説明

温度調整装置

【課題】構成の簡素化を図ることができながら、熱の有効活用を図ること。
【解決手段】圧縮機1、凝縮器2、膨張部3、蒸発器4の順に冷媒Aを循環させる冷凍サイクルCを備え、蒸発器4内を流れる冷媒Aを熱源として温調対象空気Pを冷却させる温度調整装置において、蒸発器4にて発生するドレン水Wを冷却用熱交換器13に滴下するドレン水滴下手段14と、冷却用熱交換器13に滴下されるドレン水Wに対して温調対象空気Pの一部を通風させる通風手段15と、冷却用熱交換器13内を温調対象空気Pとは別の別温調対象流体Qを通流させて、ドレン水Wの蒸発潜熱を利用して別温調対象流体Qを冷却させる別温調対象流体冷却手段16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、凝縮器、膨張部、蒸発器の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、前記蒸発器内を流れる冷媒を熱源として温調対象空気を冷却させる温度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような温度調整装置は、例えば、冷凍サイクルに加えて、加熱手段を備え、蒸発器にて冷媒と温調対象空気とを熱交換させて温調対象空気を冷却し、その冷却された温調対象空気を加熱手段にて加熱することにより、温調対象空気の温度を目標温度範囲(例えば、目標温度(20℃)±0.1℃の範囲)内に調整している。そして、温調された目標温度範囲の温調対象空気を温調対象空間に供給するようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような温度調整装置では、蒸発器にて冷媒と温調対象空気とを熱交換させるときにドレン水が発生することになる。例えば、温調対象空間が精密加工機等が設置されている室内空間等とされていると、精密加工機から発生した蒸気が温調対象空気に含まれることになる。よって、例えば、温度調整装置にて温調された温調対象空気を温調対象空間に供給し、温調対象空間の温調対象空気を温度調整装置に戻すように、温度調整装置と温調対象空間との間で温調対象空気を循環させるものでは、蒸発器にて冷却される温調対象空気に精密加工機から発生した蒸気が含まれているので、蒸発器にて多くのドレン水が発生することになる。
【0004】
従来の温度調整装置では、ドレン水に対して何らかの処置を行う必要があることから、例えば、蒸発器にて発生するドレン水を装置外に排出するためのドレン水排水設備を設けているものがある。また、あらたにドレン水排水設備を設けると、構成の複雑化を招くことになるので、他の従来の温度調整装置では、蒸発器にて発生したドレン水を蒸発室に供給し、ヒータの加熱によりドレン水を蒸発させるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−39345号公報
【特許文献2】特許第3996487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載のものでは、あらたにドレン水排水設備を設けなくてもよいので、それだけ構成の簡素化を図ることができる。しかしながら、あらたにヒータを備えた蒸発室を設けなければならず、依然として構成の複雑化を招くものとなっていた。
しかも、上記特許文献2に記載のものでは、ドレン水をヒータの加熱によって蒸発させているので、ヒータにてあらたに熱を発生しており、また、ドレン水が有する冷熱を単に排熱しているだけであるので、既に有する熱を有効に活用できていなかった。
【0007】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、構成の簡素化を図ることができながら、熱の有効活用を図ることができる温度調整装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る温度調整装置の特徴構成は、圧縮機、凝縮器、膨張部、蒸発器の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、前記蒸発器内を流れる冷媒を熱源として温調対象空気を冷却させる温度調整装置において、
