説明

温度測定用センサ装置

表面(1)の温度を測定するためのセンサ装置であって、回路基板(2)上に設けられる温度センサ(3)を備え、この温度センサ(3)は、前記回路基板(2)の舌形突起部の前側に取り付けられると共に、前記回路基板(2)から離間される前記表面(1)の直近に配置可能であり、前記温度センサ(3)の領域中で前記舌形突起部を熱伝導性キャップ(4.1)又は熱伝導性箔を用いて囲繞する可撓性の熱伝導性要素(4.1、4.)が、前記表面(1)に接触するために取り付けられる、センサ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の温度を測定するためのセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
好ましくは略平坦な表面の温度を測定するためのそうしたセンサ装置は、様々に知られている。
【0003】
DE 699 07 493 T2からは、熱伝導性表面接触部分が、測定される表面に対してばねを用いて押圧されている表面温度センサが知られている。この表面の接触部分は、付属の電気的に絶縁された温度センサを含んでいる。
【0004】
独国特許出願公開第102 27 454 A1号明細書からは、取付け部分が測定される表面に熱伝導性箔及び熱伝導性ペーストを用いて熱伝導の方式で接続されているクリップオン(clip on)温度センサが知られている。温度センサは、他の熱伝導性箔を用いて温度センサに結合される。
【0005】
日本国特開平09−210802号公報には、温度センサを受けるのに十分な大きさであるT字形部分と、伝導性材料からなる検出用端子とを備え、温度センサの電極が、結線を介して検出用端子に電気的に接続されている、熱結合用端子が記載されている。
【0006】
欧州特許出願公開第1 026 489 A1号明細書には、温度センサを含む検出ヘッドを備え、この検出ヘッドは可撓性の給電線を有し、この給電線は検出ヘッドを出て検出ヘッドから断熱されている遮蔽物を貫通して流れる、接触式温度測定装置が開示されている。この検出ヘッドは傾斜可能であり、傾斜時に給電線を介してのみ接続される。
【特許文献1】DE 699 07 493 T2
【特許文献2】独国特許出願公開第102 27 454 A1号明細書
【特許文献3】日本国特開平09−210802号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第1 026 489 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、略平らな面、具体的には窓ガラスの温度を検出できる費用効率の高いセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、請求項1のセンサ装置によって解決される。従属項は、本発明の好ましい実施の形態を表している。
【0009】
本発明による表面温度測定用センサ装置は、回路基板上に取り付けられる温度センサを有し、この温度センサは、回路基板の舌形突起部の前側に取り付けられると共に、回路基板から離間される表面の直近に配置可能であり、表面に接触させるために、温度センサの領域中で舌形突起部を熱伝導性キャップ又は熱伝導性箔を用いて囲繞する可撓性の熱伝導性要素が、回路基板上に取り付けられている。
【0010】
回路基板上に温度センサを直接取り付けることにより、いかなる追加の接続用要素も必要とされないので、センサ装置のコストが低減される。表面からの熱は、回路基板の良好な熱伝導性の導体経路を通って、回路基板を介して温度センサまで伝達できる。このために、回路基板は、熱伝導性要素を用いて表面と接続されており、この回路基板の前側は、好ましくは表面に略平行に向けられる。熱伝導性要素は、それが機械的ストレスを受け入れることができるように可撓性であるように設計されており、それによって、装着もしくは脱着の間の又は動作中の回路基板もしくは温度センサの損傷は防止できる。
【0011】
特に好ましい実施の形態では、熱伝導性挿入物がキャップの中に導かれる。このキャップにより、センサ装置が表面に沿って滑らかに変位できること、及び/又は回転できることを可能にし、これはセンサ装置の装着及び脱着の間に、例えば回路基板が差し込みロック(bayonet lock)を用いて固定されるときに特に有利である。この挿入物は、可撓性材料からなる。
【0012】
好ましい実施の形態では、キャップが良好な熱伝導性金属、具体的には銅又はアルミニウムから製作される。この場合は、このキャップが、熱を熱伝導性挿入物に特に良く伝達できる。さらに、これらの材料から製作されるキャップは、特に高い費用効率で製造される。
【0013】
さらに好ましい実施の形態では、キャップの中に挿入又は注入される挿入物が、熱伝導性シリコーンから製作され、それにより、キャップとの良好な熱接触が形成可能である。
