説明

温水熱源装置

【課題】熱源装置本体が傾斜したり倒れたりした場合にも、膨張タンク内の熱媒が外部に流出しない温水熱源装置を提供する。
【解決手段】膨張タンク40に対して熱媒用流体を供給する大気開放状態の流体供給口と、その流体供給口と膨張タンクとを接続する流体供給回路Rとが熱源機本体に備えられ、流体供給回路Rに、熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときに、流体供給回路Rを閉塞する流体漏出防止機構Lが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張タンクに対して熱媒用流体を供給する大気開放状態の流体供給口と、その流体供給口と前記膨張タンクとを接続する流体供給回路とが熱源機本体に備えられた温水熱源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる温水熱源装置は、加熱部と循環ポンプとが内部に設けられた熱源機本体を備えて構成されている。熱源機本体には往き管と戻り管とが接続され、その往き管及び戻り管の先に暖房端末が接続されて、暖房端末と熱源機本体との間で熱媒用流体としての水(高温水)を循環させる熱媒循環路が形成されている。
【0003】
熱媒循環路中の水は、その温度の上昇に伴って膨張するが、熱媒循環路を構成する部材の膨張率は水の膨張率よりも小さいため、熱媒循環路が閉回路である場合には水の温度上昇に伴って熱媒循環路中の圧力が上昇することになり、熱媒循環路を形成する往き管や戻り管、熱交換部における熱媒通流管路、又は暖房端末内における熱媒通流管路等(以下、循環路形成部材という)がその圧力により破損する虞がある。そこで、そのような循環路形成部材の破損を回避すべく、熱媒循環路を開回路とする、すなわち、大気開放部を設けて、熱媒循環路内の圧力が上昇したときにはその圧力を外部に逃すように構成された温水熱源装置が利用されている。
【0004】
しかしながら、熱媒循環路を開回路とすると、水がその大気開放部を介して蒸発するという問題がある。そこで、一端側が上水道等の給水源と接続された給水回路を膨張タンクに接続し且つその給水回路に給水弁を設けて、膨張タンク内に一定量の水を貯留すべく給水弁の開閉を制御するように構成された温水熱源装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−322064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、熱源機本体を台座部に固定し、その位置から移動させない場合には、上記のように給水回路に上水道等の給水源を接続することが容易であるが、熱源機本体を可搬式に構成した場合には、上水道等が近傍に無い等の理由により給水回路に給水源を接続することが困難なことがある。このため、そのような場合には、熱源機本体の外方に向けて開口する流体供給口を設け、膨張タンク内の水が減少した場合には、その流体供給口から利用者が水を補充するように構成することが考えられる。
しかしながら、そのように熱源装置本体に流体供給口を設ける構成とすると、熱源装置本体が傾斜したり倒れたりした場合に、膨張タンク内の水が外部に流出する虞があるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱源機本体が傾斜したり倒れたりした場合にも、膨張タンク内の熱媒が外部に流出しない温水熱源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る温水熱源装置の第1特徴構成は、膨張タンクに対して熱媒用流体を供給する大気開放状態の流体供給口と、その流体供給口と前記膨張タンクとを接続する流体供給回路とが熱源機本体に備えられたものであって、前記流体供給回路に、前記熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときに、前記流体供給回路を閉塞する流体漏出防止機構が設けられている点にある。
【0009】
すなわち、膨張タンクに対して熱媒用流体を供給する大気開放状態の流体供給口が備えられた熱源機本体が、正立姿勢から所定角度(例えば30度)以上傾斜すると、流体漏出防止機構により流体供給回路が閉塞されることになる。