前記蒸発器にて発生するドレン水を冷却用熱交換器に滴下するドレン水滴下手段と、前記冷却用熱交換器に滴下されるドレン水に対して前記温調対象空気の一部を通風させる通風手段と、前記冷却用熱交換器内を前記温調対象空気とは別の別温調対象流体を通流させて、前記ドレン水の蒸発潜熱を利用して前記別温調対象流体を冷却させる別温調対象流体冷却手段とを備えている点にある。
【0009】
本特徴構成によれば、冷却用熱交換器では、ドレン水滴下手段によりドレン水を滴下させ、滴下されるドレン水に対して通風手段により温調対象空気の一部が通風される。これにより、ドレン水は蒸発してそのときの蒸発潜熱により冷却用熱交換器の周囲の空気等を冷却させる。例えば、工場等では温調対象空気を温調することに加えて、圧縮空気等の温調対象空気とは別の別温調対象流体をも温調することが求められる場合がある。そこで、冷却用熱交換器内には、別温調対象流体冷却手段により別温調対象流体を通流させている。これにより、ドレン水の蒸発潜熱により冷却された冷却用熱交換器の周囲の空気と別温調対象流体とを熱交換させて、或いは、ドレン水の蒸発潜熱と別温調対象流体とを直接熱交換させて、別温調対象流体を冷却させることができる。このようにして、温調対象空気を冷却するだけでなく、別温調対象流体をも冷却することができ、別温調対象流体をも温調したいという要望に応えることができる。しかも、別温調対象流体を冷却させる際の熱源は、ドレン水が有する冷熱を用いているので、別温調対象流体を冷却させるための熱源をあらたに設けなくてもよい。さらに、ドレン水は、冷却用熱交換器において蒸発されるので、ドレン水を装置外に排出させるためのドレン水排水設備をあらたに設ける必要もない。
以上のことから、構成の簡素化及びコストの低減を図ることができながら、ドレン水が有する冷熱を用いて別温調対象流体をも冷却させることができ、熱の有効活用を図ることができる温度調整装置を実現できる。
【0010】
本発明に係る温度調整装置の更なる特徴構成は、前記蒸発器内を流れる冷媒を熱源として冷却された前記温調対象空気を加熱する加熱手段を備え、前記通風手段は、前記加熱手段にて加熱された後の前記温調対象空気の一部を前記ドレン水に対して通風させるように構成されている点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、ドレン水に対して通風させる温調対象空気を、加熱手段にて加熱された後の湿度の低い極力乾いた空気とすることができる。これにより、ドレン水を積極的に蒸発させることができ、ドレン水の蒸発潜熱を利用して別温調対象流体を的確に冷却させることができる。
【0012】
本発明に係る温度調整装置の更なる特徴構成は、前記通風手段は、前記ドレン水に対して通風させる前記温調対象空気の通風量を調整自在に構成されている点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、別温調対象流体を冷却させるために必要となる通風量となるように、ドレン水に対して通風させる温調対象空気の通風量を調整することができ、別温調対象流体の冷却を確実に行うことができる。
また、加熱手段にて加熱された後の温調対象空気は、温調対象空間を温調するための目標温度に温調されているので、ドレン水に対して必要以上に温調対象空気を通風させると、温調対象空気を温調させるための熱を無駄に排熱することになる。そこで、例えば、ドレン水に対して通風させる温調対象空気を加熱手段にて加熱された後の温調対象空気とする場合には、別温調対象流体を冷却させるために必要となる最低の通風量に調整することができる。これにより、温調対象空気を温調させるための熱を無駄に排熱するのを防止して、熱の有効活用をより一層図ることができる。