【0014】
特に好ましい実施の形態では、挿入物の中に凹所があり、この凹所の中に、温度センサを備える回路基板が配置できる。それにより温度センサと挿入物の特に密接な熱接触が可能になる。
【0015】
別の有利な実施の形態では、挿入物が回路基板の反対側に配置される。この場合は、平坦な回路基板接続、したがって特に強い熱伝導性の回路基板接続が挿入物を用いて形成できる。
【0016】
好ましい実施の形態では、可撓性シールが、キャップと回路基板のハウジングとの間で実装される。可撓性及び/又は弾性のシール、例えばシリコーンリングは、キャップを表面に対して押圧しており、機械公差を弾性によって補償することができると共に、押圧するときの装置の機械的損傷を回避することができる。
【0017】
代替の実施の形態では、熱伝導性箔、具体的にはシリコーン箔が熱伝導性要素である。そうした箔は、熱伝導性要素について費用効率の高さが実現することを表す。この箔は、この箔によりいかなる損傷も装置に引き起こすことなく、表面に沿って変位できる。これは、差し込みロックを用いて装着及び脱着するときに特に有利である。
【0018】
好ましい実施の形態では、熱伝導性箔が、付着、ハンダ付け、締付け、ねじ付け又は注入(injecting)により回路基板を囲繞するハウジングと接続される。これにより、箔とハウジングのしっかりとした接続が可能になる。
【0019】
好ましい実施の形態では、熱伝導性箔が、少なくとも1つのセクション中で2層に積み重ねられる。表面の方に向かって見えている層は、好ましくは良好な滑り特性を有する薄い材料、具体的には金属箔で製作される。ここで回路基板の方に向かって見えている側は、柔軟な可撓性材料、具体的には熱伝導性シリコーンからなる。それによって金属箔の表面は、シリコーン層の表面よりもかなり大きくなる可能性がある。具体的には、シリコーン層は、回路基板の前側に接する金属箔のセクション中にのみ設けることができる。
【0020】
特に好ましい実施の形態では、回路基板が前側で、温度センサに面している側で、及び/又は側面で金属被覆される。良好な熱伝導性は、金属被覆によって確保される。この接続中の金属被覆は、同時に温度センサの電気的接点として働くことができる。具体的には、前側の金属被覆は、温度センサの端子と接続できる。
【0021】
他の実施の形態では、両面間相互接続(feedthrough interconnection)が温度センサの近くで設けられる。両面間相互接続は、回路基板を貫通するメッキした穴として概して製作され、温度センサとこの場合は好ましい平坦な金属被覆が施されている回路基板の下面との電気的接続及び熱的接続を共に形成する。
【0022】
好ましい実施の形態では、評価ユニットが、測定と評価の両方のための共通部品が使用できるように回路基板上に追加的に設けられている。
【0023】
別の好ましい実施の形態では、他のセンサ、具体的には温度センサ、湿度センサ又は光センサが回路基板上に設けられている。この回路基板は、この場合は好ましくは自動車の車室(passenger compartment)中に装着され、フロントガラスの温度を測定するために働く。このためには、回路基板は、ハウジングの際バックミラー基部の中に組み込み可能であることが好ましい。センサ装置は、例えば、フロントガラス表面の温度、自動車の車室の室内の温度、及び湿度を対応するセンサを用いて同時測定することによって、前面ガラスの曇り状態を測定するために使用できる。
【0024】
他の利点は、本説明及び図面から明らかになる。上述の特徴及びさらに示されることになる他の特徴は、個々に又は組み合わせてそれぞれ使用できる。言及される本実施の形態は、完全な一覧として理解されることは意図されておらず、むしろ例示的性質を有する。
【0025】
本発明を図面参照の下で実施の形態に基づいて詳細に説明する。図面の図は、本発明の主題を非常に概略的に示しており、原寸に比例するものとして理解されるべきではない。本発明による主題の個々の構成要素をその構成が十分に示され得るように表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1では、自動車の前面ガラスによって形成される略平坦な表面1に接している温度測定用センサ装置が示される。このセンサ装置は、温度センサ3を備え、この温度センサ3は、回路基板2上で回路基板2の前側2.1の直近に配置される。前側2.1は、回路基板2の舌形突起部に沿って表面1と平行に延びており、表面1の直近に配置される。回路基板2は、自動車のバックミラーのバックミラー基部に取り付けられるハウジング5に囲繞されており、このハウジング5は舌部の領域中で開口を有する。
【0027】