【0010】
説明を加えると、流体供給口は膨張タンクと連通し、流体供給口は大気開放状態で設けられているから、例えば地震等によって熱源機本体が転倒する等して正立姿勢から所定角度以上傾斜した場合において、流体供給回路が閉塞されない状態であると、膨張タンク内の水が流体供給口を介して外部に流出する虞がある。
これに対して、第1特徴構成によれば、熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜した場合には、流体漏出防止機構により流体供給回路が閉塞されるから、膨張タンク内の水が流体供給口を介して外部に流出することを抑制することができるものとなる。
【0011】
要するに、第1特徴構成によれば、熱源装置本体が傾斜したり倒れたりした場合にも、膨張タンク内の熱媒が外部に流出しない温水熱源装置を提供することができる。
【0012】
本発明に係る温水熱源装置の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記流体漏出防止機構が、前記熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときに前記流体供給回路を閉塞する弁体を備えて構成されている点にある。
【0013】
すなわち、流体漏出防止機構が、熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときに流体供給回路を閉塞する弁体を備え、熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときには、弁体が流体供給回路を閉塞することになる。
【0014】
このように、第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成の好適な実施形態を得ることができる。
【0015】
本発明に係る温水熱源装置の第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、前記流体供給回路が、前記流体供給口と前記流体漏出防止機構とを接続する流体供給口側管路と、前記流体漏出防止機構と、前記流体漏出防止機構と前記膨張タンクとを接続する膨張タンク側管路とから構成され、前記流体漏出防止機構が、一端側が前記流体供給口側管路の管径と略同径の流体供給口側小径部として形成されかつ他端側が前記流体供給口側管路の管径よりも大径の流体供給口側大径部として形成された流体供給口側錐状部と、一端側が前記膨張タンク側管路の管径と略同径の膨張タンク側小径部として形成されかつ他端側が前記膨張タンク側管路の管径よりも大径の膨張タンク側大径部として形成された膨張タンク側錐状部とを、前記流体供給口側大径部と前記膨張タンク側大径部とを対向させて接続した形態で長手方向中央部に大径部を有する状態に構成された弁体容器と、前記流体供給口側小径部及び前記膨張タンク側小径部よりも大径でかつ前記流体供給口側大径部及び前記膨張タンク側大径部よりも小径に形成されて前記弁体容器の内部に転動自在に位置する前記弁体としての球状弁体とを備えて構成され、前記弁体容器における前記流体供給口側小径部が前記流体供給口側管路に接続され、前記膨張タンク側小径部が前記膨張タンク側管路に接続されている点にある。
【0016】
すなわち、流体漏出防止機構が弁体容器とその内部に転動自在に位置する球状弁体とを備えて構成され、熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときには、弁体容器の内部の球状弁体が、弁体容器内を下方に向けて転動移動する。弁体容器は、長手方向中央部が球状弁体よりも大径であり、長手方向両端部は球状弁体よりも小径であるから、下方に向けて転動移動した球状弁体は、流体供給口側錐状部と膨張タンク側錐状部とのうち下方側に位置するものに対して、その錐状部分の内周面に接触する状態になり、流体供給口側錐状部における流体供給口側大径部と流体供給口側小径部との間、又は、膨張タンク側錐状部における膨張タンク側大径部と膨張タンク側小径部との間を閉塞することになる。
【0017】
