説明

温度調整システム

【課題】ランニングコストの高騰を招くことなく、かつ、煩雑な準備作業を行うことなく、ポンプや熱交換器のメンテナンスを実行可能とする。
【解決手段】貯液槽2は、冷却水Wを貯液する容器体21の上面開口部25を閉塞する蓋体22〜24を備えて構成され、冷却水Wの液温を調整する熱交換器4は、回収用配管13a,13bを接続する配管接続部41a,41bが貯液槽2の上方に位置するように配設され、温度調整対象体に対する冷却水Wの供給および温度調整対象体からの冷却水Wの回収を実行する循環ポンプは、給水管11を接続する配管接続部31aおよび給水管12を接続する配管接続部31bが貯液槽2の上方に位置するように配設され、蓋体22における配管接続部41a,41bの下方の部位、および配管接続部31bの下方の部位には、浅皿状の液受部P1が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒液の供給によって温度調整対象体の温度を調整する温度調整システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザー加工装置などの工作機械のなかには、装置自体の機構部品や加工対象体を冷却するために、所定温度に温度調整した熱媒液を供給する温度調整システムを併用する構成が採用されているものが存在する。この種の温度調整システムとして、工作機械に冷却水を供給可能に構成されたチラーが特開2005−103448号公報に開示されている。具体的には、このチラーは、工作機械等の温度調整対象体を冷却するための冷却水を貯液可能に構成された水槽と、冷媒との熱交換によって水槽内の冷却水を冷却する(温調する)熱交換器と、水槽内の冷却水を温度調整対象体に供給すると共に温度調整対象体を冷却することによって温度上昇した冷却水を水槽内に回収するポンプとを備えて構成されている。また、このチラーには、水槽内の冷却水を浄化するチラー浄化装置が接続されて、温度調整対象体の冷却によって汚濁した冷却水を浄化することができるように構成されている。
【0003】
この場合、従来のチラーでは、冷却水が貯液されている水槽よりも下方にポンプおよび熱交換器が配設されている。また、このチラーでは、水槽の底面に接続された冷却水導入管を介して水槽内の冷却水をポンプに導入して温度調整対象体に圧送する構成が採用されている。さらに、このチラーでは、温度調整対象体において温度上昇させられた冷却水が冷却水帰還管を介してチラー内に導入され、この冷却水が熱交換器内において冷媒との熱交換によって冷却された後に水槽内に回収される構成が採用されている。また、錆びや堆積物によって冷却水が汚濁したときには、チラー浄化装置を作動させることによって水槽内の冷却水を浄化する。これにより、このチラーでは、温度調整対象体に対して常に新たな冷却水を供給するタイプのチラー(温度調整対象体に供給した冷却水を回収しない構成のチラー)とは異なり、冷却水を循環させて再利用することで、そのランニングコストを低減することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−103448号公報(第2−6頁、第1−2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のチラーには、以下の問題点が存在する。すなわち、従来のチラーでは、水槽よりも下方に配設されたポンプによって水槽内の冷却水を温度調整対象体に向けて圧送すると共に、水槽よりも下方に配設された熱交換器によって冷却水を冷却して水槽内に回収する構成が採用されている。一方、この種のチラーでは、上記のポンプや熱交換器内において目詰まりが生じたり、ポンプにおける気密部品が減耗して圧送能力が低下したりすることがある。かかる場合には、ポンプや熱交換器を取り外してメンテナンスする必要が生じる。この場合、従来のチラーでは、ポンプや熱交換器が水槽よりも下方に配設されているため、ポンプや熱交換器における配管接続部が水槽内に貯液されている冷却水の水位よりも低所に位置することとなる。したがって、従来のチラーでは、ポンプや熱交換器を取り外したときに、水槽内の冷却水が接続用配管から流れ出てしまうため、これらの取り外しに先立って、水槽内の冷却水を他の容器体(バケツやポリタンク等)に移動させる必要があり、この移動作業(準備作業)が非常に煩雑となっているという問題点がある。
【0006】
