説明

温風機

【課題】火炉の冷却構造を工夫して、火炉の冷却効率、すなわち、熱交換効率を良くし、耐久性を向上させる、可搬式の温風機を提供する。
【解決手段】前部端面板2aに空気吸込口8および後部端面板2bに温風出口9を開設した横形のケーシング2と、前端部にバーナー6を備えると共に、ケーシング2内に収容した円筒形状の火炉3と、火炉3の周囲に隙間をおいて配置した二重筒形状の熱交換部4と、温風出口8に臨んでケーシング2後部端面板2aに取付けた送風機5とを備え、火炉3および熱交換部4をその後端部に設けた連通部14で互いに連通すると共に、熱交換部4の前端部に排気口15を開設し、火炉3および熱交換部4の各周囲には空気通路13を形成し、ケーシング後部端面板2aの温風出口9に臨む火炉3の後部端面板3aを温風出口9に向けて円錐形状に突出形成して、空気通路13から温風出口9へ向かう空気流路をガイドするガイド部18を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温風機、特に空気を熱交換部の表面に沿って強制的に送風し、燃焼ガスと熱交換して加熱する型式の温風機で、例えば在来種葉たばこのハウス内乾燥や園芸用ハウス内暖房に使用される温風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先にこの種の温風機として、図4に示す構造のもの、すなわち、前端部にバーナー30を備える円筒形の火炉31をケーシング32内に横向きに収め、火炉31の周囲に隙間をおいて火炉31を囲むように二重筒形の熱交換部33を形成し、火炉31および熱交換部33を後端部において互いに連通しかつ熱交換部33の前端部に燃焼ガスの排気口34を設けた構造の温風機を提案した(特許文献1参照)。この温風機は、ケーシング32の温風出口35に取付けた送風機36のファンを回転させ、空気吸込口37から吸込んだ空気を熱交換部33の表面に沿って強制送風し、火炉31内の燃焼ガスと熱交換して加熱し、温風を温風出口35を通して送風機36の吹出口からハウス内に供給するようになっている。
【0003】
在来種・バーレー種葉たばこは、ビニルハウスなどを利用してゆっくりと長期間(約30日間)かけて乾燥される。この場合に主に雨天や曇天時のハウス内湿度を低下させる目的で上記温風機が使用されている。特に東北地方では、夏場に「やませ」と言われる低気圧下の山からの吹き下ろし風により異常低温の時期が発生し、この時期にビニルハウス内が異常な高湿度状態になる。ハウス内の異常な高湿度状態は、葉たばこに種々の病気(空洞病など)を発生させ、品質低下をもたらすため、ハウス内の高湿度状態を長期間にわたり防止するべく、小型簡便でありながら、連続運転に十分耐える温風機の要望が強かった。
【0004】
【特許文献1】実開平6−46253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記温風機は、図4に示されるように、火炉31の後部端面板31aが火炉31の軸線に対し垂直なフラット面であることにより、送風機36の運転中、火炉31の後部端面板31aの後方に負圧空間Sが形成され、火炉31の後部端面板31aにおける冷却が十分でないという面があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、火炉の冷却構造を工夫して、火炉の冷却効率、すなわち、熱交換効率を良くし、耐久性を向上させることのできる、可搬式の温風機を提供することにある。また、熱交換後の温風出口に向かう空気の流れを良くすることのできる温風機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載の温風機は、前部端面板に空気吸込口および後部端面板に温風出口がそれぞれ開設された横形のケーシングと、前端部にバーナーが備わると共に、ケーシング内に収容された円筒形状の火炉と、火炉の周囲に隙間をおいて配置された二重筒形状の熱交換部と、温風出口に臨んでケーシング後部端面板に取付けられた送風機とを備え、火炉および熱交換部はその後端部に設けられた連通部で互いに連通されていると共に、熱交換部の前端部に排気口が開