このように、流体漏出防止機構は、弁体容器の内部に転動自在に位置する球状弁体の転動移動によって流体供給回路を閉塞するものであるから、簡素な構成で膨張タンク内の水が流体供給口を介して外部に流出することを抑制することができる。しかも、流体漏出防止機構は、電磁的な構成を使用しないものであるから、例えば停電等により電磁的な手段が使用できない場合においても、的確に膨張タンク内の水が流体供給口を介して外部に流出することを抑制することができるものとなる。
【0018】
要するに、第3特徴構成によれば、上記第2特徴構成による作用効果に加えて、簡素な構成で的確に膨張タンク内の水が流体供給口を介して外部に流出することを抑制することが可能な温水熱源装置を提供することができる。
【0019】
本発明に係る温水熱源装置の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、前記熱源機本体の正立姿勢で前記弁体容器の前記大径部における下方となる部分に、前記弁体容器の周方向に沿う凹条部が少なくとも1箇所設けられている点にある。
【0020】
すなわち、熱源機本体の正立姿勢においては、球状弁体が弁体容器の大径部における下方となる部分に位置することになる。このような状態で長期間球状弁体が弁体容器の大径部における下方となる部分に静止すると、例えば水垢やスラグ等によって、球状弁体と弁体容器とが固着する虞がある。
これに対して、第4特徴構成によれば、弁体容器の周方向に沿う少なくとも1箇所の凹条部が弁体容器の大径部における下方となる部分に存在し、球状弁体は、弁体容器の長手方向におけるその凹条部の両側を挟む状態で位置する縁部に2点支持される状態になるから、上述のように球状弁体と弁体容器とが固着することを抑制することができる。
【0021】
説明を加えると、上記のように、弁体容器の周方向に沿う凹条部を設けない構成では、弁体容器の低位位置に堆積した水垢やスラグと、球状弁体との接触面積が大きくなり、球状弁体が弁体容器に固着する虞があるが、弁体容器の周方向に沿う凹条部を設け、球状弁体を、凹条部を挟む状態の縁部によって2点支持させるようにすれば、弁体容器の低位位置に堆積した水垢やスラグと、球状弁体との接触面積を小さくすることができるので、球状弁体が弁体容器に固着することを抑制することができる。
【0022】
要するに、第4特徴構成によれば、上記第3特徴構成による作用効果に加えて、簡素な構成にて球状弁体と弁体容器とが固着することを抑制することが可能な流体漏出防止機構を備えた温水熱源装置を提供することができる。
【0023】
本発明に係る温水熱源装置の第5特徴構成は、上記第3又は第4特徴構成に加えて、前記熱源機本体の正立姿勢で前記弁体容器の前記大径部における両側方となる部分に、前記弁体容器の径方向内方に向かう突部が設けられている点にある。
【0024】
すなわち、熱源機本体が正立姿勢から傾斜する場合において、必ずしも弁体容器における流体供給口側小径部又は膨張タンク側小径部が下方位置となるとは限らない。つまり、熱源機本体が正立姿勢から傾斜する方向によっては、弁体容器の長手方向中央部に形成される大径部が、鉛直方向における最低位置となる虞があり、このような場合、球状弁体は弁体容器内部において大径部に留まり、流体供給回路が閉塞できない虞がある。
【0025】
これに対して、第5特徴構成によれば、弁体容器の径方向内方に向かう突部が熱源機本体の正立姿勢で弁体容器の大径部における両側方となる部分に設けられるものであるから、弁体容器の長手方向中央部に形成される大径部が鉛直方向における最低位置となる可能性を減少させ、球状弁体を弁体容器の長手方向における中央部から何れか一方の端部側に転動させることになり、膨張タンク内の水が流体供給口を介して外部に流出することを抑制することができるものとなる。
【0026】
要するに、第5特徴構成によれば、上記第3又は第4特徴構成による作用効果に加えて、熱源機本体が正立姿勢からどのような方向に傾斜しても、膨張タンク内の水が流体供給口を介して外部に流出することを抑制することが可能な温水熱源装置を提供することができる。
【0027】
本発明に係る温水熱源装置の第6特徴構成は、上記第1〜第5特徴構成の何れかに加えて、前記熱源機本体が可搬型に構成されている点にある。
【0028】
