説明

温泉水殺菌装置およびこれを備えた温泉水供給システム、並びに、温泉水殺菌方法およびこれを用いた温泉水供給方法

【課題】塩素を用いず、かつ、濾過装置を用いることなくレジオネラ属菌を殺菌することを目的とする。
【解決手段】源泉から導かれる60℃未満の温泉水を60℃以上に加熱してレジオネラ属菌を殺菌するヒートポンプ3と、ヒートポンプ3によって加熱された温泉水を貯留する貯湯槽17と、ヒートポンプ3の吸熱によって、源泉から供給された60℃以上の温泉水が冷却される冷泉槽19と、貯湯槽17および冷泉槽19から導かれた温泉水を混合して配湯用の温泉水を貯留する配湯槽21とを備えている。配湯槽21から利用側へと温泉水が供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温泉水殺菌装置およびこれを備えた温泉水供給システム、並びに、温泉水殺菌方法およびこれを用いた温泉水供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
源泉から得られる温泉水にはレジオネラ属菌は殆ど生息していないが、レジオネラ属菌に汚染された地下水等が温泉水に混入した場合、レジオネラ属菌に汚染されるおそれがある。そして、温泉水温度が60℃を下回る場合には、レジオネラ属菌は死滅せず、繁殖してしまう。そこで、温泉水に存在するおそれのあるレジオネラ属菌を殺菌する必要がある。
レジオネラ属菌の殺菌方法としては、塩素を添加して殺菌する方法が知られている。しかし、臭い等の理由により温泉利用者の不評につながるので有効な対策とはいえない。
【0003】
一方、下記特許文献1及び特許文献2には、温泉の浴槽内の温泉水温度を加熱して調整するためにヒートポンプを用いた事例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−60185号公報
【特許文献2】特開昭60−114654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の各特許文献のように、温泉水の加熱のためにヒートポンプを利用することは、ボイラ等に比べてCO2の排出が少なく高効率となるので好ましい。しかし、ヒートポンプによる温泉水の加熱温度は、浴湯に適した温度が前提とされており、せいぜい43℃程度である。レジオネラ属菌の死滅温度は、上述のように60℃以上とされているので、この程度の温度ではレジオネラ属菌を殺菌することはできない。そこで、上記特許文献1では、濾過装置によってレジオネラ属菌の殺菌処理を行っている。これでは、濾過装置が別途必要となり、コストの増大を招いてしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、塩素を用いず、かつ、濾過装置を用いることなくレジオネラ属菌を殺菌することができる温泉水殺菌装置およびこれを備えた温泉水供給システム、並びに、温泉水殺菌方法およびこれを用いた温泉水供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の温泉水殺菌装置およびこれを備えた温泉水供給システム、並びに、温泉水殺菌方法およびこれを用いた温泉水供給方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる温泉水殺菌装置は、源泉から導かれる温泉水を60℃以上に加熱してレジオネラ属菌を殺菌するヒートポンプを備えていることを特徴とする。
【0008】
レジオネラ属菌は60℃以上に加熱すると死滅する。そこで、源泉から導かれる温泉水をヒートポンプによって60℃以上に加熱してレジオネラ属菌を殺菌することとした。ヒートポンプによって加熱して殺菌するので、塩素殺菌を用いる必要がなく、また濾過装置を用いる必要がない。また、温泉水をヒートポンプによって60℃まで加熱するので、化石燃料を使用したボイラによる殺菌に比べて、CO2を排出せず、また高効率に加熱することができる。
ヒートポンプの熱源としては、例えば10℃以上であれば種々のものが使用でき、河川水、排水、未使用源泉等の従来では単に捨てていた未使用排熱を利用することができる。
ヒートポンプとしては、典型的には、ターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機が挙げられるが、スクリュー式やスクロール式の圧縮機を用いた他の蒸気圧縮式のヒートポンプでもよく、また、吸収式冷凍機等の他の形式であってもよい。
【0009】
また、本発明の温泉水供給システムは、上述の温泉水殺菌装置と、前記ヒートポンプによって加熱された温泉水を貯留する貯湯槽とを備えていることを特徴とする。