また、従来のチラーでは、水槽内の冷却水を他の容器体に移動させた後であっても、ポンプ内、熱交換器内、および接続用配管内に残留している冷却水(残留水)を完全に取り除くことはできないため、ポンプや熱交換器を取り外したときに、残留水が流れ出して、チラーの設置場所が水濡れしてしまうという問題点もある。この場合、この種のチラーでは、ポンプ、熱交換器、接続用配管および温度調整対象体内における冷却水の凍結や錆の発生を回避するために、エチレングリーコール等を含む不凍液が冷却水として使用されたり、熱交換効率の向上を図るために、純水が冷却水として使用されたりすることがある。したがって、ポンプや熱交換器を取り外したときに流れ出してしまう分だけ冷却水を補水したときに、不凍液や純水等の高価な冷却水を使用している場合には、ランニングコストの高騰を招くという問題点もある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、ランニングコストの高騰を招くことなく、かつ、煩雑な準備作業を行うことなく、ポンプや熱交換器のメンテナンスを実行し得る温度調整システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく請求項1記載の温度調整システムは、上面開口部が形成されて熱媒液を貯液する容器体を有する貯液槽と、前記熱媒液の液温を調整する液温調整部を有する液温調整装置と、前記貯液槽から温度調整対象体に前記熱媒液を供給すると共に当該温度調整対象体から当該貯液槽内に当該熱媒液を回収する循環ポンプとを備え、前記温度調整対象体に対する前記熱媒液の供給によって当該温度調整対象体の温度を調整する温度調整システムであって、前記貯液槽は、前記容器体の前記上面開口部を閉塞する蓋体を備えて構成され、前記温度調整装置は、少なくとも、前記液温調整部に前記熱媒液を導入する第1の導入用配管を接続する第1の導入用配管接続部と、当該液温調整部から前記熱媒液を排出する第1の排出用配管を接続する第1の排出用配管接続部とが前記貯液槽の上方に位置するように配設され、前記循環ポンプは、少なくとも、当該循環ポンプに前記熱媒液を導入する第2の導入用配管を接続する第2の導入用配管接続部と、当該循環ポンプから前記熱媒液を排出する第2の排出用配管を接続する第2の排出用配管接続部とが前記貯液槽の上方に位置するように配設され、前記蓋体における、少なくとも、前記第1の導入用配管接続部と前記第1の排出用配管接続部とのいずれか下方に位置する一方の下方の部位、および前記第2の排出用配管接続部の下方の部位には、浅皿状の液受部がそれぞれ形成されている。
【0009】
また、請求項2記載の温度調整システムは、請求項1記載の温度調整システムにおいて、前記貯液槽の上方に位置するように配設されて前記熱媒液を濾過する濾過フィルタを備え、前記蓋体における前記濾過フィルタの下方の部位には、液受部が形成されている。
【0010】
さらに、請求項3記載の温度調整システムは、請求項1または2記載の温度調整システムにおいて、前記蓋体には、前記液受部内に流入した液体を前記容器体内に回収する回収孔が形成されている。
【0011】
また、請求項4記載の温度調整システムは、請求項1から3のいずれかに記載の温度調整システムにおいて、前記蓋体は、前記液受部とは別体に構成されると共に前記循環ポンプを取り付け可能に構成されたポンプ取付部を備えている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の温度調整システムでは、少なくとも、液温調整部に熱媒液を導入する第1の導入用配管を接続する第1の導入用配管接続部と、液温調整部から熱媒液を排出する第1の排出用配管を接続する第1の排出用配管接続部とが貯液槽の上方に位置するように温度調整装置を配設し、かつ、少なくとも、循環ポンプに熱媒液を導入する第2の導入用配管を接続する第2の導入用配管接続部と、循環ポンプから熱媒液を排出する第2の排出用配管を接続する第2の排出用配管接続部とが貯液槽の上方に位置するように循環ポンプを配設すると共に、貯液槽の蓋体における、少なくとも、第1の導入用配管接続部と第1の排出用配管接続部とのいずれか下方に位置する一方の下方の部位、および第2の排出用配管接続部の下方の部位に浅皿状の液受部がそれぞれ形成されている。
【0013】
