素肌に対して配置するステップと、
前記ヒドロゲルポリマー基材で覆われた領域における、温度がより高い身体領域とそれに隣接する温度がより低い身体領域との間の温度勾配により生じる色のコントラストを観察するステップとを含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記ヒドロゲルポリマー基材により熱画像形成された血管に皮下注射針またはカニューレを挿入するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記針が、前記ヒドロゲルポリマー基材の第1の面から第2の面にかけて貫通形成された孔を通じて挿入されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、
前記素肌の表面上に配置された前記ポリマー基材によって、血管とその周囲組織との間に温度勾配が存在する状態が最大で約6または7分間に渡って維持されることを特徴とする方法。
【請求項19】
周囲組織よりも温度が局所的に高い身体領域を熱画像形成する非侵襲的方法であって、
サーモクロミック色素を含む自己冷却式ポリマーゲル基材を用意するステップと、
前記ゲル基材を、哺乳類の身体の放熱部分に配置するステップと、
前記ヒドロゲルポリマー基材で覆われた領域における、温度がより高い身体領域とそれに隣接する温度がより低い身体領域との間の温度勾配により生じる色のコントラストを観察するステップとを含む方法。
【請求項20】
請求項15または19のいずれかに記載の方法であって、
前記自己冷却式ポリマーゲル基材を、哺乳類の身体における、組織または皮膚表面の約1〜3cm真下に血管が位置する領域に配置するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項15または19のいずれかに記載の方法であって、
温度がより高い身体領域とそれに隣接する温度がより低い身体領域との間の前記温度勾配が、約0.1〜2℃またはそれ以上であることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項15または19のいずれかに記載の方法であって、
温度がより高い前記身体領域が、癌が増殖している領域であることを特徴とする方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−506482(P2013−506482A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531519(P2012−531519)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053760
【国際公開番号】WO2011/039659
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】