説明

温度補償式飛行時間型質量分析計

【課題】所望のレベルの質量精度を達成することができるようなTOFMSの素子に対する熱補償への解決策を提供する。
【解決手段】本発明の飛行時間型質量分析計は、少なくともイオン発生源(120)及びイオン検出器構成(160)を含む光学素子と、スペーサ(330)と、を有し、少なくとも一つの光学素子及びスペーサ(330)が異なる熱膨張係数を有する材料で作られ、ドリフト領域(140)の長さが変り、かつ温度で自己調整するように組合わされる。調整は、例えば、実質的に同じ質量対電荷比のイオンがシステムの中を通して一定の飛行時間を維持するように、他のイオン光学素子の熱膨張又は収縮から生ずる長さの変化を補償することである。これは、イオン光学素子について標準構成方法の使用を見込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行時間型質量分析計に関し、特に質量分析計における温度変化を補償する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行時間型質量分析計(TOFMS)は、異なる質量対電荷比のイオンが、特定の運動エネルギーに加速されたイオンのパケットが質量対電荷比に従って規定距離にわたって分離されるように異なる速度で移動するという原理に基づく。規定距離の終端でイオンの到着時間を検出することによって、質量スペクトルを得ることができる。
【0003】
直交TOFMSsは、イオンの連続するパケットが運動エネルギーに加速され、それらの質量対電荷比に従って飛行が分離され、次いで検出されるような、いわゆるサイクリック・モードで動作する。各サイクルにおける完全な時間スペクトルが検出され、その結果がヒストグラムに加えられる。
【0004】
特定の質量対電荷比のイオンは、或る範囲の到達時間で検出器に到達することが観測された。到達時間の範囲は、イオン源の出力での抽出場の位置、及び初期運動エネルギーの影響によることがあり、このことは、結局、分解能を減じてしまう。
【0005】
TOFMSで高い質量精度を維持するために、質量分析計の較正の高い安定性が維持されなければならない。これは、実質的に同じ質量のイオンの飛行時間が時間がたつにつれて実質的に一定でなければならないことを意味する。実質的に同じ質量のイオンの飛行時間は、温度によって影響を及ぼされることがある。計器の光学素子を構成する材料は、温度が変化すると熱膨張又は熱収縮を受ける。熱膨張又は熱収縮は、長さと電界勾配の両方に影響を及ぼし、長さと電界勾配は、質量分析計の中を通るイオンの飛行時間に影響を及ぼす。
【0006】
TOFMSの較正機能は、イオン質量とイオン飛行時間の二乗との間で概ね線形関係である。正確な結果を得るために、較正は、初期スタート位置及びエネルギーの微妙な差を説明するために多少非線形であるのがよい(従って較正曲線になる)。較正曲線の安定性それ故に飛行時間の不変性、に影響を及ぼす二つの主な要因は、第1にイオン光学素子に印加される電圧のドリフトであり、第2にイオンの飛行経路を構成する素子の構成材料の熱膨張又は熱収縮の影響である。
【0007】
イオン−光学素子に印加される電圧供給のドリフトは、熱の影響によるところが大きいし、これを最小にするために、電圧供給電源を熱的に安定化された環境に収容することがあり、又はそれらの電圧基準成分を熱的に安定化することがある。
【0008】
イオンの飛行経路を構成する素子の構成材料の熱ドリフト(熱膨張又は収縮)を補償することが、本発明の目的である。
【0009】
上述した熱ドリフトに対処する一つの方法は、内部標準を用いることである。内部標準は、分析下のサンプルと一緒に分析される既知の質量の化合物である。内部標準の既知の質量に対する内部標準の測定された質量の偏差を採用して、較正曲線を訂正しかつサンプルの正しい値を回復させることができる。内部標準の非線形効果を最もよく説明するために、内部標準は、分析下のサンプルに加えられ、その結果、それが同じイオン化及び機器条件にさらされる。この欠点は、未知のアンプルが分析されている場合に質量スペクトルに標準の干渉があり、かつ別の源でイオン化されない限り、サンプル分子とイオン化の競争があるということである。広範囲の質量にわたって質量スペクトルを得る場合、較正曲線の非線形性を説明するために質量が関心事の質量に近い内部標準を用いることは、有益である。
【0010】
構成材料の熱ドリフトを処理する別の方法は、熱膨張効果を補償することである。飛行経路の素子の温度は、例えば、熱電対で測定することができ、測定した変化に基づいて較正曲線に補正が行われる。これらの方法は、典型的には、温度の大変正確な測定を必要とし、それは、必要とされる制御システム及びソフトウェアに更なるコスト及び複雑さを加える。
【0011】
構成材料の熱ドリフトを処理する更に他の方法は、飛行時間が温度で変化しないように外部制御機構を介してイオン素子と光学素子との間の間隔を制御することである。前と同じ様に、これは、機器に更なるコスト及び複雑さを加える。
【0012】
別の解決策は、飛行時間が温度で変化しないように(例えば、構成材料の固有の特性のような)内部制御機構を介してイオン素子と光学素子との間の間隔を制御することである。無視できる程度の熱膨張係数を有する構成材料を用いることができる。しかしながら、係る材料で構造全体を構築することは現在実用的ではない。妥協案は、それらの熱膨張効果が互いに補償し、かつ様々なイオン及び/又は光学素子の長さが一定のままであるように、異なる熱膨張係数を有する構成材料の組合せを確立することであるが、これは、複雑な構成を意味する。
【0013】