【0010】
温泉水殺菌装置のヒートポンプによって加熱された温泉水を貯湯槽に貯留することにより、60℃以上の温泉水を確保することができる。これにより、温泉水の利用側に配湯する温泉水の配湯温度(例えば47℃)よりも大きな温度差を有する温泉水を保有することができるので、有効熱容量((貯湯温度−配湯温度)×貯湯量)を増大させることができる。
【0011】
さらに、本発明の温泉水供給システムでは、前記貯湯槽には、60℃未満の温泉水が源泉から供給され、前記ヒートポンプの吸熱によって、源泉から供給された60℃以上の温泉水が冷却される冷泉槽と、前記貯湯槽および前記冷泉槽から導かれた温泉水を混合して配湯用の温泉水を貯留する配湯槽とを備えていることを特徴とする。
【0012】
貯湯槽には、60℃未満の温泉水を源泉から供給することとし、存在する可能性のあるレジオネラ属菌を加熱して殺菌する。これにより、貯湯槽には60℃以上の高温の温泉水を貯留する。
一方、冷泉槽には、源泉から供給された60℃以上の温泉水を貯留し、ヒートポンプの吸熱によって冷却することとした。60℃以上の温泉水は、既にレジオネラ属菌が殺菌されているので、改めて加熱する必要がなく、そのまま冷却して冷泉水を作ることができる。また、ヒートポンプの吸熱によって冷却することとしているので、貯湯槽内の温泉水の加熱と同時に冷却が行われることとなり、冷泉水を作るための冷却設備や工程が別途必要となることはない。
そして、貯湯槽にて貯留された高温の温泉水と、冷泉槽にて貯留された低温の温泉水とを混合して貯留する配湯槽を設け、この配湯槽にて所望の温度の温泉水を得ることとした。このように、殺菌済みの有効な温泉水を用いて温度調整された温泉水を得ることができるので、温泉水ではない水道水等を用いて温度調整する場合に比べて、格段に泉質が向上する。
【0013】
また、本発明の温泉水殺菌方法は、ヒートポンプによって、源泉から導かれる温泉水を60℃以上に加熱してレジオネラ属菌を殺菌することを特徴とする。
【0014】
レジオネラ属菌は60℃以上に加熱すると死滅する。そこで、源泉から導かれる温泉水をヒートポンプによって60℃以上に加熱してレジオネラ属菌を殺菌することとした。ヒートポンプによって加熱して殺菌するので、塩素殺菌を用いる必要がなく、また濾過装置を用いる必要がない。また、温泉水をヒートポンプによって60℃まで加熱するので、化石燃料を使用したボイラによる殺菌に比べて、CO2を排出せず、また高効率に加熱することができる。
ヒートポンプの熱源としては、例えば10℃以上であれば種々のものが使用でき、河川水、排水、未使用源泉等の従来では単に捨てていた未使用排熱を利用することができる。
ヒートポンプとしては、典型的には、ターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機が挙げられるが、スクリュー式やスクロール式の圧縮機を用いた他の蒸気圧縮式のヒートポンプでもよく、また、吸収式冷凍機等の他の形式であってもよい。
【0015】
また、本発明の温泉水供給方法は、上述の温泉水殺菌方法によって加熱された温泉水を貯湯槽に貯留し、該貯湯槽に貯留された温泉水を用いて配湯温度を調整し、利用側に温泉水を供給することを特徴とする。
【0016】
温泉水殺菌装置のヒートポンプによって加熱された温泉水を貯湯槽に貯留することにより、60℃以上の温泉水を確保することができる。この60℃以上の温泉水を用いて配湯温度を調整し、利用側に供給することとした。このように、温泉水の利用側に配湯する温泉水の配湯温度(例えば47℃)よりも大きな温度差を有する温泉水を保有することができるので、有効熱容量((貯湯温度−配湯温度)×貯湯量)を増大させることができる。
【0017】
さらに、本発明の温泉水供給方法は、前記貯湯槽には、60℃未満の温泉水が源泉から供給され、前記ヒートポンプの吸熱によって、源泉から供給された60℃以上の温泉水を冷泉槽で冷却し、前記貯湯槽および前記冷泉槽から導かれた温泉水を混合して配湯用の温泉水を配湯槽に貯留し、該配湯槽から利用側に温泉水を供給することを特徴とする。
【0018】
貯湯槽には、60℃未満の温泉水を源泉から供給することとし、存在する可能性のあるレジオネラ属菌を加熱して殺菌する。これにより、貯湯槽には60℃以上の高温の温泉水を貯留する。
一方、冷泉槽には、源泉から供給された60℃以上の温泉水を貯留し、ヒートポンプの吸熱によって冷却することとした。60℃以上の温泉水は、既にレジオネラ属菌が殺菌されているので、改めて加熱する必要がなく、そのまま冷却して冷泉水を作ることができる。また、ヒートポンプの吸熱によって冷却することとしているので、貯湯槽内の温泉水の加熱と同時に冷却が行われることとなり、冷泉水を作るための冷却設備や工程が別途必要となることはない。