設され、火炉の周囲および熱交換部の周囲には空気通路が形成され、ケーシング後部端面板の温風出口に臨む火炉の後部端面板が温風出口に向けて円錐形状または半球形状に突出形成され、これにより空気通路から温風出口へ向かう空気流路をガイドするガイド部が形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の温風機によると、送風機の運転により、ケーシング内に吸入された空気は火炉の表面及び熱交換部の内外両表面を軸方向に沿って空気通路内を流れ、火炉の表面及び熱交換部の表面との間で熱交換され、温風となって、温風出口から送風機を通してハウス内に吹き出される。ここで、火炉の後部端面板が温風出口に向けて円錐形状または半球形状に突出形成されることにより、空気通路から温風出口へ向かう空気流路をガイドするガイド部が形成されて、温風出口へ向かう空気流路が整流化される。同時に、従来の火炉の後部端面板の後方に形成されていた負圧空間が解消され、火炉の後部端面板からの冷却が十分に行われ、熱交換効率が向上する。
【0009】
火炉の後部端面板からの冷却が十分行われるので、火炉の炉体耐久性が向上し、もって温風機の耐久性、安全性がより向上する。
【0010】
本発明に係る請求項2記載の温風機は、ケーシングの後部端面板の内面に、前記円錐形状または半球形状のガイド部とともに、空気通路から温風出口へ向かう空気流路をガイドする円筒形状の補助ガイド板が取付けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の温風機によると、温風出口の周囲に配置される円筒形状の補助ガイド板により、温風出口へ向かう空気流路がより一層整流化される。これにより、火炉と熱交換部における熱交換が促進され、熱交換効率がより向上する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明に係る温風機によると、火炉の後部端面板を温風出口に向けて円錐形状または半球形状に突出形成して、空気通路から温風出口へ向かう空気流路をガイドするガイド部を形成したので、温風出口へ向かう空気流路を整流化すると同時に、従来の火炉の後部端面板の後方に形成されていた負圧空間を解消して、火炉の後部端面板からの冷却を十分に行なわせ、もって熱交換効率を向上させることができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を図1ないし図3を参照して説明する。図1は本発明の温風機の一部を断面視した側面図、図2は図1のA−A線矢視一部断面図である。これらの図において、1は温風機、2はケーシング、3は火炉(燃焼室)、4は熱交換部、5は送風機、6はバーナー、7は煙突である。
【0014】
ケーシング2は、横形の筒形状に形成されているもので、その前部端面板2aに多数の空気吸込口8が開設され、反対側の後部端面板2bに温風出口9が開設されている。ケーシング2内には火炉3および熱交換部4が収容されている。火炉3は、横向きの円筒形状に形成されており、その後部端面板3aは閉鎖されている。火炉3の前部形状は、前方へ向けて縮径するコーン形状に形成されており、コーン形状から続く接続筒部10がケーシング2の前部端面板2aの内面に接続されている。接続筒部10内には、ガンタイプのバーナー6のヘッド11がそのノズルを火炉3内に臨ませて配置されている。バーナー6は、取付板12を介してケーシング2の前部端面板2aに取付固定されている。
【0015】
熱交換部4は、火炉3の周囲に隙間S1を形成して火炉3を囲むように配置されるもので、中空の二重円筒状に形成されている。熱交換部4の外周面とケーシング2の内周面との間にも隙間S2が形成されて、それら隙間S1,S2により空気通路13が形成されている。両隙間S1,S2から形成される空気通路13は、空気吸込口8から吸込まれた空気を温風出口9に向けて流通させるようになっている。火炉3および熱交換部4は、その後端部に複数箇所(図示例では3箇所)設けられた連通部14を介して互いに連通されている。熱交換部4の前端部は火炉3の前端部付近まで達しており、熱交換部5の前部端面は閉鎖されている。熱交換部5の前端部には上向きの排気口15が開設されており、排気口15にはケーシング2の外面から上向きに突出する煙突7が取付けられている。