構成材料の熱ドリフトを取扱う更なる方法は、正確な一定温度を維持する温度制御環境内に機器全体を閉じ込めることである。ほとんどのTOFMSsは、比較的大きな機器なので、この方法の実施は、機器にコストをかなり追加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
所望のレベルの質量精度を達成することができるようにTOFMSの素子の熱補償に対する解決策の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一般に、本発明は、飛行時間型質量分析計の温度変化を補償する装置及び方法を提供する。飛行時間型質量分析計は、異なる熱膨張係数を有する材料を含み、該材料はイオン・ドリフト領域の長さがさまざまであり、かつ温度により自己調整するような方法で組合わされる。調整は、実質的に等しい質量対電荷比のイオンがシステムを通じて一つの場所から別の場所まで一定の飛行時間を維持するように、イオン光学素子の熱膨張又は収縮から生ずる長さの変化を補償するようなものである。これは、イオン光学素子に対して標準構成方法の使用を考慮に入れる。
【0016】
本発明の一形態では、本発明は、飛行時間チャンバを有し、かつ第1の場所と第2の場所との間に延びている飛行経路の第1のセグメントに沿うイオンの飛行時間を温度変化で変化させる温度依存パラメータを有する、少なくとも第1の素子と;及び上記チャンバ内のイオンの上記飛行経路の第2のセグメントに沿う飛行時間に影響を及ぼす、第2の素子の位置を決定する温度依存寸法形状を有するスペーサと、を備え、上記スペーサの材料及び寸法は、質量分析計の動作中、イオンが総飛行経路を移動するためにかかる飛行時間が、温度、及びイオンが総飛行経路の異なるセグメントに沿って経験する飛行時間の変化に関係なく、同じ質量対電荷比のイオンについて実質的に一定であるように選択される、飛行時間型質量分析計に関する。
【0017】
本発明の他の形態では、本発明は、第1の場所と第2の場所との間に延びている飛行経路に沿うイオンの飛行時間を温度の変化で変化させる温度依存電界パラメータを有する、少なくとも第1の素子と;及び上記チャンバ内のイオンの上記飛行経路に沿う飛行時間に影響を及ぼす第2の素子の位置を決定する、温度依存寸法形状を有するスペーサと、を備え、上記スペーサの材料及び寸法は、質量分析計の動作中、イオンが総飛行経路を移動するのにかかる時間が、温度、及びイオンが総飛行経路の異なるセグメントに沿って経験する飛行時間の変化関係なく、同じ質量対電荷比のイオンについて実質的に一定であるように選択される飛行時間形質量分析計に関する。
【0018】
本発明の更なる形態では、本発明は、温度依存性パラメータを有し、少なくともイオン源、及びイオン検出器を含んでいる、イオン光学素子と;イオン光学素子のパラメータの変化を引き起す飛行時間型質量分析計内の少なくとも一つのイオン光学素子の温度の変化に引き起される飛行時間の変化を補償するように構成された熱補償構造体と、を備え、質量分析計の動作中、イオンが上記イオン源から上記検出器まで移動するのにかかる時間が、温度の変化に関係なく、同じ質量対電荷比のイオンについて実質的に一定である飛行時間型質量分析計に関する。
【0019】
本発明の特徴は、ソフトウェアの修正の要求を最小にし或いは除去する、温度による飛行時間変化に対する解決策を提供することにある。
【0020】
特定の実施は、以下の特徴の一つ以上を含むことができる。第1の場所は、イオンが飛行時間チャンバへ加速される場所であるのがよい。第1の場所は、イオンが、開始されるべきイオンの飛行の時間のタイミングをトリガする場所であるのがよい。第2の場所は、イオンが検出器によって検出される場所であるのがよい。第2の場所は、イオンが終了されるべきイオンの飛行時間のタイミングをトリガする場所であるのがよい。温度変化は、リフレクトロン及び/又は加速器で起る。パラメータは、長さ又は電界である。スペーサは、リフレクトロン素子に結合されるのがよいし、かつ印刷回路基板材料からなるのがよい。スペーサは、アルミニウムのような高熱膨張の材料で形成されるのがよい。スペーサは、低熱膨張の材料で形成されるのがよい。
【0021】
熱補償構造体は、温度補償バーと拘束機構とからなるのがよいし、拘束機構は、主として、第2の素子に対する支持をなし、かつ拘束機構は、第2の素子の位置を決定する少なくとも一つの自由度を可能にする。熱補償バーは、所定の高さで拘束機構に取り付けられるのがよい。
【0022】
別段に定義されない限り、ここで用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を有する。ここに述べる全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、それらの全体が援用される。不一致の場合には、定義を含む、本明細書は、コントロールする。開示された材料、方法、及び例は、説明のためだけであり、限定しようとするものではない。当業者は、個々に記述されたものに類似又は均等な方法及び材料は、本発明を実施するために用いることができるということを理解するであろう。
【0023】
ここで、図面に示した実施形態を参照して、本発明の例示的実施形態をより詳細に記述かつ説明する。説明及び図面から導くことができる特徴は、個別に又は所望の組合せで本発明の他の実施形態に用いてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、概略的に、従来技術の線形飛行時間型質量分析計(TOFMS)100を示す。TOFMSで使用するために生成されるイオンは、“パルスされた”形式で生成し、非常に短い時間間隔で生成し(数ns)又は一定の時間間隔に対して(一般的にはマイクロセカンド(μs)の範囲)累積することができ、そして早い立上り時間を有する電圧パルスによってTOFMSへ射出され或いは抽出される。イオンは、飛行時間チャンバ110の中に形成されてもよいし或いは、飛行時間チャンバ110に次いで移送される。次いでイオンは、チャンバの外に形成されてよい。することができる。TOFは、エレクトロスプレー・イオン源、電子インパクト・イオン源、化学イオン化源、(例えば、液体クロマトグラフから受取った材料からイオンを生成する)APCI又はMALDI源のようなイオン源120を備えている。そのように望むならば、(図示した)線形ドリフト領域とは異なって直交ドリフト領域を採用することができる。