したがって、請求項1記載の温度調整システムによれば、循環ポンプや液温調整部などのメンテナンス作業時に貯液槽内の熱媒液を他の容器体に移動させる煩雑な準備作業が不要となるため、これらのメンテナンス作業を直ちに開始することができると共に、この温度調整システムを停止させた際に、第1の導入用配管、第1の排出用配管、第2の排出用配管、液温調整部および循環ポンプ内の熱媒液の大半が貯液槽内に流れ落ちた状態となってこれらの中に残留する残留水が極く少量となるため、第1の導入用配管、第1の排出用配管および第2の排出用配管を取り外した際に、これらから流れ出る熱媒液を極く少量とすることができる。また、第1の導入用配管、第1の排出用配管および第2の排出用配管を取り外した際に流れ出る少量の熱媒液を蓋体の液受部によって確実に液受けすることができるため、温度調整システムの設置場所が水濡れする状態となるのを確実に回避することができると共に、液受部によって液受けした熱媒液を貯液槽内に回収して再利用することができるため、メンテナンス作業後に補水すべき熱媒液の量を極く少量とすることができる結果、そのランニングコストを十分に低減することができる。
【0014】
また、請求項2記載の温度調整システムによれば、貯液槽の上方に位置するように配設されて熱媒液を濾過する濾過フィルタの下方の部位に液受部を形成して蓋体を構成したことにより、濾過フィルタのメンテナンス作業時(フィルタエレメントの交換作業時)に貯液槽内の熱媒液を他の容器体に移動させる煩雑な準備作業が不要となるため、濾過フィルタのメンテナンス作業を直ちに開始することができると共に、この温度調整システムを停止させた際に、各接続用配管内の熱媒液の大半が貯液槽内に流れ落ちた状態となってこれらの中に残留する残留水が極く少量となるため、濾過フィルタから接続用配管を取り外した際に、これらから流れ出る熱媒液を極く少量とすることができる。また、接続用配管を取り外した際に流れ出る少量の熱媒液を蓋体の液受部によって確実に液受けすることができるため、温度調整システムの設置場所が水濡れする状態となるのを確実に回避することができると共に、液受部によって液受けした熱媒液を貯液槽内に回収して再利用することができるため、メンテナンス作業後に補水すべき熱媒液の量を極く少量とすることができる結果、そのランニングコストを十分に低減することができる。
【0015】
さらに、請求項3記載の温度調整システムによれば、液受部内に流入した液体を容器体内に回収する回収孔を蓋体に形成したことにより、液受部によって液受けした熱媒液を手作業で貯液槽内に移動させる回収作業を不要とすることができる。
【0016】
また、請求項4記載の温度調整システムによれば、液受部とは別体に構成されると共に循環ポンプを取り付け可能に構成されたポンプ取付部を備えて蓋体を構成したことにより、液受部を構成する蓋体を形成するための形成用材料と、ポンプ取付部を構成する蓋体を形成するための形成用材料とを別個に選択することができるため、浅皿状に形成すべき蓋体(液受部を構成する蓋体)の形成材料として、加工が容易な材料を選択することで、この蓋体を容易に製造することができ、循環ポンプを取り付けるための蓋体(ポンプ取付部を構成する蓋体)の形成材料として、十分な強度を有する材料を選択することで、循環ポンプを確実に固定し得る頑丈な蓋体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】水槽内蔵チラー1の正面図である。
【図2】水槽内蔵チラー1の平面図である。
【図3】水槽内蔵チラー1の構成を示す構成図である。
【図4】図2におけるA1−A1線断面図である。
【図5】図2におけるA2−A2線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、温度調整システムの実施の形態について説明する。
【0019】
図1〜3に示す水槽内蔵チラー1は、「温度調整システム」の一例であって、レーザー加工装置、ボール盤、フライス盤およびマシニングセンタ等の各種工作機械、およびX線撮像装置等の各種医療器具などの温度調整対象体X(図3参照)に対して、所定の温度に温度調整した冷却水Wを供給して温度調整対象体Xを温度調整する(冷却する)ことができるように構成されている。この水槽内蔵チラー1は、図3に示すように、貯液槽2、揚水ポンプ3、熱交換器4、冷凍サイクル5および濾過フィルタ6を備えると共に、図1,2に示すように、これらを設置するための基台Bと、熱交換器4や濾過フィルタ6などを基台Bに固定するためのフレームFと、水槽内蔵チラー1の各構成要素を収容可能な底面開口箱形のケーシングC(図1参照)とを備えて構成されている。
【0020】