【0016】
ケーシング2の後部端面板2bの外面には、温風出口9に臨んで、送風機5が取付固定されている。送風機5の内部には空気吸込口8から空気を吸込み、温風出口9から温風を吐出するためのファン16が設けられている。
【0017】
温風出口9に臨む火炉2の後部端面板2aは、温風出口9に向けて円錐形状に突出形成されている。すなわち、火炉2の後部端面板2aの周縁部から円錐形状に突出して中央の頂部17が温風出口9の近傍に達している。図示例の場合、中央の頂部17から後部端面板2aの周縁部までの傾斜面と中心軸線Pとの間の角度αは、約45度に設定されている。後部端面板2aは、温風出口9に向けて円錐形状に突出形成されることにより、空気通路13から温風出口8へ向かう空気流路(空気の流れ)を整流化するべくガイドする円錐形状のガイド部18が形成されている。なお、ガイド部18は、半球形状であってもよい。
【0018】
ケーシング2の後部端面板2bの内面には、前記の円錐形状のガイド部18とともに、空気通路13から温風出口9へ向かう空気流路を整流化するべくガイドする円筒形状の補助ガイド板19が温風出口9の周囲に取付けられている。円筒形状の補助ガイド板19の内径は、熱交換部4の外径と略同一かそれよりも若干大きい寸法に設定されている。これにより、火炉3の外周面と熱交換部4の内周面との隙間S1を軸方向に流れる空気がストレートに温風出口9に導かれ、熱交換部4の内外表面に沿って軸方向に流れる空気が、補助ガイド板19内にガイドされて、整流化され、温風出口9に導かれる。
【0019】
上記の火炉2および熱交換部3は、ケーシング2の下面板2c上に支持体20を介して隙間S3をおいて設置支持されている。また、ケーシング2の前部端面板2aに対し火炉2の前端部が取付部21を介して取付支持されている。
【0020】
ケーシング2は、バーナー6の燃料である灯油を収容するボックス状に形成された燃料タンク22上に若干の隙間をおいて設置支持されている。燃料タンク22からは燃料供給管23がバーナー6に延びて接続されている。燃料タンク22の後部には一対の車輪24が設けられ、前部にはスタンド兼用の手押しハンドル25が取り付けられている。
【0021】
以上のように構成された温風機は、バーナー6を着火し送風機5のファン16を作動させると、外気が空気吸入口8からケーシング2内に吸入され、空気通路13を、火炉3の表面及び熱交換部4の内外両表面を軸方向に沿って流れ、送風機5から後方へ送風吐出される。一方、バーナー6の燃焼ガスは火炉3内を後方に流れ、火炉3後端部の連通部14から熱交換部4に流入して、熱交換部4内を前方に戻り、熱交換部4の前端に達した後、排気口15から煙突7を介して排気される。温風の温度はバーナー6の熱量を制御する温度調節器26により設定温度に自動的に調整される。なお、27は燃料供給バルブ、28は加熱防止器である。
【0022】
これにより、空気吸入口8からケーシング2内に吸入された空気は温風出口9を経て送風機5から送風吐出される過程で、火炉3及び熱交換部4表面における燃焼ガスとの熱交換により加熱され、温風となって、温風出口9から送風機5を経て吐出される。
【0023】
本実施形態によると、
(1)火炉3の後部端面板3aが温風出口9へ向けて円錐状に突出してガイド部18を形成することにより、火炉3および熱交換部5の周囲の空気通路13から温風出口9に向かう空気流路が整流化された。これにより、従来構造の課題であった火炉の後部端面板近傍の負圧状態空間が解消され、火炉3の後部端面板3aからの冷却が改善された。
(2)火炉3の後部端面板3aの表面積が拡大することから、冷却効率が向上し、全体としての熱交換効率の向上が図れた。
(3)火炉3の後部端面板3aの冷却が十分に行われることから、熱損傷のおそれがなく、耐久性の向上が図れた。
(4)円錐形状のガイド部18の周囲を囲むようにして、温風出口9の周囲に円筒形状の補助ガイド板19を取付けたので、空気通路13から温風出口9に向かう空気流路がより一層整流化され、空気流路のバランス化が図れた。