【0025】
飛行時間チャンバ110の源領域130に収容されるイオン源120からのイオン粒子は、電位差、加速器170によって飛行時間チャンバ110のドリフト領域140へ加速される。図示したように、チャンバ110は、単一チャンバとして示されている;しかしながら、実際には、チャンバ110は、それぞれが一連の又はハイブリッド・ポンプによって異なる圧力値に排気される、いくつかのサブ・チャンバ(典型的には3つの領域に)を含む。イオンは、不要なスペシーズからの干渉を減じ、かつそのエネルギーの広がりを減ずるようにイオンを焦合する一連のロッド(マルチポール)によって一般的に操作される
【0026】
一度ドリフト領域140では、軽いイオンが重いイオンよりも速く移動する。イオン・ビームは、ついには検出領域150に入る。
イオンは、イオン飛行経路を介して、検出器装置160に達し、ここでイオンが検出される。ここで使用される検出器装置は、イオンを検出するあらゆる手段、構造又は素子の組合せ、電圧供給源、電源又は他の係る関連電子機器のような関連機器、及び検出器装置を飛行時間型質量分析計に結合させることができるあらゆる開口又は関連結合手段を含むものである。イオンの飛行時間が特に決定され、そしてこれから質量スペクトルを得ることができる。
【0027】
しかしながら、同じ質量の二つのイオンが異なるエネルギーで形成されるならば、イオンは、分解能の損失をもたらす異なる時間でドリフト領域の長さを移動する。
【0028】
質量分解能を改良するために、一つのリフレクトロン210又は多数のリフレクトロンをイオン源の加速領域及び検出領域130及び150内にそれぞれ採用してイオン・パケットによって移動される距離を効果的に二倍にさもなければ複数倍にするよう、別々のパケット内の異なる質量対電荷比のイオンのより優れた空間的分離を見込む。これは、図2に示されており、そこでは、検出器装置160が飛行時間チャンバ110のイオン源領域130に実際に存在し、かつ単一のリフレクトロン210が最初の検出器領域150に少なくとも部分的に存在するということを理解することができる。
【0029】
リフレクトロンは、事実上イオン・ミラーであり、かつ制御された方法でイオンを収集しかつ向けなおす一連のエレクトロストラティック・フィールドで構成されるのがよい。その関連した電界を有するリフレクトロンに入ってくる同じ質量対電荷比を有するイオンに対して、より高い運動エネルギーを有するイオンは、より低い運動エネルギーを有するイオンよりももっと電界に浸入する。従ってより高い速度を有するイオンは、結局、リフレクトロンの電界内でより多くの時間を費やし、かつついに、イオンが方向転換する場合に、イオンは、低い運動エネルギー・イオンを越えて飛行経路の更に先へ移動している。リフレクトロン電位を調整することによって、同じ質量対電荷比が実質的に同時に検出器に到達することを確保することが可能である。典型的に、リフレクトロンを去るイオンは、図2に示すように、飛行管に沿ってイオン源の近くに配置された検出器に差し向けられる。
【0030】
分析計のイオンの総飛行時間は、スタートインジケータと停止インジケータとの間の時間を比較することによって計測される。スタートインジケータは、一般的には、イオンのパルスが加速器170によってドリフト領域140に押し込まれる時間によって始動される。飛行経路は、複数のセグメント、即ち、加速器170からリフレクトロン210までのセグメント220、リフレクトロン内で取られたセグメント(図示せず)、及びリフレクトロン210からイオン検出器装置160までのセグメント230を含む。停止インジケータは、イオン検出装置160によって発生される信号から来る。これらのインジケータは、カウント数対飛行時間のヒストグラム履歴としてデータを表示するTOFMSの出力をもたらし、或いはアナログ信号であってもよい。
【0031】
飛行時間型質量分析計(TOFMS)100の中にイオン飛行経路を構成する構造体の素子の温度の変化は、素子のパラメータの変化をもたらす。例えば、温度は、イオン源120の長さ、検出器装置160の少なくとも一部分、リフレクトロン210の長さ、ドリフト領域140の長さ及び/又はレール(後述する)又はハウジング素子のいずれかの長さを素子材料の熱膨張係数に従って変化させる。これは、飛行経路の少なくとも一つのセグメントの寸法形状を変化させる。長さの変化は、イオンの飛行時間に影響を及ぼすことがある。
【0032】
正の熱膨張係数を仮定するならば、電界のないドリフト空間の長さは、温度が増すと増大する。電界のないドリフト領域140を通る飛行時間が長さに比例するので、ドリフト領域140を通る飛行時間も温度が増すと増す。温度が下がると長さ従って飛行時間が減少する。負の熱膨張係数は、逆の効果を有する。
【0033】