【0014】
本発明に係る温度調整装置の更なる特徴構成は、前記蒸発器において前記冷媒と熱伝達用液体とを熱交換させて前記熱伝達用液体を冷却させる熱伝達用液体冷却手段と、冷却された前記熱伝達用液体と前記温調対象空気とを熱交換させて前記温調対象空気を冷却させる温調対象空気冷却用熱交換器とを備え、前記ドレン水滴下手段は、前記蒸発器にて発生するドレン水及び前記温調対象空気冷却用熱交換器にて発生するドレン水を前記冷却用熱交換器に滴下するように構成されている点にある。
【0015】
蒸発器における冷媒を熱源として温調対象空気を冷却させるに当たり、蒸発器において冷媒と温調対象空気とを熱交換させると、温調対象空気を均一に冷却することが難しい。すなわち、例えば、冷媒の状態変化の度合い等によって蒸発器における入口側を通流する冷媒の温度と出口側を通流する冷媒の温度とが異なる等、蒸発器の全体に亘って冷媒の温度を均一にすることが難しい。よって、蒸発器において冷媒にて温調対象空気を冷却すると、温調対象空気を均一に冷却することが難しく、温調対象空気に温度むらが生じる場合がある。
【0016】
そこで、本特徴構成によれば、熱伝達用液体冷却手段によって、蒸発器において冷媒にて温調対象空気を冷却させるのではなく、冷媒にて熱伝達用液体を冷却させている。そして、温調対象空気冷却用熱交換器では、冷却された熱伝達用液体と温調対象空気とを熱交換させて温調対象空気を冷却させる。熱伝達用液体は、冷媒と比べて比重が大きいので、熱伝達用液体と温調対象空気とを熱交換させる際に、熱伝達用液体の温度を均一にすることができる。よって、温調対象空気を温度むらがなく均一な温度に冷却することができる。しかも、温調対象空気冷却用熱交換器にてドレン水が発生するが、このドレン水もドレン水滴下手段により冷却用熱交換器に滴下される。これにより、蒸発器にて発生するドレン水及び温調対象空気冷却用熱交換器にて発生するドレン水が有する冷熱を用いて、冷却用熱交換器にて別温調対象流体を効率よく且つ的確に冷却させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】温度調整装置の構成図
【図2】温度調整装置の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る温度調整装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
この温度調整装置は、図1に示すように、圧縮機1、凝縮器2、膨張弁3(膨張部に相当する)、蒸発器4の順に冷媒A(図中点線矢印参照)を循環させる冷媒回路5を備えた冷凍サイクルCと、蒸発器4において冷媒Aにて冷却された熱伝達用液体B(図中実線矢印参照)を循環させる液体回路6とを備えて構成されている。ここで、熱伝達用液体Bとして、例えば水が用いられている。
【0019】
この温度調整装置は、蒸発器4において冷媒Aにて熱伝達用液体Bを冷却させ、その冷却された熱伝達用液体Bにて温調対象空気Pを冷却するように構成されている。ここで、温調対象空気Pは、例えば、温調対象空間を温調するために温調対象空間に供給され、温調対象空間から温度調整装置に戻されるように、温調対象空間と温度調整装置との間で循環されている。そして、この温度調整装置は、蒸発器4にて発生するドレン水W及び熱伝達用液体Bにて温調対象空気Pを冷却する際に温調対象空気冷却用熱交換器7にて発生するドレン水Wを熱源として別温調対象流体Qを冷却させるように構成されている。ここで、別温調対象流体Qは、例えば、圧縮空気が用いられている。
【0020】
