説明

温度測定装置及びこの温度測定装置を用いた空気調和機

【課題】定数が既知ではないサーミスタを用いた場合でも、そのサーミスタの抵抗値に基づいて温度を測定することができる温度測定装置を提供する。
【解決手段】温度に応じた抵抗値を出力するサーミスタ11と、抵抗値と、式(1)とに基づいて温度値を演算する演算処理部20と、サーミスタ11における試験抵抗値及び試験温度値を入力する外部入力手段19とを備え、演算処理部20は、サーミスタ11において、式(1)におけるB、R0及びT0から成る定数が既知ではない場合、外部入力手段19から入力された3点以上の試験抵抗値及び3点以上の試験温度値を用いて次式の定数を演算し、温度を測定する場合は、定数が定められた式(1)とサーミスタ11から入力された抵抗値とに基づいて求められた温度値を出力する。
R=R0・expB(1/T−1/T0) (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和機に使用するサーミスタを用いる温度測定装置及びこの温度測定装置を用いた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気調和機等に用いられ、サーミスタの抵抗値に基づいて温度を測定する温度測定装置として、「所望のサーミスタ素子のサーミスタの抵抗値の変化を検出し次式に基づく演算により温度換算する演算手段を有する温度測定装置において前記サーミスタ素子のサーミスタの基準抵抗値及びB定数を前記演算手段へ入力する入力手段を設けたことを特徴とする温度測定装置」というものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−115821号公報(1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の温度測定装置は、サーミスタ定数及び基準抵抗値等の定数が既知であるサーミスタを使用しており、その定数に基づいて温度を検出している。そのため、故障等により空気調和装置等に使用されるサーミスタを交換する際には、予め指定された(定数が分かっている)サーミスタしか使用できず、その他の汎用サーミスタ等は使用できないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、定数が既知ではないサーミスタを用いた場合でも、そのサーミスタの抵抗値に基づいて温度を測定することができる温度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における温度測定装置は、温度に応じた抵抗値を出力するサーミスタと、前記抵抗値と、式(1)とに基づいて温度値を演算する演算処理部と、前記サーミスタにおける3点以上の試験抵抗値及び該3点以上の試験抵抗値にそれぞれ対応する試験温度値を入力する外部入力手段と、を備え、前記演算処理部は、前記サーミスタにおいて、式(1)におけるB、R0及びT0から成る定数が既知ではない場合、前記外部入力手段から入力された前記3点以上の試験抵抗値及び3点以上の前記試験温度値を用いて次式の定数を演算し、温度を測定する場合は、定数が定められた式(1)と前記サーミスタから入力された抵抗値とに基づいて求められた温度値を出力する。
R=R0・expB(1/T−1/T0) (1)
ここで、R:温度T[℃]における抵抗値、R0:温度T0[℃]における抵抗値、B:サーミスタ定数、T:測定温度とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、定数が既知ではないサーミスタを用いた場合でも、そのサーミスタの抵抗値に基づいて温度を測定することができる温度測定装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1における温度測定装置を用いた制御システムを示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における温度測定装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1の温度測定装置における温度と抵抗値との関係を定数を用いて求めたグラフである。
【図4】本発明の実施の形態1の温度測定装置における温度と抵抗値との関係を試験抵抗値及び試験温度値を用いて求めたグラフである。
【図5】本発明の実施の形態2における温度測定装置を用いた制御システムを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2における温度変換テーブルの例を示したものである。
【図7】本発明の実施の形態2における温度測定装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態3における温度測定装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態3における式に基づいて温度変換テーブルを作成する手順の例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における温度測定装置の一例について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1における温度測定装置を用いた制御システムを示す図である。
図1における制御システムは、温度を測定する温度測定装置12と、空気調和機の運転制御を行う空調制御装置18とを備えている。また、温度測定装置12は、演算処理部20と、温度に応じて抵抗値が変わるサーミスタ11と、定数等が入力される外部入力手段19とを備えている。なお、外部入力手段19とは、例えばリモートコントローラー等である。
また、演算処理部20は、A/D変換装置13、入力回路14、CPU16及び出力回路17を備えている。
【0011】
温度測定装置12において、サーミスタ11から入力された抵抗値はA/D変換装置13によってアナログ信号からデジタル信号に変換される。そして、その抵抗値のデジタル信号に基づいて、後述する方法によりCPU16が温度値を演算し、出力する。その温度値は出力回路17を介して空調制御装置18に送られ、その温度値に基づいて空調制御装置18が空気調和機の制御を行う。ここで、空調制御装置18は、例えば圧縮機等の駆動系を制御することで、検出した温度値が設定温度になるように制御を行う。