レンズ、及びリフレクトロンのような電界領域を構成するイオン飛行経路素子は、典型的には、絶縁体によって分離された規定電圧を通す別々の電極からなる。温度が増すと、電界構成電極及び絶縁体の長さは、熱膨張係数及び材料に比例する量だけ増大する。これらの長さの減少は、電極素子間の電界強度をも減少させる。係る素子における電界は、電界の強度及び向きを記述している一つ以上の温度−依存電界パラメータによって特徴付けられ、電界の強度及び向きは、飛行経路の一つ以上のセグメントに沿う飛行時間に影響を及ぼす。長さの増大及び電界強度の減少は、構成要素の中を通るイオンの飛行時間の増加をもたらす。同じ状況は、別々の電極から構成されない電界担持用構成要素の場合に適用される。例えば、レンズ、又は抵抗材料で構成されたリフレクトロンも、抵抗材料の熱膨張係数に従って温度が増すと長さが増し、かつ長さの増大は、又構成要素内の電界強度の減少も生じさせる。結局、素子のパラメータの変化は、一般的には、電界規定領域の中を通るイオンの飛行時間の変化に変換される。
【0034】
一般に、正の熱膨張係数に対して、電界担持素子(例えば、レンズ又はリフレクトロン)の中を通る飛行時間は温度が増すと増加するので、システムの中を通る総飛行時間は、電界のないドリフト空間長さが、温度が増すと適当な量だけ減少されるならば、一定に保つことができる。
【0035】
図3は、本発明の第1の実施形態を示す。この実施形態では、イオン光学素子160及び120、検出器装置及びイオン源をそれぞれ含む素子は、飛行時間管の飛行時間チャンバ110の内側に配置されたフレーム310に取り付けられ、かつ(素子でもある)ドリフト領域140を構成する。取り付けは、一般的に真空技術に採用されるように、ベント付ボルトのような在来の手段によって容易になされる。取り付けレールの形態のフレーム310は、インバールのような低熱膨張材料からなる。この特定の実施形態では、検出器取付台320は、アルミニウムのような高熱膨張係数を有する材料で作られたスペーサ330を含む。二つのスペーサ330だけが示されているが、検出器取付台320の目的にかなうために任意の数の又は形態のスペーサ330を利用してもよいということは明らかであろう。スペーサ330は、温度−依存寸法形状を有する、即ち、例えば、スペーサ330の長さ340及び材料組成は、スペーサ330の熱膨張がシステムの中を通る全又は総飛行時間を実質的に同じ質量対電荷比を有するイオンについて温度に対して実質的に一定に保つために第1の位置、即ちイオン源120と、第2の位置、即ち検出器装置160との間のドリフト領域140の長さ350を変化させるように選択される。即ち、スペーサ330の熱膨張又は収縮は、イオンのパルスが加速器170によってドリフト領域140に押し入れられるときに信号がイオン検出装置160によって発生されるときとの間の時間を一定に維持する。
【0036】
イオン源120は、温度依存電界パラメータを有する、即ち、温度が増すと、イオン源120の電極間隔は、熱膨張により僅かに増大し、それにより電界強度を減少させかつイオン源領域130の中を通る飛行時間を増大させる。
【0037】
検出器装置内のイオンによって横断される電界があるならば、同じ様な状況がイオン検出器で起る。
【0038】
また、イオン源120、スペーサ330、又は検出器装置160のような素子が必要なスペーサ長さ340の正確な計算のためにどのように取り付けられかを考慮することも重要である。一般的に、検出器装置160は、真空技術システムに採用されるような、在来のベント付ボルトの使用によって取り付けられる。一般的に、素子は、一端が取り付けられ、問題の材料の運動を可能にする方法で、他端及びその間の地点、又は一点での運動を容易にする。
【0039】
イオン源120が(図3に示すように)後側から取り付けられるならば、長さの膨張は、検出器装置160に向う方向であり、かつ全飛行時間を一定に保つためにドリフト長さ350に必要な減少に僅かに寄与する。イオン源120がイオン源120の出力端370に向うその長さに沿う他の地点、例えば点360、に取り付けられるならば、イオン源120の長さ膨張は、ドリフト領域140の長さ250の減少にあまり寄与しない。イオン源120の出力端370に取り付けることは、熱膨張が検出器160と反対の方向であることを容易にしかつドリフト領域140の長さの減少にまったく寄与しない。
【0040】
図4は、更に別の素子、即ちリフレクトロン自体を含むリフレクトロン型TOFMSを概略的に示す。この形態では、リフレクトロン取付台440は、高熱膨張係数のスペーサ430を含む。温度が増すと、上述した線形形態の場合のように、熱膨張は、イオン源120内(及びイオンが電界を横切るならば検出器160内)の電界の僅かな減少をもたらす。これは、また、リフレクトロン210内の場合であり、飛行時間のかなりの部分がリフレクトロン210内で費やされるので、効果は、大変大きい。
【0041】
温度が増すと、リフレクトロン210の位置は、スペーサ430の熱膨張の結果としてイオン源120に向って移動され、それによりドリフト領域140の長さを減少させ従ってドリフト領域140における飛行時間を減少させる。ドリフト領域140における飛行時間の減少は、他のイオン−光学素子における飛行時間の増大されたを補償する。この例では、総飛行経路は、第1の場所(例えば、イオン源120)から第2の場所(例えば、検出器装置160)まで構成される。先に触れたように、飛行経路は、イオン源120からリフレクトロン210までのセグメントと、リフレクトロン210内のセグメントと、最後にリフレクトロン210から検出器装置160までのセグメントとからなる、複数の連続セグメントで構成されていると考えられる。いずれか一つのセグメントと関連した飛行時間は、(例えば、温度変化によって引き起される電界又は物理的寸法形状の変化により)温度で変化するということが認識される;しかしながら、適当な熱膨張係数を有するに適当に寸法決めされたな大きさのスペーサの使用によって引き起される熱補償効果のために、飛行経路の一つ以上の他のセグメントに沿う飛行時間は、総飛行経路に沿う全飛行時間が実質的に温度で不変であるように調整される。
【0042】