そして、貯湯槽にて貯留された高温の温泉水と、冷泉槽にて貯留された低温の温泉水とを混合して貯留する配湯槽を設け、この配湯槽にて所望の温度の温泉水を得ることとした。このように、殺菌済みの有効な温泉水を用いて温度調整された温泉水を得ることができるので、温泉水ではない水道水等を用いて温度調整する場合に比べて、格段に泉質が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ヒートポンプによって加熱してレジオネラ属菌を殺菌するので、塩素殺菌を用いる必要がなく、また濾過装置を用いる必要がない。また、温泉水をヒートポンプによって60℃まで加熱するので、化石燃料を使用したボイラによる殺菌に比べて、CO2を排出せず、また高効率に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態であり、温泉水殺菌装置の一実施形態を示した概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態であり、温泉水供給システムの一実施形態を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1には、本発明の温泉水殺菌装置の一実施形態が示されている。
温泉水殺菌装置1は、ヒートポンプ3と、加熱側温泉熱交換器5と、熱源側温泉熱交換器7とを備えている。
【0022】
ヒートポンプ3は、ターボ冷凍機とされている。ターボ冷凍機は、図示しないが、冷媒を圧縮するターボ圧縮機と、ターボ圧縮機によって圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮された液冷媒を膨張させる膨張弁と、膨張された冷媒を蒸発させる蒸発器とを備えている。
なお、ヒートポンプ3としては、典型的には、本実施形態のようにターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機が挙げられるが、スクリュー式やスクロール式の圧縮機を用いた他の蒸気圧縮式のヒートポンプでもよく、また、吸収式冷凍機等の他の形式であってもよい。
【0023】
冷媒が凝縮器にて凝縮する際に放熱する凝縮熱によって、温水入口ノズル3aから流入する温水を加熱する。加熱された温水は、温水出口ノズル3bから流出し、温水ポンプ9によって加熱側温泉熱交換器5へと導かれる。
温水出口ノズル3bから流出する温水の温度(すなわちヒートポンプ3の出力温水温度)は、加熱側温泉熱交換器7によって加熱される温泉水が60℃以上となるように、例えば70℃といったように設定される。
【0024】
冷媒が蒸発器にて蒸発する際に吸熱する蒸発熱によって、冷水入口ノズル3cから流入する冷水を冷却する。冷却された冷水は、冷水出口ノズル3dから流出し、冷水ポンプ11によって熱源側温泉熱交換器7へと導かれる。
【0025】
加熱側温泉熱交換器5では、温泉水流入配管13aから導入される温泉水と、温水ポンプ9によって導入される温水とが熱交換される。この加熱側温泉熱交換器5によって、温泉水が60℃以上(例えば65℃)に加熱されて、レジオネラ属菌が殺菌される。殺菌後の温泉水は、温泉水流出配管13bを通り、図示しない貯湯槽へと導かれ、貯留される。
【0026】
熱源側温泉熱交換器7では、熱源水流入配管15aから導入される熱源水と、冷水ポンプ11によって導入される冷水とが熱交換される。熱交換された熱源水は、熱源水流出配管15bを通り排出される。熱源水としては、利用せずに放流していた温泉水を利用することができる。ただし、熱源水としては、例えば10℃以上であれば種々のものが使用でき、河川水、排水等の従来では単に捨てていた未使用排熱を利用することができる。
【0027】
以上の通り、本実施形態によれば、源泉から導かれる温泉水をヒートポンプ3によって60℃以上に加熱してレジオネラ属菌を殺菌することとしたので、塩素殺菌を用いる必要がなく、また濾過装置を用いる必要がない。
また、温泉水をヒートポンプ3によって60℃まで加熱するので、化石燃料を使用したボイラによる殺菌に比べて、CO2を排出せず、また高効率に加熱することができる。
また、本実施形態では、温泉熱交換器5,7を用いることとした。これは、温泉水に含まれる不純物等がスケールとなって熱交換器を詰まらせるおそれがあるので、メンテナンス等のために取り外し可能または交換可能とするためである。しかし、温泉水の泉質によってはスケールの発生のおそれがない場合があるので、このような場合には、温泉熱交換器5,7を省略して、温泉水流入配管13a及び温泉水流出配管13bを、それぞれ、温水入口ノズル3a及び温水出口ノズル3bに直接接続し、また、熱源水流入配管15a及び熱源水流出配管15bを、それぞれ、冷水入口ノズル3c及び冷水出口ノズル3dに直接接続してもよい。