液体回路6には、熱伝達用液体Bの流れ方向において、冷媒Aにて熱伝達用液体Bを冷却させる蒸発器4、蒸発器4にて冷却された熱伝達用液体Bと温調対象空気Pとを熱交換させる温調対象空気冷却用熱交換器7と、熱伝達用液体Bを循環させる液体ポンプ8と、熱伝達用液体Bと圧縮機1から吐出された冷媒Aの一部とを熱交換させる第1再熱器9とが備えられている。熱伝達用液体冷却手段10は、液体回路6及び液体ポンプ8を備え、蒸発器4において冷媒Aと熱伝達用液体Bとを熱交換させて熱伝達用液体Bを冷却させるように構成されている。熱伝達用液体Bは、蒸発器4において冷媒Aにて冷却され、その冷却により取得した冷熱を用いて温調対象空気冷却用熱交換器7にて温調対象空気Pを冷却させるように構成されている。
【0021】
温度調整装置には、温調対象空気Pを送風させる送風ファン11と、温調対象空気冷却用熱交換器7において熱伝達用液体Bにて冷却された温調対象空気Pと圧縮機1から吐出された冷媒Aの一部とを熱交換させる第2再熱器12(加熱手段に相当する)とが設けられている。これにより、温調対象空気Pは、温調対象空気冷却用熱交換器7において熱伝達用液体Bにて冷却されたのち、第2再熱器12において冷媒Aにて所望温度に加熱されて温調対象空間に供給される。
【0022】
本発明に係る温度調整装置では、図1及び図2に示すように、蒸発器4及び温調対象空気冷却用熱交換器7にて発生するドレン水Wを冷却用熱交換器13に滴下するとともに、その滴下されるドレン水Wに対して温調対象空気Pの一部を通風させてドレン水Wを蒸発させる。図2は、ドレン水Wの蒸発潜熱を利用して別温調対象流体Qを冷却させるときの状態を模式的に示している。そして、図2では、冷却用熱交換器13への別温調対象流体Qの入口側のみ図示しており、冷却用熱交換器13からの別温調対象流体Qの出口側については省略している。冷却用熱交換器13内に別温調対象流体Qを通流させておき、ドレン水Wが蒸発するときの蒸発潜熱を利用して別温調対象流体Qを冷却させている。
本発明に係る温度調整装置では、ドレン水滴下手段14と通風手段15と別温調対象流体冷却手段16とを備えているので、以下、夫々について説明する。
【0023】
ドレン水滴下手段14は、蒸発器4にて発生するドレン水W、及び、温調対象空気冷却用熱交換器7にて発生するドレン水Wを冷却用熱交換器13に滴下するように構成されている。ドレン水滴下手段14は、蒸発器4及び温調対象空気冷却用熱交換器7にて発生するドレン水Wを受け止め回収するドレンパン17と、そのドレンパン17にて回収したドレン水Wを冷却用熱交換器13に導いて冷却用熱交換器13の上方から滴下するドレン水供給路18とを備えている。
図1に示すものでは、ドレン水滴下手段14が、蒸発器4及び温調対象空気冷却用熱交換器7にて発生したドレン水Wをそのまま供給しているが、例えば、ドレン水供給路18の途中にドレン水貯留部等を備えて、一旦、蒸発器4及び温調対象空気冷却用熱交換器7にて発生したドレン水Wをドレン水貯留部に設定量貯留し、その設定量のドレン水Wを冷却用熱交換器13の上方から滴下するように構成することもできる。
【0024】
通風手段15は、冷却用熱交換器13に滴下されるドレン水Wに対して、第2再熱器12にて加熱された後の温調対象空気Pの一部を通風させるように構成されている。これにより、ドレン水Wに対して通風させる温調対象空気Pを湿度の低い極力乾いた空気とすることができ、ドレン水Wを積極的に蒸発させることができる。よって、ドレン水Wの蒸発潜熱を利用して別温調対象流体Qを的確に冷却させることができる。通風手段15は、送風ファン11と、第2再熱器12にて加熱された後の温調対象空気Pの一部を分岐して冷却用熱交換器13に導く通風路19とを備えている。通風路19は、図2に示すように、冷却用熱交換器13に導いた温調対象空気Pを、冷却用熱交換器13の横側部からフィン13b同士の間等を通過させて通風させるように構成されている。通風路19の途中には、温調対象空気Pの通風量を調整自在な通風量調整弁20が設けられており、通風手段15は、通風量調整弁20の開度を調整することにより、冷却用熱交換器13内のドレン水Wに対して通風させる温調対象空気Pの通風量を調整自在に構成されている。
【0025】