貯液槽2は、「熱媒液」に相当する冷却水W(一例として、純水や不凍液)を貯液可能に構成されている。この貯液槽2は、図1,2に示すように、一例として、ステンレススチールの板材を溶接することによって上面開口箱形に形成した容器体21と、この容器体21の上面開口部25を閉塞する蓋体22〜24とを備えている。蓋体22は、後述するように、熱交換器4における配管接続部41a,41bや揚水ポンプ3の配管接続部31bの下方に位置するように容器体21に取り付けられて、容器体21における上面開口部25の一端部側(両図における左端部側)を閉塞する。この蓋体22は、図4に示すように、一例として、厚み1.0mm程度のステンレススチールの板材を折り曲げ加工することによって浅皿状に形成されて(ドレンパン状に加工されて)、メンテナンス作業時に熱交換器4や揚水ポンプ3から滴り落ちる冷却水Wを液受けする液受部P1を構成する(「少なくとも、第1の導入用配管接続部と第1の排出用配管接続部とのいずれか下方に位置する一方(この例では、双方)の下方の部位」、および「第2の排出用配管接続部の下方の部位」に液受部P1がそれぞれ形成された構成の一例)。
【0021】
蓋体23は、「ポンプ取付部」に相当し、揚水ポンプ3を取り付け可能に構成されると共に、図1,2に示すように、容器体21における上面開口部25の中央部(蓋体22,24の間の開口部25a)を閉塞する。この蓋体23は、一例として、厚み1.5mm程度のステンレススチールの板材を折り曲げ加工することによって下面開口の薄厚箱状に形成されている。蓋体24は、後述するように濾過フィルタ6の下方に位置するように容器体21に取り付けられて、容器体21における上面開口部25の他端部側(両図おける右端部側)を閉塞する。この蓋体24は、一例として、厚み1.0mm程度のステンレススチールの板材を折り曲げ加工することによって浅皿状に形成されて(ドレンパン状に加工されて)、メンテナンス作業時に濾過フィルタ6から滴り落ちる冷却水Wを液受けする液受部P2を構成する。
【0022】
また、図5に示すように、蓋体24には、容器体21内に貯液した冷却水Wの水量や水質を点検するための点検孔25bが形成されると共に、この点検孔25bが閉塞板26によって閉塞されている。この点検孔25bは、「回収孔」としても機能して、メンテナンス作業時に濾過フィルタ6から液受部P2に滴り落ちた冷却水Wを容器体21内に流入させる。この場合、この水槽内蔵チラー1(貯液槽2)では、上記の蓋体22,24の間の開口部25a(蓋体23によって閉塞される部位)も「回収孔」として機能して、メンテナンス作業時に液受部P1,P2に滴り落ちた冷却水Wを容器体21内に流入させるように構成されている。なお、この水槽内蔵チラー1(貯液槽2)では、上記の蓋体22〜24が相俟って「蓋体」を構成する。
【0023】
揚水ポンプ3は、「循環ポンプ」の一例であって、図1,2に示すように、貯液槽2における蓋体23に取り付けられて、全体として貯液槽2の上方に位置させられている(「第2の導入用配管接続部」および「第2の排出用配管接続部」の双方が貯液槽2の上方に位置する構成の一例)。この揚水ポンプ3は、貯液槽2から温度調整対象体Xに冷却水Wを供給する(圧送する)と共に温度調整対象体Xから貯液槽2内に冷却水Wを回収する。具体的には、この揚水ポンプ3は、底面に設けられた配管接続部31a(「第2の導入用配管接続部」の一例)に接続された吸水管11(「第2の導入用配管」の一例)を介して貯液槽2内の冷却水Wを吸い上げると共に、側面に設けられた配管接続部31b(「第2の排出用配管接続部」の一例)に接続された供給用配管12(「第2の排出用配管」の一例)を介して温度調整対象体Xに接続されて(図3参照)、汲み上げた冷却水Wを温度調整対象体Xに向けて圧送する。
【0024】
熱交換器4は、「液温調整部」の一例であって、冷凍サイクル5と相俟って「液温調整装置」を構成する。この熱交換器4は、図3に示すように、配管接続部41a(第1の導入用配管接続部:図1,2参照)に接続された回収用配管13a(第1の導入用配管)を介して温度調整対象体Xに接続され、かつ、配管接続部41b(第1の排出用配管接続部:図1,2参照)に接続された回収用配管13b(第1の排出用配管)を介して貯液槽2における容器体21に接続されている。また、図1,2に示すように、この熱交換器4は、フレームFに取り付けられて貯液槽2における蓋体22の上方に位置させられている。これにより、この水槽内蔵チラー1では、配管接続部41a,41bの双方が貯液槽2における蓋体22(液受部P1)の上方に位置する(配管接続部41a,41bの双方の下方に蓋体22(液受部P1)が位置する)状態となっている。この熱交換器4は、図3に示すように、冷凍サイクル5における蒸発器51を収容しており、蒸発器51内において冷媒が気化することで、蒸発器51の周囲の冷却水Wを冷却する(液温を調整する)構成が採用されている。
【0025】
