説明

温泉湯温度調整装置

【課題】天然温泉から湧出する高温の源泉を加水せずに少ない維持経費で適温に降下させることができる温泉湯温度調節装置を提供するものである。
【解決手段】空気を送出すエアポンプ18,20を備え、空気導入管36,38の一端を前記エアポンプ18,20と連結すると共に、その他端を源泉を貯留する浴槽10,14の下位に開口する。エアポンプ18,20を作動させることによって、エアポンプ18,20から送出した低い温度の空気を空気導入管36,38を介して浴槽10,14の源泉内に導入し、その低い温度の空気によって源泉の温度を下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然温泉から湧出する高温の源泉を適温に降下させる温泉湯温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本全国には種々の効能を有する温泉が数多く湧出しており、温泉は古来より観光用・湯治用として人々に愛され親しまれてきた。現在においても、温泉は気分転換や心身の健康維持増進のために利用されている。特に、天然温泉は、人工的な手が加えられていないことから、効能が得られるものとして人気が高い。また、最近では入浴施設としてだけでなく、医療、福祉、スポーツ等、種々の分野での温泉活用も期待されており、温泉は日本人の文化・生活と切り離すことができないかけがえのない存在となっている。
【0003】
一般に、人間が温泉に浸かり適温と感じる湯温は42℃前後と言われている。しかしながら、天然温泉の中には、45℃以上の高温の源泉が湧出しているところも多く、中には沸騰しているような熱湯の源泉もある。このように源泉の温度が高い高温天然温泉では、水道水や井戸水等の一般水を源泉に加水して温度調節をしているところが多い。非特許文献1に示すように、環境省が2004年9月に実施した調査によると、対象となった全国2万0081ヶ所の温泉施設のうち(回収率62.3%)、加水をしている浴槽を有する施設は32.5%であり、その加水をしている施設の54.4%が源泉温度が高いことを理由に挙げている。なお、加水をしている施設の77.2%が加水表示をしていない。
【0004】
また、上記加水して温度調節をする他に、例えば特許文献1に示すような温度調節方法も開発されている。本従来技術では、湧出する源泉を貯留する源泉貯留槽、一般給湯用の水を貯留する一般水貯留槽及び熱交換器を設置し、その熱交換器において、源泉貯留槽に接続した循環管路を通る源泉と一般水貯留槽に接続した循環管路を通る一般水との間で熱交換を行い源泉の温度を下げて浴場に供給している。
【0005】
【非特許文献1】温泉利用施設に関する調査結果の概要、[online]、平成16年10月8日、環境省自然環境局自然環境整備課、[平成17年1月6日検索]、インターネット<URL:http://www.env.go.jp/press/file_view.php3?serial=6070&hou_id=5334>
【特許文献1】特開平9−14750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、加水により源泉を適温に下降する場合、温泉業者側の立場としては、一般水を常時投入しているため、水道料金や下水料金が想像以上に掛かる等の不都合が生じる。
一方、利用者側の立場とすれば、一般水が加水されることにより、源泉が希釈されてしまうため、この温泉は本当に天然温泉100%なのか、あるいは加水することによって天然温泉100%の効能がどのくらい薄まるのか等の不信感が募る。特に、今までは定義が曖昧だったため、加水していても加水表示をせずに「天然温泉100%」「源泉100%」等と謳っている温泉施設は多かったが、温泉法の改正により、正確な情報開示の必要性が高まるにつれ、今後それらの表示基準が厳しくなることが予想される。一概に加水による温度調節が悪いとは言えないながらも、温泉業者側としては、利用者の信頼を確保するため、真摯に取り組まなければならない問題であることは間違いない。
【0007】
