説明

測定定規及び埋設樹脂管の扁平矯正方法

【課題】埋設管の扁平を容易に確認できるようにする。また、埋設管の扁平部位に他の管材を接続した場合であっても気密性などの一定の接続品質を簡易な技術的手段にて確保できるようにする。
【解決手段】測定定規1によれば、中心角が約180°という広範囲を対象にして埋設樹脂管の外周形状を確認でき、正確に扁平の有無を確認することができる。また、扁平した埋設樹脂管21を矯正バンド4で外側から抱えるように保持して締め付けるため、作業スペースが限られた狭い立坑内でも真円形状の埋設樹脂管21に矯正でき、継手管の施工を気密性など接続品質を確保しつつ簡単に進めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中の埋設管の扁平を確認する測定定規、及びこの測定定規によって扁平を確認した埋設樹脂管の扁平矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ガスを供給する導管として、樹脂管が地盤に埋設されている。この樹脂管は、古くから使われている鋳鉄管に比べて軽量で取扱い易く、導管の整備コストを鋳鉄管より下げることができる特徴がある。例えば、埋設樹脂管に分岐施工を行う作業の場合は、埋設樹脂管の外周面に分岐用の樹脂管継手を当てて熱融着すれば簡単に分岐作業を進めることができ、異形管への交換が必要な鋳鉄管に比べて作業時間を格段に短縮することができる。さらにガス供給を止めることなく作業を進めることができる利点もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、埋設樹脂管は地盤内で扁平に変形することがある。例えば、埋設時には断面真円形状であったのが、路上を通過する重車両の重みで上方から圧迫されたりすることで、横手を長軸とする楕円形状に変形してしまうことがある。すると、前述した分岐用の樹脂管継手は、埋設樹脂管が埋設当時と変わらない真円形状であることを前提としているため、変形による形状の不一致によって、分岐施工自体ができなかったり、分岐施工できたとしても気密性などの接続品質が不十分となりガス漏れを起こしたりするおそれがある。したがって先ずは埋設管の扁平を容易に確認できることが必要であり、次に扁平部位を確認したならば、気密性などの一定の接続品質を確保するための対策をできるだけ簡易な方法で講ずることが現場での作業効率を考慮すると好ましい。
そして以上のような問題と対策は、分岐施工に限らず、埋設樹脂管に他の新設管や継手管を接続するあらゆる工事において発生するおそれがある。
【0004】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。
したがって本発明の第1の目的は、埋設管の扁平を容易に確認できるようにすることにある。
第2の目的は、埋設管の扁平部位に他の管材を接続した場合であっても気密性などの一定の接続品質を確保できるようにするための簡易な対策を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
【0006】
すなわち本発明は、地盤に埋めた埋設管の扁平を確認する測定定規であって、平板で形成されており、該平板に、埋設管の外周面に沿って接触可能な半円弧状の測定縁と、測定縁の両端部から屈曲点を形成せずに各々延長形成した一対の突出縁とを備える測定定規を提供する。
【0007】
本発明の測定定規では、埋設管の外周面と沿うように半円弧状の測定縁を当てて扁平変形を確認するため、中心角が約180°という広範囲を対象にして埋設管の外周形状の異常の有無を確認することができる。埋設管が扁平していると埋設管の外周面と測定縁との間に隙間が生じるが、確認範囲となる中心角が小さいとこの隙間が小さくて分かり難い。しかし本発明の測定定規のように中心角が約180°という広範囲を対象とすれば、隙間が大きく現れて確認し易くすることができ、正確に扁平の有無を確認することができる。
【0008】
また、測定縁の両端部から屈曲点を形成せずに各々延長形成した一対の突出縁を設けているため、測定縁の板厚方向に構成される測定縁面と突出縁の板厚方向に構成される突出縁面とを角部を介さない単一の連続面とすることができる。したがって、測定縁を埋設管の外周面に当ててその周方向に滑らせるように回転させる際に、埋設管の外周面を角部で擦らずに面接触で滑らせることができることから、測定定規をスムーズに摺動回転させることができる。
【0009】