冷凍サイクル5は、図3に示すように、蒸発器51、圧縮機52、凝縮器53および膨張弁54を備えている。なお、冷凍サイクル5における上記の4つの構成要素以外の構成要素や、その動作原理については公知のため、詳細な説明を省略する。濾過フィルタ6は、冷却水Wに混入した不純物(錆、ゴミおよび油分等)を濾過するフィルタであって、一例として、その上面中央部に設けられた配管接続部61a(図1,2参照)に接続された連結用配管14aを介して供給用配管12に連結されると共に、上方側面に設けられた配管接続部61b(図1,2参照)に接続された連結用配管14bを介して回収用配管13aに連結されている。この場合、この水槽内蔵チラー1では、一例として、図3に示すように、冷却水Wの濾過処理を実行しない通常運転時において濾過フィルタ6への冷却水Wの流入を規制する止水弁62が連結用配管14aに取り付けられている。また、図1,2に示すように、この濾過フィルタ6は、フレームFに取り付けられて貯液槽2における蓋体24の上方に位置させられている。これにより、この水槽内蔵チラー1では、配管接続部61a,61bの双方が貯液槽2における蓋体24(液受部P2)の上方に位置する(配管接続部61a,61bの双方の下方に蓋体24(液受部P2)が位置する)状態となっている。
【0026】
この場合、この水槽内蔵チラー1では、上記したように、「蓋体」を構成する蓋体22〜24のうち、液受部P1,P2を構成する蓋体22,24が厚み1.0mm程度のステンレススチールの板材を折り曲げ加工することによって浅皿状に形成されている。また、この水槽内蔵チラー1では、「蓋体」を構成する蓋体22〜24のうち、揚水ポンプ3を取り付ける「ポンプ取付部」として機能する蓋体23が厚み1.5mm程度のステンレススチールの板材を折り曲げ加工することによって下面開口の薄厚箱状に形成されている。したがって、この水槽内蔵チラー1では、例えば、「蓋体」の全体を厚み1.5mm程度のステンレススチールの板材で形成した構成(図示せず)とは異なり、比較的小さな力で液受部P1,P2を形成する(浅皿状に加工する)ことができると共に、「蓋体」の全体を厚み1.0mm程度のステンレススチールの板材で形成した構成(図示せず)とは異なり、揚水ポンプ3を確実に取り付け可能な十分な強度を持たせることが可能となっている。
【0027】
この水槽内蔵チラー1によって温度調整対象体Xを冷却する(温度調整対象体Xの温度を調整する)際には、まず、貯液槽2内に必要量の冷却水Wを貯液する。次いで、図示しない操作部を操作して冷凍サイクル5を稼働させると共に、揚水ポンプ3による冷却水Wの圧送を開始させる。この際には、冷凍サイクル5における蒸発器51内で冷媒が気化することにより、その気化熱によって熱交換器4内の冷却水W(蒸発器51の周囲の冷却水W)が冷却され、この冷却水Wが回収用配管13bを介して貯液槽2内に圧送される。また、貯液槽2内に圧送された低温の冷却水Wは、吸水管11を介して揚水ポンプ3内に導入されて、供給用配管12を介して温度調整対象体Xに供給される。これにより、水槽内蔵チラー1から供給された冷却水Wによって温度調整対象体Xが冷却される(温度調整される。)
【0028】
また、温度調整対象体Xを冷却することによって温度上昇させられた冷却水Wは、温度調整対象体Xに対して順次圧送される冷却水Wによって温度調整対象体Xから押し出されて(排出されて)、回収用配管13aを介して熱交換器4内に導入される。さらに、熱交換器4内に導入された高温の冷却水Wは、上記したように、熱交換器4内において蒸発器51によって冷却された後に、回収用配管13bを介して貯液槽2内に回収される。このように、この水槽内蔵チラー1では、貯液槽2と温度調整対象体Xとの間で冷却水Wを循環させる構成が採用されている。これにより、温度調整対象体Xを冷却するのに要するランニングコストを十分に低減することが可能となっている。
【0029】
一方、冷却水Wに汚濁が生じたときには、供給用配管12および回収用配管13aに配設された止水弁(図示せず)を閉塞すると共に、止水弁62を開放する。次いで、図示しない操作部を操作して揚水ポンプ3による冷却水Wの圧送を開始させる。この際には、揚水ポンプ3から供給用配管12に排出された冷却水Wが連結用配管14aを介して濾過フィルタ6に導入され、濾過フィルタ6内において不純物が取り除かれた後に、連結用配管14bを介して回収用配管13aに排出される。また、回収用配管13aに排出された綺麗な冷却水Wは、熱交換器4および回収用配管13bをこの順で通過させられて貯液槽2内に回収される。したがって、ある程度の時間に亘って揚水ポンプ3を稼働させた状態を維持することにより、貯液槽2内のすべての冷却水Wが濾過フィルタ6によって濾過される。これにより、この水槽内蔵チラー1では、冷却水Wの交換サイクルを十分に長くすることができるため、温度調整対象体Xを冷却するのに要するランニングコストを一層低減することが可能となっている。