【0012】
また、サーミスタ11は、遷移金属酸化物から成る半導体の抵抗値が温度上昇とともに著しく変化する特性を利用したもので、この温度値と抵抗値の特性を示す式は、次の式(1)で表現できる。
R=R0・expB(1/T−1/T0) (1)
ここで、Rは、温度T[℃]における抵抗値であり、R0は、温度T0[℃]における抵抗値であり、Bは、サーミスタ定数であり、Tは測定温度である。
つまり、T0、R0及びサーミスタ定数Bを知ることができれば、サーミスタ11の温度と抵抗の特性を知ることができる。なお、温度T0[℃]における抵抗値R0及びサーミスタ定数Bは、サーミスタの構成物質によって決まる熱的定数である。以下の説明及び図面においてT0、R0及びサーミスタ定数Bを定数と記載する。
【0013】
次に本発明の実施の形態1における制御内容について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1における温度測定装置の制御内容を示すフローチャートである。図3は、本発明の実施の形態1の温度測定装置における温度と抵抗値との関係を定数を用いて求めたグラフである。また、図4は、本発明の実施の形態の温度測定装置における温度と抵抗値との関係を試験抵抗値及び試験温度値を用いて求めたグラフである。
【0014】
図2のフローチャートにおいて、本実施の形態における空気調和機等に用いられるサーミスタ11が、故障により交換が必要となった場合等にこのフローチャートが開始する。
ステップS01において、ユーザーは、使用するサーミスタ11の定数が既知であるかを判定し、既知である場合はステップS02へ進む。ステップS02において、ユーザーは外部入力手段19から、サーミスタ11の定数を入力する。そして、その定数を式(1)に入力することで、例えば図3に示すようなサーミスタ11の温度と抵抗値の特性が得られる。そして、ステップS05において、得られた式とサーミスタ11から入力された抵抗値とに基づいて温度値を出力する。
【0015】
また、ステップS01において、使用するサーミスタ11の定数が既知でない場合は、ステップS03へ進む。ステップS03において、ユーザーがリモートコントローラ等の外部入力手段19によりサーミスタ11の試験抵抗値及びその試験抵抗値に対応する試験温度値を3点以上入力する。ここで、試験抵抗値及び試験温度値とは、サーミスタ11を用いて予め3点以上の温度値における抵抗値を測定したものである。
【0016】
そして、ステップS04において、入力されたデータに基づいて温度と抵抗値の特性を示す定数が演算され、例えば図4に示すような特性が得られる。なお、この演算はCPU16で行ってもよいが、外部の演算器等で定数を演算してからその定数を外部入力手段19からCPU16に出力してもよい。そして、ステップS05において、得られた式とサーミスタ11から入力された抵抗値とに基づいて温度値を出力する。
なお、ステップS01〜ステップS04の処理は、例えばサーミスタ11を交換した場合の初期設定として行うものであり、温度を測定する場合は、ステップS05の処理のみ行えばよい。
【0017】
以上のように、定数が既知ではない汎用サーミスタ等を用いた場合でも、定数を求めることができるので、そのサーミスタの抵抗値に基づいて温度を測定することができる温度測定装置12を得ることができる。
【0018】
実施の形態2.
図5は、本実施の形態2における温度測定装置を用いた制御システムを示す図である。
図5における制御システムは、実施の形態1における図1の制御システムに温度変換テーブル15を加えたものであり、他の構成は図1と同じであるものとする。
【0019】
図6は、本発明の実施の形態2における温度変換テーブルの例を示したものである。
温度変換テーブル15は、汎用サーミスタ等の様々なサーミスタ11のそれぞれに対応する温度変換テーブルを含み、複数の抵抗値データ及びその抵抗値データに対応する温度データから構成されるものである。例えば図6に示すように、汎用サーミスタAに対応する温度変換テーブル15a及び汎用サーミスタBに対応する温度変換テーブル15bを備える。なお、温度変換テーブル15は、温度測定装置12の内部メモリに記憶されていてもよいが、温度測定装置12の外部のメモリに記憶されていてもよい。
【0020】
図7は、本発明の実施の形態2における温度測定装置の制御内容を示すフローチャートである。
図7のフローチャートは、実施の形態1の図2のフローチャートのステップS05の代わりにステップS06及びステップS07を追加したものである。なお、ステップS01〜ステップS04については、実施の形態1の図2のフローチャートと同じであるため、説明は省略する。
【0021】
ステップS06において、ステップS02又はステップS04で得られた式に最も適合する温度変換テーブルを選択する。ここで、選択する方法として、例えば、図6で示した温度変換テーブル15aの温度データta1を式(1)のTに代入する。そこで得られた抵抗値Rと、温度データta1に対応する抵抗値データra1との差を演算する。温度変換テーブル15aの全ての温度データ及び抵抗値データにおいてそのような演算を行いその差を合計する。そして、他の温度変換テーブルにおいても同様に差を演算し、差の合計が最も少ない温度変換テーブルを選択する。
【0022】
そして、温度を測定する場合、ステップS06で選択された温度変換テーブル15を用いて、サーミスタ11から出力された抵抗値に最も近い抵抗値データに対応する温度データが、温度値として出力される(ステップS07)。ここで、温度変換テーブル15の温度データを用いて温度値を出力するため、実施の形態1のステップS05のように式を用いて演算するよりも処理を高速化することができる。
なお、ステップS01〜ステップS06の処理は、例えばサーミスタ11を交換した場合の初期設定として行うものであり、温度を測定する場合は、ステップS07の処理のみ行えばよい。
【0023】
以上により、本実施の形態2における温度測定装置は、実施の形態1における効果を同様に得ることができる。さらに、温度測定において、予め用意された温度変換テーブルを用いるため、処理を高速化することができる。
【0024】
実施の形態3.