【0028】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図2を用いて説明する。
本実施形態は、第1実施形態と同様に、ヒートポンプ3を用いて温泉水を加熱してレジオネラ属菌を殺菌する点で共通する。本実施形態は、このヒートポンプ3による殺菌方法を用いるとともに、温泉旅館等の利用側へ温泉水を供給する温泉水供給システムである。
【0029】
図2に示されているように、温泉水供給システム10は、ヒートポンプ3と、加熱殺菌された温泉水を貯留する貯湯槽17と、ヒートポンプ3によって冷却された温泉水を貯留する冷泉槽19と、貯湯槽17及び冷泉槽19から導かれた温泉水を混合して貯留する配湯槽21とを備えている。
ヒートポンプ3は、第1実施形態と同様なので、その説明を省略する。
【0030】
温泉地には、複数の源泉が存在し、それぞれの温度が異なる。本実施形態では、複数の源泉を適宜組み合わせ、60℃未満の温泉水を得る低温源泉群と、60℃以上の温泉水を得る高温源泉群とを形成する。もちろん、低温源泉群や高温源泉群は単一の源泉から構成されることもある。そして、低温源泉群は貯湯槽17に供給し、高温源泉群からの温泉水は冷泉槽19に供給する。
【0031】
貯湯槽17では、ヒートポンプ3によって例えば70℃まで昇温された温水によって温泉水が60℃以上(例えば65℃)に加熱される。具体的には、温水ポンプ9によって温水が貯湯槽17内に設置された加熱用伝熱管17a内を通り、これにより、貯湯槽17内の温泉水が加熱される。貯湯槽17内の温泉水は、60℃以上に加熱されてレジオネラ属菌が殺菌されるとともに、60℃以上の高温を維持した状態で貯留される。
貯湯槽17には、貯湯出力配管23が設けられており、配湯槽21に接続された合流配管25へと貯湯槽17内の温泉水を導く。貯湯出力配管23には、流量制御弁27が設けられており、合流配管25を流れる温泉水温度および流量に基づいて所定の演算を行う第1制御部29の指令によって開度が制御されるようになっている。
【0032】
冷泉槽19では、ヒートポンプ3によって例えば20℃まで冷却された冷水によって温泉水が26℃程度まで冷却される。具体的には、冷水ポンプ11によって冷水が冷泉槽19内に設置された冷却用伝熱管19a内を通り、これにより、冷泉槽19内の温泉水が冷却される。冷泉槽19内の温泉水は、高温源泉群から供給された60℃以上の温泉水を由来としているので、当初からレジオネラ属菌が殺菌されたものなので、殺菌のための加熱を必要としない。
冷泉槽19には、冷泉出力配管31が設けられており、合流配管25へと冷泉槽19内の温泉水を導く。冷泉出力配管31には、流量制御弁33が設けられており、第1制御部29によって開度が制御されるようになっている。
冷泉槽19には、放流弁20が設けられており、第1制御部29の指令および貯湯槽17内の温泉水の温度に基づいて所定の演算を行う第2制御部22によって、その開度が制御される。
【0033】
配湯槽21には、合流配管25を介して、貯湯槽17および冷泉槽19から温泉水が導かれるようになっている。配湯槽21では、温泉旅館等の利用側に供給する配湯温度(例えば42℃)となるように調整された温泉水温度(例えば46℃)の温泉水が貯留される。配湯槽21には、水位計47が設けられており、貯湯槽21内の温泉水の水位が所定レベルに到達すると、配湯槽21内で所定温度の温泉水を製造する制御を停止し、水位が所定レベルを下回ると当該制御を開始するようになっている。
配湯槽21には、配湯配管35が接続されており、配湯ポンプ37によって所定量の温泉水が流されるようになっている。
【0034】
配湯配管35の下流側には、循環給湯を行うための戻り配管39が接続されている。戻り配管39は、貯湯槽17内に設置された再加熱用伝熱管17bに接続されており、戻り配管39から導かれた温泉水が再加熱されるようになっている。再加熱用伝熱管17bにて再加熱された温泉水は、三方弁41を通過して配湯槽21へと返送される。三方弁41の開度は、配湯槽21内の温泉水の温度に基づいて所定の演算を行う第3制御部43の指令によって制御される。また、配湯配管35に設けた配湯ポンプ37は、配湯槽21へと返送される温泉水の流量に基づいて所定の演算を行う第4制御部45の出力に応じて、吐出流量が制御されるようになっている。
【0035】
上記構成の温泉水供給システム10は、以下のように用いられる。