リフレクトロン210の長さの膨張方向は、システムにとって適切なスペーサ430の長さの計算において考慮されなければならない。リフレクトロン210が図4に示すように後方側に取り付けられたならば、リフレクトロンの膨張方向は、全てイオン源120に向けられ、それによりドリフト領域140の長さの減少に対してリフレクトロン構成材料の熱膨張の寄与を最大にする。
【0043】
イオン飛行時間を最大にするようにイオン飛行経路に用いられる飛行時間チャンバ110の真空エンベロープ内の長さを最大にすることが望ましい。図4は、リフレクトロン120がリフレクトロン210の後側でスペーサ430に取り付けられ、かつスペーサの長さによって真空エンベロープ内の使用可能な長さを減少させる実施形態を示す。ここで用いられる使用可能な長さは、イオン飛行経路を作る際にイオンによって用いることができる長さである。使用可能長さが著しく影響されないようにスペーサ取り付けシステムを選択することが可能である。例えば、図5に示すように、リフレクトロンは、図示した点510のような、その長さに沿う他の地点で取り付けることができる。
【0044】
図6に示した本発明の更なる実施形態では、より長いリフレクトロン610が用いられ、かつ温度の関数としてのドリフト領域140の長さの減少は、主として、より大きなリフレクトロン610の構成材料の熱膨張により達成される。図6を参照すると、より長いリフレクトロン610は、再度、後側の点で取り付けられかつその構成材料は、温度が増すと、前方に向って自由に膨張し、それによって温度の関数としてドリフト領域140の長さを減ずる。
【0045】
エネルギー・フォーカシング(集束)と温度補償の両方が同時に満足され、それにより温度補償及び高質量分解能を達成する場合にパラメータ・セット(リフレクトロン長さ、リフレクトロン電位、ドリフト領域の長さ、等)が存在する。この場合には、リフレクトロンの後側部分は、イオン飛行経路に用いられず、リフレクトロンの追加の長さがドリフト領域への熱膨張のための材料の追加の長さを提供する目的にかなう。実質的に、リフレクトロンの追加の長さは、“スペーサ”として働く。
【0046】
本発明の更なる実施形態を図7に示す。この実施形態では、素子は、飛行時間チャンバ110の内側に配置され、フレームにではなく飛行時間チャンバ110に直接取り付けられる、イオン源120、検出器装置160、及びリフレクトロン210を含む。上述した実施形態におけるように、素子は、ドリフト領域140を構成する。飛行経路は、イオン源120からリフレクトロン210までのセグメントと、リフレクトロン210内のセグメントと、リフレクトロン210から検出器装置160までのセグメントとからなる複数の連続セグメントよりなると考えられてもよい。上述したように、いずれか一つのセグメントと関連した飛行時間は、(例えば、温度変化によってもたらされた電界又は物理的寸法形状の変化により)温度で変化する。
【0047】
もう一度、熱補償は、所定の膨張係数を有する適切に寸法決めされかつ配置されたスペーサの使用によって引き起され、飛行経路の一つ以上の他のセグメントに沿う飛行時間は、従って、総飛行経路に沿う総合飛行時間が実質的に温度で不変であるように補償される。
【0048】
説明したように、熱補償は、熱補償バー710と少なくとも一つの拘束機構720とを含むスペーサによってなされる。熱補償バー710の一端は、飛行時間チャンバ110の壁に取り付けられ、熱補償バーの他端は、接触点730で少なくとも一つの拘束機構720に取り付けられる。接触点730は、飛行時間チャンバ110の下部分740から所定の高さhに配置される。拘束機構720は、リフレクトロン210に対する支持をなし、同時にリフレクトロン210の入力/出力面がその向きをイオン源120及び検出器装置160に関して維持することができる。拘束機構720は、拘束機構720の長手方向軸線に沿って、リフレクトロン210によってもたらされる負荷を支持し、かつ飛行経路の方向に沿う適切な負荷に応じて少なくとも一つの自由度を可能にする。例えば、レバー又はピボット型屈曲部、4−バーレバー、又は他の係る機構のようなどんな拘束機構720を利用してもよい。これらの種類の機構は、適切な力が付与されるときの適用により、一方の剛体の他の剛体に対する運動を引き起すように、様々な剛体を連結することによって形成される。係る機構は、Douglass L. Blandingによる“Exact Constraint: Machine Design Using Kinematic Principles(運動原理を使用する機械設計)”のような出版物に記述されている。
【0049】
飛行時間チャンバ110は、第1の熱膨張係数を有し、補償バー710は、第2の熱膨張係数を有し、第1の熱膨張係数は、第2の熱膨張係数よりも大きいと想定する。これらのパラメータで、温度が増すと、飛行時間チャンバ110の下部分740の長さは、(矢印705によって示されるように)右に伸長するが、熱補償バー710は、あまり伸長ぜず、理想的には所定の場所に留まり、かつ一般的に温度で不変である。熱膨張係数の差により、拘束機構720の下部ピボット点750を矢印715によって図7に示されているように“右”に移動させる。
【0050】
拘束機構720の一つと補償バー710との間の接触点730が維持されるので、上部ピボット点760は、下部ピボット点750と接触点730の両方に対して(矢印725によって示されるように)“左”に移動し、従ってリフレクトロン210も矢印725の方向に移動する。
【0051】
熱補償バー710と拘束機構720との間の接触点730が作られる所定の高さhを調整することにより、hとHの比率は、変化して飛行時間チャンバ110の壁と補償バー710との間の熱差膨張の“倍率”を生じさせる。(Hは、上部ピボット点760と下部ピボット点750との間の長さである)。