【0030】
また、揚水ポンプ3のメンテナンス作業時には、水槽内蔵チラー1を停止させた状態において、供給用配管12を配管接続部31bから取り外す。また、熱交換器4のメンテナンス作業時には、水槽内蔵チラー1を停止させた状態において、回収用配管13a,13bを配管接続部41a,41bから取り外す。この場合、揚水ポンプ3や熱交換器4が貯液槽2よりも上方に配設されているこの水槽内蔵チラー1では、供給用配管12や回収用配管13a,13bを取り外したとしても、貯液槽2内の冷却水Wが流れ出すことなく、貯液槽2内に貯液された状態が維持される。したがって、貯液槽2内の冷却水Wを他の容器体に移動させる煩雑な準備作業が不要となっている。また、揚水ポンプ3や熱交換器4が貯液槽2よりも上方に配設されているこの水槽内蔵チラー1では、停止状態において、揚水ポンプ3、熱交換器4、供給用配管12および回収用配管13a,13b内の冷却水Wの大半が貯液槽2内に流れ落ちた状態となり、これらの中に残留する冷却水W(残留水)が少量となっている。したがって、供給用配管12や回収用配管13a,13bを取り外した際に、揚水ポンプ3、熱交換器4、供給用配管12および回収用配管13a,13bから流れ出る冷却水Wが極く少量となっている。
【0031】
さらに、供給用配管12が接続される配管接続部31b、回収用配管13aが接続される配管接続部41a、および回収用配管13bが接続される配管接続部41bのすべてが蓋体22の上方(液受部P1の上方)に位置するように揚水ポンプ3や熱交換器4が取り付けられている(配管接続部31a,41a,41bのすべての下方に蓋体22(液受部P1)が位置するように蓋体22が容器体21に取り付けられている)この水槽内蔵チラー1では、供給用配管12や回収用配管13a,13bを取り外した際に、揚水ポンプ3、熱交換器4、供給用配管12および回収用配管13a,13bから液受部P1内に冷却水Wが流れ出て液受けされる。また、液受部P1によって液受けされた冷却水Wは、蓋体22と蓋体23との隙間を通過して開口部25aから貯液槽2内に回収される。したがって、水槽内蔵チラー1の設置場所が冷却水Wによって水濡れする事態が回避される。
【0032】
また、濾過フィルタ6のメンテナンス作業時(図示しないフィルタエレメントの交換作業時)には、水槽内蔵チラー1を停止させた状態において、連結用配管14a,14bを配管接続部61a,61bから取り外す。この場合、濾過フィルタ6が貯液槽2よりも上方に配設されているこの水槽内蔵チラー1では、供給用配管12、回収用配管13a,13bおよび連結用配管14a,14b内の冷却水Wの大半が貯液槽2内に流れ落ちた状態となり、濾過フィルタ6内だけに冷却水Wが残留した状態となっている。したがって、連結用配管14a,14bを取り外した際に、供給用配管12、回収用配管13a,13bおよび連結用配管14a,14bから流れ出る冷却水Wが極く少量となっている。
【0033】
さらに、連結用配管14a,14bが接続される配管接続部61a,61bの双方が蓋体24の上方(液受部P2の上方)に位置するように濾過フィルタ6が取り付けられている(配管接続部61a,61bの下方に蓋体24(液受部P2)が位置するように蓋体24が容器体21に取り付けられている)この水槽内蔵チラー1では、連結用配管14a,14bを取り外した際に、供給用配管12、回収用配管13a,13bおよび連結用配管14a,14bから液受部P2内に冷却水Wが流れ出て液受けされる。また、液受部P2によって液受けされた冷却水Wの一部は、蓋体23と蓋体24との隙間を通過して開口部25aから貯液槽2内に回収されると共に、液受部P2によって液受けされた冷却水Wの他の一部は、蓋体24と閉塞板26との隙間を通過して点検孔25bから貯液槽2内に回収される。したがって、水槽内蔵チラー1の設置場所が冷却水Wによって水濡れする事態が回避される。
【0034】
このように、この水槽内蔵チラー1では、少なくとも、熱交換器4に冷却水Wを導入する回収用配管13aを接続する配管接続部41aと、熱交換器4から冷却水Wを排出する回収用配管13bを接続する配管接続部41bとが貯液槽2の上方に位置するように(この例では、熱交換器4の全体が貯液槽2の上方に位置するように、)温度調整装置(熱交換器4および冷凍サイクル5)を配設し、かつ、少なくとも、揚水ポンプ3に冷却水Wを導入する吸水管11を接続する配管接続部31aと、揚水ポンプ3から冷却水Wを排出する供給用配管12を接続する配管接続部31bとが貯液槽2の上方に位置するように(この例では、揚水ポンプ3の全体が貯液槽2の上方に位置するように)揚水ポンプ3を配設すると共に、貯液槽2の蓋体22における、少なくとも、配管接続部41a,41bのいずれか下方に位置する一方(この例では、双方)の下方の部位、および配管接続部31bの下方の部位に浅皿状の液受部P1がそれぞれ形成されている。