別温調対象流体冷却手段16は、冷却用熱交換器13内を別温調対象流体Qを通流させて、ドレン水Wの蒸発潜熱を利用して別温調対象流体Qを冷却させるように構成されている。図2に示すように、冷却用熱交換器13は、例えば、フィンチューブ型の熱交換器にて構成されており、別温調対象流体Qを通流させる別温調対象流体通流路21は、冷却用熱交換器13のチューブ13aの入口側及び出口側の夫々に接続されている。これにより、蒸発されたドレン水Wの蒸発潜熱により冷却用熱交換器13の周囲の空気を冷却し、その冷却された空気と冷却用熱交換器13のチューブ13a内を通流する別温調対象流体Qとを熱交換させて、或いは、ドレン水Wの蒸発潜熱と別温調対象流体Qとを直接熱交換させて、別温調対象流体Qを冷却させるようにしている。別温調対象流体冷却手段16は、別温調対象流体通流路21を備えている。
【0026】
温度調整装置には、冷却用熱交換器13にて冷却された別温調対象流体Qと圧縮機1から吐出された冷媒Aの一部と熱交換させる第3再熱器22が設けられている。これにより、別温調対象流体Qは、冷却用熱交換器13においてドレン水Wを熱源として冷却されたのち、第3再熱器22において冷媒Aにて所望温度に加熱されて、目的の供給箇所に供給される。
【0027】
冷媒回路5において、圧縮機1と凝縮器2との間から分岐されて凝縮器2と膨張弁3との間に合流される分岐合流路23が設けられている。そして、分岐合流路23は、互いに並列状態で接続された第1分岐合流路24と第2分岐合流路25と第3分岐合流路26とを備えている。
第1分岐合流路24には、冷媒Aの流れ方向の上流側から順に、冷媒Aの断続及び冷媒Aの流量を調整自在な第1冷媒調整弁27、第1再熱器9が設けられている。第2分岐合流路25には、冷媒Aの流れ方向の上流側から順に、冷媒Aの断続及び冷媒Aの流量を調整自在な第2冷媒調整弁28、第2再熱器12が設けられている。第3分岐合流路26には、冷媒Aの流れ方向の上流側から順に、冷媒Aの断続及び冷媒Aの流量を調整自在な第3冷媒調整弁29、第3再熱器22が設けられている。
【0028】
温調対象空気P及び別温調対象流体Qを温調させるときの動作について説明する。
まず、蒸発器4を流れる冷媒Aの冷熱を熱伝達用液体Bが取得するために、蒸発器4において冷媒Aと熱伝達用液体Bとを熱交換させて冷媒Aにて熱伝達用液体Bを所望温度に冷却する。例えば、蒸発器4を通流させる冷媒Aの通流量や熱伝達用液体Bの通流量等を調整することにより、熱伝達用液体Bを所望温度に冷却させる。そして、例えば、蒸発器4に供給される熱伝達用液体Bの温度を20℃とし、蒸発器4を通過した熱伝達用液体Bの温度を17℃としている。
【0029】
このように熱伝達用液体Bが取得した冷熱を用いて、温調対象空気冷却用熱交換器7において熱伝達用液体Bにて温調対象空気Pを所望温度に冷却する。例えば、温調対象空気冷却用熱交換器7を通過した温調対象空気Pの温度を検出する図外の温度センサの検出情報に基づいて熱伝達用液体Bの通流量等を調整することにより、温調対象空気Pを例えば18℃±1℃の所望温度に冷却させる。このとき、例えば、温調対象空気冷却用熱交換器7に供給される熱伝達用液体Bの温度を17℃とし、温調対象空気冷却用熱交換器7を通過した熱伝達用液体Bの温度を18℃としている。一方、温調対象空気冷却用熱交換器7に供給される温調対象空気Pの温度を25℃としている。
【0030】
そして、温調対象空気冷却用熱交換器7にて冷却された温調対象空気Pが、第2再熱器12にて所望温度に加熱されて温調対象空間に供給される。例えば、第2再熱器12を通過した温調対象空気Pの温度を検出する図外の温度センサの検出情報に基づいて第2冷媒調整弁28の開度等を調整することにより、温調対象空気Pを例えば20±0.1℃の所望温度に精密に温調させる。
【0031】