本発明の測定定規については、平板が略U字型であり、該略U字型の内周部となる内縁が、測定縁と突出縁を形成しており、該略U字型の外周部となる外縁が、埋設管と同軸上に接続させる継手管の嵩寸法よりも大きくなるように内縁から離間する位置に形成したものとすることができる。
このようにして平板の内縁から外縁までの寸法を、後に埋設管に接続する継手管の嵩寸法より大きくすれば、埋設管の周方向に回転させて行う扁平確認と同時に継手管の取付けに必要な周囲の隙間の有無を簡単に確認することができる。
【0010】
本発明の測定定規については、平板を透明樹脂で形成することができる。
埋設管の扁平確認作業は、通常、地面を掘り下げた暗所の立坑の中で行われる。このため平板が不透明の場合、作業者は、扁平した埋設管の外周面と測定定規の測定縁との間に生じる隙間の有無の確認を、暗い立坑の埋設管の外周面の位置で管軸と平行な視線で目視して行わなければならず、確認作業が面倒で難しい。しかし本発明のように平板が透明樹脂の場合は、前記隙間を、測定定規を通して簡単に確認することができ、どのような位置からでも正確に扁平の有無を確認することができる。
【0011】
また、本発明は、前記何れかの本発明による測定定規を用いる埋設樹脂管の扁平矯正方法であって、地盤を開削し露出させた埋設樹脂管に測定定規の測定縁を当てて外周面を周方向に滑らせて扁平部位を測定し、測定した扁平部位に周方向で複数に分割した真円筒状の矯正バンドを周着し、矯正圧力を加えて保持することで埋設樹脂管の扁平変形を矯正する埋設樹脂管の扁平矯正方法を提供する。
【0012】
本発明の矯正方法では、埋設樹脂管の外周面を円周方向にスムーズに摺動回転させることができ、埋設樹脂管の外周面を周方向で広範囲に亘って確認することができる前記本発明の測定定規を用いて埋設管の扁平の有無を確認するため、立坑内で露出させた埋設管の長手方向にわたって扁平部位を簡単に確認することができる。そして扁平部位を発見したならば、その部位に周方向で複数に分割した真円筒状の矯正バンドを周着し矯正圧力を加えて保持するだけであるため、作業スペースが限られた狭い立坑内でも適用できる簡易な方法で、埋設樹脂管の扁平変形を真円形状に矯正することができる。
【0013】
矯正バンドは真円筒を筒軸方向に複数縦割りした断面円弧状の複数の分割片で構成され、複数の分割片を蝶番で連結し筒軸に沿って観音開き可能とした一体物として形成されている。
例えば、真円筒を筒軸方向に2つに縦割りした矯正バンドは、各分割片の対向する一方の長手端部どうしが蝶番で固定され、他方の長手端部間を開口とする観音開きを可能にしている。そしてその他方の長手端部どうしにはそれぞれが相互に密着できる固定片が設けられ、これら固定片どうしをネジ止めするなどして矯正バンドを閉じることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の測定定規によれば、中心角が約180°という広範囲を対象にして埋設管の外周形状における扁平の有無を確認することができる。
測定縁の板厚方向に構成される測定縁面と突出縁の板厚方向に構成される突出縁面とが角部を介さない単一の連続面であるため、本発明の測定定規を埋設管の外周面に当ててその円周方向に滑らせるように回転させる際に、プラスチック管の外周面を角部で擦らずに面接触で滑らせることができ、測定定規をスムーズに摺動回転させることができる。
そして、埋設管の外周面に対するスムーズな摺動回転により広範囲での扁平確認ができることで、本発明の測定定規では、埋設管の扁平確認作業を、立坑内に露出させた長手方向に沿う全長に亘って、手軽に迅速に行うことができる。
【0015】
また、平板が略U字型であり、該略U字型の内周部となる内縁が、測定縁と突出縁を形成しており、該略U字型の外周部となる外縁が、埋設管と同軸上に接続させる継手管の嵩寸法よりも大きくなるように内縁から離間する位置に形成する。つまり平板の内縁から外縁までの寸法を、後に埋設管に接続する継手管の嵩寸法より大きくすれば、作業スペースが限られた狭い立坑内であっても、埋設管の周方向に回転させて行う扁平確認と同時に継手管の取付けに必要な周囲の隙間の有無を簡単に確認することができ、作業効率を高めることができる。
【0016】