【実施例】
【0024】
本発明者は、図4に示す従来構造の温風機(従来型)と、本発明の温風機(実施例1、実施例2)について、比較試験を行った。実施例1は、火炉3の後部端面板3aを円錐形状に突出形成してガイド部18を設けたものである。実施例2は、前記したガイド部18に補助ガイド板19を追加したものである。試験は、同一の使用状態において行い、火炉の後部端面板の表面温度を測定した。また、煙突内の燃焼排気ガス温度を測定し、その平均値を求め、熱交換効率を計算した。熱交換効率は、農業機械研究所の温風暖房機試験規定(昭和58年6月)(IAMテストコードNo.4−1983)の4−2暖房能力試験中の計算式に準じて求めた。表1に火炉の後部端面板の表面温度の測定値、表2に燃焼排気ガス温度の平均値と熱交換効率をそれぞれ示す。
【0025】
【表1】

表1の試験結果によると、火炉の表面温度は、従来構造で380℃であったのに対し、実施例1が340℃、実施例2が290℃であった。従来構造に比べて、実施例1で40℃、実施例2で90℃の表面温度低下が認められた。これにより、本発明は火炉の冷却効率の改善が図れること、実施例2の構造はより効果が高いことが確認できた。
【0026】
【表2】

表2の試験結果によると、燃焼排気ガス温度は、従来構造で380℃であったのに対し、実施例1が360℃であり、従来構造に比べて、20℃の低下が認められた。熱交換効率は、従来構造が79.8%であったのに対し、実施例1は81.0%であり、1.2%の有意差が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の温風機は、在来種葉たばこのハウス内乾燥用以外に、施設園芸ハウス暖房用、工場暖房用、乾燥用として種々の用途に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る温風機を示す縦断面図である。
【図2】図1の温風機のA−A線矢視の一部断面図である。
【図3】図1の温風機に適用される火炉と熱交換部の正面図である。
【図4】従来構造の温風機を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 温風機
2,32 ケーシング
2a 前部端面板
2b 後部端面板
3,31 火炉
3a 後部端面板
4,33 熱交換部
5,36 送風機
6,30 バーナー
7 煙突
8,37 空気吸込口
9,35 温風出口
10 接続部
11 バーナーのヘッド
12,21 取付板
13 空気通路
14 連通部
15,34 排気口
16 ファン
17 頂部
18 ガイド部
19 補助ガイド部
22 燃料タンク
23 燃料供給管
24 車輪
25 押しハンドル
26 温度調節器
27 燃料供給バルブ
28 加熱防止器
S1,S2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部端面板に空気吸込口および後部端面板に温風出口がそれぞれ開設された横形のケーシングと、
前端部にバーナーが備わると共に、ケーシング内に収容された円筒形状の火炉と、
火炉の周囲に隙間をおいて配置された二重筒形状の熱交換部と、
温風出口に臨んでケーシング後部端面板に取付けられた送風機とを備え、
火炉および熱交換部はその後端部に設けられた連通部で互いに連通されていると共に、熱交換部の前端部に排気口が開設され、
火炉の周囲および熱交換部の周囲には空気通路が形成され、
ケーシング後部端面板の温風出口に臨む火炉の後部端面板が温風出口に向けて円錐形状または半球形状に突出形成され、これにより空気通路から温風出口へ向かう空気流路をガイドするガイド部が形成されることを特徴とする温風機。
【請求項2】
ケーシングの後部端面板の内面に、前記円錐形状または半球形状のガイド部とともに、空気通路から温風出口へ向かう空気流路をガイドする円筒形状の補助ガイド板が取付けられていることを特徴とする請求項1記載の温風機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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