キャップ4.1及びその中に挿入される熱伝導性挿入物4.2からなる可撓性の熱伝導性要素は、回路基板2と表面1の間で実装される。キャップ4.1は、弱い熱伝導性シリコーンからなる弾性シール6を介してハウジング5の開口でハウジング5と接続されており、それにより良好な断熱が環境に対して確保される。加えて、弾性シール6により、表面1に対して垂直に延びる方向にセンサ装置を表面1上へ押圧することによる損傷を無くすことが可能になり、その結果、温度センサ3は、表面1に対して定められた距離で配置できる。センサ装置がフロントガラスに実装されない限り、弾性シール6は、ほとんど弛緩している。この場合は、キャップ4.1は、図示されていないスナップ装置(snap device)によって固定される。フロントガラスに装着する間、キャップ4.1は、弾性シール6の中に僅かに押圧される。それにより回路基板2は、熱伝導性挿入物4.2の中に滑動し、及び/又は熱伝導性挿入物は、キャップ4.1の中に滑動する。
【0028】
キャップ4.1は、表面1とのキャップ4.1の接触面が最大になるように、又はキャップ4.1と表面1の間の空隙が最小になるように形成される。それにより表面1とキャップ4.1との間で良好な熱結合が与えられ、それによりキャップ4.1が表面1と略同じ温度を有することを確保する。
【0029】
代替として、キャップ4.1は、キャップ4.1が表面上の1箇所又は数箇所で略点状になるように形成できる。それにより表面に対する熱結合が僅かに減じられるが、生産により引き起こされる歪みにより、すなわち、フロントガラスごとの表面の凹凸の変動により熱結合の変動が引き起こされることはない。
【0030】
キャップ4.1は、金属で、好ましくは銅又はアルミニウムで製作されており、熱伝導性挿入物4.2は、キャップ4.1に注入される熱伝導性シリコーンからなる。図1(c)でよりはっきりと分かるように、挿入物4.2は、温度センサ3が配置される回路基板の上側の領域を除いて回路基板2を囲んでいる。
【0031】
可撓性の熱伝導性挿入物4.2は、回路基板2によりキャップ4.1に対して押圧され、すなわち一方の側でキャップ4.1と可撓性の熱伝導性挿入物4.2の間で密接な接触となり、及び他方の側で可撓性の熱伝導性挿入物4.2と回路基板2の間で密接な接触となるように構成される。この密接な接触及び挿入物4.2の良好な熱伝導によって前面2.1の直近で回路基板2が、キャップ4.1の温度、したがって表面1の温度を大体有することが確保される。
【0032】
回路基板2は、前面2.1の領域中で、下側及び側面で金属被覆される。これを介して回路基板2と挿入物4.2の間で特に良好な熱伝導が確保される。温度センサ3の電気接点のうちの1つは、回路基板2の前面と導電的に接続される。代替として、この電気接点は、両面間相互接続を介して回路基板2の下面と接続することもできる。これを介して温度センサ3の温度は、挿入物4.2の温度に特に良く適合できる。
【0033】
図2は、図1に示される装置に対比して、可撓性の熱伝導性要素が熱伝導性箔4によって形成されているセンサ装置を示す。この熱伝導性箔4を介して、表面1と良好な熱接触が同様に確保可能である。箔4は、回路基板2のハウジング5に直接接続される。
【0034】
温度センサ3を表面1に対して定められた距離で配置するために、箔4を備える回路基板2は、前側2.1とは反対の回路基板2の端部上に弾性要素(図示せず)を取り付けることによって表面1に押圧される。この弾性要素は、図1の弾性シールに準じて表面1と垂直に公差の補償を伴う押圧を行う。
【0035】
図1に示されるセンサ装置と図2に示されるセンサ装置は共に、強固な金属のキャップ4.1又は箔4が、表面1に沿ってセンサ装置を動かすこと又は捻ることにより大抵はそれの損傷を引き起こすことはないということを確保しているので、差し込みロックを用いて取り付けすることができる。そうした損傷は、例えばシリコーンからなる挿入物4.2が表面1に直接接触していることになるとそこで生じる可能性がある。
【0036】
図1及び図2中に図示されていない他のセンサ及び評価ユニットが、回路基板2上に実装される。他のセンサには、自動車の車室の温度を測定するための温度センサ及び湿度センサが含まれる。2つの他のセンサは、フロントガラスの曇りについての傾向を測るために、表面温度を測定するための温度センサと共に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)〜(c)は熱伝導性要素としてキャップ及び可撓性の熱伝導性挿入物を備える本発明によるセンサ装置の第1の実施の形態を通じての平面図、側面図及び断面図である。
【図2】(a)、(b)は可撓性の熱伝導性要素として熱伝導性箔を備える本発明によるセンサ装置の第2の実施の形態の形の平面図又は側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 表面