蒸発器4では、冷媒Aと熱伝達用液体Bとを熱交換させて熱伝達用液体Bを冷却させるが、このときドレン水Wが発生するので、そのドレン水Wをドレンパン17にて回収する。また、温調対象空気冷却用熱交換器7では、熱伝達用液体Bと温調対象空気Pとを熱交換させて温調対象空気Pを冷却させるが、このときドレン水Wが発生するので、そのドレン水Wをドレンパン17にて回収する。例えば、温調対象空間に、精密加工機等が設置されていると、精密加工機から発生した蒸気が温調対象空気に含まれることになる。よって、温調対象空間と温度調整装置との間で温調対象空気Pを循環させるものでは、温調対象空気冷却用熱交換器7において多くのドレン水Wが発生することになる。
蒸発器4及び温調対象空気冷却用熱交換器7のドレンパン17にて回収されたドレン水Wは、ドレン水供給路18にて冷却用熱交換器13に導かれ、冷却用熱交換器13の上方から冷却用熱交換器13に滴下される。
【0032】
第2再熱器12にて所望温度に加熱された温調対象空気Pは、温調対象空間に供給させるだけでなく、通風路19によりその一部が分岐されて冷却用熱交換器13に導かれ、冷却用熱交換器13に滴下されるドレン水Wに対して通風される。これにより、冷却用熱交換器13に滴下されるドレン水Wの温度は例えば9〜15℃であるが、このドレン水Wが蒸発してそのときの蒸発潜熱により冷却用熱交換器13の周囲の空気が冷却され、その冷却された空気と別温調対象流体Qとの熱交換、或いは、ドレン水Wの蒸発潜熱と別温調対象流体Qとの直接的な熱交換により別温調対象流体Qを冷却させる。そして、ドレン水Wに対して通風させる温調対象空気Pの通風量は、通風量調整弁20の開度を調整することにより調整される。例えば、冷却用熱交換器13に供給される別温調対象流体Qの温度を25℃とし、冷却用熱交換器13を通過した別温調対象流体Qの温度が目標温度(例えば18℃)になるように、ドレン水Wに対して通風させる温調対象空気Pの通風量が調整される。これにより、例えば、別温調対象流体Qを冷却させるために必要となる最低の通風量に調整することができ、温調対象空気Pを温調させるための熱を無駄に排熱するのを防止して、熱の有効活用をより一層図ることができる。このような温調対象空気Pの通風量の調整は、例えば、装置の使用初期等に行い、その後は調整した一定の通風量となるようにしている。
【0033】
冷却用熱交換器13にて冷却された別温調対象流体Qは、第3再熱器22にて所望温度に加熱されて、別温調対象流体Qを使用する目的の箇所に供給される。例えば、第3再熱器22を通過した別温調対象流体Qの温度を検出する図外の温度センサの検出情報に基づいて第3冷媒調整弁29の開度等を調整することにより、別温調対象流体Qを例えば20℃の所望温度に温調させる。
【0034】
ちなみに、液体回路6に第1再熱器9を設けているので、温調対象空気Pや別温調対象流体Qを温調させる必要がない無負荷状態であるときに、第1冷媒調整弁27を開弁することにより第1再熱器9において冷媒Aにて熱伝達用液体Bを加熱させる。そして、第1再熱器9にて加熱された熱伝達用液体Bを蒸発器4に供給することにより、蒸発器4における凍結等を防止するようにしている。
【0035】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、第1再熱器9、第2再熱器12、第3再熱器22の夫々について、例えば、電気ヒータ等の加熱手段に代えて実施することもできる。また、第1再熱器9及び第3再熱器22については省略することもできる。
【0036】
(2)上記実施形態では、通風手段15が、第2再熱器12にて加熱された後の温調対象空気Pの一部を通風させているが、温調対象空気Pの一部であればよく、第2再熱器12にて加熱された後の温調対象空気Pに限られない。例えば、図1において、二点鎖線にて示すように、温調対象空気冷却用熱交換器7に供給する前の温調対象空気Pの一部をドレン水Wに対して通風させることもできる。この場合には、図1において、点線にて示すように、温調対象空気冷却用熱交換器7に供給する前の温調対象空気Pの一部を冷却用熱交換器13に導く流路にバルブを設け、そのバルブによりドレン水Wに対して通風させる温調対象空気Pの通風量を調整可能に構成されている。