図8は、本発明の実施の形態3における温度測定装置の制御内容を示すフローチャートである。なお、本実施の形態3における温度測定装置を用いた制御システムについては実施の形態2の図5に示したものと同様である。
また、図8のフローチャートは、実施の形態2の図7のフローチャートのステップS06の代わりにステップS08を用いたものである。なお、ステップ01〜ステップ04及びステップS07については、実施の形態2の図7と同じであるため、説明は省略する。
【0025】
図8のステップS08において、ステップS02又はステップS04において定数が求められた式(1)に基づいて温度変換テーブル15を作成する。
図9は本発明の実施の形態3における式に基づいて温度変換テーブル15を作成する手順の例を示したものである。
図9(a)は、ステップS02又はステップS04において得られた式の一例を示す図である。そして、図9(b)のように上記の式に一致する抵抗値Rと温度値Tのデータを所定の間隔で数点取得する。そして、取得したデータを用いて図9(c)のような温度変換テーブル15を作成する。
【0026】
以上により、本実施の形態3における温度測定装置は、実施の形態1及び実施の形態2における効果を同様に得ることができる。さらに、使用するサーミスタに適合する温度変換テーブルを作成するため、予め温度変換テーブルがない場合でも、温度変換テーブルを用いて温度値を出力することができる。
【符号の説明】
【0027】
11 サーミスタ、12 温度測定装置、13 A/D変換装置、14 入力回路、15,15a,15b 温度変換テーブル、16 CPU、17 出力回路、18 空調制御装置、19 外部入力手段、20 演算処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタと、
前記抵抗値と、式(1)とに基づいて温度値を演算する演算処理部と、
前記サーミスタにおける3点以上の試験抵抗値及び該3点以上の試験抵抗値にそれぞれ対応する試験温度値を入力する外部入力手段と、
を備え、
前記演算処理部は、
前記サーミスタにおいて、式(1)におけるB、R0及びT0から成る定数が既知ではない場合、前記外部入力手段から入力された前記3点以上の試験抵抗値及び3点以上の前記試験温度値を用いて次式の定数B、R0及びT0を演算し、
温度を測定する場合は、定数が定められた式(1)と前記サーミスタの抵抗値とに基づいて求められた温度値を出力することを特徴とする温度測定装置。
R=R0・expB(1/T−1/T0) (1)
ここで、R:温度T[℃]における抵抗値、R0:温度T0[℃]における抵抗値、B:サーミスタ定数、T:測定温度とする。
【請求項2】
前記演算処理部は、
定数が定められた前記式(1)に基づいて、前記サーミスタの複数の抵抗値データ及び前記複数の抵抗値データに対応する温度データから構成される温度変換テーブルを作成し、
温度を測定する場合は、該選択された温度変換テーブルの前記抵抗値データ及び前記温度データにおいて、前記サーミスタの抵抗値に最も近い抵抗値データを選択し、該抵抗値データに対応する温度データを温度値として出力することを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
複数のサーミスタのそれぞれに対応する温度変換テーブルを備え、
該温度変換テーブルは、複数の抵抗値データ及び前記複数の抵抗値データに対応する温度データから構成され、
前記演算処理部は、
複数の前記温度変換テーブルのそれぞれにおける前記複数の抵抗値データ及び前記温度データと前記式(1)とを用いて得られる演算結果に基づいて、前記式(1)に最も適応する前記温度変換テーブルを選択し、
温度を測定する場合は、前記サーミスタの抵抗値に最も近い抵抗値データを該選択された温度変換テーブルから選択し、該抵抗値データに対応する温度データを温度値として出力することを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の温度測定装置と、
前記温度測定装置から出力される前記温度値に基づいて空気調和機の運転を制御する空調制御装置とを備えることを特徴とする空気調和機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−73134(P2012−73134A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218580(P2010−218580)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】