すなわち、熱源機本体が可搬型に構成されている場合、熱源機本体は例えば台座部等に固定されず転倒等により正立姿勢から傾斜する可能性が大きくなる。このような場合においても、流体漏出防止機構が、熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときには前記流体供給回路を閉塞するものであるから、膨張タンク内の熱媒が外部に流出することを適切に防止することができるものとなる。
【0029】
要するに、第6特徴構成によれば、上記第1〜第5特徴構成による作用効果の何れかに加えて、熱源機本体が可搬型である場合においても膨張タンク内の熱媒が外部に流出することを適切に防止することが可能な温水熱源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】温水熱源装置の展開構成図
【図2】熱源機本体の平面図
【図3】流体漏出防止機構を示す側面図
【図4】熱源機本体が正立姿勢であるときの弁体容器と球状弁体とを示す図
【図5】弁体容器における突部を示す図
【図6】熱源機本体が傾斜したときの流体漏出防止機構の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る温水熱源装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の温水熱源装置は、加熱部70、循環ポンプP、及び膨張タンク40が内部に設けられた熱源機本体10を備えて構成されている。熱源機本体10横側部には継手が設けられ、可撓管からなる往き管61及び戻り管62の一端側を接続可能に構成されている。また、往き管61及び戻り管62の他端側には一つ又は複数の暖房端末Dが接続されて、暖房端末D、往き管61及び戻り管62、並びに熱源機本体10の間で熱媒用流体としての水を循環させる熱媒循環路が形成されている。尚、図示しないが、往き管61と暖房端末Dとの間には熱動弁が設けられている。また、熱源機本体10の下端部には、床面等に載置されて熱源機本体10を立設状態で支持する脚部10aが設けられている。
【0032】
膨張タンク40の底部には低温水受入管路53と低温水送出管路51との一端側が接続され、低温水受入管路53の他端側は熱源機本体10に設けられる上述の継手に接続されている。また、低温水送出管路51の他端側は加熱部70における熱交換部Nに接続され、その間には膨張タンク40内の湯水を熱交換部N側に送り出す循環ポンプPが設けられている。熱交換部Nの下流側には、熱交換部Nにて加熱された水(高温水)を送出する高温水送出管路52の一端側が接続され、その他端側は熱源機本体10に設けられる上述の継手に接続されている。また、低温水受入管路53と高温水送出管路52との間には、バイパス路54が設けられ、暖房端末Dに向けて送出される高温水の抵抗が大きくなった場合(図示しない熱動弁が閉止状態であるとき等)に、高温水送出管路52から送出される高温水の一部を低温水受入管路53側に迂回させるようになっている。
【0033】
膨張タンク40の内部には、その膨張タンク40内の水量を検出する水位電極として、低位電極S1及び高位電極S2が設けられている。
また、膨張タンク40の上端に、膨張タンク40に対して熱媒用流体としての水を供給する流体供給口21と連通される流体供給回路Rが接続されている。流体供給回路Rには、熱源機本体10が正立姿勢(上下方向が図1中のZ方向に沿う姿勢)から所定角度(例えば30度)以上傾斜したときに流体供給回路Rを閉塞する弁体を備えて構成された流体漏出防止機構Lが、その長手方向を熱源機本体10の平面視における短手方向(X方向)に沿わせる状態で備えられている。
【0034】
流体供給回路Rは、漏斗状で且つ熱源機本体10上面側に外方に開口する状態で備えられる流体供給口21と流体漏出防止機構Lとを接続する流体供給口側管路22と、本願に係る流体漏出防止機構Lと、流体漏出防止機構Lと膨張タンク40とを接続する膨張タンク側管路23とから構成されている。
【0035】
膨張タンク40の内部において、貯留される熱媒としての水Wの水位が低くなる(低位電極S1にて検出される水位になる)と、図示しない制御手段が、膨張タンク40内の水位が低水位状態であることをインジケータ等によって利用者に報知するように構成されている。膨張タンク40内の水位が低水位状態であることを知得した利用者が流体供給口21に水を注入することにより、流体供給回路Rを介して膨張タンク40内に水を供給することができる。図示しない制御手段は、膨張タンク40内に貯留される水Wの水位が高位電極S2にて検出される水位になると、満水であることをインジケータ等によって利用者に報知するように構成されている。