【0037】
(3)上記実施形態では、別温調対象流体Qを圧縮空気としているが、温調対象空気と別温調対象流体とは別の流体であればよく、例えば、各種機器を冷却するために用いる冷却水を別温調対象流体Qとすることも可能である。
【0038】
(4)上記実施形態では、液体回路6を設け、蒸発器4において冷媒Aにて冷却された熱伝達用液体Bを温調対象空気冷却用熱交換器7に供給することにより、温調対象空気Pを冷却させるようにしているが、例えば、蒸発器4において冷媒Aと温調対象空気Pとを熱交換させて冷媒Aにて温調対象空気Pを直接冷却させるようにしてもよい。この場合には、ドレン水滴下手段14は、蒸発器4にて発生するドレン水Wのみ冷却用熱交換器13に滴下することになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、圧縮機、凝縮器、膨張部、蒸発器の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、前記蒸発器内を流れる冷媒を熱源として温調対象空気を冷却させ、構成の簡素化を図ることができながら、熱の有効活用を図ることができる各種の温度調整装置に適応可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 圧縮機
2 凝縮器
3 膨張部(膨張弁)
4 蒸発器
7 温調対象空気冷却用熱交換器
10 熱伝達用液体冷却手段
12 加熱手段(第2再熱器)
13 冷却用熱交換器
14 ドレン水滴下手段
15 通風手段
16 別温調対象流体冷却手段
A 冷媒
B 熱伝達用液体
C 冷凍サイクル
P 温調対象空気
Q 別温調対象流体
W ドレン水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張部、蒸発器の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルを備え、前記蒸発器内を流れる冷媒を熱源として温調対象空気を冷却させる温度調整装置であって、
前記蒸発器にて発生するドレン水を冷却用熱交換器に滴下するドレン水滴下手段と、
前記冷却用熱交換器に滴下されるドレン水に対して前記温調対象空気の一部を通風させる通風手段と、
前記冷却用熱交換器内を前記温調対象空気とは別の別温調対象流体を通流させて、前記ドレン水の蒸発潜熱を利用して前記別温調対象流体を冷却させる別温調対象流体冷却手段とを備えている温度調整装置。
【請求項2】
前記蒸発器内を流れる冷媒を熱源として冷却された前記温調対象空気を加熱する加熱手段を備え、
前記通風手段は、前記加熱手段にて加熱された後の前記温調対象空気の一部を前記ドレン水に対して通風させるように構成されている請求項1に記載の温度調整装置。
【請求項3】
前記通風手段は、前記ドレン水に対して通風させる前記温調対象空気の通風量を調整自在に構成されている請求項1又は2に記載の温度調整装置。
【請求項4】
前記蒸発器において前記冷媒と熱伝達用液体とを熱交換させて前記熱伝達用液体を冷却させる熱伝達用液体冷却手段と、
冷却された前記熱伝達用液体と前記温調対象空気とを熱交換させて前記温調対象空気を冷却させる温調対象空気冷却用熱交換器とを備え、
前記ドレン水滴下手段は、前記蒸発器にて発生するドレン水及び前記温調対象空気冷却用熱交換器にて発生するドレン水を前記冷却用熱交換器に滴下するように構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の温度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−159925(P2010−159925A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2680(P2009−2680)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】