【0035】
したがって、この水槽内蔵チラー1によれば、揚水ポンプ3や熱交換器4などのメンテナンス作業時に貯液槽2内の冷却水Wを他の容器体に移動させる煩雑な準備作業が不要となるため、これらのメンテナンス作業を直ちに開始することができると共に、この水槽内蔵チラー1を停止させた際に、供給用配管12、回収用配管13a,13b、揚水ポンプ3および熱交換器4内の冷却水Wの大半が貯液槽2内に流れ落ちた状態となってこれらの中に残留する残留水が極く少量となるため、供給用配管12や回収用配管13a,13bを取り外した際に、これらから流れ出る冷却水Wを極く少量とすることができる。また、供給用配管12や回収用配管13a,13bを取り外した際に流れ出る少量の冷却水Wを蓋体22(液受部P1)によって確実に液受けすることができるため、水槽内蔵チラー1の設置場所が水濡れする状態となるのを確実に回避することができると共に、液受部P1によって液受けした冷却水Wを貯液槽2内に回収して再利用することができるため、メンテナンス作業後に補水すべき冷却水Wの量を極く少量とすることができる結果、そのランニングコストを十分に低減することができる。
【0036】
また、この水槽内蔵チラー1によれば、貯液槽2の上方に位置するように配設されて冷却水Wを濾過する濾過フィルタ6の下方の部位に液受部P2を形成して蓋体24を構成したことにより、濾過フィルタ6のメンテナンス作業時(フィルタエレメントの交換作業時)に貯液槽2内の冷却水Wを他の容器体に移動させる煩雑な準備作業が不要となるため、濾過フィルタ6のメンテナンス作業を直ちに開始することができると共に、この水槽内蔵チラー1を停止させた際に、供給用配管12、回収用配管13a,13bおよび連結用配管14a,14b内の冷却水Wの大半が貯液槽2内に流れ落ちた状態となってこれらの中に残留する残留水が極く少量となるため、連結用配管14a,14bを取り外した際に、これらから流れ出る冷却水Wを極く少量とすることができる。また、連結用配管14a,14bを取り外した際に流れ出る少量の冷却水Wを蓋体24(液受部P2)によって確実に液受けすることができるため、水槽内蔵チラー1の設置場所が水濡れする状態となるのを確実に回避することができると共に、液受部P2によって液受けした冷却水Wを貯液槽2内に回収して再利用することができるため、メンテナンス作業後に補水すべき冷却水Wの量を極く少量とすることができる結果、そのランニングコストを十分に低減することができる。
【0037】
さらに、この水槽内蔵チラー1によれば、液受部P1,P2液受部内に流入した液体を容器体21内に回収する開口部25aを蓋体22,24間に設けると共に点検孔25bを蓋体24に形成したことにより、液受部P1,P2によって液受けした冷却水Wを手作業で貯液槽2内に移動させる回収作業を不要とすることができる。
【0038】
また、この水槽内蔵チラー1によれば、液受部P1,P2を構成する蓋体22,24とは別体に構成されると共に揚水ポンプ3を取り付け可能に構成された蓋体23を備えて「蓋体」構成したことにより、蓋体22,24を形成するための形成用材料と、蓋体23を形成するための形成用材料とを別個に選択することができるため、浅皿状に形成すべき蓋体22,24の形成材料として、加工が容易な材料を選択することで、蓋体22,24を容易に製造することができ、揚水ポンプ3を取り付けるための蓋体24の形成材料として、十分な強度を有する材料を選択することで、揚水ポンプ3を確実に固定し得る頑丈な蓋体23を製造することができる。
【0039】
なお、温度調整システムの構成は、上記の水槽内蔵チラー1の構成に限定されるものではない。具体的には、温度調整対象体Xから貯液槽2に冷却水Wを回収する回収用配管(回収用配管13a,13b)に「液温調整部」としての熱交換器4を接続して冷却水Wを冷却する(温度調整する)構成を例に挙げて説明したが、「液温調整部」の接続位置はこれに限定されず、貯液槽2から温度調整対象体Xに冷却水Wを供給する供給用配管(供給用配管12)に「液温調整部」としての熱交換器4を接続して冷却水Wを冷却する(温度調整する)構成を採用することもできる。また、熱交換器4内に冷凍サイクル5の蒸発器51を収容して冷媒の気化熱によって冷却水Wを冷却する構成を例に挙げて説明したが、「熱媒液の液温を調整する」との処理は、冷却処理に限定されず、例えば、上記の熱交換器4内にヒータを収容し、ヒータによって冷却水Wを加熱する加熱処理を実行する構成を採用することもできる。これらの構成を採用した場合においても、上記の水槽内蔵チラー1と同様の効果を奏することができる。