【0036】
加熱部70は、その下端に燃料ガスGを燃焼させる燃焼バーナBを備え、上端に、熱源機本体10の外部と連通する排気口75を備えて構成されている。燃焼バーナBのガス導入側端部は燃焼用空気を吸引するエゼクタ部として形成され、ガス供給管路71がそのエゼクタ部に対して燃料ガスGを噴出するように構成されている。ガス供給管路71には上流側から元ガス電磁弁72、ガス流量調整弁73、及びガバナ74が設けられている。加熱部70内部には、低温水送出管路51及び高温水送出管路52に接続される熱交換部Nが設けられ、燃焼バーナBの燃焼ガスの熱によって低温水送出管路51を介して供給される低温水を加熱するように構成されている。
【0037】
流体漏出防止機構Lは、図3〜図5に示すように、一端側が流体供給口側管路22の管径と略同径の流体供給口側小径部32aとして形成され、かつ、他端側が流体供給口側管路22の管径よりも大径の流体供給口側大径部32bとして形成された流体供給口側錐状部32と、一端側が膨張タンク側管路23の管径と略同径の膨張タンク側小径部33aとして形成されかつ他端側が膨張タンク側管路23の管径よりも大径の膨張タンク側大径部33bとして形成された膨張タンク側錐状部33とを、流体供給口側大径部32bと膨張タンク側大径部33bとを対向させて接続した形態で長手方向中央部に大径部を有する状態に構成された弁体容器30と、流体供給口側小径部32a及び膨張タンク側小径部33aよりも大径でかつ流体供給口側大径部32b及び膨張タンク側大径部33bよりも小径に形成されて弁体容器30の内部に転動自在に位置する弁体としての球状弁体Qとを備えて構成されている。そして、弁体容器30における流体供給口側小径部32aが前記流体供給口側管路22に接続され、膨張タンク側小径部33aが膨張タンク側管路23に接続されている。
【0038】
流体漏出防止機構LのX−Z断面を示す図4に示すように、熱源機本体10の正立姿勢で弁体容器30の大径部における下方となる部分には、弁体容器30の周方向に沿う凹条部32h及び33hが設けられている。また、弁体容器30の長手方向において、凹条部32h及び33hを挟む状態で縁部32t、30t及び33tとが形成される。すなわち、凹条部32hの長手方向両側方には縁部32t及び30tが形成されることになり、凹条部33hの長手方向両側方には縁部33t及び30tが形成されることになる。
球状弁体Qは、熱源機本体10の正立姿勢で、凹条部32h又は33hを挟む少なくとも一対の縁部、つまり、球状弁体Qが凹条部32h側に位置するときには縁部32t及び30t、球状弁体Qが凹条部33h側に位置するときには縁部30t及び33tによって、2点支持されるように構成されている。
【0039】
流体漏出防止機構LのX−Y断面を示す図5に示すように、熱源機本体10の正立姿勢で弁体容器30の大径部における両側方となる部分には、弁体容器30の径方向内方に向かう一対の突部30dが設けられている。
【0040】
本発明の温水熱源装置における熱源機本体は、可搬型に構成されている。つまり、据付型の温水熱源装置のように台座部に固定されるものではなく、脚部10aによって床面等に載置支持されるのみであるため、地震等によって熱源機本体10が正立姿勢から傾斜する虞がある。
熱源機本体10が正立姿勢から傾斜した場合、温水熱源装置における図示しない制御手段は、元ガス電磁弁72を閉止して燃焼バーナBの燃焼を停止させ、さらに、循環ポンプPの作動を停止して熱媒循環路への熱媒の循環を停止させる。
また、熱源機本体10が正立姿勢から傾斜した場合、流体供給回路Rに備えられる流体漏出防止機構Lが、膨張タンク40内に貯留されている水Wが流体供給口21から熱源機本体10の外部に流出することを防止する。以下、図6にしたがって、熱源機本体10が正立姿勢から所定角度(例えば30度)以上傾斜したときの流体漏出防止機構Lの作用について説明する。
【0041】