また、特許文献1に示すように、熱交換機等を設置して温度調節をする場合、高温の源泉を希釈せずに適温にすることはできるが、熱交換器は勿論、貯留槽を新設したり複数の循環管路や供給管路を増設することが必要となり、設備を整えるための初期費用として多大な工事費が掛かってしまう。従って、温泉業者側としても手が出し難く、仮に設備を整えたとしても、その費用は利用者側に跳ね返ることになり、廉価で温泉サービスを利用できなくなる。その結果、天然温泉を愉しむことは、一部の限られた人のみが嗜むことができる高価な娯楽となり、一般の人々が気軽に利用できなくなるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、天然温泉から湧出する高温の源泉を加水せずに少ない維持経費で適温に降下させることができる温泉湯温度調節装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、天然温泉から湧出した源泉を貯留する源泉貯留槽と、空気を送出す空気送出手段と、一方を前記空気送出手段に連結し他方を前記源泉貯留槽のお湯内に開口する空気導入管とを有し、前記空気送出手段から送出した空気を前記空気導入管を介して前記源泉貯留槽の源泉内に導入して前記源泉貯留槽内の源泉の温度を下げるようにするものである。
【0010】
本発明は、前記空気導入管の途中に殺菌手段を備えるものである。本発明は、前記源泉貯留槽が複数の浴槽から成り、各浴槽毎に前記空気送出手段と前記空気導入管とを備え、前記空気導入管の少なくとも2個をバイパス管で連絡し、各バイパス管にそこを開閉するバルブを備えるようにしたものである。本発明は、前記各空気導入管において前記殺菌手段を前記バイパス管の連絡位置よりも下流側に備えるようにしたものである。本発明は、前記源泉貯留槽が複数の浴槽から成り、各浴槽毎に前記空気送出手段と前記空気導入管とを備え、前記空気送出手段以外の予備空気送出手段と前記空気導入管以外の予備空気導入管とを備え、前記予備空気導入管と前記各空気導入管を途中に電動バルブを備えた予備バイパス管と手動バルブを備えた予備バイパス管とを備えるようにしたものである。本発明は、前記各空気導入管において前記殺菌手段を前記予備バイパス管の連絡位置よりも下流側に備えるようにしたものである。本発明は、前記殺菌手段を塩素又は木炭としたものである。本発明は、前記空気送出手段の空気吸入口を屋外に配置するものである。
【発明の効果】
【0011】
源泉の温度を降下させるために、水道水を加水する従来の方法では月々の水道代が高額であるのに対し、本発明ではエアポンプを作動させるための電気代と定期的な装置のメンテナンス費用だけで済み、本発明の維持経費が従来に比べて大幅に安くなるという利点がある。また、井戸水を加水する場合と本発明とを比べると、水よりも空気の方が軽量のため、初期設備費用も月々の維持経費も本発明の方が大幅に安くなるという利点がある。更に、源泉に水道水や井戸水を加水する場合には、加水によって源泉が希釈され効能が減少するおそれがあったが、本発明では源泉が希釈させられることが無いため、源泉の効能が減少することがない。
【0012】
源泉貯留槽に空気を導入するパイプの途中に塩素や木炭等から成る殺菌手段を設け、その殺菌手段でレジオネラ菌等の雑菌を除去した空気を源泉の貯留槽に導入する。これによって、源泉貯留槽内のお湯にレジオネラ菌等の雑菌が混入するのを防止する。殺菌手段を炭フィルタとすると、除菌に加え、脱臭・除湿効果も期待でき、炭フィルタの交換も容易である。
男性用浴槽や女性用浴槽等の複数の浴槽を有する場合に、各浴槽に対応するそれぞれ別のポンプと別の空気導入管を備え、空気導入管同士をバイパス管で連絡すると共にそのバイパス管の途中をバルブで開閉することにより、ポンプの故障の場合や空気導入管を清掃する場合であっても、全ての浴槽のお湯の温度を調節できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1は温泉湯温度調節装置の実施例を示す構成図である。温泉においては一般に、源泉貯留槽としての男性用浴槽10を備えた男性用浴室12と、源泉貯留槽としての女性用浴槽14を備えた女性用浴室16とに分けられている。男性用浴槽10と女性用浴槽14には、入浴に適する温度よりも高い温度の源泉が導入され、男性用浴槽10内のお湯の温度と女性用浴槽14内のお湯の温度が入浴に適する温度よりも高いものとする。男性用浴室12の外部には空気送出手段としての第一エアポンプ18が備えられ、女性用浴室14の外部には空気送出手段としてのと第二エアポンプ20が備えられている。第一エアポンプ18と第二エアポンプ20には冷たい空気を取り入れるために、第一エアポンプ18の空気取入口22と第二エアポンプ20の空気取入口24は、屋外に配置するのが望ましい。
【0014】
第一エアポンプ18と第二エアポンプ20は制御手段26と連絡されており、その制御手段26によって第一エアポンプ18と第二エアポンプ20の作動が制御される。男性用浴槽10の湯面28より下位には、男性用浴槽10内のお湯の温度を検知する温度検知手段30が備えられ、その温度検知手段30で検知された男性用浴槽10のお湯の温度が制御手段26に伝達される。女性用浴槽14の湯面32より下位には、女性用浴槽14のお湯の温度を検知する温度検知手段34が備えられ、その温度検知手段34で検知された女性用浴槽14のお湯の温度が制御手段26に伝達される。