60℃未満の低温源泉群から供給された温泉水は、貯湯槽17へと導かれ、貯湯槽17内でヒートポンプ3によって60℃以上に加熱される。これにより、温泉水内のレジオネラ属菌が殺菌される。
一方、60℃以上の高温源泉群から供給された温泉水は、冷泉槽19へと導かれ、冷泉槽19内でヒートポンプ3によって冷却される。
以上のように製造された貯湯槽17内の高温の温泉水と、冷泉槽19内の低温の温泉水は、配湯槽21へと導かれて混合される。この際に、合流配管25を流れる温泉水の温度及び流量に基づいて第1制御部29が所定の演算を行い、所望の温度が得られるように、貯湯槽17側の流量制御弁27と冷泉槽19側の流量制御弁33の開度を決定する。すなわち、貯湯槽17内の高温の温泉水と冷泉槽19内の低温の温泉水との流量比を適宜変更して、所望温度の温泉水を得られるように制御する。
配湯槽21内に貯留された温泉水は、配湯配管35を通り、配湯ポンプ37によって利用側へと供給される。
【0036】
以上の通り、本実施形態によれば、第1実施形態の作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
ヒートポンプ3によって加熱された温泉水を貯湯槽17に貯留することにより、60℃以上の温泉水を確保することができる。これにより、温泉水の利用側に配湯する温泉水の配湯温度(例えば43℃)よりも大きな温度差を有する温泉水を保有することができるので、有効熱容量((貯湯温度−配湯温度)×貯湯量)を増大させることができる。有効熱容量が増大すると、源泉使用量の削減が可能となるので、源泉枯渇の防止に寄与することができる。
【0037】
冷泉槽19には、高温源泉群から供給された60℃以上の温泉水を貯留し、ヒートポンプ3の吸熱によって冷却することとした。60℃以上の温泉水は、既にレジオネラ属菌が殺菌されているので、改めて加熱する必要がなく、そのまま冷却して冷泉水を作ることができる。また、ヒートポンプ3の吸熱によって冷却することとしているので、貯湯槽17内の温泉水の加熱と同時に冷却が行われることとなり、冷泉水を作るための冷却設備や工程が別途必要となることはない。
【0038】
貯湯槽17にて貯留された高温の温泉水と、冷泉槽19にて貯留された低温の温泉水とを混合して貯留する配湯槽21を設け、この配湯槽21にて所望の温度の温泉水を得ることとした。このように、殺菌済みの有効な温泉水のみを用いて温度調整された温泉水を得ることができるので、温泉水ではない水道水等を用いて温度調整する場合に比べて、格段に泉質が向上する。
【符号の説明】
【0039】
1 温泉水殺菌装置
3 ヒートポンプ
10 温泉水供給システム
17 貯湯槽
19 冷泉槽
21 配湯槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
源泉から導かれる温泉水を60℃以上に加熱してレジオネラ属菌を殺菌するヒートポンプを備えていることを特徴とする温泉水殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載された温泉水殺菌装置と、
前記ヒートポンプによって加熱された温泉水を貯留する貯湯槽と、
を備えていることを特徴とする温泉水供給システム。
【請求項3】
前記貯湯槽には、60℃未満の温泉水が源泉から供給され、
前記ヒートポンプの吸熱によって、源泉から供給された60℃以上の温泉水が冷却される冷泉槽と、
前記貯湯槽および前記冷泉槽から導かれた温泉水を混合して配湯用の温泉水を貯留する配湯槽と、
を備えていることを特徴とする請求項2に記載の温泉水供給システム。
【請求項4】
ヒートポンプによって、源泉から導かれる温泉水を60℃以上に加熱してレジオネラ属菌を殺菌することを特徴とする温泉水殺菌方法。
【請求項5】
請求項4に記載された温泉水殺菌方法によって加熱された温泉水を貯湯槽に貯留し、
該貯湯槽に貯留された温泉水を用いて配湯温度を調整し、利用側に温泉水を供給することを特徴とする温泉水供給方法。
【請求項6】
前記貯湯槽には、60℃未満の温泉水が源泉から供給され、
前記ヒートポンプの吸熱によって、源泉から供給された60℃以上の温泉水を冷泉槽で冷却し、
前記貯湯槽および前記冷泉槽から導かれた温泉水を混合して配湯用の温泉水を配湯槽に貯留し、
該配湯槽から利用側に温泉水を供給することを特徴とする請求項5に記載の温泉水供給方法。

【図1】
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【図2】
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