また、本発明による埋設樹脂管の扁平矯正方法によれば、先ず、本発明の測定定規によって、立坑内で露出させた埋設樹脂管の長手方向に亘って扁平部位の有無を手軽且つ迅速に確認することができる。次に、扁平部位を発見したならば、そこに周方向で複数に分割した真円筒状の矯正バンドを周着し矯正圧力を加えて保持することで、作業スペースが限られた狭い立坑内でも適用できる簡易な方法で、埋設樹脂管の扁平変形を真円形状に矯正することができる。したがって、本発明によれば、埋設樹脂管の扁平変形の矯正を立坑内での簡単な作業で迅速に行った上で、埋設樹脂管に対する継手管等の他の管材の接続を行うことができ、気密性等の接続品質において信頼性のある接続作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0018】
測定定規〔図1,図2〕
本実施形態の測定定規1は透明樹脂でなり、略U字型の平板にて形成されている。
この測定定規1における略U字型の内周部となる内縁2は、所定半径rの半円弧状の測定縁2aと、測定縁2aの端部を基端として測定縁2aの両端より相互に平行に伸長しその先端間の寸法が半円弧の直径寸法である2つの突出縁2b,2bと、で形成されている。測定縁2aの半径rは、具体的には埋設樹脂管の外径に応じて50mm、75mm、100mmなどとすることができる。
また、測定定規1における略U字型の外周部となる外縁3は、直線状の辺でなる多角形状に形成されている。このような内縁2から外縁3までの寸法は、後に埋設樹脂管に接続する継手管の嵩寸法より大きく形成されている。つまり、外縁3は、埋設樹脂管と同軸上に接続させる継手管の嵩寸法よりも大きくなるように内縁2から離間する位置に形成されている。
【0019】
測定定規1を形成する平板の材質は、変形し難い硬質材が好ましい。さらに埋設樹脂管の外周面を傷付け難い硬質樹脂が好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル共重合樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。さらに透明性を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリル共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂である。
【0020】
本実施形態の測定定規1の作用・効果を説明する。
測定定規1によれば、中心角が約180°という広範囲を対象にして埋設樹脂管の外周形状を確認することができ、正確に扁平の有無を確認することができる。
【0021】
内縁2では、測定縁2aの端部から屈曲点を形成せずに延長形成した突出縁2bを設けているため、測定縁2aの板厚方向に構成される測定縁面と突出縁2bの板厚方向に構成される突出縁面とを角部を介さない単一の連続面とすることができる。このことを図1のZ領域の拡大図を図2に示して説明する。
図2(C)で示すように、測定縁の端部から測定縁と屈曲点を形成して突出縁を形成したり、図2(D)で示すように、突出縁を設けることなく屈曲点を形成して外縁を形成した場合には、埋設樹脂管21の外周面21aを角部で擦ることになり、測定定規を周方向に回転させるときに滑り難い。しかし図2(A)で示す本実施形態の測定定規1のように、測定縁面と突出縁面とを角部を介さない単一の連続面とすれば、埋設樹脂管21の外周面21aを面接触で滑らせることができ、測定定規1のスムーズな摺動回転を実現することができる。
また、2つの突出縁2b,2bの先端間の寸法が半円弧でなる測定縁2aの直径寸法であるため、埋設樹脂管21の外周面21aに対し測定縁2aを容易に当てることができる。
【0022】
内縁2から外縁3までの寸法を、後に埋設樹脂管に接続する継手管の嵩寸法より大きく形成している。このため、作業スペースが限られた狭い立坑内であっても、埋設樹脂管の周方向に回転させて行う扁平確認と同時に継手管の取付けに必要な周囲の隙間の有無を簡単に確認することができる。
【0023】
測定定規1を透明樹脂で形成しているため、作業者は、扁平した埋設樹脂管の外周面と測定定規の測定縁との間に生じる隙間を、測定定規1を通して簡単に確認することができ、どのような位置からでも正確に扁平の有無を確認することができる。
【0024】
埋設樹脂管の扁平矯正方法〔図3〜図6〕
先ず、地盤を開削して形成した立坑の中で埋設樹脂管21を露出させる。
次に、図3で示すように、測定定規1における測定縁2aの板厚方向に構成される測定縁面を埋設樹脂管21の外周面21aに当てる。そして測定定規1の測定縁2aを埋設樹脂管21における外周面21aの周方向に滑らせ、測定定規1を埋設樹脂管21の外周で回転させて埋設樹脂管21における扁平の有無を確認する。