【0015】
第一エアポンプ18には第一空気導入管36の一端を連結し、その第一空気導入管36の他端または他端付近に形成された開口部を男性用浴槽10のお湯の内部の下方に位置させる。第二エアポンプ20には第二空気導入管38の一端を連結し、その第二空気導入管38の他端または他端付近に形成された開口部を女性用浴槽14のお湯の内部の下方に位置させる。
【0016】
第一空気導入管36の途中には、第一エアポンプ18側から男性用浴槽10内の開口部側に向けて順に、逆止め弁40とサイレンサー42と殺菌手段44とが備えられている。第二空気導入管38の途中には、第一空気導入管36と同様に、第二エアポンプ20側から女性用浴槽14内の開口部側に向け向けて順に、逆止め弁40とサイレンサー42と殺菌手段44とが備えられている。第一空気導入管36や第二空気導入管38の途中に殺菌手段44を備えることで、そこを通過する空気中のレジオネラ菌を滅菌除去することができる。殺菌手段44の素材としては例えば塩素や木炭等が考えられる。木炭フィルタの場合には、除菌効果だけでなく、脱臭効果と除湿効果とがある。木炭をフィルタに入れたものは木炭の交換の際に便利である。
【0017】
第一空気導入管36の途中と第二空気導入管38の途中とはバイパス管46で連絡され、そのバイパス管46の途中にはそこを開閉するためのバルブ48が備えられている。
なお、第一空気導入管36においても第二空気導入管38おいても、バイパス管46との連絡位置より下流側に殺菌手段44を備える。これは、男性用浴槽10に導入される屋外空気も、女性用浴槽14に導入される屋外空気も、必ず殺菌手段44を通過するようにするためである。バルブ48は通常時には閉じられており、通常時には第一空気導入管36と第二空気導入管38とが連絡しないように設定されている。
【0018】
次に、第一エアポンプ18と第二エアポンプ20が作動する場合について説明する。例えば第一エアポンプ18が作動すると、屋外の空気が第一エアポンプ18から第一空気導入管36を通過して、男性用浴槽10内のお湯の内部に導入される。第一エアポンプ18の空気取入口22は屋外の温度の低い場所に開口するように設定してあるので、屋外の温度の低い空気が、第一エアポンプ18から第一空気導入管36を経て、男性用浴槽10のお湯の下位に導入される。男性用浴槽10のお湯の下位に導入される温度の低い空気は、男性用浴槽10のお湯の下方から上方に向けて浮き上がる際に、男性用浴槽10のお湯を冷却させる。男性用浴槽10のお湯の内部には第一エアポンプ18から屋外の温度の低い空気が順次導入され、その順次導入される温度の低い空気によって男性用浴槽10のお湯が徐々に冷やされる。これと同様に、第二エアポンプ20が作動すると、屋外の温度の低い空気が第二エアポンプ20から第二空気導入管38を通過して、女性用浴槽14のお湯の下位に導入され、女性用浴槽14内のお湯は、その内部に導入される温度の低い空気によって徐々に冷やされる。第一エアポンプ18と第二エアポンプ20の作動時間は、男性源泉の温度と、季節によって異なる外気温度とに応じて、制御手段26によって決定される。更に、温度検知手段30,34によって検出した男性用浴槽10内のお湯の温度や女性用浴槽14内のお湯の温度によっても調整される。
【0019】
第一エアポンプ18と第二エアポンプ20の一方のエアポンプが故障した場合には、バルブ48を開いてバイパス管46を介して第一空気導入管36と第二空気導入管38を連絡させる。これによって、正常に作動する一方のポンプの空気で、男性用浴槽10と女性用浴槽14の両方に空気を導入することができる。
【0020】
なお、前記説明では、高温の源泉を男性用浴槽10と女性用浴槽14に直接導入するものとして説明したが、浴槽10,14とは異なる図示しない源泉貯留槽に高温の源泉を導入して、その源泉貯留槽内に溜めた高温の源泉にエアポンプからの空気を導入して源泉の温度を適温付近まで降下させ、その後、適温付近まで降下させた源泉を男性用浴槽10と女性用浴槽14に導入するようにしても良い。なお、空気送出手段としてエアポンプ18,20を使用したが、空気送出手段はエアポンプに限らず、送風機等のその他のものを使用しても良い。
【0021】
図1においては、第一エアポンプ18と第二エアポンプ20の一方のエアポンプが故障したりメンテナンスをしたりする場合を考えて、第一空気導入管36と第二空気導入管38をバイパス管46で連絡する構成としたが、故障やメンテナンスに対応するその他の例を図2に示す。図2においては、第一エアポンプ18と第二エアポンプ20の他に、空気送出手段としての予備エアポンプ50と、途中に逆止め弁40とサイレンサー42を有する予備空気導入管52を備える。予備エアポンプ50の空気取入口54は、屋外に配置するのが望ましい。
