説明

温液体供給蒸気泡ポンプ

【課題】本発明は、加熱するだけで同時にポンプとしての働きをなし、加熱槽に接続する管内の液体を加圧又は減圧する必要のない、温液体供給装置を提供することを目的とする。
【解決手段】加熱槽30をサブクール室35と飽和沸騰室36の二つに仕切り、隔壁には蒸気噴出弁33を備えた蒸気噴出孔32を設ける。飽和沸騰室36の外側には加熱装置40を設ける。また、サブクール室35に吐出管10と吸入管20の二つの管をそれぞれ弁を介して接続する。以上の構造からなる、液体中の蒸気泡の生成と圧壊を利用して、加熱するだけで同時にポンプとしての働きをなす、温液体供給蒸気泡ポンプを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の蒸気泡の生成と圧壊を利用し、加熱するだけで同時にポンプとしての働きをなす、温液体供給蒸気泡ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温水器などの液体を加熱し管から供給する一連の装置(ここでは温液体供給装置と呼ぶこととする)の働きは、液体を加熱槽に導入し加熱後吐出することにある。したがって、これら一連の装置群には、液体の加熱槽への流出入を補助するための機構が必要である。通常、常設の給液管内にあらかじめ与えられている液圧を利用することが多い。家庭用温水器を例にとれば、水道管などの常設給水管の水圧を利用することが多い。水道管内の水圧で加熱槽に送り込まれた水が温められたのち再び水圧で押し出され、加熱槽内は次の水と入れかわる。しかし、あらかじめ加圧を受けている常設の給液管と接続せずに、独立して用いる温液体供給装置の場合、ポンプ等で加熱槽に接続する管内の液体を加圧又は減圧し、液体の加熱槽への流出入を補助する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
常設の給液管と接続せずに独立して用いる温液体供給装置には、加熱槽に接続する管内の液体を加圧又は減圧するポンプ等の装置を加えなければならず、その分構造も大きく複雑になりコストもかかった。本発明の課題は、加熱するだけで同時にポンプとしての働きをなし、加熱槽に接続する管内の液体を加圧又は減圧する必要のない、温液体供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の本発明を以下に説明する。
加熱槽30を室間隔壁31で二つの部屋に仕切り、サブクール室35と飽和沸騰室36に分ける。室間隔壁31には蒸気噴出孔32を設け、蒸気噴出孔32にはサブクール室35側に開く蒸気噴出弁33を設ける。
【0005】
室間隔壁31以外の飽和沸騰室36の壁面の一つを伝熱面37とし、伝熱面37の外側に加熱装置40を設ける。
【0006】
サブクール室35には吐出管10と吸入管20の二つの管を接続する。
【0007】
サブクール室35と吐出管10の間を吐出側隔壁11で仕切る。吐出側隔壁11に吐出口12を設け、吐出口12には吐出管10側に開く吐出弁13を設ける。
【0008】
サブクール室35と吸入管20の間を吸入側隔壁21で仕切る。吸入側隔壁21に吸入口22を設け、吸入口22にはサブクール室35側に開く吸入弁23を設ける。
【0009】
本発明はこの構造により、液体中の蒸気泡の生成と圧壊を利用して、加熱するだけで同時にポンプとしての働きをなす、温液体供給蒸気泡ポンプである。
【発明の効果】
【0010】
以下に、本発明の効果を説明する。
【0011】
まず、吐出管10、吸入管20、サブクール室35、飽和沸騰室36のすべてに同一液体を満たす。
【0012】
この状態において、加熱装置40で伝熱面37を加熱する。熱は伝熱面37を通じて飽和沸騰室36の液体に伝わる。室間隔壁31で仕切られているために、飽和沸騰室36内の液体の温度上昇はサブクール室35内と比べ著しく早い。その結果、飽和沸騰室36内の液体だけが沸点に達し一部が蒸気となる。
【0013】
この飽和沸騰室36内の沸騰より、飽和沸騰室36内の圧力が著しく増し、蒸気は蒸気噴出弁33を押し開け、蒸気噴出孔32からサブクール室35に蒸気が漏れ出る。
【0014】
蒸気噴出弁33は蒸気を放出後、自身の重みで閉じられる。この際、サブクール室35内の蒸気噴出孔32周辺では、一旦液体が蒸気で押しのけられるが、蒸気は蒸気泡として上方に逃れてしまうため、再び周囲から液体が侵入する。このために閉じられる弁により液体の一部が引き込まれ、飽和沸騰室36内に液体が追加される。すなわち、飽和沸騰室36は弁の開閉ごとに蒸気の放出と液体の導入を繰り返す。