図6は、熱源機本体10が図2におけるX方向に傾斜(図4に示すX−Z面内で、X方向左右位置でZ方向の位置が異なる傾斜)した場合における流体漏出防止機構Lの状態について示し、図6(a)は流体漏出防止機構Lにおいて流体供給口側錐状部32が低位となる状態で傾斜した場合、図6(b)は流体漏出防止機構Lにおいて膨張タンク側錐状部33が低位となる状態で傾斜した場合を示している。図6(a)に示す如く、流体供給口側錐状部32が低位となる状態で傾斜した場合には、球状弁体Qが流体供給口側錐状部32の流体供給口側小径部32aに向けて転動移動する。流体供給口側小径部32aの径は、球状弁体Qよりも小径であるため、球状弁体Qは流体供給口側錐状部32の内周面に接触する状態で流体供給口側錐状部32を閉塞する。これにより、膨張タンク40内に貯留される水が流体供給回路Rを介して流体供給口21から熱源機本体10の外部に流出することを抑制することができる。
【0042】
同様に、図6(b)に示す如く、膨張タンク側錐状部33が低位となる状態で傾斜した場合には、球状弁体Qが膨張タンク側錐状部33の膨張タンク側小径部33aに向けて転動移動する。膨張タンク側小径部33aの径は、球状弁体Qよりも小径であるため、球状弁体Qは膨張タンク側錐状部33の内周面に接触する状態で膨張タンク側錐状部33を閉塞する。これにより、膨張タンク40内に貯留される水が流体供給回路Rを介して流体供給口21から熱源機本体10の外部に流出することを抑制することができる。
【0043】
このように、流体漏出防止機構Lは、流体供給口側錐状部32が低位となる状態、膨張タンク側錐状部33が低位となる状態の何れの場合においても、膨張タンク40内に貯留される水が流体供給回路Rを介して流体供給口21から熱源機本体10の外部に流出することを抑制することができるものとなる。
【0044】
また、熱源機本体10が図2におけるY方向に傾斜(図5に示すX−Y面内で、Y方向上下位置でZ方向の位置が異なる傾斜)した場合には、図5に示す一対の突部30dの何れかが下方位置に位置することになる。球状弁体Qは下方側に位置する突部30dによって流体供給口側錐状部32又は膨張タンク側錐状部33の何れかの存在側に転動し、転動した側の流体供給口側錐状部32又は膨張タンク側錐状部33を閉塞する。
【0045】
このように、本発明によれば、熱源機本体10が図2におけるX方向及びY方向の何れの方向に傾斜した場合においても、流体漏出防止機構Lによって流体供給回路Rを閉塞することができ、膨張タンク40内に貯留される水が流体供給回路Rを介して流体供給口21から熱源機本体10の外部に流出することを適切に抑制することができるものとなる。
【0046】
〔別実施形態〕
(イ)上記実施形態においては、流体漏出防止機構Lを、球状弁体Qを備えてその球状弁体Qが弁体容器30中を転動移動するように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、一端を固定され、下方側に傾斜自在で傾斜時に下方となる連通箇所を閉塞する遮蔽板を備えた弁体を備えて構成してもよく、傾斜時に連通箇所としての流体供給回路を閉塞することができる機構であれば、各種の構成を採用可能である。
【0047】
(ロ)上記実施形態においては、流体漏出防止機構Lが作用を開始する所定の傾斜角度を30度とするように構成したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば30度以上の任意の傾斜角にて作用を開始するように構成することができる。このように作用を開始させるためには、流体供給口側錐状部32又は膨張タンク側錐状部33の長手方向に対する角度を調整すればよい。
【0048】
(ハ)上記実施形態においては、流体漏出防止機構Lを、その長手方向を熱源機本体10の平面視における短手方向に沿わせる状態で設ける構成を例示したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、流体漏出防止機構Lを、その長手方向を熱源機本体10の平面視における短手方向に沿う方向から所定の角度(例えば5度〜45度の間の任意の角度)傾斜させるように構成してもよい。
【0049】
(ニ)上記実施形態においては、熱源機本体10の正立姿勢で弁体容器30の大径部における下方となる部分に、弁体容器30の周方向に沿う凹条部32h及び33hの2つを設ける構成としたが設置する、凹条部の数は任意に変更可能である。