【0040】
さらに、「循環ポンプ」としての揚水ポンプ3を備えた水槽内蔵チラー1を例に挙げて説明したが、揚水ポンプ3に代えて、圧送ポンプを使用して冷却水Wを温度調整対象体Xに供給する構成を採用することもできる。この場合、「循環ポンプ」として圧送ポンプを採用したときには、温度調整対象体Xから貯液槽2に冷却水Wを回収する回収用配管(回収用配管13a,13b)に「循環ポンプ」として圧送ポンプを接続することもできる。これらの構成を採用した場合においても、上記の水槽内蔵チラー1と同様の効果を奏することができる。
【0041】
また、濾過フィルタ6を有する水槽内蔵チラー1を例に挙げて説明したが、濾過フィルタ6を有しない構成を採用することもできる。さらに、各構成要素を収容可能なケーシングCを有する水槽内蔵チラー1を例に挙げて説明したが、ケーシングCを有しない構成を採用することもできる。また、基台B上に貯液槽2やフレームFを配設した水槽内蔵チラー1を例に挙げて説明したが、基台Bを有しない構成を採用することもできる。これらの構成を採用した場合においても、上記の水槽内蔵チラー1と同様の効果を奏することができる。加えて、蓋体22〜24をそれぞれ別体に構成した貯液槽2を有する水槽内蔵チラー1を例に挙げて説明したが、蓋体22〜24に相当する部位を一体構成して「蓋体」を構成すると共に、この「蓋体」の上面全域が液受部として機能するように浅皿状に形成することもできる。このような構成を採用した場合においても、上記の蓋体22,24を有する水槽内蔵チラー1(貯液槽2)と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 水槽内蔵チラー
2 貯液槽
3 揚水ポンプ
4 熱交換器
5 冷凍サイクル
6 濾過フィルタ
11 吸水管
12 供給用配管
13a,13b 回収用配管
14a,14b 連結用配管
21 容器体
22〜24 蓋体
25 上面開口部
25a 開口部
25b 点検孔
26 閉塞板
31a,31b,41a,41b,61a,61b 配管接続部
51 蒸発器
P1,P2 液受部
W 冷却水
X 温度調整対象体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口部が形成されて熱媒液を貯液する容器体を有する貯液槽と、前記熱媒液の液温を調整する液温調整部を有する液温調整装置と、前記貯液槽から温度調整対象体に前記熱媒液を供給すると共に当該温度調整対象体から当該貯液槽内に当該熱媒液を回収する循環ポンプとを備え、前記温度調整対象体に対する前記熱媒液の供給によって当該温度調整対象体の温度を調整する温度調整システムであって、
前記貯液槽は、前記容器体の前記上面開口部を閉塞する蓋体を備えて構成され、
前記温度調整装置は、少なくとも、前記液温調整部に前記熱媒液を導入する第1の導入用配管を接続する第1の導入用配管接続部と、当該液温調整部から前記熱媒液を排出する第1の排出用配管を接続する第1の排出用配管接続部とが前記貯液槽の上方に位置するように配設され、
前記循環ポンプは、少なくとも、当該循環ポンプに前記熱媒液を導入する第2の導入用配管を接続する第2の導入用配管接続部と、当該循環ポンプから前記熱媒液を排出する第2の排出用配管を接続する第2の排出用配管接続部とが前記貯液槽の上方に位置するように配設され、
前記蓋体における、少なくとも、前記第1の導入用配管接続部と前記第1の排出用配管接続部とのいずれか下方に位置する一方の下方の部位、および前記第2の排出用配管接続部の下方の部位には、浅皿状の液受部がそれぞれ形成されている温度調整システム。
【請求項2】
前記貯液槽の上方に位置するように配設されて前記熱媒液を濾過する濾過フィルタを備え、
前記蓋体における前記濾過フィルタの下方の部位には、液受部が形成されている請求項1記載の温度調整システム。
【請求項3】
前記蓋体には、前記液受部内に流入した液体を前記容器体内に回収する回収孔が形成されている請求項1または2記載の温度調整システム。
【請求項4】
前記蓋体は、前記液受部とは別体に構成されると共に前記循環ポンプを取り付け可能に構成されたポンプ取付部を備えている請求項1から3のいずれかに記載の温度調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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