【0052】
この装置により、正しいhとHの比を選択することによってより近い熱膨張係数の材料(例えば、スチール−アルミニウム対アンバー−アルミニウム)を使用させ、同時に、前の実施形態で記述した種類のスペーサを収容する“余分な”空間の必要性を除去する。
【0053】
飛行時間チャンバ110を画成する壁の熱膨張係数がCchであり、熱補償バー710の熱膨張係数がCcomであるならば、リフレクトロンのフロント(フロントはドリフト領域140に向いた面である)での膨張率は、
【0054】
dX/dT=L[Cch(H/(h−1))−Ccom(H/h)]
と表すことができる。ここに、Xは、リフレクトロンのフロントによって移動される距離であり、Tは、温度である。Hとhの比率(純粋幾何学的関係)が増大すると、利用される材料の熱膨張係数を変化させなくても有効熱補償を増大するということがわかる。このような方法で、熱補償バー接触点730の位置hを単に変化させることによって幾何学的比率H/hを変更することにより所望の補償を得ることが可能である。
【0055】
上述した実施形態では、スペーサ形態は、熱補償構造、即ち、質量分析計の少なくとも一つの素子のパラメータにおける変化を、補償することができる熱補償構造として設計されかつ構成され、少なくとも一つの素子の温度の変化によって変化が引き起された。これらの形態が有効に働くために、素子のそれぞれが、問題となる温度でそれらの定常状態条件に達するべきであることが理解される。また、素子のそれぞれがそれらの関連した定常状態条件に達するのに要する時間は、素子毎に変化し、質量分析計の動作中にこれを考慮しなければならないことも理解されるであろう。本発明によって達成される計測の精度は、飛行時間型質量分析計がその定常状態動作条件に達するための十分な時間が与えられ或いは素子が十分に熱的に接続された場合にのみ達成可能である。
【0056】
上述した実施形態は、飛行時間形質量分析計に関し、特に(イオン光学素子におけるイオン飛行時間と組合わされた)ドリフト領域の総イオン飛行時間を同じ質量対電荷比のイオンについて実質的に同じに維持することに関する。説明した概念を、タイミングが重要であり、特に温度が依存する場合に、他の質量分析計の種類に適用してもよいことが理解される。
【0057】
上述したスペーサに必要なスペーサ長さを計算するために、飛行時間式における長さ値を温度の関数として表す必要がある。それゆえに長さLは、L(1+CΔT)になる。ここに、Cは、線形熱膨張係数であり、ΔTは、温度の変化である。電界のないドリフト領域の長さは、高熱膨張係数を有する材料で作られたスペーサの長さを勿論含んでいる(上述したように)全ての他のイオン−光学素子の長さの関数である。次いで、総飛行時間に対する式は、ΔTに関して微分して必要なスペーサの長さとシステムにおける全ての他の電圧及び長さとの間の関係を見出すためにゼロに等しくすることができる。システム内に加えられる電圧は、エネルギー及び空間フォーカシングに関して最良の装置性能を与えるのに必要な電圧である。
【0058】
例えば、図8に示す本発明の別の実施形態において、リフレクトロン、直交加速度モジュール、及び検出器がインバール支持フレームに取り付けられ、かつ電界のないドリフト領域を画成する内部ライナーが存在する。リフレクトロンは、印刷回路基板(PCB)材料で構成され、電界構成用電極がこの回路基板に印刷される。この場合リフレクトロンの熱膨張は、PCB材料の熱膨張によって決定される。
【0059】
以下の式は、係る直交加速度TOF構成を示し、かつリフレクトロン810をその中間点から取り付けるのに必要なスペーサ830の長さを決定する方法を説明する:
【0060】
温度補償のパラメータ組を計算するために、総飛行時間式を(上述したように)ΔTに関して微分してゼロに等しくする。
【0061】
120
c.[(x1/(V3−V2)).√(Vacc−V2)+
(x2/(V2−V1)).{√(Vacc−V1)−√(Vacc−V2)}+
(x3/(V1−V)).{√(Vacc−V)−√(Vacc−V1)}]
【0062】
730
√(Vacc−V)/(Cs−Cinv).[T120
{2.Lref.C/(Vref−V)}√(Vacc−V)+
1/(2.√(Vacc−V)/(Ldrift.Cinv−Lref.C+
ref.Cinv−(x1+x2+x3).Cc
【0063】
ここで、
3スロープ加速器は電圧V3(加速器プレート)、V2、V1及びV(ライナー)を有する。
加速器の間隔は、x1、x2及びx3であり、ここにx1は、加速器プレートと第1のプレートとの間の間隙である。
acc=入力ビームの中間点における加速器のアプリケーションにおける電圧。
ref=リフレクトロン長さ。
drift=総合フィールドフリードリフト空間長さ、かつLdrift=(L1+L2
ref=リフレクトロンの後側の電圧。
c=加速器の間隔材料の熱膨張係数。
inv=インバールの熱膨張係数。
C=印刷回路基板から構成されたリフレクトロン710に対する、PCB材料の熱膨張係数。
s=スペーサ材料の熱膨張係数。
【0064】
温度補償のパラメータ組を計算するために、総飛行時間式を(上述したように)ΔTに関して微分してゼロに等しくする。リフレクトロン自体で、温度の変化を補償するのに用いられる図9に示すような状況に対して、エネルギー補償のパラメータ組を計算するために、総飛行時間式をVaccに関して微分してゼロに等しくする。同時エネルギー・フォーカシング及び温度補償の条件のために、二つの微分式を等しくする。以下の式は、同時エネルギー・フォーカシング及び温度補償を与える図9の直交加速度TOFにおけるパラメータについて総ドリフト長さ(driftcalc)及びリフレクトロンの後方側に印加される電圧(calcref)の値のペアを計算する。