【0015】
一方、蒸気噴出弁33を押し開け蒸気噴出孔32から蒸気が漏れ出た瞬間、サブクール室35内では、液体の圧力が増すので、液体が吐出弁13を押し開け、液体が吐出口12から漏れ出る。液体吐出後、吐出弁13はその重みですぐに閉じられる。
【0016】
蒸気噴出孔32から出て来た蒸気泡は、サブクール室35内で冷やされるので、上昇しながら直ちに小さくなり消滅する。蒸気泡の縮小、消滅に伴い、サブクール室35内では液体が急激に減圧し、吸入管20内の液体の圧力より低くなる。このため、吸入弁23が開き、吸入口22から、吸入管20内の液体がサブクール室35内に引き入れられる。液体吸入後、吸入弁23はその重みですぐに閉じられる。
【0017】
これら一連の働きが繰り返されるため、本発明は、加熱装置40で加熱するだけで、吸入管20から液体を引き入れ、温め、吐出管10から吐き出すこととなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】請求項1に記載の本発明の断面図である。斜線部は伝熱面37の断面のみを表している。断面部分と空洞部分の誤解を招く恐れがないことから、引き出し線との重なりを防ぎ見やすくするために、他の断面の斜線を省略した。また、加熱装置40は様々な加熱器具を内包するため長方形で代用した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
請求項1に記載の本発明を実施するための形態を以下に説明する。
【0020】
加熱槽30を断熱効果の高い素材でできた室間隔壁31により仕切る。仕切られた上側をサブクール室35、下側を飽和沸騰室36とする。
【0021】
下側の飽和沸騰室36は扁平でサブクール室35に比較して十分に容積の狭い部屋とする。
【0022】
室間隔壁31には蒸気噴出孔32を設け、蒸気噴出孔32にはサブクール室35側に開く楔型の蒸気噴出弁33を設ける。楔型蒸気噴出弁33の下端には蒸気噴出孔32の幅より直径の大きい分銅34を設け、楔型蒸気噴出弁33が、サブクール室35内に完全に抜け落ちてしまわないようにする。
【0023】
飽和沸騰室36の下面を伝熱面37とし、熱伝導に優れた金属で構成するのがよい。伝熱面37の外側下面に加熱装置40を設ける。
【0024】
サブクール室35を吐出管10と吸入管20の二つの管を接続する。
【0025】
サブクール室35と吐出管10の間は吐出側隔壁11で仕切る。吐出側隔壁11には傾斜を設け、上側が吐出管10側となるようにする。吐出側隔壁11に吐出口12を設け、吐出口12には吐出管10側に開く吐出弁13を設ける。
【0026】
サブクール室35と吸入管20の間は吸入側隔壁21で仕切る。吸入側隔壁21には傾斜を設け、上側がサブクール室35側となるようにする。吸入側隔壁21に吸入口22を設け、吸入口22にはサブクール室35側に開く吸入弁23を設ける。
【0027】
本発明の実施は以上の構造より可能となる。
【符号の説明】
【0028】
10 吐出管
11 吐出側隔壁
12 吐出口
13 吐出弁
20 吸入管
21 吸入側隔壁
22 吸入口
23 吸入弁
30 加熱槽
31 室間隔壁
32 蒸気噴出孔
33 蒸気噴出弁
34 分銅
35 サブクール室
36 飽和沸騰室
37 伝熱面
40 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱槽30を室間隔壁31でサブクール室35と飽和沸騰室36の二つに仕切り、
室間隔壁31には蒸気噴出孔32を設け、
蒸気噴出孔32にはサブクール室35側に開く蒸気噴出弁33を設け、
飽和沸騰室36の室間隔壁31以外の壁面の一つを伝熱面37とし、
伝熱面37の外側に加熱装置40を設け、
サブクール室35に吐出管10と吸入管20の二つの管を接続し、
サブクール室35と吐出管10の間を吐出側隔壁11で仕切り、
吐出側隔壁11に吐出口12を設け、
吐出口12には吐出管10側に開く吐出弁13を設け、
サブクール室35と吸入管20の間を吸入側隔壁21で仕切り、
吸入側隔壁21に吸入口22を設け、
吸入口22にはサブクール室35側に開く吸入弁23を設けた、
液体中の蒸気泡の生成と圧壊により、
加熱するだけで同時にポンプとしての働きをなす、
温液体供給蒸気泡ポンプ。

【図1】
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