【0050】
(ホ)上記実施形態においては、熱源機本体が可搬型に構成されている温水熱源装置を例示したが、熱源機本体が据付型に構成されるものに適用しても良い。つまり、据付型の熱源機本体であっても、据付けた台座部ごと傾斜する可能性もあるため、本発明を据付型の熱源機本体に用いることによって、膨張タンク40内に貯留される水の外部への流出を適切に防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、可搬型の熱源機本体を備える温水熱源装置において、熱源機本体が傾斜したり倒れたりした場合にも、膨張タンク内の熱媒が外部に流出しない温水熱源装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 熱源機本体
21 流体供給口
22 流体供給口側管路
23 膨張タンク側管路
30 弁体容器
30d 突部
30t、32t、33t 縁部
32 流体供給口側錐状部
32a 流体供給口側小径部
32b 流体供給口側大径部
32h、33h 凹条部
33 膨張タンク側錐状部
33a 膨張タンク側小径部
33b 膨張タンク側大径部
40 膨張タンク
L 流体漏出防止機構
Q 球状弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張タンクに対して熱媒用流体を供給する大気開放状態の流体供給口と、その流体供給口と前記膨張タンクとを接続する流体供給回路とが熱源機本体に備えられた温水熱源装置であって、
前記流体供給回路に、前記熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときに、前記流体供給回路を閉塞する流体漏出防止機構が設けられている温水熱源装置。
【請求項2】
前記流体漏出防止機構が、前記熱源機本体が正立姿勢から所定角度以上傾斜したときに前記流体供給回路を閉塞する弁体を備えて構成されている請求項1記載の温水熱源装置。
【請求項3】
前記流体供給回路が、前記流体供給口と前記流体漏出防止機構とを接続する流体供給口側管路と、前記流体漏出防止機構と、前記流体漏出防止機構と前記膨張タンクとを接続する膨張タンク側管路とから構成され、
前記流体漏出防止機構が、一端側が前記流体供給口側管路の管径と略同径の流体供給口側小径部として形成されかつ他端側が前記流体供給口側管路の管径よりも大径の流体供給口側大径部として形成された流体供給口側錐状部と、一端側が前記膨張タンク側管路の管径と略同径の膨張タンク側小径部として形成されかつ他端側が前記膨張タンク側管路の管径よりも大径の膨張タンク側大径部として形成された膨張タンク側錐状部とを、前記流体供給口側大径部と前記膨張タンク側大径部とを対向させて接続した形態で長手方向中央部に大径部を有する状態に構成された弁体容器と、前記流体供給口側小径部及び前記膨張タンク側小径部よりも大径でかつ前記流体供給口側大径部及び前記膨張タンク側大径部よりも小径に形成されて前記弁体容器の内部に転動自在に位置する前記弁体としての球状弁体とを備えて構成され、
前記弁体容器における前記流体供給口側小径部が前記流体供給口側管路に接続され、前記膨張タンク側小径部が前記膨張タンク側管路に接続されている請求項2記載の温水熱源装置。
【請求項4】
前記熱源機本体の正立姿勢で前記弁体容器の前記大径部における下方となる部分に、前記弁体容器の周方向に沿う凹条部が少なくとも1箇所設けられている請求項3記載の温水熱源装置。
【請求項5】
前記熱源機本体の正立姿勢で前記弁体容器の前記大径部における両側方となる部分に、前記弁体容器の径方向内方に向かう突部が設けられている請求項3又は4記載の温水熱源装置。
【請求項6】
前記熱源機本体が可搬型に構成されている請求項1〜5記載の何れか1項に記載の温水熱源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−24454(P2013−24454A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157983(P2011−157983)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】