【0065】
1:={x1c/(V3−V2)}.√(Vacc−V2
2:={x2c/(V2−V1)}.[√(Vacc−V1)−√(Vacc−V2)]
3:={x3c/(V1−V)}.[√(Vacc−V)−√(Vacc−V1)]
5:=2.Lref.C+2.Lref.Cinv−(x1+x2+x3).Cc
【0066】
1:={[x1/2.(V3−V2)]}.[1/√(Vacc−V2)]
2:={[x2/2.(V2−V1)]}.[{1/√(Vacc−V1)}−
{1/√(Vacc−V2)}]
3:={[x3/2.(V1−V)]}.[{1/√(Vacc−V)}−
{1/√(Vacc−V1)}
【0067】
driftcalc:=
{2.Lref.C/√(Vacc−V)[t1+t2+t3]−
[Lref/√(Vacc−V)][p1+p2+p3]−
ref.p5/2.(Vacc−V1)}/
ref.C.√(Vacc−V).(Vacc−V)-3/2/2+
(Lref.Cinv)/2.(Vacc−V)
【0068】
4:=[1/2.(Vacc−V)].driftcalc.Cinv
2Lref.Cinv−(x1+x2+x3).Cc
【0069】
calcref:=
(−2.Lref.C.√(Vacc−V)/[p1+p2+p3]+V
【0070】
当業者は、勿論、様々な例示的実施形態に基づいて説明した特徴を組合せることができるし、場合により、本発明の更なる例示的実施形態を形成することができるであろう。
【0071】
本発明は、その詳細な説明に関連して説明されたが、上述した説明は、本発明の説明のためであり、特許請求の範囲の適用範囲によって規定される、その適用範囲を限定することを意図するものではない、ということが理解されるであろう。他の形態、効果、及び変更は、特許請求の範囲の適用範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】従来技術による飛行時間型質量分析計の概略図である。
【図2】従来技術による飛行時間リフレクトロン型質量分析計の概略図である。
【図3】本発明の一形態による飛行時間型質量分析計の概略図である。
【図4】本発明の一形態による飛行時間リフレクトロン型質量分析計の概略図である。
【図5】本発明の別の形態による飛行時間リフレクトロン型質量分析計の概略図である。
【図6】本発明の更に別の形態による飛行時間リフレクトロン型質量分析計の概略図である。
【図7】本発明の別の形態による飛行時間リフレクトロン型質量分析計の概略図である。
【図8】本発明に用いられるスペーサの長さを算出することができる、図5に示した分析計の直交面の概略図である。
【図9】本発明に用いられるスペーサの長さを算出することができる、図6に示した分析計の直交面の概略図である。
【符号の説明】
【0073】
110 飛行時間チャンバ
120 イオン源
130 ソース領域
140 ドリフト領域
150 検出領域
160 検出器装置
170 加速器
310 フレーム
320 検出器取付台
330 スペーサ
340 スペーサの長さ
350 ドリフト領域の長さ
360 点
370 イオン源の出力端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行時間チャンバを有する飛行時間型質量分析計であって、
第1の場所と第2の場所との間に延びる、飛行経路の第1のセグメントに沿うイオンの飛行時間を温度の変化で変化させる温度依存パラメータを有する少なくとも第1の素子と、
第2の素子の位置を決定する温度依存寸法形状を有するスペーサと、を含み、上記位置が上記チャンバ内のイオンの上記飛行経路の第2のセグメントに沿う飛行時間に影響を及ぼし、
上記スペーサの材料及び寸法は、質量分析計の動作中、イオンが飛行経路を移動するのにかかる総計時間が、上記第1のセグメントに沿うイオンの飛行時間の変化及び温度に係わりなく、同じ質量対電荷比のイオンについて実質的に一定であるように選択されることを特徴とする飛行時間型質量分析計。
【請求項2】
上記飛行経路の上記第1のセグメントに沿うイオンの上記飛行時間は、それが温度のる変化で増大するように変化し、上記飛行経路の上記第2のセグメントに沿うイオンの飛行時間は、それが温度の変化で減少するように影響されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
上記第1の場所は、上記イオンが上記チャンバの中へ加速される場所であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項4】
上記第2の場所は、上記イオンが上記イオン検出器によって検出される場所であることを特徴とする請求項3に記載の質量分析計。
【請求項5】
上記第1の場所は、上記イオンが、開始されるべきイオンの飛行時間のタイミングをトリガする場所であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項6】
上記第2の場所は、上記イオンが、終了されるべきイオンの飛行時間のタイミングをトリガする場所であることを特徴とする請求項5に記載の質量分析計。
【請求項7】
上記第1の素子は、リフレクトロンであり、上記温度依存パラメータは、長さであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項8】
上記第1の素子は、リフレクトロンであり、上記温度依存パラメータは、電界であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項9】