2 回路基板
2.1 回路基板の前側
3 温度センサ
4 熱伝導性箔
4.1 キャップ
4.2 挿入物
5 ハウジング
6 シール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(1)の温度を測定するためのセンサ装置であって、回路基板(2)上に設けられる温度センサ(3)を備え、前記温度センサ(3)は、前記回路基板(2)の舌形突起部の前側(2.1)に取り付けられると共に、前記回路基板(2)から離間される前記表面(1)の直近に配置可能であり、前記温度センサ(3)の領域中で前記舌形突起部を熱伝導性キャップ(4.1)又は熱伝導性箔(4)を用いて囲繞する可撓性の熱伝導性要素(4;4.1、4.2)が、前記表面1に接触するために前記回路基板(2)上に取り付けられる、センサ装置。
【請求項2】
熱伝導性挿入物(4.2)が、前記キャップ(4.1)の中に挿入される、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記キャップ(4.1)が、良好な熱伝導性金属、具体的には銅又はアルミニウムで製作される、請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記キャップ(4.1)の中に挿入される前記挿入物(4.2)が、良好な熱伝導性シリコーンで製作される、請求項2又は3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記挿入物(4.2)の中に凹所が設置されており、前記凹所の中に、前記温度センサ(1)を備える前記回路基板(2)が挿入可能である、前記請求項2乃至4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記挿入物(4.2)が、前記回路基板(2)の、前記温度センサ(3)とは反対側で配置される、請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
可撓性シール(6)が、前記キャップ(4.2)と前記回路基板(2)のハウジング(5)との間で取り付けられる、前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記熱伝導性要素が、熱伝導性箔(4)、具体的にはシリコーン箔で製作される、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記熱伝導性箔(4)が、具体的には接着、ハンダ付け、締付け、ねじ付け又は注入により前記回路基板(2)を囲繞するハウジング(5)に接続される、請求項8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記熱伝導性箔(4)が、少なくとも1つのセクション中で2層に構成されている、請求項8又は9に記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記回路基板(2)が、前記前側(2.1)で、前記温度センサ(3)とは反対側で、及び/又は側面で金属被覆される、前記請求項1乃至10のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項12】
両面間相互接続が、前記温度センサ(3)の近くで前記回路基板(2)の中に実装される、請求項11に記載のセンサ装置。
【請求項13】
評価ユニットが、前記回路基板(2)上に追加的に実装される、前記請求項1乃至12のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項14】
他のセンサ、具体的には温度センサ、湿度センサ又は光センサが、前記回路基板(2)上に実装される、前記請求項1乃至13のいずれか1項に記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−536131(P2008−536131A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505722(P2008−505722)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000197
【国際公開番号】WO2006/108367
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(503145110)シトリニック ゲス フュール エレクトロテクニッシュ オウスルゥスタング エム ベー ハー ウント コー カー ゲー (12)
【氏名又は名称原語表記】sitronic Ges.  fur elektrotechnische Ausrustung mbH & Co. KG
【Fターム(参考)】