その後、扁平部位を確認した埋設樹脂管21を、図4で示す筒軸方向に2つに縦割りした真円筒状の矯正バンド4で、図5で示すように、外側から抱えるように埋設樹脂管21を保持して締め付け、図6で示すように、ボルト5で矯正バンド4を固定して埋設樹脂管21を矯正する。こうして扁平した埋設樹脂管21を断面真円形状の埋設樹脂管21に戻すことができる。
【0025】
ここで、この扁平矯正方法で使用する矯正バンド4について説明する。
矯正バンド4は鋼鉄でなり、真円筒を筒軸方向に2つ縦割りしたものである。各分割片6の対向する一方の長手端部どうしが蝶番7で固定され、他方の長手端部間を開口とする観音開きを可能にしている。そして他方の長手端部どうしにはそれぞれが相互に密着できる固定片8が設けられ、これら固定片8どうしを固定片8に形成した透孔9を貫通するボルト5で止めて矯正バンド4を閉じることができる。また固定片8には補強片10が取付けられており、固定片8どうしをボルト5で閉じる際に固定片8を変形し難くしている。
【0026】
このように、扁平した埋設樹脂管21を矯正バンド4で外側から抱えるように保持して締め付けるため、作業スペースが限られた狭い立坑内でも適用できる簡易な方法で、埋設樹脂管21の扁平変形を真円形状に矯正することができ、埋設樹脂管21に対する継手管の施工を簡単に進めることができる。
【0027】
測定定規の変形例〔図2〕
本実施形態の測定定規1では、内縁2に平行に延長形成した直線状の突出縁2bを設ける例を示したが、図2(B)で示すように、変形例の測定定規11では2つの突出縁12bをその間隔が先端に向かって徐々に広がる曲線状としている。即ち、突出縁12bの先端間の寸法は半円弧の直径寸法より大きく形成されている。このようにしても測定縁面と突出縁面とを角部を介さない単一の連続面とすることができる。
【0028】
また、測定定規の測定縁部を平板の板厚方向に突出させ測定縁面を広げれば、測定定規を埋設管の外周面に当てた際に、測定定規をグラツキに難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】測定定規の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1の測定定規の部分拡大図。
【図3】図1の測定定規の使用方法を示す説明図。
【図4】一実施形態による埋設樹脂管の扁平矯正方法で使用する矯正バンドの斜視図。
【図5】図4の矯正バンドの使用方法を示す説明図。
【図6】図4の矯正バンドの使用方法を示す斜視図。
【符号の説明】
【0030】
1 測定定規(実施形態)
2 内縁
2a 測定縁
2b 突出縁
3 外縁
4 矯正バンド
5 ボルト
6 分割片
7 蝶番
8 固定片
9 透孔
10 補強片
11 測定定規(変形例)
12 内縁
12a 測定縁
12b 突出縁
21 埋設樹脂管
21a 外周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋めた埋設管の扁平を確認する測定定規であって、
平板で形成されており、該平板に、埋設管の外周面に沿って接触可能な半円弧状の測定縁と、測定縁の両端部から屈曲点を形成せずに各々延長形成した一対の突出縁とを備える測定定規。
【請求項2】
平板が略U字型であり、
該略U字型の内周部となる内縁が、測定縁と突出縁を形成しており、
該略U字型の外周部となる外縁が、埋設管と同軸上に接続させる継手管の嵩寸法よりも大きくなるように内縁から離間する位置に形成したものである請求項1記載の測定定規。
【請求項3】
平板が透明樹脂でなる請求項1又は請求項2記載の測定定規。
【請求項4】
請求項1〜請求項3何れか1項記載の測定定規を用いる埋設樹脂管の扁平矯正方法であって、
地盤を開削し露出させた埋設樹脂管に測定定規の測定縁を当てて外周面を周方向に滑らせて扁平部位を測定し、
測定した扁平部位に周方向で複数に分割した真円筒状の矯正バンドを周着し、矯正圧力を加えて保持することで埋設樹脂管の扁平変形を矯正する埋設樹脂管の扁平矯正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−38231(P2010−38231A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201112(P2008−201112)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000141082)株式会社キャプティ (22)
【Fターム(参考)】