上記第1の素子は、加速器であり、上記温度依存パラメータは、長さであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項10】
上記第1の素子は、加速器であり、上記温度依存パラメータは、電界であることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項11】
上記スペーサは、上記質量分析計の構成部品からなることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項12】
上記スペーサは、上記イオン検出器からなることを特徴とする請求項11に記載の質量分析計。
【請求項13】
上記スペーサは、上記リフレクトロン素子からなることを特徴とする請求項11に記載の飛行時間形質量分析計。
【請求項14】
上記スペーサは、イオンの発生源からなることを特徴とする請求項11に記載の質量分析計。
【請求項15】
上記スペーサは、イオンの発生源に連結されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項16】
上記スペーサは、検出器に連結されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項17】
上記スペーサは、リフレクトロン素子に連結されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項18】
上記スペーサは、高熱膨張の材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項19】
上記材料は、アルミニウムであることを特徴とする請求項18に記載の質量分析計。
【請求項20】
上記スペーサは、低熱膨張の材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項21】
上記スペーサは、温度補償バーと拘束機構とを含み、上記拘束機構は、主として上記第2の素子に対する支持をなし、上記熱補償バーの一端は、上記拘束機構に取り付けられ、上記熱補償バーの他端は、上記飛行時間チャンバに取り付けられ、上記拘束機構は、上記第2の素子の位置を決定する少なくとも一つの自由度を許容することを特徴とする請求項1に記載の質量分析計。
【請求項22】
上記拘束機構は、レバー素子からなることを特徴とする請求項21に記載の質量分析計。
【請求項23】
上記拘束機構は、ピボット要素からなることを特徴とする請求項21に記載の質量分析計。
【請求項24】
飛行時間チャンバを有している飛行時間形質量分析計であって、
第1の場所と第2の場所との間に延びる、飛行経路に沿うイオンの飛行時間を温度の変化で変化させる温度依存電界パラメータを有する、少なくとも第1の素子と、
第2の素子の位置を決定する温度依存形状寸法を有するスペーサと、を含み、上記位置が上記チャンバ内のイオンの上記飛行経路に沿う飛行時間に影響を及ぼし、
上記スペーサの材料及び寸法は、質量分析計の動作中、イオンが飛行経路を移動するのにかかる時間が、イオンの飛行時間の変化及び温度に係わりなく、同じ質量対電荷比のイオンについて実質的に一定であるように選択されることを特徴とする飛行時間型質量分析計。
【請求項25】
飛行時間型質量分析計であって、
少なくともイオンの発生源、及びイオン検出器を含む、温度依存電界パラメータを有するイオン光学素子と、
上記イオンの発生源と上記イオン検出器との間のイオン・ドリフト空間長さに影響を及ぼすスペーサと、を含み、スペーサは、イオン光学素子内の電界の変化を引き起す飛行時間型質量分析計内の少なくとも一つのイオン光学素子の温度の変化によって引き起こされる飛行時間の変化を補償するために、長さが膨張又は収縮するように構成され、
を備え、
質量分析計の動作中、イオンが上記イオンの発生源から上記検出器へ移動するのにかかる時間が、温度の変化に係わりなく、同じ質量対電荷比のイオンについて実質的に一定であることを特徴とする飛行時間型質量分析計。
【請求項26】
飛行時間型質量分析計であって、
少なくともイオンの発生源、及びイオン検出器を含む、温度依存パラメータを有するイオン光学素子と、
イオン光学素子のパラメータの変化を引き起す飛行時間型質量分析計内の少なくとも一つのイオン光学素子の温度の変化によって引き起される飛行時間の変化を補償するように構成された熱補償構造と、
を含み、
質量分析計の動作中、イオンが上記イオンの発生源から上記検出器へ移動するのにかかる時間が、温度の変化に係わりなく、同じ質量対電荷比のイオンについて実質的に一定であることを特徴とする飛行時間型質量分析計。
【請求項27】
上記熱補償構造は、温度補償バーと拘束機構とを含み、上記拘束機構は、主として上記第2の素子に対する支持をなし、上記熱補償バーの一端は、上記拘束機構の一点に取り付けられ、上記熱補償バーの他端は、上記飛行時間チャンバに取り付けられ、上記拘束機構は、上記第2の素子の位置を決定する少なくとも一つの自由度を許容することを特徴とする請求項26に記載の質量分析計。
【請求項28】
上記熱補償バーは、所定の高さで上記拘束機構に取り付けられることを特徴とする請求項27に記載の質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−511964(P2008−511964A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530142(P2007−530142)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/030334
【国際公開番号】WO2006/026391
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)