【0022】
予備空気導入管52から第一空気導入管36へは、第一予備バイパス通路56と第二予備バイパス通路58とを連絡する。第一空気導入管36への第一予備バイパス通路56と第二予備バイパス通路58との連絡位置は、殺菌手段44より上流側とする。第一予備バイパス通路56の途中には電動で開閉する電動バルブ60を備える。第二予備バイパス通路58の途中には、電動バルブ60が作動しない場合のために手動で開閉する手動バルブ62を備える。予備空気導入管52から第二空気導入管38へは、第三予備バイパス通路64と第四予備バイパス通路66とを連絡する。第二空気導入管38への第三予備バイパス通路64と第四予備バイパス通路66との連絡位置は、殺菌手段44より上流側とする。第三予備バイパス通路64の途中には電動で開閉する電動バルブ68を備える。第四予備バイパス通路66の途中には、電動バルブ68が作動しない場合のために手動で開閉する手動バルブ70を備える。図2の構成とすることで、予備エアポンプ50からの空気を第一空気導入管36と第二空気導入管38に導入することができるので、第一エアポンプ18と第二エアポンプ20の故障やメンテナンスの際にも、男性用浴槽10内と女性用浴槽14内に空気を導入して、お湯の温度を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る温泉湯温度調節装置の構成図である。
【図2】本発明において予備エアポンプを用いた配管系統図である。
【符号の説明】
【0024】
10 男性用浴槽
14 女性用浴槽
18 第一エアポンプ
20 第二エアポンプ
22 空気取入口
24 空気取入口
36 第一空気導入管
38 第二空気導入管
46 バイパス管
48 バルブ
50 予備エアポンプ
52 予備空気導入管
56 第一予備バイパス通路
58 第二予備バイパス通路
60 電動バルブ
62 手動バルブ
64 第三予備バイパス通路
66 第四予備バイパス通路
68 電動バルブ
70 手動バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然温泉から湧出した源泉を貯留する源泉貯留槽と、空気を送出す空気送出手段と、一方を前記空気送出手段に連結し他方を前記源泉貯留槽のお湯内に開口する空気導入管とを有し、前記空気送出手段から送出した空気を前記空気導入管を介して前記源泉貯留槽の源泉内に導入して前記源泉貯留槽内の源泉の温度を下げることを特徴とする温泉湯温度調節装置。
【請求項2】
前記空気導入管の途中に殺菌手段を備えることを特徴とする請求項1記載の温泉湯温度調節装置。
【請求項3】
前記源泉貯留槽が複数の浴槽から成り、各浴槽毎に前記空気送出手段と前記空気導入管とを備え、前記空気導入管の少なくとも2個をバイパス管で連絡し、各バイパス管にそこを開閉するバルブを備えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の温泉湯温度調節装置。
【請求項4】
前記各空気導入管において前記殺菌手段を前記バイパス管の連絡位置よりも下流側に備えることを特徴とする請求項3記載の温泉湯温度調節装置。
【請求項5】
前記源泉貯留槽が複数の浴槽から成り、各浴槽毎に前記空気送出手段と前記空気導入管とを備え、前記空気送出手段以外の予備空気送出手段と前記空気導入管以外の予備空気導入管とを備え、前記予備空気導入管と前記各空気導入管を途中に電動バルブを備えた予備バイパス管と手動バルブを備えた予備バイパス管とを備えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の温泉湯温度調節装置。
【請求項6】
前記各空気導入管において前記殺菌手段を前記予備バイパス管の連絡位置よりも下流側に備えることを特徴とする請求項5記載の温泉湯温度調節装置。
【請求項7】
前記殺菌手段を塩素又は木炭とすることを特徴とする請求項2乃至6記載の温泉湯温度調節装置。
【請求項8】
前記空気送出手段の空気吸入口を屋外に配置することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の温泉湯温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−207907(P2006−207907A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19131(P2005−19131)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(505034935)
【Fターム(参考)】